(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022107946
(43)【公開日】2022-07-25
(54)【発明の名称】自律走行体
(51)【国際特許分類】
G05D 1/02 20200101AFI20220715BHJP
B60W 30/09 20120101ALI20220715BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20220715BHJP
G08G 1/00 20060101ALI20220715BHJP
【FI】
G05D1/02 S
B60W30/09
G08G1/16 C
G08G1/00 X
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021002668
(22)【出願日】2021-01-12
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】中田 翔
【テーマコード(参考)】
3D241
5H181
5H301
【Fターム(参考)】
3D241AB07
3D241AE02
3D241BA11
3D241BA32
3D241BA33
3D241CC03
3D241DB02Z
3D241DB20Z
3D241DC18Z
3D241DC20Z
3D241DC33Z
3D241DC39Z
3D241DC40Z
3D241DC42Z
3D241DC44Z
3D241DC49Z
5H181AA27
5H181CC03
5H181CC14
5H181LL01
5H181LL02
5H181LL04
5H181LL09
5H301GG08
5H301LL01
5H301LL06
5H301LL14
(57)【要約】
【課題】効率の良い回避動作を行うことができる自律走行体を提供する。
【解決手段】制御装置32は、センサ31の検出結果から車両の進行する経路の方向に拡がる探索領域内に障害物が存在する場合、障害物から、水平方向のうち進行方向に直交するX方向に、車両を回避させることが可能な複数の回避可能領域が存在するか否かを探索する。制御装置32は、複数の回避可能領域が存在すると判定された場合、回避可能領域を通って本来の走行経路に戻るために許容される速度により各回避可能領域を評価する。制御装置32は、複数の回避可能領域のうちの評価が高い回避可能領域を選択して当該回避可能領域を走行することで車両に回避行動を行わせる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行体と、
前記走行体に搭載されたセンサと、
前記センサの検出結果から前記走行体の進行する経路の方向に拡がる探索領域内に障害物が存在する場合、前記障害物から、水平方向のうち進行方向に交差する方向に、前記走行体を回避させることが可能な複数の回避可能領域が存在するか否かを探索する探索部と、
前記探索部により前記複数の回避可能領域が存在すると判定された場合、回避可能領域を通って本来の走行経路に戻るために許容される速度により各回避可能領域を評価する評価部と、
前記複数の回避可能領域のうちの前記評価部による評価が高い回避可能領域を選択して当該回避可能領域を走行することで前記走行体に回避行動を行わせる回避走行実行部と、
を備えることを特徴とする自律走行体。
【請求項2】
前記評価部は、前記回避可能領域の前記進行方向に交差する方向の幅、及び、自車から前記回避可能領域までの距離に基づいて前記許容される速度を決定する
ことを特徴とする請求項1に記載の自律走行体。
【請求項3】
前記評価部は、前記回避可能領域の前記進行方向に交差する方向の幅、自車から前記回避可能領域までの距離、及び、前記走行経路に戻るための経路中の速度制限領域での制限速度に基づいて前記許容される速度を決定する
ことを特徴とする請求項1に記載の自律走行体。
【請求項4】
前記評価部は、前記回避可能領域の前記進行方向に交差する方向の幅、自車から前記回避可能領域までの距離、及び、前記走行経路に戻るための経路が一時停止及び徐行の少なくとも一方を行う区間を含むことに基づいて前記許容される速度を決定する
