(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022108161
(43)【公開日】2022-07-25
(54)【発明の名称】光学装置及び固浸レンズ
(51)【国際特許分類】
G02B 21/00 20060101AFI20220715BHJP
【FI】
G02B21/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021003043
(22)【出願日】2021-01-12
(71)【出願人】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【弁理士】
【氏名又は名称】柴山 健一
(72)【発明者】
【氏名】上野山 聡
【テーマコード(参考)】
2H052
【Fターム(参考)】
2H052AB02
2H052AD27
(57)【要約】
【課題】薄型化及び取り扱いの容易化が実現された固浸レンズを備える光学装置、及びそのような固浸レンズを提供する。
【解決手段】光学装置は、半導体デバイス11を支持するステージと、ステージによって支持された半導体デバイス11に当接させられる固浸レンズ60と、固浸レンズ60を通る光路上の位置のうち固浸レンズ60に対してステージとは反対側の位置に配置された光検出器と、を備える。固浸レンズ60は、半導体デバイス11に当接させられる第1表面61a、及び、第1表面61aとは反対側の第2表面61bを有する基部61と、第2表面61bに配置されたメタレンズ62と、を含む。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を支持する支持部と、
前記支持部によって支持された前記対象物に当接させられる固浸レンズと、
前記固浸レンズを通る光路上の位置のうち前記固浸レンズに対して前記支持部とは反対側の位置に配置された光学デバイスと、を備え、
前記固浸レンズは、
前記対象物に当接させられる第1表面、及び、前記第1表面とは反対側の第2表面を有する基部と、
前記第2表面に配置されたメタレンズと、を含む、光学装置。
【請求項2】
前記光学デバイスは、光検出器である、請求項1に記載の光学装置。
【請求項3】
前記光学デバイスは、光源である、請求項1又は2に記載の光学装置。
【請求項4】
前記第1表面の面積は、前記第2表面の面積よりも小さい、請求項1~3のいずれか一項に記載の光学装置。
【請求項5】
前記基部は、前記第1表面を有する第1部分と、前記第2表面を有する第2部分と、を含み、
前記メタレンズの光軸に平行な方向から見た場合に、前記第2部分の外縁は、前記第1部分の外縁の外側に位置しており、
前記第1部分及び前記第2部分は、一体で形成されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の光学装置。
【請求項6】
前記光路上の位置のうち前記固浸レンズと前記光学デバイスとの間の位置に配置された対物レンズを更に備える、請求項1~5のいずれか一項に記載の光学装置。
【請求項7】
前記対象物は、半導体デバイスである、請求項1~6のいずれか一項に記載の光学装置。
【請求項8】
対象物に当接させられる第1表面、及び、前記第1表面とは反対側の第2表面を有する基部と、
前記第2表面に配置されたメタレンズと、を備え、
前記第1表面の面積は、前記第2表面の面積よりも小さい、固浸レンズ。
【請求項9】
前記基部は、前記第1表面を有する第1部分と、前記第2表面を有する第2部分と、を含み、
前記メタレンズの光軸に平行な方向から見た場合に、前記第2部分の外縁は、前記第1部分の外縁の外側に位置しており、
前記第1部分及び前記第2部分は、一体で形成されている、請求項8に記載の固浸レンズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学装置及び固浸レンズに関する。
【背景技術】
【0002】
対象物を観察するための方法として、固浸レンズを対象物に当接させて、対象物の拡大画像を取得し、対象物を観察する方法が知られている。例えば、特許文献1には、入射光の波長よりも短い周期で配列された複数のアンテナ部を有するメタ固浸レンズを用意し、複数のアンテナ部を対象物に当接させて、高い空間分解能で対象物の拡大画像を取得する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載のメタ固浸レンズは、固浸レンズを薄型化することができる点において有効であるが、複数のアンテナ部を対象物に当接させる際に、複数のアンテナ部を破損させないように、細心の注意を要する。
【0005】
そこで、本発明は、薄型化及び取り扱いの容易化が実現された固浸レンズを備える光学装置、及びそのような固浸レンズを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の光学装置は、対象物を支持する支持部と、支持部によって支持された対象物に当接させられる固浸レンズと、固浸レンズを通る光路上の位置のうち固浸レンズに対して支持部とは反対側の位置に配置された光学デバイスと、を備え、固浸レンズは、対象物に当接させられる第1表面、及び、第1表面とは反対側の第2表面を有する基部と、第2表面に配置されたメタレンズと、を含む。
【0007】
この光学装置では、固浸レンズが、基部の第2表面に配置されたメタレンズを含んでいる。これにより、メタレンズに含まれる複数のアンテナの大きさ、形状及び配置の少なくとも一つを基部の第2表面に沿った方向において制御することで、メタレンズの実効屈折率を制御することができる。したがって、固浸レンズを薄型化することができる。また、固浸レンズが対象物に当接させられる際には、基部の第1表面が対象物に当接させられる。これにより、例えば、メタレンズを対象物に当接させる場合に比べ、固浸レンズを容易に取り扱うことができる。よって、この光学装置によれば、固浸レンズの薄型化及び固浸レンズの取り扱いの容易化を実現することができる。
【0008】
