(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022107904
(43)【公開日】2022-07-25
(54)【発明の名称】メディア支持装置およびプリンタ
(51)【国際特許分類】
B65H 16/06 20060101AFI20220715BHJP
B41J 15/08 20060101ALI20220715BHJP
【FI】
B65H16/06 A
B41J15/08
B65H16/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021002592
(22)【出願日】2021-01-12
(71)【出願人】
【識別番号】000116057
【氏名又は名称】ローランドディー.ジー.株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100189887
【弁理士】
【氏名又は名称】古市 昭博
(72)【発明者】
【氏名】酒井 千陽
【テーマコード(参考)】
2C060
3F052
【Fターム(参考)】
2C060BA02
2C060BA05
3F052AA01
3F052AA03
3F052AA05
3F052AA06
3F052AB05
3F052BA10
3F052BA11
(57)【要約】 (修正有)
【課題】メディアのロールを支持するロール支持部材を容易に手動回転させることができるメディア支持装置、また、そのようなメディア支持装置を備えたプリンタを提供する。
【解決手段】メディア支持装置は、シート状のメディアが巻回されたロールを支持するロール支持部材40と、ロールの軸線周りに回転可能なようにロール支持部材40を支持する回転支持部材50と、を備えている。ロール支持部材40は、ロール支持部材40を回転操作可能なハンドル42を備えている。ハンドル42は、ロールの軸線方向視において回転支持部材50よりもロールの径方向の外方に張り出した部分を有している。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状のメディアが巻回されたロールを支持するロール支持部材と、
前記ロールの軸線周りに回転可能なように前記ロール支持部材を支持する回転支持部材と、を備え、
前記ロール支持部材は、前記ロール支持部材を回転操作可能であって前記ロールの軸線方向視において前記回転支持部材よりも前記ロールの径方向の外方に張り出した部分を有するハンドルを備えている、
メディア支持装置。
【請求項2】
前記ロール支持部材は、前記ロールの軸線方向の外方から前記ロールを支持するように構成され、
前記回転支持部材は、前記ロール支持部材よりもさらに前記ロールの軸線方向の外方に設けられている、
請求項1に記載のメディア支持装置。
【請求項3】
前記ハンドルは、前記ロール支持部材の回転中心と中心が一致するような略円板状に構成されている、
請求項1または2に記載のメディア支持装置。
【請求項4】
前記ハンドルは、略円形の外周部に形成され径方向の内方に向かって凹んだ凹部を備えている、
請求項3に記載のメディア支持装置。
【請求項5】
前記回転支持部材は、前記ロールの軸線方向視において略三角形に構成されている、
請求項1~4のいずれか一つに記載のメディア支持装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一つに記載のメディア支持装置を含み、前記メディア支持装置に支持された前記ロールから前記メディアを供給するメディア供給装置と、
前記メディア供給装置から供給されたメディアに画像を形成するプリントヘッドと、を備えている、
プリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メディア支持装置およびそれを備えたプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
メディアがロール状に巻回されたロールから順次メディアを繰り出し、繰り出したメディアに印刷を行うプリンタが知られている。例えば特許文献1には、駆動ローラとピンチローラとを備えるメディア搬送手段によってメディアをロールから繰り出して搬送し、印刷後のメディアを巻き取り用ホルダーで再び巻き取るプリンタが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
メディアの繰り出し作業や印刷後のメディアの巻き取り等において、例えばメディアが斜行してしまうなどの問題が発生することがある。そのような場合には、印刷前または印刷後のメディアのロールを支持するロール支持部材を手動で回転させることにより問題を解消できることがある。例えば、メディアの斜行は、ロール支持部材をメディア搬送時と逆方向に回転させ、メディアを巻き戻すことにより解消されることが多い。しかしながら、従来のメディア支持装置は、ロール支持部材を容易に手動回転できるようには構成されていなかった。
【0005】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、メディアのロールを支持するロール支持部材を容易に手動回転させることができるメディア支持装置を提供することである。また、そのようなメディア支持装置を備えたプリンタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここに開示するメディア支持装置は、シート状のメディアが巻回されたロールを支持するロール支持部材と、前記ロールの軸線周りに回転可能なように前記ロール支持部材を支持する回転支持部材と、を備えている。前記ロール支持部材は、前記ロール支持部材を回転操作可能なハンドルを備えている。前記ハンドルは、前記ロールの軸線方向視において前記回転支持部材よりも前記ロールの径方向の外方に張り出した部分を有している。
【0007】
上記メディア支持装置によれば、ハンドル操作によって、ロール支持部材を容易に手動回転させることができる。特に、上記メディア支持装置では、ハンドルの一部がロールの軸線方向視において回転支持部材よりもロールの径方向の外方に張り出しているため、回転支持部材越しにもハンドル操作が可能であり、ロール支持部材の手動回転操作が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】一実施形態に係るプリンタを示す斜視図である。
【
図4】右側のフィーダーの左方からの斜視図である。
【
図5】アンロック状態のフィーダーの縦断面図である。
【
図7】他の態様のフィーダーのアンロック状態を示す縦断面図である。
【
