(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022108265
(43)【公開日】2022-07-25
(54)【発明の名称】切断器具
(51)【国際特許分類】
A61B 18/14 20060101AFI20220715BHJP
A61B 17/3201 20060101ALI20220715BHJP
【FI】
A61B18/14
A61B17/3201
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021209163
(22)【出願日】2021-12-23
(31)【優先権主張番号】21151169
(32)【優先日】2021-01-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】592245823
【氏名又は名称】エルベ エレクトロメディジン ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Erbe Elektromedizin GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(72)【発明者】
【氏名】ダーヴィト・レーザー
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160KK03
4C160KK04
4C160KL03
4C160MM32
4C160NN01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】切断、または特に組織の切断と組み合わせた、組織融合もしくは組織凝固のために構成され、適している電気外科器具を提供する。
【解決手段】組織の融合および切断に使用可能な本発明の器具10では、薄膜として構成された対向支持体が、2つの電極対の間に配置された切断電極に割り当てられる。薄膜は、フレーム内にまたがり、その円周面で物質結合の形でフレーム上に保持される。これにより、円周面は、フレーム上側部によって形成された凝固電極に対してある角度、好ましくは直角に延びる。こうして、生体組織が切断電極に押し付けられる膜によって加えられる押圧力は、膜内に存在する引張応力によって主に作り出される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に切断用、または組織融合もしくは凝固と組織切断との組み合わせ用の器具(10)であって、
少なくとも一方が他方に向かっておよび他方から離れるように移動可能に支持された2つのジョー(12、13)と、
前記ジョー(12)の一方に配置された切断電極(17)と、
前記切断電極(17)に割り当てられた弾性対向支持体(22)であって、他方のジョー(13)上に配置され、前記弾性対向支持体(22)の円周面(24)と当接するように配置されたフレーム(25)内に保持される、弾性対向支持体(22)と、を備え、
前記対向支持体(22)が、その円周面(24)において前記フレーム(25)と引っ張りに耐えるように接続されることを特徴とする、
器具。
【請求項2】
前記対向支持体(22)が、前記フレーム(25)内に支持なしで保持されることを特徴とする、
請求項1に記載の器具。
【請求項3】
前記対向支持体(22)が、物質結合の形で前記フレーム(25)と接続されることを特徴とする、
請求項1または2に記載の器具。
【請求項4】
前記対向支持体(22)が、プラスチック膜であり、動作中に前記切断電極(17)が置かれる前記プラスチック膜の中心セクション(23)内で前記少なくとも1つの移動可能なジョー(12)の移動方向に測定される厚さ(DM)が、最大で前記円周面(24)におけるものと同じ大きさであることを特徴とする、
請求項1から3のいずれか一項に記載の器具。
【請求項5】
前記対向支持体(22)が、プラスチック膜であり、動作中に前記切断電極(17)が置かれる前記プラスチック膜の中心セクション(23)内で前記少なくとも1つの移動可能なジョー(12)の移動方向に測定される厚さ(DM)が、他のすべての位置におけるものよりも小さい厚さを有することを特徴とする、
請求項1から4のいずれか一項に記載の器具。
【請求項6】
