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  • 特開-加工食品およびその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022108180
(43)【公開日】2022-07-25
(54)【発明の名称】加工食品およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 5/00 20160101AFI20220715BHJP
   A23G 3/00 20060101ALI20220715BHJP
   A23L 2/02 20060101ALI20220715BHJP
   A23G 1/32 20060101ALI20220715BHJP
   A23L 27/00 20160101ALI20220715BHJP
【FI】
A23L5/00 K
A23G3/00
A23L2/02 A
A23G1/32
A23L27/00 101Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021003070
(22)【出願日】2021-01-12
(71)【出願人】
【識別番号】507256865
【氏名又は名称】日興フーズ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】518341079
【氏名又は名称】スペンタス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120581
【弁理士】
【氏名又は名称】市原 政喜
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 宏二
(72)【発明者】
【氏名】ニアワラニ ババック
【テーマコード(参考)】
4B014
4B035
4B047
4B117
【Fターム(参考)】
4B014GG09
4B014GP01
4B014GP14
4B035LC16
4B035LG32
4B035LG33
4B035LP21
4B047LB03
4B047LB09
4B047LF07
4B047LF09
4B047LG38
4B047LG40
4B047LP02
4B117LC03
4B117LG06
4B117LG17
(57)【要約】      (修正有)
【課題】添加物を加えることなくより少ない素材で従来の典型的な加工食品を代替することが可能な加工食品およびその製造方法に関し、従来のチョコレートソースと同等かそれ以上の食味に優れた加工食品、また、ココアパウダーとデーツ果汁を含む、飲料、ペースト、発酵原料または調味料など様々な形態の加工食品を提供する。
【解決手段】デーツ果汁15~90重量%、ココアパウダー5~75重量%および水0~80重量%を含有する加工食品。前記デーツ果汁は、ミネラル含有量の異なる第1のデーツ果汁および第2のデーツ果汁を含むか、あるいは、ミネラル含有量を調整した1種類のデーツ果汁を使用する、前記加工食品。ここで、前記加工食品には、チョコレートソース、飲料、ペースト、発酵原料または調味料が含まれる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
デーツ果汁15~90重量%、ココアパウダー5~75重量%および水0~80重量%を含有する加工食品
【請求項2】
前記デーツ果汁は、ミネラル含有量の異なる第1のデーツ果汁および第2のデーツ果汁を含むことを特徴とする請求項1に記載の加工食品。
【請求項3】
前記第1のデーツ果汁は、前記第2のデーツ果汁よりもミネラル含有量が少ないことを特徴とする請求項2に記載の加工食品。
【請求項4】
前記第1のデーツ果汁は50重量%および前記第2のデーツ果汁は25重量%を含有することを特徴とする請求項2に記載の加工食品。
【請求項5】
前記デーツ果汁は、ミネラル含有量を調整した1種類のデーツ果汁を使用することを特徴とする請求項1に記載の加工食品。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の加工食品を配合した菓子。
【請求項7】
請求項1ないし5のいずれかに記載の加工食品を配合した飲料。
【請求項8】
500~2000cPの粘度を有することを特徴とする請求項1ないし5のいずれかにに記載の加工食品。
【請求項9】
チョコレートソースであることを特徴とする請求項1ないし8のいずれかにに記載の加工食品。
【請求項10】
調味料であることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかにに記載の加工食品。
【請求項11】
生のデーツを種抜き、圧搾、生成、および加熱することによりデーツ果汁を生成する生成工程と、
前記生成したデーツ果汁の所定の量およびカカオパウダーの所定の量に、適宜水分を加えて混合する混合工程と