ことを特徴とする請求項1に記載の自律走行体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自律走行体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示の自律走行体においては、車両に搭載したセンサの検出結果から車両の進行する経路の方向に拡がる探索領域内において、進行方向の左右に障害物から車両を回避させることが可能な回避可能領域が存在すると、車両から最も近い回避可能領域に向かうように回避行動を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、単に、車両から最も近い回避可能領域に向かうように回避行動を行うと、結果的に目的地までの到着時間が長くなる場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための自律走行体は、走行体と、前記走行体に搭載されたセンサと、前記センサの検出結果から前記走行体の進行する経路の方向に拡がる探索領域内に障害物が存在する場合、前記障害物から、水平方向のうち進行方向に交差する方向に、前記走行体を回避させることが可能な複数の回避可能領域が存在するか否かを探索する探索部と、前記探索部により前記複数の回避可能領域が存在すると判定された場合、回避可能領域を通って本来の走行経路に戻るために許容される速度により各回避可能領域を評価する評価部と、前記複数の回避可能領域のうちの前記評価部による評価が高い回避可能領域を選択して当該回避可能領域を走行することで前記走行体に回避行動を行わせる回避走行実行部と、を備えることを要旨とする。
【0006】
これによれば、回避可能領域を通って本来の走行経路に戻るために許容される速度により各回避可能領域が評価され、複数の回避可能領域のうちの評価が高い回避可能領域を選択して当該回避可能領域を走行することで、走行体の回避行動が行われる。
【0007】
よって、単に、車両から最も近い回避可能領域に向かうように回避行動を行う場合においては、例えば、回避可能領域の幅が狭い場合や、回避可能領域において速度が制限されている場合等でも走行体から近い方が選択されるため、結果的に目的地までの到着時間が長くなる場合があるのに対し、効率の良い回避動作を行うことができる。
【0008】
また、自律走行体において、前記評価部は、前記回避可能領域の前記進行方向に交差する方向の幅、及び、自車から前記回避可能領域までの距離に基づいて前記許容される速度を決定するとよい。
【0009】
また、自律走行体において、前記評価部は、前記回避可能領域の前記進行方向に交差する方向の幅、自車から前記回避可能領域までの距離、及び、前記走行経路に戻るための経路中の速度制限領域での制限速度に基づいて前記許容される速度を決定するとよい。
【0010】
また、自律走行体において、前記評価部は、前記回避可能領域の前記進行方向に交差する方向の幅、自車から前記回避可能領域までの距離、及び、前記走行経路に戻るための経路が一時停止及び徐行の少なくとも一方を行う区間を含むことに基づいて前記許容される速度を決定するとよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、効率の良い回避動作を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図4】回避可能領域を探索するときの処理を示す概略図。
【
図6】回避可能領域を探索するときの処理を示す概略図。
【
図8】回避可能領域を探索するときの処理を示す概略図。
【
図10】交差点制御を説明するためのタイムチャート。
【
図11】交差点制御を説明するためのタイムチャート。
【
図12】交差点制御を説明するためのタイムチャート。
【
図13】回避可能領域を探索するときの処理を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、自律走行体の一実施形態について説明する。
図1に示すように、自律走行体10は、車両20と、車両20に搭載されたセンサ31と、車両20に搭載された制御装置32と、を備える。車両20は、車体21と、複数の車輪22と、を備える。自律走行体10は、荷を搬送する搬送台車である。
【0014】
本実施形態の車輪22は、全方向移動車輪である。全方向移動車輪とは、車軸と一体となって回転することに加えて、車軸の軸線方向への移動を許容する車輪である。車輪22は、4つ設けられている。車輪22の回転数、及び、回転方向が制御されることで、車両20は、車体21の向きを維持した状態での全方向への移動、車体21の向きを変更しながらの移動、移動しない状態での車体21の向きの変更が可能である。なお、上記した「全方向」とは、車両20が走行する路面上や床面上での移動方向を示す。
【0015】
