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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022108229
(43)【公開日】2022-07-25
(54)【発明の名称】ヒータユニット及び車両用シート
(51)【国際特許分類】
   H05B 3/20 20060101AFI20220715BHJP
   A47C 7/74 20060101ALI20220715BHJP
   B60N 2/56 20060101ALI20220715BHJP
   A47C 27/12 20060101ALI20220715BHJP
【FI】
H05B3/20 350
A47C7/74 B
B60N2/56
A47C27/12 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021012570
(22)【出願日】2021-01-29
(31)【優先権主張番号】P 2021002906
(32)【優先日】2021-01-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000129529
【氏名又は名称】株式会社クラベ
(72)【発明者】
【氏名】藤井 寛剛
【テーマコード(参考)】
3B084
3B087
3B096
3K034
【Fターム(参考)】
3B084JA03
3B084JA06
3B084JF01
3B084JF02
3B087DE09
3B096AC14
3K034AA02
3K034AA12
3K034AA22
3K034BA08
3K034BA12
3K034BB10
3K034BB15
3K034BB16
3K034HA04
3K034JA09
(57)【要約】
【課題】通気性及び機械的強度に優れるヒータユニットを提供すること。
【解決手段】基材11と、コード状ヒータ10とを有し、コード状ヒータ10が、基材11上に配設され固定されており、基材11が、略平面状に配置された複数の繊維糸11aと不織布を組合せてなるものであり、複数の繊維糸11aが、所定の方向に対して直線状に配置された第1繊維糸群11xと、第1繊維糸群と異なる方向に対して直線状に配置された第2繊維糸群11yとから少なくとも構成されており、コード状ヒータ10が、直線部10aと曲線部10bの組合せによる蛇行形状によって基材11上に配置されており、コード状ヒータ10の直線部10aが、第1繊維糸群11x及び第2繊維糸群11yと異なる角度になるよう配置されているヒータユニット。上記のヒータユニットが配設された車両用シート。
【選択図】 図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、コード状ヒータとを有し、上記コード状ヒータが、上記基材上に配設され固定されているヒータユニットにおいて、
上記基材が、略平面状に配置された複数の繊維糸と不織布を組合せてなるものであり、
上記複数の繊維糸が、所定の方向に対して直線状に配置された第1繊維糸群と、上記第1繊維糸群と異なる方向に対して直線状に配置された第2繊維糸群とから少なくとも構成されており、
上記コード状ヒータが、直線部と曲線部の組合せによる蛇行形状によって基材上に配置されており、
上記コード状ヒータの直線部が、上記第1繊維糸群及び上記第2繊維糸群と異なる角度になるよう配設されているヒータユニット。
【請求項2】
上記繊維糸が、織られているか、または、異なる方向の引き揃えが重ねられているものであり、上記繊維糸の見かけ径よりも大きい開口部を有する請求項1記載のヒータユニット。
【請求項3】
上記基材が、繊維糸と一対の不織布とからなり、上記繊維糸が上記一対の不織布によって挟持されている請求項1又は請求項2記載のヒータユニット。
【請求項4】
上記コード状ヒータの最外層には熱融着部が形成されており、上記熱融着部が、上記不織布及び上記繊維糸と熱融着されて固定されている請求項1~請求項3何れか記載のヒータユニット。
【請求項5】
シート表皮とシートパットを有し、上記シート表皮と上記シートパットの間に請求項1~請求項4何れか記載のヒータユニットが配設された車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気毛布、電気カーペット、カーシートヒータなどに好適に使用可能なヒータユニットに係り、通気性及び機械的強度に優れるものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両用シートに装着されカーシートヒータとして供されるヒータユニットとしては、例えば、基材上に熱融着部を備えたコード状ヒータを蛇行配線し、加熱加圧による熱融着により基材と熱融着部を接着固定した構成のものなどがある(例えば、特許文献1参照)。また、近年では車室内環境の快適性を更に向上するものとして、車両用シートに空調装置を組み込んだものが実用化されてきている。具体的には、ヒータユニット及びシート表皮に通気性を持たせ、シート内部に形成された通風路を通して表皮側に送風することで、車両用シートの表面から空気が吹き出すようにしたものが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
このような空調装置が組み込まれた車両用シートに適用されるヒータユニットとしては、特に通気性に優れたものが必要とされる。そのため、ヒータユニットの基材として、複数の貫通孔を形成した基材、スパンボンド不織布やスパンレース不織布のような通気性の優れた材料からなる基材、メッシュ構造を有する基材などを使用し、通気性を向上させることが知られている(特許文献3~7参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4202071号公報:クラベ
【特許文献2】特許第4999455号公報:クラベ
【特許文献3】特許第3991750号公報:松下電器産業
【特許文献4】特開2005-285602公報:松下電器産業
【特許文献5】特表平8-507404公報:スカンドメック
