(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022108101
(43)【公開日】2022-07-25
(54)【発明の名称】リングファイル
(51)【国際特許分類】
B42F 13/24 20060101AFI20220715BHJP
B42F 7/00 20060101ALI20220715BHJP
【FI】
B42F13/24
B42F7/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021002952
(22)【出願日】2021-01-12
(71)【出願人】
【識別番号】000001351
【氏名又は名称】コクヨ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085338
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 一博
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 顕裕
【テーマコード(参考)】
2C017
【Fターム(参考)】
2C017UD09
2C017UD26
2C017UD30
(57)【要約】
【課題】対をなす表紙の基端間に背表紙を設けてなり一方の表紙に直交させた背表紙に対して他方の表紙を回動させ得る表紙開閉状態をとることができるファイル本体と、ファイル本体の一方の表紙の基端近傍部にとじリングを有するリングとじ具とを具備するリングファイルにおいて、表表紙を閉成姿勢に保持する際に用紙等の綴じ状態が解除されてしまうことを防止する。
【解決手段】とじリング4Fが、先端部62F、72Fを係合させた第1、第2のリング形成部材6F、7Fを備え、それら両リング形成部材6F、7Fを相寄る方向に付勢する係合解除用の外力が作用した場合にその係合が解除されるように構成されたものであるリングファイルRFにおいて、他方の表紙12が、表紙開閉状態の途上においてとじリング4Fに係合解除用の外力を与えることなく係合するロック孔123を有するものにする。
【選択図】
図16
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対をなす表紙の基端間に背表紙を設けてなり一方の表紙に直交させた背表紙に対して他方の表紙を回動させ得る表紙開閉状態をとることができるファイル本体と、このファイル本体の一方の表紙の基端近傍部に設けられたとじリングを有するリングとじ具とを具備してなり、
前記とじリングは、先端部同士を係合させた第1、第2のリング形成部材を備え、それら両リング形成部材を相寄る方向に付勢する係合解除用の外力が作用した場合にその係合が解除されるように構成されたものであり、
前記他方の表紙は、前記表紙開閉状態の途上において前記とじリングに係合解除用の外力を与えることなく係合するロック孔を有したものであるリングファイル。
【請求項2】
前記ロック孔は、前記とじリングの線材径に対応する幅寸法を有したスリットと、このスリットの一部を縮幅させる弾性変形部とを備えたものであり、
前記弾性変形部の一時的な弾性変形を利用して前記スリットに前記とじリングの一部を挿入することができるように構成されている請求項1記載のリングファイル。
【請求項3】
前記リングとじ具は、前記一方の表紙に取着されたベースと、このベースの反背表紙側の部位に立設された第1のリング形成部材と、前記ベースの背表紙側の部位に立設され先端側に反背表紙方向に延びる延出部を有する第2のリング形成部材とを備え、第1、第2のリング形成部材の相対回動によりその先端部同士を係脱させ得るものであり、
前記ロック孔のスリットは、前記表紙開閉状態における他方の表紙の想定回動範囲内において、その長手方向端縁が第1のリング形成部材に実質的に接触しない寸法に設定されたものであり、
前記ロック孔の弾性変形部は、前記第2のリング形成部材の延出部に接触して係合するものであるリングファイル。
【請求項4】
前記第2のリング形成部材の延出部は、基端湾曲部分と、この基端湾曲部分から反背表紙方向に延びる中間直線的部分と、この中間直線的部分からベース側に湾曲して前記第1のリング形成部材の先端に突き合う先端湾曲部分とを備えたものであり、前記ロック孔の弾性変形部は、前記中間直線的部分に係合するものである請求項3記載のリングファイル。
【請求項5】
前記他方の表紙の想定回動範囲は、当該他方の表紙が前記とじリングから離間している位置から、当該他方の表紙の回動端が前記一方の表紙に当接する位置までの範囲である請求項3又は4記載のリングファイル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表紙にリングとじ具を設けたリングファイルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のリングファイルとして、表表紙と裏表紙の基端間に背表紙を設けてなり裏表紙に直交させた背表紙に対して表表紙を回動させ得る表紙開閉状態をとることができるファイル本体と、このファイル本体の裏表紙の基端近傍部に設けられたとじリングを有するリングとじ具とを具備してなるものが知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