図8】他の態様のフィーダーのロック状態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、一実施形態に係るインクジェットプリンタについて説明する。なお、ここで説明される実施形態は、当然ながら特に本発明を限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材、部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜省略または簡略化する。以下の説明では、インクジェットプリンタを正面から見たときに、インクジェットプリンタから遠ざかる方を前方、インクジェットプリンタに近づく方を後方とする。また、図面中の符号F、Rr、L、R、U、Dは、それぞれ前、後、左、右、上、下を表している。ただし、これらは説明の便宜上の方向に過ぎず、インクジェットプリンタの設置態様等を限定するものではない。
【0010】
[インクジェットプリンタの構成]
図1は、一実施形態に係る大判のインクジェットプリンタ(以下、「プリンタ」とする。)10の斜視図である。
図2は、プリンタ10の右側面図である。
図3は、プリンタ10の背面側からの斜視図である。プリンタ10は、ロール状に巻回されたメディア5aを繰り出しながら前後方向に移動させるとともに、左右方向に移動するキャリッジ15に搭載されたプリントヘッド16からインクを吐出することによって、メディア5a上に画像を形成する。
【0011】
本実施形態では、プリンタ10は、インクジェット方式のプリンタである。本実施形態において、「インクジェット方式」とは、二値偏向方式または連続偏向方式などの各種の連続方式、および、サーマル方式または圧電素子方式などの各種のオンデマンド方式を含む従来公知の各種の手法によるインクジェット式のことをいう。
【0012】
メディア5aは、画像が印刷される対象物である。メディア5aは、シート状の記録媒体である。メディア5aの材料は特に限定されない。メディア5aは、例えば、普通紙やインクジェット用印刷紙等の紙類であってもよいし、樹脂製などの透明なシートであってもよい。金属製やゴム製等のシートであってもよい。また、布帛であってもよい。以下では、印刷対象物としてのメディア5aが巻回されたものをロール5と呼ぶこととする。
【0013】
図2に示すように、プリンタ10は、プラテン11と、プリントヘッド16と、メディア供給装置20と、搬送装置80と、巻取装置90と、を備えている。メディア供給装置20には、印刷前のメディア5aのロール5が装着される。メディア供給装置20は、前後方向に回転可能にロール5を支持している。搬送装置80は、ロール5からメディア5aを繰り出し、繰り出したメディア5aを前後方向に搬送する。プリントヘッド16は、メディア供給装置20から供給されたメディア5aに画像を形成する。巻取装置90は、画像が形成された後のメディア5aを巻き取る。プリンタ10は、その他に、キャリッジ15を左右方向に移動させる、図示しないキャリッジ移動装置などを備えている。
【0014】
プリントヘッド16は、メディア供給装置20よりもメディア5aの搬送方向下流、ここでは前方側に設けられている。プリントヘッド16は、キャリッジ15に搭載され、プラテン11の上方に配置されている。プリントヘッド16は、プラテン11上のメディア5aに向かってインクを吐出するように構成されている。プリントヘッド16は、図示しないキャリッジ移動装置によってキャリッジ15が左右方向に移動されることにより、左右方向に移動する。プリントヘッド16は、左右方向に移動しながらインクを吐出することによりメディア5aに画像を形成する。
【0015】
プラテン11は、メディア5aを支持する支持台である。プラテン11は、前後方向および左右方向に延びている。プラテン11上のメディア5aは、搬送装置80によって前後方向に移動される。
図2に示すように、搬送装置80は、ピンチローラ81と、グリットローラ82と、図示しないフィードモータとを備えている。ピンチローラ81はプラテン11の上方に設けられ、メディア5aを上から押下する。グリットローラ82は、プラテン11に設けられている。グリットローラ82は、ピンチローラ81と対向する位置に設けられている。グリットローラ82は、フィードモータに連結されている。ピンチローラ81とグリットローラ82との間にメディア5aが挟まれた状態でグリットローラ82が回転すると、メディア5aは前後方向に搬送される。
【0016】
ピンチローラ81は、ピンチローラレバー83を操作することによって上下方向に移動させることができる。ピンチローラ81は、上下方向に移動することにより、メディア5aを押さえ、また、メディア5aから離れる。
図2および
図3に示すように、ピンチローラレバー83は、ここでは、プリンタ10の背面側の中央よりも右寄りに設けられている。
【0017】
図3に示すように、メディア供給装置20は、プリンタ10の背面側に設けられている。メディア供給装置20において、ロール5は、メディア5aが搬送装置80に引っ張られることにより従動的に回転する。
図3に示すように、メディア供給装置20は、ロール5を回転可能に支持する一対のフィーダー30と、一対のフィーダー30を左右方向に摺動可能に支持する第1ガイドパイプ71および第2ガイドパイプ72とを備えている。第1ガイドパイプ71および第2ガイドパイプ72は、左右方向に延びている。左右方向は、ここでは、ロール5の軸線方向に平行な方向である。第1ガイドパイプ71および第2ガイドパイプ72は、ここでは、丸パイプによって構成されており、プリンタ10の本体に支持されている。第2ガイドパイプ72は、第1ガイドパイプ71よりも前方に設けられている。そのため、プリンタ10の背面で作業する作業者にとっては、第1ガイドパイプ71の方が第2ガイドパイプ72よりも手前側に位置する。第1ガイドパイプ71と第2ガイドパイプ72とは、ここでは、同じ高さに設けられている。
【0018】
一対のフィーダー30は、ロール5の両端を保持する部材である。一対のフィーダー30は、左右方向に摺動可能に第1ガイドパイプ71および第2ガイドパイプ72に係合している。また、詳しくは後述するが、一対のフィーダー30は、第1ガイドパイプ71に対して固定可能である。一対のフィーダー30のうち左側のフィーダー30は、プリンタ10の製作時に位置を調整された後は、第1ガイドパイプ71に固定されている。右側のフィーダー30は、メディア5aの左右方向の幅に合わせて、左右方向の位置を調整される。右側のフィーダー30は、第1ガイドパイプ71および第2ガイドパイプ72に沿って左右方向の位置を調整された後、固定される。
【0019】
図4は、右側のフィーダー(以下、単にフィーダーと言う)30の左方からの斜視図である。
