(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022108047
(43)【公開日】2022-07-25
(54)【発明の名称】回転機能付照準器
(51)【国際特許分類】
F41G 1/41 20060101AFI20220715BHJP
【FI】
F41G1/41
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021002844
(22)【出願日】2021-01-12
(71)【出願人】
【識別番号】521017527
【氏名又は名称】福島 忠相
(74)【代理人】
【識別番号】100127166
【弁理士】
【氏名又は名称】本間 政憲
(74)【代理人】
【識別番号】100187399
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 敏文
(72)【発明者】
【氏名】福島 忠相
(57)【要約】 (修正有)
【課題】本発明は、小火器に装着する照準器において、銃身とターゲットを結ぶ軸線を中心に小火器を回転させて使用する際に、照準器の視野やレティクルを常に一定に保持されるように回転制御する回転機能付照準器を提供する。
【解決手段】本発明の回転機能付照準器10は、小火器に装着して目標物に狙いを定める照準器12において、マウント嵌合部16と、銃口内を銃身方向に貫く中心軸線と並行する回転軸と、該回転軸に軸着されたモータ20と、該モータの回転制御を行うモータ駆動制御部14と、を備え、前記照準器と前記マウント嵌合部とが、銃口内を銃身方向に貫く中心軸線真上の位置を避けて配置された回転軸によって回転自在に結合されたこと、を特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
小火器に装着して目標物に狙いを定める照準器において、
マウント嵌合部と、
銃口内を銃身方向に貫く中心軸線と並行する回転軸と、
該回転軸に軸着されたモータと、
該モータの回転制御を行うモータ駆動制御部と、
を備え、
前記照準器と前記マウント嵌合部とが、
銃口内を銃身方向に貫く中心軸線真上の位置を避けて配置された前記回転軸によって回転自在に結合されたこと、
を特徴とする回転機能付照準器。
【請求項2】
前記モータ駆動制御部が、
前記照準器の水平保持機能を備えたこと、
を特徴とする請求項1に記載する回転機能付照準器。
【請求項3】
前記照準器が、
光学照準器である場合において、
前記マウント嵌合部の天板のいずれか一方端と、
前記光学照準器の最下部かつ銃口内を銃身方向に貫く中心軸線に並行するいずれか一方の辺と、
を前記回転軸によって結合させたこと、
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載する回転機能付き照準器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小火器に装着する照準器において、銃身と標的を結ぶ軸線を中心に小火器を回転させて使用する際に、照準器の視野やレティクルが常に一定に保持されるように照準器を回転制御する分野に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、小火器には射手が標的に狙いを定めるために照準器が装備されている。小火器は、一人で持ち運びかつ操作が可能なものをいい、具合的には、拳銃、小銃、短機関銃、ショットガン、自動小銃などを指す。最も単純な照準器は、拳銃にも装備されているアイアンサイトと呼ばれる銃口近傍に凸型の照星、銃身根元に凹型の照門を備えた金属製の照準器である。射手は、照門の凹の中心に照星の凸を合わせて狙いを定める。
【0003】
最近では、オプティカルサイトと呼ばれる光学照準器が採用されるようになり、照準精度が向上した。オプティカルサイトは、望遠機能、暗視機能を有するものや、レーザ光を直接標的に当てて狙うもの、LEDを発光させ、照準用の光像を点(ドット)状に生成し、ドットを標的に一致させることによって照準を合わせるドットサイトと呼ばれるものがある。これらを組み合わせて使用する場合もある。
【0004】
従来、照準器の小火器への装着は、前述したように小火器本体に固定されるか、専用のマウントを用いて行われていた。
【0005】
最近では、標準化された汎用マウントが用いられ付属装置を着脱可能なように取り付けられるようになっている。代表例は、ピカティニー・レールと呼ばれるもので、照準器以外の付属装置も取り付けることが可能である。