このようなリングファイルでは、前記表表紙にロック孔を設けておき、このロック孔をリングとじ具のとじリングに係合させることによって、表表紙を裏表紙に対して略平行となる閉成姿勢に保持しておくことができるようにしたものが少なくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、前述した従来のものにおいては、表表紙を閉成姿勢に保持する際に、とじリングを形成する第1、第2のリング形成部材の一方の係合部と他方の係合部との係合が外れ、用紙等の綴じ状態が解除されてしまうという現象がまれにではあるが発生することが指摘されてきた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、このような不具合の原因を究明すべく種々の探求を進めた結果、かかる不具合は、とじリングを形成する第1、第2のリング形成部材を相寄る方向に付勢することによって両リング形成部材の先端同士の係合が解除されるタイプのとじ具において発生するものであることを発見した。そして、従来のものは、ロック時にロック孔の反背表紙側の端縁が背表紙から遠い方の第1のリング形成部材に当接するため、強くロック孔をとじリングに嵌め合わせると、第1のリング形成部材が背表紙側に引き込まれるように付勢されることになり、その結果、第1、第2のリング形成部材に相寄る方向の外力が作用して一方の係合部が他方の係合部との噛み合わせ部分を乗り越え、両リング形成部材の先端間の係合が解除されてしまうという現象を認識するに至った。
【0007】
本発明は、このような究明結果に基づいてなされたもので、請求項1記載の発明に係るリングファイルは、対をなす表紙の基端間に背表紙を設けてなり一方の表紙に直交させた背表紙に対して他方の表紙を回動させ得る表紙開閉状態をとることができるファイル本体と、このファイル本体の一方の表紙の基端近傍部に設けられたとじリングを有するリングとじ具とを具備してなり、前記とじリングは、先端部同士を係合させた第1、第2のリング形成部材を備え、それら両リング形成部材を相寄る方向に付勢する係合解除用の外力が作用した場合にその係合が解除されるように構成されたものであり、前記他方の表紙は、前記表紙開閉状態の途上において前記とじリングに係合解除用の外力を与えることなく係合するロック孔を有したものである。
【0008】
請求項2記載の発明に係るリングファイルは、請求項1記載のものであって、前記ロック孔が、前記とじリングの線材径に対応する幅寸法を有したスリットと、このスリットの一部を縮幅させる弾性変形部とを備えたものであり、前記弾性変形部の一時的な弾性変形を利用して前記スリットに前記とじリングの一部を挿入することができるように構成されているものである。
【0009】
請求項3記載の発明に係るリングファイルは、請求項2記載のものであって、前記リングとじ具が、前記一方の表紙に取着されたベースと、このベースの反背表紙側の部位に立設された第1のリング形成部材と、前記ベースの背表紙側の部位に立設され先端側に反背表紙方向に延びる延出部を有する第2のリング形成部材とを備え、第1、第2のリング形成部材の相対回動によりその先端部同士を係脱させ得るものであり、前記ロック孔のスリットが、前記表紙開閉状態における他方の表紙の想定回動範囲内において、その長手方向端縁が第1のリング形成部材に実質的に接触しない寸法に設定されたものであり、前記ロック孔の弾性変形部が、前記第2のリング形成部材の延出部に接触して係合するものであるリングファイル。
【0010】
なお、本発明において、「実質的に接触しない」とは、まったく接触しない状態と、とじリングに係合解除用の外力を作用させ得ない程度にしか触れない状態とを含む概念である。
【0011】
請求項4記載の発明に係るリングファイルは、請求項3記載のものであって、前記第2のリング形成部材の延出部が、基端湾曲部分と、この基端湾曲部分から反背表紙方向に延びる中間直線的部分と、この中間直線的部分からベース側に湾曲して前記第1のリング形成部材の先端に突き合う先端湾曲部分とを備えたものであり、前記ロック孔の弾性変形部が、前記中間直線的部分に係合するものである。
【0012】
なお、本発明において、「中間直線的部分」とは、完全な直線形状に限らず、緩やかに湾曲した形状(基端湾曲部分及び先端湾曲部分よりも曲率が小さくなっている形状)をも含む概念である。
【0013】
請求項5記載の発明に係るリングファイルは、請求項3又は4記載のものであって、前記他方の表紙の想定回動範囲が、当該他方の表紙が前記とじリングから離間している位置から、当該他方の表紙の回動端が前記一方の表紙に当接する位置までの範囲であるものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、表表紙にロック孔を設けておき、このロック孔をリングとじ具のとじリングに係合させることによって、表表紙を裏表紙に対して略平行となる閉成姿勢に保持しておくことができるようにしたリングファイルにおいて、表表紙を閉成姿勢に保持する際にとじリングを形成する第1、第2のリング形成部材の一方の係合部と他方の係合部との係合が外れ、用紙等の綴じ状態が解除されてしまう不具合の発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係るリングファイルを示す斜視図。
【
図2】同実施形態に係るリングファイルを示す平面図。
【
図3】同実施形態に係るリングファイルを示す正面図
【
図5】同実施形態に係るリングとじ具を示す平面図。
【