前記対向支持体(22)が、プラスチック膜であり、動作中に前記切断電極(17)が置かれる前記プラスチック膜の中心セクション(23)内で前記少なくとも1つの移動可能なジョー(12)の移動方向に測定される厚さ(DM)が、他のすべての位置におけるものよりも大きい厚さを有することを特徴とする、
請求項1から5のいずれか一項に記載の器具。
【請求項7】
前記対向支持体(22)が、静止状態において前記切断電極(17)に面する側に凹状または凸状のドーム状に形成されることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の器具。
【請求項8】
前記対向支持体(22)が、前記フレーム(25)によって制限された開口部を完全に閉じるように、前記開口部内に構成され配置されることを特徴とする、
請求項1から7のいずれか一項に記載の器具。
【請求項9】
前記対向支持体(22)が、上側部(26)および底側部(27)において前記フレーム(25)と同一平面上で終端するように構成されることを特徴とする、
請求項1から8のいずれか一項に記載の器具。
【請求項10】
前記対向支持体(22)が、前記フレーム(25)上に延びるセクション(33、34、35)を備えることを特徴とする、
請求項1から9のいずれか一項に記載の器具。
【請求項11】
前記セクション(34)が、前記対向支持体(22)を備える前記ジョー(13)の遠位端に配置されることを特徴とする、
請求項10に記載の器具。
【請求項12】
請求項1に記載の器具用の対向支持体を製造するための方法であって、
前記フレーム(25)をその中に配置するためのエングレービング(39)を有するプラスチック射出成形金型(36)を提供するステップと、
前記エングレービング(39)内に前記フレーム(25)を配置するステップと、
前記エングレービング(39)にプラスチックを導入して、前記プラスチックが前記フレーム(25)と接触し、接着接続するようにするステップと、
前記プラスチックがフレーム(25)と一緒になって前記対向支持体(22)を形成するように、前記プラスチックを凝固させるステップと、
前記射出成形金型(36)を開き、前記対向支持体(22)を取り外すステップと、を含む
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切断、または特に組織の切断と組み合わせた、組織融合もしくは組織凝固のために構成され、適している電気外科器具に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2004-180843号公報は、組織を間に保持することができるジョーが互いに対して移動可能である鉗子のタイプにおいて2つのジョーを有する組織凝固切断器具を開示している。2つのジョーは、それらの間に保持された組織を凝固させるために電流が印加され得る。さらに、ジョーの一方は、他方のジョーに配置された弾性対向支持体が割り当てられる切断要素を備える。対向支持体には様々な構成が提案されている。例えば、弾性対向支持体は、平坦なT型の正方形の塊状断面、中空断面、または階段状断面を有することができ、底部ジョーの下向きに開いた溝に挿入することができる。この対向支持体は、切断要素に面するより広い上部セクションと、溝内に延びるより狭いセクションとを備える。ジョー部の閉鎖中、対向支持体は、変形して溝内に入る。対向支持体の中心セクションはどこにも当接しないが、対向支持体の縁部は、中心溝に沿って延びる段に保持されて支持される。
【0003】
弾性対向支持体を有する凝固および切断器具が、米国特許出願公開第2004/0049185号明細書から知られている。対向支持体は、ほぼ正方形の断面を含み、また、離れたU字形に構成されたジョーの2つの脚部間の切断電極とは反対側で支持される。対向支持体の側面は露出している。
【0004】
米国特許出願公開第2009/0234355号明細書は、ジョー内に配置された切断電極と、他のジョーに配置された可動に支持された対向支持体とを有する凝固および切断器具を開示している。対向支持体は、侵入する切断電極を避けることができるように弾性的に支持される。
【0005】
凝固電極、切断電極、および切断電極に割り当てられた対向支持体を有する電気外科器具のさらなる例は、欧州特許出願公開第1632192号明細書および欧州特許出願公開第2754403号明細書から得ることができる。
【0006】
