(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022108189
(43)【公開日】2022-07-25
(54)【発明の名称】ホース用継手
(51)【国際特許分類】
F16L 33/22 20060101AFI20220715BHJP
【FI】
F16L33/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021003080
(22)【出願日】2021-01-12
(71)【出願人】
【識別番号】000111085
【氏名又は名称】ニッタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003029
【氏名又は名称】特許業務法人ブナ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】間口 雄太
(72)【発明者】
【氏名】西脇 俊一
【テーマコード(参考)】
3H017
【Fターム(参考)】
3H017HA02
(57)【要約】
【課題】耐圧性能は維持しつつ、ナットの締付けトルクを小さくしたホース用継手を提供する。
【解決手段】ホース挿入方向Aに沿って、ホース2外挿用の筒状部と、ホース2の先端挿入用の環状溝部と、他部材の取付部とがこの順で形成されたニップル3と、ホース2の先端を環状溝部に挿入した状態でニップル3の外周面上に螺合されるねじ部と該ねじ部に連続して形成され筒状部の外周面上に位置する厚肉部とを有するナット4と、筒状部と厚肉部との間に介在したスリーブ5とを備えたホース用継手1であり、スリーブ5は、内周面に肉抜き部10を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状体から構成され、ホース挿入方向に沿って、ホース外挿用の筒状部と、ホース先端挿入用の環状溝部と、他部材の取付部とがこの順で形成されたニップルと、
前記ホースが挿通する環状体から構成され、前記ホース先端を前記環状溝部に挿入した状態で前記ニップルの外周面上に螺合されるねじ部と、該ねじ部に連続して形成され前記筒状部の外周面上に位置する厚肉部とを有するナットと、
前記筒状部と前記厚肉部との間に介在したスリーブとを備えたホース用継手であって、
前記スリーブは、内周面に肉抜き部を有する、ことを特徴とするホース用継手。
【請求項2】
前記厚肉部は、内周面にホース挿入方向に沿って内径が大きくなる傾斜面を有しており、前記スリーブは、外周面に前記厚肉部の傾斜面に対応する傾斜面を有する請求項1に記載のホース用継手。
【請求項3】
前記肉抜き部は、前記環状溝部側の前記スリーブの内周面に形成されている請求項1または2に記載のホース用継手。
【請求項4】
前記肉抜き部は、前記スリーブの全周または周方向の一部に形成されている請求項1~3のいずれかに記載のホース用継手。
【請求項5】
前記スリーブは、周方向に複数の縮径用のスリットが形成されている請求項1~4のいずれかに記載のホース用継手。
【請求項6】
前記スリーブは、樹脂からなる請求項1~6のいずれかに記載のホース用継手。
【請求項7】
前記スリーブの硬度は、HRM70~90である請求項6に記載のホース用継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、冷却を目的としたフッ素系不活性冷媒等を循環させる配管に使用するホース用継手に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、不活性冷媒等を循環させる配管に使用されるホースは、比較的軟質である。このようなホースに使用する継手としては、ホース先端がニップルの胴部に装着された状態で、ホース外周面にスリーブを介してナットを外挿し、ナットを締付けることにより、スリーブが縮径して、ホースが圧縮される機構を有するものが知られている(特許文献1)。
【0003】
このような従来の継手では、ホース圧縮時、ホースの圧縮応力が大きいため、ナットの締付けトルクが大きくなってしまい、ナットの締付け作業性が悪くなるという問題がある。また、ナットの締付けトルクを下げるために、ホースの圧縮率を小さく設計した場合、ホースの耐圧性能が低下してしまう。ここで、ホースの圧縮率とは、継手装着前のホースに対して、装着後のホースがどの程度圧縮されているかを表している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、耐圧性能は維持しつつ、ナットの締付けトルクを小さくしたホース用継手を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明のホース用継手は、筒状体から構成され、ホース挿入方向に沿って、ホース外挿用の筒状部と、ホース先端挿入用の環状溝部と、他部材の取付部とがこの順で形成されたニップルと、ホースが挿通する環状体から構成され、ホース先端を環状溝部に挿入した状態でニップルの外周面上に螺合されるねじ部と、該ねじ部に連続して形成され筒状部の外周面上に位置する厚肉部とを有するナットと、筒状部と厚肉部との間に介在したスリーブとを備える。