(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022108114
(43)【公開日】2022-07-25
(54)【発明の名称】オートファジー誘導剤
(51)【国際特許分類】
A61K 8/97 20170101AFI20220715BHJP
A61Q 19/02 20060101ALI20220715BHJP
A61K 8/19 20060101ALI20220715BHJP
A61K 8/43 20060101ALI20220715BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20220715BHJP
A61K 36/00 20060101ALI20220715BHJP
A61K 31/155 20060101ALI20220715BHJP
【FI】
A61K8/97
A61Q19/02
A61K8/19
A61K8/43
A61P17/00
A61K36/00
A61K31/155
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021002968
(22)【出願日】2021-01-12
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 開催日 2020年1月20日から2020年1月22日 集会名 第10回化粧品開発展 開催場所 幕張メッセ(千葉県千葉市美浜区中瀬2-1)
(71)【出願人】
【識別番号】507261788
【氏名又は名称】株式会社スタイルアンドバリュージャパン
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤田 隆司
(72)【発明者】
【氏名】金川 シーラ 涼子
【テーマコード(参考)】
4C083
4C088
4C206
【Fターム(参考)】
4C083AA111
4C083AA112
4C083AB191
4C083AC741
4C083AC742
4C083BB51
4C083CC02
4C083CC03
4C083DD08
4C083DD17
4C083DD27
4C083DD30
4C083DD31
4C083DD32
4C083DD33
4C083DD34
4C083DD41
4C083EE16
4C088AC01
4C088BA08
4C088MA02
4C088NA05
4C088NA14
4C088ZA89
4C088ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206HA31
4C206MA02
4C206MA05
4C206NA05
4C206NA14
4C206ZA89
4C206ZC75
(57)【要約】
【課題】美白剤、オートファジー誘導剤、及び表皮肥厚抑制剤を提供する。
【解決手段】フルボ酸及びミネラルを含有する腐植抽出物、並びに/又はフルボ酸以外の脱共役剤を含む美白剤、脱共役剤を含むケラチノサイトにおけるオートファジー誘導剤、並びに脱共役剤を含む表皮肥厚抑制剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フルボ酸及びミネラルを含有する腐植抽出物、並びに/又はフルボ酸以外の脱共役剤を含む美白剤。
【請求項2】
前記脱共役剤がメトフォルミンである、請求項1に記載の美白剤。
【請求項3】
脱共役剤を含むケラチノサイトにおけるオートファジー誘導剤。
【請求項4】
前記脱共役剤がフルボ酸を含有する腐植抽出物及び/又はメトフォルミンである、請求項3に記載のオートファジー誘導剤。
【請求項5】
脱共役剤を含む表皮肥厚抑制剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、美白剤、オートファジー誘導剤、及び表皮肥厚抑制剤に関する。
【背景技術】
【0002】
オートファジーは、タンパク質を含む細胞質成分やミトコンドリア等の細胞内オルガネラなどの細胞質内の一部を分解するシステムの総称であり、飢餓条件でタンパク質を分解してアミノ酸を供給すること等の役割を担っている。そして、オートファジーとは、細胞内の粗面小胞体・ミトコンドリアコンタクトサイトから生じた隔離膜が基質を取り込み、オートファゴソームと呼ばれる二重膜構造を形成し、リソソームと融合し、一重膜構造のオートファゴリソソームとなり分解酵素が供給され内部基質が分解される一連の流れである。オートファジーは、マクロオートファジー、ミクロオートファジー及びシャペロン介在性オートファジーに分類され、オートファジーとは通常マクロオートファジーのことをいう。そして、オートファジーは、ケラチノサイトにおけるメラノソーム消化を調節することにより皮膚の色の決定に関与していることが報告されている(非特許文献1)。