【特許文献6】特開2015-74375公報:テイ・エステック
【特許文献7】特許第6636825号公報:クラベ
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献3~6に記載されたヒータユニットの基材では、通気性の代償として、機械的強度が格段に落ちてしまうことになっていた。特に車両用シートに適用されるヒータユニットにおいては、運転者等の着座・離座によって繰り返し荷重が加えられるが、このような荷重に対しても変形や破断のない充分な特性のものは得られていなかった。また、複数の貫通孔を形成した基材では、通気性についても若干の向上がなされるのみであり、更なる通気性の向上も必要とされていた。
【0006】
上記特許文献7に記載されたヒータユニットは、上記特許文献3~6に記載されたヒータユニットの課題を解決するものである。しかしながら、更なる通気性の向上が必要となり、不織布の密度(目付け)を減少させるよう要求があった。これにより、基材としての機械的強度や剛性が低下して、破断や変形が生じやすくなることになる。基材に変形が生じると、例えばヒータユニットを車両用シートに配置する際、作業が困難となってしまい、また、設計で意図しない箇所にまでヒータユニットが配置されてしまうことにもなりかねない。そのため、ヒータユニットとしての機械的強度や剛性に更なる補強を図る必要が生じていた。
【0007】
本発明はこのような従来技術の課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、通気性及び機械的強度に優れるヒータユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するべく、本発明によるヒータユニットは、基材と、コード状ヒータとを有し、上記コード状ヒータが、上記基材上に配設され固定されているヒータユニットにおいて、上記基材が、略平面状に配置された複数の繊維糸と不織布を組合せてなるものであり、上記複数の繊維糸が、所定の方向に対して直線状に配置された第1繊維糸群と、上記第1繊維糸群と異なる方向に対して直線状に配置された第2繊維糸群とから少なくとも構成されており、上記コード状ヒータが、直線部と曲線部の組合せによる蛇行形状によって基材上に配置されており、上記コード状ヒータの直線部が、上記第1繊維糸群及び上記第2繊維糸群と異なる角度になるよう配置されているものである。
また、上記繊維糸が、織られているか、または、異なる方向の引き揃えが重ねられているものであり、上記繊維糸の見かけ径よりも大きい開口部を有することが考えられる。
また、上記基材が、繊維糸と一対の不織布とからなり、上記繊維糸が上記一対の不織布によって挟持されていることが考えられる。
また、上記コード状ヒータの最外層には熱融着部が形成されており、上記熱融着部が、上記不織布及び上記繊維糸と熱融着されて固定されていることが考えられる。
また、本発明による車両用シートは、シート表皮とシートパットを有し、上記シート表皮と上記シートパットの間に上記のヒータユニットが配設されたものである。
【発明の効果】
【0009】
一般的に、通気性を向上させるためには、基材の単位面積辺りの繊維量を減少させることが有効であるが、これにより、基材の機械的強度や剛性も大きく減少することになる。ここで、本発明によるヒータユニットによれば、略平面状に配置された繊維糸によって抗張力が得られる。従って、通気性が向上された機材であっても機械的強度に優れたものとなる。
更に、繊維糸の方向とコード状ヒータの直線部の方向が異なる角度となっていることで、コード状ヒータによっても基材の形状を保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明による実施の形態を示す図で、ヒータユニットの構成を示す平面図である。
図2】本発明による実施の形態を示す図で、基材の構成を示す一部切り欠き斜視図である。
図3】本発明による実施の形態を示す図で、コード状ヒータの構成を示す一部切り欠き側面図である。
図4】本発明による実施の形態を示す図で、ホットプレス式ヒータ製造装置の構成を示す図である。
図5】本発明による実施の形態を示す図で、コード状ヒータを所定のパターン形状に配設する様子を示す一部斜視図である。
図6】本発明による実施の形態を示す図で、ヒータユニットの一部について基材を透過させて示す拡大平面図である。
図7】本発明による実施の形態を示す図で、ヒータユニットの一部についての拡大断面図である。
図8】本発明による実施の形態を示す図で、ヒータユニットを車両用シート内に埋め込んだ様子を一部切り欠いて部示す斜視図である。
図9】本発明による他の実施の形態を示す図で、コード状ヒータの構成を示す一部切り欠き側面図である。
図10】本発明による他の実施の形態を示す図で、コード状ヒータの構成を示す一部切り欠き側面図である。
図11】本発明による他の実施の形態を示す図で、コード状ヒータの構成を示す一部切り欠き側面図である。
図12】本発明による他の実施の形態を示す図で、コード状ヒータの構成を示す一部切り欠き側面図である。
図13】本発明による他の実施の形態を示す図で、基材の他の形態による構成を示す一部切り欠き斜視図である。
図14】本発明による実施の形態を示す写真で、ヒータユニットの要部の拡大写真である。
図15】本発明による実施の形態を示す写真で、ヒータユニットの要部断面の拡大写真である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。これらの実施の形態は、本発明を車両用シートヒータに適用することを想定した例を示すものである。
【0012】
