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  • 特開-ブラシモータのブラシケース構造 図1
  • 特開-ブラシモータのブラシケース構造 図2
  • 特開-ブラシモータのブラシケース構造 図3
  • 特開-ブラシモータのブラシケース構造 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022108085
(43)【公開日】2022-07-25
(54)【発明の名称】ブラシモータのブラシケース構造
(51)【国際特許分類】
   H02K 13/00 20060101AFI20220715BHJP
【FI】
H02K13/00 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021002917
(22)【出願日】2021-01-12
(71)【出願人】
【識別番号】000222484
【氏名又は名称】株式会社ティラド
(74)【代理人】
【識別番号】100082843
【弁理士】
【氏名又は名称】窪田 卓美
(72)【発明者】
【氏名】柳澤 満
【テーマコード(参考)】
5H613
【Fターム(参考)】
5H613AA01
5H613BB04
5H613BB15
5H613BB31
5H613GA13
5H613SS12
(57)【要約】
【課題】 ブラシ及びそのブラシケースの製造に要する工程および費用が少ないストッパ機能を有するブラシケース構造の提供。
【解決手段】 給電用のピグテール3が接続されたブラシ2がブラシケース1に収納されるものであって、そのブラシケース1の側面1のケースの長手方向に、前記ピグテール3を案内するスリット4を形成し、そのスリット4の一部に、ブラシケース1の外側へ切り起こし片1cを形成し、その切り起こし片1cの切り起こし角度θが鋭角に形成されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブラシモータの回転軸に複数の整流子片が周方向へ配置され、その各整流子片に対向して一端が開口(1a)する横断面方形の複数のブラシケース(1)が前記回転軸に対して放射方向に配置され、
前記ブラシケース(1)の内部に出入自在にブラシ(2)が収納されると共に、ブラシ(2)に給電用のピグテール(3)が接続されたブラシモータのブラシケース構造において、
各ブラシケース(1)には、側面(1b)にケースの長手方向に前記ピグテール(3)を案内するスリット(4)が前記開口(1a)まで形成され、
スリット(4)の一部にブラシケース(1)の外側へ切り起こし片(1c)が形成され、その切り起こし片(1c)の切り起こし角度(θ)が鋭角であることを特徴とするブラシモータのブラシケース構造。
【請求項2】
請求項1に記載のブラシモータのブラシケース構造において、
前記スリット(4)は、対向する一対の縁(4a)(4b)を有し、一方の縁(4a)に前記切り起こし片(1c)が形成されており、
切り起こし片(1c)の内面から、対向する縁(4b)の先端までの、前記内面の法線方向の間隔をaとし、
前記側面(1b)の法線方向から見た、切り起こし片(1c)の先端から、対向する縁(4b)までの間隔をbとし、
前記スリット(4)の長手方向において、切り起こし片(1c)が形成されていない部位における前記一方の縁(4a)と他方の縁(4b)との間隔をcとしたとき、
次の(式1)(式2)の条件を満たすものであることを特徴とするブラシモータのブラシケース構造。
(式1) a>b
(式2) (c/2)>b
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブラシ付きモータに関し、特に、そのブラシを収納するブラシケースの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、ブラシケースのケース部とブラシとで、ブラシの軸方向の移動を規制する係合部を設け、その係合部として、ブラシケースの先端の内面に凸部を設け、ブラシにはブラシ凹部とブラシストッパ部を設け、そのストッパ部がブラシケースの凸部に係合するようにしたものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-95222号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載のブラシケースの構造は、ブラシ自体にストッパ部を加工する必要があり、その構造を設ける工程が面倒であり、またそのための費用がかかる欠点がある。
そこで本発明は、これらの問題点を解決するため、ブラシ及びそのブラシケースの製造に要する工程および費用が少ないストッパ機能を有するブラシケース構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の本発明は、ブラシモータの回転軸に複数の整流子片が周方向へ配置され、その各整流子片に対向して一端が開口1aする横断面方形の複数のブラシケース1が前記回転軸に対して放射方向に配置され、
