(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022107896
(43)【公開日】2022-07-25
(54)【発明の名称】コンデンサ保持具
(51)【国際特許分類】
H05K 1/18 20060101AFI20220715BHJP
H01G 2/02 20060101ALI20220715BHJP
【FI】
H05K1/18 T
H01G2/02 101A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021002572
(22)【出願日】2021-01-12
(71)【出願人】
【識別番号】000103194
【氏名又は名称】エムデン無線工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100062764
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 襄
(72)【発明者】
【氏名】三浦 美鈴
【テーマコード(参考)】
5E336
【Fターム(参考)】
5E336AA04
5E336AA07
5E336BB02
5E336CC53
5E336DD38
5E336DD40
5E336EE02
5E336GG15
5E336GG30
(57)【要約】
【課題】基板に対して追加の孔開け不要かつ半田付け固定不要とし、複数のコンデンサを容易に保持できるコンデンサ保持具を提供する。
【解決手段】コンデンサ保持具20は、基板10に対して半田付け固定せずに、複数のコンデンサ11を保持する。コンデンサ保持具20は、互いに接触した複数のコンデンサ11を保持する。さらに、コンデンサ保持具20は、基板10上の複数のコンデンサ11を保持する保持部21、保持部21に設けられた半田漏れ確認部27、および複数の取付部22を備える。複数の取付部22は、周方向の一部が開口され、コンデンサ11の外径よりもそれぞれ内径が小さく、コンデンサ11の周囲に対してそれぞれ弾性的に嵌合して取り付けられる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に対して半田付け固定せずに、複数のコンデンサを保持する
ことを特徴とするコンデンサ保持具。
【請求項2】
互いに接触した複数の前記コンデンサを保持する
ことを特徴とする請求項1記載のコンデンサ保持具。
【請求項3】
複数の前記コンデンサを保持する保持部と、
前記保持部に設けられた半田漏れ確認部とを備える
ことを特徴とする請求項1または2記載のコンデンサ保持具。
【請求項4】
周方向の一部が開口され、前記コンデンサの外径よりもそれぞれ内径が小さく、前記コンデンサの周囲に対してそれぞれ弾性的に嵌合して取り付けられる複数の取付部を備える
ことを特徴とする請求項1ないし3いずれか一記載のコンデンサ保持具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のコンデンサを保持するコンデンサ保持具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基板に対して端子により接続されるコンデンサでは、コンデンサ自体の振動や外力の作用により基板に対して動くことで、コンデンサの端子に負荷が加わり、端子の破損による接続不良などの不具合が生じることがあるため、防振対策を施す場合がある。
【0003】
防振対策としては、基板に対してコンデンサを接着剤で固定することが行われている。しかし、接着剤には、導電部の絶縁不良を引き起こすシロキシサンの成分が含まれていることがあり、シロキシサン対策がさらに必要となってしまう。
【0004】
また、接着剤を使用せずにコンデンサを固定するために、特許文献1に記載されたコンデンサ用固定具を用いることが知られている。このコンデンサ用固定具では、基板に対して新たに開けられた追加の孔に差し込んで半田付け固定することにより、複数のコンデンサを基板との間に挟み込んだ状態に固定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、コンデンサ用固定具では、基板に対して新たな追加の孔開けが必要で、この追加の孔開けにより基板の配線パターンにスペース的な制約が発生してしまう場合があり、さらに、基板に対して半田付け固定が必要で、複数のコンデンサの保持に手間がかかる。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、基板に対して追加の孔開け不要かつ半田付け固定不要とし、複数のコンデンサを容易に保持できるコンデンサ保持具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のコンデンサ保持具は、基板に対して半田付け固定せずに、複数のコンデンサを保持する。
