(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022108144
(43)【公開日】2022-07-25
(54)【発明の名称】浸漬処理装置
(51)【国際特許分類】
B05C 3/10 20060101AFI20220715BHJP
C23C 14/04 20060101ALI20220715BHJP
【FI】
B05C3/10
C23C14/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021003021
(22)【出願日】2021-01-12
(71)【出願人】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】特許業務法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】木村 遼太郎
【テーマコード(参考)】
4F040
4K029
【Fターム(参考)】
4F040AA02
4F040AA20
4F040AB04
4F040BA47
4F040CC09
4F040CC10
4F040CC18
4K029HA02
4K029HA03
(57)【要約】
【課題】被処理体へのパーティクルの付着が低減された浸漬処理装置を提供すること。
【解決手段】浸漬処理装置は、隔壁によって第1の槽と第2の槽とに分離された浸漬槽と、処理液を循環するポンプと、処理液に含まれるパーティクルを除去するフィルターと、を含み、被処理体が第2の槽に浸漬されると、隔壁を超えて第2の槽からオーバーフローした処理液が、第1の槽から排出され、ポンプおよびフィルターを介して、第2の槽に供給されるように循環される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
隔壁によって第1の槽と第2の槽とに分離された浸漬槽と、
処理液を循環するポンプと、
前記処理液に含まれるパーティクルを除去するフィルターと、を含み、
被処理体が前記第2の槽に浸漬されると、前記隔壁を超えて前記第2の槽からオーバーフローした前記処理液が、前記第1の槽から排出され、前記ポンプおよび前記フィルターを介して、前記第2の槽に供給されるように循環される浸漬処理装置。
【請求項2】
前記フィルターは、前記ポンプの出口側に接続されている請求項1に記載の浸漬処理装置。
【請求項3】
前記フィルターは、前記ポンプの入口側に連結されている請求項1に記載の浸漬処理装置。
【請求項4】
前記第1の槽から前記処理液を排出する第1の配管は、前記第1の槽の底面に接続されている請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の浸漬処理装置。
【請求項5】
前記第1の槽の前記底面は、前記第1の配管に向かって傾斜している請求項4に記載の浸漬処理装置。
【請求項6】
前記第2の槽の底面に第2の配管が接続され、
前記第1の配管は、第1の開閉弁を介して、第3の配管と接続され、
前記第2の配管は、第2の開閉弁を介して、前記第3の配管と接続される請求項4または請求項5に記載の浸漬処理装置。
【請求項7】
前記第3の配管は、三方弁を介して、第4の配管に接続され、
前記第4の配管は、前記処理液の供給源に接続される請求項6に記載の浸漬処理装置。
【請求項8】
前記第2の槽に前記処理液を供給する第5の配管は、前記第2の槽の側面に接続され、
前記第2の槽の前記側面と前記第5の配管との接続位置は、前記隔壁の高さの1/2よりも上方であって、前記第2の槽内の前記処理液の液面よりも下方に位置する請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の浸漬処理装置。
【請求項9】
前記接続位置は、前記隔壁の高さの1/3よりも上方である請求項8に記載の浸漬処理装置。
【請求項10】
さらに、前記被処理体を昇降させる昇降部を含む請求項1乃至請求項9のいずれか一項に記載の浸漬処理装置。
【請求項11】
前記昇降部は、バランサーを含む請求項10に記載の浸漬処理装置。
【請求項12】
前記被処理体は、蒸着マスクである請求項1乃至請求項11のいずれか一項に記載の浸漬処理装置。
【請求項13】
前記処理液は、離型剤である請求項1乃至請求項12のいずれか一項に記載の浸漬処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理体を処理液に浸漬する浸漬処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL(Electroluminescence)表示装置は、フラットパネル型表示装置の一つである。有機EL表示装置では、各画素に有機EL素子が設けられる。有機EL素子は、アノード電極およびカソード電極から成る一対の電極間に、有機EL材料を含む層(以下、「有機EL層」という)を挟んだ構造を有する。有機EL層は、発光層、電子注入層、または正孔注入層などの機能層から構成される。有機EL素子は、発光層の有機材料の選択により様々な波長の色で発光させることが可能である。
【0003】
有機EL材料が低分子化合物である場合、有機EL層には、真空蒸着法を用いて薄膜が形成される。真空蒸着法においては、蒸着材料が、高真空下においてヒーターによって加熱され、昇華する。昇華した蒸着材料を、基板の表面に堆積(蒸着)させることで薄膜が形成される。また、真空蒸着法においては、多数の微細な開口パターンを有するマスク(蒸着マスク)を用いることで、開口パターンに対応した高精細な薄膜パターンを形成することができる。