図4に示すように、フィーダー30は、ロール支持部材40と、支持部材50と、固定部60と、を備えている。ロール支持部材40は、ロール5の軸線方向の外方、ここでは右方からロール5を支持する。支持部材50は、フィーダー30のボディ部であり、ロール5の軸線方向周りに回転可能にロール支持部材40を支持している。支持部材50は、第1ガイドパイプ71および第2ガイドパイプ72によって、ロール5の軸線方向に摺動可能に支持されている。支持部材50は、ロール支持部材40よりもさらにロール5の軸線方向の外方、ここでは右方に設けられている。固定部60は、支持部材50と第1ガイドパイプ71とを摺動不能に固定するための機構である。
【0020】
図4に示すように、ロール支持部材40は、ロール5が装着されるロール装着部41と、ハンドル42とを有している。ロール支持部材40は、支持部材50に設けられた回転軸51によって回転可能に支持されている。回転軸51は、ロール5の軸線方向である左右方向に延びている。回転軸51は、ここでは、回転不能に構成されている。ロール支持部材40は、回転軸51に挿入され、回転軸51周りに回転する。ロール支持部材40は、搬送装置80によってロール5からメディア5aが繰り出されるのに伴って、ロール5とともに回転する。
【0021】
ロール装着部41は、ハンドル42よりも、ロール5の軸線方向の内方(ここでは左方)に突出している。ロール装着部41は、ロール支持部材40の先端部(左端部)を構成している。ロール装着部41にはロール5の右端部が装着される。
図4に示すように、ロール装着部41は、左右方向に延びる段付きの円柱状に構成されている。ロール装着部41は、ロール5の軸線方向の内方から順に、第1挿入部41a、第2挿入部41c、および段部41eの3段によって構成されている。
【0022】
ロール装着部41の中で最も先端に設けられた第1挿入部41aは、円柱状に構成されている。第1挿入部41aの円柱側面には、複数の突起41bが設けられている。複数の突起41bは、左右方向に延びている。複数の突起41bは、第1挿入部41aの周方向に等間隔に設けられている。複数の突起41bは、第1挿入部41aに挿通されたロール5が滑らないようにするものである。
【0023】
第2挿入部41cは、第1挿入部41aよりも、ロール5の軸線方向外方に設けられている。第2挿入部41cは、第1挿入部41aよりも直径の大きい円柱状に構成されている。第2挿入部41cには、第1挿入部41aに挿通されるロール5よりも大きいロール5が挿通される。第2挿入部41cの円柱側面には、複数の突起41dが設けられている。複数の突起41dは、左右方向に延びている。複数の突起41dは、第2挿入部41cの周方向に等間隔に設けられている。複数の突起41dは、第2挿入部41cに挿通されたロール5が滑らないようにするものである。
【0024】
段部41eは、第2挿入部41cよりも、ロール5の軸線方向外方に設けられている。段部41eは、第2挿入部41cよりも直径が大きく軸線方向の長さが短い、薄い円柱状に構成されている。段部41eの軸線方向内方側の面は、ロール5の端部が当てつく当てつけ面41fを構成している。
【0025】
図4に示すように、ハンドル42は、ロール装着部41よりも、ロール5の軸線方向外方に設けられている。ハンドル42は、ロール支持部材40(ロール5)を回転操作するためのものである。作業者は、ハンドル42を把持して回転させることにより、ロール支持部材40をロール5の軸線周りに回転させることができる。ハンドル42は、ここでは、ロール支持部材40の回転中心と中心が一致するような略円板状に構成されている。左右方向視において、ハンドル42は、ロール装着部41と同心の略円形の形状を有している。ハンドル42は、段部41eよりもさらに直径が大きい円板状に構成されている。
【0026】
ハンドル42は、ここでは、支持部材50よりもロール5の軸線方向の内方、ここでは左方に設けられている。
図2に示すように、ハンドル42の一部は、ロール5の軸線方向視において、支持部材50よりもロール5の径方向の外方に張り出している。そのため、支持部材50よりも外方から支持部材50越しに、ハンドル42を把持し、操作することが可能である。
図4に示すように、ハンドル42は、外周部42aに形成され径方向の内方に向かって凹んだ複数の凹部42bを備えている。複数の凹部42bは、ハンドル42の回転操作の際に作業者の手が滑りにくくするためのものである。複数の凹部42bは、ハンドル42の外周部42aに等間隔で設けられている。
【0027】
本実施形態では、ロール支持部材40は、1つの部品として形成されている。ロール支持部材40は、例えば樹脂によって形成されている。ただし、ロール支持部材40は、複数の部品が組み合わされて構成されていてもよい。例えば、ロール装着部41とハンドル42とは別体であってもよい。ハンドル42は、ロール支持部材40に設けられ、ロール支持部材40を回転操作可能に構成されていればよい。
【0028】
支持部材50は、前述したように、ロール支持部材40よりもロール5の軸線方向の外方、ここでは右方に設けられている。支持部材50は、ロール支持部材40を回転可能に支持している。また、支持部材50は、第1ガイドパイプ71および第2ガイドパイプ72によって左右方向に摺動可能に支持されている。支持部材50は、前後方向および上下方向に延びている。支持部材50は、ここでは、左右方向視において下方が広がった略三角形形状を有している。回転軸51は、略三角形の上方の頂点付近に設けられている。支持部材50には、前後方向に延びる複数のリブ50aと、上下方向に延びる複数のリブ50bとが設けられている。複数のリブ50aおよび50bは、支持部材50を補強し、支持部材50の強度を向上させるためのものである。
【0029】
図4に示すように、支持部材50は、筒状部52と、係合凹部53と、を備えている。筒状部52は、略三角形の下方の2頂点のうち後方側の頂点に設けられている。筒状部52は、左右方向に延びる円筒状に構成されている。円筒状の筒状部52の内部空間は、第1ガイドパイプ71が挿通される挿通孔52aを構成している。挿通孔52aは、支持部材50を左右方向に貫通している。挿通孔52aは、左右方向視において略円形の貫通孔である。筒状部52には、径方向に貫通する2つのストッパ孔52a1、52a2が設けられている。2つのストッパ孔52a1、52a2は、左右方向に並んで設けられている。ストッパ孔52a2は、ストッパ孔52a1よりも右方に配置されている。
【0030】
筒状部52の外周面52bには、肉厚部52cが設けられている。肉厚部52cは、外周面52bの左右方向の中央部に設けられ、外周面52bの他の部分よりも径方向の外方に凸している。肉厚部52cは、筒状部52の全周にわたって形成されている(
図5も参照)。
【0031】