まず、本実施の形態1におけるコード状ヒータ10の構成から説明する。本実施の形態におけるコード状ヒータ10は図3に示すような構成になっている。まず、外径約0.2mmの芳香族ポリアミド繊維束からなるヒータ芯3があり、該ヒータ芯3の外周には、素線径0.08mmの錫鍍金硬質錫入り銅合金線(TH-SNCC-3)からなる6本の導体素線5aを引き揃えて構成されたものがピッチ約0.7mmで螺旋状に巻装されている。このヒータ芯3上に導体素線5aを巻装したものの外周に、絶縁体層7としての四フッ化エチレン-六フッ化プロピレン共重合体(FEP)が約0.15mmの肉厚で押出・被覆され、発熱線1が構成されている。又、この発熱線1の外周には、更に、熱融着部9としての難燃剤が配合されたポリエステル樹脂が0.2mmの厚さで押出・被覆されている。コード状ヒータ10はこのような構成になっていて、その仕上外径は1.1mmである。又、屈曲性や引張強度を考慮した場合には上記ヒータ芯3は有効であるが、ヒータ芯3の代わりに複数本の発熱体素線を引き揃えるか或いは撚り合わせたものを使用することも考えられる。また、このコード状ヒータ10が、それ単体でUL1581水平燃焼試験:2008年、第4版 に合格する難燃性を有するものであると、ヒータユニットの難燃性を向上させることができるため好ましい。
【0013】
次に、上記構成をなすコード状ヒータ10を接着・固定する基材11の構成について説明する。本実施例における基材11は、図2に示すように、見かけ径が0.5mmのポリエステルマルチフィラメントからなる繊維糸11aを格子間隔10mm、開口部11cの大きさ9.5mm、遮蔽率12.9%の平織りにし、それを難燃性ポリエステル繊維からなる一対の不織布11b(目付け27g/m,見かけ厚さ1mm)で挟持し接着剤で貼付したものである。即ち、繊維糸11aは、図2において左右方向に直線状に配置された第1繊維糸群11xと、図2において前後方向に直線状に配置された第2繊維糸群11yとから構成されている。なお、この不織布は、繊維を構成する材料を溶融押出して紡糸しながら積層してウェブを形成して得たものであり、フィラメント(長繊維)からなるものである。このような一対の不織布11bの間に繊維糸11aは挟持されており、これらは接着剤で固定されている。なお、繊維糸11a同士の交点についても接着剤で固定されている。このような構成の基材11は、全体として目付け100g/mとなっている。
【0014】
次に、上記コード状ヒータ10を基材11上に蛇行形状で配設して接着・固定する構成について説明する。本実施の形態においては、蛇行間隔を20mmとした。図4はコード状ヒータ10を基材11上に接着・固定させるためのホットプレス式ヒータ製造装置13の構成を示す図である。まず、ホットプレス治具15があり、このホットプレス治具15上には複数個の係り止め機構17が設けられている。上記係り止め機構17は、図5に示すように、ピン19を備えていて、このピン19はホットプレス冶具15に穿孔された孔21内に下方より差し込まれている。このピン19の上部には係り止め部材23が軸方向に移動可能に取り付けられていて、コイルスプリング25によって常時上方に付勢されている。そして、図5中仮想線で示すように、これら複数個の係り止め機構17の係り止め部材23にコード状ヒータ10を引っ掛けながら蛇行形状にて配設することになる。
【0015】
図4に戻って、上記複数個の係り止め機構17の上方にはプレス熱板27が昇降可能に配置されている。すなわち、コード状ヒータ10を複数個の係り止め機構17の係り止め部材23に引っ掛けながら蛇行形状にて配設し、その上に基材11を置く。その状態で上記プレス熱板27を降下させてコード状ヒータ10と基材11に、例えば、230℃/5秒間の加熱・加圧を施すものである。それによって、コード状ヒータ10側の熱融着部9と基材11側の熱融着性繊維が融着することになり、その結果、コード状ヒータ10と基材11が接着・固定されることになる。尚、上記プレス熱板27の降下による加熱・加圧時には複数個の係り止め機構17の係り止め部材23はコイルスプリング25の付勢力に抗して下方に移動するものである。
【0016】
コード状ヒータ10の蛇行形状は、図6に示すように、直線部10aと曲線部10bを組合せていくことによって構成されるものである。この際、本実施の形態のように、コード状ヒータ10の直線部10aが、第1繊維糸群11x及び上記第2繊維糸群11yと異なる角度になるように配置されていることが好ましい。基材11の機械的強度としては、繊維糸11aが配置される方向に対して強いが、繊維糸11aが配置される方向と異なる角度の引張に対しては、角度が変わっていくに従い基材は変形しやすくなる。特に、本実施の形態のように、第1繊維糸群11xと第2繊維糸群11yを直行させた場合、第一繊維糸群11xから45度ずれた角度への引張に対して最も変形しやすくなる。コード状ヒータ10の直線部10aが、第1繊維糸群11x及び上記第2繊維糸群11yと異なる角度になることで、様々な角度での引張に対しても変形しにくくなるようになる。なお、図6においては、基材11の不織布11bを透過させて示している。
【0017】
基材11のコード状ヒータ10を配設しない側の面には、接着層の形成、或いは、両面テープの貼り付けがなされても良い。これは、座席に取り付ける際、ヒータユニット31を座席に固定するためのものである。
【0018】
上記作業を行うことにより、図1に示すような車両用シートヒータのヒータユニット31を得ることができる。尚、上記ヒータユニット31におけるコード状ヒータ10の両端、及び、温度制御装置39にはコードが接続されており、このコードにより、コード状ヒータ10、温度制御装置39、及び、コネクタ35が接続されている。そして、このコネクタ35を介して図示しない車両の電気系統に接続されることになる。
【0019】
そして、上記構成をなすヒータユニット31は、図8に示すような状態で、車両用のシート41内に埋め込まれて配置されることになる。すなわち、上記した通り、車両用シート41のシート表皮43又は座席パット45に、ヒータユニット31が貼り付けられることとなるものである。
【0020】
上記実施の形態のようにして得られたヒータユニットは、コード状ヒータ10の熱融着部9が、基材11の不織布11bの内部に浸透するとともに、不織布11bを構成する繊維を取り囲むことによって、コード状ヒータ10と基材11とが強固に接着することになる。特に、基材11が熱融着性繊維を含み、この熱融着性繊維が芯-鞘構造を有するとともに、鞘部分が低融点のものであれば、芯部分を取り囲んだ状態で、該鞘部分と上記コード状ヒータの熱融着部9とが、互いに融着し一体化することになる。これにより、コード状ヒータ10と基材11とが更に強固に接着することになる。