【0004】
蒸着マスクは、製法により分類することができ、エッチングでパターニングされたファインメタルマスク(FMM)と、電鋳技術を用いるエレクトロファインフォーミングマスク(EFM)と、に大別することができる。例えば、特許文献1には、微細な開口パターンを有するマスク本体を電鋳で形成した後、さらに電鋳を用いて、マスク本体とマスクフレームとを接続する蒸着マスクの製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
EFMの製造では、電鋳パターンの現像後に、基板の表面処理を行う場合がある。表面処理は、基板を処理液に浸漬する処理であるが、基板の浸漬処理において、浸漬した基板からパーティクルが剥離し、処理液内にパーティクルが浮遊する場合がある。この場合、浸漬した基板を取り出すときに、浮遊したパーティクルが再度基板に付着する。付着したパーティクルは、電鋳工程において蒸着パターンの開口不良の要因となるため、基板に付着するパーティクルは可能な限り除去されることが望ましい。
【0007】
本発明は、上記問題に鑑み、被処理体へのパーティクルの付着が低減された浸漬処理装置を提供することを課題の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態に係る浸漬処理装置は、隔壁によって第1の槽と第2の槽とに分離された浸漬槽と、処理液を循環するポンプと、処理液に含まれるパーティクルを除去するフィルターと、を含み、被処理体が第2の槽に浸漬されると、隔壁を超えて第2の槽からオーバーフローした処理液が、第1の槽から排出され、ポンプおよびフィルターを介して、第2の槽に供給されるように循環される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係る浸漬処理装置の構成を示す模式図である。
【
図2A】本発明の一実施形態に係る浸漬処理装置の第2の槽の構成を示す模式図である。
【
図2B】本発明の一実施形態に係る浸漬処理装置の第2の槽の構成を示す模式図である。
【
図3A】本発明の一実施形態に係る浸漬処理装置の第2の槽で用いる治具の構成を示す模式図である。
【
図3B】本発明の一実施形態に係る浸漬処理装置の第2の槽の構成を示す模式図である。
【
図4A】本発明の一実施形態に係る浸漬処理装置を用いて製造される蒸着マスクの平面図である。
【
図4B】本発明の一実施形態に係る浸漬処理装置を用いて製造される蒸着マスクの断面図である。
【
図5A】本発明の一実施形態に係る浸漬処理装置を用いた蒸着マスクの製造方法を示す断面図である。
【
図5B】本発明の一実施形態に係る浸漬処理装置を用いた蒸着マスクの製造方法を示す断面図である。
【
図5C】本発明の一実施形態に係る浸漬処理装置を用いた蒸着マスクの製造方法を示す断面図である。
【
図5D】本発明の一実施形態に係る浸漬処理装置を用いた蒸着マスクの製造方法を示す断面図である。
【
図5E】本発明の一実施形態に係る浸漬処理装置を用いた蒸着マスクの製造方法を示す断面図である。
【
図5F】本発明の一実施形態に係る浸漬処理装置を用いた蒸着マスクの製造方法を示す断面図である。
【
図5G】本発明の一実施形態に係る浸漬処理装置を用いた蒸着マスクの製造方法を示す断面図である。
【
図5H】本発明の一実施形態に係る浸漬処理装置を用いた蒸着マスクの製造方法を示す断面図である。
【
図5I】本発明の一実施形態に係る浸漬処理装置を用いた蒸着マスクの製造方法を示す断面図である。
【
図5J】本発明の一実施形態に係る浸漬処理装置を用いた蒸着マスクの製造方法を示す断面図である。
【
図5K】本発明の一実施形態に係る浸漬処理装置を用いた蒸着マスクの製造方法を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の各実施形態について、図面等を参照しつつ説明する。ただし、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲において様々な態様で実施することができ、以下に例示する実施形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0011】
図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合がある。しかし、図面に示す例は、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の構成には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0012】
本発明において、ある一つの膜に対してエッチングや光照射を行うことで複数の膜を形成した場合、これら複数の膜は異なる機能、役割を有することがある。しかしながら、これら複数の膜は同一の工程で同一層として形成された膜に由来し、同一の層構造、同一の材料を有する。したがって、これら複数の膜は同一層に存在しているものと定義する。
【0013】
本明細書および特許請求の範囲において、ある構造体の上に他の構造体が配置された態様を表現する際に、単に「上に」または「上方に」と表記する場合、特に断りの無い限りは、ある構造体に接するように、その構造体の直上に他の構造体が配置される場合と、ある構造体の上方に、さらに別の構造体を介して他の構造体が配置される場合と、の両方を含むものと定義される。本明細書および特許請求の範囲において、単に「下に」まは「下方に」と表記する場合も同様とする。
