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特開2022-108246コンクリート混和材、コンクリート混和材の製造方法およびコンクリート製品
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  • 特開-コンクリート混和材、コンクリート混和材の製造方法およびコンクリート製品 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022108246
(43)【公開日】2022-07-25
(54)【発明の名称】コンクリート混和材、コンクリート混和材の製造方法およびコンクリート製品
(51)【国際特許分類】
   C04B 18/06 20060101AFI20220715BHJP
   C04B 14/06 20060101ALI20220715BHJP
   C04B 28/02 20060101ALI20220715BHJP
【FI】
C04B18/06
C04B14/06
C04B28/02
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021099651
(22)【出願日】2021-06-15
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-09-29
(31)【優先権主張番号】P 2021002582
(32)【優先日】2021-01-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】516213482
【氏名又は名称】株式会社リュウクス
(74)【代理人】
【識別番号】100135781
【弁理士】
【氏名又は名称】西原 広徳
(74)【代理人】
【識別番号】100217227
【弁理士】
【氏名又は名称】野呂 亮仁
(72)【発明者】
【氏名】謝花 一成
(72)【発明者】
【氏名】南出 拓人
(72)【発明者】
【氏名】大嶺 薫
(72)【発明者】
【氏名】上里 尚也
【テーマコード(参考)】
4G112
【Fターム(参考)】
4G112PA04
4G112PA26
(57)【要約】
【課題】環境負荷が小さく、混合したコンクリートにおいて優れた初期強度を発現するコンクリート混和材を提供する。
【解決手段】少なくとも、流動媒体使用ボイラを用いて燃焼したバイオマスを含むバイオマス燃焼灰を含有し、前記バイオマス燃焼灰は、二酸化ケイ素を含有するコンクリート混和材とした。また、前記二酸化ケイ素は、少なくとも可溶性シリカを含有する構成とした。さらに、バイオマス燃焼灰は、バイオマスを流動媒体使用ボイラで燃焼させる火力発電設備から産出されたものであり、前記流動媒体使用ボイラは、ケイ砂を流動媒体とする流動層を備えて1100℃よりも低温で燃焼させるものであり、前記二酸化ケイ素は、前記流動媒体使用ボイラ内で前記バイオマスとともに燃焼される前記流動媒体としての前記ケイ砂由来であるものとした。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともケイ砂を流動媒体とする流動層を備えたボイラにより600~1100℃でパームヤシ殻、ソルガム、および木質チップの1以上で構成されるバイオマス燃料と前記流動媒体を共に燃焼させ、
前記燃焼により得られる前記ケイ砂由来の二酸化ケイ素を含有するバイオマス燃焼灰を得、
前記バイオマス燃焼灰を主成分とし前記二酸化ケイ素を含有し、体積平均粒径が250μm以下のコンクリート混和材を得る
コンクリート混和材の製造方法。
【請求項2】
前記コンクリート混和材は、前記二酸化ケイ素として焼結していない未焼結二酸化ケイ素を含有し、コンクリート材料に混和されてポゾラン反応を生じさせる
請求項1記載のコンクリート混和材の製造方法。
【請求項3】
前記コンクリート混和材は、コンクリートにおけるセメントの一部と置換可能である
請求項2記載のコンクリート混和材の製造方法。
【請求項4】
