(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022108266
(43)【公開日】2022-07-25
(54)【発明の名称】硬化性ウレタン組成物
(51)【国際特許分類】
C08G 18/10 20060101AFI20220715BHJP
C08G 18/08 20060101ALI20220715BHJP
C08G 18/32 20060101ALI20220715BHJP
C08G 18/42 20060101ALI20220715BHJP
C08L 75/04 20060101ALI20220715BHJP
C08K 3/18 20060101ALI20220715BHJP
【FI】
C08G18/10
C08G18/08 038
C08G18/32 003
C08G18/42 044
C08L75/04
C08K3/18
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021209254
(22)【出願日】2021-12-23
(31)【優先権主張番号】P 2021002883
(32)【優先日】2021-01-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】中田 陽介
(72)【発明者】
【氏名】島田 哲也
【テーマコード(参考)】
4J002
4J034
【Fターム(参考)】
4J002CK021
4J002DE116
4J002DE146
4J002DE236
4J002FD016
4J002GJ01
4J002GQ00
4J034DA01
4J034DB04
4J034DB07
4J034DH02
4J034DH10
4J034HB03
4J034HB08
4J034HC03
4J034HC06
4J034HC12
4J034HC13
4J034HC22
4J034HC35
4J034HC45
4J034HC46
4J034HC52
4J034HC54
4J034HC61
4J034HC64
4J034HC67
4J034HC71
4J034HC73
4J034JA42
4J034JA44
4J034MA01
4J034QB10
4J034QB13
4J034QC10
4J034RA08
4J034RA14
(57)【要約】 (修正有)
【課題】硬化性ウレタン組成物中での無機フィラーの分散性が良好であり、硬化後の基材接着性が良好である硬化性ウレタン組成物を提供する。
【解決手段】硬化性ウレタン組成物は、水酸基成分(A)、イソシアネート成分(B)及び無機フィラー(C)を含有し、以下の(i)~(iii)のうち少なくとも1つを満たす。(i)前記(A)が下記一般式(1)で表される化合物(S)を含有する(ii)前記水酸基成分(A)が前記化合物(S)を含む水酸基成分とイソシアネート成分とを反応させて得られる末端に水酸基を有するウレタンプレポリマーを含有する(iii)前記イソシアネート成分(B)が前記化合物(S)を含む水酸基成分とイソシアネート成分とを反応させて得られる末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを含有する
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸基成分(A)、イソシアネート成分(B)及び無機フィラー(C)を含有する硬化性ウレタン組成物であって、以下の(i)~(iii)のうち少なくとも1つを満たす硬化性ウレタン組成物。
(i)前記(A)が下記一般式(1)で表される化合物(S)を含有する
(ii)前記水酸基成分(A)が前記化合物(S)を含む水酸基成分とイソシアネート成分とを反応させて得られる末端に水酸基を有するウレタンプレポリマーを含有する
(iii)前記イソシアネート成分(B)が前記化合物(S)を含む水酸基成分とイソシアネート成分とを反応させて得られる末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを含有する
【化1】
[一般式(1)中、X
1及びX
2は2価の水酸基含有化合物から1個の水酸基を除いた残基を表し、X
1とX
2はそれぞれ同一でも異なっていてもよく;Yは芳香族テトラカルボン酸から全てのカルボキシル基を除いた残基を表し、Yの芳香環は炭素原子から構成され、その炭素原子にはカルボキシル基以外の置換基及び/又はハロゲン原子が結合していてもよい。]
【請求項2】
前記硬化性ウレタン組成物が、前記水酸基成分(A)を含有する主剤と、イソシアネート成分(B)を含有する硬化剤とからなる2液硬化性ウレタン組成物であり、主剤及び/又は硬化剤に無機フィラー(C)を含有する請求項1に記載の硬化性ウレタン組成物。
【請求項3】
硬化性ウレタン組成物中の前記一般式(1)におけるYの濃度が、前記水酸基成分(A)及び前記イソシアネート成分(B)の合計重量を基準として、0.01~0.8mmol/gである請求項1又は2に記載の硬化性ウレタン組成物。
【請求項4】