【0021】
コード状ヒータ10の熱融着部9は、図7に示す拡大断面図のように、基材11の不織布11bを越えて更に繊維糸11aに直接接触するまで浸透し、熱融着部9と繊維糸11aが熱融着により固定されていることが好ましい。基材11の通気性を向上させようとすると、基材11の不織布11bの密度(目付)が小さくなるため、不織布11bの繊維抜けによるコード状ヒータ10の剥離が生じやすくなる。熱融着部9と繊維糸11aが直接固定されることで、このような剥離を防止することができる。また、コード状ヒータ10と繊維糸11aが強固に一体化することになるため、ヒータユニットが変形しにくくなるという効果もある。図14図15には、ヒータユニットの要部の拡大写真を示す。図14は、基材におけるコード状ヒータを固定した面と逆の面からヒータユニットを撮影した写真である。図15は、ヒータユニットをコード状ヒータの向きに沿って切断し、その断面を撮影した写真である。図14図15の何れを見ても、コード状ヒータの熱融着部が繊維糸を取り囲んでおり、熱融着部と繊維糸が熱融着により固定されていることが確認できる。
【0022】
尚、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではない。コード状ヒータ10は、従来公知の種々のコード状ヒータを使用することができる。発熱線1の構成としては、例えば、上記実施の形態のように、導体素線5aを複数本撚り合わせ又は引き揃え、これを芯線3上に巻装し、その外周に絶縁体層7を施したもの(図3参照)、絶縁被膜5bにより被覆された導体素線5aを複数本撚り合わせたもの(図9参照)、絶縁被膜5bにより被覆された導体素線5aを複数本引き揃えたもの(図10参照)、上記実施の形態2のように、絶縁被膜5bにより被覆された導体素線5aを複数本撚り合わせ又は引き揃え、これを芯線3上に巻装したもの(図11参照)、熱融着部9を断続的に形成したもの(図12参照)などが挙げられる。また、温度検知線や短絡検知線などを併せて巻回しても良い。このような他の態様について、具体的なものを以下のように示す。まず、図11に示すような構成であり、外径約0.2mmの芳香族ポリアミド繊維束からなるヒータ芯3の外周に、素線径0.08mmの錫銅合金線からなる導体素線5aを7本引き揃え、ピッチ1mmで螺旋状に巻装して発熱線1を構成する。なお、導体素線5aには、ポリウレタンからなる絶縁被膜5bが厚さ約0.005mmで被覆されている。この発熱線1の外周に、熱融着部9としての難燃剤が配合されたポリエチレン樹脂が0.25mmの厚さで押出・被覆されている。コード状ヒータ10はこのような構成になっていて、その仕上外径は0.9mmである。
【0023】
芯線3としては、例えば、ガラス繊維等の無機繊維や、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル繊維、脂肪族ポリアミド繊維、芳香族ポリアミド繊維、全芳香族ポリエステル繊維等の有機繊維のモノフィラメント、マルチフィラメント、スパンヤーン、或いはそれらの繊維材料、若しくは、それらの繊維材料を構成する有機高分子材料を芯材とし、その周上に熱可塑性の有機高分子材料が被覆された構成を有する繊維などが挙げられる。また、芯線3を熱収縮性及び熱溶融性を有するものとすれば、導体素線5aが断線してしまった際の異常加熱により芯線が溶融切断されるとともに収縮することで、巻装された導体素線5aもこの芯線3の動作に追従し、断線した導体素線5aの端部同士を分離することになる。そのため、断線した導体素線のそれぞれの端部が接したり離れたりすることや点接触のようなわずかな接触面積で接することがなくなり、異常発熱を防止することができる。また、導体素線5aが絶縁被膜5bにより絶縁されている構成であれば、芯線3は絶縁材料にこだわる必要はない。例えば、ステンレス鋼線やチタン合金線等を使用することも可能である。しかし、導体素線5aが断線したときのことを考慮すると、芯線3は絶縁材料であった方が良い。
【0024】
導体素線5aとしては、従来公知のものを使用することができ、例えば、銅線、銅合金線、ニッケル線、鉄線、アルミニウム線、ニッケル-クロム合金線、銅-ニッケル合金、鉄-クロム合金、銅固溶体と銅銀共晶がファイバー状になった銀入り銅合金線などが使用できる。また、その断面形状についても種々のものが使用でき、通常使用される断面円形のものに限られず、いわゆる平角線と称されるものを使用しても良い。但し、芯線3に導体素線5aを巻装する場合は、これらの中でも、発熱線1を巻付けたときのスプリングバックする量が小さいものが好ましい。例えば、銅固溶体と銅銀共晶がファイバー状になった銀入り銅合金線などは、抗張力性に優れ引張強度や屈曲強度には優れるものの、発熱線を巻付けたときスプリングバックし易い。そのため、芯線3に巻装する際に、導体素線5aの浮きや、過度の巻付けテンションによる導体素線5aの破断が生じ易く、また加工後には撚り癖が生じ易いため好ましくない。特に、導体素線5aに絶縁被膜5bが被覆される形態とした場合は、この絶縁被膜5bによる復元力も加わることになる。そのため、導体素線5aの復元率が小さいものを選定し、絶縁被膜5bによる復元力をカバーすることが重要となる。
【0025】
導体素線5aに被覆される絶縁被膜5bとしては、従来公知の樹脂材料等を使用することができ、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエステルイミド樹脂、ナイロン樹脂、ポリエステルナイロン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂などが挙げられる。これらを複数層形成しても良い。これらの中でも、熱融着性を有する材料を使用すれば、導体素線5a同士を融着することができることから、接続端子との接続等の端末加工時に発熱線1がバラけることがないため、加工性を向上させることができ好ましい。また、端末加工としてハンダ付けする場合には、ハンダ付けの際の熱により絶縁被膜5bが除去されると非常に加工性が向上するため、絶縁被膜5bの材料としては、熱分解性が良いものであることが好ましい。
