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特開2022-108214蓋開閉装置、試料処理装置および蓋開閉装置を用いた蓋部の開閉方法
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  • 特開-蓋開閉装置、試料処理装置および蓋開閉装置を用いた蓋部の開閉方法 図1
  • 特開-蓋開閉装置、試料処理装置および蓋開閉装置を用いた蓋部の開閉方法 図2
  • 特開-蓋開閉装置、試料処理装置および蓋開閉装置を用いた蓋部の開閉方法 図3
  • 特開-蓋開閉装置、試料処理装置および蓋開閉装置を用いた蓋部の開閉方法 図4-1
  • 特開-蓋開閉装置、試料処理装置および蓋開閉装置を用いた蓋部の開閉方法 図4-2
  • 特開-蓋開閉装置、試料処理装置および蓋開閉装置を用いた蓋部の開閉方法 図4-3
  • 特開-蓋開閉装置、試料処理装置および蓋開閉装置を用いた蓋部の開閉方法 図5
  • 特開-蓋開閉装置、試料処理装置および蓋開閉装置を用いた蓋部の開閉方法 図6
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022108214
(43)【公開日】2022-07-25
(54)【発明の名称】蓋開閉装置、試料処理装置および蓋開閉装置を用いた蓋部の開閉方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/02 20060101AFI20220715BHJP
   B67B 7/02 20060101ALN20220715BHJP
【FI】
G01N35/02 B
B67B7/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021003123
(22)【出願日】2021-01-12
(71)【出願人】
【識別番号】599067053
【氏名又は名称】株式会社ピーエムティー
(74)【代理人】
【識別番号】100167689
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 征二
(72)【発明者】
【氏名】杉田 政幸
(72)【発明者】
【氏名】茂木 一
(72)【発明者】
【氏名】寺本 一大
【テーマコード(参考)】
2G058
3E081
【Fターム(参考)】
2G058CB08
2G058CB15
2G058CF01
2G058CF11
2G058GB10
3E081AA10
3E081AB01
3E081AC01
3E081AC05
3E081EE02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】サイズの異なる複数種類の蓋付き容器の蓋部を開閉できる蓋開閉装置、試料処理装置および蓋開閉装置を用いた蓋部の開閉方法を提供する。
【解決手段】容器部および容器部の開口と嵌合する蓋部を含む蓋付き容器1の蓋開閉装置2であって、蓋開閉装置2は、蓋部に係合する係合部3と、係合部3が設けられた回転部材4と、回転部材4を移動させる移動部5と、回転部材4を回転させる回転駆動部6と、を含み、回転部材4は、回転部材4の回転軸に対して係合部3を相対的に移動させる移動部材を含み、移動部5は、蓋部に係合部3が係合するように回転部材4を移動させ、回転部材4の回転軸と蓋部の開閉における蓋付き容器1の支点とが重なるように回転部材4を移動させる、蓋開閉装置2。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器部および容器部の開口と嵌合する蓋部を含む蓋付き容器の蓋開閉装置であって、
蓋開閉装置は、
蓋部に係合する係合部と、
係合部が設けられた回転部材と、
回転部材を移動させる移動部と、
回転部材を回転させる回転駆動部と、
を含み、
回転部材は、回転部材の回転軸に対して係合部を相対的に移動させる移動部材を含み、
移動部は、
蓋部に係合部が係合するように回転部材を移動させ、
回転部材の回転軸と蓋部の開閉における蓋付き容器の支点とが重なるように回転部材を移動させる、
蓋開閉装置。
【請求項2】
係合部は、凹部を含み、
凹部が、蓋部に係合する、
請求項1に記載の蓋開閉装置。
【請求項3】
係合部は、複数の蓋付き容器の蓋部に係合する、
請求項1または2に記載の蓋開閉装置。
【請求項4】
移動部材は、係合部が蓋部に係合した状態で、係合部を回転部材上で移動させる、
請求項1~3のいずれか一項に記載の蓋開閉装置。