スリーブは、内周面に肉抜き部を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、スリーブの内周面に肉抜き部を設けることにより、ホースの耐圧性能を維持しつつ、ナットの締付けトルクを小さくすることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係る継手にホースを固定した状態を示す一部破断側面図である。
【
図2】
図1に示す継手を構成するニップルを示す一部破断側面図である。
【
図3】
図1に示す継手を構成するナットを示す一部破断側面図である。
【
図4】
図1に示す継手を構成するスリーブを示す一部破断側面図である。
【
図5】
図4に示すスリーブにスリットを設けないスリーブを示す一部破断側面図である。
【
図6】本発明の比較例である、肉抜き部を有しないスリーブを用いた場合の継手を、ホースを固定した状態で示す一部破断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態に係るホース用継手を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る継手1にホース2を固定した状態を示している。
【0010】
図1に示すように、継手1は、ニップル3と、ナット4と、スリーブ5とから構成される。ホース2としては、例えば、フッ素系の冷媒のほか、冷却水や純水等の流体の移送に使用されるものであれば、特に制限されない。ホース2の使用温度範囲も、例えば、5℃~40℃であればよい。このようなホース2としては、例えば、内層、中間層、補強層および外層をこの順に積層したホース等が使用可能であり、単層の樹脂チューブ等も使用可能である。内層、中間層および外層には、例えば、ポリオレフィン系樹脂が使用可能であり、補強層はポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂等の合成繊維ブレードが使用可能である。
【0011】
継手1を構成するニップル3は、
図2に示すように、冷媒等の液体ないし気体が流れる貫通孔6を有する筒状体から構成され、ホース挿入方向(矢印Aで示す方向)に沿って、ホース2の外挿用の筒状部31と、ホース2の先端挿入用の環状溝部32と、図示しない他部材の取付部33とがこの順で形成されている。ニップル3は、金属または合成樹脂からなる。
【0012】
筒状部31は、一部が環状溝部32を構成しているが、本発明では、環状溝部32から突出している部位を筒状部31とする。環状溝部32の外周面には、ナット4と螺合するねじ溝7が形成されている。また、他部材の取付部33の外周面にも、他部材と螺合するねじ溝8が形成されている。
【0013】
ナット4は、
図3に示すように、ホース2が挿通する環状体から構成され、ホース2の先端をニップル3の環状溝部32に挿入した状態で、ニップル3の外周面に形成されたねじ部7に螺合するねじ部41が内周面に形成されている。
また、ねじ部41に隣接して、厚肉部42がねじ部41と一体に形成されている。厚肉部42は、ホース2の先端をニップル3の環状溝部32に挿入した状態で、ニップル3の筒状部31の外周面上に位置する(
図1参照)。厚肉部42は、内周面にホース2の挿入方向に沿って内径が大きくなる傾斜面9を有しており、その傾斜角度はホース2の挿入方向を基準として20°~25°であるのがよい。ナット4は、金属または合成樹脂からなる。
【0014】
スリーブ5は、
図1に示すように、ニップル3の筒状部31と、ナット4の厚肉部42との間に介在するように配置されている。スリーブ5は、材質が樹脂であることが好ましく、例えば、ポリアセタール(POM)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンサルファイド(PPS) 等の樹脂から形成されるのがよい。スリーブ5の硬度は、ナット4締付時に塑性変形しすぎない様にロックウェル硬さ (JIS K7202-2)でHRM70~90であるのが好ましい。
【0015】
スリーブ5は、
図4に示すように、環状体であって、周方向に複数の縮径用のスリット11が形成されている。これにより、ナット4の締め付けによりスリット11が変形し縮径してホース2に圧接し、ホース2を固定保持することができる。スリット11は、両側の開口に全周にわたって交互に形成されている。スリット11の数は、縮径が容易で、かつ、縮径後の形状ができるだけ真円に近くなって十分なシール性が得られるように、6個以上10個以下であるのがよい。