凝固および切断器具に関する要件は、複数の局面で増大する。小型化の傾向ならびに製造の信頼性および製造精度に対する要求が存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここを起点にして、本発明の目的は、少なくとも1つの点で改善された器具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の本発明の器具は、この目的を満たす。
【0009】
本発明による器具は、ジョー上に切断電極を備え、他方の対向するジョー上に弾性対向支持体を備える。対向支持体は、それぞれのジョー自体または別個の構成要素によって提供されるフレーム内に保持される。対向支持体は、張力に耐えるようにフレームと接続された円周面を備える。フレームは、対向支持体を互いに対向する少なくとも2つの側部において固定する。好ましくは、フレームは、3つの側部、すなわち2つの側面および遠位端で対向支持体を取り囲む。対向支持体は、少なくともその2つの長手方向側部または側面において、および任意選択的にその遠位端においてもフレームに接続される。後者の場合、対向支持体はフレームを完全に閉じ、材料が対向支持体の下の領域に入ることを許容しない。しかし、膜をその遠位端および/またはその近位端において自由にすること、すなわちフレームから切り離すことも可能である。
【0010】
フレームは、対向支持体の円周面に接続された対向支持体に面する表面を備える。接続部は、引張抵抗性であり、すなわち、対向支持体の縁部からその中心に向かって導かれる引張力により、対向支持体はフレームから解放されない。接続部は、好ましくは、隙間がなく、すなわち、対向支持体の円周面は、フレームと完全に二次元的に接続される。好ましくは、引張応力の場合、対向支持体のいずれの部分もフレームから持ち上がらない。切断電極、および場合によっては切断電極と対向支持体との間に存在する適切な生体組織が、ジョーの閉鎖中に対向支持体を押圧することで、引張力を生成することができる。これにより、対向支持体は、その休止位置から変位され、張力がかけられる。それにより、対向支持体は好ましくは可撓性であるため、主に、対向支持体の変形に起因して引張応力が生成され、これが対向支持体が「膜」としても示される理由である。好ましい事例では、対向支持体は、いわゆる膜状態にあるように、すなわち、機械的応力に関して、ジョーが開いた状態の非負荷状態、好ましくはジョーが閉じた状態の負荷状態においても、対向支持体の材料内に存在する引張応力があらゆる場所で少なくともほぼ等しいように構成される。
【0011】
対向支持体とフレームとの間の引張抵抗性接続は、好ましくは物質結合接続、必要に応じてもっぱら物質結合接続だけである。これは、射出成形プロセスで膜が作成され、それによってフレームが射出成形金型の一部を形成する、すなわち作り出された対向支持体の円周面で静止液体対向支持体の材料の流れを制限するという簡単な方法で実現することができる。フレームは、好ましくは金属からなる。対向支持体は、好ましくは可撓性プラスチック、例えばシリコーンプラスチックからなる。膜の円周面とフレームとの間の接着力は、膜に面するフレーム表面のそれぞれの表面設計によって、例えば粗面化によって増加させることができる。さらに、フレーム表面は、対向支持体の接着性を改善するために、全体的にまたは部分的に活性化することができる。このために、表面は、CVDまたはPVDコーティングプロセスを局所的または完全に受けることができる。フレームが打ち抜き部材であれば、打ち抜き中に作り出されたフレームの表面凹凸を利用して、フレームと膜との接着性を向上させることができる。
【0012】
対向支持体とフレームとの間の引張抵抗性接続は、例えば、フレームが対向支持体に面する表面に沿って例えば開口部、切り欠きなどの形状嵌合構造を備えるという点で、対向支持体とフレームとの間の形状嵌合によって支持することができる。
【0013】
好ましくは、対向支持体は、支持なしでフレーム内に保持される。特に、切断電極の侵入方向とは反対を向く面には当接しない。換言すれば、切断電極に面する自由上面は、切断電極から外方に面する対向支持体の自由底面と同じ大きさである。この配置の結果として、ジョー間に保持された生体組織は、切断電極と対向支持体との間に保持された組織が電気的に切断されるが、機械的に押し付けられないように、特に柔らかく均一に切断電極に押し付けられる。分離プロセスは電気的のみである。これは、器具の大きな構成ならびに器具の小型化構成において達成することができる。