本発明の光学装置では、光学デバイスは、光検出器であってよい。これによれば、対象物から出射された光、又は、対象物によって反射された光を精度良く検出することができる。
【0009】
本発明の光学装置では、光学デバイスは、光源であってよい。これによれば、対象物に光を精度良く照射することができる。
【0010】
本発明の光学装置では、第1表面の面積は、第2表面の面積よりも小さくてもよい。これによれば、固浸レンズの保持のために十分なサイズを基部において確保しつつも、例えば、空気層の介在が防止されるように、基部の第1表面を対象物に確実に当接させることができる。
【0011】
本発明の光学装置では、基部は、第1表面を有する第1部分と、第2表面を有する第2部分と、を含み、メタレンズの光軸に平行な方向から見た場合に、第2部分の外縁は、第1部分の外縁の外側に位置しており、第1部分及び第2部分は、一体で形成されていてよい。これによれば、第2部分において固浸レンズを安定して保持することができる。また、光の屈折及び反射の原因となる界面が第1部分と第2部分との間に形成されるのを防止することができる。
【0012】
本発明の光学装置は、光路上の位置のうち固浸レンズと光学デバイスとの間の位置に配置された対物レンズを更に備えてもよい。これによれば、対物レンズの焦点を対象物の所望の位置に精度良く合わせることができる。
【0013】
本発明の光学装置では、対象物は、半導体デバイスであってもよい。これによれば、例えば、半導体デバイスの故障解析を精度良く実施することができる。
【0014】
本発明の固浸レンズは、対象物に当接させられる第1表面、及び、第1表面とは反対側の第2表面を有する基部と、第2表面に配置されたメタレンズと、を備え、第1表面の面積は、第2表面の面積よりも小さい。
【0015】
この固浸レンズによれば、上述したように、固浸レンズの薄型化及び固浸レンズの取り扱いの容易化を実現することができる。また、固浸レンズの保持のために十分なサイズを基部において確保しつつも、例えば、空気層の介在が防止されるように、基部の第1表面を対象物に確実に当接させることができる。
【0016】
本発明の固浸レンズでは、基部は、第1表面を有する第1部分と、第2表面を有する第2部分と、を含み、メタレンズの光軸に平行な方向から見た場合に、第2部分の外縁は、第1部分の外縁の外側に位置しており、第1部分及び第2部分は、一体で形成されていてよい。これによれば、第2部分において固浸レンズを安定して保持することができる。また、光の屈折及び反射の原因となる界面が第1部分と第2部分との間に形成されるのを防止することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、薄型化及び取り扱いの容易化が実現された固浸レンズを備える光学装置、及びそのような固浸レンズを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図2】
図1に示される固浸レンズユニットの断面図である。
【
図7】
図3に示されるメタレンズにおいて実効屈折率が分布を有することを説明するための図である。
【
図8】
図2に示される固浸レンズのメタレンズの形成方法を説明するための図である。
【
図9】
図2に示される固浸レンズのメタレンズの形成方法を説明するための図である。
【
図10】
図2に示される固浸レンズのメタレンズの形成方法を説明するための図である。
【
図11】
図2に示される固浸レンズの第1部分の形成方法を説明するための図である。
【
図12】
図2に示される固浸レンズの第1部分の形成方法を説明するための図である。
【
図13】
図2に示される固浸レンズの第1部分の形成方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0020】
[光学装置の構成]
図1及び
図2に示されるように、光学装置1は、例えば、モールド型半導体デバイス10が有している半導体デバイス(対象物)11を観察する装置である。具体的には、光学装置1は、例えば、半導体デバイス11の拡大画像を取得し、その拡大画像に基づいて半導体デバイス11の内部情報を検査することにより、半導体デバイス11の故障を解析する半導体故障解析装置である。
【0021】
モールド型半導体デバイス10は、半導体デバイス11が樹脂14によってモールドされたものである。半導体デバイス11の内部情報には、例えば、半導体デバイス11の回路パターン、半導体デバイス11からの発光、及び、半導体デバイス11における発熱に関する情報が含まれる。発光としては、例えば、半導体デバイス11の欠陥に基づく発光、及び、半導体デバイス11内のトランジスタのスイッチング動作に伴うトランジェント発光が挙げられる。発熱としては、例えば、半導体デバイス11の欠陥に基づく発熱が挙げられる。
【0022】
半導体デバイス11は、半導体基板12及び集積回路13を有している。集積回路13は、半導体基板12の表面12aに形成されている。半導体デバイス11は、半導体基板12の裏面12bが露出するように樹脂14に埋設されている。モールド型半導体デバイス10は、半導体デバイス11の裏面12bが上を向くようにステージ(支持部)6上に配置されている。つまり、ステージ6は、半導体デバイス11を支持している。一例として、半導体基板12は、シリコン基板であり、この場合、半導体基板12の屈折率は、3.5程度である。
【0023】
光学装置1は、観察部1a、制御部1b及び解析部1cを備えている。観察部1aは、半導体デバイス11の観察を行う。制御部1bは、観察部1aの各部の動作を制御する。解析部1cは、半導体デバイス11の解析に必要な処理及び指示等を行う。
【0024】