図10】同実施形態に係るリングとじ具の作用説明図。
【
図11】同実施形態に係るリングとじ具の作用説明用の断面図。
【
図13】同実施形態に係るリングとじ具の作用説明図。
【
図14】同実施形態に係るリングとじ具の作用説明用の断面図。
【
図15】同実施形態に係るとじリングとロック孔との係合部位を示す平面図。
【
図16】同実施形態に係る他方の表紙の想定回動範囲を示す図。
【
図17】同実施形態に係るとじリングとロック孔との係合の態様を示す作用説明図。
【
図18】同実施形態に係るとじリングとロック孔との係合の態様を示す作用説明図。
【
図19】同実施形態に係るとじリングとロック孔との係合の態様を示す作用説明図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0017】
本実施形態は、本発明を、いわゆるレバーアーチファイルに準じた使い勝手を実現することができるリングファイルに適用した場合のものである。このリングファイルRFは、
図1~
図4に示すように、対をなす表紙11、12の基端11a、12a間に背表紙13を設けてなるファイル本体1と、このファイル本体1の一方の表紙11の基端11a近傍部内面に取り付けられた本発明に係るリングとじ具2とを具備してなる。
【0018】
前記ファイル本体1は、
図1及び
図2に示すように、裏表紙として機能する一方の表紙11の基端11aと、表表紙として機能する他方の表紙12の基端12aとの間に、背表紙13を設けてなるものであり、前記表紙11と前記背表紙13との境界には、主折り曲げ線部11bが設けられている。前記一方の表紙11は、基端11a近傍部に設定したとじ具取付領域111と、このとじ具取付領域111に隣接させた用紙対応領域112とを備えたもので、前記とじ具取付領域111と前記用紙対応領域112との境界には、副折り曲げ線部11cが形成されている。また、前記他方の表紙12は、基端12a近傍部に設定したとじリング保持領域121と、このとじリング保持領域121に隣接させた用紙対応領域122とを備えたものである。前記とじリング保持領域121には、後述するとじリング4F、4Bの自由端部を保持するためのロック孔123が形成されており、このとじリング保持領域121と前記用紙対応領域122との境界には、副折り曲げ線部12cが形成されている。前記背表紙13には、指掛孔13aが形成されている。
【0019】
なお、このファイルは、
図2における下側を手前にして用紙の差し替え作業を行うように想定されたものであり、以下この明細書において、
図2における下側を「手前側」、上側を「奥側」と称する。
【0020】
前記リングとじ具2は、
図5~
図8、
図10~
図11及び
図13~
図14に示すように、ファイル本体1に取り付けられるベース3と、このベース3に設けられた1対のとじリング4F、4Bと、前記ベース3に内蔵されたばね5とを具備してなる。
【0021】
ここで、
図5は、前記リングとじ具2を一部破断して示した平面図であり、
図6は、前記リングとじ具2の正面図である。
図7及び
図8は、それぞれ
図5におけるB-B線及びC-C線に沿った断面図である。
図9は、
図6における要部を拡大したX矢視図である。
図10は、後述する第2のリング形成部材7F、7Bの作動を説明するための作用説明図であり、
図11は、
図10に示した状態における
図7に対応する断面図である。
図12は、
図10における要部を拡大して示す図である。
図13は、後述する第2のリング形成部材7F、7Bを後述する開き姿勢(O)とした状態を示す正面図であり、
図14は、
図13に示した状態における
図7に対応する断面図である。
【0022】
前記とじリング4F、4Bは、
図6、
図10及び
図13に示すように、前記ベース3に基端部61F、61Bを支持され先端部62F、62Bに第1の係合部分63F、63Bを有した第1のリング形成部材6F、6Bと、前記ベース3に基端部71F、71Bを支持されるとともに先端部72F、72Bに第2の係合部分73F、73Bを有しその第2の係合部分73F、73Bが前記第1の係合部分63F、63Bに係合する
図6に示すような閉じ姿勢(C)からその係合が解除された
図13に示すような開き姿勢(O)までの間で回動可能な第2のリング形成部材7F、7Bとにより構成されている。前記第2のリング形成部材7F、7Bは、前記ばね5により開き方向に付勢されている。なお、本明細書では、手前側のとじリングに符号4Fを付しており、奥側のとじリングに符号4Bを付している。また、手前側のとじリング4Fを構成する各要素にも原則として末尾にFを加えた符号を付しており、奥側のとじリング4Bを構成する各要素にも原則として末尾にBを加えた符号を付している。そして、手前側及び奥側のとじリング4F、4Bを構成する各要素において、対応するものには同一の名称を付し、また末尾のF又はBを除いて同一の符号を付している。
【0023】
詳述すれば、各とじリング4F、4Bの一方のリング形成部材の係合部分は、少なくとも凹溝を備えたものであるとともに、他方のリング形成部材の係合部分は、少なくとも前記凹溝に係合する凸条を備えている。なお、この実施形態においては、
図9及び