前記化合物(S)の水酸基価が20~180mgKOH/gである請求項1~3のいずれか1項に記載の硬化性ウレタン組成物。
【請求項5】
前記芳香族テトラカルボン酸が、ピロメリット酸である請求項1~4のいずれか1項に記載の硬化性ウレタン組成物。
【請求項6】
前記水酸基成分(A)及び前記イソシアネート成分(B)の合計重量を基準とする酸価が、1.7~90mgKOH/gである請求項1~5のいずれか1項に記載の硬化性ウレタン組成物。
【請求項7】
前記硬化性ウレタン組成物中の無機フィラー(C)の含有量が、硬化性ウレタン組成物の重量を基準として、50~95重量%である請求項1~6のいずれか1項に記載の硬化性ウレタン組成物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の硬化性ウレタン組成物の硬化物。
【請求項9】
前記硬化性ウレタン組成物の硬化物のウレタン基濃度が、硬化性ウレタン組成物中に含まれる前記水酸基成分(A)及び前記イソシアネート成分(B)の合計重量を基準として、0.02~4.5mmоl/gである請求項8に記載の硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は硬化性ウレタン組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタン樹脂に、チタン酸カリウム、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化鉄等の無機フィラーを混合して、電子材料用のバインダーや接着剤等の用途に用いることが知られている。ポリウレタン樹脂は、ポリオール、有機ポリイソシアネート及び鎖伸長剤等の反応物であり、上記の用途においては、一般的に多量のフィラーを添加する場合が多く、ポリウレタン樹脂中のフィラーの分散性が悪いためハンドリング性が悪く、塗工しにくい等の問題がある。本問題を解決するために低分子量界面活性剤や可塑剤等を添加して、ハンドリング性を向上させることが知られている(例えば、特許文献1参照)。しかし、低分子量界面活性剤や可塑剤の添加では、ウレタンプレポリマー及び無機フィラーを含む組成物の硬化物の基材接着性が十分でないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、硬化性ウレタン組成物中での無機フィラーの分散性が良好であり、硬化後の基材接着性が良好である硬化性ウレタン組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。即ち本発明は、水酸基成分(A)、イソシアネート成分(B)及び無機フィラー(C)を含有する硬化性ウレタン組成物であって、以下の(i)~(iii)のうち少なくとも1つを満たす硬化性ウレタン組成物である。
(i)前記(A)が下記一般式(1)で表される化合物(S)を含有する
(ii)前記水酸基成分(A)が前記化合物(S)を含む水酸基成分とイソシアネート成分とを反応させて得られる末端に水酸基を有するウレタンプレポリマーを含有する
(iii)前記イソシアネート成分(B)が前記化合物(S)を含む水酸基成分とイソシアネート成分とを反応させて得られる末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを含有する
【化1】
[一般式(1)中、X
1及びX
2は2価の水酸基含有化合物から1個の水酸基を除いた残基を表し、X
1とX
2はそれぞれ同一でも異なっていてもよく;Yは芳香族テトラカルボン酸から全てのカルボキシル基を除いた残基を表し、Yの芳香環は炭素原子から構成され、その炭素原子にはカルボキシル基以外の置換基及び/又はハロゲン原子が結合していてもよい。]
【発明の効果】
【0006】
本発明の硬化性ウレタン組成物は、無機フィラーの分散性が良好であり、硬化性ウレタン組成物の硬化物の基材接着性が優れる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の硬化性ウレタン祖組成物は、水酸基成分(A)、イソシアネート成分(B)及び無機フィラー(C)を含有する硬化性ウレタン組成物であって、以下の(i)~(iii)のうち少なくとも1つを満たす硬化性ウレタン組成物である。
(i)前記(A)が下記一般式(1)で表される化合物(S)を含有する
(ii)前記水酸基成分(A)が前記化合物(S)を含む水酸基成分とイソシアネート成分とを反応させて得られる末端に水酸基を有するウレタンプレポリマーを含有する
(iii)前記イソシアネート成分(B)が前記化合物(S)を含む水酸基成分とイソシアネート成分とを反応させて得られる末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを含有する
【化2】
[一般式(1)中、X
1及びX
2は2価の水酸基含有化合物から1個の水酸基を除いた残基を表し、X
1とX
2はそれぞれ同一でも異なっていてもよく;Yは芳香族テトラカルボン酸から全てのカルボキシル基を除いた残基を表し、Yの芳香環は炭素原子から構成され、その炭素原子にはカルボキシル基以外の置換基及び/又はハロゲン原子が結合していてもよい。]