【0003】
シミ、ソバカスや日焼け後の皮膚色素沈着は、皮膚内に存在するメラノサイトの活性化によりメラニン産生が亢進した結果として生じるものであり、中高年齢層における肌の悩みの一つになっている。一般に、メラニンは色素細胞の中で生合成される酵素であるチロシナーゼの働きによって形成されるものとされており、チロシナーゼ活性を阻害することでメラニン産生を抑制する作用を発揮する各種の美白成分が提案されている。
【0004】
腐植は、主として、土壌中で植物残渣、微生物遺体などの中の炭水化物及びタンパク質が、長い年月の間に微生物によって分解され、その分解産物が縮合してできる重合体である。腐植には、フルボ酸及びフミン酸といった無定形の重合体が含まれている。フミン酸は、アルカリに可溶であって酸に不溶な赤褐色又は黒褐色無定形高分子有機酸である。一方、フルボ酸は、アルカリ及び酸に可溶な無定形高分子有機酸である。腐植には、フルボ酸及びフミン酸以外にも、脂肪酸、有機酸、アミノ酸、タンパク質、ミネラル等が含まれていることが知られている。
【0005】
このようにフルボ酸(FA:Fulvic acid)は腐植に存在する有機酸であり、米国の一部、日本では佐賀県などにフルボ酸を含む腐植が認められ、産業上フルボ酸の規格化がすすめられている。
【0006】
また、特許文献1において、本発明者らは、フルボ酸が生活習慣病に対して著効を有すること、肝機能が改善されること、及びフルボ酸が脱共役剤として働くことを報告している。
【0007】
なお、フミン酸については、例えば、非特許文献2において抗炎症作用について報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Journal of Investigative Dermatology (2013) 133, 2416-2424
【非特許文献2】Phytother Res. 2015 Jun;29(6):791-5
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、美白剤、オートファジー誘導剤、及び表皮肥厚抑制剤を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、フルボ酸がケラチノサイトにおいてオートファジーを活性化する作用を有するという知見を得た。さらには、このようなフルボ酸によるオートファジーの活性化に基づいて、ケラチノサイトにおいてメラノソームの消化活性が活性化されること、特にミネラルを含むフルボ酸が優れた活性を有することを見出した。また、フルボ酸と、フルボ酸以外の脱共役剤を組み合わせることで、ケラチノサイトにおいてメラノソームの消化活性を更に活性化できることも見出した。
【0012】
本発明は、これら知見に基づき、更に検討を重ねて完成されたものであり、次の美白剤、オートファジー誘導剤、及び表皮肥厚抑制剤を提供するものである。
【0013】
項1.フルボ酸及びミネラルを含有する腐植抽出物、並びに/又はフルボ酸以外の脱共役剤を含む美白剤。
項2.前記脱共役剤がメトフォルミンである、項1に記載の美白剤。
項3.脱共役剤を含むケラチノサイトにおけるオートファジー誘導剤。
項4.前記脱共役剤がフルボ酸を含む腐植抽出物及び/又はメトフォルミンである、項3に記載のオートファジー誘導剤。
項5.脱共役剤を含む表皮肥厚抑制剤。
項6.前記脱共役剤がフルボ酸を含有する腐植抽出物及び/又はメトフォルミンである、項5に記載の表皮肥厚抑制剤。
【発明の効果】
【0014】
脱共役剤は、顕著に優れたケラチノサイトにおけるオートファジー活性化作用、並びに当該オートファジー活性化作用に基づく美白作用及び表皮肥厚抑制作用を有するので、美白剤、ケラチノサイトにおけるオートファジー誘導剤、及び表皮肥厚抑制剤の有効成分として有用である。
【0015】
また、フルボ酸及びミネラルを含有する腐植抽出物は、美白作用が更に優れるので、美白剤の有効成分として特に有用である。さらに、フルボ酸と、フルボ酸以外の脱共役剤を組み合わせることで、美白作用を更に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】オートファジー阻害剤のケラチノサイトに取り込まれたメラノソーム消化活性に及ぼす影響を示すグラフである。n=8. データは、メラノソームを添加していないウェル(Blank)における吸光度を差し引いて、平均値±標準誤差値を示した。One-way ANOVA. ***: P<0.005 vs CRL, ###: P<0.005 vs Hu.