図12に示すように、第1及び第2のリング形成部材6F、6B、7F、7Bの係合部分63F、63B、73F、73Bに、凸条631F、631B、731F、731Bと、この凸条631F、631B、731F、731Bに平行に隣接する凹溝632F、632B、732F、732Bとがそれぞれ設けられている。その上で、第1のリング形成部材6F、6Bの係合部分63F、63Bの凹溝632F、632Bに第2のリング形成部材7F、7Bの係合部分73F、73Bの凸条731F、731Bが係合するとともに、第2のリング形成部材7F、7Bの係合部分73F、73Bの凹溝732F、732Bに第1のリング形成部材6F、6Bの係合部分63F、63Bの凸条631F、631Bが係合することができるようになっている。
【0024】
前記凹溝632F、632B、732F、732B及び前記凸条631F、631B、731F、731Bは、前記リング形成部材6F、6B、7F、7Bの先端部61F、61B、71F、71Bにおける軸心L1F、L1B、L2F、L2Bに対して直角以外の角度をなすように傾斜させて設けられている。具体的には、
図12に示すように、前記第1のリング形成部材6F、6Bの係合部分63F、63Bに設けられた凹溝632F、632B及び凸条631F、631Bは、当該第1のリング形成部材6F、6Bの先端部62F、62Bにおける軸心L1F、L1Bに対して例えば正面視において角度θだけ傾斜させてあり、前記第2のリンク形成部材7F、7Bの係合部分73F、73Bに設けられた凹溝732F、732B及び凸条731F、731Bは、当該第2のリング形成部材7F、7Bの先端部72F、72Bにおける軸心L2F、L2Bに対して例えば正面視において角度θだけ傾斜させてある。この実施形態では、前記傾斜角度θは本実施形態では45°に設定しているが、90°以外の値であれば種々選択、採用が可能である。また、前記第2のリング形成部材7F、7Bに設けられた前記凹溝732F、732B及び前記凸条731F、731Bは、
図12に示すように、前記第2のリング形成部材7F、7Bにおける前記係合部分73F、73Bの前記閉じ姿勢(C)と前記開き姿勢(O)との間の回動軌跡L3F、L3B(より正確にはこの回動軌跡L3F、L3Bが前記凹溝732F、732B及び前記凸条731F、731Bと交わる箇所における接線L31F、L31B)に対して角度φをなすように設定されている。前記角度φは、本実施形態では90°に設定しているが、90°に近い値であれば種々変更可能である。
【0025】
また、
図9に示すように、手前側の第1のリング形成部材6Fの係合部分63Fの凹溝632Fは、奥側に向けて開放された直線状の溝であり、奥側の第1のリング形成部材6Bの係合部分63Bの凹溝632Bは、手前側に向けて開放された直線状の溝である。さらに、
図9に示すように、手前側の第2のリング形成部材7Fの係合部分73Fの凹溝732Fは、手前側に向けて開放された直線状の溝であり、奥側の第2のリング形成部材7Bの係合部分73Bの凹溝732Bは、奥側に向けて開放された直線状の溝である。すなわち、対をなす第1のリング形成部材6F、6Bの係合部分63F、63Bの凹溝632F、632Bは互いに向かい合う方向に開放されており、対をなす第2のリング形成部材7F、7Bの係合部分73F、73Bの凹溝732F、732Bは互いに離反する方向に開放されている。各凸条631F、631B、731F、731Bは、対応する各凹溝632F、632B、732F、732Bの先端側に隣接させて設けられたものであり、対をなす第1のリング形成部材6F、6Bの係合部分63F、63Bの凸条631F、631Bは互いに向かい合う方向に突出しており、対をなす第2のリング形成部材7F、7Bの係合部分73F、73Bの凸条731F、731Bは互いに離反する方向に突出している。
図9、
図12、
図16、
図19及び
図20に示すように、前記凸条631F、631B、731F、731Bの先端側には案内傾斜面633F、633B、733F、733Bが形成されており、第1のリング形成部材6F、6Bの先端部62F、62Bと第2のリング形成部材7F、7Bの先端部72F、72Bとを突き合わせることにより、前記両リング形成部材6F、6B、7F、7Bが一時的に径方向に弾性変位し前記各凸条631F、631B、731F、731Bが対応する各凹溝632F、632B、732F、732Bに係合するようになっている。なお、
図12において、案内傾斜面633Fはパターンを付した部分である。この係合を解除する場合には、第2のリング形成部材7F、7Bの先端側を相寄る方向につまんで当該リング形成部材7F、7Bを一時的に径方向に弾性変形させればよい。
【0026】
以上説明した前記第1のリング形成部材6F、6Bは、ベース3の一側縁部3aに固定された略直線状のものであり、前記第2のリング形成部材7F、7Bが前記ベース3の他側縁部3bに枢支され先端側が湾曲したものである。そのため、前記第1のリング形成部材6F、6Bの係合部分63F、63Bと前記第2のリング形成部材7F、7Bの係合部分73F、73Bとは、前記ベース3の幅方向中央から外れた位置で係合するように構成されている。詳述すれば、
図5に示すように、第1のリング形成部材6F、6Bの基端部61F、61Bは、ベース3のリング取付孔31aに嵌挿され、かしめ等により固定されている。第2のリング形成部材7F、7Bは、
図5及び