【請求項5】
移動部材は、
リニアガイドと、
リニアガイドレールと、
バネと、
を含み、
係合部は、
リニアガイドに設けられ、
リニアガイドとリニアガイドレールにより回転部材上を移動し、
バネは、
一方の端部が回転部材に固定され、
他方の端部がリニアガイドに接続され、
係合部に回転軸方向への付勢力を加える、
請求項1~4のいずれか一項に記載の蓋開閉装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の蓋開閉装置と、
分注装置と、
を含む、
試料処理装置。
【請求項7】
容器部および容器部の開口と嵌合する蓋部を含む蓋付き容器の蓋開閉装置を用いた蓋部の開閉方法であって、
蓋開閉装置は、
蓋部に係合する係合部と、
係合部が設けられた回転部材と、
回転部材を移動させる移動部と、
回転部材を回転させる回転駆動部と、
を含み、
蓋開閉装置を用いた蓋部の開閉方法は、
蓋部に係合部が係合する係合工程と、
回転部材の回転軸を蓋部の開閉における蓋付き容器の支点に合わせる位置合わせ工程と、
回転部材を第一の方向に回転させて容器部から蓋部を開ける蓋開け工程と、
を含む、
蓋開閉装置を用いた蓋部の開閉方法。
【請求項8】
係合工程は、位置合わせ工程の前に行われ、
位置合わせ工程において、係合部が蓋部に係合した状態で、回転軸に対して係合部は相対的に移動する、
請求項7に記載の蓋開閉装置を用いた蓋部の開閉方法。
【請求項9】
回転部材を第一の方向とは反対の第二の方向に回転させて、蓋部を容器部に嵌合させる蓋閉め工程、
を含む、
請求項7または8に記載の蓋開閉装置を用いた蓋部の開閉方法。
【請求項10】
位置合わせ工程において、蓋部に係合している係合部は、回転部材上を移動する、
請求項7~9のいずれか一項に記載の蓋開閉装置を用いた蓋部の開閉方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願における開示は、蓋開閉装置、試料処理装置および蓋開閉装置を用いた蓋部の開閉方法に関する。
【背景技術】
【0002】
分子生物学、生化学等の分野において、例えば、マイクロチューブのような蓋付き容器が広く用いられている。蓋付き容器は、容器部および容器部の開口と嵌合する蓋部が連結部を介して繋がっている。そのため、容器部に間違った蓋部を嵌めることを防ぎ、試料の取り扱いを簡便に行うことができる。しかしながら、蓋部の開閉時に、試験者自身の手指で触れることによって手指に試料が付着して、試料や周辺を汚染してしまうという問題がある。また、多数の蓋付き容器が取り扱われるため、蓋部の開閉に多大な労力を要するという問題もある。
【0003】
例えば、特許文献1および特許文献2には、試験者自身の手指が触れることなく自動でマイクロチューブの蓋部の開閉を行う開閉装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭64-061667号公報
【特許文献2】特表2019-527339号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1には、試料容器の蓋部を開閉させたときに生ずる蓋部の回転半径とほぼ同じ回転半径を持つ回転機構により蓋を開閉させる試料容器の自動開閉装置が開示されている。また、特許文献2には、容器を支持するラックの上部に、回転軸を中心にして、容器の蓋部が受け入れられ得る締結溝を有する開閉部と、開閉部を回転させる駆動部を含み、開閉部の回転によって、容器の蓋部を開閉するチューブ開閉装置が開示されている。
【0006】
蓋付き容器は、扱う試料の量に応じ様々な容量のものがある。蓋付き容器の容量としては、例えば、0.2ml、1.5ml、2.0ml、5.0ml、10ml等が挙げられる。そのため、容量が異なる蓋付き容器は、容器部の開口の径、蓋部の大きさ等のサイズが異なる。特許文献1および特許文献2に開示される開閉装置は、その構造から1種類の蓋付き容器の蓋部を開閉するものであり、サイズの異なる蓋付き容器については開閉することができない。したがって、サイズの異なる複数種類の蓋付き容器の蓋部を開閉できる開閉装置が望まれている。
【0007】
本出願の開示は、サイズの異なる複数種類の蓋付き容器の蓋部を開閉できる蓋開閉装置、試料処理装置および蓋開閉装置を用いた蓋部の開閉方法を提供することにある。本出願の開示のその他の任意付加的な効果は、発明を実施するための形態において明らかにされる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)容器部および容器部の開口と嵌合する蓋部を含む蓋付き容器の蓋開閉装置であって、