【
図2】脱共役薬であるメトホルミン(MET)とヒューミクルのケラチノサイトに取り込まれたメラノソーム消化活性に及ぼす相加効果を示すグラフである。n=6. データは、メラノソームを添加していないウェル(Blank)における吸光度を差し引いて、平均値±標準誤差値を示した。One-way ANOVA. ***: P<0.005 vs CRL.
【
図3】フルボ酸とミネラルによるケラチノサイトに取り込まれたメラノソーム消化活性に及ぼす相乗効果を示すグラフである。n=6. データは、メラノソームを添加していないウェル(Blank)における吸光度を差し引いて、平均値±標準誤差値を示した。One-way ANOVA. ***: P<0.005 vs CRL.
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0018】
なお、本明細書において「含有する、含む(comprise)」とは、「本質的にからなる(essentially consist of)」という意味と、「のみからなる(consist of)」という意味をも包含する。
【0019】
本発明の美白剤は、脱共役剤(特に、フルボ酸及びミネラルを含有する腐植抽出物、並びに/又はフルボ酸以外の脱共役剤)を含むことを特徴とする。また、本発明のオートファジー誘導剤及び表皮肥厚抑制剤は、脱共役剤を含むことを特徴とする。
【0020】
脱共役剤とは、生物の酸化的リン酸化において、電子伝達系及びATP合成反応の共役を阻害する化合物のことであり、本発明における脱共役剤としては公知の脱共役剤を特に制限せずに使用することができる。そのような脱共役剤としては、例えば、フルボ酸を含有する腐植抽出物、メトフォルミン、ブホルミン、フェンホルミンなどが挙げられる。本発明において脱共役剤は、1種単独又は2種以上を組合せて使用することができる。
【0021】
フルボ酸は、腐植に含まれる物質のうち、アルカリ及び酸に可溶な無定形高分子有機酸である。フルボ酸の原料となる腐植としては、産地、状態などは特に制限されず、いずれの腐植も使用することができる。
【0022】
そのような腐植としては、例えば、米国ユタ州エメリー郡にある古代植物堆積層(頁岩層)から得られるヒューミックシェール(humic shale)が挙げられる。ヒューミックシェールは、約7000~1億2700万年前の多くの栄養素が含まれた肥沃な土壌が石油及び石炭に変性することなく、有機物として残存したものである。前記時代に生息した植物が、氷河期に入ると地下に埋没し、バクテリア等の微生物によってピートモスに変化し、その上に新しい有機物が積み重なって、再度、バクテリア等で分解され、時間の経過とともに堆積層を形成したものである。形成された堆積層に含まれる腐植は、フルボ酸、フミン酸といった有機高分子重合体からなる物質を主成分とし、70種以上の微量のミネラルを含有する。
【0023】
腐植からフルボ酸を抽出する方法としては、特に制限されず、各種公知の方法を使用することができる。抽出手段としては、例えば、固液抽出、液液抽出、浸漬、浸出、煎出、環流抽出、超臨界流体抽出、マイクロ波抽出、混合攪拌等が挙げられる。抽出手段は1種単独又は2種以上を組み合わせて行うことができる。
【0024】
腐植と抽出溶媒とを混合することによりフルボ酸を抽出する場合は、抽出溶媒としては、例えば、水(例えば、蒸留水、イオン交換水、逆浸透圧水など)、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノールなど)、これらの混合液などが挙げられる。当該抽出操作における抽出時間、抽出温度、抽出溶媒のpHなどは、抽出効率などを考慮して適宜設定することができる。
【0025】
腐植の抽出物には、不要物除去及び除菌のために、更にろ過を行ってもよい。ろ過の手段は、特に制限されず、常法により行うことができる。
【0026】