図2に示すように、自律走行体10は、車輪22を駆動させる駆動機構41を備える。駆動機構41は、車輪22を回転させるためのモータ42と、モータ42を駆動させるモータドライバ43と、を備える。なお、図示は省略するが、モータ42、及び、モータドライバ43は、車輪22の数と同数設けられる。モータドライバ43は、制御装置32からの指令に応じてモータ42の回転数を制御する。制御装置32は、モータドライバ43を介してモータ42の回転数を制御することで、車両20の進行方向を制御可能である。
【0016】
次に、センサ31、及び、制御装置32について詳細に説明する。
センサ31としては、制御装置32に障害物を検出させることが可能なものが用いられる。本実施形態のセンサ31は、レーザーレンジファインダである。レーザーレンジファインダは、レーザーを周辺に照射し、レーザーが当たった部分から反射された反射光を受信することで距離を測定する距離計である。本実施形態では、水平方向への照射角度を変更しながらレーザーを照射する二次元のレーザーレンジファインダが用いられている。
【0017】
レーザーが当たった部分を照射点とすると、センサ31は照射点までの距離を照射角度に対応付けて測定する。即ち、センサ31は、車両20と照射点との距離を示す相対座標を測定できる。本実施形態において、センサ31の水平方向へのレーザーの照射可能角度は270°である。
【0018】
図1に示すように、照射可能角度の中央を基準軸Bとすると、照射可能角度は基準軸B±135度の範囲である。センサ31によって測定される相対座標は、基準軸Bの延びる方向をY軸、Y軸に直交する方向をX軸とする直交座標系の座標である。
【0019】
図2に示すように、制御装置32は、CPU33と、RAM及びROM等からなる記憶部34と、を備える。記憶部34には、車両20を制御するための種々のプログラムが記憶されている。制御装置32は、各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行する専用のハードウェア、例えば、特定用途向け集積回路:ASICを備えていてもよい。制御装置32は、コンピュータプログラムに従って動作する1つ以上のプロセッサ、ASIC等の1つ以上の専用のハードウェア回路、あるいは、それらの組み合わせを含む回路として構成し得る。プロセッサは、CPU、並びに、RAM及びROM等のメモリを含む。メモリは、処理をCPUに実行させるように構成されたプログラムコードまたは指令を格納している。メモリ、即ち、コンピュータ可読媒体は、汎用または専用のコンピュータでアクセスできるあらゆるものを含む。
【0020】
図1に示すように、車両20を走行させる際には、制御装置32は、走行経路Rを生成する。走行経路Rは、車両20の出発点である現在位置から最終到達点までの経路である。なお、車両20が直進している場合、走行経路Rと基準軸Bとは同一方向を向く。
図1では、走行経路Rと基準軸Bとが重なり合っている。走行経路Rの生成方法としては、走行可能経路をグリッドマップ化して経路生成を行う方法や、ポテンシャル場を用いたポテンシャル法などを用いることができる。
【0021】
制御装置32は、車両20から所定距離離れた走行経路R上の位置を目標点Ptとし、目標点Ptに向けて走行するように駆動機構41を制御する。制御装置32は、センサ31の基準軸Bが車両20の進行方向を向くように車両20を走行させる。また、制御装置32は、車両20と障害物とが接触しないように、車両20と障害物との距離を所定値以上に保つ障害物回避処理を行う。
【0022】
制御装置32は、車両20の進行方向に存在する障害物を検出する。障害物の検出は、センサ31の検出結果から行われる。制御装置32は、センサ31の照射点のうちX座標とY座標が探索領域As内に存在する場合は、その照射点を障害物と識別し、障害物が存在すると判断する。
【0023】
探索領域Asは、長方形状の領域であり、X軸方向に延びる2つの長辺LS1,LS2のうち一方が車両20の所定位置Pcを通過し、他方が車両20よりも進行方向に位置する。探索領域Asは、車両20から車両20の進行する経路の方向に拡がる領域である。ここで、車両20の進行する経路の方向とは、設定された走行経路Rにおける車両20の進行する方向を指す。所定位置Pcは、車両20の任意の位置であり、予め定められた固定位置である。本実施形態では、車体21のY軸方向の中心であり、かつ、車体のX軸方向の中心である位置を所定位置Pcとしている。探索領域Asは、基準軸Bを軸として線対称となる領域である。