【0008】
<化合物(S)>
本発明において、化合物(S)は前記一般式(1)で表される化合物である。本発明においては、上記(i)~(iii)のうち少なくとも1つを満たす硬化性ウレタン組成物であることにより、水酸基成分(A)及び/又はイソシアネート成分(B)中にカルボキシル基を含有する。無機フィラーは一般的に極性が高いため、高極性のカルボキシル基との親和性が高い。そこで、水酸基成分(A)及び/又はイソシアネート成分(B)中に化合物(S)に由来するカルボキシル基を含有することにより、(A)及び/又は(B)と無機フィラー(C)との親和性が高くなり、硬化性ウレタン組成物中の無機フィラー(C)の分散性が良くなると推定される。また、硬化性ウレタン組成物中の無機フィラー(C)の分散性が良くなるため無機フィラー(C)の二次凝集物が少なくなり基材との密着面の平滑性が向上し、接着面積が大きくなり基材接着性が向上すると推定される。
【0009】
一般式(1)におけるX1及びX2は2価の水酸基含有化合物(水酸基を2個有する化合物を意味する)から1個の水酸基を除いた残基を表す。X1とX2はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
Yは芳香族テトラカルボン酸から全てのカルボキシル基を除いた残基を表し、Yの芳香環は炭素原子から構成され、その炭素原子にはカルボキシル基以外の置換基及び/又はハロゲン原子が結合していてもよい。
【0010】
化合物(S)としては、芳香族テトラカルボン酸二無水物1モルと2価の水酸基含有化合物2モルとのハーフエステル化により得られる2つのカルボシキル基と2つのエステル基とを有する化合物が含まれる。
前記ハーフエステル化物は、一般式(1)において、2つのカルボシキル基が左下と右下に配置され、2つのエステル基が左上と右上に配置されているものであるが、例えば2つのカルボシキル基が左下と右上に配置され、2つのエステル基が左上と右下に配置されているものである態様も存在する。本発明においてはその両者を区別しない。
【0011】
2価の水酸基含有化合物としては、炭素数2~20の2価アルコール、2価フェノール化合物及びこれらのアルキレンオキサイド(以下、AOと略記)付加物並びにポリエステルジオール等が挙げられる。2価の水酸基含有化合物は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0012】
炭素数2~20の2価アルコールとしては、炭素数2~20の2価アルコール[脂肪族ジオール(エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-又は1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール及び1,10-デカンジオール等)、脂環式ジオール(シクロヘキサンジオール及びシクロヘキサンジメタノール等)及び芳香脂肪族ジオール[1,4-ビス(ヒドロキシエチル)ベンゼン等]等が挙げられる。
【0013】
2価フェノール化合物としては、2個の水酸基が芳香族環に結合したものであればどのようなものでもよく、例えば、カテコール、ヒドロキノン等のジヒドロキシベンゼン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等のビスフェノール類、ジヒドロキシナフタレン等の多環芳香族ジヒドロキシ化合物等が挙げられる。
【0014】
炭素数2~20の2価アルコール及び2価フェノール化合物に付加させるAOとしては、炭素数2~4のAO、例えば、エチレンオキサイド(以下、EOと略記)、1,2-プロピレンオキサイド(以下、POと略記)、1,3-プロピレンオキサイド、1,2-、1,3-又は2,3-ブチレンオキサイド及びテトラヒドロフラン(以下、THFと略記)等が挙げられる。
これらの内、硬化性ウレタン組成物中の無機フィラー(C)の分散性の観点から、EO、PO及びTHFが好ましい。
AOは1種を単独で用いても2種以上を併用してもよく、AOを2種以上併用する場合の付加方法としては、ブロック付加であってもランダム付加であってもよく、これらの併用であってもよい。
【0015】
ポリエステルジオールとしては、例えば縮合ポリエステルジオール、ポリラクトンジオール及びポリカーボネートジオールが挙げられる。
【0016】
縮合ポリエステルジオールとしては、前記炭素数2~20の2価アルコール及びこのAO付加物並びに/又は2価フェノール化合物のAO付加物と、ジカルボン酸(酸無水物及び炭素数1~4のアルキルエステル等)との重縮合物等が挙げられる。
【0017】