蓋開閉装置は、
蓋部に係合する係合部と、
係合部が設けられた回転部材と、
回転部材を移動させる移動部と、
回転部材を回転させる回転駆動部と、
を含み、
回転部材は、回転部材の回転軸に対して係合部を相対的に移動させる移動部材を含み、
移動部は、
蓋部に係合部が係合するように回転部材を移動させ、
回転部材の回転軸と蓋部の開閉における蓋付き容器の支点とが重なるように回転部材を移動させる、
蓋開閉装置。
(2)係合部は、凹部を含み、
凹部が、蓋部に係合する、
上記(1)に記載の蓋開閉装置。
(3)係合部は、複数の蓋付き容器の蓋部に係合する、
上記(1)または(2)に記載の蓋開閉装置。
(4)移動部材は、係合部が蓋部に係合した状態で、係合部を回転部材上で移動させる、
上記(1)~(3)のいずれか一つに記載の蓋開閉装置。
(5)移動部材は、
リニアガイドと、
リニアガイドレールと、
バネと、
を含み、
係合部は、
リニアガイドに設けられ、
リニアガイドとリニアガイドレールにより回転部材上を移動し、
バネは、
一方の端部が回転部材に固定され、
他方の端部がリニアガイドに接続され、
係合部に回転軸方向への付勢力を加える、
上記(1)~(4)のいずれか一つに記載の蓋開閉装置。
(6)上記(1)~(5)のいずれか一つに記載の蓋開閉装置と、
分注装置と、
を含む、
試料処理装置。
(7)容器部および容器部の開口と嵌合する蓋部を含む蓋付き容器の蓋開閉装置を用いた蓋部の開閉方法であって、
蓋開閉装置は、
蓋部に係合する係合部と、
係合部が設けられた回転部材と、
回転部材を移動させる移動部と、
回転部材を回転させる回転駆動部と、
を含み、
蓋開閉装置を用いた蓋部の開閉方法は、
蓋部に係合部が係合する係合工程と、
回転部材の回転軸を蓋部の開閉における蓋付き容器の支点に合わせる位置合わせ工程と、
回転部材を第一の方向に回転させて容器部から蓋部を開ける蓋開け工程と、
を含む、
蓋開閉装置を用いた蓋部の開閉方法。
(8)係合工程は、位置合わせ工程の前に行われ、
位置合わせ工程において、係合部が蓋部に係合した状態で、回転軸に対して係合部は相対的に移動する、
上記(7)に記載の蓋開閉装置を用いた蓋部の開閉方法。
(9)回転部材を第一の方向とは反対の第二の方向に回転させて、蓋部を容器部に嵌合させる蓋閉め工程、
を含む、
上記(7)または(8)に記載の蓋開閉装置を用いた蓋部の開閉方法。
(10)位置合わせ工程において、蓋部に係合している係合部は、回転部材上を移動する、
上記(7)~(9)のいずれか一つに記載の蓋開閉装置を用いた蓋部の開閉方法。
【発明の効果】
【0009】
本出願で開示する蓋開閉装置は、サイズの異なる蓋付き容器の蓋部を開閉できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】蓋付き容器1を模式的に示す図。
図2】蓋開閉装置2aを模式的に示す図。
図3】蓋開閉装置2aの回転部材4周辺の拡大図。
図4】Y方向からみた蓋開閉装置2aによる蓋部12を開ける動作の一例を模式的に示す図。
図5】蓋付き容器1または蓋付き容器1とは異なるサイズの蓋付き容器1’を用いた位置合わせ工程の一例を模式的に示す図。
図6】蓋開閉装置2bを模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ、蓋開閉装置、試料処理装置および蓋開閉装置を用いた蓋部の開閉方法について説明する。なお、本明細書において、同種の機能を有する部材には、同一または類似の符号が付されている。そして、同一または類似の符号の付された部材について、繰り返しとなる説明が省略される場合がある。
【0012】
また、図面において示す各構成の位置、大きさ、範囲などは、理解を容易とするため、実際の位置、大きさ、範囲などを表していない場合がある。このため、本出願における開示は、必ずしも、図面に開示された位置、大きさ、範囲などに限定されない。
【0013】
(方向の定義)
本明細書において、X軸、Y軸、Z軸の3次元直交座標系を用い、鉛直方向をZ方向とする。
【0014】
本出願で開示する蓋開閉装置に用いることができる蓋付き容器について説明する。図1に、蓋付き容器1の模式的な例を示す。図1Aには、蓋部12が閉まった状態の蓋付き容器1を示し、図1Bには、蓋部12が開いた状態の蓋付き容器1を示す。
【0015】