【0006】
マウントには、望遠機能を備えた長距離用照準器とドットサイトのような短距離用照準器の二種類の照準器を装着する場合も多く見られる。しかし、マウントに二個の照準器を装着すると、一列に並ぶため一方の照準器が邪魔になる。そこで、通常は長距離用照準器が可倒機構を備えているか、又は短距離用照準器が予め角度を変えて他方の照準器の妨げにならないように装着されている。
【0007】
図10は、二種類の照準器を小火器130に装着した従来技術について示した。短距離用照準器110のドットサイトは、銃口内を銃身方向に貫く中心軸線(以下、銃身中心軸線GCLという。)周りに予め回転させて小火器130の銃口側に装着し固定させた。もう一つの照準器は、望遠機能を備えた長距離用照準器112を銃身の根元近くに装着し固定させた。照準器は、短距離用又は長距離用にかかわらず「ゼロイン」と呼ばれる着弾点の調整が必要となる。「ゼロイン」調整とは、弾道の放物線を見込んだ仰角と、銃の特性などを見込んだ方位角とを、照準器に設けられたダイヤル等によって調整し照準を補正するものである。
【0008】
特許文献1には、銃器においてアイアンサイトの照星と照門がオプティカルサイトの光学系と一直線に並ぶ位置と銃身の周りを回動して移動するシステムが開示されている。オプティカルサイトとアイアンサイトが一直線に並ぶ場合には、アイアンサイトがバックアップ照準器として働く。オプティカルサイトのレンズが破損するなど故障した際には、アイアンサイトを回動させてオプティカルサイトの光学系から外して使用することができる。
【0009】
特許文献2は、マウントに複数の付属装置が取り付けられた際に、一方の付属装置を銃身の周りを回動して倒すことができるマウントが開示されている。当該文献では、銃身上面の前方に装着された照準器を補助するために、照準器の後方に補助装置を装着しておき、補助装置が必要ない場合に銃身の周りを回動させて退避しておくというものである。
【0010】
ところで、小火器は常時照準器を鉛直方向に直立した状態を保持したまま使用できるわけではない。射手の体勢によっては小火器とともに照準器を銃身中心軸線周りに回転させて使用する場合が発生する。小火器を常に鉛直方向に保持して使用する場合には照準器は一個でよいが、小火器を回転させて使用する場合には照準器の視野又はレクティルが傾斜し照準の精度が低下することになるので、小火器を回転させた際に鉛直方向に直立させる照準器が別途必要となる。その際には、照準器は小火器に複数個装着されることになる。前述の特許文献1又は特許文献2の場合は、長距離と短距離によって照準器を使い分ける、又は補助装置として暗視装置を取り付けて必要又は不必要に応じて退避させておくものであるが、同様の機構を用いて同種の照準器、例えばドットサイトを鉛直方向と、鉛直方向から銃身中心軸線周りに回転傾斜させて装着し、射手の異なる照準体勢に対応するようにした小火器が見られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】US2018/0180386A1公報
【特許文献2】US2006/0162227A1公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、照準器を複数個備えることは、小火器の重量が嵩むことになる問題がある。一方、特許文献1又は特許文献2の銃身中心軸線周りに回転傾斜する機構を用いると、照準器は1個で済むが、所定の二種類の角度で停止させて使用することができるのみで、銃身を回転させる角度が限定され、それ以外の角度に銃身を回転させた場合には照準を標的に合わせることができない問題がある。また、特許文献1又は特許文献2で示された回転機構はいずれも手動であるため、迅速に照準を合わせることができない問題がある。
【0013】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、小火器に装着する照準器において、銃身とターゲットを結ぶ軸線を中心に小火器を回転させて使用する際に、照準器の視野やレティクルを常に一定に保持されるように回転制御する回転機能付照準器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため、本発明の回転機能付照準器は、小火器に装着して目標物に狙いを定める照準器において、マウント嵌合部と、銃口内を銃身方向に貫く中心軸線(銃身中心軸線)と並行する回転軸と、該回転軸に軸着されたモータと、該モータの回転制御を行うモータ駆動制御部と、を備え、前記照準器と前記マウント嵌合部とが、銃口内を銃身方向に貫く中心軸線(銃身中心軸線)真上の位置を避けて配置された前記回転軸によって回転自在に結合されたこと、を特徴とする