図8に示すように、基端部71F、71Bに軸部分711F、711Bを備えたものであり、前記軸部分711F、711Bが、前記ベース3の後述する空洞形成部32とファイル本体1との間に形成される空洞SP内にそれぞれ挿入されるとともに、前記ベース3の後述する軸受け33にそれぞれ軸支されている。なお、手前側の第2のリング形成部材7Fの軸部分711Fと奥側の第2のリング形成部材7Bの軸部分711Bとは、先端同士を対向させた姿勢で軸心を一致させてベース3にそれぞれ軸支されている。前記軸部分711F、711Bの先端同士は、前記両軸部分711F、711Bに対して偏心した中間偏心部分81を備えた連結部材8により一体回転可能に結合されている。前記両第2のリング形成部材7F、7Bと前記連結部材8とは、金属線材製の一体成形品である。
【0027】
そして、
図9に示すように、前記第1及び第2のリング形成部材6F、6B、7F、7Bの先端64F、64B、74F、74Bには、丸みをつけてある。この先端64F、64B、74F、74Bの丸みは、第1のリング形成部材6F、6Bと第2のリング形成部材7F、7Bとを相互に係合させてとじリング4F、4Bを形成した状態でそのとじリング4F、4Bに沿って綴じられた用紙Pを円滑に移動させることができるようにするためのものである。
【0028】
前記ベース3は、
図1~
図2、
図5~
図8、
図10~
図11及び
図13~
図14に示すように、前記ファイル本体1に取り付けられるベース本体31と、このベース本体31の一側縁に一体に形成された前記空洞形成部32とを備えたものである。
【0029】
前記ベース本体31は、前記ファイル本体1に接しリベットなどの止着具Sを介して当該ファイル本体1に取り付けられる取付フランジ311を周縁に有した扁平形状をなすもので、前後両端部分にリング取付孔31aを備えており、このリング取付孔31aに前記第1のリング形成部材6F、6Bの基端部61F、61Bがそれぞれ固定されている。
【0030】
前記空洞形成部32は、ファイル本体1に取り付けられた状態で該ファイル本体1との間に空洞SPを形成する。前記空洞SPに臨む前記空洞形成部32の内側には、前記第2のリング形成部材7F、7Bの基端部71F、71Bを軸支する軸受け33と、前記空洞SP内に配された前記ばね5の一端を支持するばね受け34が設けられている。
【0031】
詳述すると、前記空洞形成部32は、
図6~
図8、
図10~
図11及び
図13~
図14に示すように、前記ベース本体31の一側縁から立ち上がる起立壁321と、この起立壁
321の上端から外側方に向かって漸次低くなりつつ延出する天壁322と、この天壁322の延出端から降下する降下壁323とを備えたものであり、前記降下壁323の下縁両端部分に前記軸受け33が形成されているとともに、前記降下壁323の下縁中間部分に前記ばね受け34が形成されている。
【0032】
前記軸受け33は、
図8に示すように、第2のリング形成部材7F、7Bの基端部71F、71Bの軸部分711F、711Bを包持するようにカールさせた部分円筒体状のもので前記降下壁323の下縁323aに一体に設けられている。
【0033】
前記ばね受け34は、
図7、
図11及び
図14に示すように、前記両軸受け33間に位置させて前記空洞SPの底部分に配された平板状のもので、前記降下壁323の下縁323aから片持ち状態で延出されている。このばね受け34は、平面視四角形状のもので、延出端34aの近傍にばね4を位置決めするためのスリット34bを備えている。
【0034】
以上説明したベース3は、共通の板金素材にプレス加工等を施すことにより前記ベース本体31と前記空洞形成部32と前記軸受け33と前記ばね受け34とが一体に作られたものである。すなわち、このベース3は、板金製の一体成形品である。
【0035】
また、
図2及び
図5に示すように、前記ベース3の一側縁3a、具体的にはリング取付孔31aを設けた側の端縁が前記ファイル本体1の背表紙13から離れた側に位置し、前記ベース3の他側縁3b、具体的には空洞形成部32側の端縁が前記ファイル本体1の表紙11と背表紙13との境界付近に位置している。
【0036】
前記ばね5は、前記第2のリング形成部材7F、7Bを開き姿勢(O)に向かう方向に付勢するためのもので、前記ばね受け34と前記連結部材8の中間偏心部分81との間に介設されている。すなわち、このばね5は、
図7、
図11及び
図14に示すように、前記ばね受け34上に設置される静止部51と、先端部分521で前記中間偏心部分8を下側から弾性付勢する可動部52と、この可動部52と前記静止部51とを一体に連続させる湾曲連結部53とを一体に備えた板ばね状のものである。
【0037】
前記静止部51は、前記ばね受け34の延出端34aに係わり合う先端屈曲部分511と、前記ばね受け34のスリット34bに係わり合う中間屈曲部分512とを備えた平板状のものである。
【0038】
前記可動部52は、先端部分521が上方に開口する部分円筒体状をなすもので、この先端部分521で前記連結部材8の中間偏心部分81を包持して付勢しうるようにしたものである。このばね5の作用により、前記第2のリング形成部材7F、7Bが前記開き姿勢(O)にまで回動するようになっている。なお、この開き姿勢(O)においては、前記連結部材8が前記空洞形成部32の天壁322に突き当たるように設定されており、この天壁322による係止作用により前記第2のリング形成部材7F、7Bが前記開き姿勢(O)に保持されるようになっている。すなわち、前記空洞SPは、前記第2のリング形成部材7F、7Bが閉じ姿勢(C)から開き姿勢(O)までの間で回動する際の前記連結部材8の作動を許容するような形状、具体的には正面視扇形をなすように形成されている。
【0039】