【0014】
<第1実施形態>
図1~
図2Bを参照して、本発明の一実施形態に係る浸漬処理装置10の構成について説明する。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態に係る浸漬処理装置10の構成を示す模式図である。
図1に示すように、浸漬処理装置10は、浸漬槽100、ポンプ200、およびフィルター300を含む。浸漬槽100は、処理液を貯留することができる第1の槽110-1および第2の槽110-2を含む。第1の槽110-1と第2の槽110-2とは、浸漬槽100内に設けられた隔壁120によって分離されている。隔壁120の高さは、浸漬槽100の側壁の高さよりも低い。そのため、隔壁120を超えて第2の槽110-2からオーバーフローされた処理液は、第1の槽110-1内に貯留することができる。第1の槽110-1の底面には、第1の配管410の一端が接続されている。第2の槽110-2の底面には、第2の配管420の一端が接続されている。第1の配管410の他端は、第1の開閉弁510を介して第3の配管430の第1端に接続されている。第2の配管420の他端は、第2の開閉弁520を介して第3の配管430の第2端に接続されている。第3の配管430の第3端は、三方弁530を介して第4の配管440の一端および第5の配管450の一端に接続されている。第4の配管440の他端は、処理液の供給源または排水管(図示せず)に接続されている。第5の配管の他端は、ポンプ200の入口に接続されている。ポンプ200の出口には、第6の配管460の一端が接続されている。第6の配管460の他端は、フィルター300の入口に接続されている。フィルター300の出口には、第7の配管470の一端が接続されている。第7の配管470の他端は、浸漬槽100の側面(より具体的には、第2の槽110-2の側面)に接続されている。
【0016】
第1の開閉弁510は、第1の配管410から第3の配管430への処理液のフローまたは第3の配管430への処理液のフローを制御する。第2の開閉弁520は、第2の配管420から第3の配管430への処理液のフローまたは第3の配管430から第2の配管への処理液のフローを制御する。三方弁530は、第3の配管430から第4の配管440への処理液のフロー、第3の配管430から第5の配管450への処理液のフロー、または第4の配管440から第5の配管450への処理液のフローを制御する。
【0017】
第1の開閉弁510を開き、第2の開閉弁520を閉じ、および第3の配管430と第5の配管450とが接続されるように三方弁530を開くと、第1の槽110-1とポンプ200とが接続される。ポンプ200の循環機能により、第1の槽110-1内の処理液がポンプ200を介して第2の槽110-2に供給される。
【0018】
第1の開閉弁510を閉じ、第2の開閉弁520を閉じ、および処理液の供給源に接続された第4の配管440と第5の配管450とが接続されるように三方弁530を開くと、処理液の供給源とポンプ200とが接続される。ポンプ200の循環機能により、供給源の処理液が第2の槽110-2に供給される。
【0019】
第1の開閉弁510を閉じ、第2の開閉弁520を開き、および第3の配管430と排水管に接続された第4の配管440とが接続されるように三方弁530を開くと、第2の槽110-2と排水管とが接続される。排水管は第2の槽110-2よりも下方に設けられているため、第2の槽110-2内の処理液は排水管を通じて排水される。
【0020】
浸漬処理装置10における浸漬処理では、第2の槽110-2内に処理液を貯留し、第2の槽110-2内の処理液に被処理体1000を浸漬する。隔壁120を超えて第2の槽110-2からオーバーフローされた処理液は、ポンプ200によって循環され、再び第2の槽110-2に供給される。以下では、浸漬処理装置10を用いる被処理体1000の浸漬処理について詳細に説明する。なお、以下で説明する浸漬処理装置10を用いる浸漬処理は一例であり、浸漬処理装置10を用いる浸漬処理はこれに限られない。
【0021】
始めに、第1の開閉弁510および第2の開閉弁520を閉じ、処理液の供給源に接続された第4の配管440と第5の配管450とが接続されるように三方弁530を開く。ポンプ200を作動させ、供給源から第2の槽110-2に処理液を供給し、第2の槽110-2に処理液を貯留する。第2の槽110-2内に供給される処理液は、隔壁120を超えて、第1の槽110-1に貯留されてもよい。すなわち、第2の槽110-2に貯留された処理液の液面は、隔壁120の高さとほぼ同じ高さにあってもよく、隔壁120の高さより低くてもよい。第2の槽110-2内に所定の処理液の量が貯留されたとき、第3の配管430と第5の配管450とが接続されるように三方弁530を開く。
【0022】
次に、第2の槽110-2に、被処理体1000を浸漬する。このとき、第2の槽110-2内の処理液が隔壁120を超えて、第1の槽110-1内に所定の量の処理液をオーバーフローさせることが好ましい。第2の槽110-2内の処理液が隔壁120を超えてオーバーフローしない場合、または第1の槽110-1内に所定の量の処理液が貯留されていない場合には、供給源から第2の槽110-2に、さらに処理液を供給してもよい。第1の開閉弁510を開き、第2の開閉弁520を閉じ、および第3の配管430と第5の配管450とが接続されるように三方弁530を開くと、第1の槽110-1内の処理液が排出され、フィルター300を通過した処理液が第2の槽110-2に供給される。第2の槽110-2への処理液の供給により、第2の槽110-2内に貯留された処理液が隔壁120を超えて、第1の槽110-1に貯留される。すなわち、処理液が浸漬処理装置10内で循環される。