腐植の抽出物には、フルボ酸を単離又は精製する処理を更に行うことができる。そのような単離又は精製処理としては、例えば、濃縮、減圧濃縮、蒸留、分留、転溶、溶媒抽出、結晶化、再結晶、クロマトグラフィーなどが挙げられる。これらの方法は1種単独又は2種以上を組み合わせて行うことができる。
【0027】
本発明で使用する腐植抽出物としては、腐植(腐植物質、腐植質)から抽出されたものであって、フルボ酸、好ましくはフルボ酸及びミネラルを含有するものである限り特に限定されない。また、本発明で使用する腐植抽出物は、上記の方法により製造することができる。
【0028】
腐植抽出物のpHは、酸性領域、例えばpH1~6、好ましくはpH2~5、特にpH3である。腐植抽出物のpHは、適宜pH調整剤を用いて調整してもよい。
【0029】
腐植抽出物としては、フルボ酸が単離又は精製された状態でないもの(粗抽出物など)、及びフルボ酸が単離精製された状態のもののいずれも使用することができる。
【0030】
腐植の抽出物には、フルボ酸及びフミン酸以外にも、脂肪酸、有機酸、アミノ酸、タンパク質、ミネラル等が含まれていることが知られており、腐植抽出物として腐植の粗抽出物を使用する場合は、本発明における腐植抽出物には、フルボ酸以外にも脂肪酸、有機酸、アミノ酸、タンパク質、ミネラル等、特にミネラルが含まれていてもよい。フルボ酸はミネラル類をキレートすることができるため、腐植抽出物にミネラルが含まれる場合には、フルボ酸はミネラルをキレートした状態となっていてもよい。このように、腐植抽出物がフルボ酸に加えてミネラルを含有することにより、美白作用が向上する。
【0031】
また、フルボ酸は、フリーの状態又は塩の状態で使用することができる。フルボ酸の塩としては、例えば、ナトリウム、マグネシウム、カリウム、カルシウム、アルミニウム等の無機塩;メチルアミン、エチルアミン、エタノールアミン等の有機塩基との塩;リジン、オルニチン、アルギニン等の塩基性アミノ酸との塩及びアンモニウム塩が挙げられる。当該塩は、酸付加塩であってもよく、かかる塩としては、具体的には、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等の鉱酸;ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、リンゴ酸、酒石酸、フマル酸、コハク酸、乳酸、マレイン酸、クエン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸等の有機酸;アスパラギン酸、グルタミン酸等の酸性アミノ酸との酸付加塩が挙げられる。フルボ酸には、水和物、溶媒和なども含まれる。
【0032】
腐植抽出物の形態としては、特に制限されず、例えば、粉末状、顆粒状、固形状、溶液状、懸濁液状、乳濁液状、濃縮液状、スラリー状などが挙げられる。
【0033】
腐植抽出物は、自家調製品、又は市販品のいずれも使用できる。腐植抽出物の市販品としては、例えば、株式会社スタイルアンドバリュージャパンより販売されている「ヒューミクル(登録商標)HCフルボ酸パウダー」などが挙げられる。当該ヒューミクルに含まれるフルボ酸は、FT-IR法における赤外線吸収スペクトルにおいて波数3362、2875、1675、1559、1360、1200、1047及び835 cm-1に赤外線吸収ピークを有する(特許第6120342号公報参照)。また、当該ヒューミクルに含まれるフルボ酸の平均分子量は、通常4,000よりも小さく、好ましくは3,500以下であり、特に好ましくは3,000以下であり、更に好ましくは1,000~3,000である。当該ヒューミクルにはミネラルが90質量%以上含まれており、フルボ酸の含量は10質量%未満である。
【0034】
本発明の美白剤は、フルボ酸以外の脱共役剤を更に含むことができ、そのようにフルボ酸とフルボ酸以外の脱共役剤とを組み合わせることで、美白作用を更に向上させることができる。