この実施形態のリングファイルは、例えば、A4判の用紙を綴じるためのもので、前記手前側及び奥側のとじリング4F、4Bの離間距離dは、一般的な2穴ファイルの穿孔ピッチに対応する値に設定されている。そして、第1のリング形成部材6F、6Bに綴じられた用紙Pの綴じ元側の端縁Paがベース3の空洞形成部32の起立壁321に近接するように、空洞形成部32の位置を設定している。
【0040】
続いて、第2のリング形成部材7F、7Bを開き姿勢(O)から閉じ姿勢(C)に、又はその逆方向に移動させる際の各部の挙動について説明する。
【0041】
図13及び
図14に示すような開き姿勢(O)にある第2のリング形成部材7F、7Bに、閉じ姿勢(C)に向かう方向の操作力を加えると、
図11に示すようにばね5が連結部材8の中間偏心部分81を介して前記操作力の伝達を受けることにより弾性変形し、
図10及び
図12に示すように、第2のリング形成部材7F、7Bの先端部72F、72Bが第1のリング形成部材6F、6Bの先端部62F、62Bに衝き当たる。このとき、前記両リング形成部材6F、6B、7F、7Bが、前記案内傾斜面633F、633B、733F、733Bに案内されて一時的に径方向に弾性変位する。さらに操作力を加えると、前記各凸条631F、631B、731F、731Bが対応する各凹溝632F、632B、732F、732Bにそれぞれ対向する位置に移動し、弾性復帰力により係合する。より具体的には、第1のリング形成部材6F、6Bの係合部分63F、63Bの凸条631F、631Bが第2のリング形成部材7F、7Bの係合部分73F、73Bの凹溝732F、732Bに対向するとともに、第2のリング形成部材7F、7Bの係合部分73F、73Bの凸条731F、731Bが第1のリング形成部材6F、6Bの係合部分63F、63Bの凹溝632F、632Bに対向する位置まで移動した後、弾性復帰力によりこれら第1、第2のリング形成部材6F、6B、7F、7Bの係合部分63F、63B、73F、73Bが径方向かつ相寄る方向に移動し、第2のリング形成部材7F、7Bが、
図5~
図9に示すような閉じ姿勢(C)となる。
【0042】
第2のリング形成部材7F、7Bを相寄る方向につまんで操作力を加え、第1のリング形成部材6F、6Bの係合部分63F、63Bと第2のリング形成部材7F、7Bの係合部分73F、73Bとの係合を解除させると、前記ばね5の付勢力が前記連結部材8を介して第2のリング形成部材7F、7Bに伝達されることより第2のリング形成部材7F、7Bが開き姿勢(O)に向かって付勢される。そして、第2のリング形成部材7F、7Bが開き姿勢(O)に達すると、前記連結部材8の中間偏心部分81が前記空洞形成部32の天壁322に衝き当たり、第2のリング形成部材7F、7Bのさらなる回動が規制されるとともに、第2のリング形成部材7F、7Bが前記天壁322により開き姿勢(O)に保持される。
【0043】
以上説明したように、このリングファイルRFは、対をなす表紙11、12の基端間に背表紙を設けてなり裏表紙として機能する一方の表紙11に直交させた背表紙13に対して表表紙として機能する他方の表紙12を回動させ得る表紙開閉状態をとることができるファイル本体1と、このファイル本体1の一方の表紙11の基端11a近傍部に設けられたとじリング4F、4Bを有するリングとじ具2とを具備している。
【0044】
ここで、
図15は、他方の表紙12に設けたロック孔123とリングとじ具2との関連部分を拡大して示した平面図である。
図16は、他方の表紙12の想定回動範囲を示す図であり、他方の表紙12がとじリング4Fから離間している状態を実線、他方の表紙12の回動端12dが一方の表紙11に当接している状態を想像線でそれぞれ示している。
図17は、他方の表紙12がとじリング4Fから離間している状態におけるとじリング4Fの軸心に沿った断面図である。
図18は、他方の表紙12が一方の表紙11と平行な状態におけるとじリング4Fの軸心に沿った断面図である。
図19は、他方の表紙12の回動端12dが一方の表紙11に当接している状態におけるとじリング4Fの軸心に沿った断面図である。
【0045】
リングとじ具2のとじリング4F、4Bは、前述したように先端部同士を係合させた第1、第2のリング形成部材6F、6B、7F、7Bを備えたものであるが、このような構成のものでは、それら両リング形成部材6F、6B、7F、7Bを相寄る方向に付勢する係合解除用の外力が作用した場合にその係合が解除されることになる。すなわち、この実施形態では、ベース1の反背表紙側(背表紙13と反対側)に立設された第1のリング形成部材6F、6Bがベース1に固定されており、背表紙13側に立設された第2のリング形成部材7F、7Bが回動して第1のリング形成部材6F、6Bに係合するようになっているが、この係合状態で第1のリング形成部材6F、6Bの先端側に背表紙13方向への係合解除用の外力が作用すると、この第1のリング形成部材6F、6Bが弾性変形してその係合部63F、63Bが第2のリング形成部材7F、7Bの係合部73F、73Bを乗り越え、第1のリング形成部材6F、6Bと第2のリング形成部材7F、7Bとの係合が解除される構造になっている。
【0046】
そして、ファイル本体1の他方の表紙12は、表紙開閉状態の途上においてとじリング4F、4Bに係合解除用の外力を与えることなく係合するロック孔123を有している。
【0047】
以下、このロック孔123とリングとじ具2とが関連する部分について述べる。なお、以下の記載では、リング綴じ具2の手前側半分及び手前側のロック孔123についてのみ述べる。