【0023】
被処理体1000が第2の槽110-2に浸漬されると、被処理体1000に付着されていたパーティクルなどが剥離される場合がある。処理液の密度よりも大きい密度を有するパーティクルは第2の槽110-2の底面近傍に集まり、処理液の密度よりも小さい密度を有するパーティクルは処理液の液面近傍に集まる。処理液の液面近傍に集まったパーティクルは、処理液のオーバーフローとともに、第1の槽110-1に移動する。第1の槽110-1に移動したパーティクルの一部は、ポンプ200によって第1の配管410へ流れ込むが、フィルター300によって除去されることができる。したがって、第2の槽110-2に供給される循環された処理液は、パーティクルを含んでいないものとなる。
【0024】
第2の槽110-2の側面と第7の配管470の他端との接続位置は、隔壁120の高さの1/2よりも上方であって、第2の槽110-2内の処理液の液面(すなわち、隔壁120の高さ)よりも下方に位置することが好ましく、隔壁120の高さの1/3よりも上方であって、第2の槽110-2内の処理液の液面よりも下方に位置することがさらに好ましい。このような接続位置とすることにより、第7の配管470から第2の槽110-2に流入する処理液の流れが、第2の槽110-2の液面近傍に集まったパーティクルを再拡散させないようにすることができる。したがって、第2の槽110-2内の処理液の液面近傍に集まったパーティクルを効果的に除去することができる。換言すれば、処理液の上澄みをオーバーフローし、上澄みに含まれるパーティクルを効果的に除去することができる。
【0025】
フィルター300は、ポンプ200の入口側に設けられていてもよい。例えば、三方弁530とポンプ200との間にフィルター300を設けてもよい。このような構成の場合、ポンプ200にパーティクルが入り込むことを防止することができるため、ポンプ200のオーバーホールの周期が長くなる。
【0026】
第1の槽110-1の容積と第2の槽110-2の容積は、同じであってもよく、異なっていてもよい。また、第1の配管410の径と第7の配管470の径は、同じであってもよく、異なっていてもよい。例えば、第1の槽110-1の容積が第2の槽110-2の容積よりも小さくなるように隔壁120が設けられることにより、または第1の配管410の径が第7の配管の径よりも小さいことにより、第1の槽110-1内に貯留される処理液の液面を調整することができる。
【0027】
被処理体1000を一定時間浸漬した後、第2の槽110-2から被処理体1000を引き上げる。続いて、第2の槽110-2に、別の被処理体1000を浸漬し、同様の処理を実行することができる。このとき、前の浸漬処理に伴って、第2の槽110-2の処理液は被処理体1000の浸漬分だけ減少しているので、別の被処理体1000の投入前に、処理液の追加が行われてもよい。なお、パーティクルの発生量によっては、処理液の追加は毎回実施されなくてもよく、例えば、被処理体1000を数枚処理した後に処理液の追加が行われてもよい。
【0028】
被処理体1000の浸漬処理が完了した後、第1の開閉弁510を開き、第2の開閉弁520を開き、第3の配管430が排水管に接続された第4の配管440と接続されるように三方弁530を開く。第1の槽110-1内に貯留された処理液および第2の槽110-2内に貯留された処理液は、排水管を通じて排水される。処理液の排水と同時に、第1の槽110-1内および第2の槽110-2内に残存するパーティクルも排出される。最後に、ポンプ200を停止する。
【0029】
浸漬処理装置10では、被処理体1000の浸漬で用いる処理液を循環することができるため、処理液を節約することができる。また、浸漬処理装置10では、第2の槽110-2内の処理液に含まれたパーティクルが隔壁120を超え、第1の槽110-1から排出され、フィルター300によってパーティクルが除去される。そのため、被処理体1000が浸漬される第2の槽110-2内に貯留する処理液に含まれるパーティクルを低減することができ、被処理体1000へパーティクルが付着することを防止することができる。したがって、被処理体1000の浸漬処理工程の歩留まりが向上する。
【0030】
浸漬処理装置10は、さらに、昇降部600を含んでいてもよい。例えば、昇降部600は、バランサー610および滑車620を含むことができる。滑車620を介して、バランサー610と反対側に被処理体1000を設置し、バランサー610を制御することによって、被処理体1000を昇降することができる。
【0031】
図2Aおよび
図2Bは、本発明の一実施形態に係る浸漬処理装置10の第2の槽110-2の構成を示す模式図である。ここでは、被処理体1000が平板であるとして説明する。
図2Aおよび
図2Bに示すように、第2の槽110-2には、第1のガイド111-1および第2のガイド111-2が設けられている。また、第1のガイド111-1および第2のガイド111-2には、それぞれ、第1の溝部112-1および第2の溝部112-2が設けられている。被処理体1000の第1辺は、第1の溝部112-1と係合し、被処理体1000の第1辺の反対に位置する第2辺は、第2の溝部112-2と係合することができる。そのため、第2の槽110-2に被処理体1000を浸漬する場合、第1のガイド111-1および第2のガイド111-2に沿って、被処理体1000を第2の槽110-2内の処理液に沈めることができる。