係合凹部53は、略三角形の下方の2頂点のうち前方側の頂点に設けられている。係合凹部53は、左右方向視において、前方側が開いた略C字の形状を有している。係合凹部53は、後方に向かって凹んだ凹部である。係合凹部53には、第2ガイドパイプ72が挿通されている。挿通孔52aに第1ガイドパイプ71が挿通され、係合凹部53に第2ガイドパイプ72が挿通されることにより、フィーダー30の姿勢と、前後方向および上下方向に関する位置とが定まっている。フィーダー30は、第1ガイドパイプ71および第2ガイドパイプ72に沿って左右方向に移動可能である。
【0032】
固定部60は、フィーダー30を第1ガイドパイプ71に固定する操作および固定解除する操作を行う機構である。
図5は、フィーダー30の縦断面図である。
図5に示すように、固定部60は、第1カム61と、第2カム62(
図5では、第1カム61と重なっている)と、第1ストッパ63と、第2ストッパ64(
図5では、第1ストッパ63と重なっている、
図4も参照)と、レバー65と、を備えている。固定部60は、レバー65を上下方向に回動させることにより、第1カム61および第2カム62が回動するように構成されている。第1カム61および第2カム62が回動することにより、それぞれ、第1ストッパ63および第2ストッパ64が挿通孔52a内に出現し、または挿通孔52a内から退避する。これにより、フィーダー30は、第1ガイドパイプ71に固定され、または固定解除される。
【0033】
図5に示すように、第1カム61は、左右方向に延びる回転軸Ax周りに回転するように構成されている。回転軸Axは、筒状部52の肉厚部52cに設けられている。ただし、回転軸Axは、第1カム61に設けられていてもよい。第1カム61は、筒状部52の左方側のストッパ孔52a1の径方向外方に設けられている。
図5に示すように、第1カム61は、回転軸Axからの距離が周方向の位置によって異なる偏心カムである。第1カム61は、回転軸Axからの距離が他の部分よりも長い突出部61aを有している。突出部61aの先端部61a1は、切り落とされたような形状に形成されている。先端部61a1は、平面に構成されている。
【0034】
第2カム62は、筒状部52の右方側のストッパ孔52a2の径方向外方に設けられている。第2カム62は、第1カム61と共通の回転軸Ax周りに、第1カム61と同期して回転する。第2カム62は、回転軸Ax方向視(左右方向視)において第1カム61と同形に構成されている。ここでは、第2カム62は、第1カム61と左右対称に構成されている。
【0035】
第1ストッパ63は、挿通孔52aに挿通された第1ガイドパイプ71に当接して、フィーダー30を第1ガイドパイプ71に固定する部材である。第1ストッパ63は、挿通孔52aの内周面に露出するように支持部材50に埋設されている。詳しくは、
図5に示すように、第1ストッパ63は、筒状部52の径方向外方から左方側のストッパ孔52a1に挿入され、ストッパ孔52a1を通して挿通孔52a内に露出している。第1ストッパ63は、第1カム61と挿通孔52aとの間に設けられている。
【0036】
図5に示すように、第1ストッパ63は、平板状に構成されている。第1ストッパ63の挿通孔52aに露出した面(挿通孔52aの径方向内方側の面)は、第1ガイドパイプ71に当接する当接面63a1を構成している。当接面63a1の裏面は、第1カム61の力を受ける受力面63a2を構成している。受力面63a2は、第1ストッパ63の全体よりも当接面63a1の方に向かって凹んでいる。そのため、当接面63a1と受力面63a2とを両面とする受力部63aの厚さが薄くなっている。第1ストッパ63は、ストッパ孔52a1の周りに形成された位置合わせ部52dに嵌合する鍔部63bを備えている。
【0037】
第1ストッパ63は、弾性材料、ここではゴムおよび樹脂によって構成されている。詳しくは、第1ストッパ63の当接面63a1はゴムによって、受力面63a2は樹脂によって形成されている。第1ストッパ63の受力部63aは、第1カム61の力を受けると、挿通孔52aの径方向内方に向かって弾性変形する。これにより、受力部63aの当接面63a1が挿通孔52a内に突出する。第1カム61に押されて当接面63a1が挿通孔52a内に突出すると、当接面63a1と第1ガイドパイプ71との間の摩擦により、フィーダー30は第1ガイドパイプ71に固定される。受力部63aが第1カム61によって押されず、受力部63aの当接面63a1が挿通孔52a外に退避した状態では、フィーダー30と第1ガイドパイプ71とは固定解除される。第1ストッパ63は、当接面63a1をゴムとすることで第1カム61が当接した際の変形を確保しつつ、第1カム61が接触する受力面63a2をゴムよりも摩耗に強い樹脂とすることで耐久性を向上させるように構成されている。
【0038】
第2ストッパ64は、右方側のストッパ孔52a2を通して挿通孔52aの内周面に露出するように支持部材50に埋設されている。第2ストッパ64は、第1ストッパ63と同様に構成されている。第2ストッパ64も、弾性材料、ここではゴムおよび樹脂によって構成されている。第2ストッパ64は、第2カム62の回転位置に応じて挿通孔52a内に出現し、また挿通孔52aの外側に退避する。この第2ストッパ64の動きによっても、フィーダー30と第1ガイドパイプ71とは固定され、または固定解除される。
図5は、フィーダー30と第1ガイドパイプ71とが固定解除された状態(以下、アンロック状態とも言う)を示している。なお、後述するフィーダー30が第1ガイドパイプ71に固定された状態のことは、ロック状態とも呼ぶ。
【0039】
レバー65は、第1カム61および第2カム62に連結され、第1カム61および第2カム62を回転させるものである。レバー65、第1カム61、および第2カム62は、ここでは、1つの部品として構成されている。ただし、レバー65、第1カム61、および第2カム62は、互いに別部品として構成されていてもよい。
図4に示すように、レバー65は、第1アーム65aと、第2アーム65bと、連結部65cと、を備えている。第1アーム65aは、支持部材50の外面に倣った形状、ここでは、筒状部52の外周面52bに倣った円弧状の形状を有している。
図5に示すように、第1アーム65aの一端は、第1カム61に連結されている。
【0040】
図4に示すように、第2アーム65bは、第1アーム65aよりも右方に設けられている。第2アーム65bは、左右方向視において第1アーム65aと同じ形状を有している。すなわち、第2アーム65bも、筒状部52の外周面52bに倣った円弧状の形状を有している。第2アーム65bの一端は、第2カム62に連結されている。連結部65cは、第1アーム65aの他端および第2アーム65bの他端に接続されている。連結部65cは、左右方向に延びている。連結部65cは、第1アーム65aと第2アーム65bとを連結してレバー65の強度を向上させるともに、ユーザーがレバー65を操作する際に把持する部位である。
【0041】
