(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022108254
(43)【公開日】2022-07-25
(54)【発明の名称】ドアホールキャップおよびシール部材
(51)【国際特許分類】
B60J 5/00 20060101AFI20220715BHJP
B60R 13/06 20060101ALI20220715BHJP
【FI】
B60J5/00 501E
B60R13/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021156742
(22)【出願日】2021-09-27
(31)【優先権主張番号】P 2021003036
(32)【優先日】2021-01-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000196107
【氏名又は名称】西川ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】沖野 文人
(72)【発明者】
【氏名】亀岡 泰亮
【テーマコード(参考)】
3D201
【Fターム(参考)】
3D201AA01
3D201AA37
3D201AA38
3D201CA18
3D201CA23
(57)【要約】
【課題】ドアホールキャップの止水性を維持しつつ、製造コストを低減できるドアホールキャップ等を提供する。
【解決手段】ドアホールキャップ(1)であって、車内側に向かって凹んだ溝(11)が形成されたキャップ部材(10)と、溝(11)に取り付けられるシール部材(20)と、を備え、溝(11)は、第1周縁部(12)の全周に亘って形成されており、シール部材(20)は、溝(11)に挿入される本体部(21)と、本体部(21)から延伸しドアインナーパネル(D1)に当接する第1シール部(22)と、本体部(21)から溝(11)の内面に向かって延伸し、当該内面に当接する溝当部(23)と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のドアインナーパネルに形成されたドアホールに取り付けられるドアホールキャップであって、
車内側に向かって凹んだ溝が形成された、前記ドアホールを車内側から覆うキャップ部材と、
前記溝に取り付けられるシール部材と、を備え、
前記溝は、前記キャップ部材の周縁部である第1周縁部の全周に亘って形成されており、
前記シール部材は、
前記溝の内部に挿入される本体部と、
前記本体部の車外側端部から車外側に向かって延伸し、前記ドアインナーパネルの車内側の面に当接する第1シール部と、
前記本体部の前記車外側端部よりも車内側から、前記溝の少なくとも片側の内面側に向かって延伸し、当該内面に当接する溝当部と、を備えることを特徴とする、ドアホールキャップ。
【請求項2】
前記シール部材は、前記本体部の車外側端部から前記溝の両側の周縁部である第2周縁部に向かってそれぞれ延伸し、車外側から前記第2周縁部にそれぞれ当接するリップ部を備えることを特徴とする、請求項1に記載のドアホールキャップ。
【請求項3】
前記ドアホールキャップの端部側の前記リップ部の、先端よりも前記本体部側から、前記ドアインナーパネルの車内側の面に向かって延伸し、当該車内側の面に当接する第2シール部を備えることを特徴とする、請求項2に記載のドアホールキャップ。
【請求項4】
前記キャップ部材には、前記溝の一方の端部が他方の端部に対向し、かつ、前記一方の端部と前記他方の端部とが、前記キャップ部材の前記溝が形成されている面方向において並列して形成される並列部が、前記溝の一部として形成されており、
前記並列部の一部は、前記一方の端部と、前記他方の端部とが連結して、前記溝の幅が他の部分よりも広く形成されていることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載のドアホールキャップ。
【請求項5】
前記第1シール部は、前記本体部よりも軟質であることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載のドアホールキャップ。
【請求項6】
自動車のドアインナーパネルに形成されたドアホールに取り付けられるドアホールキャップにおいて、前記ドアホールを車内側から覆うキャップ部材の周縁部である第1周縁部の全周に亘って形成された、車内側に向かって凹んだ溝に取り付けられるシール部材であって、
前記溝の内部に挿入される本体部と、
前記本体部の車外側端部から車外側に向かって延伸し、前記ドアインナーパネルの車内側の面に当接する第1シール部と、
前記本体部の前記車外側端部よりも車内側から、前記溝の少なくとも片側の内面に向かって延伸し、当該内面に当接する溝当部と、を備えることを特徴とする、シール部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はドアホールキャップおよびシール部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車のドアのドアインナーパネルに形成されたドアホールから、雨水等が車内側へ浸入するのを防止するため、ドアホールキャップが使用されている。一般的に、ドアホールキャップの周縁部にはスポンジ材等が貼り付けられ、雨水等が浸入するのを防いでいる。しかしながら、ドアホールキャップにスポンジ材等を貼り付ける作業は位置決めに手間がかかり作業に習熟が必要なため、ドアホールキャップへのシール部材の取り付け作業工数が増加し、製造コストが増加してしまう。そのため、止水性を維持しつつ製造コストを低減できるドアホールキャップが望まれている。