【0026】
上記導体素線5aを引き揃え又は撚り合せて芯材3上に巻装する際には、撚り合せるよりも、引き揃えた方が好ましい。これは、発熱芯4の径が細くなるとともに、表面も平滑になるためである。また、引き揃え又は撚り合わせの他に、芯材3上に導体素線5aを編組することも考えられる。
【0027】
絶縁体層7を形成する場合は、押出成形等によって行っても良いし、予めチューブ状に成形した絶縁体層7を被せても良く、形成の方法には特に限定はない。絶縁体層7を構成する材料としても、コード状ヒータの使用形態や使用環境などによって適宜設計すれば良く、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、塩化ビニル樹脂、フッ素系樹脂、合成ゴム、フッ素ゴム、エチレン系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー等、種々のものが挙げられる。また、この絶縁体層7の外周に、更に保護被覆を形成しても良い。
【0028】
発熱線1の外周に熱融着部9を形成する場合、熱融着部は、発熱線の外周の全周に形成する以外にも、例えば、コード状ヒータの長さ方向に沿って直線状やスパイラル線状に形成する、ドット模様に形成する、図12に示すように断続的に形成するなどの態様が考えられる。この際、熱融着部がコード状ヒータの長さ方向に連続していなければ、例え、熱融着部の一部に着火しても、燃焼部が広がらないため好ましい。また、熱融着部の体積が充分に小さければ、熱融着部が燃焼性の材料であっても、すぐに燃焼物がなくなり消火することになるし、ドリップ(燃焼滴下物)も発生しなくなる。従って、熱融着部の体積は、基材との接着性を保持できる最低限とすることが好ましい。但し、これらのような態様の場合は、絶縁体層7或いは絶縁被膜5bが難燃性の材料から構成されていることが好ましい。
【0029】
熱融着部9を構成する材料としては、難燃性を有する高分子組成物が好ましく使用される。ここでの難燃性を有する高分子組成物とは、JIS-K7201(1999年)燃焼性試験における酸素指数が21以上のものを示す。酸素指数が26以上のものは特に好ましい。具体的な材料としては、例えば、オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、変性ノリル樹脂(ポリフェニレンオキサイド樹脂)、脂肪族ポリアミド樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマーなどの熱可塑性高分子材料や、これら熱可塑性高分子材料に、適宜難燃剤が配合されたものなどが挙げられる。また、オレフィン系樹脂としては、例えば、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン-α-オレフィン共重合体、エチレン-不飽和エステル共重合体などが挙げられる。エチレン-不飽和エステル共重合体としては、例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸メチル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エチル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸ブチル共重合体などが挙げられ、これらの単独または2種以上の混合物であってもよい。ここで「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸とメタクリル酸の両方を表すものである。ポリエステル系熱可塑性エラストマーとしては、ポリエステル-ポリエステル型、ポリエステル-ポリエーテル型のものがあるが、ポリエステル-ポリエーテル型の方が高い接着性を有するため好ましい。脂肪族ポリアミド樹脂は、ナイロンと称されるもので、ωアミノ酸の重縮合反応で合成されるn-ナイロンと、ジアミンとジカルボン酸の共縮重合反応で合成されるn,m-ナイロンとがある。n-ナイロンとしては、ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12等が挙げられ、n,m-ナイロンとしては、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン6I、ナイロン6T、ナイロン9T、ナイロンM5T等が挙げられる。ポリアミド系熱可塑性エラストマーは、ポリアミドをハードセグメント、ポリエーテルをソフトセグメントとしたブロック共重合体が知られている。ハードセグメントとして使用されるポリアミドとしては、例えば、上記した脂肪族ポリアミドの他、パラ系アラミドやメタ系アラミドのような芳香族ポリアミドなど、種々のものが考えられる。ソフトセグメントとして使用されるポリエーテルとしては、ポリエチレングリコール、ポリ(1,2-及び1,3-)プロピレンエーテルグリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリヘキサメチレンエーテルグリコール等のポリアルキレンエーテルグリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとのブロック又はランダム共重合体、エチレンオキシドとテトラヒドロフランとのブロック又はランダム共重合体等、ビスフェノールA、ヒドロキノン等の2価フェノールを含有したものなど、種々のものが考えられる。これらの中でも、高温時の接着性に特に優れ、基材としてポリエステル繊維の不織布を使用した際に融点や接着性の面で相性の良いポリアミド系熱可塑性エラストマーが好ましく、脂肪族ポリアミドとポリアルキレンエーテルグリコールのブロック共重合体のものが更に好ましく、ナイロン11又はナイロン12とポリテトラメチレンエーテルグリコールのブロック共重合体のものが特に好ましい。これらの内から任意に選択すれば良いが、上記した絶縁被膜5b或いは絶縁体被覆7を構成する材料の分解開始温度以下又は融点以下の温度で溶融する材料である方が良い。また、基材との接着性に優れる材料として、ポリエステル系熱可塑性エラストマーが挙げられる。