【0015】
また、本発明の回転機能付照準器は、前記モータ駆動制御部が、前記照準器の水平保持機能を備えたこと、を特徴とする。
【0016】
また、本発明の回転機能付照準器は、前記照準器が、光学照準器である場合において、前記マウント嵌合部の天板のいずれか一方端と、前記光学照準器の最下部かつ銃口内を銃身方向に貫く中心軸線に並行するいずれか一方の辺と、を前記回転軸によって結合させたこと、を特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
従来射手が体勢を変え、小火器を銃身中心軸線周りに回転させて使用する際には、照準器が所定の角度に回動する機構で二種類の角度に対応するか、又は照準器が複数個必要であったが、本発明に係る回転機能付照準器によれば、モータを制御し照準器を無段階に角度を調整して回転することで照準器は単独で済む効果を奏する。また、射手はどのような体勢でも照準器の視野が広い状態で標的を捕らえることができ、小火器の操作性が向上する効果を奏する。
【0018】
照準器は、銃身から離れるほど照準精度が低下することが知られている。本発明に係る回転機能付照準器によれば、モータが照準器の筐体と重ならない位置に回転軸を配置することにより、照準器を銃身に十分に近づけることができ、照準精度が向上する効果を奏する。
【0019】
本発明に係る回転機能付照準器によれば、小火器の銃身中心軸線周りの回転に際して照準器を常に鉛直方向に対して直立させることで、照準器内の視野を一定に保つことができ、又は、レティクルを水平に保持することができ、標的を捉えるまでの時間が短縮できる効果を奏する。
【0020】
本発明に係る回転機能付照準器によれば、照準器を銃身中心軸線GCL真上から並行を保持したまま、照準器の銃身方向の中心線(以下、照準器中心線SCLという。)が外れる位置、すなわち正面視における照準器の中心線FSCL及び銃身の中心線FGCLが一致しない位置に配置できるように照準器下端部の銃身方向の一方端の辺に回転軸を配置することによって、照準器を銃身中心軸線GCL真上に照準器中心線SCLが重なるように配置した際と比較して照準器の回転角の範囲を大きくすることができる効果を奏する。また、照準器を時計回り及び反時計回りの両方に回転させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明に係る回転機能付照準器10の斜視図である。
【
図2】本発明に係る回転機能付照準器10の平面図である。
【
図3】本発明に係る回転機能付照準器10を小火器30に装着する際の組立図である。
【
図4】本発明に係る回転機能付照準器10が装着された小火器30を示した図である。
【
図5】本発明に係る回転機能付照準器10が装着された小火器30を銃身中心軸線GCL周りに回転させた状態を示した図である。
【
図6A】本発明に係る回転機能付照準器10の台座126がマウント嵌合部16の天板162に着地した状態を示した正面図である。
【
図6B】本発明に係る回転機能付照準器10の台座126がマウント嵌合部16の天板162を離れて、回転軸18を中心に照準器12が回転している状態を示した正面図である。
【
図7】本発明に係る回転機能付照準器10のモータ駆動制御部14のブロック図である。
【
図8】本発明に係る回転機能付照準器10の制御フローチャートである。
【
図9A】本発明に係る回転機能付照準器において、回転軸18の位置を変更した実施例である。
【
図9B】
図9Aの実施例において、照準器12を原点から反時計方向に回転させた状態を示した図である。
【
図9C】
図9Aの実施例において、照準器12を原点から時計回りに回転させた状態を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明に係る回転機能付照準器10を実施するための形態について、図を参照しつつ説明する。
【0023】
図1は、本発明に係る回転機能付照準器10の斜視図である。
図2は、本発明に係る回転機能付照準器10の平面図である。