パームヤシ殻、ソルガム、および木質チップの1以上で構成されるバイオマス燃料と、少なくともケイ砂を含有する流動媒体を燃焼させたバイオマス燃焼灰を主成分とし、
二酸化ケイ素を含有し体積平均粒径が250μm以下である
コンクリート混和材。
【請求項5】
前記二酸化ケイ素として焼結していない未焼結二酸化ケイ素を含有し、コンクリート材料に混和されてポゾラン反応を生じさせる
請求項4記載のコンクリート混和材。
【請求項6】
請求項1、2、または3記載の製造方法で製造され、
前記バイオマス燃焼灰を主成分とし前記二酸化ケイ素を30重量%以上含有する
コンクリート混和材。
【請求項7】
請求項4、5、または6に記載のコンクリート混和材を含有した
コンクリート製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コンクリートに混合して使用するコンクリート混和材、コンクリート混和材の製造方法およびコンクリート製品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建築現場等において、コンクリートが広く使用されている。コンクリートは、最初は液状だが、徐々に硬化して固形となる物質であり、建築構造物、土木構造物、路盤等に使用されることから強度の性能が重要視される。コンクリート強度の指標には、養生開始から短時間で発現する初期強度と、長時間経過後に発現する長期強度があることが知られている。
【0003】
また、コンクリートの製造過程において、コンクリート混和材が加えられることがある。このような、コンクリート混和材として、石炭焚き火力発電所で発生した未燃カーボン含有石炭灰を使用したコンクリート混和材が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
しかし、特許文献1のような石炭焚き火力発電所で発生した石炭灰を使用したコンクリート混和材は、発電の燃料が石炭であることから環境負荷が大きいという問題があり、生成過程における環境負荷の小さいコンクリート混和材が望まれてきた。
【0005】
一方で、環境負荷の小さい発電方法として、植物由来の燃料を使用するバイオマス発電が知られている。しかし、火力発電所から産出される燃焼灰のコンクリート混和材としての利用は、石炭炊き火力発電所から産出される燃焼灰が日本工業規格(現、日本産業規格)で前提になっていた。このため、バイオマス発電によって発生する燃焼灰は、コンクリート混和材として使用されることがなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2018-172259号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明は、上述の問題に鑑みて、環境負荷が小さく、混合したコンクリートにおいて優れた初期強度を発現するコンクリート混和材、コンクリート混和材の製造方法およびコンクリート製品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、少なくとも、流動媒体使用ボイラを用いて燃焼したバイオマスを含むバイオマス燃焼灰を含有し、前記バイオマス燃焼灰は、二酸化ケイ素を含有するコンクリート混和材であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
この発明により、環境負荷が小さく、混合したコンクリートにおいて優れた初期強度を発現するコンクリート混和材、コンクリート混和材の製造方法およびコンクリート製品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】循環流動媒体使用ボイラの概略図。
図2】バイオマス燃料からコンクリート混和材を製造するフロー図。
図3】パームヤシ殻燃焼灰の測定結果を示す測定結果図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
出願人は、火力発電所から産出される燃焼灰の有効利用をするべく、鋭意研究している。例えば、石炭灰を加熱改質して高品質のフライアッシュにする加熱改質装置の開発も行い、特許権も取得している。