【0024】
探索領域AsのY軸方向の寸法は、車両20の進行する経路の方向に対して障害物の探索をどこまで行うかにより定められている。本実施形態では、所定位置Pcから目標点PtまでのY軸方向の距離を探索領域AsのY軸方向の寸法、即ち、探索領域Asの短辺SS1,SS2の寸法としている。探索領域AsのY軸方向の寸法は、例えば、障害物の検出から障害物を回避可能な位置まで車両20を移動させるのに要する時間等に応じて設定される。なお、障害物の回避に関して目標点Ptについては必ずしも長辺LS2上に設ける必要はなく、車両20の回避時の俊敏性と目標追従性を考慮して適宜位置をずらして設定させてもよい。
【0025】
探索領域AsのX軸方向の寸法は、車両20の進行する経路の方向に交差する方向に対して障害物の探索をどこまで行うかにより定められている。探索領域AsのX軸方向の寸法は、車両20が走行すると想定される場所によって異なり、部屋のレイアウトや、道路の幅等によって異なる。自律走行体10の走行する場所が予め定まっている場合、探索領域AsのX軸方向の寸法は、場所に応じて予め設定された固定値であってもよい。自律走行体10の走行する場所が定まっていない場合、制御装置32は、走行する場所に応じて探索領域AsのX軸方向の寸法を変更してもよい。
【0026】
次に、作用について説明する。
制御装置32は、
図3に示す障害物回避処理を実行する。この障害物回避処理は、車両20が走行している間、繰り返し行われる。
【0027】
制御装置32は、ステップS10において探索領域As内に障害物が存在するか否かを判定する。制御装置32は、
図1に示すように探索領域As内に障害物が存在しない場合、処理を終了する。
【0028】
制御装置32は、
図3のステップS10において、
図4に示すように探索領域As内に障害物O1,O2,O3が存在すると、
図3のステップS11に移行する。
制御装置32は、ステップS11において、障害物から、水平方向のうち進行方向に交差する方向であるX方向に、車両20を回避させることが可能な回避可能領域が存在するか否かを探索する。回避可能領域は、車両20が障害物とX軸方向に並んだときに、障害物との距離を所定値以上に保った状態で、Y軸方向に進行可能な空間である。つまり、障害物との距離を所定値以上に保った状態で障害物の横を通過することができる空間である。所定値は、センサ31の検出精度や、障害物が移動体である可能性を考慮した上で障害物と車両20との接触を抑止できる値に設定される。
【0029】
制御装置32は、探索領域As内で、障害物からX軸方向への寸法が閾値以上の空間を回避可能領域と判断する。閾値は、車両20と障害物との距離を所定値以上に保った状態で車両20が走行可能な寸法に基づき設定される。
【0030】
図4に示す例では、3つの障害物O1,O2,O3がX軸方向に並んでいる。中央の障害物(以下、中央障害物という)O1は、走行経路R上(基準軸B上)に位置し、中央障害物O1の右側に障害物(以下、右側障害物という)O2が位置し、中央障害物O1の左側に障害物(以下、左側障害物という)O3が位置している。中央障害物O1と右側障害物O2との間のX軸方向の幅(距離)W1は、閾値以上であり、中央障害物O1と右側障害物O2との間の空間が右側回避可能領域AA1となっている。中央障害物O1と左側障害物O3との間の幅(距離)W2は閾値以上であり、中央障害物O1と左側障害物O3との間の空間が左側回避可能領域AA2となっている。
【0031】
よって、
図4に示す例では、探索領域As内に、中央障害物O1と右側障害物O2との間に形成された右側回避可能領域AA1、及び、中央障害物O1と左側障害物O3との間に形成された左側回避可能領域AA2を有する。
【0032】
図4に示す例では、X方向における自車から右側回避可能領域AA1の中心までの距離がL1となっている。X方向における自車から左側回避可能領域AA2の中心までの距離がL2となっている。
【0033】
制御装置32は、
図3のステップS11において、探索領域As内に回避可能領域が存在しない場合には、終了する。また、制御装置32は、ステップS12で探索領域As内に複数の回避可能領域が存在するか否か判定する。制御装置32は、探索領域As内に1つのみ回避可能領域が存在する場合には、ステップS15に移行して当該回避可能領域を走行するように変更することで回避行動を行う。
【0034】
制御装置32は、ステップS12において探索領域As内に複数の回避可能領域が存在する場合(