【0014】
対向支持体は、好ましくはシリコーンなどの電気絶縁性プラスチックからなる。しかし、対向支持体は、内因に導電性であるプラスチック、または外因的に、すなわち導電性物質または粒子を埋め込むことによって導電性であるプラスチックからなることもできる。そうすることで、組織を通る電流の流れの間に追加の熱効果を作り出すことができる。
【0015】
好ましくは、対向支持体は、互いに一定の距離を置いて配置された2つの側面を備える。しかし、距離は遠位方向に減少することもできる。
【0016】
対向支持体は、閉状態で切断電極に接触するその中心セクションにおいて、対向支持体の縁部の厚さと最大で同じ厚さを有することができる。好ましくは、中心セクションの厚さは、対向支持体の縁部におけるものよりもさらに小さい。そうすることで、本発明の主な利点が支持される。器具の閉鎖中、対向支持体は、従来技術ではしばしばそうであったように、好ましくは伸長を受け、圧縮または曲げを受けにくい。そうすることで、膜状の対向支持体はまた、不均一な組織によく適合し、組織を切断電極と柔らかく接触させて保つことができる。しかし、切断電極の下の中心の対向支持体の厚さを縁部(側面または円周面)におけるものより大きくすることも可能である。
【0017】
対向支持体は、静止位置において切断電極から離れるように、または切断電極に向かってドーム状にすることができる。そうすることで、圧縮中、すなわち器具の閉鎖中に切断電極に対する組織の押圧力の所望の進行を達成するために、異なるばね特性を調整することができる。
【0018】
有利な実施形態では、対向支持体は、その上側部およびその底面でフレームと同一平面上で終端する。これにより、器具の製造、特にフレーム内の対向支持体の作成が簡単になる。
【0019】
対向支持体は、フレーム上に延びる1つまたは複数のセクションを備えることができる。好ましくは、そのようなセクションは、少なくとも対向支持体、または対向支持体を含むジョーの遠位端に配置される。そのようなセクションは、ジョーのスペーサとして機能し、閉鎖中にセクションが直接接触することを回避することができる。しかし、これらのセクションとは別に、離れた対向支持体が上側部および底側部でフレームと同一平面上で終端する場合が、有利である。
【0020】
本発明の有利な実施形態のさらなる詳細は、図面、関連する説明、ならびに特許請求の範囲から導かれる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図2】開状態の
図1による器具の上部ジョーおよび底部ジョーの断面図である。
【
図3】組織を有さず、断面における閉状態の
図1および
図2による器具を示す図である。
【
図4】ジョー間に組織が保持された、
図3による器具の断面図である。
【
図5】わずかに開いた状態の器具の変形実施形態の断面図である。
【
図6】ジョーがわずかに開いたときの、本発明の器具のさらなる変形実施形態の断面図である。
【
図7】
図6による器具の底部ジョーの部分的斜視図である。
【
図8】
図1~
図5による器具の対向支持体を製造するためのプラスチック射出成形金型を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1には、組織の融合および切断のために構成された器具が示されている。器具は、開腹手術用の器具、腹腔鏡用の器具、または内視鏡用の器具とすることができる。器具10は、例えば可撓性シャンク11または剛性シャンク上にも保持されたジョー12、13を備え、それによってジョーの少なくとも一方、この実施形態では上部ジョー12は、他方のジョー、この例では底部ジョー13に向かっておよび離れるように移動することができるように枢動可能に支持される。ヒンジ軸A周りの枢動運動は、シャンク11を通って延びる図示しない機構によって制御される。
【0023】
代替として、器具10はまた、互いに向かっておよび離れるように移動可能な2つの枢動可能に支持されたジョーを備えることもできる。
【0024】
図2は、
図1の線II-IIに沿って切断した、