【0003】
例えば、特許文献1には、凹条溝を有する樹脂製パネル本体と、凹条溝内で液状発泡樹脂原料が発泡硬化してパネル本体の表面に膨出してなる発泡シール材とを備えた発泡シール材付き樹脂製パネルが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された発泡シール材付き樹脂製パネルでは、液状発泡樹脂原料を凹条溝内に注入した後に、発泡硬化させる。液状発泡樹脂原料を凹条溝内に注入する作業は、作業者によって注入量バラツキが起こり、発泡シール材付き樹脂製パネルの止水性を低減させる可能性がある。さらに、液状発泡樹脂原料を発泡硬化させる時間が必要なため作業時間が増加し、製造コストが増加してしまう。さらに、一度樹脂製パネル本体に発泡シール材が形成されると、発泡シール材だけを容易に取り除くことができない。そのため、発泡シール材の形成後に発泡シール材部分だけに不具合が発生した場合でも、樹脂製パネル本体ごと交換をする必要が生じ、結果として製造コストが増加してしまうという問題があった。
【0006】
本発明の一態様は、前記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的はドアホールキャップの止水性を維持しつつ、製造コストを低減できるドアホールキャップ等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るドアホールキャップは、自動車のドアインナーパネルに形成されたドアホールに取り付けられるドアホールキャップであって、車内側に向かって凹んだ溝が形成された、前記ドアホールを車内側から覆うキャップ部材と、前記溝に取り付けられるシール部材と、を備え、前記溝は、前記キャップ部材の周縁部である第1周縁部の全周に亘って形成されており、前記シール部材は、前記溝の内部に挿入される本体部と、前記本体部の車外側端部から車外側に向かって延伸し、前記ドアインナーパネルの車内側の面に当接する第1シール部と、前記本体部の前記車外側端部よりも車内側から、前記溝の少なくとも片側の内面に向かって延伸し、当該内面に当接する溝当部と、を備える。
【0008】
前記構成によれば、シール部材をキャップ部材の溝に挿入するという簡便な作業のみで、キャップ部材へのシール部材の取り付けが完了する。そのため、ドアホールキャップにスポンジ材等を貼り付けるときに必要な、位置決めおよび接着等の作業を行う必要がなく、作業習熟度による製造バラツキが発生しにくい。さらに、キャップ部材へシール部材を取り付けた後に、シール部材のみに不具合が発生した場合は、シール部材のみを簡便に交換することができる。したがって、ドアホールキャップの製造コストを低減できる。
【0009】
また、前記構成によれば、ドアホールキャップの第1周縁部に取り付けられた第1シール部が、ドアインナーパネルに当接している。すなわち、ドアホールキャップの止水性を維持しつつ、製造コストを低減できる。
【0010】
本発明の一態様に係るドアホールキャップは、前記シール部材は、前記本体部の車外側端部から前記溝の両側の周縁部である第2周縁部に向かってそれぞれ延伸し、車外側から前記第2周縁部にそれぞれ当接するリップ部を備えていてもよい。
【0011】
前記構成によれば、リップ部が溝の両側の周縁部である第2周縁部に、それぞれ車外側から当接することで、リップ部によって溝を覆う状態となる。これにより、リップ部は、雨水等の溝への浸入を低減できる。したがって、シール部材がリップ部を備えていない場合と比べて、シール部材の止水性を向上できる。
【0012】
また、前記構成によれば、リップ部が溝の両側の第2周縁部に当接していることにより、リップ部が、溝に取り付けられたシール部材を両側から支持する構造となっている。そのため、シール部材がリップ部を備えていない場合と比べて、溝に取り付けられたシール部材の取り付け姿勢が安定する。
【0013】
本発明の一態様に係るドアホールキャップは、前記ドアホールキャップの端部側の前記リップ部の、先端よりも前記本体部側から、前記ドアインナーパネルの車内側の面に向かって延伸し、当該車内側の面に当接する第2シール部を備えていてもよい。
【0014】
前記構成によれば、シール部材が、ドアインナーパネルに当接する第2シール部を備えていることにより、第1シール部および第2シール部の両者によって、雨水等がシール部材を超えて車内に浸入するのを効果的に防止できる。したがって、シール部材が第2シール部を備えていない場合と比べて、ドアホールキャップの止水性を向上できる。
【0015】
また、第2シール部はリップ部から延伸している。よって、第2シール部がドアインナーパネルに当接することで、ドアインナーパネルから車内側に向かってかかる力が、第2シール部を通じてリップ部に作用する。そのため、リップ部が第2周縁部に車外側から強く押し付けられるため、溝内部への雨水等の浸入を効果的に防止できる。
【0016】
本発明の一態様に係るドアホールキャップは、前記キャップ部材には、前記溝の一方の端部が他方の端部に対向し、かつ、前記一方の端部と前記他方の端部とが、前記キャップ部材の前記溝が形成されている面方向において並列して形成される並列部が、前記溝の一部として形成されており、前記並列部の一部は、前記一方の端部と、前記他方の端部とが連結して、前記溝の幅が他の部分よりも広く形成されていてもよい。
【0017】