ここで、従来、火力発電においては、エネルギー効率の点から一般的には石炭や石油等の化石燃料が使用されていた。しかし、化石燃料は燃焼した際に発生する二酸化炭素量が多く、地球温暖化が進行するとして、環境負荷が低い別の燃料が検討されてきた。その中でも、植物を燃料として使用するバイオマス発電は、植物の成長過程で吸収する二酸化炭素が、燃料使用時に燃焼させた際に発生する二酸化炭素よりも多い(カーボンニュートラル)という考えの元、環境負荷が低い火力発電として普及が進んでいる。
【0012】
しかし、バイオマス発電は燃料に植物を使用することから、一定量の燃焼灰が発生する。発生する燃焼灰は産業廃棄物として扱われ、一般に埋め立て処理がされているが、広大な埋め立て地の確保が必要という問題があった。
このようなバイオマス発電で発生する燃焼灰の有効利用について、出願人は鋭意研究した。そして、バイオマス燃料を用いた火力発電にて産出されるバイオマス燃焼灰を用いたコンクリート混和材を発明した。
以下、この発明の一実施形態を図面と共に説明する。
【0013】
本発明のコンクリート混和材は、原料としてバイオマス燃焼灰を使用する。バイオマス燃焼灰は、少なくとも、バイオマス燃料を高温で燃焼して灰化させたもの、すなわち燃焼したバイオマスを含有し、主に植物(バイオマス)を燃料とする火力発電(バイオマス火力発電)の副産物として生成される。
【0014】
バイオマスを燃料とした火力発電は、様々な種類のボイラを採用できるが、本発明で使用するバイオマス燃焼灰を産出する先火力発電施設は、流動媒体使用ボイラとして流動媒体としてケイ砂を使用する流動層(または流動床)を備えるボイラを使用していることが好ましく、さらにボイラが流動媒体としてケイ砂を強制的に循環させる機構を備えていることがより好ましく、その中でも循環流動層(床)ボイラ(循環式の流動媒体使用ボイラ)を使用していることが好適である。
【0015】
図1は、バイオマス火力発電に用いられる流動媒体使用ボイラとしての循環流動層ボイラ10の構成を示す概略構成図である。なお、流動媒体使用ボイラには、流動層ボイラ、あるいは流動床ボイラを用いることができる。
循環流動層ボイラ10は、燃料を供給する燃料供給口11と、ベッド材12と、燃料およびベッド材12の燃焼を行う火炉13と、火炉13内に空気を流入する空気流入路14と、火炉13の上部側面に設けられた火炉出口15と、火炉13内での燃焼により発生した燃焼ガス中に含まれる灰とその灰と共に流動してきた一部のベッド材12とを捕集および分離するサイクロン16と、燃焼ガスを微粉末とともに排気する排気路17と、サイクロン16の底部および火炉13の下部側面に連通した灰戻し管18とを備える。
【0016】
本実施例において燃料供給口11から投入される燃料は、油分を含有するバイオマスである。このようなバイオマスとしては、例えばパームヤシ殻(PKS)、ソルガム、または木質チップ、もしくはこれらの複数を使用できる。特に、パームヤシ殻は、パームヤシと呼ばれるヤシの種子殻であって、パーム油を生産する過程で発生する残渣であることから、抽出されずに残った微量のパーム油(油分)が含まれる。そのため燃焼効率が高く、バイオマス発電の農業系バイオマス燃料として好適である。また、複数のバイオマスを混合してバイオマス燃料としてもよい。
【0017】
ベッド材12は、火炉13の下部から吹き込まれる空気によって、バイオマス燃料とともに火炉13内で上下に流動し、流動するバイオマス燃料とともに加熱される。また、ベッド材12は、加熱された状態で火炉13内を流動することで、バイオマス燃料が均一に燃焼されるよう、火炉13内の温度を一定に保持する。すなわち、ベッド材12は、空気中の流動性が高く、熱保持性能が高い種々の粒子物質を使用できる。このようなベッド材12としては、シリカを含有する熱触媒を用いることができ、ケイ砂を使用することが好ましい。ベッド材12としてケイ砂を使用することで、後述する二酸化ケイ素の含有量を調整する工程を省略することができる。また、ケイ砂に加えて排煙脱硫のための石灰石を使用してもよい。