【発明の効果】
【0009】
本発明のコンデンサ保持具によれば、基板に対して追加の孔開け不要かつ半田付け固定不要とし、複数のコンデンサを容易に保持できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1の実施の形態を示すコンデンサ保持具の使用状態の斜視図である。
【
図2】同上コンデンサ保持具およびコンデンサの側面図である。
【
図3】同上コンデンサ保持具およびコンデンサの断面図である。
【
図4】同上コンデンサ保持具の他の使用状態の斜視図である。
【
図6】同上コンデンサ保持具を示し、(a)は正面図、(b)は背面図、(c)は左側面図、(d)は平面図である。
【
図7】第2の実施の形態を示すコンデンサ保持具の斜視図である。
【
図8】同上コンデンサ保持具を示し、(a)は正面図、(b)は背面図、(c)は左側面図、(d)は平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の第1の実施の形態を、
図1ないし
図6を参照して説明する。
【0012】
図1ないし
図4には、基板10に複数のコンデンサ11が実装された電気回路の一部を示す。
【0013】
基板10は、プリント配線基板であり、一面側が部品面10a、他面側が配線パターンを形成した半田面10bである。基板10には、各コンデンサ11の実装位置に対応して、各一対の貫通孔12(
図3参照)が設けられている。
【0014】
コンデンサ11は、例えば電解コンデンサであり、コンデンサ本体13と、このコンデンサ本体13から突出されたリード線である一対の端子14とを備えている。コンデンサ本体13は、例えば直径が35mmまたは40mmの円筒状に設けられ、
図3に示すように、軸方向の一端側の端面15から一対の端子14が突出されている。コンデンサ本体13の軸方向の一端側は、周辺部よりも端面15が内側に窪んだ凹状に設けられている。コンデンサ11は、コンデンサ本体13の軸方向が基板10の面に対して略垂直となるように立位姿勢に実装されている。
【0015】
そして、コンデンサ11の一対の端子14は、基板10の一対の貫通孔12に差し込まれ、例えばフロー半田方式により、半田面10bの配線パターンに半田16にて接続されている。
【0016】
なお、半田付けの際、
図2および
図3に2点鎖線にて示すように、半田16が基板10の貫通孔12と端子14との間の隙間を通じて部品面10aに漏れ出した場合、一対の端子14を短絡してしまうことがある。この場合、漏れ出した半田16の一部が基板10とコンデンサ本体13との間からコンデンサ本体13の外側に漏れ出すことにより、外部から半田漏れを確認することが可能となる。そして、半田漏れが確認された場合には電気回路は不良品となる。
【0017】
また、
図1ないし
図6に示すように、コンデンサ11の防振対策のためにコンデンサ保持具20を用いている。コンデンサ保持具20は、基板10に対して半田付け固定せず、非固定状態で、基板10に実装された複数のコンデンサ11を一体に保持する。コンデンサ保持具20は、複数のコンデンサ11が互いに接触(密着)した状態に保持する。本実施の形態では、2つのコンデンサ11を一体に保持するコンデンサ保持具20の例を示す。
図1および
図2には基板10に4つのコンデンサ11が密集して実装された例を示し、この場合、2つのコンデンサ保持具20を用い、これらコンデンサ保持具20でコンデンサ11の両側から2つずつを保持する。
【0018】
コンデンサ保持具20は、例えばポリブチレンテレフタレートなどの絶縁性および弾性を有する樹脂材料にて一体に形成されている。コンデンサ保持具20は、2つのコンデンサ11を一体に保持する保持具本体である保持部21を備えている。保持部21は、透明、半透明、あるいは不透明のいずれでもよい。
【0019】
保持部21には、コンデンサ11の周囲に対してそれぞれ弾性的に嵌合して取り付けられる一対の取付部22と、一対の取付部22を互いに連結する連結部23と、一対の取付部22の連結部23とは反対側に設けられた両側の先端部24とが設けられている。
【0020】
一対の取付部22は、それぞれ仮想の中心軸Oを中心とした略半環状に設けられている。取付部22の周方向の一部には、コンデンサ11の周囲に対して取付部22を嵌合可能とする取付用開口部25が設けられている。取付部22の内径rはコンデンサ11の外径よりも小さく、一対の取付部22の中心軸O間のピッチはコンデンサ11の外径寸法よりも小さい関係にある。さらに、中心軸Oを中心として取付部22が形成される領域の角度は180°よりも大きく、つまり取付用開口部25が形成される領域の角度よりも大きい関係にある。したがって、取付部22はコンデンサ11の周囲に弾性的に嵌合して取り付けられ、一対の取付部22が2つのコンデンサ11に取り付けられることによって2つのコンデンサ11を互いに接触した状態に保持する。