図3は、本発明に係る回転機能付照準器10を小火器30に装着する際の組立図である。回転機能付照準器10は、小火器30に装着して目標物に狙いを定めるために使用される。回転機能付照準器10は、マウント嵌合部16と、銃身中心軸線GCLと並行する回転軸18と、回転軸18に軸着されたモータ20と、モータ20の回転制御を行うモータ駆動制御部14と、を備える。
【0024】
回転機能付照準器10に用いられる照準器は、オプティカルサイトであっても、アイアンサイトであってもよいが、固定されたオプティカルサイトは、銃身中心軸線GCL周りに小火器30を回転させた場合には、視野やレティクルが変化するため、特にオプティカルサイトを使用する場合に本発明に係る回転機能付照準器10を使用すると有効である。
図1及び
図2では、オプティカルサイトのうち、ドットサイトと呼ばれる照準器12を示した。ドットサイト正面下部にはドットサイトの機能を利用するための操作を行う操作パネル122を備える。しかし、本発明に使用する照準器は、ドットサイトに限定されることはなく、望遠機能を有するスコープ型の長距離用照準器であってもよい。
【0025】
マウント嵌合部16は、
図3に示す小火器30に設けられたマウント32とワンタッチで嵌合が可能な形状に形成され、銃身に頑丈に固定するための締結部材やクランプ、キャッチクリップなど(不図示)が備えられている。マウント嵌合部16の形状は、汎用マウントであるピカティニー・レールに装着可能なように形成されるが、その他に存在するマウントの形状に合わせた嵌合部の形状を用意することもできる。
【0026】
モータ20と軸着した回転軸18とは、銃身中心軸線GCLと回転軸線RAを同一方向に向けて配置され、照準器12とマウント嵌合部16とを回転自在に結合されている。回転機能付照準器10の小型化を図るため、かつ、照準器12を可能な限り銃身に近づけて照準精度を向上させるために、照準器12はマウント嵌合部16の天板162の真上であって銃身の真上に配置させること、すなわち正面視における照準器の中心線FSCL及び銃身の中心線FGCLが一致する位置(
図6Aを参照)に配置させることが特に好適である。
図2は、照準器中心線SCL及び銃身中心軸線GCLが平面視において一致している状態である。
【0027】
回転軸18を照準器中心線SCL真下の位置、すなわち銃身中心軸線GCL真上の位置に配置した場合には、モータ20によって照準器12の視野又は操作パネル122が遮られない高さに照準器12を嵩上げして配置する必要があり、小型化及び照準精度の向上が実現できない、
【0028】
そこで、本発明の回転機能付照準器10では、
図2で示したように回転軸18を照準器中心線SCL及び銃身中心軸線GCLの鉛直方向から離隔した位置に配置する。本実施の形態において、通常の形態は、照準器中心線SCL及び銃身中心軸線GCLは、平面視において一致させて、照準器12を小火器30に装着するのであるが、その際、
図2に示したように回転軸18は照準器中心線SCL及び銃身中心軸線GCLに対して並行を維持して離隔させ、モータ20本体が照準器12の視野や操作パネル122の使用に邪魔にならない位置に配置する。これにより、照準器12は可能な限り鉛直下方向に下げて銃身に近づけることができる。これにより、照準器12の照準精度や操作性を向上させることができる。
【0029】
図1、
図2及び
図3では、銃身根元側から銃口の方向を見た場合、マウント嵌合部16の天板162右端部と、照準器12の右下端部の銃身方向の辺において結合を行うように回転軸18を配置した。
【0030】
モータ20は、マウント嵌合部16に設けられたモータ取付部166に締結部材や接着剤などで固定されて回転軸18に軸着される。
【0031】
回転軸18は、正面視においてマウント嵌合部16の天板162右端部の銃身方向の前後二箇所に間隔を開けて配設されたマウント嵌合部回転結合部164の貫通孔を回転自在に挿通させて、かつ、二個のマウント嵌合部回転結合部164の間において、照準器12の右下端部の銃身方向の辺に配設された照準器回転結合部124の貫通孔に挿通された状態で照準器回転結合部124と固定される。これにより、照準器12は、モータ20の回転駆動に応じてマウント嵌合部16に対して回転自在となる。
【0032】
図4は、本発明に係る回転機能付照準器10が装着された小火器30を示した図である。装着された回転機能付照準器10は、銃口の照星が真上を向いた状態のときに照準器12の台座126がマウント嵌合部16の天板162に着地し、照準器12が回転する際の原点となる。すなわち、照準器12の視野が四角の場合又は視野に十字のレティクルを備えている場合には、これらが鉛直方向に直立する状態である。