前記構成によれば、キャップ部材に形成された溝には並列部が形成されている。溝に並列部が形成されていない場合、製造上のバラツキ等によりシール部材の端部同士が水密的に当接できず、第1周縁部上に、シール部材によるシールが不十分な部分が生じる場合がある。一方、キャップ部材において、並列部には、シール部材の両端部分が一部並列して取り付けられるため、シールが不十分な部分の発生を防止できる。
【0018】
また、並列部の一部では溝同士が連結している一方で、並列部の他の部分は溝同士が連結しておらず、2つの溝が並列して形成されている。このような構成であれば、溝の端部同士が連結した並列部の一部において、当接する2つのシール部材とドアインナーパネルとで微細な通路が形成された場合にも、毛細管現象によって溝内部に雨水等が浸入する可能性を低減することができる。したがって、並列部の全体に亘って溝が連結している場合と比べて、ドアホールキャップの止水性を向上させることができる。
【0019】
さらに、溝同士が連結している並列部において、ドアホール側となるシール部材を先に取り付けることが好ましい。そうすることで、第1シール部と溝当部との間に第2シール部が折りたたまれ、溝同士が連結している並列部では当接する2つのシール部材の各第1シール部同士も当接させることができ、より止水性を向上させることができる。
【0020】
本発明の一態様に係るドアホールキャップは、前記第1シール部は、前記本体部よりも軟質であってもよい。前記構成によれば、第1シール部がドアインナーパネルに押し付けられた際に、第1シール部が撓んでドアインナーパネルに密着しやすくなると共に、本体部は第1シール部よりも撓みにくいことから、本体部は変形しにくい。そのため、シール部材は、溝に安定的に取り付けられた状態を容易に維持しながら、高い止水性を発揮できる。
【0021】
本発明の一態様に係るシール部材は、自動車のドアインナーパネルに形成されたドアホールに取り付けられるドアホールキャップにおいて、前記ドアホールを車内側から覆うキャップ部材の周縁部である第1周縁部の全周に亘って形成された、車内側に向かって凹んだ溝に取り付けられるシール部材であって、前記溝の内部に挿入される本体部と、前記本体部の車外側端部から車外側に向かって延伸し、前記ドアインナーパネルの車内側の面に当接する第1シール部と、前記本体部の前記車外側端部よりも車内側から、前記溝の少なくとも片側の内面に向かって延伸し、当該内面に当接する溝当部と、を備える。
【発明の効果】
【0022】
本発明の一態様によれば、ドアホールキャップの止水性を維持しつつ、製造コストを低減できるドアホールキャップ等を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】一実施形態に係るドアホールキャップが取り付けられたフロントドアの車内側の構造を示す図である。
【
図2】一実施形態に係るドアホールキャップの断面形状を示す、
図1のA-A線矢視断面図である。
【
図3】一実施形態に係るドアホールキャップのシール部材の構造を示す断面図である。
【
図4】一実施形態に係るドアホールキャップの断面形状を示す、
図1のB-B線矢視断面図、C-C線矢視断面図およびD-D線矢視断面図である。
【
図5】一実施形態に係るドアホールキャップの断面形状を示す、
図1のE-E線矢視断面図である。
【
図6】一実施形態に係るドアホールキャップの一変形例の構造を示す断面図である。
【
図7】一実施形態に係るドアホールキャップの別の変形例の構造を示す断面図である。
【
図8】一実施形態に係るドアホールキャップのさらに別の変形例の構造を示す断面図である。
【
図9】
図8に示すドアホールキャップの変形例において、貫通孔が形成される固定領域の位置を示す図である。
【
図10】応用例に係るエアアウトレットの取り付け態様を示す図である。
【
図11】応用例に係るエアアウトレットの構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
<ドアホールキャップ1の概要および取り付け例>
図1を参照して、本発明の一実施形態に係るドアホールキャップ1の概要および取り付け例について説明する。なお、
図1の例において、紙面向かって上側が車両上側、下側が車両下側、右側が車両前側(フロント側)、左側が車両後側(リヤ側)、手前側が車内側(自動車の内側)、奥側が車外側(自動車の外側)に、それぞれ対応している。また、
図1は、フロントドアDを車内側から見た図である。ただし、これはドアホールキャップ1が自動車に取り付けられる方向を制限するものではなく、ドアホールキャップ1は、自動車に対していかなる方向となるように取り付けられてもよい。
【0025】
フロントドアDは、自動車のドアの一例であり、自動車のフロントドア用開口部(図示せず)に開閉可能に取り付けられている。フロントドアDは、ドアアウターパネル(図示せず)およびドアインナーパネルD1を備え、ドアインナーパネルD1にはドアホールD2が形成されている。ドアホールD2は、例えばフロントドアDの内部に配置された各種部品を修理するために、作業者が手または工具等を入れるための開口部である。なお、
図1に示すフロントドアDの形成態様はあくまで一例である。ドアホールD2の個数・形成箇所は、必要に応じて任意に変更することができる。
【0026】
ドアインナーパネルD1の車内側の面には、ドアホールキャップ1が取り付けられている。ドアホールキャップ1は、ドアホールD2を車内側から塞ぐことで、自動車のドアガラス(図示せず)とドアアウターパネルに取り付けられたベルトラインアウターウェザーストリップ(図示せず)との間からフロントドアDの内部に浸入した雨水等が、ドアホールD2から車内に浸入するのを防止する。