図1による器具10の断面図である。例えば、上部ジョー12は、断面がU字形を有し、金属的に露出しているか、または外側で電気的に絶縁されている金属部材14で作ることができ、その脚面5は、凝固電極15、16として機能する。凝固電極15、16は、連続的にストリップ状の電極とすることができ、絶縁セクションによって遮ることもできる。金属部材14の代わりに、上部ジョー12は、凝固電極15、16が例えばシート部材の形態で埋め込まれるという点で、例えばプラスチックなどの非導電性材料で作られた別の部材を備えることもできる。
【0025】
上部ジョー12には、例えば薄い金属シートストリップからなる切断電極17が設けられる。好ましくは、切断電極17は、凝固電極15、16の間のほぼ中心にある絶縁体18内に保持される。切断電極17は、好ましくは、切断電極17の2つの平坦な側面が絶縁されるように、絶縁体18の延長部19内に配置される。延長部19と凝固電極15、16を支持する上部ジョー12の脚部との間には、内部で組織の配置に役立つ隙間20、21が形成される。
【0026】
底部ジョー13は、切断プロセス中に切断電極17上に生体組織を保持するように機能する対向支持体22を備える。対向支持体22は、例えばシリコーンからなる可撓体であり、その中心セクション23において、特に切断電極17の延長上において測定された厚さDMは、対向支持体を横断して測定された幅Bよりも小さい。対向支持体22は、中実材料からなる。好ましくは、中空空間を含まない。
【0027】
側方では、対向支持体22は、フレーム25にその円周面24で隣接し、張力に耐えるように、好ましくは例えばオーバーモールドまたは接着によって物質結合の形でフレームに接続される。円周面24は、好ましくは構造化されておらず、すなわちパンチまたは破断面などの加工マークを除いて滑らかである。しかし、円周面はまた、例えば形状嵌合によって、対向支持体22とフレーム25との間の物質接続を支持するように構成することもできる。
【0028】
対向支持体22は、好ましくは中心セクション23の厚さDMと少なくとも同じ大きさである円周面24に隣接する縁部の厚さDRを含む。さらに、それにより、厚さDRは、同じ方向に測定されるフレーム25の厚さに対応し、それにより、対向支持体22は、その上側部26およびその底側部27においてフレーム25と同一平面上で終端する。
【0029】
フレーム25は、その上側部が凝固電極28、29を形成するように、好ましくは金属からなる。凝固電極は、それぞれのジョー12または13の遠位端で互い内に移行することができる。
【0030】
対向支持体22およびフレーム25からなるユニットは、射出成形プロセスで製造することができ、このプロセスでは、予め製造されたフレーム25をそれぞれの射出成形金型に挿入し、次いでその型の内部に対向支持体22のプラスチック材料を導入して、円周面24でフレーム25と密接に接続させる。このようにして作成されたユニットは、本実施形態ではU字形金属部材30からなる底部ジョー13の残りの負荷担持部材に接続される。ユニットは、金属的にむき出しであることができ、または電気的に絶縁することができ、例えば、その外側にプラスチックコーティングが設けられる。また、フレーム25は、金属的にむき出し、すなわち導電性であることもでき、あるいは外側に面する側部に絶縁体を設けることもできる。フレーム25は、金属部材30と導電的に接続することができ、または金属部材に対して絶縁することもできる。対向支持体22と金属部材30との間には、環境から分離することができるか、または適切な開口部によって環境に接続することもできる隙間31を形成することができる。
【0031】
図3は、閉状態の器具10を示す。電極15、28は、さらに図示されていないスペーサによって互いに接触するか、または互いにわずかな距離に保たれる。凝固電極16、29についても同様である。切断電極17は、対向支持体22上に直立し、対向支持体22の底側部27を金属部材30または隙間31に存在する他の部材と接触させずに、対向支持体を隙間31に押し込む。対向支持体22は断面が細く、すなわち厚さD
Mが幅Bよりも著しく小さいため、対向支持体22は、
図3に示す変形において実質的に張力を受ける。対向支持体は、延伸される。同様に、その円周面24とフレーム25との間の接続は、実質的に張力を受ける。
【0032】
器具10は、以下のように動作する。
【0033】
図4に示すように、生体組織32の治療のために、生体組織が、最初にジョー12、13の間に保持される。生体組織32は、器官組織、血管、または他の組織とすることができる。互いに向かって移動するジョー12、13は、組織32を把持する。同時にまたは順次、凝固電極15、28、16、29に凝固電圧が印加され、切断電極17に切断電圧が印加される。