【0032】
被処理体1000が平板または略平板である場合、被処理体1000を立てて第2の槽110-2内の処理液に沈めることが好ましい。換言すれば、浸漬処理装置10は、縦型浸漬処理装置であることが好ましい。このような構成により、被処理体1000を第2の槽110-2から引き上げるときに、被処理体1000と処理液の液面との接触が小さくなるため、処理液に含まれるパーティクルが被処理体1000に付着しにくくなる。また、浸漬処理装置10が縦型浸漬処理装置であると、浸漬処理装置10の接地面積を減少させることができる。
【0033】
また、第2の槽110-2の底面は、第2の配管420に向かって傾斜していてもよい。このような構成により、第2の槽110-2内の処理液を排水する際、処理液に含まれるパーティクルを第2の配管420から排出しやすくなる。同様に、第1の槽110-1の底面も、第1の配管410に向かって傾斜していてもよい。
【0034】
図2Aおよび
図2Bでは、被処理体1000が平板である場合における第1のガイド111-1および第2のガイド111-2の構成を説明したが、第1のガイド111-1および第2のガイド111-2の構成はこれに限られない。第1のガイド111-1および第2のガイド111-2に被処理体1000のガイドが設けられ、ガイドに沿って被処理体1000が移動できる構成であればよい。
【0035】
<変形例>
図3Aおよび
図3Bを参照して、本発明の一実施形態に係る浸漬処理装置10の第2の槽110-2の一変形例である第2の槽110A-2について説明する。第2の槽110A-2では、被処理体1000の固定に治具700を使用する。
【0036】
図3Aは、本発明の一実施形態に係る浸漬処理装置10の第2の槽110A-2で用いる治具700の構成を示す模式図である。
図2Aに示すように、治具700は、固定部710、第1の係止部720、および複数の第2の係止部730を含む。固定部710は、平板である。第1の係止部720および複数の第2の係止部730は、固定部710の表面上に設けられている。第1の係止部720は、例えば、係止板であり、固定部710の下方に設けられている。第1の係止部720は、複数設けられていてもよい。複数の第1の係止部720が設けられる場合、第1の係止部720は、係止ピンであってもよい。第2の係止部730は、例えば、係止爪であり、固定部710の側面近傍に設けられている。第2の係止部730は、固定部710に対して回動可能に固定されていることが好ましい。例えば、第2の係止部730がピンおよび爪を有する係止爪である場合、第2の係止部730は、ピンが固定部710に固定され、爪が回動可能にピンに軸支された構成とすることができる。
【0037】
また、固定部710の両側面には、段差が設けられている。すなわち、固定部710の一方の側面には第1の凸部711-1が設けられ、固定部710の他方の側面には第2の凸部711-2が設けられている。
【0038】
図3Bは、本発明の一実施形態に係る浸漬処理装置10の第2の槽110A-2の構成を示す模式図である。ここでは、被処理体1000が平板であるとして説明する。
図2Bに示すように、被処理体1000の下部は第1の係止部720によって係止され、被処理体1000の両側部は複数の第2の係止部730によって係止されている。すなわち、被処理体1000は、第1の係止部720および第2の係止部730を用いて、固定部710に固定されている。換言すれば、被処理体1000は、治具700に固定されている。
【0039】
第2の槽110A-2には、第1のガイド111A-1および第2のガイド111A-2が設けられている。また、第1のガイド111A-1および第2のガイド111A-2には、それぞれ、第1の溝部112A-1および第2の溝部112A-2が設けられている。固定部710の第1の凸部711-1は、第1の溝部112A-1と係合し、固定部710の第2の凸部711-2は、第2の溝部112A-2と係合することができる。そのため、第2の槽110A-2に被処理体1000を浸漬する場合、治具700が第1のガイド111A-1および第2のガイド111A-2に沿って移動することによって、治具700とともに、治具700に固定された被処理体1000を第2の槽110A-2内の処理液に沈めることができる。
【0040】
図3Aおよび
図3Bでは、被処理体1000が平板である場合における治具700、第1のガイド111A-1、および第2のガイド111A-2の構成を説明したが、治具700、第1のガイド111A-1、および第2のガイド111A-2の構成はこれに限られない。治具700は、被処理体1000を固定部710に固定することができる構成であればよい。また、第1のガイド111A-1および第2のガイド111A-2に固定部710のガイドが設けられ、ガイドに沿って固定部710が移動できる構成であればよい。
【0041】
治具700は、第2の槽110A-2から取り外し可能に固定されていてもよい。また、治具700を使用しない場合、または治具700に被処理体1000が固定されていない場合には、処理液が貯留された第2の槽110A-2内に保管されていてもよい。
【0042】
<第2実施形態>
本発明の一実施形態に係る浸漬処理装置10は、さまざまな被処理体1000に対して浸漬処理を実行することができる。例えば、浸漬処理装置10は、被処理体1000として、蒸着マスク1100の製造における浸漬処理工程の中で使用することができる。そこで、以下では、