図4、
図6、
図8参照)、ステップS13の処理を行う。
制御装置32は、ステップS13において各回避可能領域について回避可能領域を通って本来の走行経路に戻るために許容される速度により各回避可能領域を評価すべく平均走行速度を算出する。即ち、複数の回避可能領域が存在すると判定された場合、平均走行速度(回避可能領域を通って本来の走行経路に戻るために許容される速度)を評価値として各回避可能領域を評価する。
【0035】
図5は、
図4に示す例の場合に使用される条件と評価についての表である。
図5において、条件として回避可能領域の幅W及び自車から回避可能領域までのX方向での距離Lである。この条件(W値、L値)毎に評価として平均走行速度が規定されている。例えば、W=0.8m、L=0.1mのとき、平均走行速度が3km/hである。W=0.8m、L=0.2mのとき、平均走行速度が2km/hである。W=0.8m、L=0.3mのとき、平均走行速度が1.5km/hである。
【0036】
また、W=1.2m、L=0.1mのとき、平均走行速度が7km/hである。W=1.2m、L=0.2mのとき、平均走行速度が6km/hである。W=1.2m、L=0.3mのとき、平均走行速度が5km/hである。
【0037】
このように、制御装置32は、回避可能領域の進行方向に交差する方向の幅W、及び、自車から回避可能領域までの距離Lに基づいて平均走行速度(回避可能領域を通って本来の走行経路に戻るために許容される速度)を決定する。平均走行速度が大きいほど評価が高い。
【0038】
図4の例では、右側回避可能領域AA1は、W1=0.8m、L1=0.1mであり、
図5に示すように右側回避可能領域AA1における平均走行速度が3km/hである。また、
図4の例では、左側回避可能領域AA2は、W2=1.2m、L2=0.3mであり、
図5に示すように、左側回避可能領域AA2における平均走行速度が5km/hである。よって、左側回避可能領域AA2の方が右側回避可能領域AA1よりも平均走行速度が大きく、評価が高い。
【0039】
制御装置32は、
図3のステップS14において評価が高い回避可能領域を選択する。例えば、
図4の例においては平均走行速度が大きい左側回避可能領域AA2を評価が高い回避可能領域として選択する。つまり、右側回避可能領域AA1が自車から近いが幅Wが狭いため平均走行速度が遅い。そのため左側回避可能領域AA2が選択される。
【0040】
図4に代わり
図6の場合には次のようになる。
図6の場合には、
図5に代わり
図7に示す条件と評価についての表が使用される。
図6の場合においては、中央障害物O1と左側障害物O3との間の左側回避可能領域AA2においては1km/hの速度制限領域となっている。これより、
図7のW=1.2m、L=0.3mのとき、平均走行速度が5km/hではなく、速度制限領域により最終的に平均走行速度が1km/hにされている。
【0041】
このように、制御装置32は、回避可能領域の進行方向に交差する方向の幅W、自車から回避可能領域までの距離L、及び、走行経路に戻るための経路中の速度制限領域での制限速度に基づいて、平均走行速度(回避可能領域を通って本来の走行経路に戻るために許容される速度)を決定する。
【0042】
図6の例では、右側回避可能領域AA1は、W1=0.8m、L1=0.1mであり、
図7に示すように右側回避可能領域AA1における平均走行速度が3km/hである。また、
図6の例では、左側回避可能領域AA2は、W2=1.2m、L2=0.3mであり、
図7に示すように、左側回避可能領域AA2における平均走行速度が1km/hである。よって、右側回避可能領域AA1の方が左側回避可能領域AA2よりも平均走行速度が大きく、評価が高い。
【0043】
よって、制御装置32は、
図3のステップS14において評価が高い回避可能領域を選択する際に、
図6の例においては平均走行速度が大きい右側回避可能領域AA1を評価が高い回避可能領域として選択する。
【0044】
図4に代わり
図8の場合には次のようになる。
図8の場合には、
図5に代わり
図9に示す条件と評価についての表が使用される。
図8の場合においては、中央障害物O1と左側障害物O3との間の左側回避可能領域AA2においては一時停止標識Mstが設置されており、路面には停止線Lstが描画されている。これより、
図10に示すように、t1のタイミングで減速を開始し、t2のタイミングで停止し、t2~t3を一時停止期間とする。t3のタイミングで加速を開始し、t4~t5を低速走行する徐行期間とする。t5で加速を開始してt6以降において通常走行速度で走行する。