を備えたことを特徴とする加工食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工食品およびその製造方法に関し、より具体的には、添加物を加えることなくより少ない素材で従来の典型的な加工食品を代替することが可能な加工食品およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えばチョコレート風味を食材に付与し、食味を向上させる等のため、様々な粘性を有する液状のチョコレートソースあるいはチョコレートシロップを料理に直接かけたり、素材として混入して調理したりする等が行われている。そのようなチョコレートシロップとしては、穀類のフレーク状または粒状食品表面へのスプレーによるコーティングに好適なチョコレートシロップの提供を目的とし、糖類とココア粉末と油脂含量20~30重量%のチョコレートとを含有し、当該ココア粉末と油脂含量20~30重量%のチョコレートの含有割合が1:0.3~1で、かつ両者の合計含有率が5~12重量%であり、しかも水分含量が25~35重量%であることを特徴とする穀類のフレーク状または粒状食品コーティング用チョコレートシロップが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
一方、海外で従来から知られる栄養価の高い農産物が日本でも種々紹介されており、例えばプルーンやデーツなどが盛んに輸入され加工され、市場に提供されている特にデーツはいわゆるナツメヤシと呼ばれ、ミネラルや食物繊維が豊富で、高い糖度を有し、乾燥デーツや、果汁等の各種の態様で提供されている。例えば、飲料、ペースト、発酵原料または調味料などの諸原料として優れた、デーツ、プルーン等の果汁やピューレーの連続製造法を提供することを目的とし、デーツ等の原料果実を、ミクロレーダーで水または熱水を加水しながら破砕して泥状(マグマ状)となした後、ジャケット型クッカーで間接加熱(80℃~95℃)して酵素失活処理するとともに糖分等の抽出処理等してから、シードパルパーで種子その他の夾雑物を分別し、フィニッシャーで粗パルプを分別して得た汁液を振動分離機、スパイラルデカンター、デスラージャー等で順次処理して、微細パルプその他の夾雑物を分離した後、チェックフィルターでろ過処理してから濃縮殺菌するする技術が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9-65831号公報
【特許文献2】特開昭61-88865号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来のチョコレートソースあるいはチョコレートシロップは、チョコレートやココアパウダーのほかにグラニュー糖などの糖類に加え、乳化剤などの様々な食品添加物が加えられており、近年のヘルシー志向の市場にそぐわない状況であり、またチョコレートの風味は加えられるもののカロリー以外の栄養の乏しいものであるという問題がある。一方、デーツは極めて栄養価が高い果物であるが、従来は乾燥させたり濃縮させたりする程度の加工しかされておらず、高栄養価食材として十分に活用されていないという問題がある。
【0006】
本発明は上記従来の問題に鑑みてなされたものであり、ココアパウダーに数多くの食品添加物を加えてチョコレートソースを製造するのではなく、デーツ果汁のみを最適な方法で加えることにより、従来のチョコレートソースと同等かそれ以上の食味に優れた加工食品を提供することを目的とする。また、チョコレートソース以外にも、ココアパウダーとデーツ果汁を含む、飲料、ペースト、発酵原料または調味料など様々な形態の加工食品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題を解決するために、本願の請求項1に記載の発明は、加工食品であって、デーツ果汁15~90重量%、ココアパウダー5~75重量%および水0~80重量%を含有することを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の加工食品において、デーツ果汁は、ミネラル含有量の異なる第1のデーツ果汁および第2のデーツ果汁を含むことを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の加工食品において、第1のデーツ果汁は、第2のデーツ果汁よりもミネラル含有量が少ないことを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項2または3に記載の加工食品において、第1のデーツ果汁は50重量%および第2のデーツ果汁は25重量%を含有することを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の加工食品において、デーツ果汁は、ミネラル含有量を調整した1種類のデーツ果汁を使用することを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載の発明は、菓子であって、請求項1ないし5のいずれかに記載の加工食品を配合したことを特徴とする。