【0018】
火炉13は、備え付けの加熱装置によって内部が高温に加熱される。このときの火炉13内の温度は、600~1100℃とすることができ、700~1000℃とすることが好ましい。これにより、十分な熱量を確保でき、灰の発生量も確保でき、かつ、灰の焼結が起こりにくい環境でバイオマス燃焼灰を生成できる。特に、バイオマス燃焼灰を焼結させない(もしくは焼結を少なくする)ことにより、化学反応を生じやすい状態を維持でき、後述するポゾラン反応を生じやすくすることができる。
【0019】
空気流入路14は、火炉13の下部に備えられている。空気流入路14を通して火炉13の内部に空気を吹き込む。吹き込まれた空気によってベッド材12およびバイオマス燃料が火炉13内を上下に流動し、火炉13内の温度をできるだけ均等に保持する。
【0020】
火炉出口15は、火炉13の上部側面に備えられている。火炉出口15が備えられる高さとしては、バイオマス燃料およびベッド材12が流動している高さよりも高い位置とすることが好ましい。パームヤシ殻およびベッド材12は、火炉13内で燃焼され、燃料時よりも粒度が小さく重量が軽いバイオマス燃焼灰となり、燃焼によって発生した燃焼ガスとともに火炉出口15から連通するサイクロン16に運搬される。
【0021】
サイクロン16は、火炉13から火炉出口15を通して運搬されたバイオマス燃焼灰について、比較的粗粒なバイオマス燃焼灰を沈降させ、粗粒なバイオマス燃焼灰と微細なバイオマス燃焼灰とを分離する。粗粒なバイオマス燃焼灰はサイクロン16の底部に連通した灰戻し管18を通して、再び火炉13の底部に供給される。一方、微細なバイオマス燃焼灰は、燃焼ガスとともに排気路17に導入される。
【0022】
排気路17に導入された燃焼ガスおよびバイオマス燃焼灰は、図示省略する対流伝熱部を経てバグフィルターまたは電気集塵機を使用して燃焼ガスとバイオマス燃焼灰とを分離される。分離された燃焼ガスは、含有する硫黄酸化物を脱硫処理によって取り除かれ、排煙として大気中に放出される。脱硫処理の方法としては石灰を用いる方法が一般的に用いられている。ベッド材12に石灰石を含有していた場合は、燃焼段階で脱硫処理が完了しているため、燃焼ガスの脱硫処理は行わなくてもよい。
【0023】
分離されたバイオマス燃焼灰は産業廃棄物として回収され、一般には指定された埋め立て地にて埋め立て処理される。
【0024】
図2は、バイオマス燃料からコンクリート混和材を製造するフローのフローチャートである。
【0025】
火力発電の燃料として、バイオマスが火力発電施設内に備えられた循環流動層ボイラ10に投入され、このバイオマス燃料を、ケイ砂を主とするベッド材12の粒子とともに燃焼する(ステップS1)。
【0026】
循環流動層ボイラ10は、バイオマス燃焼灰を産出する。この産出されたバイオマス燃焼灰を作業員が火力発電の施設から回収する(ステップS2)。このとき、産出される全てのバイオマス燃焼灰を回収することが好ましい。バイオマス燃焼灰の体積平均粒径(MV)は、250μm以下とすることができ、100μm以下とすることが好ましく、40μm以下とすることがより好ましい。また、さらに分級機を使用して35μm以下に調整することが好ましく、1~30μmとすることがより好ましい。また、バイオマス燃焼灰の個数平均粒径(MN)は、20μm以下とすることが好ましく、分級機を使用して15μm以下に調整することがより好ましく、1~10μmとすることがさらに好ましい。さらに、バイオマス燃焼灰の面積平均粒径(MA)は、40μm以下とすることが好ましく、分級機を使用して30μm以下に調整することがより好ましく、1~20μmとすることがさらに好ましい。また、バイオマス燃焼灰のメジアン径(50%累積粒径、D50)は、40μm以下とすることが好ましく、分級機を使用して30μm以下に調整することがより好ましく、1~20μmとすることがさらに好ましい。