【0045】
これより、
図9のW=1.2m、L=0.3mのとき、平均走行速度が5km/hではなく、交差点制御の動作により平均走行速度が2km/hまで減少されている。
このように、制御装置32は、一時停止標識Mstによる交差点制御区間を含むと、回避可能領域の進行方向に交差する方向の幅W、自車から回避可能領域までの距離L、及び、走行経路に戻るための経路が一時停止する区間を含むことに基づいて、平均走行速度(回避可能領域を通って本来の走行経路に戻るために許容される速度)を決定する。
【0046】
図8の例では、右側回避可能領域AA1は、W1=0.8m、L1=0.1mであり、
図9に示すように右側回避可能領域AA1における平均走行速度が3km/hである。また、
図8の例では、左側回避可能領域AA2は、W2=1.2m、L2=0.3mであり、
図9に示すように、左側回避可能領域AA2における平均走行速度が2km/hである。よって、右側回避可能領域AA1の方が左側回避可能領域AA2よりも平均走行速度が大きく、評価が高い。
【0047】
よって、制御装置32は、
図3のステップS14において評価が高い回避可能領域を選択する際に、
図8の例においては平均走行速度が大きい右側回避可能領域AA1を評価が高い回避可能領域として選択する。
【0048】
図5,7,9に示す表は、記憶部34に記憶されており、少なくとも、回避可能領域の幅W、自車から回避可能領域までのX方向での距離Lから平均走行速度が決定されている。探索領域Asは広さ(大きさ)が限られた領域であり、障害物O1,O2,O3が奥行き方向(進行方向前方)に延在していた場合、いつまで回避走行するのか決められない。即ち、どれぐらいの時間走行すれば障害物を回避できるのか分からない。障害物O1,O2,O3が奥行き方向(進行方向前方)に長く延在していた場合、より長距離にわたり、より長い時間回避走行する必要がある。よって、走行速度が大きければ早い時間に到達できる可能性があるという考え方の下に平均走行速度で評価している。即ち、平均走行速度が大きい場合は、通過できる時間が短くなる可能性がある。
【0049】
地図には、障害物(静止物、人等の動体)は無い状態における走行できる経路が記憶されている。速度制限領域であること、交差点の手前であること等は、地図情報として持っている。地図上には障害物が無く、障害物はセンサ31で検出される。平均走行速度での車両20の走行を、
図4,6,8において白抜きの矢印でその向きを表している。平均走行速度としたのは、例えば、
図4において左側回避可能領域AA2の中央に近づく直線走行、障害物O1,O3間を通り抜ける直線走行、及び、元の走行経路Rに戻るための直線走行は比較的高速走行可能であり、これら直線走行の間の旋回走行は低速走行となる。この一連の走行での平均の速度が平均走行速度となる。
【0050】
図10では、交差点制御として一時停止後に徐行する場合であったが、
図11に示すように一時停止のみ行う場合、即ち、t10のタイミングで減速を開始し、t11のタイミングで停止し、t11~t12を一時停止期間とする。t12のタイミングで加速を開始してt13以降において通常走行速度で走行する。また、
図12に示すように徐行のみ行う場合、即ち、t20のタイミングで減速を開始し、t21~t22を低速走行する徐行期間とする。t22のタイミングで加速を開始してt23以降において通常走行速度で走行する。要は、走行経路に戻るための経路が一時停止及び徐行の少なくとも一方を行う区間を含むことに基づいて許容される速度を決定する。
【0051】
図3のステップS14で評価の高い領域を選択した後において、ステップS15において制御装置32は複数の回避可能領域のうちの評価が高い回避可能領域を走行することで車両20に回避行動を行わせる。つまり、回避可能領域に向けて移動するように車両20を制御する。
【0052】
回避行動を行う際には、車両20の進行方向と走行経路Rの延びる方向とが一致しなくなり、車両20の進行方向は走行経路Rの延びる方向に対して傾くことになる。制御装置32は、走行経路Rの向きに合わせて、探索領域Asの向きを変更する。
【0053】
図3に示すように、制御装置32は、ステップS15の処理を終えると、ステップS16において走行経路Rに車両20を戻し、処理を終了する。詳細にいえば、ステップS15で回避行動が行われている場合には、制御装置32は、走行経路R上に車両20が戻るように駆動機構41を制御する。これにより、車両20のX座標は、走行経路RのX座標に近付いていき、車両20は走行経路Rに戻る。また、回避行動が行われていない場合には、車両20が走行経路R上を走行している状態を維持する。