観察部1aは、固浸レンズユニット2、高感度カメラ(光デバイス、光検出器)3、レーザスキャン光学系(LSM:Laser Scanning Microscope)ユニット4、光学系20及びXYZステージ7を有している。固浸レンズユニット2は、半導体デバイス11を観察するためのレンズユニットである。高感度カメラ3及びLSMユニット4は、半導体デバイス11を観察する手段である。XYZステージ7は、X方向、Y方向及びZ方向に高感度カメラ3及びLSMユニット4を移動させる機構である。X方向及びY方向は、互いに直交する水平方向であり、Z方向は、XY平面に対する鉛直方向である。
【0025】
固浸レンズユニット2は、固浸レンズ60及び固浸レンズホルダ(保持部)8を有する。固浸レンズ60は、ステージ6によって支持された半導体デバイス11に当接させられる。固浸レンズ60は、半導体デバイス11(具体的には、半導体基板12の裏面12b)に当接させられる第1表面61aを有する。第1表面61aは、固浸レンズ60の外面のうち、半導体デバイス11側の面(ここでは、下側の面)である。
【0026】
固浸レンズホルダ8は、光学系20が有している対物レンズ21の下側に固浸レンズ60が位置するように、固浸レンズ60を保持している。固浸レンズホルダ8は、例えば、アルミニウム等の金属によって形成されている。固浸レンズホルダ8は、筒状の本体部8a及びレンズ保持部8bを有している。本体部8aは、対物レンズ21の下端部に取り付けられている。レンズ保持部8bは、本体部8aにおける半導体デバイス11側(対物レンズ21とは反対側)の端部に設けられており、固浸レンズ60を保持している。
【0027】
本体部8aは、LSMユニット4の光源4aから出力された赤外レーザ光Lを固浸レンズ60側に通すとともに、半導体デバイス11によって反射され、固浸レンズ60から出射された光を対物レンズ21側に通す。本体部8aは、周壁部8c及び延在壁部8dを含む。周壁部8cは、対物レンズ21の下端部に外挿されて、対物レンズ21の下端部と螺合することができる円筒状の部分である。延在壁部8dは、周壁部8cとレンズ保持部8bとの間に延在する部分である。周壁部8cと対物レンズ21の下端部とを螺合することにより、対物レンズ21の光軸A上に固浸レンズホルダ8の中心を位置決めすることができる。これにより、固浸レンズホルダ8に保持されている固浸レンズ60の位置をXYZステージ7の駆動によって調整することができる。
【0028】
レンズ保持部8bは、固浸レンズ60に対してクリアランス(隙間)を有している。これにより、レンズ保持部8bは、固浸レンズ60が半導体デバイス11に当接する前の状態においては、固浸レンズ60を揺動できる状態で保持している。この状態から固浸レンズ60の第1表面61aを半導体基板12の裏面12bに当接させた場合、固浸レンズ60がレンズ保持部8bに対して揺動することで第1表面61aが半導体基板12の裏面12bに倣って密着する。このため、例えば、半導体基板12の裏面12bが光軸Aに対して傾斜している場合であっても、半導体基板12の裏面12bに倣って第1表面61aを良好に密着させることができる。
【0029】
高感度カメラ3は、固浸レンズ60を通る光路上の位置のうち固浸レンズ60に対してステージ6とは反対側の位置に配置されている。高感度カメラ3は、半導体デバイス11の回路パターン等の画像を作成するための画像データを出力する。高感度カメラ3は、CCDエリアイメージセンサ、CMOSエリアイメージセンサ、InGaAsエリアイメージセンサ等を有している。
【0030】
LSMユニット4は、光源(光学デバイス)4a及び光検出器(光学デバイス)4bを有している。光源4a及び光検出器4bは、固浸レンズ60を通る光路上の位置のうち固浸レンズ60に対してステージ6とは反対側の位置に配置されている。光源4aは、赤外レーザ光を出射する。光源4aは、例えば、半導体レーザである。光検出器4bは、半導体デバイス11からの反射光を検出する。光検出器4bは、例えば、アバランシェフォトダイオード、フォトダイオード、光電子増倍管である。LSMユニット4は、半導体デバイス11に対して赤外レーザ光をX方向及びY方向に走査させることで、半導体デバイス11の回路パターン等の画像を作成するための画像データを生成する。
【0031】
光学系20は、対物レンズ21、カメラ用光学系22及びLSMユニット用光学系23を有している。対物レンズ21は、固浸レンズ60を通る光路上の位置のうち固浸レンズ60とLSMユニット4との間の位置に配置されている。対物レンズ21が配置されている位置は、固浸レンズ60を通る光路上の位置のうち固浸レンズ60と高感度カメラ3との間の位置でもある。対物レンズ21は、倍率が異なるものが複数設けられ、切り換えることができる。対物レンズ21は、補正環24を有している。補正環24を調整することで、対物レンズ21の焦点を半導体デバイス11の所定部に精度良く合わせることができる。
【0032】
カメラ用光学系22は、固浸レンズ60及び対物レンズ21を通った半導体デバイス11からの反射光を高感度カメラ3に導く。LSMユニット用光学系23は、LSMユニット4からの赤外レーザ光をビームスプリッタ(不図示)で対物レンズ21側に反射し、半導体デバイス11に導く。LSMユニット用光学系23は、固浸レンズ60及び対物レンズ21を通って高感度カメラ3に向かう半導体デバイス11からの反射光をLSMユニット4に導く。なお、光学系20は、半導体デバイス11を観察するための顕微鏡5を更に有している。
【0033】
XYZステージ7は、上述したように、固浸レンズユニット2、高感度カメラ3、LSMユニット4及び光学系20等を、X方向、Y方向及びZ方向に移動させる。XYZステージ7は、制御部1bにより動作を制御される。
【0034】
制御部1bは、カメラコントローラ31、レーザスキャン(LSM)コントローラ32及びペリフェラルコントローラ33を有している。カメラコントローラ31は、高感度カメラ3の動作を制御する。LSMコントローラ32は、LSMユニット4の動作を制御する。ペリフェラルコントローラ33は、XYZステージ7の動作を制御する。すなわち、半導体デバイス11の観察位置に対応する位置への固浸レンズユニット2、高感度カメラ3、LSMユニット4及び光学系20等の移動、位置合わせ、焦点合わせ等を制御する。また、ペリフェラルコントローラ33は、対物レンズ21に取り付けられている補正環調整用モータ25を駆動して、補正環24を制御する。制御部1bにより、観察部1aで行われる半導体デバイス11の観察条件等を制御することができる。