前記ブラシケース1の内部に出入自在にブラシ2が収納されると共に、ブラシ2に給電用のピグテール3が接続されたブラシモータのブラシケース構造において、
各ブラシケース1には、側面1bにケースの長手方向に前記ピグテール3を案内するスリット4が前記開口1aまで形成され、
スリット4の一部にブラシケース1の外側へ切り起こし片1cが形成され、その切り起こし片1cの切り起こし角度θが鋭角であることを特徴とするブラシモータのブラシケース構造である。
【0006】
請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載のブラシモータのブラシケース構造において、
前記スリット4は、対向する一対の縁4a、4bを有し、一方の縁4aに前記切り起こし片1cが形成されており、
切り起こし片1cの内面から、対向する縁4bの先端までの、前記内面の法線方向の間隔をaとし、
前記側面1bの法線方向から見た、切り起こし片1cの先端から、対向する縁4bまでの間隔をbとし、
前記スリット4の長手方向において、切り起こし片1cが形成されていない部位における前記一方の縁4aと他方の縁4bとの間隔をcとしたとき、
次の(式1)(式2)の条件を満たすものであることを特徴とするブラシモータのブラシケース構造である。
(式1) a>b
(式2) (c/2)>b
【発明の効果】
【0007】
請求項1に記載の発明は、ブラシケース1の側面1bに、ブラシケース1の長手方向にスリット4が形成され、前記スリット4の一部にブラシケース1の外側へ切り起こし片1cが形成され、その切り起こし片1cの切り起こし角度θが鋭角に形成されているブラシモータのブラシケース構造である。
この構造により、ブラシ2のブラシケース1への組み込みにおいて、一度、ピグテール3が切り起こし片1cの先端を超えてスリット4の内部に挿入されたならば、そのピグテール3のブラシケース1の軸方向への移動は、ピグテール3が切り起こし片1cに引っかかることによって制限されるので、ブラシ2がブラシケース1から脱落することを防止できる。すなわち、当該切り起こし片1cが、ブラシ2のストッパとして機能する。
また、この構造はブラシ2への加工を必要としない。
ゆえに、製造に要する工程および費用が少ないストッパ機能を有するブラシケース構造を得ることが可能となる。
【0008】
さらに、上記構成において、請求項2に記載の発明のように、
a>bとしたことにより、ピグテール3の挿入性が確保され、
a>b、且つ(c/2)>bとしたことにより、ピグテール3のブラシケース1からの脱落、すなわち、ブラシ2のブラシケース1からの脱落が確実に防止される。
ゆえに、請求項1の発明の効果に加えて、ピグテール3の挿入性の確保とブラシ2の脱落の防止を両立させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明のブラシケース1の要部を示し、(A)はその折曲用脚部1eの取付け前の状態図、(B)は(A)のB-B矢視図、(C)は(A)のC-C矢視断面図。
図2】本発明のブラシケース1の要部説明図。
図3】(A)(B)(C)は、同ブラシケース1にスプリング8及びブラシ2を挿入する手順を順に示した手順図、(D)はブラシ2の突出に伴うピグテール3と切り起こし片1cとの係止状態を示す説明図。
図4】(A)は複数のブラシケース1を基板9上に放射状に配置した状態の一例を示す斜視図、(B)はその部分拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、図面に基づいて本発明の実施の形態につき説明する。
本発明のブラシモータのブラシケースは、図4に示す如く、ブラシモータの回転軸の中心線Sに対して放射状に複数配置される。そのブラシモータ自体は公知のものであり、その回転軸に複数の整流子片が周方向に配置されている。そして、図示しない整流子片に対向して断面方形のブラシケース1の一端が開口1aする。このブラシケース1は略正方形であり、ブラシケース1の他端には端蓋1dが設けられ、それにスプリング8の後端が着座する。
なお、この例では4つのブラシケース1が配置されているが、その数は、整流子片の数に応じて配置される。
【0011】
ブラシケース1は図1(A)に示す如く、その長手方向の両端部の下方に一対の折曲用脚部1eが突設されている。この折曲用脚部1eは、図4の基板9に設けた図示しないスリット孔に挿入され、その折曲用脚部1eが折り曲げられて、ブスバー10に接続される。
【0012】
ブラシ2には、その後端にピグテール3が接続されている。このピグテール3は、可撓性を持つ素材が好適であり、一例として多数の細線を撚り合わせた、撚線とすることができる。ピグテール3の芯径wは、切り起こし片1cの内面から、対向する縁4bの先端までの、その内面の法線方向の間隔(後述するaの間隔)よりも小であることが好ましい。
【0013】