さらに、バイオマス燃焼灰の各平均粒径について、体積平均粒径(MV)が250μm以下を満たすことに加えて、個数平均粒径(MN)が20μm以下、面積平均粒径(MA)が40μm以下、およびメジアン径(50%累積粒径、D50)が40μm以下の条件の内、1つ以上を満たすことが好ましく、すべて満たすことが最も好ましい。これらの体積平均粒径(MV)、個数平均粒径(MN)、面積平均粒径(MA)、およびメジアン径(50%累積粒径、D50)は、例えば、マイクロトラック社製の「粒子径分布測定装置 MT3300EXII」など、適宜の粒度分布測定装置で測定することができる。ここで言うメジアン径(50%累積粒径、D50)は、体積の頻度が50%になるタイミングの粒径を意味する。なお、各「粒径」の用語は「粒子径」と同一の意味で使用している。
このようにして得られるバイオマス燃焼灰は、ベッド材12として使用されたケイ砂の粒子由来の二酸化ケイ素含有量が30%以上あり、より好ましくは45%以上あるものであり、50%以上のものとすることもできる。また、得られたバイオマス燃焼灰の強熱減量は、10%以下であり、好ましくは5%以下のものとすることもできる。また、得られたバイオマス燃焼灰の比表面積は、2,500~5,000cm2/gである。さらに、得られるバイオマス燃焼灰に含まれる二酸化ケイ素には、燃焼の際に加えられた熱量が不足したことにより焼結が不十分なままバイオマス燃焼灰に含有される未焼結二酸化ケイ素が含まれる。
より具体的には、バイオマス燃料にパームヤシ殻を採用し、ベッド材12にケイ砂を採用した場合には、ケイ砂の粒子由来の二酸化ケイ素含有量が53.4%、強熱減量が4.6、比表面積が3,360cm2/gのバイオマス燃焼灰が得られる。
【0027】
さらに、作業員は、必要に応じて、バイオマス燃焼灰に一般的にコンクリート混和材に使用できる種々の添加材を添加し混合する(ステップS3)。このような添加材としては、例えば、フライアッシュ(石炭燃焼灰)等を使用できる。なお、必要なければこのステップS3の工程を省略してもよい。
【0028】
このようにして、燃焼したバイオマスおよび二酸化ケイ素を含むバイオマス燃焼灰に適宜の素材を混合した、バイオマス燃焼灰を主成分としたバイオマス燃焼灰混合粉が得られ、これをコンクリート混和材とすることができる。
製造したコンクリート混和材は、コンクリートの原料の一部と置換する形態でコンクリートに混合する。コンクリートの原料の内、どの原料と置換するかは適宜選択できるが、セメントまたは細骨材(砕砂等)と置換することが好ましく、粒子の大きさの観点から、細骨材の一部と置換することが好ましい。例えば、水、セメント、細骨材(砕砂等)、および粗骨材(砕石または砂利等)を原料とするコンクリートにおいては、セメントおよび/または細骨材(砕砂等)の一部をコンクリート混和材に置換することが好ましい。また、製造したコンクリート混和材を混合したコンクリートを原料として、生コンクリート、再生骨材といった種々のコンクリート製品とすることができる。
【0029】
以上の構成により、環境負荷が小さく、混合したコンクリートにおいて優れた初期強度を発現するコンクリート混和材を提供することができる。
本発明のコンクリート混和材は、燃焼したバイオマスであるバイオマス燃焼灰を原料としている。バイオマスは火力発電の中でも環境負荷が小さいバイオマス発電の燃料となり、本発明のコンクリート混和材の原料とするバイオマス燃焼灰は、バイオマスを燃料としたバイオマス発電の発電工程で発生する副産物を使用できる。この構成により、廃棄物削減を実現でき、環境にやさしいコンクリート混和材を提供できる。
【0030】
また、コンクリート混和材の原料とするバイオマス燃焼灰には、二酸化ケイ素が30重量%以上、好ましくは45重量%以上含まれている。この構成により、混合後のコンクリートに対して優れた初期強度と長期強度を付与できる。これは、水と混合されたセメントに含まれる水酸化カルシウムと、コンクリート混和材に含まれる焼結していない未焼結二酸化ケイ素が反応(ポゾラン反応)することで、初期強度および長期強度が得られるためである。
【0031】