【0035】
解析部1cは、画像解析部41及び指示部42を有している。画像解析部41は、カメラコントローラ31及びLSMコントローラ32から出力される画像情報(画像データ)に基づいて画像を作成し、必要な解析処理等を実行する。指示部42は、操作者からの入力内容及び画像解析部41による解析内容等を参照し、制御部1bを介して、観察部1aにおける半導体デバイス11の検査の実行に関する必要な指示を行う。解析部1cにより取得又は解析された画像、データ等は、解析部1cに接続された表示装置43に表示することができる。
【0036】
[固浸レンズの構成]
図3、
図4及び
図5に示されるように、固浸レンズ60は、基部61及びメタレンズ62を備えている。基部61は、第1表面61a及び第2表面61bを有する。第1表面61aは、半導体デバイス11(具体的には、半導体基板12の裏面12b)に当接させられる表面である。第2表面61bは、第1表面61aとは反対側の表面である。第1表面61aの面積は、第2表面61bの面積よりも小さい。第1表面61aの面積は、例えば、第2表面61bの面積の0.001倍以上0.5倍以下である。
【0037】
基部61は、第1表面61aを有する第1部分611、及び、第2表面61bを有する第2部分612を含んでいる。第1部分611及び第2部分612は、一体で形成されている。「一体で形成されている」とは、単一部材として形成されていることを意味する。固浸レンズ60(メタレンズ62)の光軸Aに平行な方向(Z方向)から見た場合に、第2部分612の外縁612aは、第1部分611の外縁611aの外側に位置している。なお、光学装置1では、固浸レンズ60(メタレンズ62)の光軸Aは、対物レンズ21の光軸Aに一致している。
【0038】
第1部分611及び第2部分612の形状及び寸法の一例は、次のとおりである。第1部分611は、一辺の長さが数mm以上数十mm以下であり且つ厚さが数十μm以上数百μm以下である矩形板状(例えば、正方形板状)を呈している。第2部分612は、一辺の長さが数十μm以上数百μm以下であり且つ厚さが数μm以上数十μm以下である矩形板状(例えば、正方形板状)を呈している。光軸Aに平行な方向から見た場合に、第1部分611の中心は、第2部分612の中心に一致している。
【0039】
基部61は、半導体デバイス11の半導体基板12の屈折率に応じた材料で形成されている。一例として、半導体基板12がシリコン基板である場合、基部61は、シリコン、ガリウムヒ素、ガリウムリン等により形成され、この場合、基部61の屈折率は、3.5程度である。
【0040】
メタレンズ62は、基部61の第2表面61bに配置されている。メタレンズ62(後述する複数のアンテナ70の集合体)の形状及び寸法の一例は、次のとおりである。メタレンズ62は、一辺の長さが数十μm以上数百μm以下であり且つ厚さが数μm以上数十μm以下である矩形板状(例えば、正方形板状)を呈している。光軸Aに平行な方向から見た場合に、メタレンズ62の中心は、基部61の第2部分612の中心に一致している。
図5及び
図6に示されるように、メタレンズ62は、複数のアンテナ70を有している。「メタレンズ」とは、後述するメタサーフェス構造を有することでレンズとして機能する光学素子である。各アンテナ70は、固浸レンズ60の実効屈折率を調整するための部材である。一例として、各アンテナ70は、各アンテナ70の軸線が光軸Aに沿って延在する柱状(より具体的には、円柱状)を呈している。なお、各アンテナ70の形状は、固浸レンズ60の実効屈折率を制御することができれば、円柱状にも、柱状にも限定されない。
【0041】
各アンテナ70は、基部61と一体で形成されていてもよい。例えば、基部61がシリコンにより形成されており、各アンテナ70が基部61と一体で形成されている場合、各アンテナ70の屈折率は3.5程度である。つまり、各アンテナ70の屈折率は、半導体デバイス11の半導体基板12の屈折率と同程度である。
【0042】
各アンテナ70は、光軸Aに平行な方向から見た場合に、2次元的に配列されている。一例として、各アンテナ70は、光軸Aに平行な方向から見た場合に、周期的(より具体的には、マトリクス状)に配列されている。各アンテナ70が配列されている周期は、以下のように決定されていてもよい。すなわち、固浸レンズ60には、所定波長の入射光が入射される。ここでは、固浸レンズ60には、例えばLSMユニット4から出力される赤外レーザ光が入射される。各アンテナ70は、光軸Aに平行な方向から見た場合に、固浸レンズ60に入射される入射光の所定波長よりも短い所定周期で配列されていてもよい。「所定波長」は、例えば100nm以上5200nm以下の波長であってもよく、300nm以上2000nm以下の波長であってもよい。「所定周期」は、複数のアンテナ70が配置されている領域の全体において同一の周期であってもよく、複数のアンテナ70が配置されている領域の部分ごとに異なる周期であってもよく、複数のアンテナ70が配置されている領域に沿って徐々に変化した周期であってもよい。「所定周期」は、例えば所定波長の20%以上100%以下であってもよく、具体的には100nm以上5200nm以下であってもよい。この場合、複数のアンテナ70により好適に光を屈折させることができる。
【0043】
固浸レンズ60では、光軸Aに平行な方向から見た場合に、複数のアンテナ70の大きさ、形状、及び配置の少なくともいずれかが第2表面61b内で変化している。ここで、「第2表面61b内で変化している」とは、第2表面61bにおける位置によって異なり得ることを意味している。これにより、メタレンズ62は、固浸レンズ60の実効屈折率を調整することができる。
【0044】