【0054】
このように、
図4~
図12を用いて説明したように、回避可能領域を選択するとき、回避可能領域の幅Wの大きさ、回避可能領域の自車から回避可能領域までの距離L、速度が変化する領域(速度制限領域、一時停止する交差点)等を考慮する。そして、それぞれ回避可能領域を通過するための平均走行速度を評価値として算出し、回避時に最も走行速度が大きい回避可能領域を選択することで、効率の良い回避動作を行うことができる。
【0055】
例えば、
図4、
図5を用いて説明したように、回避可能領域の大きさ(幅W)による回避可能領域を選択する場合として、
図4の右側の狭い回避可能領域AA1が自車から近いが、回避可能領域AA1が狭いため通過速度が遅い。
【0056】
ここで、一般的な走行制御として進行方向の前方に障害物が存在すると減速する、また、直前に障害物が存在すると停止する制御が行われるが、このような制御において、狭い空間を通過するとき速度が低くなる傾向がある。また、
図5の表は事前に算出しているが、W値、L値を条件として平均走行速度を求める関係性を式で表現可能の場合、リアルタイムの計算でもよい。この場合、
図5では、平均走行速度は非連続な値であったが、補間して平均走行速度を連続した値として得ることが可能となる。
【0057】
図6、
図7を用いて説明したように、速度制限領域による回避可能領域を選択する場合、
図4の左側回避可能領域AA2は
図5では最も評価が高かったが、
図6のように速度制限領域にある場合、平均走行速度が下がる。したがって、広くても走行速度が上がらないため、
図6の右側の狭い回避可能領域AA1を通過したほうが時間効率が上がる。
【0058】
図8、
図9を用いて説明したように、交差点制御が必要な場合、その場で一時停止し、一定時間徐行してから、走行を再開する制御を行う。一時停止するので、両側に障害物O1,O3が置かれて左右が見づらくなっている場合、即ち、地図上に描かれた停止線Lst上に障害物O1,O3が置かれている状況下において、停止線Lstの前方側が歩道となっており、急な飛び出しを防止するため徐行が必要となる。
図4の左側回避可能領域AA2は
図5では最も評価高かったが、一時停止が必要である場合、平均走行速度が下がる。したがって、広くても速度が上がらないため、右側の狭い回避可能領域AA1を通過したほうが時間効率が上がる。
【0059】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)自律走行体10の構成として、走行体としての車両20と、車両20に搭載されたセンサ31と、制御装置32を備える。探索部としての制御装置32は、センサ31の検出結果から車両20の進行する経路の方向に拡がる探索領域As内に障害物O1,O2,O3が存在する場合、次のようにする。制御装置32は、障害物O1,O2,O3から、水平方向のうち進行方向に直交するX方向(広義には、水平方向のうち進行方向に交差する方向)に、車両20を回避させることが可能な複数の回避可能領域AA1,AA2が存在するか否かを探索する。評価部としての制御装置32は、複数の回避可能領域AA1,AA2が存在すると判定された場合、回避可能領域AA1,AA2を通って本来の走行経路に戻るために許容される速度としての平均走行速度により各回避可能領域AA1,AA2を評価する。回避走行実行部としての制御装置32は、複数の回避可能領域のうちの評価が高い回避可能領域を選択して当該回避可能領域を走行することで車両20に回避行動を行わせる。
【0060】
これによれば、回避可能領域AA1,AA2を通って本来の走行経路に戻るために許容される速度としての平均走行速度により回避可能領域AA1,AA2が評価され、複数の回避可能領域のうちの評価が高い回避可能領域を選択して当該回避可能領域を走行することで、車両20の回避行動が行われる。
【0061】
よって、単に、車両から最も近い回避可能領域に向かうように回避行動を行う場合においては、回避可能領域の幅が狭い場合や、回避可能領域において速度が制限されている場合でも車両から近い方が選択されるため、結果的に目的地までの到着時間が長くなる場合があるのに対し、効率の良い回避動作を行うことができる。
【0062】