また、バイオマス燃料灰に含有されている二酸化ケイ素は、可溶性シリカであるため、コンクリートにおけるポゾラン反応を促してコンクリートを徐々に硬化させていくことができる。
【0032】
また、コンクリート混和材の原料とするバイオマス燃焼灰は、粒径が1~10μmとなるよう分級機によって調整しても良い。粒径が小さくなることで比表面積が増大し、コンクリート混和材の反応性が向上し、混合先のコンクリートの硬化速度を向上させることができる。
【0033】
また、本発明のコンクリート混和材は、燃料をバイオマスとして、ベッド材12をケイ砂として使用する流動層を備えたボイラによって燃焼し、生成したバイオマス燃焼灰を原料としている。この構成により、原料のバイオマス燃焼灰は、ケイ砂由来の可溶性シリカを含有し、コンクリート混和材の原料として好適に使用できる。また、成分調整用の二酸化ケイ素の一部またはすべてを削減することができ、製造工程の簡略化および低コスト化を実現することができる。さらに、ベッド材として使用されたケイ砂は、燃焼中の流動による摩耗で粒度が細かくなるため、得られるバイオマス燃焼灰の反応性を高め、コンクリートの添加材としてより適したコンクリート混和材とできる。
【0034】
また、本発明の循環流動層ボイラ10は、燃料のバイオマスを600~1100℃で燃焼する。この構成により、バイオマス燃焼灰が焼結せず、より反応性の高いコンクリート混和材とすることができる。すなわち、高温で焼成が行われる石炭焚き火力発電所のような施設から産出される燃焼灰は、焼結によって表面が硬化し、反応性が悪化するが、本発明のような低温で燃焼させたバイオマス燃焼灰は焼結が抑制されるため、バイオマス燃焼灰中の二酸化ケイ素とセメント中の水酸化カルシウムがより早期にポゾラン反応し、コンクリートが高い早期強度を示す。
【0035】
また、バイオマス燃焼灰の体積平均粒径(MV)は、250μm以下であり、100μm以下が好ましく、40μm以下とすることがより好ましい。この構成により、ポゾラン反応の反応性を向上することができる。すなわち、よりコンクリート混和材として好適に使用することができる。
【0036】
また、バイオマス燃焼灰の個数平均粒径(MN)は、20μm以下とすることが好ましく、15μm以下がより好ましく、1~10μmとすることがさらに好ましい。この構成により、ポゾラン反応の反応性を向上することができる。すなわち、よりコンクリート混和材として好適に使用することができる。
【0037】
また、バイオマス燃焼灰の面積平均粒径(MA)は、40μm以下が好ましく、30μm以下がより好ましく、1~20μmとすることがさらに好ましい。この構成により、ポゾラン反応の反応性を向上することができる。すなわち、よりコンクリート混和材として好適に使用することができる。
【0038】
また、バイオマス燃焼灰の累積平均径(メジアン径、D50)は、40μm以下が好ましく、30μm以下がより好ましく、1~20μmとすることがさらに好ましい。この構成により、ポゾラン反応の反応性を向上することができる。すなわち、よりコンクリート混和材として好適に使用することができる。
<実施例>
【0039】
燃料としてバイオマスであるパームヤシ殻、ベッド材としてケイ砂を使用し、火炉内温度を600~1000℃に調整した循環流動層ボイラにおいて、生成したパームヤシ殻燃焼灰(バイオマス燃焼灰)を取得した。
【0040】
取得したパームヤシ殻燃焼灰について、体積平均粒径(MV)、個数平均粒径(MN)、面積平均粒径(MA)、およびメジアン径(50%累積粒径、D50)を測定した。各粒度分布の測定にはマイクロトラック社製、「粒子径分布測定装置 MT3300EXII」を使用した。このときの測定条件として、MT3300(LOW-WET)の光学台を使用し、粒子形状を非球形と仮定して、溶媒を水とし、測定上限を2000μm、測定下限を0.021μm、測定時間を10秒とし、分布表示を体積として、計算モードを「MT3300II」とした。また、3回測定の平均値を測定結果とした。
【0041】
図3は、取得したパームヤシ殻燃焼灰の測定結果を示す測定結果図である。