中間部66は、複数のアンテナ70の間に位置する部分である。「複数のアンテナ70の間に位置する」とは、例えば、複数のアンテナ70の間を隙間なく埋めるように位置することを意味する。中間部66は、アンテナ70が有する屈折率とは異なる屈折率を有する。中間部66は、アンテナ70とは材料が異なる部材が配置されてよく、空気層であってよい。
【0045】
固浸レンズ60において、複数のアンテナ70が配置されている部分であるメタレンズ62は、いわゆるメタサーフェス構造を形成している。「メタレンズ62」とは、固浸レンズ60において、複数のアンテナ70及び中間部66により構成されている部分を意味する。
【0046】
ここで、固浸レンズ60がレンズとして機能することについて説明する。
図7は、固浸レンズ60において実効屈折率が分布を有することを説明するための図である。「分布を有する」とは、その位置によって異なる状態又は値を有し得ることを意味する。固浸レンズ60は、メタレンズ62において、以下の実効屈折率n
effを有する。すなわち、メタレンズ62の単位体積におけるアンテナ70の充填率a、アンテナ70の屈折率n
ms、中間部66の屈折率n
bとした場合に、実効屈折率n
effは、下記の式(1)で表される。
【数1】
【0047】
上述したように、光軸Aに平行な方向から見た場合に、アンテナ70の大きさ、形状、及び配置の少なくともいずれかは、第2表面61b内で変化している。例えば、
図7には、アンテナ70の大きさが第2表面61b内で変化している構成が示されている。
図7では、メタレンズ62の上方側が単位体積の部分V1、V2、V3に分割されている。そして、
図7では、各部分V1、V2、V3に同位相の入射光がメタレンズ62の上方側から入射された場合に、メタレンズ62の下方側に透過した透過光において同位相となる位置P1、P2、P3がそれぞれ図示されている。
【0048】
各部分V1、V2、V3では、アンテナ70の大きさ(光軸Aに平行な方向から見た場合の断面積)が互いに異なる。ここでは、部分V1においては、アンテナ70a、中間部66aとされている。部分V2においては、アンテナ70b、中間部66bとされている。部分V3においては、アンテナ70c、中間部66cとされている。アンテナ70a、アンテナ70b、アンテナ70cは、この順に大きくなっている。つまり、部分V1、部分V2、部分V3では、この順にアンテナ70の充填率aが高くなっている。
【0049】
これにより、上記の式(1)により算出される各部分V1、V2、V3の実効屈折率neffは部分V1、部分V2、部分V3の順に大きくなり、メタレンズ62の実効屈折率neffは分布を有することとなる。メタレンズ62の下方側に透過した透過光において同位相となる位置P1、位置P2、位置P3は、この順に第1表面61aからの距離が短くなる。このように透過光において位相差が生じた結果、入射光がメタレンズ62により屈折することとなり、メタレンズ62の実効屈折率neffを調整することで固浸レンズ60はレンズとして機能する。例えば、メタレンズ62の実効屈折率neffが光軸Aを中心として同心円状に変化していると、固浸レンズ60は、レンズとしてより好適に機能する。なお、複数のアンテナ70が入射光の波長よりも短い周期で配列されていると、入射光は、メタレンズ62が実効屈折率neffを有する連続媒質であるかのように振る舞う。
【0050】
上述した「メタサーフェス構造」とは、配列された複数の微細構造(例えば、アンテナ70)を有することで光学素子として機能する構造である。例えば、メタサーフェス構造としては、代表的な下記の6種類の方式(以下、「第1方式~第6方式」という)が例示される。
【0051】
メタサーフェス構造の第1方式は、いわゆるMulti-Resonance方式であり、「Nanfang Yu et al., “Light Propagation with Phase Discontinuities: Generalized Laws ofReflection and Refraction”, Science, 2011, 334, 333」に詳述されている。第1方式は、例えば、プラズモニックアンテナを有し、当該プラズモニックアンテナに流れる電流により特徴付けられる対称モード及び非対称モードの2種類の共鳴モードを含む。
【0052】
メタサーフェス構造の第2方式は、いわゆるGAP-Plasmon方式であり、「S. Sun et al., “High-efficiency broadband anomalous reflection by gradientmeta-surfaces”, Nano Letters, 2012,12, 6223」に詳述されている。第2方式は、例えば、MIM構造を基本構成とする反射型のメタサーフェス構造であり、ギャップサーフェスプラズモンモードにより光の位相を変調する。ギャップサーフェスプラズモンモードとは、上部のアンテナと下部のアンテナとの誘導電流が逆方向を向くことに依存して誘電体内に強い磁気共鳴が生じるモードである。これによれば、アンテナの長さを変えることで効率良く反射位相を変調することができる。
【0053】
メタサーフェス構造の第3方式は、いわゆるPancharatnam-Berry phase(PB phase)方式であり、「Francesco Monticone et al., “Full Control ofNanoscale Optical Transmission with a Composite Metascreen”, Physical Review Letters, 2013, 110,203903」に詳述されている。第3方式は、例えば、同一形状のアンテナの角度を変調させることにより位相を変調する。
【0054】