【0033】
図5は、本発明に係る回転機能付照準器10が装着された小火器30を銃身中心軸線GCL周りに回転させた状態を示した図である。
図4に示した小火器30を銃身中心軸線GCLの反時計周りに90度付近まで回転させた状態を示している。照準器12の回転は、モータ駆動制御部14において、小火器30を回転させた際の回転角が計算され、モータ20に駆動信号を出力することによって行われる。モータ駆動の制御に関しては後述する。
【0034】
図6Aは、本発明に係る回転機能付照準器10の台座126がマウント嵌合部16の天板162に着地した状態を示した正面図である。回転機能付照準器10のみを拡大して示した。
図4の小火器30の照星が真上を向いている際の回転機能付照準器10の原点での状態(鉛直方向に照準器12の視野が直立している状態)である。モータ20の回転軸18は、重なっている照準器の中心線FSCL及び銃身の中心線FGCL上の照準器12と銃身との中間の位置から図の右方向に移動して配置させている。図の照準器12は台座126を備えているため、照準器の中心線FSCL上にモータ20を備えた場合でも、モータ20によって照準器12の視野を妨げる状態にはならないものの、モータ20が操作パネル122の妨げになる状態となる。回転軸18が照準器の中心軸線FSCL上の位置を避けて配置されたことによって、モータ20が操作パネル122を妨げる状態を回避している。回転機能付照準器10の原点では、照準器12はマウント嵌合部16の天板162に着地した台座126と回転軸18の二点によって支持される。
【0035】
図6Bは、本発明に係る回転機能付照準器10の台座126がマウント嵌合部16の天板162を離れて、回転軸18を中心に照準器12が回転している状態を示した正面図である。照準器12の右下端部の銃身方向の辺を中心に、照準器12はいわゆるピボット回転を行うことができる。
図4の照準器12が回転の原点にある状態から、小火器30を90度程度回転させた状態(
図5)の回転機能付照準器10のみを、マウント嵌合部16の天板162を水平にして拡大して示した。照準器12の台座126は、マウント嵌合部16の天板162を離れ、照準器12は回転軸18のみの一点で支持されている。原点の状態における回転軸18と照準器中心線SCLとの距離(
図2を参照)を保持したまま照準器12が回転するので、モータ20が視野や操作パネル122の妨げになることはない。
【0036】
図7は、本発明に係る回転機能付照準器10のモータ駆動制御部14のブロック図である。回転機能付照準器10を装着した小火器30が銃身中心軸線GCL周りに回転した際の回転角を、モータ駆動制御部14が計算し、モータ20にモータ制御信号を出力して回転駆動させることによって、照準器12を常に鉛直方向に対して直立させることが可能となる。モータ駆動制御部14は、回転制御部142と電源部144とから構成される。回転制御部142は、ジャイロセンサ(角速度センサ)1422、入力部1424、演算部1425、出力部1427、記憶部1426及びデータバス1428から少なくとも構成される。
【0037】
ジャイロセンサ1422は、コリオリ力を利用して、物体の回転等の変化を角速度で検知し、電気信号として出力する。コリオリ力は、回転運動をしている座標系に対して運動する物体に働く見かけ上の力で転向力ともいう。ジャイロセンサ1422は、カメラの手振れ補正やスマートフォンの画面の方向の検出、GPSの電波が届かない場所での車の走行状態の検知、車の傾き異常状態の検知などに使用されている。ジャイロセンサ1422は、機械式、光学式又は振動式などがあるが、本発明においてはいずれを使用してもよく、特に方式を限定しない。本発明に係る回転機能付照準器10では、小火器30が銃身中心軸線GCL周りに回転する際の角速度をリアルタイムに検出することによって、照準器12の回転角を決定する情報として用いる。
【0038】
入力部1424は、ジャイロセンサ1422からの角速度を電気信号に変換された出力信号を入力する。一般的に採用される振動式ジャイロセンサ1422では、圧電式又は静電容量式がある。圧電式では、振動子にコリオリ力が加わることで生じる圧電効果による電圧信号が出力される。静電容量式では、コリオリ力によって振動子の位置が移動し、その移動量によって検出電極と振動子間の静電容量に変化が生じる。その際の静電容量差を電気信号として出力する。
【0039】