図2に示すように、対向支持体22は、器具10の閉鎖中に切断電極17をよけ、それによって張力がかけられている。しかし、それにより、対向支持体は、組織32を切断電極17に対して付勢する。生体組織32は、延長部19の両側の隙間20、21に進入することができる。凝固電極15、28ならびに16、29は、凝固電極の間に保持された組織を凝固させ、血管である場合には血管を融合させ、すなわちこれらの位置で組織を閉じる。切断電極17によってそれぞれのより高い切断電圧が印加された組織は収縮して分離し、それによって対向支持体22は切断電極17上に収縮組織を保持する。
【0034】
これまで説明してきた発明は、変形が可能である。例えば、
図5に示すように、対向支持体22は、切断電極17に向かって凸状にドーム状とすることができる。この結果、器具10の閉鎖中に対向支持体22のドームを最初に克服しなければならず、それによって特定のスナップ効果が生じ得ることになる。あるいは、対向支持体22は、完全に平面状とすることもできる。それとは別に、
図1~
図4の説明は、それに対応して、
図5による器具10の実施形態に対応して適用される。
【0035】
対向支持体22はまた、
図1~
図4による実施形態のように、平面状または凹面状とすることもでき、すなわち、切断電極17から離れるドーム状に構成することができる。中心23から対向支持体22の縁部に向かう厚さの進行に伴って、もちろんドームの所望のばね特性、すなわち器具10の閉鎖中に達成することができる経路力の進行を調整することができる。
【0036】
上述の実施形態のすべてにおいて、対向支持体22は、フレーム25上に突出し、したがって凝固電極15、16と凝固電極28、29との直接接触を回避する延長部33、34、35を含むことができる。しかし、それとは別に、この実施形態においても、対向支持体22は、好ましくは、その上側部26およびその底側部27においてフレーム25と同一平面上で終端する。
【0037】
対向支持体22の製造は、
図8を参照して説明されるものとする。この目的のために、プラスチック射出成形金型36は、その上型半体37とその底型半体38との間に設けられ、製造される対向支持体の形態を画定するエングレービング39が、形成される。エングレービング39には、中心セクション内に形成される対向支持体22の厚さを減少させる中心昇降突起40が、
図8に示されている。
【0038】
対向支持体22の製造のために、プラスチック射出成形金型36が開いている間にフレーム25がエングレービング39に挿入され、続いて射出成形金型36が、閉じられる。続いて、液体プラスチックが、設けられた空間を完全に満たし、フレーム25の内側に当接し、内側と接着結合するように、エングレービング39に充填される。プラスチックの硬化後、プラスチック射出成形金型36を開くことができ、対向支持体22を取り外すことができる。
【0039】
好ましくは組織の融合および切断に使用可能な本発明の器具10では、薄膜として構成された対向支持体22は、2つの電極対の間に配置された切断電極17に割り当てられる。薄膜は、フレーム25内にまたがり、フレームの円周面で物質結合の形でフレーム上に保持される。これにより、円周面は、フレーム上側部によって形成された凝固電極28、29に対してある角度、好ましくは直角に延びる。したがって、生体組織32が切断電極17に押し付けられる膜によって加えられる押圧力は、膜内に存在する引張応力によって主に作り出される。
【符号の説明】
【0040】
5 金属部材14の脚面
10 器具
11 シャンク
12 上部ジョー
13 底部ジョー
14 金属部材
15,16 上部ジョー12の凝固電極
17 切断電極
18 絶縁体
19 絶縁体の延長部
20,21 隙間
22 対向支持体
23 対向支持体22の中心セクション
24 対向支持体の円周面
25 フレーム
26 対向支持体22の上側部
27 対向支持体の底側部
28,29 底部ジョー13の凝固電極
30 金属部材
31 隙間
32 生体組織
33-35 延長部
36 プラスチック射出成形金型
37 上型半体
38 底型半体
39 エングレービング
40 突出部
A ヒンジ軸
DM 対向支持体の中心セクション内で測定された厚さ
DR 対向支持体の縁部における厚さ
【外国語明細書】