メタサーフェス構造の第4方式は、いわゆるHuygens-metasurface方式であり、「Lingling Huang et al.,“Dispersionless Phase Discontinuities for Controlling LightPropagation”, Nano Letters, 2012, 12, 5750」、及び、「Manuel Decker et al., “High-efficiency light-wavecontrol with all-dielectric optical Huygens' metasurfaces”, Advanced Optical Materials, 2015, 3, 813」に詳述されている。第4方式は、例えば、独立した電磁場特性を持つ媒質の界面での電気双極子、磁気双極子を同時に調整することにより反射率を小さくする。
【0055】
メタサーフェス構造の第5方式は、いわゆるHigh-Contrast方式であり、「Seyedeh M. Kamali et al.,“Decoupling optical function and geometrical form usingconformal flexible dielectric metasurfaces”, NatureCommunications, 2016, 7, 11618」に詳述されている。第5方式は、例えば、アンテナと周囲の媒質との屈折率の差が大きいことを利用し、低Q値のファブリペロ共鳴の複数モードを実現する。これらの複数モードには、電気双極子及び磁気双極子が含まれる。
【0056】
メタサーフェス構造の第6方式は、いわゆるGradient-Index方式であり、「Philippe Lalanne etal., “Design and fabrication of blazed binarydiffractive elements with sampling periods smaller than the structural cutoff”, Journal of the Optical Society of America A, 1999, 16(5), 1143」に詳述されている。第6方式は、例えば、屈折率の互いに異なる媒質の、単位セルにおける充填率の変化により、位相(実効屈折率)を変調する。
【0057】
以上のように構成された固浸レンズ60は、光源4aから出射された赤外レーザ光Lを半導体デバイス11の所定部に集光させる。固浸レンズ60の作用について、
図3を参照して説明する。
【0058】
図3に示されるように、LSMユニット4の光源4aから出射された赤外レーザ光Lは、固浸レンズ60のメタレンズ62により屈折し、固浸レンズ60の基部61の第2部分612、固浸レンズ60の基部61の第1部分611、半導体デバイス11の半導体基板12を順に通過して、集積回路13に集光される。つまり、赤外レーザ光Lの集光点Cが集積回路13上に位置させられる。
【0059】
赤外レーザ光Lの集光点Cは、半導体デバイス11側(固浸レンズ60の第1部分611に対してメタレンズ62とは反対側)に生じる。そのため、固浸レンズ60の基部61の厚さを調整することにより、メタレンズ62と集光点Cとの距離を制御することが可能である。そして、メタレンズ62と集光点Cとの距離を制御することができることから、レンズとして有効なメタレンズ62の大きさが制限されず、位相設計の自由度が向上するため、収差補正等において有効である。
【0060】
赤外レーザ光Lが、固浸レンズ60の基部61の第1部分611を通過することから、第1部分611の大きさは、赤外レーザ光Lが通過することができる大きさである。すなわち、第1部分611の大きさは、赤外レーザ光Lが通過することができる大きさ以上であればよく、赤外レーザ光Lの光路に応じて、第1部分611を小型化することが可能である。
【0061】
集光点Cに集光された赤外レーザ光Lは、半導体デバイス11の集積回路13で反射される。半導体デバイス11からの反射光は、半導体デバイス11の半導体基板12、固浸レンズ60の基部61の第1部分611、固浸レンズ60の基部61の第2部分612を順に通過し、光検出器4bで検出され、半導体デバイス11を観察することができる。
【0062】
[固浸レンズの製造方法]
[メタレンズの形成方法]
固浸レンズ60の製造方法について説明する。まず、
図8~10を参照して、固浸レンズ60のメタレンズ62の形成方法を説明する。
図8~10は、固浸レンズ60のメタレンズ62の形成方法を説明するための図である。
【0063】
まず、
図8(a)及び
図8(b)に示されるように、固浸レンズ60の基部61となる基板80上に、マスク層83を形成する(層形成工程)。マスク層83は、ハードマスク81及びレジスト82が積層して形成されている。基板80の形状は、薄膜状又は平板状であってよい。
【0064】
図8(a)に示されるように、ハードマスク81は、基板80の上面80a上に形成されている。ハードマスク81は、例えば抵抗加熱蒸着により形成することができる。ハードマスク81の材料としては、窒化珪素等が挙げられる。ハードマスク81の厚さは、例えば300nm程度とすることができる。
【0065】
続いて、
図8(b)に示されるように、ハードマスク81の上面81a上に、レジスト82を形成する。レジスト82は、例えば電子線レジスト塗布により形成することができる。レジスト82の材料としては、例えばZEP520A等の電子線レジストが挙げられる。レジスト82の厚さは、例えば300nm程度とすることができる。
【0066】
続いて、
図9(a)及び
図9(b)に示されるように、基板80上に形成されたマスク層83に複数の開口部84を形成する(開口工程)。開口部84は、ハードマスク81に形成されたハードマスク開口部84a、及び、レジスト82に形成されたレジスト開口部84bを有している。ハードマスク開口部84aは、レジスト開口部84bを介して形成されている。このため、ハードマスク開口部84a及びレジスト開口部84bは、基板80の上面80aに直交する方向から見て、互いに同一の位置に形成されている。レジスト開口部84bは、レジスト82に対して電子線描画及び現像を行うことにより形成することができる。ハードマスク開口部84aは、ハードマスク81に対して誘導結合型反応性イオンエッチング(ICP-RIE:Induced Coupled Plasma-Reactive Ion Etching)を行うことにより形成することができる。