【0013】
請求項7に記載の発明は、飲料であって、請求項1ないし5のいずれかに記載の加工食品を配合したことを特徴とする。
【0014】
請求項8に記載の発明は、請求項1ないし5のいずれかにに記載の加工食品において、500~2000cPの粘度を有することを特徴とする。
【0015】
請求項9に記載の発明は、請求項1ないし8のいずれかにに記載の加工食品であって、チョコレートソースであることを特徴とする。
【0016】
請求項10に記載の発明は、請求項1ないし7のいずれかにに記載の加工食品であって、調味料であることを特徴とする。
【0017】
請求項11に記載の発明は、加工食品の製造方法であって、生のデーツを種抜き、圧搾、生成、および加熱することによりデーツ果汁を生成する生成工程と、生成したデーツ果汁の所定の量およびカカオパウダーの所定の量に、適宜水分を加えて混合する混合工程とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によると、デーツ果汁15~90重量%、ココアパウダー5~75重量%および水0~80重量%を含有するので、従来のチョコレートソースと同等かそれ以上の食味に優れた加工食品を提供することができる。また、チョコレートソース以外にも、ココアパウダーとデーツ果汁を含む、飲料、発酵原料または調味料など様々な形態の加工食品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態の冷凍食品の製造方法の一連の流れの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の加工食品およびその製造方法について図面を参照して実施形態を説明する。
【0021】
[チョコレートソースおよびその他の加工食品]
チョコレートソースあるいはチョコレートシロップは、料理や果物にチョコレート風味を加える食材であり、生の果物やアイスクリーム、ホットケーキなどの料理に直接かけて使用したり、生地に加えて調理したりして簡易に使用することができる。
【0022】
一般に、チョコレートはカカオマス、ココア、カカオ脂、カカオ代用脂、甘味料及び粉乳等を適宜混合し、ロール掛け、コンチング及びテンパリング処理して製造されるが、従来のチョコレートソースはこのようにして製造されたチョコレートに水分その他液状成分を付加して調整することにより製造することができる。具体的には例えば特許文献1に記載されているように、糖類、ココア粉末および油脂含量20~30重量%のチョコレートを含有し、25~35重量%の水分を加えて調整して製造することができる。すなわち、従来のチョコレートソースは、チョコレートの風味を出現させるためのカカオ豆由来のココアパウダー等以外に糖類、各種油脂を含み、さらに製造上の都合から乳化剤をはじめ様々な食品添加物が添加されているのが現状である。
【0023】
近年の健康ブームや自然派志向の市場においては、食品添加物や糖類、油脂類を極力含まない食品が求められており、本発明者は、様々な試行を行った結果、特定の果実の果汁、本実施形態ではデーツ果汁とココアパウダー(および水)のみで従来のチョコレートソースと同等かそれ以上の風味および食味を有する加工食品を得ることができるとの知見を得た。すなわち、デーツ果汁自身の甘みなどの成分により、別途糖類や乳脂肪などを加えなくても、ココアパウダーのみ加えることにより、チョコレート風味の様々な加工食品を得ることができるとの知見が得られた。また、ココアパウダーは残存する油脂分等により液体に溶融するためには乳化剤等の添加物が必要だが、デーツ果汁の特定の成分によりこのような添加物がなくても容易に溶融することができるとの知見も得られたため、本実施形態のチョコレートソースあるいは加工食品はココアパウダーおよびデーツ果汁のみで製造することが可能となった。さらに、デーツ果汁は豊富なミネラルや食物繊維を含有しているため、従来のチョコレートソースでは得られなかった、より健康志向が向上するという効果を奏することができる。
【0024】
[本実施形態の加工食品]
以上の通り、本実施形態の加工食品はデーツ果汁およびココアパウダーを成分として、水分を調整したものであり、提供される態様に応じて以下のような組成を有する。ここで、加工食品には、チョコレートソース、飲料、ペースト、発酵原料または調味料が含むことができるが、これに限られず、同一の材料を様々な組成で含有するいずれの食品も含まれる。
【0025】