【0048】
ロック孔123は、
図15に示すように、とじリング4Fの線材径に対応する幅寸法を有したスリット123aと、このスリット123aの一部を縮幅させる弾性変形部123bとを備えたものであり、弾性変形部123bの一時的な弾性変形を利用してスリット123aにとじリング4Fの一部を挿入することができるように構成されている。
【0049】
リングとじ具2は、
図9及び
図15に示すように、一方の表紙11に取着されたベース3と、このベース3の反背表紙側(背表紙13と反対側)の部位に立設された第1のリング形成部材6Fと、ベース3の背表紙13側の部位に立設され先端側に反背表紙方向(背表紙13と反対方向)に延びる延出部を有する第2のリング形成部材7Fとを備えている。このリング綴じ具2は、以下に述べるような操作を行うことによりとじリング4F(、4B)を閉じ姿勢(C)又は開き姿勢(O)として使用するように構成されている。すなわち、このリング綴じ具2は、第1、第2のリング形成部材6F、7Fを相対回動(第2のリング形成部材7Fの背表紙13と反対方向への回動)させることによりその先端部62F、72F同士を接近させ係合部分63F、73F同士を係合させる操作が加えられることによりとじリング4Fが閉じ姿勢(C)となるように構成されている。また、このリング綴じ具2は、前述したように、第2のリング形成部材7F、7Bを相寄る方向につまんで操作力を加え、係合部分63F、73F同士の係合を解除する操作が加えられることによりとじリング4F、4Bが開き姿勢(O)となるように構成されている。一方、このリングとじ具2は、使用者の意図に関わらず、係合状態で第1のリング形成部材6Fに背表紙13に接近する方向の外力が作用すると、係合部分63F、73Fの凸条631F、731Fと凹溝632F、732Fとがその外力の方向に対して直交していないことに起因して、第1のリング形成部材6Fが背表紙13に接近する方向に弾性変形することが許容される。そのため、外力が一定以上の大きさに達すると、第1のリング形成部材6Fの係合部分63Fと第2のリング形成部材7Fの係合部分73Fとの係合状態が解除されることになる。
【0050】
ロック孔123のスリット123aは、
図16に示すように、表紙開閉状態における他方の表紙12の想定回動範囲R1内において、その長手方向端縁123xが第1のリング形成部材6Fに実質的に接触しない寸法に設定されたものであり、ロック孔123の弾性変形部123bは、第2のリング形成部材7Fの延出部75Fに接触して係合するものである。
【0051】
具体的には、第1のリング形成部材6Fは、
図17~
図19に示すように、先端部62Fが背表紙13方向に傾斜する傾斜部となっている。換言すれば、第1のリング形成部材6Fは、先端側に背表紙13方向に傾斜する傾斜部を備えている。一方、第2のリング形成部材7Fは、ベース3に基端部71Fが支持されており、この基端部71Fはベース3とほぼ垂直に起立しており、その起立端から第1のリング形成部材6Fに向かって延出部75Fが延設されている。延出部75Fは、基端湾曲部分751Fと、この基端湾曲部分751Fから反背表紙方向(背表紙13と反対方向)に延びる中間直線的部分752Fと、この中間直線的部分752Fからベース3側に湾曲して第1のリング形成部材6Fの先端に突き合う先端湾曲部分753Fとを備えたものであり、ロック孔123の弾性変形部123bは、中間直線的部分752Fに係合するものである。
【0052】
ここで、他方の表紙12(表表紙)の想定回動範囲R1とは、
図16に示すように、当該他方の表紙12がとじリング4Fから離間している位置から、当該他方の表紙12の回動端12dが一方の表紙11に当接する位置までの範囲を意味している。
【0053】
リング綴じ具2の奥側半分及び奥側のロック孔123も、上述したリング綴じ具2の手前側半分及び手前側のロック孔123と前後対称な形状をなし同様の構成を有するので、対応する部位には末尾のFをBに変えた符号を付して説明を省略する。
【0054】
このような構成のものであれば、
図1に示すように、対をなす表紙11、12と背表紙13とを平面的に展開することによって、リングとじ具2が全面的に表出することになる。そのため、このリングとじ具2の一対のとじリング4F、4Bを開閉することによって、リングとじ具2に対する用紙等の装脱作業を行うことができる。
【0055】
この展開状態から背表紙13を一方の表紙11(裏表紙)に対して直交するまで起立させるとともに他方の表紙12(表表紙)を背表紙13に対して回動させることによって、リングファイルRFを閉成状態にすることができる。
【0056】
この過程で、一方の表紙11に直交させた背表紙13に対して他方の表紙12を回動させ得る表紙開閉状態をとることができるが、この表紙開閉状態の途上において、
図18に示すように、他方の表紙12に設けられた一対のロック孔123が対応するとじ具のとじリング4F、4Bにそれぞれ係合し、他方の表紙12が一方の表紙11と略平行となる閉成位置に保持されることになる。具体的には、他方の表紙12に閉じ方向の操作力を加えた場合に、各ロック孔123に対応するとじリング4F、4Bにおける第2のリング形成部材7F、7Bの延出部75F、75Bが侵入するとともに、ロック孔123の弾性変形部123bが一時的に変形して当該延出部75F、75Bにおける中間直線的部分752F、752Bの内周側に係合する。