(2)具体的には、評価部としての制御装置32は、回避可能領域の進行方向に交差する方向の幅W、及び、自車から回避可能領域までの距離Lに基づいて許容される速度としての平均走行速度を決定する。あるいは、評価部としての制御装置32は、回避可能領域の進行方向に交差する方向の幅W、自車から回避可能領域までの距離L、及び、走行経路に戻るための経路中の速度制限領域での制限速度に基づいて許容される速度としての平均走行速度を決定する。あるいは、評価部としての制御装置32は、回避可能領域の進行方向に交差する方向の幅W、自車から回避可能領域までの距離L、及び、走行経路に戻るための経路が一時停止及び徐行の少なくとも一方を行う区間を含むことに基づいて許容される速度としての平均走行速度を決定する。これにより各種の場合に対応できる。
【0063】
実施形態は前記に限定されるものではなく、例えば、次のように具体化してもよい。
○走行路が砂利道であるとタイヤが食い込んで速度が出にくい。これを考慮して道路の状況(砂利道など)に応じて判定条件を増やして平均走行速度を低くしてもよい。砂利道の検出は専用のセンサでも地図情報として得ることは可能である。これにより、砂利道に回避し、遅くなる場合を改善できる。
【0064】
○静止物か動体(人間等)を判定して回避可能領域両側の障害物の種類を考慮して回避可能領域を選択してもよい。例えば、人が回避可能領域を狭くするように歩く状況下において、人の向いている方向の回避可能領域は今後狭くなり、平均走行速度が遅くなるので、これを考慮して平均走行速度を下げるようにすることで改善できる。なお、障害物の種類は、レーザセンサであるセンサ31を用いて検知でき、センサ31で人の足の向きも検知できる。
【0065】
○
図3に示す障害物回避処理は車両20が走行している間において繰り返し行われるが、前回の処理において障害物の奥行きが長い等を考慮して前回の処理結果を今回の処理に反映させてもよい。即ち、以前の通過状況も反映させてもよい。これにより、1回目の評価(計算)の誤差を改善できる。前回の走行において走行の状況が分かっている場合(例えば通過時間が長かった場合)は2回目の走行である今回の走行において、表による平均走行速度よりも遅くなることが分かっているならば、前回の平均走行速度を反映して他の経路の方が速い場合は今回の走行は他の経路を選択する。例えば、障害物が前方(奥行き方向)に長い場合は有用である。
【0066】
また、
図5等の評価表について過去の実際の走行の際のデータを使ってディープラーニングなどを用いて表の値を更新していくことにより理論的に計算した表を実際の環境に合ったものに調整してもよい。これにより、工場などの実際の外乱(例えば、砂利道走行)による影響を反映できる。
【0067】
〇自車から回避可能領域までの距離として回避可能領域の中心までの距離を例として示したが、中心には限らず、近い方の障害物から所定の距離離れた場所としてもよい。例えば
図4に代わる
図13において、回避可能領域AA1,AA2について障害物O1からそれぞれ1m離れた場所P10,P11までの距離α,βを回避可能領域までの距離としてもよい。
【0068】
○センサ31として、ステレオカメラを用いてもよい。ステレオカメラは、複数のカメラによって周辺環境を撮像することで得られた視差画像から周辺環境を制御装置32に認識させる。視差画像は、同一の特徴点について複数のカメラによって撮像を行った場合に、カメラ間で生じる画素差を示すものである。特徴点は、物体のエッジなど視差が得られる部分である。制御装置32は、視差画像から特徴点までの距離を測定できる。制御装置32は、特徴点の集合である点群から障害物を検出することができる。
【0069】
○センサ31としては、超音波を照射することで距離を測定する超音波センサを用いてもよい。
○車輪22は、全方向移動車輪以外の車輪、即ち、車輪22の回転軸線方向への移動を許容しない車輪であってもよい。この場合、車輪を2つとし、2つの車輪の回転速度を異ならせることで操舵を行う二輪速度差制御により車両20の進行方向を変更してもよい。あるいは、車輪毎に個別の操舵機構を設けて、車輪毎に個別の操舵を行うことで進行方向を変更可能としてもよい。
【0070】
○自律走行体10は、荷を搬送する搬送台車に限られず、自律掃除機などでもよい。
○走行体としては、車輪で走行する車両に限られず、例えば、多足歩行方式の走行体であってもよい。
【符号の説明】
【0071】
10…自律走行体、20…車両、31…センサ、32…制御装置、As…探索領域、AA1,AA2…回避可能領域、L…距離、O1,O2,O3…障害物、R…走行経路、W…幅。