図1に示す例では、蓋付き容器1は、容器部11と、容器部11に嵌合する蓋部12と、連結部13とを具備する。代替的に蓋付き容器1は、容器部11と、容器部11に嵌合する蓋部12からなり、連結部13を具備しなくてもよい。蓋付き容器1としては、例えば、マイクロチューブ、セントチューブ、PPチューブ、ミクロ試験管等が挙げられる。また、蓋付き容器1の容器部11のサイズを変えることで異なる容量とすることができる。蓋付き容器の容量としては、例えば、0.2ml、1.5ml、2.0ml、5.0ml、10ml等が挙げられる。その際、容器部11のサイズに応じて、蓋部12のサイズも異なる。
【0016】
容器部11は、内部に試料等を保持することができれば形状に制限はない。容器部11は、円筒形状、円錐形状、円筒形状と円錐形状を組み合わせた形状等でもよい。図1には、容器部11が、円筒形状と円錐形状を組み合わせた形状のものを示す。
【0017】
蓋部12は、突出部14と嵌合部15とを具備する。突出部14は、蓋部12を開閉する際に、手指等が引っかかるように容器部11の縁より外側に突出している場所であり、力が加えられる。また、後述する係合部3が、突出部14に係合する。なお、突出部14は、容器部11の縁全体から突出してもよいし、容器部11の縁の一部から突出してもよい。嵌合部15は、容器部11に嵌合する。
【0018】
図1に示す例では、蓋付き容器1は連結部13を具備している。連結部13は、容器部11と蓋部12とを繋げる。
【0019】
図1に示す連結部13を具備した蓋付き容器1における蓋部12の開閉は、蓋部12の突出部14に力を加え、連結部13の屈曲した場所を支点16とし、支点16を中心軸とした回転運動によって行われる。また、連結部13を具備しない蓋付き容器1では、力が加えられる突出部14と反対側の容器部11と蓋部12の接触箇所の端部が支点16となる。
【0020】
蓋付き容器1は、機械的耐久性および有機溶媒への耐久性を有していることが好ましい。機械的耐久性および有機溶媒への耐久性を有する材料として、特に制限するものではないが、例えば、ポリプロピレン等が挙げられる。
【0021】
(蓋開閉装置の第1の実施形態)
図2および図3を参照して、蓋開閉装置2aの第1の実施形態について説明する。図2は、蓋開閉装置2aを模式的に示す図である。図3は、蓋開閉装置2aの回転部材4周辺の拡大図である。
【0022】
第1の実施形態に係る蓋開閉装置2aは、係合部3と、回転部材4と、移動部5と、回転駆動部6と、を少なくとも具備する。なお、図2に示す例では、蓋開閉装置2aは、任意付加的に蓋付き容器1を保持する容器保持部7を具備する。
【0023】
係合部3は、蓋付き容器1の蓋部12に係合する。係合部3は、蓋部12に係合できれば、特に制限はない。図2および図3に示す例では、係合部3は凹部31を具備し、凹部31に蓋部12の突出部14が係合する。代替的に、係合部3は、突出部14に係合する凸部を具備してもよい。
【0024】
また、係合部3の材料としては、特に制限はなく、例えば、ステンレス等の金属や、セラミック等の非金属が挙げられる。係合部3が蓋部12に係合するため、加工性の観点から金属であることが好ましい。
【0025】
回転部材4は、後述する回転駆動部6からの動力により回転軸41を中心にX-Z平面で回転する。また、回転部材4は、係合部3および移動部材42を具備する。そのため、回転部材4の回転により係合部3もX-Z平面で回転する。したがって、蓋部12に係合した状態での係合部3の回転により、蓋部12の突出部14に力を加えることができる。
【0026】
回転部材4は、回転軸41を中心に係合部3をX-Z平面で回転できればよく、特に制限はない。回転部材4の形状としては、例えば、板状、棒状等が挙げられる。図2および図3で示す例では、回転部材4は、板状である。また、回転部材4の大きさは蓋開閉装置2aに合わせて適宜調整すればよい。
【0027】
回転部材4が具備する移動部材42は、回転軸41に対して係合部3を相対的に移動させる。上記したように蓋付き容器1の蓋部12の開閉は、蓋部12の突出部14に力を加え支点16を中心軸として回転運動により行われる。そのため、突出部14に係合部3から力が加えられていても、回転軸41と支点16がずれていると蓋部12の開閉が効率よく行われない。そこで、蓋部12の開閉を効率よく行うために、後述する移動部5によって、回転軸41を支点16に合わせる。その際、移動部材42によって、回転軸41に対して係合部3を相対的に移動させることで、様々なサイズの蓋付き容器1に対応して蓋部12の開閉ができる。
【0028】