図1において、ブラシケース1の一対の対向する側面1bには、それぞれの側面1bにスリット4が形成され、そのスリット4がブラシケース1の開口1aまで形成されている。そのスリット4は、図1(A)、同図(B)に示す如く、対向する一対の縁4a、4bを有する。スリット4は、ブラシケース1のケース中心線Oに平行に形成され、ブラシケース1の開口1a側が開放され、端蓋1d側は閉塞している。スリット4は、一対の側面1bの一方側のみに設けてもよい。
この例では、スリット4の一方の縁4aに切り起こし片1cが形成されている。その切り起こし片1cは、図1(B)、同図(C)に示す如く、ブラシケース1の外側へ曲折されており、その切り起こし片1cの切り起こし角度θは、図2に示す如く、鋭角に形成されている。
【0014】
切り起こし片1cの切り起こし角度θが鋭角に形成されていることにより、ブラシ2のブラシケース1への組み込みにおいて、一度、ピグテール3が切り起こし片1cの先端を超えてスリット4の内部に挿入されたならば、そのピグテール3のブラシケース1の軸方向への移動は、ピグテール3が切り起こし片1cに引っかかることによって制限されるので、ブラシ2がブラシケース1から脱落することを防止できる。すなわち、当該切り起こし片1cが、ブラシ2のストッパとして機能する。
【0015】
さらに、この例では、切り起こし片1cがスリット4の開放側の端部において形成されている。また、この切り起こし片1cは、図1(A)に示す如く、スリット4の一方の縁4aの高さを基準高さとすると、スリット4の開放側の高さが低く形成された三角形の楔状に形成されている。
スリット4と切り起こし片1cは、図2を参照すると、下記の2つ式を満たす関係となるように形成されている。
(式1) a>b
(式2) (c/2)>b
ここで、
aは、切り起こし片1cの内面から、対向する縁4bの先端までの、その内面の法線方向の間隔である。
bは、ブラシケース1の側面1bの法線方向から見た、切り起こし片1cの先端から、対向する縁4bまでの間隔である。
cは、スリット4の長手方向において、切り起こし片1cが形成されていない部位におけるスリット4の一方の縁4aと他方の縁4bとの間隔である。
【0016】
図3は、ピグテール3をブラシケース1のスリット4に挿入する手順(図3(A)~図3(C))と、切り起こし片1cのストッパ機能(図3(D))を示している。
図3(A)に示す如く、ブラシケース1内には、予め、スプリング8が挿入されており、その後端は端蓋1dに着座されている。前述のように、ピグテール3が接続されたブラシ2が、その状態で、ブラシ2の後端からブラシケース1の開口1aに挿入される。このブラシ2のブラシケース1への挿入の際、ピグテール3はスリット4に形成されている切り起こし片1cを乗り越える必要がある。
【0017】
ピグテール3の挿入の角度を、図2図3(B)に示す如く、ブラシケース1の対向する縁4b側にねじれた状態で、切り起こし片1cの上方を通過させる。その際、スリット4と切り起こし片1cの関係が、式1のa>bを満たすように形成することにより、ピグテール3の挿入性が十分確保される状態になる。それにより、ピグテール3を取り付けた状態で、ブラシ2をブラシケース1内に挿入することができる。
【0018】
ピグテール3が切り起こし片1cの上方を通過した後、図3(C)の如く、ピグテール3はねじれ状態から解放される。そして、ブラシ2をさらに圧入することで、ピグテール3は、スリット4の一方の縁4aに沿って、ブラシケース1の端蓋1d側へ移動する。
ブラシ2がブラシケース1に十分に押し込まれた状態で、ブラシ2はその内部に配置されたスプリング8により弾発し、図3(C)の如く、ブラシ2の端面が整流子片14に圧接される。
【0019】
ブラシモータを作動させていくと、ブラシ2は、整流子片14に圧接される端面が徐々に消耗する。その結果、その端面が整流子14側に順次押し出されるが、図3(D)に示す如く、切り起こし片1cの切り起こし角度θが鋭角に形成されていることにより、そこでピグテール3が係止される。そのことによって、ブラシ2がブラシケース1から脱落することを防止できる。つまり、切り起こし片1cは、ブラシ2のストッパとして機能する。
【0020】
さらに、式1のa>b、且つ式2の(c/2)>bの関係を満たす場合、ピグテール3がブラシケース1の切り起こし片1cにより確実に係止され、その結果、ブラシ2のブラシケース1からの脱落がより確実に防止される。
すなわち、スリット4と切り起こし片1cの関係が式1と式2を満たすことにより、ピグテール3の挿入性の確保とブラシ2の脱落の防止をより確実に両立させることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0021】
ブラシモータのブラシケース構造として利用できる。
【符号の説明】
【0022】
1 ブラシケース
1a 開口
1b 側面
1bb 内面
1c 切り起こし片
1d 端蓋
1e 折曲用脚部
2 ブラシ
3 ピグテール
4 スリット
4a 縁
4b 縁
6 屈曲位置
7 円口
【0023】
8 スプリング
9 基板
10 ブスバー
11 露出端
12 端子
13 補助切り起こし片
14 整流子片
S 回転軸の中心線
O ケース中心線
w 芯径
a 距離
b 幅
c 距離
θ 切り起こし角度
図1
図2
図3
図4