図4A~
図5Kを参照して、浸漬処理装置10を用いる蒸着マスク1100の製造方法について説明する。
【0043】
[蒸着マスク1100]
始めに、
図4Aおよび
図4Bを参照して、蒸着マスク1100について説明する。
【0044】
図4Aは、本発明の一実施形態に係る浸漬処理装置10を用いて製造される蒸着マスク1100の平面図である。また、
図4Bは、本発明の一実施形態に係る浸漬処理装置10を用いて製造される蒸着マスク1100の断面図である。具体的には、
図4Bは、
図4Aに示すA-A’線に沿って切断された蒸着マスク1100の断面図である。
図4Aおよび
図4Bに示すように、蒸着マスク1100は、マスク本体1110、マスクフレーム1120、および接続部1130を含む。マスク本体1110とマスクフレーム1120とは、接続部1130を介して接続されている。マスク本体1110とマスクフレーム1120とは重畳していない。すなわち、マスクフレーム1120の下方に、マスク本体1110は設けられていない。マスクフレーム1120の下方には、マスクフレーム1120および接続部1130に囲まれた凹部1140が設けられている。
【0045】
マスク本体1110は、開口領域1111および非開口領域1112を含む。開口領域1111には、マスク本体1110を貫通し、蒸着パターンに対応する開口1113が設けられている。一方、非開口領域1112には、開口1113が設けられていない。開口領域1111と非開口領域1112との境界は必ずしも明確ではない。しかしながら、多くの場合、開口1113は蒸着パターンにしたがって設けられるため、隣接する2つの開口1113の間隔は所定のピッチを有する。そのため、蒸着パターンの所定のピッチを基準にして、開口領域1111と非開口領域1112とを区別することが可能である。
【0046】
マスク本体1110の厚さは、例えば、1μm以上10μm以下である。また、マスク本体1110は、電鋳(または電解メッキ)で用いる材料で形成されることが好ましい。マスク本体1110は、例えば、ニッケルまたはニッケル合金などの材料で形成されることができる。
【0047】
なお、蒸着において、有機材料は、マスク本体1110の開口1113のみを通過して堆積することができるため、被蒸着基板には、開口1113に対応するパターン(蒸着パターン)が形成される。そのため、開口1113は、表示装置の画素の配列と対応して設けることができ、例えば、マトリクス状に配置することができる。
【0048】
マスクフレーム1120は、枠部1121および枠部1121内に設けられた橋架部1122を含む。蒸着マスク1100では、橋架部1122によって、複数の領域に分割されている。分割された複数の領域のそれぞれに、マスク本体1110が設けられている。マスクフレーム1120のサイズが大きくなると、枠部1121の反りまたはねじれによってマスクフレーム1120の平行度を所定の基準に保持することが困難な場合がある。蒸着マスク1100では、橋架部1122が枠部1121の剛性を高めることにより、マスクフレーム1120の平行度を所定の基準に保持することができる。なお、蒸着マスク1100のサイズが小さく、枠部1121の剛性が十分高い場合には、橋架部1122を設けなくてもよい。
【0049】
マスクフレーム1120は、枠部1121と橋架部1122とが一体化して形成されていてもよく、枠部1121と橋架部1122とが別々に作製され、枠部1121と橋架部1122とが溶接されて形成されていてもよい。
【0050】
図4Aでは、マスクフレーム1120は、橋架部1122によって12個の領域に分割されているが、分割された領域の数は、これに限られない。分割された領域の数は、被蒸着基板の大きさや蒸着パターンに合わせて適宜決定することができる。また、橋架部1122の配置は、格子状に限られない。マスクフレーム1120が短辺および長辺を有する長方形である場合、短辺よりも長辺で反りまたはねじれが生じやすい。そのため、向かい合う長辺を橋架するように橋架部1122が設けられていることが好ましい。また、橋架部1122の配置は、蒸着パターンに応じた形状としてもよい。
【0051】
枠部1121の幅および橋架部1122の幅は、蒸着マスク1100の大きさに合わせて適宜決定することができる。なお、蒸着パターンの領域をできる限り大きくするため、橋架部1122の幅は枠部1121の幅よりも小さいことが好ましい。
【0052】
マスクフレーム1120の厚さは、例えば、10μm以上2000μm以下である。また、マスクフレーム1120は、熱膨張係数の小さい材料で形成されることが好ましい。マスクフレーム1120は、例えば、鉄およびニッケルを含有するインバーまたは鉄、ニッケル、およびコバルトを含有するスーパーインバーなどの材料で形成されることができる。
【0053】
接続部1130は、マスクフレーム1120の枠部1121または橋架部1122の側面の少なくとも一部に設けられていればよい。ただし、マスク本体1110とマスクフレーム1120との接合強度を大きくするため、接続部1130は、枠部1121または橋架部1122の側面の1/2以上に設けられていることが好ましく、枠部1121または橋架部1122の側面の全面に設けられていることがさらに好ましい。また、接続部1130は、電鋳で用いる材料で形成されることが好ましい。接続部1130は、例えば、ニッケルまたはニッケル合金などの材料で形成されることができる。
【0054】