更には、基材との接着を容易なものとし、且つ、接着後の接着強度を確保するために、熱融着部9を構成する材料のメルトフローレートが5.0cm/10分以上であることが好ましい。このメルトフローレートは、JIS-K7210:1999年に記載されたA法により、温度200℃、荷重2.16kgで測定される。難燃剤としては、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の金属水和物、酸化アンチモン、メラミン化合物、リン系化合物、塩素系難燃剤、臭素系難燃剤などが挙げられる。これらの難燃剤には公知の方法で適宜表面処理を施しても良い。特に、熱融着部9を構成する高分子組成物の溶融時粘度を下げるような表面処理であることが好ましい。また、接着層9を形成する方法には特に限定はなく、例えば公知の押出成形により形成しても良いし、塗布により形成しても良い。尚、本発明において、コード状ヒータと基材との接着強度は非常に重要なものである。この接着強度が充分でないと、使用していくうちに基材とコード状ヒータとが剥離してしまい、それにより、コード状ヒータには予期せぬ屈曲が加わることになるため、導体素線が断線する可能性が生じる。
【0030】
また、図3に示すようなコード状ヒータを使用する場合、長さ方向の一部分において、導体素線5aの外周に金属箔などの電気良導体を巻き付けておくこともできる。また、図3に示すようなコード状ヒータを使用する場合、長さ方向の一部分において、芯材3の外周(導体素線5aの内面)に金属箔などの電気良導体を巻き付けておくこともできる。これらのようにすることで、電気良導体が巻き付けられた部分において、電気は電気良導体に導通し、導体素線5aにはほぼ導通しないため、この部分は発熱しなくなる。従って、発熱が不要な部分において、上記のように電気良導体を巻き付けることが考えられる。また、コード状ヒータの端部において、上記のように電気良導体が巻き付けられていれば、その部分はリード線部となる。従って、発熱部とリード線部が連続して形成されることになり、特別な接続加工、防水加工がなくても、防水がはかられることになる。そのため、このような構成は、多湿な環境、水がかかる環境、解氷を行う環境など、防水性が要求される用途に好適に使用される。
【0031】
また、コード状ヒータ10は、1本だけでなく、2本又はそれ以上を配設しても良い。その場合、一方のコード状ヒータとその他のコード状ヒータは、それぞれ基材の同じ面に配設しても良いし、それぞれ基材の異なる面に配設しても良い。また、コード状ヒータと併せて、コード状センサを配設することも考えられる。コード状センサとしては、上記のようなコード状ヒータにおいて、発熱素線を検知素線に置き換えたものが考えられる。このコード状センサについては、例えば、検知素線の温度による抵抗値変化を測定する温度センサ、所定温度で溶融する絶縁材料が溶融することによって検知素線に導通することを検知する温度センサ、検知素線の静電容量の変化を測定する把持センサや着座センサ、検知素線の張力や変位を検知又は測定する圧力センサや荷重センサなどが考えられる。このコード状センサについても、コード状ヒータと、それぞれ基材の同じ面に配設しても良いし、それぞれ基材の異なる面に配設しても良い。
【0032】
基材11としては、略平面状に配置された繊維糸11aと不織布11bを組合せてなるものが使用される。繊維糸11aとしては、マルチフィラメント、モノフィラメント、スパンヤーン等、種々の形態のものが使用できる。これらの中でもマルチフィラメントが柔軟性と強度に優れるため好ましい。繊維糸の見かけ径は、ヒータユニット31の使用環境等に応じて適宜設定すれば良いが、柔軟性と機械的強度と通気性のバランスの観点から、0.25~1mmであることが好ましい。なお、繊維糸の見かけ径は、繊維糸を構成する繊維間の空隙も含めた実測により得られる値であり、以下の式にて近似的に算出できる。
D=0.0357×{T/(ρ×φ)}0.5
D:繊維糸の見かけ径(mm)
T:繊維糸の太さ(tex)
ρ:繊維糸を構成する繊維の密度(g/cm
φ:繊維糸の充填率(繊維糸の見かけの密度と繊維の密度の比)
【0033】
繊維糸11aを構成する材料としては、例えば、ガラス繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、アルミナ-シリカ繊維、カーボン繊維等の無機繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリエチレンナフタレート繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維等のポリエステル繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリ塩化ビニリデン繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリアクリロニトリル繊維、ポリスチレン繊維、ポリウレタン繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維、アラミド繊維、ナイロン繊維、ポリエーテルサルフォン繊維、ポリエーテルケトン繊維、4フッ化エチレン繊維等の合成繊維、綿、麻、亜麻、絹、羊毛等の天然繊維など、種々のものが使用できる。また、高融点材料の芯の外周に低融点材料の鞘を構成した芯-鞘構造の繊維を使用しても良い。これらは使用条件等を考慮して適宜選択すれば良い。勿論、単独種の繊維からなる繊維糸11aとしても良いし、複数種の繊維を組合せてなる繊維糸11aとしても良い。
【0034】