【0057】
この係合状態で他方の表紙12から手を放すと、他方の表紙12は一方の表紙11と略平行となる閉成位置に保持されることになるが、ロック孔123の弾性変形部123bがとじリング4F、4Bの内周側に係合した段階からさらに他方の表紙12を閉じる方向に付勢しつづけると、
図16の想像線及び
図19に示すように、とじリング4F、4Bがロック孔123のスリット123aにさらに侵入して他方の表紙12はその先端12dが一方の表紙11に達するまで回動する可能性がある。
【0058】
しかしながら、本リングファイルRFでは、ロック孔123のスリット123aが、他方の表紙12の想定回動範囲R1内において、
図15及び
図17~
図19に示すように、その長手方向端縁123xが第1のリング形成部材6F、6Bに接触しない寸法に設定されているので、勢い余って他方の表紙12を閉じすぎてもスリット123aの端部が第1のリング形成部材6F、6Bに当接することがない。したがって、第1のリング形成部材6F、6Bに係合解除用の外力が作用することがなく、他方の表紙12を閉じた際に、予想に反してとじリング4F、4Bを構成する第1のリング形成部材6F、6Bと第2のリング形成部材7F、7Bとの係合状態が解除されてしまうという不測の事態の発生を防止することができる。
【0059】
なお、本発明は、以上説明した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【0060】
例えば、リングとじ具のとじリングは、2個に限らず、1個または3個以上のものであってもよい。また、とじリングは、第1、第2のリング形成部材がそれぞれ接離する方向に回動するようなものであってもよい。しかしながら、本発明の課題は、ベースに固定され直線的に起立する第1のリング形成部材と、先端側に反背表紙側に延出する延出部を有した第2のリング形成部材とによってとじリングが形成されているとじ具において顕著に発生するものであるため、かかる形式のリングファイルに本発明を適用することは特に有意義である。
【0061】
また、かかる形式のとじ具を使用する場合でも、第1のリング形成部材は、先端側に背表紙方向に傾斜する傾斜部を備えたものに限られないが、このような傾斜部を有したものに本発明を適用すれば、特に顕著な効果が得られる。すなわち、スリットの端縁が当該傾斜部に当接した状態で表表紙をさらに閉じると、傾斜部の案内作用により第1のリング形成部材が背表紙方向に強く傾動付勢されてとじリングが開いてしまうという不具合を招き易いが、本発明を適用すればかかる不具合を確実に解消することができる。
【0062】
加えて、前述した実施形態では、第1、第2のリング形成部材の係合部分に設けられた凹溝及び凸条の当該リング形成部材の先端部における軸心に対する正面視した場合の傾斜角度θを45°に設定しているが、前述したようにこの傾斜角度θは90°以外であれば例えば60°等、任意に設定してよい。また、前述した実施形態では、第2のリング形成部材に設けられた凹溝及び凸条が当該第2のリング形成部材における係合部分の閉じ姿勢と開き姿勢との間の回動軌跡に対してなす角度φは90°であるが、この角度φも例えば120°等、任意に設定してよい。特に、前述した傾斜角度θが60°やそれ以上90°に近い値の場合や、前述した凹溝及び凸条が回動軌跡に対してなす角度φが120°やそれ以上180°に近い値の場合、凹溝及び凸条が短くなるので背表紙側へ加わる外力に対して規制する部分が少なくなり、横滑りに近い状態で係合が外れる現象が生じやすくなるが、そのような構成のリングファイルに本発明を適用すれば、そもそも表表紙を閉成姿勢に保持する際においてリングファイルに背表紙側への外力が作用しないので、本発明による主要な効果を好適に得ることがaできる。
【0063】
さらに、第2のリング形成部材の延出部は図示例のものに限られず、例えば、延出部全体が湾曲したものであってもよい。しかしながら、前述した実施形態のように、第2のリンング形成部材の延出部を、中間に中間直線的部分を有するものにし、ロック孔の弾性変形部を、その中間直線的部分に係合させるようにしておけば、とじリングのベースに対する突出寸法を可及的に小さくすることが可能となり、綴じ込み性能を低下させることなくリングファイル全体の厚み寸法を小さくすることが可能になる。
【0064】
そして、ロック孔のスリットの寸法は、図示例のように、表表紙の想定回動範囲内のいずれにおいても第1のリング形成部材に全く触れない値に設定するのが好ましいが、スリットの端部がリング形成部材に軽く触れはするが、想定回動範囲内ではリング形成部材に係合解除用外力を与えられるほど強く付勢することができない態様も本発明に含まれる。
【0065】
その他、本発明の趣旨を損ねない範囲で種々に変形してよい。
【符号の説明】
【0066】
RF…リングファイル
1…ファイル本体
11…一方の表紙
11a…一方の表紙の基端
12…他方の表紙
123…ロック孔
123a…スリット
123b…弾性変形部
123x…スリットの長手方向端縁
13…背表紙
2…リングとじ具
3…ベース
4F、4B…とじリング
6F、6B…第1のリング形成部材
62F、62B…第1のリング形成部材の先端部
7F、7B…第2のリング形成部材
72F、72B…第2のリング形成部材の先端部(延出部)
721F、721B…基端湾曲部分
722F、722B…中間直線的部分
723F、723B…先端湾曲部分
R1…想定回動範囲