【0027】
ドアホールキャップ1は、
図1に示すように、キャップ部材10およびシール部材20を備えている。キャップ部材10は、車内側に向かって凹んだ溝11が形成されており、ドアホールD2を車内側から覆うようにドアインナーパネルD1に取り付けられている。溝11にシール部材20が取り付けられ、シール部材20がドアインナーパネルD1の車内側の面に当接していることによって、雨水等がドアホールD2から車内に浸入するのを防止する。
【0028】
なお、上述したドアホールキャップ1の取り付け態様はあくまで一例である。例えば、ドアホールキャップ1が取り付けられる自動車のドアは
図1の例に示すフロントドアDに限定されず、およそ自動車のドアであればどのような種類のドアであってもよい。したがって、ドアホールキャップ1は、例えばリアドアまたはスライドドア(図示せず)に取り付けられてもよい。また、ドアホールキャップ1の取り付け対象となる自動車についても、セダン車、ハードトップ車およびコンバーチブル車をはじめとする任意の種類の自動車が取り付け対象となる。
【0029】
<ドアホールキャップ1の構造>
図2を参照して、ドアホールキャップ1の構造について説明する。なお、
図2は
図1に示すドアインナーパネルD1に取り付けたドアホールキャップ1のA-A線矢視断面図である。そのため、
図2の例において、紙面向かって上側が車両上側、下側が車両下側、右側が車外側(自動車の外側)、左側が車内側(自動車の内側)、手前側が車両前側(フロント側)、奥側が車両後側(リヤ側)に、それぞれ対応している。
【0030】
図2に示すように、ドアホールキャップ1は、キャップ部材10の周縁部である第1周縁部12に形成された溝11にシール部材20が挿入された構造を有している。溝11は、第1周縁部12の全周に亘って形成されている。ドアホールキャップ1をドアインナーパネルD1に取り付けることで、ドアホールキャップ1がドアホールD2を車内側から覆うとともに、シール部材20が第1周縁部12と対向するドアインナーパネルD1の車内側の面に当接する。
【0031】
キャップ部材10は、車両側面から見てドアホールD2と相似形状で、ドアホールD2よりひと回り大きい部材である。
図1および
図2に示すように、第1周縁部12にシール部材20が取り付けられるため、シール部材20はドアホールD2を囲む構造となっている。
【0032】
キャップ部材10の材料は、例えば加硫ゴム、熱可塑性エラストマー、熱可塑性樹脂または金属等を挙げることができる。加硫ゴムの例としては、EPDM(エチレン・プロピレン・ジエンモノマー)、IR(イソプレンゴム)、CR(クロロプレンゴム)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)またはアクリロニトリル・ブタジエンゴム(NBR)を挙げることができる。熱可塑性エストラマーの例としては、オレフィン系(TPO)またはスチレン系(TPS)を挙げることができる。熱可塑性成形樹脂の例としては、PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、PVA(ポリビニルアルコール)、PVC(ポリ塩化ビニル)、PS(ポリスチレン)、ABS(アクリルニトリル・ブタジエン・スチレン)およびEVA(エチレン酢酸ビニル)が挙げられる。複合体の例としては、ガラス繊維ブレンドなどの繊維の集合体が挙げられる。金属の例としては、アルミおよび鉄が挙げられる。
【0033】
<シール部材20の構造>
図2および
図3を参照して、シール部材20の構造について説明する。なお、
図3はシール部材20を拡大した断面図である。
図3の例において、紙面向かって上側が車外側(自動車の外側)、下側が車内側(自動車の内側)に、それぞれ対応している。
図3に示すように、本実施形態においてシール部材20は、本体部21と、第1シール部22と、溝当部23と、リップ部24と、第2シール部25と、を備えている。
【0034】
本体部21は、溝11に挿入される部分である。本体部21は、溝11に挿入された状態で、車外側から車内側方向の長さが、溝11の深さ以上となるように形成されている。本体部21の車外側端部から車外側に向かって第1シール部22が延伸し、第1シール部22はドアインナーパネルD1の車内側の面に当接する。本体部21の車外側端部よりも車内側から、溝11の少なくとも片側の内面に向かって、リップ形状の溝当部23が延伸し、溝当部23は溝11の内面に当接する。
【0035】
本実施形態において、
図2に示すように、溝当部23は複数の箇所から溝11の両側の内面に向かって延伸しているが、本発明はこれに限定されない。溝当部23は、少なくとも溝11の片側の内面に向かって延伸するように設けられていればよい。溝当部23が溝11の内面に当接することによって、溝11にシール部材20を強固に取り付けることができる。
【0036】
また、溝当部23は、溝11の内面に向かって、車外側に傾いて延伸している。そのため、シール部材20を溝11に挿入するとき、溝当部23は、車外側に曲がるように弾性変形しやすい。したがって、溝当部23は、シール部材20を溝11に挿入する妨げにはなりにくい。一方、溝当部23は車内側の方向には曲がりにくい。そのため、シール部材20は溝11から抜け出しにくい。このように、溝当部23によれば、シール部材20が溝11から意図せず抜け出してしまうことを防止できる。
【0037】
また、