また、各スリット11の幅や長さは、スリーブ5の縮径のしやすさや、ホース2の保持力等を考慮して設定すればよい。
スリーブ5の小径側の先端外径は、ナット4の締付開始時にナット4の傾斜面9と接する寸法となっており、締付が進むとともに、この傾斜面9に沿ってスリーブ5が縮径する。
【0016】
図5に示すスリット11を設けないスリーブ51の体積に対する、
図4に示すような複数のスリット11を設けたスリーブ5の体積の割合を示す占有率は、50%以上70%以下であるのが、スリーブ5が縮径しやすくなるので好ましい。
【0017】
また、スリーブ5は、外周面にナット4の厚肉部42に形成された傾斜面9に対応する傾斜面12を有する。すなわち、スリーブ5の傾斜面12は、ホース2の挿入方向に対してナット4の傾斜面9と同じ傾斜角度を有しているのが好ましい。これにより、スリーブ5とナット4との位置関係を固定することができる。
【0018】
スリーブ5の内周面には、肉抜き部10(切り欠き部)が形成されている。肉抜き部10は、環状溝部32側のスリーブ5の内周面に形成されているのがよい。肉抜き部10を設けることにより、ナット4による締め付け時に、圧縮されたホース2を逃がす空間を確保することができ、ホース2の圧縮応力を小さくすることができる。なお、
図4では、肉抜き部10は、スリーブ5の全周にわたって設けられているが、周方向の一部に形成されていてもよい。縮径時の肉抜き部10の内径Rは、ホース外径と同等またはそれ以上であるのがよい。また、肉抜き部10は、スリーブ5の周囲に均等な間隔で配置されているのがよい。
【0019】
また、肉抜き部10からスリーブ5の他端までの領域は、ホース2を圧縮する圧縮部Pとなる。肉抜き部10を設けることにより、圧縮部Pの長さは短くなるため、ホース2の圧縮面積が小さくなる。その結果、ホース2の圧縮に必要な応力を低減でき、ホースの耐圧性能を維持しつつ、ナット4の締付けトルクを小さくすることができる。具体的には、破壊圧力4MPa以上確保しつつ、ナット締付けトルクを低減するうえで、圧縮部Pは、スリーブ5の全長Lに対して約40%以上70%以下であるのがよい。
【0020】
図1に示すように、肉抜き部10を設けることによって段部13が形成され、この段部13にホース2が係止するので、ホース2の抜けを防止できるという利点もある。
【0021】
次に、スリーブ5に肉抜き部10を設けた場合と、設けない場合との性能比較を行ったので、その結果を説明する。
【0022】
図6は、肉抜き部10を設けないスリーブ51を用いたホース用継手100を示している。このホース用継手100は、上記スリーブ51を用いた他は、
図1に示すホース用継手1と同じであるので、
図1と同じ部材には同じ符号を付して説明を省略する。
なお、ニップル3およびナット4は金属製であり、スリーブ5,51は樹脂製である。また、試験したホース2は、内径が15.0mm、外径が22.0mmで、内層、中間層、繊維補強層および外層をこの順に積層したものである。内層、中間層及び外層はポリオレフィン系樹脂からなり、繊維補強層はPET繊維からなる。
【0023】
(1)ホース圧縮率
ホース圧縮率は、下記式より求めた。
式:ホース圧縮率(%)={(T0-T1)/T0}×100
式中、T0は継手1、100への装着前のホース肉厚、T1は継手1、100への装着後のホース肉厚をそれぞれ示している。
(2)ナット締め付けトルク試験
継手1,100にそれぞれホース2を接続し、ナット4を締め付ける時の締め付けトルクを計測した。
【0024】
(3)破壊圧力試験
継手1,100にそれぞれホース2を接続した状態で、ホース2に水圧を加え、ホース2が破壊する時の圧力を確認した。そして、ホース2の破壊圧力が4MPa以上である時を合格「〇」とした。
【0025】
【0026】
表1から明らかなように、本発明に係る継手1は、比較例である継手100と比較して、ホース圧縮率および破壊圧力試験に大きな差はないものの、ナット締め付けトルクが大きく低減していることがわかる。
【0027】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明のホース用継手は、上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の範囲内で種々の変更や改善が可能である。
【符号の説明】
【0028】
1、100 継手
2 ホース
3 ニップル
31 筒状部
32 環状溝部
33 他部材の取付部
4 ナット
41 ねじ部
42 厚肉部
5 スリーブ
6 貫通孔
7、8 ねじ部
9 傾斜面
10 肉抜き部
11 スリット
12 傾斜面
A ホース挿入方向
P 圧縮部
R 肉抜き部内径
L 全長