また、モータ20がエンコーダや原点などの出力信号を有している場合や、別に加速度センサ、原点を検出するリミットスイッチなどの検出センサを設けた場合にも入力部1424を介して信号を入力することができる。
【0040】
演算部1425は、入力部1424を介して入力された信号を用いて角速度を算出し、照準器12を鉛直方向に対して直立する方向に回転させるためのモータ20の回転角分のパルス信号、例えばPWM(Pulse Width Modulation)制御のモータ制御信号を形成する。PWM制御信号のように直接モータ20を制御する信号を形成する場合のほか、モータ20の制御部に対して回転角度分を回転させるコマンドを形成する場合もある。
【0041】
記憶部1426は、演算部1425において演算値などの一時記憶が必要な際に格納しておくRAM(例えば、DRAM)や、電源を切断した際にも記憶が保持され、モータ回転制御プログラムや初期設定値、演算結果などを格納しておく不揮発性メモリ(例えばフラッシュメモリ)などである。小火器30に装着する回転制御部142に納めるため、小型な半導体メモリが好適である。
【0042】
出力部1427は、演算部1425によって算出されたモータ制御信号をモータ20に向けて出力を行う。出力方式は各信号の形式に応じた方式を用いる。電圧のパルス信号を出力してモータ20を制御する場合には、二心のケーブルを用いて出力するが、モータ20の制御部に対してコマンドを出力する場合は、USB(Universal Serial Bus)などの汎用信号を用いる場合もある。
【0043】
電源部144は、モータ駆動制御部14において、電気回路を作動させるための直流電源を供給する。また、モータ20駆動用の電源も兼ねる。電源部144は、電池やバッテリなどによって構成される。小型太陽光発電による電源供給も想定されるが、天候に左右されるため、リチウムボタン電池が小型で好適である。
【0044】
モータ駆動制御部14によって制御されるモータ20は、モータ20本体が小型でパルス制御が可能なDCモータが好適である。ステッピングモータも使用することは可能であるが、モータ専用の制御回路が必要であり小型化には不向きである。また、ACモータであっても、パルス制御は可能であり、回転制御を行うことができるが、大型になる傾向にある。
【0045】
図8は、本発明に係る回転機能付照準器10の制御フローチャートである。記憶部1426に格納されたモータ回転制御プログラムによって、小火器30が銃身中心軸線GCL周りに回転した際に照準器12が鉛直方向に対して直立するようモータ20を回転させる。以下、制御フローチャートの各ステップについて説明する。
【0046】
まず、電源が投入する(S1)。次に、キャリブレーション処理を行い、照準器12の台座126がマウント嵌合部16の天板162に着地したモータ20の実際の原点と計算上の原点とを一致させ校正を行う(S2)。
【0047】
ジャイロセンサ1422から入力部1424を介して角速度に対応した電気信号を入力する(S3)。
【0048】
演算部1425において、角速度を算出する(S4)。続いて、照準器12が鉛直方向に対して直立するための回転角度を計算しモータ制御信号に変換する(S5)。例えば、PWM制御である場合には、パルス幅とパルス数を計算し、回転速度と回転角度を決定する。モータ20の制御方式によって計算する内容は異なり、これに限定されるものではない。例えば、ステッピングモータでは、パルス数のみの計算でよい。
【0049】
照準器中心線SCLの鉛直上下方向に回転軸18を持たずに、照準器12の右下端部の銃身方向の辺を中心にピボット回転を行う照準器12が、鉛直方向に対して直立を維持するためには、回転軸18から照準器中心線SCLまでの離隔距離を計算式に加えて回転角を補正する必要がある。
【0050】
モータ20に対して、出力部1427を介してモータ制御信号を出力する(S6)。モータ20に対して出力を行う場合には、モータ20の駆動電力をモータ制御信号とともに出力する場合と、モータ20の駆動電力は別配線によって供給しておき、モータ制御信号のみを出力する場合とがある。モータ制御信号を受信したモータ20は所定の角度まで回転する(S7)
【0051】
モータ制御信号を出力した後は、電源が切断されたか否かについて判断を行う(S8)。電源が投入された状態が継続している場合には、ステップ3(S3)に戻って、ジャイロセンサ1422から角速度信号を入力しモータ制御信号の計算を行い、モータ制御信号を出力し電源の状態を確認するまでのステップ(S3乃至S8)をリアルタイムで繰り返す。