図2に示すように、溝当部23が本体部21の複数の箇所から溝11の内面に向かって延伸している場合でも、シール部材20を溝11に挿入しやすい状態を維持しながら、シール部材20が溝11からさらに抜けにくい形状とすることができる。
【0038】
シール部材20が本体部21、第1シール部22および溝当部23を備えていることで、シール部材20をキャップ部材10の溝11に挿入するという簡便な作業のみで、キャップ部材10へのシール部材20の取り付けが完了する。従来のドアホールキャップにシール部材としてスポンジ材等を貼り付ける場合、位置決めおよび接着等の作業を行う必要があった。しかし、本発明においてはそのような作業を行う必要がなくなるため、ドアホールキャップ1の製造コストを低減できる。
【0039】
さらに、第1シール部22がドアインナーパネルD1に当接することで、雨水等が車外からドアホールD2を通って車内に浸入するのを防止する。シール部材20はドアホールD2を囲む構造となっており、第1シール部22はドアホールD2の周縁のドアインナーパネルD1に当接している。したがって、本発明のドアホールキャップ1は止水性を維持しつつ、製造コストを低減できる。
【0040】
図2に示すように、シール部材20は、リップ部24を有していてもよい。リップ部24は、本体部21の車外側端部から、溝11の両側の周縁部である第2周縁部13に向かってそれぞれ延伸し、車外側から第2周縁部13にそれぞれ当接する。リップ部24が溝の両側の第2周縁部13に、それぞれ車外側から当接することで、リップ部24によって溝11を覆う状態となる。これにより、リップ部24は、雨水等の溝11内への浸入を防ぐことができるため、雨水等が溝11を通って車内側に浸入することを低減できる。したがって、リップ部24を有するシール部材20によれば、シール部材20がリップ部24を備えていない場合と比べて、ドアホールキャップ1の止水性を向上できる。
【0041】
また、リップ部24が溝11の両側の第2周縁部13に当接していることにより、リップ部24が、溝11に取り付けられたシール部材20を2方向から支持する構造となっている。そのため、リップ部24を有するシール部材20によれば、シール部材20がリップ部24を備えていない場合と比べて、溝11に取り付けられたシール部材20の取り付け姿勢を安定させることができる。
【0042】
さらに、
図2に示すように、シール部材20は、第2シール部25を有していてもよい。第2シール部25は、シール部材20において、ドアホールキャップ1の端部側のリップ部24から延伸している。より具体的には、第2シール部25は、当該端部側のリップ部24の先端よりも本体部21側から、ドアインナーパネルD1の車内側の面に向かって延伸し、当該車内側の面に当接する。
【0043】
シール部材20が、ドアインナーパネルD1に当接する第2シール部25を備えていることにより、第1シール部22および第2シール部25の両者によって、雨水等がシール部材20を超えて車内に浸入するのを効果的に防止できる。したがって、第2シール部25を有するシール部材20によれば、シール部材20が第2シール部25を備えていない場合と比べて、ドアホールキャップ1の止水性を向上できる。
【0044】
また、第2シール部25はリップ部24から延伸している。そのため、第2シール部25がドアインナーパネルD1に当接することで、ドアインナーパネルD1から車内側に向かってかかる力が、第2シール部25を通じてリップ部24に作用する。そのため、リップ部24が第2周縁部13に車外側から強く押し付けられるため、溝11からの雨水等の浸入を効果的に防止できる。
【0045】
シール部材20を構成する各部は主に、加硫ゴム、熱可塑性エラストマー、熱可塑性樹脂等によって形成されていてもよい。加硫ゴムの材料としては、例えば、EPDM、IR(イソプレンゴム)、CR(クロロプレンゴム)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル・ブタジエンゴム(NBR)等を用いることができる。熱可塑性エストラマーの材料としては、例えばオレフィン系(TPO)またはスチレン系(TPS)等を用いることができる。熱可塑性樹脂の材料としては、例えばポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)、エチレン酢酸ビニルコポリマー(EVA)、または軟質のポリ塩化ビニル等を用いることができる。材料はソリッド状であっても、発泡したスポンジ状であっても、または一部が発泡したスポンジ状でその他がソリッド状であってもよい。
【0046】
第1シール部22は、本体部21よりも軟質に形成されていてもよい。ここでいう軟質とは、材料そのものが軟らかい態様の他に、中空形状のように変形しやすい形状として形成されている態様も含む。第1シール部22が本体部21よりも軟質である場合、第1シール部22がドアインナーパネルD1に押し付けられた際に、第1シール部22が撓みやすいため、第1シール部22とドアインナーパネルD1とが密着しやすくなる。また、本体部21は第1シール部22よりも撓みにくいことから、本体部21は変形しにくいため、シール部材20は溝11に安定的に取り付けられた状態を容易に維持することができる。したがって、ドアホールキャップ1は高い止水性を安定的に発揮できる。
【0047】
第1シール部22は主に、シール部材20と同様の材料により形成されていてもよいが、その場合は本体部21をソリッド状とし、第1シール部22は発泡したスポンジ状に形成されていることが好ましい。例えば、第1シール部22は、EPDMの高発泡体により形成されていることが特に好ましい。