【0021】
連結部23は、一対の取付部22の互いに接近した端部側を連結する。連結部23は、一対の取付部22の中心軸O間を結ぶ仮想線に対して一側でその仮想線から離れた位置に配置され、一対のコンデンサ11が互いに接触するのを可能としている。
【0022】
両側の先端部24は、一対の取付部22の連結部23とは反対の端部側に設けられ、取付用開口部25の両側に配置されている。両側の先端部24は、一対の取付部22の中心軸O間を結ぶ仮想線に対して連結部23とは反対の他側に配置されている。両側の先端部24が互いに対向する最小間隔は、2つ分のコンデンサ11の直径寸法よりも狭い関係にある。両側の先端部24には、外径側に向けて突出されるとともに先端側が互いに拡開するように傾斜された取付ガイド部26が設けられている。
【0023】
また、保持部21には、半田漏れ確認窓部である半田漏れ確認部27が設けられている。半田漏れ確認部27は、取付部22の軸方向の両側に設けられている。半田漏れ確認部27は、取付部22の縁部に沿って設けられた切欠凹部によって形成されている。半田漏れ確認部27は、連結部23および両側の先端部24には設けられず、連結部23と先端部24との間に設けられている。取付部22の半田漏れ確認部27が設けられた箇所での軸方向の幅は、連結部23および両側の先端部24の軸方向の幅よりも狭くなっている。
【0024】
そして、コンデンサ保持具20は、軸方向に対称とする形状に形成されている。すなわち、コンデンサ保持具20は、軸方向の平面と底面が対称形状、および左側面と右側面が対称形状に形成され、軸方向の向きの方向性がないように構成されている。なお、
図6には、底面図は平面図と対称に表されるとともに、右側面図は左側面図と対称に表れるため、図示を省略している。
【0025】
次に、コンデンサ保持具20の使用について説明する。
【0026】
基板10に複数のコンデンサ11が実装された状態で、コンデンサ保持具20を2つのコンデンサ11に対して取り付け、2つのコンデンサ11を一体に保持する。
【0027】
コンデンサ保持具20の取付用開口部25を2つのコンデンサ11の周面に対向させ、コンデンサ保持具20を2つのコンデンサ11に対して径方向から近付けて嵌め込む。
【0028】
この際、コンデンサ保持具20の両側の先端部24に設けられている取付ガイド部26がコンデンサ11の周面に当接し、取付ガイド部26がコンデンサ11の周面に沿って摺動しながら両側の先端部24の間隔が広がるように弾性変形し、両側の先端部24間がコンデンサの中心位置を通過することにより、各取付部22が各コンデンサ11の周面に嵌合する。このように、両側の先端部24に取付ガイド部26が設けられていることにより、コンデンサ保持具20をコンデンサ11に容易に取り付けることができる。
【0029】
取付部22の内径rはコンデンサ11の外径よりも小さい関係にあるため、取付部22がコンデンサ11の周面に弾性的に嵌合して取り付けられる。さらに、一対の取付部22の中心軸O間のピッチはコンデンサ11の外径寸法よりも小さい関係にあるため、各取付部22が各コンデンサ11に取り付けられることによって2つのコンデンサ11を互いに接触した状態に保持する。
【0030】
なお、コンデンサ保持具20は、一方の取付部22を一方のコンデンサ11に取り付けた後、一方のコンデンサ11を中心としてコンデンサ保持具20を回動させて、他方の取付部22を他方のコンデンサ11に取り付けてもよい。
【0031】
あるいは、コンデンサ11の周面に対向する領域に他の電気部品などが存在し、コンデンサ保持具20を取り付けるためのスペースがない場合には、コンデンサ保持具20をコンデンサ11の軸方向から取り付けることができる。この場合、両側の先端部24を弾性的に広げながら軸方向からコンデンサ11の周囲にコンデンサ保持具20を配置することができる。
【0032】
2つのコンデンサ11に取り付けられたコンデンサ保持具20は、コンデンサ11に対して軸方向に沿ってスライド移動させ、取付位置を調整することができる。例えば、
図1ないし
図3に示すように、コンデンサ保持具20が基板10に接触する位置に取り付けたり、あるいは、
図4に示すように、基板10から離反したコンデンサ11の上部側に取り付けることができる。
【0033】
そして、2つのコンデンサ11に対して取り付けられたコンデンサ保持具20により、2つのコンデンサ11を一体に保持する。コンデンサ保持具20で2つのコンデンサ11を一体に保持することにより、コンデンサ11自体の振動や外力の作用によってコンデンサ11が基板10に対して動くのを規制し、コンデンサ11に防振対策を施すことができる。これにより、コンデンサ11の端子14に加わる負荷を軽減できるため、端子14の破損による接続不良などの不具合が生じるのを防止できる。