【0035】
本発明の美白剤、オートファジー誘導剤、及び表皮肥厚抑制剤に含まれる脱共役剤の割合としては、例えば、0.0001~99質量%、0.001~80質量%、0.01~70質量%などが挙げられる。
【0036】
本発明の美白剤、オートファジー誘導剤、及び表皮肥厚抑制剤は、化粧品、飲食品(特に、保健、健康維持、増進等を目的とする飲食品(例えば、健康食品、機能性食品、栄養組成物(nutritional composition)、栄養補助食品、サプリメント、保健用食品、特定保健用食品、栄養機能食品、又は機能性表示食品))、医薬部外品、医薬品などとして使用することができる。また、本発明の美白剤、オートファジー誘導剤、及び表皮肥厚抑制剤は、美白作用、オートファジー誘導作用、及び表皮肥厚抑制作用を付与する添加剤についての意味も包含するものである。
【0037】
上記の飲食品には、脱共役剤をそのまま使用することもでき、必要に応じて、賦形剤、ビタミン類、ミネラル類、フラボノイド類、キノン類、ポリフェノール類、アミノ酸、核酸、必須脂肪酸、清涼剤、結合剤、甘味料、崩壊剤、滑沢剤、着色料、香料、安定化剤、防腐剤、徐放調整剤、界面活性剤、光沢剤、溶解剤、湿潤剤等を配合することができる。
【0038】
飲食品としては哺乳動物(ヒトを含む)が摂取できるあらゆる飲食品が含まれ、例えば、乳製品;発酵食品(ヨーグルト、チーズ等);飲料類(コーヒー、ジュース、ココア、茶飲料、スポーツドリンク、栄養ドリンクのような清涼飲料、乳飲料、乳酸菌飲料、乳酸菌入り飲料、ヨーグルト飲料、炭酸飲料、日本酒、洋酒、果実酒のような酒等);スプレッド類(カスタードクリーム等);ペースト類(フルーツペースト等);洋菓子類(チョコレート、ドーナツ、パイ、シュークリーム、ガム、グミ、ゼリー、キャンデー、クッキー、ケーキ、プリン、ビスケット等);氷菓類(アイスクリーム、アイスキャンデー、シャーベット等);食品類(カレー、牛丼、雑炊、味噌汁、スープ、ミートソース、パスタ、漬物、ジャム、ハム、ソーセージ、ベーコン等);調味料類(ドレッシング、ふりかけ、旨味調味料、スープの素、味噌、醤油、ソース、ケチャップ、オイスターソース等)などが挙げられる。
【0039】
飲食品の製法も特に限定されず、適宜公知の方法に従うことができる。
【0040】
サプリメントとして使用する際の投与単位形態については特に限定されず適宜選択できるが、例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、液剤、散剤等が挙げられる。
【0041】
飲食品の摂取量は、摂取者の体重、年齢、性別、症状などの種々の条件に応じて適宜設定することができる。
【0042】
上記の医薬品には、脱共役剤のみを使用することもでき、ビタミン、生薬など日本薬局方に記載の他の医薬成分と混合して使用することもできる。
【0043】
本発明の美白剤、オートファジー誘導剤、及び表皮肥厚抑制剤を、医薬品として調製する場合、脱共役剤を、医薬品において許容される無毒性の担体、希釈剤若しくは賦形剤とともに、タブレット(素錠、糖衣錠、発泡錠、フィルムコート錠、チュアブル錠、トローチ剤などを含む)、カプセル剤、丸剤、粉末剤(散剤)、細粒剤、顆粒剤、液剤、懸濁液、乳濁液、シロップ、ペースト、注射剤(使用時に、蒸留水又はアミノ酸輸液や電解質輸液等の輸液に配合して液剤として調製する場合を含む)などの形態に調製して、医薬用の製剤にすることが可能である。
【0044】
医薬品の投与方法は特に限定されず、例えば、経皮投与、経口投与、動脈内投与、静脈内投与、口腔内投与、直腸投与、経腸投与などにより行うことができる。
【0045】
医薬品の投与量は、患者の体重、年齢、性別、症状などの種々の条件に応じて適宜決定することができる。
【0046】