【0067】
開口工程後のマスク層83は、基板80の上面80aに直交する方向から見て、周期的に配列するように形成されていてもよい。より具体的には、固浸レンズ60に所定波長の入射光が入射される場合において、マスク層83は、基板80の上面80aに直交する方向から見て、所定波長よりも短い周期で配列するように形成されていてもよい。ここで、マスク層83の大きさ、形状、及び配列が、メタレンズ62のアンテナ70の大きさ、形状、及び配列となる。マスク層83は、例えば直径50nm以上270nm以下の円形状であってもよい。また、マスク層83は、例えば300nmの周期で配列するように形成されていてもよい。更に、基板80の上面80aに直交する方向から見て、複数のマスク層83の大きさ、形状、及び配置の少なくともいずれかは、基板80の上面80a内で変化していてもよい。ここで、「基板80の上面82a内で変化している」とは、基板80の上面82aにおける位置によって異なり得ることを意味している。
【0068】
続いて、
図10(a)に示されるように、複数の開口部84を介してエッチングを行い、基板80に複数の凹部80cを形成する(エッチング工程)。エッチングは、例えばドライエッチングが行われてもよく、特に反応性イオンエッチング(RIE:Reactive Ion Etching)が行われてもよい。エッチングは、基板80の上面80aから基板80の内部の上面80bまで行われる。これにより、基板80の上面80aに所定の深さ(エッチング深さ)の凹部80cを形成することができる。エッチング深さは、例えば800nm程度とすることができる。
【0069】
続いて、
図10(b)に示されるように、マスク層83を除去する(除去工程)。すなわち、ハードマスク81をリフトオフする。これにより、ハードマスク81とともに、ハードマスク81上に形成されたレジスト82を除去することができる。その結果、基板80に上面80a及び上面80bを形成することができる。そして、上面80aを有している凸部80dは、固浸レンズ60のメタレンズ62のアンテナ70となり、上面80bは、固浸レンズ60の第2表面61bとなる。以上により、固浸レンズ60のメタレンズ62を形成することができる。
【0070】
[第1部分の形成方法]
続いて、
図11~13を参照して、固浸レンズ60の第1部分611の形成方法を説明する。
図11~13は、固浸レンズ60の第1部分611の形成方法を説明するための図である。
【0071】
まず、
図11(a)及び
図11(b)に示されるように、固浸レンズ60の基部61となる基板90上に、マスク層93を形成する(層形成工程)。マスク層93は、ハードマスク91及びレジスト92が積層して形成されている。基板90の形状は、薄膜状又は平板状であってよい。
【0072】
図11(a)に示されるように、ハードマスク91は、基板90の上面90a上に形成されている。ハードマスク91は、例えば抵抗加熱蒸着により形成することができる。ハードマスク91の材料としては、窒化珪素等が挙げられる。ハードマスク91の厚さは、例えば300nm程度とすることができる。
【0073】
続いて、
図11(b)に示されるように、ハードマスク91の上面91a上に、レジスト92を形成する。レジスト92は、例えば電子線レジスト塗布により形成することができる。レジスト92の材料としては、例えばZEP520A等の電子線レジストが挙げられる。レジスト92の厚さは、例えば300nm程度とすることができる。
【0074】
続いて、
図12(a)及び
図12(b)に示されるように、基板90上に形成されたマスク層93を除去する(除去工程)。基板90上に形成されたマスク層93から除去される部分(除去部94)は、ハードマスク91から除去されたハードマスク除去部94a、及び、レジスト92から除去されたレジスト除去部94bを有している。ハードマスク除去部94aは、レジスト除去部94bを介して除去されている。このため、ハードマスク除去部94a及びレジスト除去部94bは、基板90の上面90aに直交する方向から見て、互いに同一の位置である。レジスト除去部94bは、レジスト92に対して電子線描画及び現像を行うことにより除去することができる。ハードマスク除去部94aは、ハードマスク91に対して誘導結合型反応性イオンエッチング(ICP-RIE:Induced Coupled Plasma-Reactive Ion Etching)を行うことにより除去することができる。
【0075】
続いて、
図13(a)に示されるように、除去部94を介してエッチングを行い、基板90を所定の深さ(エッチング深さ)まで除去する(エッチング工程)。エッチングは、例えばドライエッチングが行われてもよく、特に反応性イオンエッチング(RIE:Reactive Ion Etching)が行われてもよい。エッチングは、基板90の上面90aから基板90の内部の上面90bまで行われる。エッチング深さは、例えば5μm程度とすることができる。
【0076】
続いて、
図13(b)に示されるように、マスク層93を除去する(マスク層除去工程)。すなわち、ハードマスク91をリフトオフする。これにより、ハードマスク91とともに、ハードマスク91上に形成されたレジスト92を除去することができる。その結果、基板90に上面90a及び上面90bを形成することができる。そして、上面90aを有している凸部90dは、固浸レンズ60の基部61の第1部分611となる。以上により、固浸レンズ60の第1部分611を形成することができる。
【0077】
[作用及び効果]