【0052】
ステップ8(S8)において、電源が切断されている信号を検出した場合には、まず現在位置から原点までの回転角に相当するモータ制御信号を演算部1425において計算する(S9)。得られたモータ制御信号をモータ20に出力(S10)し、照準器12の角度を原点の状態に戻す(S11)。すなわち、照準器12の台座126がマウント嵌合部16の天板162に着地した安定状態にまで、照準器12を回転させる。
【0053】
電源を切断しプログラムを終了する(S12)。
【0054】
上記ステップ1(S1)乃至ステップ12(S12)が、小火器30を銃身中心軸線GCL周りに回転させた際に照準器12を鉛直方向に直立させるためのモータ制御フローチャートの一例であり、
図7における装置構成で同様に照準器12を回転制御できるフローチャートは当然に本発明の技術範囲に属する。
【0055】
図8のフローチャートでは、電源投入時にのみキャリブレーションを行っているが、フローチャートのモータ回転角制御のループごとにキャリブレーションを行うことや、複数回のモータ回転角制御のループに1回の頻度でキャリブレーションを行って原点出しを行うことは小火器30を銃身中心軸線GCL周りに回転させる動作と、照準器12の回転動作が一致しない場合が生じるが、このようなキャリブレーションを否定するものではない。
【0056】
図6Bにおいて、照準器12が90度付近まで回転している状態を示したが、さらに数十度回転すると照準器12の側面が銃身と接触する場合がある。銃身との接触を避けるために、予め照準器12が回転可能な最大角度をモータ駆動制御部14に入力し記憶しておき、
図8のフローチャートにおいて、ステップ5(S5)の演算の後に最大角度を超えているか否かについて判断し、超えている場合には、それ以上の回転を行わないように制御してもよい。
【0057】
また、指定した角度で停止する状態を維持するモードを設けてもよい。例えば、銃身周りに所定の角度だけ照準器12を回転させて停止した状態を維持させておけば、
図10に示したように、望遠機能を有する長距離用照準器や暗視装置などのその他の付属装置との併用も可能となる。
【0058】
その際には、入力部1424において、コマンドや設定数値を入力するための入力用のキーやタッチパネルなどの入力手段が設けられる。入力手段は、照準器12の操作パネル122を兼用してもよいし、別にモータ駆動制御部14のケースやマウント嵌合部16に設けてもよい。
【実施例0059】
図9Aは、本発明に係る回転機能付照準器において、回転軸18の位置を変更した実施例である。前記と共通する構成には、同じ符号を付している。本実施例における回転機能付照準器11では、照準器中心線SCLと銃身中心軸線GCLが鉛直方向に一致しない位置、すなわち正面視における照準器の中心線FSCL及び銃身の中心線FGCLが一致しない位置に照準器12を移動させて回転軸18と結合させたものである。本実施例では特に正面視において照準器12の左下端部の銃身方向の辺に照準器回転結合部124を配設し、照準器回転結合部124とマウント嵌合部回転結合部164とを回転自在に結合させた。これにより、照準器12は、小火器30の銃身の中心線FGCL斜め右上において鉛直方向に対して直立して位置することになる。この場合の照準器12が鉛直方向に対して直立する原点位置では、照準器12が台座を備えていたとしてもマウント嵌合部16とは接点を有さないため、図では照準器12の台座は省略した。
【0060】
図9Bは、
図9Aの実施例において、照準器12を原点から反時計方向に回転させた状態を示した図である。また、
図9Cは、
図9Aの実施例において、照準器12を原点から時計回りに回転させた状態を示した図である。
図6Aにおける照準器12とマウント嵌合部16との結合位置では、小火器30を原点位置から銃身中心軸線GCL周りの反時計方向に回転させようとした場合には、マウント嵌合部16の天板162に照準器12の台座126が着地しているために、照準器12を回転させることができなかったが、本実施例においては、原点位置から反時計方向の回転が可能となる。したがって、小火器30は、銃身中心軸線GCL周りに時計回り及び反時計回りのいずれの方向にも回転させて照準を合わせることができる。
【0061】
また、
図9Aに示した回転軸18を図に向かってさらに水平右方向に移動させることによって、照準器12が時計方向に回転した際に銃身と干渉するまでの角度を大きくとることができ、時計回りの回転角の可動範囲が広くなる。