ジカルボン酸としては、具体的には、炭素数2~40又はそれ以上(好ましくは炭素数2~12)の飽和又は不飽和の脂肪族ジカルボン酸[シュウ酸、コハク酸、マロン酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバチン酸、ドデカンジカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸及びダイマー酸等];炭素数8~15の芳香族ジカルボン酸[テレフタル酸、イソフタル酸及びフタル酸等のジカルボン酸等);及びスルホ基含有ジカルボン酸[上記ジカルボン酸にスルホ基を導入してなるもの、例えばスルホコハク酸、スルホマロン酸、スルホグルタル酸、スルホアジピン酸及びスルホイソフタル酸及びそれらの塩(例えば金属塩、アンモニウム塩、アミン塩及び4級アンモニウム塩);並びに末端にカルボキシル基を有するポリマー等が挙げられる。
【0018】
末端にカルボキシル基を有するポリマーとしては、ポリエーテルジカルボン酸[例えば後述のMnが300未満の低分子ポリオール(a1)又は後述のポリエーテルポリオール(a21)等のポリオールのカルボキシメチルエーテル(アルカリの存在下にモノクロル酢酸を反応させて得られるもの等)];ポリアミド及び/又はポリエステルジカルボン酸[例えば上記ジカルボン酸を開始剤として炭素数4~15のラクタム(カプロラクタム、エナントラクタム、ラウロラクタム及びウンデカノラクタム等)又は炭素数4~15のラクトン(γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン及びε-カプロラクトン等)を開環重合させてなるポリラクタムジカルボン酸及びポリラクトンジカルボン酸]等が挙げられる。
【0019】
ポリラクトンジオールとしては、水、前記炭素数2~20の2価アルコール又はそのAO付加物を開始剤とする炭素数4~15のラクトン(γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン及びε-カプロラクトン等)の開環付加物等が挙げられる。
【0020】
ポリカーボネートジオールとしては、前記炭素数2~20の2価アルコール又はそのAO付加物を開始剤とするアルキレンカーボネートの開環付加/重縮合物並びに前記炭素数2~20の2価アルコール又はそのAO付加物とジフェニル又はジアルキルカーボネートの重縮合(エステル交換)物等が挙げられる。
【0021】
化合物(S)において、2価の水酸基含有化合物としては、硬化性ウレタン組成物中の無機フィラー(C)の分散性及び硬化物の基材接着性の観点から、好ましいのは炭素数2~20の2価アルコールのAO付加物、2価のフェノール化合物のAO付加物及びポリエステルジオールであり、更に好ましいのはポリ(オキシプロピレン)グリコール、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、ビスフェノールAのAO付加物及び炭素数2~6の2価アルコールと炭素数2~12のポリカルボン酸とからなるポリエステルジオール、ポリカーボネートジオールであり、特に好ましいのはポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、ビスフェノールAのAO付加物及び炭素数2~6の2価アルコールと炭素数2~12のジカルボン酸とからなるポリエステルジオール、ポリカーボネートジオール、最も好ましいのはポリカーボネートジオールである。
【0022】
化合物(S)において、2価の水酸基含有化合物の水酸基価は、硬化性ウレタン組成物中の無機フィラー(C)の分散性の観点から、好ましくは50~450mgKOH/g、更に好ましくは80~300mgKOH/gである。2価の水酸基含有化合物の水酸基価が上記範囲であると、化合物(S)中の水酸基がイソシアネート基と反応して生成する凝集力の高いウレタン基と、化合物(S)中のカルボキシル基とが離れて存在することができるため、硬化性ウレタン組成物中の無機フィラー(C)の分散性が良好になる傾向がある。
尚、本発明において、水酸基価はJIS K1557-1に準拠して測定される。
【0023】
化合物(S)において、一般式(1)中のYは、芳香族テトラカルボン酸からすべてのカルボキシル基を除いた残基を表す。Yの芳香環の環構造は炭素原子のみから構成され、その炭素原子にはカルボキシル基以外の置換基及び/又はハロゲン原子が結合していてもよい。
【0024】
カルボキシル基以外の置換基とは、アルキル基、ビニル基、アリル基、シクロアルキル基、アミノ基、ヒドロキシル基、ヒドロキシアミノ基、ニトロ基、チオール基、アリール基及びシアノ基等が挙げられる。
【0025】
化合物(S)としては、化合物(S)の製造しやすさの観点から、芳香族テトラカルボン酸二無水物1モルと前記2価の水酸基含有化合物2モルとのハーフエステル化により得られる2つのカルボシキル基と2つのエステル基とを有する化合物であることが好ましい。
芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、2個のカルボキシル基が芳香環の隣り合う炭素に結合し無水物基となっているものを2つ有する化合物であれば、1つの芳香環に無水物基を2つ有する化合物でも、2以上の芳香環を有し異なる芳香環に無水物基を1つずつ合計2つ有する化合物でもよく、炭素数10~30の芳香族テトラカルボン酸二無水物が含まれ、例えばピロメリット酸二無水物、ジブロモピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、4,4’-オキシビスフタル酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルメタンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、4,4’-(エチン-1,2-ジイル)ビスフタル酸二無水物、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ビスフタル酸二無水物、4,4’-(4,4’-イソプロピリデンジフェノキシ)ビスフタル酸二無水物、3,4’-又は4,4’-オキシビスフタル酸二無水物、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ビスフタル酸二無水物、9,9-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物及びビス(1,3-ジオキソ-1,3-ジヒドロイソベンゾフラン-5-カルボン酸)1,4-フェニレン二無水物等が挙げられる。
芳香族テトラカルボン酸二無水物は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0026】
芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、化合物(S)の製造のしやすさの観点から、好ましいのはピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物及び3,3’,4,4’-ジフェニルメタンテトラカルボン酸二無水物であり、更に好ましいのはピロメリット酸二無水物である。
芳香族テトラカルボン酸としては、硬化性ウレタン組成物中の無機フィラー(C)の分散性及び硬化物の基材接着性の観点から、好ましいのはピロメリット酸、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸及び3,3’,4,4’-ジフェニルメタンテトラカルボン酸であり、更に好ましいのはピロメリット酸である。
【0027】
化合物(S)の酸価は、20~180mgKOH/gが好ましく、更に好ましくは25~170mgKOH/g、特に好ましくは30~160mgKOH/gである。
ここにおける酸価は、JIS K0070:1992に準じて測定される値である。
化合物(S)の酸価が20mgKOH/g以上であると硬化物の基材接着性が良好である傾向があり、180mgKOH/g以下であると硬化性ウレタン組成物中の無機フィラー(C)の分散性が良好である傾向がある。
【0028】
化合物(S)の水酸基価は、20~180mgKOH/gが好ましく、更に好ましくは25~170mgKOH/g、特に好ましくは30~160mgKOH/gである。
化合物(S)の水酸基価が20mgKOH/g以上であると、化合物(S)中のカルボキシル基の濃度が適度となり、硬化物の基材接着性が良好である傾向があり、180mgKOH/g以下であると、化合物(S)中の水酸基がイソシアネート基と反応して生成する凝集力の高いウレタン基と、化合物(S)中のカルボキシル基とが離れて存在することができるため、硬化性ウレタン組成物中の無機フィラー(C)の分散性が良好である傾向がある。
【0029】
化合物(S)の分子式量又は数平均分子量(Mn)は、硬化物の基材接着性及び硬化性ウレタン組成物中の無機フィラー(C)の分散性の観点から、好ましくは650~4500であり、更に好ましくは1000~4000である。
【0030】
化合物(S)中のYの濃度は、化合物(S)1g中の残基Yのミリモル数を意味し、硬化性ウレタン組成物中の無機フィラー(C)の分散性の観点から、好ましくは0.2~1.60mmol/g、更に好ましくは0.25~1.50mmol/g、特に好ましくは0.3~1.30mmol/gである。
Yの濃度は、例えば、化合物(S)の化学式量又は数平均分子量(Mn)を用いて、下記数式(1)から算出することができる。
Yの濃度=1/Mn (1)
【0031】
化合物(S)中のカルボニル基(-C(=O)-)濃度は、硬化性ウレタン組成物中の無機フィラー(C)の分散性の観点から、好ましくは0.8~6.4mmol/g、更に好ましくは1.0~6.0mmol/g、特に好ましくは1.2~4.2mmol/gである。本発明におけるカルボニル基濃度におけるカルボニル基とは、一般式(1)におけるYに結合するカルボニル基、即ちYを導入するために用いられる4価の芳香族ポリカルボン酸のカルボキシル基及びこれから誘導されるエステル基の官能基(X1及びX2)中のカルボニル基を意味する。化合物(S)中のカルボニル基(-C(=O)-)濃度は、下記数式(2)から算出することができる。
カルボニル基の濃度=Yの濃度×4 (2)
【0032】
<水酸基成分(A)>
水酸基成分(A)としては、前記化合物(S)及び前記化合物(S)以外のその他の水酸基成分(a)が挙げられる。