測定結果図100には、縦軸を頻度(%)、横軸を粒径(μm)として示す累積%の粒子径分布グラフ101と、体積平均粒径(μm)(MV)、個数平均粒径(μm)(MN)、面積平均粒径(μm)(MA)、比表面積(m2/ml)(CS)、および粒子径分布の分布幅の目安を示す標準偏差(μm)(SD)の測定値である要約データ表102と、粒子径分布グラフ101における山が単数か複数かを示すピーク粒径103と、頻度分布グラフのチャンネルデータ104と、10%間隔の各累積%における粒径を示す累積%径表105と、測定条件を示す測定条件表106が含まれる。
【0042】
図3に示すように、取得したパームヤシ殻燃焼灰の各粒径は、体積平均粒径(MV)が25.354μm、個数平均粒径(MN)が4.6633μm、面積平均粒径(MA)が13.436μm、メジアン径(50%累積粒径、D50)が19.121μmであった。
【0043】
取得したパームヤシ殻燃焼灰を、水、セメント、砕砂、および砕石を原料とするコンクリートにおいて、セメントまたは砕砂の一部と置換するように混合した。
具体的には、置換前のコンクリート材料(普通コンクリートの材料)として、水165kg/m3、セメント450kg/m3、砕砂780kg/m3、砕石1050kg/m3、混和材2.250kg/m3のコンクリート材料を用意した。また、置換前のコンクリート材料に用いられている混和材は、バイオマス燃焼灰以外のものである。
そして、実施例1としてセメントの5重量%を、実施例2としてセメントの10重量%を、実施例3として砕砂の5重量%を、それぞれパームヤシ殻燃焼灰で置換したコンクリートを製造した。また、比較例としていずれの原料もパームヤシ殻燃焼灰で置換していないコンクリート(普通コンクリート)を製造した。
【0044】
製造した各実施例および比較例を24時間養生させ、JIS A 1108に規定されたコンクリート圧縮強度試験方法に基づいて圧縮強度を測定した。
【0045】
【表1】
【0046】
表1は、各実施例および比較例における24時間養生後の圧縮強度測定の結果である。表1に示す通り、原料の一部をパームヤシ殻燃焼灰で置換した各実施例は、普通コンクリートと比較して、いずれも圧縮強度に優れる結果となった。具体的には、原料の一部をパームヤシ殻燃焼灰で置換することによって、圧縮強度が3%~15%向上した。
また、91日経過後の長期強度についても、パームヤシ殻燃焼灰を添加しない普通コンクリートと同等かそれ以上の強度が得られた。特に、砕砂をパームヤシ殻燃焼灰で置換した場合に、普通コンクリートよりも長期強度が高まる好適な結果が得られた。
【0047】
なお、この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
例えば、本実施例におけるバイオマス燃焼灰は、発電所の排煙に含まれる微細な燃焼灰をバグフィルターまたは電気集塵機で回収したものとしたが、サイクロンで沈降した粗粒な燃焼灰に対して分級を行い、粗粒な燃焼灰の中でも比較的微細な燃焼灰を回収してもよい。
【0048】
また、本実施例では、コンクリート混和材の各製造工程を作業員が行うものとして説明したが、各工程の一部またはすべてを機械によって行ってもよい。
【0049】
また、水180kg、セメント350kg、砕砂850kg、砕石1050kgのコンクリート材料のセメントの一部をバイオマス燃焼灰に置換してもよい。この場合、例えばセメントの10%を混和材に置換して、セメント315kg、バイオマス燃焼灰(もしくはバイオマス燃焼灰を用いた混和材)35kgとすることができる。このような構成であっても上述した実施例と同様の作用効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
この発明は、コンクリートに混合して使用するコンクリート混和材の製造販売の産業に利用することができる。
【符号の説明】
【0051】
10…循環流動層ボイラ
11…燃料供給口
12…ベッド材
13…火炉
14…空気流入路
15…火炉出口
16…サイクロン
17…排気路
18…灰戻し管
図1
図2
図3