移動部材42は、回転軸41に対して係合部3を相対的に移動させることができればよく、特に制限はない。例えば、回転部材4に回転軸41を固定して回転軸41に対して回転部材4上で係合部3を移動させてもよく、回転部材4に係合部3を固定して回転軸41自体を回転部材4上で移動させてもよい。
【0029】
図2および図3に示す例では、移動部材42は、回転部材4に固定された回転軸41に対して回転部材4上で係合部3を移動させる。移動部材42は、リニアガイド43、リニアガイドレール44およびバネ45を具備する。リニアガイド43に係合部3が設けられ、リニアガイド43とリニアガイドレール44により係合部3は、回転部材4上を移動する。そして、バネ45の一方の端部を回転部材4に固定し、他方の端部をリニアガイド43に接続することで、係合部3に回転軸41方向への付勢力を加える。したがって、当該付勢力により、係合部3が蓋部12に係合した状態を維持できる。移動部材42のリニアガイド43とリニアガイドレール44は、代替的にスライダ、レール、ローラガイド、ボールガイド等の直動機構で構成してもよい。また、バネ45は、代替的にゴム、板バネ等の弾性部材または自重による機構で構成してもよい。
【0030】
図2および図3には、移動部材42がバネ45を具備した例が記載されているが、移動部材42は、回転軸41へ付勢力を加えるバネ45を具備しない構成としてもよい。その場合、移動部材42は、例えば、リニアガイド43、リニアガイドレール44を具備し、リニアガイドレール44の所定の位置に固定できるロック機構をリニアガイド43が備えた構成としてもよい。リニアガイド43は、係合部3の蓋付き容器1に係合する係合箇所と回転軸41とのX方向の距離が係合部3に係合する突出部14と支点16との距離と同じになる位置に固定される。係合部材3を所定の位置に固定できることにより、後述する移動部5により回転部材4を移動させて回転軸41と支点16との位置を合わせると同時に係合部3を蓋部12に係合できる。また、リニアガイド43を蓋付き容器1のサイズに応じてリニアガイドレール44の複数の位置に固定できるようにすることで、蓋付き容器1のサイズが変化しても、係合部材3を所定の位置に固定できる。なお、バネ45を用いない移動部材42による係合部3の移動は、自動で行ってもよく、手動で行ってもよい。自動で行うには、上記の直動機構にアクチュエーター等の駆動源を用いてもよい。ロック機構は、リニアガイド43を固定できればよく、例えば、ラチェット、ネジ等が挙げられるが、特に制限はない。
【0031】
また、係合部3を回転部材4に固定して回転軸41を移動させるには、後述する回転駆動部6に対して回転部材4を移動させる移動部材42を具備すればよい。この場合、移動部材42は、回転駆動部6に対して回転部材4をX方向に移動させ、移動後、回転部材4に回転軸41を固定できれば、特に制限はない。移動部材42としては、例えば、上記した直動機構およびロック機構と同様なものが挙げられる。
【0032】
移動部5は、直接または間接的に回転部材4を移動させる。移動部5は、回転部材4を移動させることができれば、特に制限はない。図2に示す例では、移動部5は、X方向移動部51およびZ方向移動部52を具備している。X方向移動部51およびZ方向移動部52は、図示していない駆動源と動力伝達機構とを具備する。駆動源は回転部材4を移動させる動力を発生し、動力伝達機構は動力を回転部材4へ伝える。また、図2に示す例では、移動部5は、回転駆動部6を介して間接的に回転部材4を移動させる。代替的に、移動部5と回転駆動部6を統合して、移動部5と回転部材4を接触させて、移動部5が直接回転部材4の移動と回転を行ってもよい。
【0033】
駆動源から発生させる動力は、自動で発生させてもよく、手動で発生させてもよい。動力を自動で発生させる駆動源としては、例えば、空圧式アクチュエーター、油圧式のアクチュエーター、電動アクチュエーター、ソレノイドアクチュエーター等のアクチュエーターが挙げられる。また、動力を手動で発生させる駆動源としては、例えば、ネジ機構を用いたもの等が挙げられる。
【0034】
動力伝達機構は、例えば、シャフト、ギア機構、ネジ機構、リンク機構、クランク機構、または、ユニバーサルジョイント等のジョイント機構が挙げられる。
【0035】
移動部5がX方向移動部51およびZ方向移動部52を具備する例を説明したが、代替的に、移動部5が、回転部材4に対し、1つの駆動源、1つの動力伝達機構を具備して回転部材4をX-Z平面内で移動させてもよい。1つの動力伝達機構を用いる場合は、例えば、動力伝達機構にギア等を具備し、回転部材4をX方向、Z方向に切り替えて移動させるものが挙げられる。