【0048】
シール部材20は、押出成形により製造されてもよい。シール部材20を押出成形によって製造することで、例えば第1シール部22と本体部21とを異なる材料で製造する際に、型成形等の他の製造方法と比べて、容易かつ安価に製造可能である。ただし、本発明はこれに限定されず、従来周知の製造方法によって、シール部材20を製造してもよい。
【0049】
<溝11の構造>
図1および
図4を参照して、キャップ部材10の溝11の構造について説明する。
図4の符号401は、
図1に示すドアインナーパネルD1に取り付けたドアホールキャップ1のB-B線矢視断面図を示す。
図4の符号402は、
図1に示すドアインナーパネルD1に取り付けたドアホールキャップ1のC-C線矢視断面図を示す。
図4の符号403は、
図1に示すドアインナーパネルD1に取り付けたドアホールキャップ1のD-D線矢視断面図を示す。
図4の例において、紙面向かって上側が車内側(自動車の内側)、下側が車外側(自動車の外側)、右側が車両前側(フロント側)、左側が車両後側(リヤ側)、手前側が車両下側、奥側が車両上側に、それぞれ対応している。
【0050】
本実施形態において、
図1に示すように、溝11の一方の端部14が他方の端部15に対向し、かつ、一方の端部14と他方の端部15とが、キャップ部材10の溝11が形成されている面方向において並列して形成される並列部16が、溝11の一部として形成されており、並列部16の一部である幅広部17は、一方の端部14と、他方の端部15とが連結して、溝11の幅が他の部分よりも広く形成されている。以下、具体的に説明する。
【0051】
図4の符号401は、溝11における並列部16以外の領域11aに、シール部材20を挿入した状態の断面図である。溝11における領域11aは、シール部材20を1列挿入可能であり、シール部材20を1列挿入するために適した幅の溝が形成されている。また、
図4の符号402は、溝11における幅広部17の領域11bに、シール部材20を挿入した状態の断面図である。溝11における領域11bは、シール部材20が2列挿入可能であり、シール部材20を2列並べて挿入するために適した幅の溝が形成されている。さらに、
図4の符号403は、溝11における並列部16の両端部の領域11cに、シール部材20を挿入した時の断面図である。溝11における領域11cは、シール部材20が1列挿入可能であり、シール部材20を1列挿入するために適した幅を有する溝が並列して形成されている。
【0052】
キャップ部材10に、上述した並列部16が溝11の一部として形成されている場合、シール部材20を第1周縁部12の全周に亘って確実に取り付けることができる。キャップ部材10に並列部16が形成されていない場合、第1周縁部12の全周に亘って形成される溝11は、その全体が
図4の符号401に示す領域11aの幅となる部分のみである。そのため、溝11にシール部材20を挿入した場合、製造上のバラツキ等によりシール部材20の長さが短くなり、シール部材20の端部同士が当接できず、水密性が低下してしまう。そのため、第1周縁部12上にシール部材20によるシールが不十分な部分が生じる場合がある。
【0053】
一方、キャップ部材10に並列部16が形成されている場合、溝11の一部は
図4の符号402に示す領域11bの幅となる。また、キャップ部材10には、
図4の符号403に示す領域11cのように、溝11を並列して形成できる。そのため、例えシール部材20に製造上のバラツキ等が生じた場合でも、並列部16にはシール部材20の両端部分が一部並列して取り付けられるため、第1周縁部12上にシールが不十分な部分が発生することを防止できる。
【0054】
また、本実施形態において、幅広部17では幅が広い溝11の領域11bが形成されている一方で、並列部16の両端部では溝11が2つ並列した領域11cが形成されている。ここで、幅広部17では2列のシール部材20が1つの溝11に挿入されており、シール部材20同士とドアインナーパネルD1とによって囲まれた、極微少な管状の通路Sが溝11に沿って形成されることがある。
【0055】
例えば、車両下側の溝11の端部(本実施形態における一方の端部14)が幅広部17となっている場合、一方の端部14に形成される通路Sに雨水等がかかりやすい。通路Sに雨水等がかかると、毛細管現象により通路Sが雨水等を吸い上げ、雨水等が車内に浸入する虞がある。一方、並列部16の車両下側に領域11cが形成されている場合、一方の端部14に形成される通路Sは、並列部16におけるドアホールD2側のシール部材20の下端よりも車両上側に位置する。したがって、当該通路Sには雨水等がかかりにくいため、毛細管現象によって溝11内部に雨水等が浸入する可能性を低減することができる。したがって、並列部16の全体に亘って溝11が連結して幅広部17が形成されている場合と比べて、ドアホールキャップ1の止水性を向上させることができる。
【0056】
ただし、本発明は上述した溝11の構造に限定されず、溝11は第1周縁部12の全周に亘って形成されていればよい。
【0057】
<排水構造>
図5を参照して、排水構造について説明する。なお、
図5は
図1に示すドアインナーパネルD1に取り付けたドアホールキャップ1のE-E線矢視断面図である。そのため、
図5の例において、紙面向かって上側が車両上側、下側が車両下側、右側が車外側(自動車の外側)、左側が車内側(自動車の内側)、手前側が前側(フロント側)、奥側が後側(リヤ側)に、それぞれ対応している。
【0058】
本実施形態において、