繊維糸11aが略平面状に配置された形態として、例えば、繊維糸11aを蛇行形状に配置したもの、複数の繊維糸11aを所定間隔で離して引き揃えたもの、複数の繊維糸11aを所定間隔で離して引き揃えたものを引き揃え方向が異なるように複数層重ねたもの、繊維糸11aを織ったもの(例えば、平織、綾織、朱子織等)、繊維糸11aを編んだもの(平編み、ゴム編み、パール編み、両面編み、鹿の子編み、ジャカード編み、ラッシェル編み、トリコット編み等)、などが考えられる。特に、繊維糸11aの見かけ径よりも大きい開口部11cを有するように織られているか、または、繊維糸11aの見かけ径よりも大きい開口部11cを有するように編まれていれば、開口部11cにより充分な通気性が得られる。更には、織り又は編みによる構造によって、外力が加わったとしても繊維糸11aのズレを防ぐことができる。開口部11cの大きさとしては、例えば、繊維糸11aの見かけ径の10~30倍程度であることが好ましい。なお、開口部11cの大きさは、開口部11cにおける最大径となる部分で求められ、例えば、開口部11cが方形であれば対角線の長さが開口部11cの大きさとなる。また、別の観点からみると、繊維糸11aの遮蔽率は8.8~23.2%であることが好ましい。遮蔽率は、単位面積における繊維糸11aが占有している面積の割合のことであり、繊維糸11aの見かけ径が一定の場合、開口部11cの大きさが大きくなるほど遮蔽率は小さくなり、開口部11cの大きさが一定の場合、繊維糸11aの見かけ径が大きくなるほど遮蔽率は大きくなる。
【0035】
上記実施の形態では、第1繊維糸群11xと第2繊維糸群11yとの角度が90度であったが、もちろん異なる角度であっても良い。但し、この角度が小さすぎると、所定の方向に対する機械的強度が不十分になり得るので、45度以上の角度とすることが好ましい。また、第1繊維糸群11xと第2繊維糸群11yだけでなく、更に角度の異なる第3繊維糸群、第4繊維糸群等を使用してもよい。例えば、図13に示すように、第1繊維糸群11x、第2繊維糸群11y及び第3繊維糸群11zがそれぞれ60度ずつ異なる角度になって配置されている基材11も考えられる。この図13のような態様の場合、コード状ヒータ10の直線部10aが、第1繊維糸群11x、第2繊維糸群11y及び第3繊維糸群11zの全て異なる角度となるように配置されていても良いが、第1繊維糸群11x、第2繊維糸群11y及び第3繊維糸群11zの内の2つと異なる角度になるよう配置されていれば、十分に本願発明の効果を得ることができる。
【0036】
不織布11bとしては、湿式法、サーマルボンド法、ケミカルボンド法、ニードルパンチ法、スパンレース法等の各種手法によって形成されたものが考えられる。不織布11bを構成する繊維としては、例えば、ガラス繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、アルミナ-シリカ繊維、カーボン繊維等の無機繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリエチレンナフタレート繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維等のポリエステル繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリ塩化ビニリデン繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリアクリロニトリル繊維、ポリスチレン繊維、ポリウレタン繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維、アラミド繊維、ナイロン繊維、ポリエーテルサルフォン繊維、ポリエーテルケトン繊維、4フッ化エチレン繊維等の合成繊維、綿、麻、亜麻、絹、羊毛等の天然繊維など、種々のものが使用できる。また、高融点材料の芯の外周に低融点材料の鞘を構成した芯-鞘構造の熱融着性繊維を使用しても良い。このような熱融着性繊維を使用すれば、コード状ヒータ10の最外層に熱融着部9が形成されている場合、熱融着性繊維の芯部を取り囲んだ状態で、熱融着性繊維の鞘部と上記熱融着部9とが互いに融着し一体化することとなるため、コード状ヒータ10と基材11との接着は非常に強固なものとなる。これらの繊維は使用条件等を考慮して適宜選択すれば良い。勿論、単独種の繊維からなる不織布11bとしても良いし、複数種の繊維を組合せてなるハイブリッドの不織布11bとしても良い。また、不織布11bを構成する繊維としては、繊維長を有さないフィラメント(長繊維)でもよいし、所定の繊維長を有するステープル(短繊維)を使用しても構わない。フィラメントの方が、不織布11bとしての強度が高く、また、コード状ヒータ10の固定も確実になるため好ましい。また、基材11としては、FMVSS No.302自動車内層材料の燃焼試験に合格する難燃性を有するものが好ましい。ここで、FMVSSとは、Federal Motor Vehicle Safety Standard、即ち、米国連邦自動車安全基準のことであり、そのNo.302として、自動車内装材料の燃焼試験が規定されている。そのために、繊維糸11aや不織布11bを構成する繊維として、難燃性試験(例えば、JIS-L1091:1999年)に合格するような難燃性繊維を使用することが好ましい。このような難燃性繊維を使用することで、基材は優れた難燃性を付与されることとなる。不織布11bの厚さ(乾燥時に測定した値)は、例えば、0.6mm~1.4mm程度とすることが望ましい。このような厚さの不織布11bを使用すれば、加熱・加圧によりコード状ヒータ10と基材11とを接着・固定する場合、不織布11bがコード状ヒータの外周の30%以上、好ましくは50%以上の部分と良好に接着することになるからであり、それによって、強固な接着状態を得ることができるからである。また、不織布11bの目付け(単位面積辺りの重量)については、基材11全体として80~120g/m程度とすることが望ましい。このような目付けの不織布11bであれば、通気性に優れるとともに充分な機械的強度を得ることできる。
【0037】
なお、不織布11bに熱融着性繊維を使用する場合、熱融着性繊維の混合割合は、5%以上が好ましく、また、20%以下が好ましい。熱融着性繊維の混合割合が5%未満だと、十分な接着性を得られにくい。又、熱融着性繊維の混合割合が20%を超えると、不織布が固くなり、着座者が違和感を訴えることになり得るのみでなく、逆にコード状ヒータとの接着性が低下してしまうことがある。難燃性繊維の混合割合は、70%以上であり、好ましくは70%以上95%以下である。難燃性繊維の混合割合が70%未満だと、十分な難燃性が得られないことがある。又、難燃性繊維の混合割合が95%を超えると、相対的に熱融着性繊維の混合割合が不足してしまい、十分な接着性が得られにくい。尚、熱融着性繊維の混合割合と難燃性繊維の混合割合を合算して100%になる必要はなく、他の繊維を適宜混合させても良い。