レバー65は、第1カム61および第2カム62を回転軸Ax周りに回動するように構成されている。レバー65を回動させることにより、第1カム61および第2カム62を回転軸Ax周りに回転させることができる。レバー65は、フィーダー30の後方側に設けられており、後方側から操作可能である。
図4に示すように、第1アーム65aの右端と第2アーム65bの左端との間の左右方向の距離(以下、第1アーム65aと第2アーム65bとの内法と言う)は、筒状部52の肉厚部52cの左右方向の幅と対応している。
【0042】
左側のフィーダー30は、右側のフィーダー30と左右対称に構成されている。
図3に示すように、左側のフィーダー30のロール支持部材40は、支持部材50から右方に向かって延びている。左側のフィーダー30のロール支持部材40と右側のフィーダー30のロール支持部材40とは、向かい合っている。左側のフィーダー30のレバー65は、後方側に設けられている。
【0043】
図1に示すように、巻取装置90は、プリンタ10の前面側に設けられている。巻取装置90は、2本のガイドパイプ91、92と、左右一対のフィーダー93、94と、巻取モータ95と、巻取バー96と、テンションバー97とを備えている。2本のガイドパイプ91、92は、前後方向に並んで設けられ、それぞれ左右方向に延びている。左右一対のフィーダー93、94は、ロール支持部材93a、94aが設けられた頂点が下方にくるように支持部材93b、94bをメディア供給装置20と上下反転させた状態で、2本のガイドパイプ91、92に挿入されている。左側のフィーダー93は、2本のガイドパイプ91、92に支持され、左右方向の所定位置に固定されている。
【0044】
右側のフィーダー94は、巻取モータ95に接続されている。右側のフィーダー94のロール支持部材94aは、巻取モータ95によって回転される。左右のフィーダー93、94は、巻取バー96を挟持している。左右のフィーダー93、94が巻取バー96を保持した状態でロール支持部材94aが回転することにより、巻取バー96が回転する。回転する巻取バー96により、印刷終了後のメディア5aが巻取装置90に巻き取られる。巻取装置90は、これにより印刷後のメディア5aのロール5を形成する。
【0045】
左右一対のフィーダー93、94は、ここでは、ロール支持部材93a、94aおよび固定部93c、94cを除き、メディア供給装置20の左右一対のフィーダー30と同じものである。本実施形態では、ロール支持部材93a、94aには、ハンドルが設けられていない。巻取装置90のロール支持部材93a、94aは巻取モータ95によって回転させるため、ハンドルを使ってメディア5aのロール5を手動で回転させることは想定されていない。
【0046】
また、本実施形態では、巻取装置90の固定部93c、94cは、メディア供給装置20とカム(図示せず)の回転軸の位置が異なっている。巻取装置90では、一対のフィーダー93、94がメディア供給装置20と上下反転させた状態で使用されるため、ロール5の荷重が2本のガイドパイプ91、92ではなく、一対のフィーダー93、94に作用する。そのため、ロック状態でのロール5の荷重をフィーダー93、94で支持できるようメディア供給装置20とはカムの回転軸位置を異ならせている。ただし、巻取装置90のフィーダー93、94は、メディア供給装置20のフィーダー30と同じものであってもよい。
【0047】
テンションバー97は、巻取バー96よりも前方に設けられている。テンションバー97は、上下方向に揺動するように構成されている。メディア5aのプラテン11上での張力は、巻取バー96よりも搬送方向上流でメディア5aがテンションバー97に巻き掛けられることにより所定の張力に維持される。
【0048】
[ロールのセッティング]
以下では、メディア供給装置20へのロール5のセッティング作業およびロール5からのメディア5aの繰り出し作業について説明する。まず、メディア供給装置20へのロール5のセッティング作業について説明する。メディア供給装置20へのロール5のセッティング作業では、まず、右側のフィーダー30をアンロック状態(
図5に示す状態)にする。これにより、フィーダー30が第1ガイドパイプ71および第2ガイドパイプ72に沿って左右方向に移動可能となる。
図5に示すように、フィーダー30のアンロック状態では、レバー65は、回転軸Axを支点として下方にぶら下がっている。このとき、第1ストッパ63の受力面63a2には、第1カム61の突出部61a以外の部分が対面している。このとき、第1ストッパ63の受力面63a2と第1カム61とは離間している。第1ストッパ63の当接面63a1は、挿通孔52aの外部に退避している。
【0049】
第2カム62は、第1カム61と共通の回転軸Ax周りに、第1カム61と同期して回転するように構成されている。第2カム62は、回転軸Ax方向視において第1カム61と同形に構成されている。また、第2カム62は、レバー65に連結されている。そのため、レバー65を操作すると、第2カム62は、第1カム61とともに回転する。第1カム61の動きと第2カム62の動きとは同期する。第2ストッパ64は、第1ストッパ63と同期して挿通孔52a内に出現し、挿通孔52aの外側に退避する。従って、このとき、第2ストッパ64も、挿通孔52aの外側に退避しており、フィーダー30をロックしていない。
【0050】
メディア供給装置20へのロール5のセッティング作業では、次に、右側のフィーダー30の左右方向の位置をロール5の幅に合わせて調整しながら、ロール5をセットする。ロール5がメディア供給装置20にセットされた状態では、ロール5が左右のフィーダー30に挟まれ、ロール5の左右の端部がそれぞれ左右のロール支持部材40の当てつけ面41fに当てつく。このとき、ロール支持部材40の第2挿入部41cは、円筒状のロール5の内部空間に挿入される。この状態で右側のフィーダー30をロックする。なお、ロール支持部材40の第1挿入部41aが挿入されるタイプのロール5の場合には、ロール5の左右の端部は、それぞれ、左右のロール支持部材40の第1挿入部41aと第2挿入部41cとの間の段差に当てつく。
【0051】
フィーダー30のロック作業では、レバー65が上方に向かって回動される。
図6は、ロック状態のフィーダー30の縦断面図である。
図6に示すように、フィーダー30のロック状態では、第1カム61は、突出部61aの平坦な先端部61a1が第1ストッパ63の受力面63a2に当接するような回転位置に位置している。以下、この第1カム61の回転位置をロック位置P1とも呼ぶ。ロック位置P1では、第1カム61の突出部61aは、第1ストッパ63の受力部63aを挿通孔52aの径方向内方側に向かって押圧している。これにより、第1ストッパ63は、挿通孔52a内に出現し、挿通孔52aに挿通された第1ガイドパイプ71に当接する。なお、第1カム61による押圧力が第1ガイドパイプ71に伝達されやすいよう、第1ストッパ63の受力部63aの厚さは薄く構成されている。第2ストッパ64も同様に、挿通孔52a内に出現し、挿通孔52aに挿通された第1ガイドパイプ71に当接する。その結果、第1ストッパ63および第2ストッパ64と第1ガイドパイプ71との間の摩擦力によって、フィーダー30が第1ガイドパイプ71に固定される。