図5に示すように、ドアホールキャップ1は第1シール部22と第2シール部25との間から排水するための排水構造を有していてもよい。具体的には、ドアホールD2下部のドアインナーパネルD1に排水孔D3を有していてよい。排水孔D3によれば、例えドアホールD2から第1シール部22に到達した雨水等が、第1シール部22と第2シール部25との間に浸入してきたとしても、浸入した雨水等は重力に沿ってドアインナーパネルD1の下部に移動し、排水孔D3から排水される。したがって、排水孔D3は、第1シール部22と第2シール部25とが離間している形状と相まって、排水構造を構成できるため、ドアホールキャップ1の止水性を向上できる。
【0059】
〔変形例〕
(シール部材20の変形例)
本実施形態に係るドアホールキャップ1およびシール部材20については、複数の変形例が想定される。以下、
図6および
図7を用いて、本実施形態に係るドアホールキャップ1およびシール部材20の変形例について説明する。
図6の符号601は、本発明の変形例に係るシール部材201の断面図である。
図7の符号701は、本発明の変形例に係るシール部材202の断面図である。
図6の符号602は、本発明の変形例に係るドアホールキャップ2の断面図である。
図7の符号702は、本発明の変形例に係るドアホールキャップ3の断面図である。
【0060】
図6の符号601および
図7の符号701の例において、紙面向かって上側が車外側(自動車の外側)、下側が車内側(自動車の内側)に、それぞれ対応している。また、
図6の符号602および
図7の符号702の例において、紙面向かって上側が車内側(自動車の内側)、下側が車外側(自動車の外側)、右側が車両前側(フロント側)、左側が車両後側(リヤ側)、手前側が車両下側、奥側が車両上側に、それぞれ対応している。
【0061】
シール部材201は、
図6の符号601に示すように、第1シール部221の形状がシール部材20と異なる。
図6の符号602に示すように、シール部材20の第1シール部22と比べて、第1シール部221の断面を大きくすることによって、第1シール部221とドアインナーパネルD1との接触面積を増加させている。このような構成によって、雨水等が第1シール部221を通って車内側に浸入しにくくなるため、ドアホールキャップ2の止水性を向上できる。さらに、
図6の符号602に示すように、幅広部17において、2列のシール部材201を溝11に挿入した場合、シール部材201同士の間に隙間が形成されにくい構造とすることができ、ドアホールキャップ2の止水性を向上できる。
【0062】
続いて、シール部材202は、
図7の符号701に示すように、本体部211の形状がシール部材20と異なる。本体部211の車外側から車内側方向の長さを、シール部材20の本体部21と比べて短くすることにより、シール部材202を製造するために必要な材料が少なくなるため、ドアホールキャップ3の製造コストを低減できる。さらに、
図7の符号702に示すように、シール部材202の本体部211の断面が短いため、キャップ部材101の溝11の深さも短くすることができる。そのため、キャップ部材101を製造するために必要な材料が少なくなり、ドアホールキャップ3の製造コストを低減できる。また、シール部材202を溝11の奥まで挿入しやすくなる。
【0063】
(溝11の変形例)
以下、
図8および
図9を用いて、本実施形態に係るドアホールキャップ1における溝11の変形例について説明する。
図8の符号801は、本発明の一変形例に係るドアホールキャップ4において、
図1のB-B線と同様の位置の矢視断面図である。また、
図8の符号802は、本発明の一変形例に係るドアホールキャップ5において、
図1のB-B線と同様の位置の矢視断面図である。
【0064】
図8の符号801に示すように、ドアホールキャップ4は、貫通孔H1が形成されている溝11cを設けたキャップ部材102を備える点において、ドアホールキャップ1と異なる。貫通孔H1は、溝11cの深さ方向において、底側の略半分が切り取られることで形成されている。シール部材20がこのような溝11cに挿入されると、溝当部23の少なくとも一部が、貫通孔H1に挿入される。貫通孔H1に挿入された溝当部23は、シール部材20が抜け出しそうになっても、貫通孔H1の周壁に係止される。このように、ドアホールキャップ4は、溝11cの少なくとも一部に、溝当部23の少なくとも一部が挿入される貫通孔H1が形成されていることが好ましい。
【0065】
溝11cは、製造時の型抜きが容易となるように、底側に向かって狭まるテーパ形状として形成される場合がある。この場合、型と同様にシール部材20についても、溝11cから抜け出してしまいやすくなる。しかし、溝11cは貫通孔H1を備えており、溝当部23が貫通孔H1の周壁に係止されることで、シール部材20が溝11cから抜け出すことを防止できる。
【0066】
図9に示すように、ドアホールキャップ4が備える溝11cには、複数の固定領域18が設けられていることが好ましい。固定領域18は、シール部材20が溝11cに固定されやすいように構成された領域であり、ドアホールキャップ4においては貫通孔H1が形成される領域である。固定領域18は、ドアホールキャップ4の周縁において、溝11cが直線状に形成される直線部に加え、溝11cが曲がって形成される角部にも設定されることが好ましい。このような角部では、シール部材20が溝11c内で姿勢が安定しにくいため、特に、シール部材20が溝11cから抜け出しにくい構造とすることが好ましい。
【0067】
なお、