【0036】
さらに、移動部5は、回転部材4をY方向に移動させるY方向移動部を具備してもよい。Y方向移動部によって、係合部3をY方向に移動できるので、Y方向に離れた蓋付き容器1の蓋部12の開閉もできる。
【0037】
回転駆動部6は、回転部材4を回転させるための動力を発生させ回転部材4へ伝える。回転駆動部6は、回転部材4を回転させることができれば、特に制限はない。回転駆動部6から発生させる動力は、自動で発生させてもよく、手動で発生させてもよい。動力を自動で発生させるものとしては、例えば、DCまたはACモータ、ステッピングモータ、サーボモータ等が挙げられる。また、動力を手動で発生させるものとしては、例えば、手回しハンドルを用いたもの等が挙げられる。
【0038】
また、移動部5による回転部材4の移動および/または回転駆動部6による回転部材4の回転を自動で行う場合には、移動部5および/または回転駆動部6の制御を、例えば、プログラマブル・ロジック・コントローラ(PLC)、PC等によって制御してもよい。
【0039】
さらに、第1の実施形態に係る蓋開閉装置2aは、回転部材4を回転させることで、係合部3を回転移動させる。そのため、係合部3の回転移動に回転シャフト等の構成を必要としない。したがって、回転部材4周辺を簡素化でき、例えば、蓋付き容器1内の試料に分注作業等の処理を行う際、第1の実施形態に係る蓋開閉装置2aが分注作業の妨げになることを防げる。
【0040】
第1の実施形態に係る蓋開閉装置2aにおいて、容器保持部7は任意付加的な構成要素である。容器保持部7は、蓋付き容器1を保持する。そして、蓋開閉装置2aは、保持された蓋付き容器1の蓋部12の開閉を行う。
【0041】
容器保持部7は、蓋付き容器1を保持できればよく、保持する蓋付き容器1の数についても、特に制限はない。容器保持部7としては、例えば、チューブラック等が挙げられる。また、容器保持部7は、蓋開閉装置2aにあらかじめ設けられてもよく、蓋部12の開閉を行う際に配置してもよい。
【0042】
(蓋開閉装置を用いた蓋部の開閉方法の実施形態)
図4および図5を参照して、蓋付き容器1の蓋開閉装置2aを用いた蓋部12の開閉方法(以下、「蓋部の開閉方法」と記載することがある。)の実施形態について説明する。図4は、Y方向からみた蓋開閉装置2aによる蓋部12を開ける動作の一例を模式的に示す図である。図5は、異なるサイズの蓋付き容器1、1’を用いた位置合わせ工程の一例を模式的に示す図である。
【0043】
実施形態に係る蓋部12の開閉方法は、蓋開閉装置2aを用い、蓋部12に係合部3が係合する係合工程と、回転部材4の回転軸41を蓋部12の開閉における蓋付き容器1の支点16に合わせる位置合わせ工程と、回転部材4を第一の方向8に回転させて容器部11から蓋部12を開ける蓋開け工程と、を少なくとも含む。また、任意付加的に、回転部材4を第一の方向8とは反対の第二の方向9に回転させて、蓋部12を容器部11に嵌合させる蓋閉め工程を含んでもよい。係合工程は、位置合わせ工程よりも前に行ってもよく、位置合わせ工程と同時に行ってもよい。図4に示す例では、蓋部12の開閉方法は、係合工程、位置合わせ工程、蓋開け工程、蓋閉め工程の順に行われる。
【0044】
係合工程は、移動部5により回転部材4を移動させて、回転部材4に設けられた係合部3が蓋部12の突出部14に係合する。具体的には、図4Aに示す位置に回転部材4がある場合、まず係合部3の凹部31が容器保持部7に保持された蓋付き容器1の突出部14とZ方向の位置が同じになるように、Z方向移動部52により回転部材4を移動させる。そして、図4Bに示すように、係合部3の凹部31は、突出部14とZ方向の位置が同じになる。その後、X方向移動部51により回転部材4を移動させ、図4Cに示すように、係合部3の凹部31が突出部14に係合する。
【0045】
なお、凹部31と突出部14とのZ方向における位置合わせは、凹部31と突出部14とのZ方向における位置を合わせられればよく、特に制限はない。例えば、蓋開閉装置2aは、図示しないセンサを具備してもよい。センサが凹部31と突出部14とのZ方向における位置が合ったことを検出して回転部材4の移動を停止させてもよい。また、代替的にPLC等により移動部5が具備する駆動源のアクチュエーターの数値制御をしてもよい。さらに、凹部31と突出部14との位置合わせを目視によって行ってもよい。
【0046】
位置合わせ工程は、回転部材4の回転軸41を蓋部12の開閉における蓋付き容器1の支点16に合わせる。図4に示す例では、位置合わせ工程は、係合工程の後に行われる。