[蒸着マスク1100の製造方法]
続いて、
図5A~
図5Gを参照して、蒸着マスク1100の製造方法について説明する。
【0055】
図5A~
図5Kは、本発明の一実施形態に係る浸漬処理装置10を用いた蒸着マスク1100の製造方法を示す断面図である。
【0056】
図5A~
図5Fは、第1の電鋳工程を説明する図である。支持基板1210上に金属層1220を形成する(
図5A)。支持基板1210は、蒸着マスク1100の製造工程において、各層を支持することができる。そのため、支持基板1210は、剛性基板であることが好ましい。蒸着マスク1100の製造工程には、支持基板1210を加熱する工程が含まれる。加熱処理によって支持基板1210が膨張または縮小すると、支持基板1210上に形成されるフォトレジスト層1230の位置ズレが生じるだけでなく、応力によって剥離される場合もある。そのため、蒸着マスク1100の製造工程を安定させるためにも、支持基板1210は、熱膨張係数が小さい剛性基板であることがさらに好ましい。支持基板1210の材料としては、例えば、ステンレス(SUS304またはSUS430など)、42アロイ、インバー、スーパーインバー、またはステンレスインバーなどである。金属層1220は、第1電鋳工程における下地金属として機能することができる。金属層1220の材料としては、例えば、ニッケルまたはニッケル合金などである。金属層1220は、スパッタリングなどによって形成することができる。
【0057】
蒸着マスク1100は、電鋳ではなく、無電解メッキを用いて製造することもできる。この場合、金属層1220の代わりに、絶縁層を用いることもできる。
【0058】
次に、金属層1220上にフォトレジスト層1230を形成する(
図5B)。フォトレジスト層1230は、第1電鋳工程におけるマスクとして機能することができる。フォトレジスト層1230は、所定の膜厚を有するように、金属層1220上に1つまたは複数の感光性ドライフィルムレジストを配置し、熱圧着によって形成される。感光性ドライフィルムレジストは、ポジ型またはネガ型のいずれであってもよい。なお、以下では、感光性ドライフィルムがネガ型であるとして説明する。
【0059】
次に、所定のパターンを有するフォトマスク1240を用いて、フォトレジスト層1230を露光する(
図5C)。フォトマスク1240は、蒸着マスク1100のマスク本体1110の開口パターンに対応するパターンを有する。フォトマスク1240が、フォトレジスト層1230に密着され、紫外線を照射することによって、フォトレジスト層1230が露光される。
【0060】
次に、フォトレジスト層1230を現像し、第1の電鋳パターン層1250を形成する(
図5D)。フォトレジスト層1230の露光された部分以外が除去される。また、第1の電鋳パターン層1250が形成された支持基板1210は、処理液として離型剤を用いた浸漬処理が実行される。離型剤による浸漬処理においては、浸漬処理装置10が使用される。フォトレジスト層1230の現像においては、形成された第1の電鋳パターン層1250にパーティクルが付着している場合があり、パーティクルは、第1の電鋳工程における不良の要因となる。浸漬処理装置10を使用することにより、第1の電鋳パターン層1250からパーティクルを除去することができるため、第1の電鋳工程における不良が低減し、蒸着マスク1100の歩留まりが向上する。また、離型剤による浸漬処理によって、金属層1220の露出された部分に皮膜が形成される。皮膜が形成されることによって、後述する剥離工程において、金属層1220を容易に剥離することができる。
【0061】
離型剤は、例えば、チアゾール系化合物、カチオン系界面活性剤、または硫酸などを含む。
【0062】
次に、第1の電鋳パターン層1250をマスクとして、第1の電鋳層1260を形成する(
図5E)。第1の電鋳層1260は、電鋳により形成することができる。具体的には、金属層1220および第1の電鋳パターン層1250が形成された支持基板1210を所定の条件に建浴した電鋳槽に入れ、第1の電鋳パターン層1250に覆われていない金属層1220の表面から、フォトレジスト層1230の高さまで金属メッキを形成する。第1の電鋳層1260の材料としては、例えば、ニッケルまたはニッケルおよびコバルトの合金などである。
【0063】
次に、第1の電鋳パターン層1250を除去する(
図5F)。第1の電鋳パターン層1250は、例えば、アミン系の剥離液によって除去することができる。
【0064】
第1の電鋳パターン層1250を除去する前に、電鋳によって形成された第1の電鋳層1260を研磨してもよい。第1の電鋳層1260を研磨することにより、第1の電鋳層1260の表面を平坦化することができる。
【0065】
図5Gおよび
図5Hは、マスクフレーム接着工程を説明する図である。第1の電鋳層1260上に、保護層1270を形成する(
図5G)。保護層1270は、マスク本体1110の開口1113に対応する領域を保護するように設けられ、後述の工程によって発生するパーティクルが開口1113に入り込み、開口1113が塞がれることを防止することができる。また、保護層1270は、後述する第2の電鋳工程のマスクとして機能することができる。
【0066】
保護層1270は、フォトレジスト層1230と同様の材料を用いることができる。また、保護層1270は、フォトレジスト層1230と同様の方法で形成することができる。
【0067】