上記の化粧品には、脱共役剤以外に、通常化粧品に用いられる成分、例えば、美白剤、保湿剤、酸化防止剤、油性成分、紫外線吸収剤、界面活性剤、増粘剤、アルコール類、粉末成分、色材、水性成分、水、各種皮膚栄養剤等を必要に応じて適宜配合することができる。
【0047】
化粧品には、動物(ヒトを含む)の皮膚、粘膜、体毛、頭髪、頭皮、爪、歯、顔皮、口唇等に適用されるあらゆる化粧品が含まれる。
【0048】
化粧品の剤型は、水溶液系、可溶化系、乳化系、粉末系、油液系、ゲル系、軟膏系、エアゾール系、水-油2層系、水-油-粉末3層系等、幅広い剤型を採り得る。
【0049】
化粧品の用途も任意であり、例えば、基礎化粧品であれば、洗顔料、化粧水、乳液、クリーム、ジェル、エッセンス、美容液、パック、マスク等が挙げられ、メークアップ化粧品であれば、ファンデーション、口紅、頬紅、アイシャドウ、アイライナー、マスカラ等が挙げられ、ネイル化粧料であれば、マニキュア、ベースコート、トップコート、除光液等が挙げられ、その他、洗顔料、(練又は液体)歯磨剤、マウスウォッシュ、マッサージ用剤、クレンジング用剤、アフターシェーブローション、プレシェーブローション、シェービングクリーム、ボディソープ、石けん、シャンプー、リンス、ヘアートリートメント、整髪料、ヘアートニック剤、育毛剤、制汗剤、入浴剤等が挙げられる。
【0050】
本発明の美白剤、オートファジー誘導剤、及び表皮肥厚抑制剤は、ヒトを含む哺乳動物(好ましくはヒト)に対して適用されるものである。
【0051】
なお、本発明における医薬品及び化粧品には、医薬部外品も包含される。
【0052】
後述する試験例で示すように、本発明者らは、脱共役剤であるフルボ酸が、ケラチノサイトにおいてオートファジーを活性化することを見出した。さらに、当該オートファジーの活性化作用に基づいて、フルボ酸が、ケラチノサイトにおけるメラノソームの消化活性を活性化することが観察されたので、美白作用が期待できる。このようにフルボ酸は、日焼け後の色素沈着、シミ、ソバカス、紅斑等の淡色化、くすみを目立たなくさせるなど、美白効果を有し、健康な肌を維持することができるので、美白化粧料、スキンケア化粧料などとして有用である。
【0053】
オートファジー関連遺伝子の欠損により表皮層の肥厚を特徴とする表現型を示すことが知られている(Biochem Biophys Res Commun. 2013 Jan 11;430(2):689-94., J Dermatol Sci. 2013 Jul;71(1):67-75., Exp Dermatol. 2018 Oct;27(10):1142-1151.)。このように、オートファジーが起こらなくなると表皮が肥厚することが知られていることから、フルボ酸はケラチノサイトにおけるオートファジー活性化作用を有するので、表皮肥厚の抑制作用が期待できる。
【0054】
そのため、脱共役剤は、顕著に優れたオートファジー活性化作用、並びに当該オートファジー活性化作用に基づく美白作用及び表皮肥厚抑制作用を有するので、美白剤、ケラチノサイトにおけるオートファジー誘導剤、及び表皮肥厚抑制剤の有効成分として好適に使用できる。フルボ酸及びミネラルを含有する腐植抽出物は、更に優れた美白作用を有するので、美白剤の有効成分として特に好適に使用できる。また、フルボ酸と、フルボ酸以外の脱共役剤を組み合わせることで、美白作用を更に向上させることができる。
【0055】
また、フルボ酸は、天然由来成分であるので、安全性が高い。
【実施例0056】
以下、本発明を更に詳しく説明するため実施例を挙げる。しかし、本発明はこれら実施例等になんら限定されるものではない。
【0057】
試験例1