【0052】
図6に示すように、フィーダー30のロック状態では、レバー65は、支持部材50の外面、より詳しくは筒状部52の外周面52bに当接している。言い換えると、レバー65は、第1カム61および第2カム62のロック位置P1に対応する位置で支持部材50の外面(ここでは、筒状部52の外周面52b)に当接するように構成されている。ここでは、レバー65は、フィーダー30のロック状態において、第1アーム65aおよび第2アーム65bの内周面が筒状部52の外周面52bに当接するように構成されている。ユーザーは、筒状部52の外周面52bに当接して動かせなくなるまでレバー65を上方に回動させることにより、第1カム61および第2カム62をロック位置P1に移動させることができる。
【0053】
また、
図6に示すように、フィーダー30のロック状態では、レバー65は、支持部材50の外面、より詳しくは筒状部52の外周面52bに沿うように配置されている。レバー65は、支持部材50の外面(ここでは、筒状部52の外周面52b)に倣った形状を有しており、第1カム61および第2カム62のロック位置P1に対応する位置で支持部材50の外面(ここでは、筒状部52の外周面52b)に沿うように構成されている。ここでは、レバー65は、第1アーム65aおよび第2アーム65bの内周面が筒状部52の外周面52bに対応するように構成されている。なお、前述したように、第1アーム65aと第2アーム65bとの内法は、筒状部52の肉厚部52cの左右方向の幅に対応している。そのため、肉厚部52cは、レバー65を回動させる際のガイドの機能も果たしている。第1カム61および第2カム62のロック位置P1に対応する位置にレバー65が近づくと、
図4に示すように、第1アーム65aおよび第2アーム65bは、それぞれ、肉厚部52cの左側面および右側面に沿うように回動する。以上のような作業により、メディア供給装置20にロール5がセットされる。
【0054】
[メディアの繰り出し]
次に、メディア供給装置20にセットされたロール5からのメディア5aの繰り出し作業について説明する。メディア5aの繰り出し作業では、ユーザーによりロール5からメディア5aの前端が引き出され、プリンタ10の背面開口部14(
図3参照)に差し込まれる。背面開口部14を経由してプラテン11上までメディア5aが繰り出されると、ピンチローラレバー83が操作され、ピンチローラ81が降ろされる。これにより、プラテン11上でメディア5aが押さえられる。この後、グリットローラ82が駆動され、前端が巻取装置90に達するまでメディア5aが前方に搬送される。メディア5aの前端は、巻取装置90の巻取バー96にセットされる。
【0055】
上記したようなメディア5aの繰り出し作業、または印刷中のメディア5aの搬送において、メディア5aの搬送方向が予定された搬送方向(ここでは前後方向)に対して斜行してしまう場合がある。かかる斜行の原因は、例えば、ロール5からメディア5aを引き剥がすのに必要な力がロール5の左右で異なること等である。本実施形態に係るプリンタ10では、メディア5aの斜行が発生した場合、メディア供給装置20を操作することによって、メディア5aの斜行を解消することができる。
【0056】
詳しくは、メディア5aの斜行解消作業では、ハンドル42がユーザーにより操作されることにより、ロール装着部41が後方に向かって回転(以下、逆回転とも言う)される。このロール装着部41の逆回転により、繰り出されたメディア5aがロール5に巻き戻される。これにより、ロール5の軸にメディア5aが倣い、メディア5aの斜行が解消される。
【0057】
[本実施形態の作用効果]
以上が本実施形態に係るプリンタ10の構成、ロール5のセット作業、およびメディア5aの繰り出し作業の説明である。以下では、本実施形態に係るプリンタ10の作用効果について説明する。
【0058】
本実施形態に係るプリンタ10は、ロール5を支持するロール支持部材40を回転操作可能なハンドル42を備えている。本実施形態では、ハンドル42は、ロール5の軸線方向視において、ロール支持部材40を支持する支持部材50よりもロール5の径方向の外方に張り出した部分を有している。かかる構成によれば、ハンドル42の操作によって、ロール支持部材40を容易に手動回転させることができる。特に、本実施形態では、ハンドル42の一部がロール5の軸線方向視において、支持部材50よりもロール5の径方向の外方に張り出している。そのため、支持部材50越しにもハンドル42の操作が可能であり、ロール支持部材40の手動回転操作が容易である。そのため、前述したように、例えばロール支持部材40を逆回転させてメディア5aの斜行を解消すること等が容易にできる。その他、例えば、ロール支持部材40をハンドル42で逆回転させてメディア5aの弛みを解消したり、最初にメディア5aを繰り出すときにロール支持部材40をハンドル42で正回転させたりすることもできる。なお、前述したように巻取装置90では、ロール支持部材93a、94aは巻取モータ95によって回転され、手動回転させることは想定されていない。そのため、巻取装置90のロール支持部材93a、94aにはハンドルが設けられていない。一方、メディア供給装置20にはモータが設けられていないため、ロール支持部材40を手動で操作する作業が多く行われる。そのため、ハンドル42により、ロール支持部材40を手動回転させる操作の作業性を向上させることができる。
【0059】
従来のプリンタでは、このようなハンドルが設けられていなかったため、ロールを手動で回転させたいときには、ロールを触ってロールそのものを回転させるか、または、操作可能な部位がロール支持部材にある場合(例えば、ロール支持部材のうちにロールの外部に露出している部位がある場合)には、ロール支持部材を支持する支持部材との干渉を避けながら当該部位を操作してロール支持部材を回転させていた。そのため、ロールを触って損傷または汚損するおそれを承知で、または、非常な労力を払って、ロール支持部材を回転させなければならなかった。本実施形態に係るプリンタ10によれば、そのような危険を犯したり非常な労力を払ったりすることなく、ハンドル42の支持部材50よりも外方に張り出した部分を操作することにより、ロール装着部41を容易に手動回転させることができる。
【0060】