また、保護層1270が形成された支持基板1210は、処理液として離型剤を用いた浸漬処理が実行されてもよい。離型剤による浸漬処理においては、浸漬処理装置10が使用される。浸漬処理装置10を使用することにより、保護層1270からパーティクルを除去することができるため、後述する第2の電鋳工程における不良が低減し、蒸着マスク1100の歩留まりが向上する。また、離型剤による浸漬処理によって、金属層1220の露出された部分に皮膜が形成される。皮膜が形成されることによって、後述する剥離工程において、金属層1220を容易に剥離することができる。
【0068】
次に、第1の電鋳層1260の保護層1270が設けられていない部分の上に、接着層1280を介して、マスクフレーム1120を接着する(
図5H)。マスクフレーム1120の接着は、例えば、真空圧着によって行うことができる。すなわち、マスクフレーム1120を覆うようにフィルムを配置し、支持基板1210とフィルムとの間の空気を排気(真空排気)し、フィルムの下方側(支持基板1210側)の圧力を下げる。フィルムの上方側と下方側との圧力差により、フィルムは支持基板1210側に引き付けられる。フィルムの下方側の圧力をさらに下げると、フィルムがマスクフレーム1120を押圧する。フィルムからの押圧を受けて、マスクフレーム1120は、接着層1280を介して、第1の電鋳層1260と強く接着される。
【0069】
図5Iおよび
図5Jは、第2の電鋳工程を説明する図である。マスク本体1110とマスクフレーム1120とを接続する第2の電鋳層1290を形成する(
図5I)。第2の電鋳層1290は、金属層1220またはマスクフレーム1120に通電する電鋳によって形成することができる。第2の電鋳層1290は、第1の電鋳層1260と同様の方法で形成することができる。
【0070】
次に、保護層1270を除去する(
図5J)。保護層1270は、フォトレジスト層1230と同様の方法で剥離することができる。第2の電鋳層1290は、マスク本体1110の側面と第1の電鋳層1260の側面とを接続する。すなわち、第2の電鋳層1290は、蒸着マスク1100の接続部1130に対応する。そのため、以下では、便宜上、第2の電鋳層1290を接続部1130として説明する。
【0071】
図5Kは、支持基板剥離工程を説明する図である。第1の電鋳層1260から、支持基板1210および金属層1220剥離する(
図5K)。このとき、マスクフレーム1120の下方の接着層1280も、金属層1220とともに剥離されるため、マスクフレーム1120の下方に位置する第1の電鋳層1260の一部が剥離される。すなわち、マスクフレーム1120の下方に凹部1140が形成され、接続部1130に接続されたマスク本体1110が形成される。支持基板1210および金属層1220は、同時に分離されてもよく、支持基板1210を分離した後、金属層1220が分離されてもよい。
【0072】
以上の工程により、蒸着マスク1100が作製される。蒸着マスク1100は、浸漬処理装置10を用いた浸漬処理を行っているため、蒸着マスク1100の歩留まりが向上する。
【0073】
なお、蒸着マスク1100の製造方法における工程の順序は、上述したものに限られない。例えば、
図5Gに示した保護層1270の形成は、
図5Hに示したマスクフレーム1120を第1の電鋳層1260に接着させた後に行ってもよい。また、
図5Jに示した保護層1270の除去は、
図5Kに示した支持基板1210の剥離後に行ってもよい。
【0074】
本発明の実施形態として上述した各実施形態は、相互に矛盾しない限りにおいて、適宜組み合わせて実施することができる。また、各実施形態を基にして、当業者が適宜構成要素の追加、削除または設計変更を行ったもの、もしくは、工程の追加、省略または条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【0075】
上述した各実施形態の態様によりもたらされる作用効果とは異なる他の作用効果であっても、本明細書の記載から明らかなもの、または、当業者において容易に予測し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと解される。
【符号の説明】
【0076】
10:浸漬処理装置、 100:浸漬槽、 110-1:第1の槽、 110-2、110A-2:第2の槽、 111-1、111A-1:第1のガイド、 111-2、111A-2:第2のガイド、 112-1、112A-1:第1の溝部、 112-2、112A-2:第2の溝部、 120:隔壁、 200:ポンプ、 300:フィルター、 410:第1の配管、 420:第2の配管、 430:第3の配管、 440:第4の配管、 450:第5の配管、 460:第6の配管、 470:第7の配管、 510:第1の開閉弁、 520:第2の開閉弁、 530:三方弁、 600:昇降部、 610:バランサー、 620:滑車、 700:治具、 710:固定部、 711-1:第1の凸部、 711-2:第2の凸部、 720:第1の係止部、 730:第2の係止部、 1000:被処理体、 1100:蒸着マスク、 1110:マスク本体、 1111:開口領域、 1112:非開口領域、 1113:開口、 1120:マスクフレーム、 1121:枠部、 1122:橋架部、 1130:接続部、 1140:凹部、 1210:支持基板、 1220:金属層、 1230:フォトレジスト層、 1240:フォトマスク、 1250:第1の電鋳パターン層、 1260:第1の電鋳層、 1270:保護層、 1280:接着層、 1290:第2の電鋳層