【0047】
上記したように蓋付き容器1の蓋部12の開閉は、蓋部12の突出部14に力を加え支点16を中心軸として回転運動により行われる。そのため、図4Cの状態で、回転部材4を回転させると回転軸41と支点16とが合っていないため、効率よく蓋部12を開けられない。したがって、図4Dに示すように、X方向移動部51により回転部材4をX方向に移動させて回転軸41と支点16とを合わせる。その際、回転軸41に対して蓋部12の突出部14に係合している係合部3を相対的に移動させる。図4Dで示す例では、回転部材4がX方向に移動することで、移動部材42により回転軸41に対して係合部3は相対的に回転部材4上を移動する。さらに移動部材42は、バネ45を具備し、回転軸41方向へ係合部3に付勢力を加えているので、係合部3が蓋部12に係合した状態を維持できる。
【0048】
回転軸41と支点16との位置合わせは、回転軸41と支点16とを合わせられればよく、特に制限はない。例えば、蓋開閉装置2aは、図示しないセンサを具備してもよい。センサが回転軸41と支点16とが合ったことを検出して回転部材4の移動を停止させてもよく、センサが係合部3の蓋部への係合を検出して回転部材4を所定距離移動させてもよい。また、代替的にPLC等により移動部5が具備する駆動源のアクチュエーターの数値制御をしてもよい。さらに、回転軸41と支点16との位置合わせを目視によって行ってもよい。
【0049】
図4A図4Dでは、係合工程の後に位置合わせ工程を行うことを説明したが、位置合わせ工程と係合工程を同時に行うこともできる。例えば、移動部材42によって、係合部3の蓋付き容器1に係合する係合箇所と回転軸41とのX方向の距離が係合部3に係合する突出部14と支点16との距離と同じになる位置に係合部3を移動させ固定する。そうすることで、回転軸41と支点16を合わせた際に、係合部3が蓋部12に係合する。
【0050】
蓋開け工程は、回転部材4を第一の方向8に回転させて容器部11から蓋部12を開ける。図4Eに示すように、回転軸41と支点16とが合ったら、回転駆動部6によって回転部材4を第一の方向8に回転させる。回転部材4の回転により係合部3も回転するため、蓋部12の突出部14に力がかかり、支点16を中心軸として容器部11より蓋部12が開けられる。
【0051】
そして、図4Fに示すように、蓋部12が開いた状態でも、係合部3は蓋部12の突出部14を係合できる。そのため、例えば、蓋付き容器1内の試料に分注作業等の処理を行う際、蓋部12が処理の妨げになることを防げる。なお、図4Fに示す例では、回転部材4を第一の方向8の方向に90度回転させているが、回転部材4を90度以上回転させることを制限するものでない。回転部材4を90度以上回転させることで、容器部11からの蓋部12の位置を90度以上にできるので、容器部11の上部に空間を確保できる。したがって、図4Fに示す蓋部12の位置よりも処理の妨げとなることを防げる。
【0052】
また、上記では、蓋付き容器1を用いた場合を説明したが、蓋付き容器1とはサイズが異なる蓋付き容器1’を用いた場合では、位置合わせ工程において、蓋付き容器1と比べて回転部材4の移動距離が異なる。図5Aおよび図5Bに蓋付き容器1を用いた場合の位置合わせ工程を示す。そして、図5Cおよび図5Dに蓋付き容器1よりもサイズが大きい蓋付き容器1’を用いた場合の位置合わせ工程を示す。
【0053】
位置合わせ工程において、回転部材4の回転軸41と蓋付き容器1、1’の支点16とを合わせるために、回転部材4を移動させる。その際、図5Aの位置から図5Bの位置への移動よりも図5Cの位置から図5Dの位置への移動の方が、回転部材4の移動距離は大きくなる。しかしながら、移動部材42により回転軸41に対して係合部3を相対的に移動できることから、係合部3が蓋部12に係合した状態を維持できる。したがって、サイズの異なる蓋付き容器1’であっても、位置合わせ工程で、回転軸41と支点16を合わせられるので、蓋部12が開けられる。
【0054】
実施形態に係る蓋部12の開閉方法において、蓋閉め工程は任意付加的な構成要素である。蓋閉め工程は、回転部材4を第一の方向8とは反対の第二の方向9に回転させて、蓋部12を容器部11に嵌合させる。上記した蓋開け工程によって、図4Fに示すように蓋部12は開けられ、その際、係合部3は蓋部12に係合している。また、回転部材4の回転軸41は、支点16と合っている。したがって、回転部材4を第二の方向9に回転させることで、蓋部12の突出部14に力が加わり、支点16を中心軸として蓋部12の嵌合部15が容器部11に嵌合して蓋部12が閉められる。