図8の符号802に示すドアホールキャップ5のように、固定領域18には、シール部材20を奥まで挿入したときに、いずれかの溝当部23が当接する狭い部分にのみ形成される貫通孔H2が設けられていてもよい。このような貫通孔H2であっても、溝当部23は、貫通孔H2の周壁に良好に係止できる。したがって、シール部材20は、貫通孔H2が形成された溝11dから抜け出しにくくなる。
【0068】
また、ドアホールキャップ1の一変形例において、固定領域18は、貫通孔の形成に替えて、溝11の幅が固定領域18以外の部分よりも狭く形成される領域であってもよい。溝11の幅が狭いほど、溝11に挿入されたシール部材20は抜け出しにくくなる。この場合、固定領域18がドアホールキャップ1の全周ではなく、複数個所に断続的に設けられる構成によれば、シール部材20の挿入に過剰な力を必要とせず、かつ、シール部材20を抜け出しにくくできる。
【0069】
また、ドアホールキャップ1の一変形例において、固定領域18は、溝11の側壁内面において、少なくとも一部の溝当部23が当接する部分の摩擦係数が、他の部分よりも大きく形成されていてもよい。例えば、固定領域18では、溝当部23が当接する側壁内面に、シボ加工または凹凸加工等の、平坦度を下げる加工が施されていてもよい。このような構成によっても、溝11の側壁内面に当接する溝当部23は、側壁内面に対して摺動しにくくなるため、シール部材20が溝11から抜け出しにくくなる。
【0070】
〔応用例〕
以下、ドアホールキャップ1における溝11およびシール部材20の構成を適用した一応用例について、
図10および
図11を用いて説明する。
図10は、自動車CへのエアアウトレットC1の取り付け態様を示す図である。
図11の符号1101は、エアアウトレットC1を車外側から見た図であり、符号1102は、符号1101に示すF-F線矢視断面図である。
【0071】
ドアホールキャップ1が備える溝11およびシール部材20の構成は、ドアホールキャップ以外にも、自動車Cに取り付けられる様々な板状部材への適用が可能である。特に、止水性が求められる態様で自動車Cに取り付けられる板状部材に、好適に適用できる。
図10に示すエアアウトレットC1は、その一例である。
【0072】
エアアウトレットC1は、自動車Cの内部空間から空気を通すエアダクトC2の車外側開口部C3に取り付けられる。車外側開口部C3は、自動車CのリアバンパーC4の内側パネルに形成されている。エアアウトレットC1は、自動車Cのドアを閉じるときに空気を排出して車内圧の上昇を低減することで、ドア閉じ性を向上する部材である。
【0073】
エアアウトレットC1は、自動車Cの外部に面する車外側開口部C3に取り付けられることから、止水性が求められる。従来は、発泡ウレタン等の止水シールをエアアウトレットの周縁部に貼り付けることで、車外側開口部C3への取り付け時の止水性を確保していた。しかし、止水シールの位置決めおよび接着するための工程は、製造コスト増の要因となるという問題があった。ドアホールキャップ1が備える溝11およびシール部材20の構成をエアアウトレットC1に適用することで、このような問題を解決し得る。
【0074】
図11の符号1101に示すように、エアアウトレットC1は、板状本体C11と、シール部材C13と、を備えている。板状本体C11に形成される溝C12、および、溝C12に挿入されるシール部材C13についてはそれぞれ、ドアホールキャップ1が備える溝11およびシール部材20の説明を援用可能である。エアアウトレットC1の溝C12は、ドアホールキャップ1の幅広部17に対応する並列部C14を備えている。
【0075】
板状本体C11は、溝C12に加え、排気弁C15および固定部C16を備えている。排気弁C15は、通常は閉じており、エアダクトC2を通じて車内側から空気圧がかかると開放し、空気を車外に排出する。
【0076】
固定部C16は、
図11の符号1102に示すように、車外側開口部C3の周縁端部に係止して、エアアウトレットC1を車外側開口部C3に固定する部材である。エアアウトレットC1が車外側開口部C3に固定されると、シール部材C13が車外側開口部C3の外面に当接するため、高い止水性が得られる。
【0077】
シール部材C13は、例えば押出成形により安価に製造できるため、従来の止水シールよりも部材コストを削減できる。また、シール部材C13を溝C12に挿入するという簡便な作業のみで、板状本体C11へのシール部材C13の取り付けが完了する。このように、板状本体C11に溝C12を形成し、そこにシール部材C13を挿入する構成によれば、エアアウトレットC1の製造コストを低減しながら高い止水性を確保できる。
【0078】
〔付記事項〕
本発明は上述した実施形態および変形例に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態および変形例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても、本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0079】
1、2、3、4、5 ドアホールキャップ
10、101、102、103 キャップ部材
11 溝
12 第1周縁部
13 第2周縁部
14 一方の端部
15 他方の端部
16 並列部
17 幅広部(並列部の一部)
20、201、202 シール部材
21、211 本体部
22、221 第1シール部
23 溝当部
24 リップ部
25 第2シール部
D1 ドアインナーパネル
D2 ドアホール