水分は主に最終製品の粘性や製品の性格を決定するもので、本実施形態では、水分は0~80重量%含有することができる。例えば、チョコレートソースとしての使用ではある程度の粘性、例えば、約100~5000cP(東京計器製、B型粘度計、3号ロータ,12rpm)の粘度を持たせるため、水分は0~30重量%含有することができるが、5~20重量%含有が望ましく、7~15重量%含有がさらに望ましい。また、飲料としては、水分は20~80重量%含有することができるが、30~65重量%含有が望ましく、40~50重量%含有がさらに望ましい。さらに、調味料としては、水分は0~70重量%含有することができるが、15~55重量%含有が望ましく、30~45重量%含有がさらに望ましい。チョコレートソース以外の用途として使用する場合、粘度は、様々な値とすることができるが、その用途に応じて、各成分の組成を調整することにより所望の値とすることができる。例えば、飲料として使用する場合は約1~500cP、好ましくは約1~100cPの粘度とすることができる。
【0026】
また、本実施形態のデーツ果汁は、後述する製法で得られる特濃濃縮果汁と、特濃濃縮果汁のミネラル含有量を調整した調整濃縮果汁との2種類の果汁を製品ごとに最適な比率で混合して用いるが、これに限られずどちらか一方の果汁のみで使用することもできる。ここで、調整濃縮果汁のミネラル成分は、果汁100g当たりナトリウム1~50mg、カルシウム0.1~20mg、マグネシウム0.1~10mg、鉄0.01~0.1mgおよびカリウム1~200mgであり、特濃濃縮果汁のミネラル成分は、果汁100g当たりナトリウム100~400mg、カルシウム40~150mg、マグネシウム25~80mg、鉄0.5~4mgおよびカリウム400~800mgであることが望ましい。2種類のデーツ果汁を適切な比率で混合した混合デーツ果汁は本実施形態では、15~90重量%含有することができる。デーツ果汁がこれ以上多いと、デーツ果汁由来の風味が強すぎることとなり、一方少ないとココアパウダーが溶融しきれない恐れがある。例えば、チョコレートソースとしての使用ではある程度の甘みやミネラル感をより強く持たせるため、30~85重量%含有することができるが、55~85重量%含有が望ましく、70~80重量%含有がさらに望ましい。また、本実施形態ではミネラル含有量の異なる2種類のデーツ果汁を用いるが、これに限られることなく、1種類のデーツ果汁を調整して最終的に適度なミネラル含有量となるようにして用いることもできる。なお、本実施形態ではココアパウダーと混合する果汁としてデーツ果汁を使用するが、同様の成分を有する果実の果汁であれば、本技術分野で知られたいずれの果汁を使用することもできる。
【0027】
本実施形態のココアパウダーは、5~70重量%含有することができる。例えば、チョコレートに近い製品とする場合はより硬度を高めるため、40~65重量%含有することができるが、通常のチョコレートソースとしての使用であれば7~30重量%含有が望ましく、10~20重量%含有がさらに望ましい。なお、本実施形態ではカカオ豆由来の材料としてココアパウダーを使用するが、同様の成分を有するものであれば、カカオマス、ココア、カカオ脂、カカオ代用脂など、本技術分野で知られたいずれのカカオ豆由来食材を使用することもできる。
【0028】
[本実施形態の加工食品]
図1は、本発明の一実施形態の加工食品の製造方法の一連の流れの一例を示す図である。まず、原料であるデーツを洗浄し(ステップS101)、種抜きし(ステップS102)、圧搾して果汁を抽出する(ステップS103)。得られた果汁を加熱し(ステップS104)、濃縮することにより特濃濃縮果汁を製造する(ステップS105)。ミネラル調整した調整濃縮果汁を加える場合は(ステップS106)、フィルターによりミネラルを除去してミネラルの含有量を調整して調整濃縮果汁を製造し(ステップS107)、ステップS106で製造した特濃濃縮果汁と所定の比率で混合し、ココアパウダーと混合して水分により粘度や濃度を調整する(ステップS108)。製造した加工食品は図示しない本技術分野で知られた適切な容器に封入する。
【0029】
本実施形態では特濃濃縮果汁を生成し、製造された果汁の一部をミネラル調整して調整濃縮果汁として混合するが、これに限られず別途製造された2種類の果汁をあらかじめ混合して使用することもできるし、特濃濃縮果汁をすべてフィルターに通すこともでき、ミネラル含有量を適度に調整することにより特濃濃縮果汁と調整濃縮果汁とを混合しないようにすることもできるが、これらに限られない。
【0030】
[実施例]
本実施例として、チョコレートソースを製造する。2種類のデーツ果汁のうち第1の果汁である調整濃縮果汁のミネラル成分は、果汁100g当たりナトリウム7mg、カルシウム0.61mg、マグネシウム0.47mg、鉄0.07mgおよびカリウム14mgであった。また、第2の果汁である特濃濃縮果汁のミネラル成分は、果汁100g当たりナトリウム286mg、カルシウム89.3mg、マグネシウム58mg、鉄2.47mgおよびカリウム647mgであった。粘度は、約1000cP(東京計器製、B型粘度計、3号ロータ,12rpm)であった。調整濃縮果汁50重量%、特濃濃縮果汁25%、ココアパウダー15%に加え混合し、水10%を加えて粘度などを調整した結果、従来のチョコレートソースと同程度かそれ以上の風味および食味を有する加工食品を得ることができた。
図1