pMRX-IP-GFP-LC3-RFP (addgene, #84573)をpMXs-puroレトロウイルスベクターにサブクローニングした。これを用いてGFP-LC3-RFPを安定発現するHaCaTを4μg/mlピューロマイシンにより薬剤選別して樹立し、これを用いてオートファジーの測定を行った。実験では、20%牛胎児血清、10 ng/ml hrEGFと抗生物質を添加したアミノ酸を含まないオートファジー専用培地(WAKO, Osaka, Japan)に、MEM必須アミノ酸溶液(50×)(WAKO)を1×の終濃度(1×AA)になるように添加し(以下、オートファジー誘導培地)、ヒューミクルを同時に添加した。当該培地で細胞を培養後、細胞を回収し、フローサイトメーターでGFPとRFPの蛍光強度を測定した。
【0058】
この実験の結果から、ヒューミクルの添加により濃度依存的にオートファジーが亢進することを確認した。
【0059】
試験例2
B16メラノーマ細胞株は、医薬基盤研(JCRB0202, Osaka, Japan)から購入し、10%牛胎児血清を添加したダルベッコイーグル最小必須培地で培養した。96穴プレートに播種した細胞がコンフルエントになった後、ヒューミクルでトリートメントした。72時間後、細胞はDMSOで可溶化し、マイクロプレートリーダーにて490 nmの吸光度を測定した。
【0060】
この実験の結果から、メラノーマにおけるメラニン合成には、ヒューミクルが影響しないことを確認した。
【0061】
試験例3
マウスメラノーマB16細胞を、1×108細胞に細胞破砕液(0.1 M Tris, 1%NP-40, 0.01%SDS, pH 7.5) 10 mlを加え混合し、ピペッティングを行い破砕した。氷上で30分放置した。細胞破砕液を遠心し(1,000 g, 10分)、上清を回収し再度遠心した(20,000 g,10 分)。ペレットをPBS(-)で洗浄、遠心(20,000 g, 10分)し、オートファジー誘導培地1 mlに懸濁しメラノソーム抽出ペレットを調製した。各ウェルには、6μl (7.5×105細胞分相当)のメラノソームを添加した。
【0062】
HaCaTを96穴プレートに播種した。細胞がコンフルエントになった時、B16メラノーマ細胞株から調製したメラノソームを毎日培地交換とともに添加した。4日後、オートファジー誘導培地を用いて、ヒューミクルでトリートメントした。72時間後、細胞はDMSOで可溶化し、マイクロプレートリーダーにて490 nmの吸光度を測定した。
【0063】
この実験の結果から、ヒューミクルの添加により濃度依存的にケラチノサイトにおけるメラノソームの消化活性が向上することを確認した。
【0064】
試験例4
オートファジー阻害剤である3-メチルアデニン(3MA)のケラチノサイトのメラニン消化活性に対する効果を調べた。3MAを添加した以外は試験例3と同様に行った。
【0065】
結果を
図1に示す。5 mM 3MAは、メラノソームを取り込んだHaCaTに対するヒューミクル(Hu)のメラニン除去効果を反転させた。これは、ケラチノサイトにおけるメラニン消化はオートファジーにより生じたことを示している。
【0066】
試験例5
脱共役剤であるメトホルミン(MET)のケラチノサイトのメラニン消化活性に対する効果を調べた。METを添加した以外は試験例3と同様に行った。
【0067】
結果を
図2に示す。500μM METと0.0001% Huはそれぞれ単独では、有意なメラノソーム消化活性を示さなかったが、両方を同時に処置すると、有意な効果を示した。
【0068】
試験例6
フルボ酸とミネラルのケラチノサイトのメラニン消化活性に対する効果を調べた。フルボ酸とミネラルを添加した以外は試験例3と同様に行った。なお、ミネラルは、ヒューミクルを電気炉で強熱処理(600℃、12時間×2回)し、生成物が200 gになるまで繰り返すことで得たものである。
【0069】
結果を
図3に示す。日本腐植物質学会より購入した段戸産フルボ酸(FA)標準品を0.0001%、あるいはヒューミクルから有機物を燃焼させたミネラルを0.01%暴露させても、メラノソーム消化活性は認められなかったが、両方を同時に処置すると、有意な効果を示した。