【0034】
さらに、コンデンサ保持具20により2つのコンデンサ11を互いに接触した状態に保持するため、2つのコンデンサ11の動きをより確実に抑えることができる。
【0035】
しかも、コンデンサ保持具20は、基板10に対して非固定状態で、基板10に実装された2つのコンデンサ11を一体に保持できるため、基板10に対して追加の孔開けが不要であり、追加の孔開けにより基板10の配線パターンにスペース的な制約が発生するようなことがなく、さらに、基板10に対して半田付け固定が不要であり、2つのコンデンサ11を容易に保持できる。
【0036】
さらに、コンデンサ保持具20の各取付部22が各コンデンサ11の周面に弾性的に嵌合して取り付けられるため、基板10に対して非固定状態で、基板10に実装された2つのコンデンサ11を確実に保持できる。
【0037】
また、コンデンサ保持具20は基板10に対して非固定状態とするが、コンデンサ保持具20を基板10に接触する位置に取り付けた場合、基板10に対してコンデンサ保持具20の動きが規制され、コンデンサ11の保持をより安定させることができる。
【0038】
また、
図1ないし
図3に示すように、コンデンサ保持具20を基板10に接触する位置に取り付けた場合でも、基板10とコンデンサ11の底部との間をコンデンサ保持具20で隠蔽することなく、基板10とコンデンサ11の底部との間に半田漏れ確認部27が臨むため、半田漏れ確認部27を通じて、基板10とコンデンサ11の底部との間からの上述した半田16の漏れを確認することができる。
【0039】
半田漏れ確認部27は、接触部23と先端部24との間で取付部22毎に設けられ、接触部23および先端部24には設けられないため、コンデンサ保持具20を基板10に接触する位置に取り付けた場合、接触部23と両側の先端部24との3箇所が基板10に接触し、基板10に対するコンデンサ保持具20の位置を安定させることができる。さらに、半田漏れ確認部27は連結部23に設けられないことにより、コンデンサ11への取付時に負荷が加わりやすい連結部23の強度を確保できる。
【0040】
また、コンデンサ保持具20を基板10から離反したコンデンサ11の上部側に取り付けた場合には、コンデンサ保持具20と基板10との間隔が大きく開くため、基板10とコンデンサ11の底部との間からの上述した半田16の漏れを確認しやすくできる。
【0041】
また、コンデンサ保持具20は、軸方向の方向性がなく、コンデンサ11に取り付けることができるため、取付作業性がよい。
【0042】
なお、基板10にコンデンサ11を実装する際に、コンデンサ保持具20で2つのコンデンサ11を一体に保持することにより、実装の作業性を向上できる。
【0043】
【0044】
コンデンサ保持具20は、保持部21に設けられた溝部30を備えている。溝部30は、各取付部22に周方向に沿って長い長溝状に設けられている。溝部30は、取付部22の内外面に貫通する貫通孔によって構成されている。なお、溝部30は、取付部22の内周面側または外周面側のいずれか一方または両方に凹状となる肉盗み形状であってもよい。
【0045】
そして、コンデンサ保持具20によりコンデンサ11を安定して保持するには、コンデンサ保持具20の軸方向の幅をある程度広く必要とするものの、コンデンサ保持具20の材料の使用量が増加し、重くなるが、保持部21に溝部30を設けることにより、コンデンサ保持具20の材料の使用量を削減でき、軽量化できる。さらに、溝部30が開口である場合には、コンデンサ11の周囲をコンデンサ保持具20で覆っても、コンデンサ11が発生する熱を溝部30の開口から空気中に放熱でき、コンデンサ11の放熱性を確保することができる。
【0046】
なお、コンデンサ11の軸方向が基板10の面と平行となる横向きに配置される場合にも、コンデンサ保持具20により複数のコンデンサ11を一体に保持できる。
【0047】
また、上述した実施の形態のコンデンサ保持具20は、2つのコンデンサ11を一体に保持する例を示したが、3つ、4つあるいはそれ以上のコンデンサ11を一体に保持してもよい。
【0048】
また、保持部21は、コンデンサ11毎に取り付けられる取付部22を設けず、複数のコンデンサ11が並ぶ方向から複数のコンデンサ11を挟み込んで一体に保持してもよい。
【0049】
また、半田漏れ確認部27は、保持部21に設けた溝部に限らず、保持部21に設けた孔部であってよいし、保持部21に設けた透明部であってよい。
【0050】
以上、本発明の実施の形態およびその変形例について説明したが、種々の構成の組み合わせ、一部の省略、置き換えおよび変更も可能である。
【符号の説明】
【0051】
10 基板
11 コンデンサ
20 コンデンサ保持具
21 保持部
22 取付部
27 半田漏れ確認部