本実施形態では、ロール支持部材40を回転可能に支持する支持部材50は、ロール支持部材40よりもロール5の軸線方向の外方に設けられており、ハンドル42は、支持部材50よりもロール5の軸線方向の内方に設けられている。かかる構成によれば、支持部材50よりもハンドル42がロール5の軸線方向内方に設けられているため、メディア供給装置20のロール5の軸線方向の長さを短くすることができる。本実施形態では、ロール支持部材40を回転可能に支持する支持部材50は、ロール支持部材40よりもロール5の軸線方向外方に設けられているため、ロール支持部材40にアクセスする際に支持部材50が障害となり得る。この場合であっても、ハンドル42の一部がロール5の軸線方向視において支持部材50よりもロール5の径方向の外方に張り出しているため、ハンドル42が支持部材50よりもロール5の軸線方向の内方に設けられているにもかかわらず、ハンドル42の操作が容易である。
【0061】
本実施形態では、ハンドル42は、ロール支持部材40の回転中心と中心が一致するような略円板状に構成されている。そのため、ロール支持部材40の径方向外方にあまり張り出さないようにハンドル42を構成でき、コンパクト化できる。例えば
図3に示すように、ロール支持部材40の近辺にはピンチローラレバー83などの部材が配置されるのが一般的であり、ロール支持部材40の近辺は、ハンドルを設けるスペースを確保しにくい。本実施形態では、ハンドル42をロール支持部材40の回転中心と中心が一致するような略円板状に構成してコンパクト化することにより、ハンドル42を設けるスペースを容易に確保できるようにしている。
【0062】
本実施形態では、ハンドル42は、略円形の外周部42aに形成されるとともに径方向の内方に向かって凹んだ凹部42bを備えている。凹部42bにより、ユーザーがハンドル42を把持しやすくなり、ハンドル42の操作性が向上する。
【0063】
本実施形態では、支持部材50は、ロール5の軸線方向視において略三角形に構成されている。そのため、ハンドル42のより多くの部分が支持部材50よりもロール5の径方向の外方に張り出している。それにより、ハンドル42が把持しやすくなっている。なお、本実施形態では、支持部材50は、その1頂点付近でハンドル42を支持するように構成されている。そのため、ハンドル42付近で支持部材50の前後方向の幅が小さく、ハンドル42のさらに多くの部分が支持部材50よりもロール5の径方向の外方に張り出している。
【0064】
本実施形態では、ロール支持部材40は、ロール5の端部がハンドル42に接することによりハンドル42の外周部42aを把持しにくくなるのを回避するため、段部41eを有している。ロール5の端部が段部41eの当てつけ面41fに当てつくことにより、ハンドル42とロール5との間に隙間が確保される。これにより、ハンドル42の外周部42aを把持しやすくなる。
【0065】
また、本実施形態に係るプリンタ10によれば、支持部材50は、第1ガイドパイプ71および第2ガイドパイプ72により、ロール5の軸線方向に摺動可能に支持されている。フィーダー30は、支持部材50と第1ガイドパイプ71とを摺動不能に固定する固定部60を備えている。固定部60は、回転する第1カム61を有し、第1カム61の回転によって支持部材50と第1ガイドパイプ71とを固定する。かかる構成によれば、支持部材50を第1ガイドパイプ71および第2ガイドパイプ72に沿って左右方向に移動させることにより、ロール5を支持するロール支持部材40の左右方向の位置をロール5の幅に合わせて変更することができる。また、第1カム61を回転させることにより、支持部材50およびロール支持部材40の左右方向の位置を容易に固定することができる。そのため、ロール5の幅に合わせてフィーダー30の位置を変更する作業を容易に行うことができる。
【0066】
上記フィーダー30の固定および固定解除操作は、第1カム61を回転させるだけの操作であるため、他の固定および固定解除操作、例えば、ネジを締めたり緩めたりする操作などと比較して非常に容易である。本実施形態に係るプリンタ10によれば、ロール5の幅に合わせてメディア供給装置20の設定を変更する操作を容易に行うことができる。なお、ロール5の幅に合わせてフィーダー93を移動させ固定することにより、巻取装置90の設定を変更してもよい。
【0067】
本実施形態に係る支持部材50は、より詳しくは、支持部材50をロール5の軸線方向と平行な方向(ここでは左右方向)に貫通する挿通孔52aを有している。挿通孔52aには、第1ガイドパイプ71が挿通されている。固定部60は、ここでは、回転する第1カム61と、第1ストッパ63とを備えている。第1ストッパ63は、第1カム61の回転位置に応じて挿通孔52a内に出現し、第1ガイドパイプ71に当接するように構成されている。かかる構成によれば、第1カム61を回転させることにより、挿通孔52a内に第1ストッパ63が出現した状態と、挿通孔52aの外側に第1ストッパ63が退避した状態とを切り替えることができる。そのため、第1ガイドパイプ71に沿ってフィーダー30を摺動させることが可能な状態と、フィーダー30が第1ガイドパイプ71に固定された状態とを切り替えることができる。
【0068】
本実施形態に係るプリンタ10では、第1ストッパ63は、弾性材料によって構成されている。かかる構成によれば、第1ストッパ63を挿通孔52a内に出現させると、第1ストッパ63が弾性変形する。そのため、第1ガイドパイプ71を傷つけることなく高い固定力を得ることができる。また、ストッパが変形しにくい材料によって構成されている場合には、ストッパ、カム、およびガイドパイプの寸法に高い精度が要求されるが、本実施形態では、第1ストッパ63が弾性材料によって構成されているため、第1ストッパ63、第1カム61、および第1ガイドパイプ71の寸法に高い精度が要求されない。そのため、固定部60を容易に構成することができる。なお、第1ストッパ63の材料は弾性材料であることが好ましいが、ゴムには限定されない。第2ストッパ64についても同様である。
【0069】
本実施形態では、固定部60は、第1カム61に連結され第1カム61を回転させるレバー65を備えている。そのため、第1カム61を回転させる操作がより容易となっている。レバー65は、支持部材50の外面に倣った形状を有しており、第1カム61のロック位置P1に対応する位置で支持部材50の外面に沿うように構成されている。かかる構成によれば、フィーダー30がロックされた状態においてレバー65が支持部材50の外面に沿うように配置されるため、レバー65が支持部材50よりも外部にはみ出す程度が小さい。そのため、ロック状態のフィーダー30をコンパクトなものとすることができる。
【0070】