【0038】
また、不織布11bを構成する繊維について、着色しておくことが考えられる。例えば、シート表皮43の材料として合成皮革や天然皮革を使用した車両用シート41の場合、これら材料通気性がないことから、通気性を持たせるためシート表皮43に複数の貫通孔を形成することになる。このような車両用シート41内にヒータユニット31を配置すると、この貫通孔からヒータユニット31が目視されることになる。そのため、なるべく目立たないように、不織布11bを構成する繊維を黒色又はシート表皮と同系色に着色しておくことが好ましい。勿論、繊維糸11aやコード状ヒータ10を黒色又はシート表皮と同系色に着色しておくことも考えられる。
【0039】
繊維糸11aと不織布11bを組合せた形態については、例えば、不織布11bの片面に平面状に配置した繊維糸11aが貼り付けられたもの、平面状に配置した繊維糸11aが一対の不織布11bによって挟持されたものなどが考えられる。この際、繊維糸11aと不織布11bとは、例えば接着剤によって貼り付けられていることが考えられる。また、一対の不織布11bを使用する場合は、不織布11b同士が、例えば接着剤によって貼り付けられていることが考えられる。接着剤としては種々のものが公知であるが、繊維糸11aや不織布11bとの相性を考慮して適宜選定すれば良いが、昨今の環境事情より、VOCを考慮したものを選定することが好ましい。また、繊維糸11a及び/又は不織布11bの繊維の材料として熱可塑性樹脂を使用したものであれば、繊維糸11aと不織布11bを重ねた状態で、適切な条件で加熱加圧することで、繊維糸11aと不織布11b、または不織布11b同士を貼り付けることができる。具体的には、例えば、上記のようなプレス熱板を使用する方法や、加熱ロールの間を通過させる方法等が挙げられる。
【0040】
また、一対の不織布11bを使用する場合、これらそれぞれを異なる材質のものとしても良い。例えば、以下のようなものが考えられる。一方の不織布11bについて、気孔率の高い、即ち単位体積辺りの繊維量が少ないものを選択することが考えられる。ヒータユニット表面にコード状ヒータ10が存在するようになる側の不織布11bを気孔率の高いものとすることで、コード状ヒータ10がより確実に不織布11b中に入り込み、平坦なヒータユニット31を得ることができる。また、一方の不織布11bを気孔率の高いものとし、その不織布11bにその他の樹脂を溶融充填して複合材料とすることも考えられる。また、難燃性に優れる不織布、引張強度の高い不織布、耐薬品性に優れる不織布、耐熱性に優れる不織布、耐電圧特性に優れる不織布、電磁波遮蔽特性を備える不織布、低反発性を有する不織布、低温脆性に優れる不織布、熱伝導率が高い(又は低い)不織布等、種々の不織布を組合せることによって、付加的な機能が付与されたヒータユニット31にすることができる。
【0041】
また、ヒータユニット31を座席に固定するための接着層については、基材11の伸縮性の点や、良質な風合いの保持という点からすると、離型シート等の上に接着剤のみからなる接着層を形成し、該接着層を上記離型シートから上記基材11表面に転写することによって接着層を形成することが好ましい。また、この接着層は、難燃性を有するものが好ましく、それ単独でFMVSS No.302自動車内装材料の燃焼試験に合格するような難燃性を有するものが好ましい。例えば、高分子アクリル系粘着剤などが挙げられる。
【0042】
また、コード状ヒータ10を基材11に配設する際、加熱加圧による融着によって接着・固定する態様でなく、他の態様によりコード状ヒータ10を基材11に固定しても良い。例えば、縫製によりコード状ヒータ10を基材11に固定しても良いし、一対の接着剤付き基材11で挟持固定することでコード状ヒータ10を基材11に固定しても良いし、他の態様を用いても良い。コード状ヒータ10を基材11に固定する際は、コード状ヒータ10が、基材11の繊維糸11aと直接接触して固定されている態様が好ましい。縫製によりコード状ヒータ10を基材11に固定する場合、例えば、繊維糸11aが表面に配置された基材11を使用したり、基材11の不織布11bの密度(目付け)が十分に小さいものを使用したりして、コード状ヒータ10と繊維糸11aが十分に近接するようにし、これらを縫製で締め付けて接触させることが考えられる。
【0043】
コード状ヒータ10における蛇行形状の配置についても、被加熱対象物や設置場所等に応じ、適宜直線部10aと曲線部10bを組合せて、所定の形状に設計すればよい。直線部10aは、第1繊維糸群11x及び第2繊維糸群11yと異なる角度になるよう配置されていることが好ましいが、全ての直線部10aの部分でこれを満たす必要はない。直線部10aの一部分において、第1繊維糸群11x又は第2繊維糸群11yと平行になっていても良い。配置されたコード状ヒータ10の直線部10aの内、50%以上の領域で、第1繊維糸群11x及び第2繊維糸群11yと異なる角度になるよう配置されていれば、本発明の効果を十分に得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
以上詳述したように本発明によれば、通気性及び機械的強度に優れるヒータユニットを得ることができる。このヒータユニットは、例えば、電気毛布、電気カーペット、カーシートヒータ、ステアリングヒータ、暖房便座、防曇鏡用ヒータ、加熱調理器具、床暖房用ヒータ等、通気性が要求される加熱手段として好適に使用可能である。
【符号の説明】
【0045】
10 コード状ヒータ
10a 直線部
10b 曲線部
11 基材
11a 繊維糸
11b 不織布
11c 開口部
11x 第1繊維糸群
11y 第2繊維糸群
31 ヒータユニット
41 車両用シート
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