以上説明したように、光学装置1では、固浸レンズ60が、基部61の第2表面61bに配置されたメタレンズ62を含んでいる。これにより、メタレンズ62に含まれる複数のアンテナ70の大きさ、形状及び配置の少なくとも一つを基部61の第2表面61bに沿った方向において制御することで、メタレンズ62の実効屈折率を制御することができる。したがって、固浸レンズ60を薄型化することができる。また、固浸レンズ60が半導体デバイス11に当接させられる際には、基部61の第1表面61aが半導体デバイス11に当接させられる。これにより、例えば、メタレンズ62を半導体デバイス11に当接させる場合に比べ、固浸レンズ60を容易に取り扱うことができる。よって、この光学装置1によれば、固浸レンズ60の薄型化及び固浸レンズ60の取り扱いの容易化を実現することができる。
【0078】
また、光学装置1によれば、光学デバイスが光検出器4bであることで、半導体デバイス11から出射された光、又は、半導体デバイス11によって反射された光を精度良く検出することができる。
【0079】
また、光学装置1によれば、光学デバイスが光源4aであることで、半導体デバイス11に光を精度良く照射することができる。
【0080】
また、光学装置1によれば、固浸レンズ60の第1表面61aの面積が、第2表面61bの面積よりも小さいことから、固浸レンズ60の保持のために十分なサイズを基部61において確保しつつも、例えば、空気層の介在が防止されるように、基部61の第1表面61aを半導体デバイス11に確実に当接させることができる。
【0081】
また、光学装置1によれば、光路上の位置のうち固浸レンズ60と光学デバイス(光源4a、光検出器4b)との間の位置に配置され対物レンズ21を備えていることから、対物レンズ21の焦点を半導体デバイス11の所望の位置に精度良く合わせることができる。
【0082】
また、固浸レンズ60によれば、上述したように、固浸レンズ60の薄型化及び固浸レンズ60の取り扱いの容易化を実現することができる。また、固浸レンズ60の保持のために十分なサイズを基部61において確保しつつも、例えば、空気層の介在が防止されるように、基部61の第1表面61aを半導体デバイス11に確実に当接させることができる。
【0083】
また、固浸レンズ60によれば、基部61は、第1表面61aを有している第1部分611と、第2表面61bを有している第2部分612と、を含み、メタレンズ62の光軸Aに平行な方向から見た場合に、第2部分612の外縁612aは、第1部分611の外縁611aの外側に位置しており、第1部分611及び第2部分612は、一体で形成されていてよい。これによれば、第2部分612において固浸レンズ60を安定して保持することができる。また、光の屈折及び反射の原因となる界面が第1部分611と第2部分612との間に形成されるのを防止することができる。
【0084】
[変形例]
上述した実施形態は、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した様々な形態で実施することができる。
【0085】
また、上述した実施形態において、光学装置1の光源は、赤外レーザ光Lを照射する光源4aに限定されない。光学装置1の光源は、紫外線を照射する光源、可視光を照射する光源であってもよい。
【0086】
また、上述した実施形態において、光学装置1は、光源4a及び光検出器4bを備えていたが、光学装置1は、光源を備え且つ光検出器を備えない照明装置として構成されていてもよいし、或いは、光源を備えず且つ光検出器を備える観察装置として構成されていてもよい。
【0087】
また、上述した実施形態において、光学装置1は、対物レンズ21を備えていなくてもよい。光学装置1が、対物レンズ21を備えていないことにより、装置を小型化することができる。
【0088】
また、上述した実施形態において、固浸レンズホルダ8は、固浸レンズ60を保持することができればよく、上記実施形態における構成に限定されない。例えば、固浸レンズホルダ8のレンズ保持部8bは、固浸レンズ60に対して隙間を有していなくてもよい。
【0089】
また、上述した実施形態において、半導体デバイス11は、モールド型半導体デバイス10として樹脂14にモールドされたものでなくてもよい。
【0090】
例えば、上述した実施形態において、固浸レンズ60は、光軸Aに平行な方向から見た形状について特に限定されず、例えば、光軸Aに平行な方向から見て円形状であってもよい。
【0091】
また、上述した実施形態において、固浸レンズ60の基部61の第1部分611は、光軸Aに平行な方向から見た形状について特に限定されず、例えば、光軸Aに平行な方向から見て円形状であってもよい。
【0092】
また、上述した実施形態において、固浸レンズ60の基部61の第1部分611及び第2部分612は、一体で形成されていなくてもよい。固浸レンズ60の基部61の第1部分611及び第2部分612は、それぞれ別の材料で形成されていてもよい。
【0093】
また、上述した実施形態において、アンテナ70は、形状について特に限定されない。例えば、アンテナ70は、メタレンズ62のメタサーフェス構造の方式に応じた形状であってもよい。
【0094】
また、上述した実施形態において、アンテナ70は、シリコンにより形成されていなくてもよい。例えば、アンテナ70は、ゲルマニウム、金、銀、クロム等により形成されていてもよい。これらの場合であっても、メタレンズ62の実効屈折率を好適な値とすることができる。
【0095】
また、上述した実施形態において、アンテナ70は、LSMユニット4の光源4aから出射される赤外レーザ光Lを半導体デバイス11の所定部に集光させることができればよく、上記実施形態における配列に限定されない。例えば、アンテナ70は、光軸Aに平行な方向から見て、ハニカム状、放射状等となるように周期的に配列していてもよく、光軸Aに平行な方向から見て、非周期的に配列していてもよい。
【符号の説明】
【0096】
1…光学装置、3…高感度カメラ(光学デバイス、光検出器)、4a…光源(光学デバイス)、4b…光検出器(光学デバイス)、6…ステージ(支持部)、11…半導体デバイス(対象物)、21…対物レンズ、60…固浸レンズ、61…基部、61a…第1表面、61b…第2表面、611…第1部分、611a…外縁、612…第2部分、612a…外縁、62…メタレンズ、A…光軸。