本実施形態では、レバー65は、第1カム61のロック位置P1に対応する位置で支持部材50の外面に当接するように構成されている。第1カム61をロック位置P1に移動させるためには、支持部材50の外面に当接して動かせなくなるまでレバー65を操作するとよい。そのため、フィーダー30がロック状態になったことがユーザーに分かりやすい。例えば、フィーダーの固定のためにネジを締めるような構成では、固定後もネジを締め続けることが可能なため、フィーダーやガイドパイプを破損させるおそれがあるが、本実施形態に係るフィーダー30によれば、そのようなおそれも軽減できる。
【0071】
本実施形態では、固定部60は、第1カム61と共通の回転軸Ax周りに第1カム61と同期して回転する第2カム62を備えている。第2カム62は、ここでは、レバー65に連結されており、第1カム61とともに回転する。固定部60は、第2カム62の回転位置に応じて挿通孔52a内に出没する第2ストッパ64も備えている。第2ストッパ64は、第1ストッパ63と同期して挿通孔52a内に出現し、第1ガイドパイプ71に当接するように構成されている。かかる構成によれば、第1ストッパ63に加えて第2ストッパ64による固定力も働くため、フィーダー30の固定力を増加させることができる。また、第1カム61を操作するときと同じ操作によって第2カム62も回転し、これにより第2ストッパ64による固定力も働くため、フィーダー30の固定および固定解除動作が煩雑化しない。
【0072】
[他の実施形態]
以上、好適な一実施形態について説明した。しかし、ここに開示するプリンタは、上記した実施形態には限定されない。
【0073】
例えば、上記した実施形態では、ロール支持部材40を回転させるハンドル42は円板状の形状を有していたが、ハンドルの形状は限定されない。ハンドルは、例えば、ロール支持部材の径方向に放射状に延びる棒状の部材であってもよい。
【0074】
上記した実施形態では、ハンドル42は、ロール支持部材40を支持する支持部材50よりもロール5の軸線方向内方に配置されていた。しかし、ハンドルは、ロール支持部材を支持する支持部よりもロールの軸線方向外方に配置されていてもよい。ハンドルの位置は特に限定されない。
【0075】
また、上記した実施形態では、固定部60のカム61、62とレバー65とは一部品として構成され、カム61、62およびレバー65とストッパ63、64とは別部品として構成されていた。しかし、カム、ストッパ、およびレバーの構成は、これに限定されない。例えば、カムとストッパとは、一部品として構成されていてもよい。この場合、カムの突出部の先端がストッパとして機能してもよい。
【0076】
上記した実施形態では、ストッパ63、64は弾性材料によって構成されていたが、ストッパの材料は特に限定されない。
【0077】
上記した実施形態では、レバー65は、支持部材50の外形に倣うように、また、ロック状態において支持部材50に当てつくように構成されていた。しかし、レバーはカムを回転させることが可能なように構成されていればよく、その形状や配置は限定されない。例えば、レバーは、挿通孔の軸線と略平行に延びる回動軸周りに回動されなくてもよく、他の方向に回動されてもよい。カムも、挿通孔の軸線と略平行に延びる回転軸周りに回転されなくてもよく、他の方向に回転されてもよい。
【0078】
上記した実施形態では、カムとストッパとのセットは2セット設けられ、レバーは1つ設けられていたが、カムとストッパとのセットの数量も、レバーの数量も限定されない。
【0079】
フィーダーとガイドパイプとの固定および固定解除方式は、ストッパを挿通孔内に出没させる方式には限定されない。
図7は、他の態様のフィーダー130のアンロック状態を示す縦断面図である。
図8は、フィーダー130のロック状態を示す縦断面図である。
図7および
図8に示すように、他の態様に係るフィーダー130の支持部材150は、弾性変形することによって第1ガイドパイプ71を把持可能な把持部151を備えていてもよい。把持部151は、ロール5(
図5等を参照)の軸線方向に平行な方向(ここでは左右方向)に延び、周方向の一部が切れた、ロール5の軸線方向視においてC型の筒状に構成されている。筒状の把持部151の内部空間は、第1ガイドパイプ71が挿通される挿通孔152を構成している。
【0080】
C型筒状の把持部151の周方向の両端部(隙間151aを挟んで向かい合う両端部)には、それぞれ、把持部151の径方向外方に向かって突出した受力部153、154が設けられている。
図8に示すように、受力部153と154とを接近させるような力を受力部153、154が受けると、把持部151は、弾性変形し、第1ガイドパイプ71を把持する。
図7に示すように、かかる力を受力部153、154が受けていないときには、把持部151は、第1ガイドパイプ71を開放している。
【0081】
フィーダー130の固定部160は、偏心カム161を有しており、偏心カム161の回転によって把持部151を弾性変形させるように構成されている。固定部160は、これにより支持部材150と第1ガイドパイプ71とを固定する。偏心カム161は、一方の受力部153の隙間151a側の面の裏面(受力面153aと呼ぶ)に対面するように設けられている。
図7に示すように、偏心カム161は、回転軸Ax2からの距離が周方向の位置によって異なる偏心カムである。偏心カム161は、回転軸Ax2からの距離が他の部分よりも長い突出部161aを有している。
図7に示すように、偏心カム161のうち突出部161a以外の部位が受力面153aの方を向いているときには、偏心カム161と受力面153aとは離間している。このとき、把持部151は、第1ガイドパイプ71を開放している。
【0082】
図8に示すように、偏心カム161を回転させ、突出部161aを受力面153aの方に向けると、偏心カム161の突出部161aと受力面153aとは当接する。かかる状態において、偏心カム161の突出部161aは、一方の受力部153を他方の受力部154に接近させるように、受力面153aを押す。これにより、把持部151は、弾性変形し、第1ガイドパイプ71を把持する。その結果、支持部材150が第1ガイドパイプ71に摺動不能に固定される。フィーダーとガイドパイプとの固定および固定解除方式は、例えば、上記したような方式であってもよい。
【0083】
さらに、ここに開示する技術は、インクジェットプリンタだけでなく、シート状のメディアが巻回されたロールを支持するメディア支持装置を備えた他の装置にも利用することができる。例えば、ここに開示する技術は、メディアをカッターで所望の形状に切断するカッティング装置などに利用されてもよい。また、ここに開示する技術は、インクジェット方式以外のプリンタに適用されてもよい。
【符号の説明】
【0084】
5 ロール
5a メディア
10 インクジェットプリンタ(プリンタ)
16 プリントヘッド
20 メディア供給装置
40 ロール支持部材
42 ハンドル
42b 凹部
50 支持部材(回転支持部材)
90 巻取装置