【0055】
また、実施形態に係る蓋部12の開閉方法において、容器保持部7が複数の蓋付き容器1を保持していた場合、蓋開閉装置2aは、係合工程、位置合わせ工程、蓋開け工程、蓋閉め工程を繰り返すことで、複数の蓋付き容器1の蓋部12の開閉ができる。
【0056】
上記の実施形態に係る蓋開閉装置2aおよび蓋部12の開閉方法は、以下の効果を奏する。
(1)移動部材42を具備することにより、サイズの異なる蓋付き容器1であっても蓋部12の開閉ができる。
(2)係合部3の回転移動に回転シャフト等の構成を必要としないので、回転部材4周辺を簡素化でき、容器部11に入っている試料の処理を行う際、蓋開閉装置2aの構成が処理の妨げになることを防げる。
(3)蓋部12を開けた状態でも、係合部3が蓋部12に係合できるため、容器部11に入っている試料の処理を行う際、蓋部12が処理の妨げになることを防げる。
【0057】
(蓋開閉装置の第2の実施形態)
図6を参照して、蓋開閉装置2bの第2の実施形態について説明する。図6は、蓋開閉装置2bを模式的に示す図である。
【0058】
第2の実施形態に係る蓋開閉装置2bは、第1の実施形態に係る蓋開閉装置2aの係合部3に換えて係合部3’を具備する点で、第1の実施形態に係る蓋開閉装置2aと異なり、その他の点は第1の実施形態に係る蓋開閉装置2aと同じである。したがって、第2の実施形態に係る蓋開閉装置2bでは、第1の実施形態に係る蓋開閉装置2aと異なる点を中心に説明し、第1の実施形態に係る蓋開閉装置2aにおいて説明済みの事項についての繰り返しとなる説明は省略する。よって、第2の実施形態に係る蓋開閉装置2bにおいて明示的に説明されなかったとしても、第1の実施形態に係る蓋開閉装置2aで説明済みの事項を採用可能であることは言うまでもない。
【0059】
係合部3’は、図6に示すように複数の蓋付き容器1の蓋部12に係合する。係合部3’は、複数の蓋付き容器1の蓋部12に係合できれば、特に制限はない。図6に示す例では、係合部3’は凹部31’を具備している。凹部31’は、複数の蓋付き容器1の蓋部12の突出部14に係合する。代替的に、係合部3’は、複数の蓋付き容器1の蓋部12の突出部14に係合する凸部を具備してもよい。
【0060】
また、係合部3’の材料としては、上記第1の実施形態で説明済みの係合部3と同様なものを用いることができる。
【0061】
第2の実施形態に係る蓋開閉装置2bは、第1の実施形態に係る蓋開閉装置2aが奏する効果に加え、以下の効果を相乗的に奏する。
(1)係合部3’が複数の蓋付き容器1の蓋部12に係合できるので、複数の蓋付き容器1の蓋部12を一度に開閉できる。
【0062】
(試料処理装置の実施形態)
上記の実施形態に係る蓋開閉装置2a、2bは、蓋開閉装置2a、2bによって開けられた蓋付き容器1内の試料を処理する装置と組み合わせることができる。組み合わせる装置としては、例えば、分注装置、分注機、ディスペンサー、ドロッパー、リキッドハンドラー、ピペッターマシン、希釈装置、塗布装置、スポッター等が挙げられる。
【0063】
また、蓋開閉装置2a、2bと分注作業を自動で行う分注装置とを組み合わせた場合には、蓋開閉装置2a、2bと分注装置を例えば、PLC、PC等によって蓋開閉装置2a、2bの移動部5および/または回転駆動部6と分注装置とを連動させて制御してもよい。
【0064】
なお、本発明は、上記の実施形態に限定されない。本発明の範囲内において、上記の各実施形態の自由な組み合わせ、あるいは各実施形態の任意の構成要素の変形、または、任意の構成要素の省略が可能である。さらに、上記の各実施形態に任意の構成要素が追加されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本出願で開示する蓋開閉装置、試料処理装置および蓋開閉装置を用いた蓋部の開閉方法を用いると、サイズの異なる蓋付き容器の蓋部を開閉できる。したがって、蓋付き容器を扱う業者にとって有用である。
【符号の説明】
【0066】
1、1’…蓋付き容器、11…容器部、12…蓋部、13…連結部、14…突出部、15…嵌合部、16…支点、2、2a、2b…蓋開閉装置、3、3’…係合部、31、31’…凹部、4…回転部材、41…回転軸、42…移動部材、43…リニアガイド、44…リニアガイドレール、45…バネ、5…移動部、51…X方向移動部、52…Z方向移動部、6…回転駆動部、7…容器保持部、8…第一の方向、9…第二の方向
図1
図2
図3
図4-1】
図4-2】
図4-3】
図5
図6