その他の水酸基成分(a)としては、数平均分子量(以下、Mnと略記)が300未満の低分子ポリオール(a1)、Mnが300以上の高分子ポリオール(a2)、前記(ii)の「化合物(S)を含む水酸基成分とイソシアネート成分とを反応させて得られる末端に水酸基を有するウレタンプレポリマー」(a3)、並びに(a3)以外の水酸基を有するウレタンプレポリマー(a4)等が挙げられる。水酸基成分(A)は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
上記その他の水酸基成分(a)のうち、好ましいのは(a2)であり、更に好ましいのはポリカーボネートジオールを含むものである。
【0033】
本発明における化合物(S)及び水酸基成分(A)のMnは、THFを溶媒として用いポリ(オキシエチレン)グリコールを標準物質としてゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定される。例えば以下の条件で測定することができる。
装置:「Waters Alliance 2695」[Waters社製]
カラム:「Guardcolumn Super H-L」(1本)、「TSKgel SuperH2000、TSKgel SuperH3000、TSKgel SuperH4000(いずれも東ソー株式会社製)を各1本連結したもの」
試料溶液:0.25重量%のテトラヒドロフラン溶液
溶液注入量:10μl
流量:0.6ml/分
測定温度:40℃
検出装置:屈折率検出器
基準物質:標準ポリエチレングリコール
【0034】
Mnが300未満の低分子ポリオール(a1)には、化学式量が300未満のポリオールも含まれ、具体的には、炭素数2~20の2価アルコール、炭素数3~20の3価~8価又はそれ以上の多価アルコール及び水酸基以外の官能基を有する炭素数5~20のポリオール等が挙げられる。
【0035】
炭素数2~20の2価アルコールとしては、前記化合物(S)における2価の水酸基含有化合物として例示したものと同様のものが挙げられる。
【0036】
炭素数3~20の3価~8価又はそれ以上の多価アルコールとしては、例えば(シクロ)アルカンポリオール及びそれらの分子内又は分子間脱水物[グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ジペンタエリスリトール、1,2,6-ヘキサントリオール、エリスリトール、シクロヘキサントリオール、マンニトール、キシリトール、ソルビタン、ジグリセリンその他のポリグリセリン等]、糖類及びその誘導体[蔗糖、グルコース、フラクトース、マンノース、ラクトース及びグリコシド(メチルグルコシド等)]、並びにN,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン等のアルキレンジアミンのAO付加物等が挙げられる。
【0037】
水酸基以外の官能基を有する炭素数5~20のポリオールとしては、例えばカルボキシル基、スルホ基又はこれらの塩等を有するポリオールが挙げられる。
【0038】
カルボキシル基を有するポリオールとしては、例えば炭素数5~20のポリヒドロキシカルボン酸[例えば3,5-ジヒドロキシ安息香酸、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)ブタン酸、2,2-ビス(2-ヒドロキシエチル)プロピオン酸、2,2-ビス(3-ヒドロキシプロピル)プロピオン酸、ビス(ヒドロキシメチル)酢酸、ビス(4-ヒドロキシフェニル)酢酸、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)酪酸、4,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ペンタン酸、酒石酸、N,N-ジヒドロキシエチルグリシン及びN,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-3-カルボキシ-プロピオンアミド]が挙げられる。
【0039】
スルホ基を有するポリオールとしては、例えば炭素数3~20のスルホ基を含有するジカルボン酸とポリオールの1種以上とを反応させて得られるポリエステルポリオール等が挙げられる。スルホ基を含有するジカルボン酸としては、例えば5-スルホイソフタル酸及び2-スルホテレフタル酸等が挙げられ、好ましいのは5-スルホイソフタル酸である。ポリオールとしては、炭素数2~12のアルキレングリコール(エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5-ペンタンジオール及び1,6-ヘキサンジオール等)等が挙げられる。エステル化の際のポリオールの水酸基とスルホ基を含有するジカルボン酸のカルボキシル基のモル比(OH/COOH)は、好ましくは1.1/1~5/1、更に好ましくは1.5/1~3/1である。
【0040】
上記カルボキシル基又はスルホ基が塩を形成する際の対イオンは特に限定されず、塩としては例えばアルカリ金属(ナトリウム及びカリウム)塩、アンモニウム塩、1級アミン(メチルアミン、エチルアミン及びブチルアミン等のアルキルアミン並びにモノエタノールアミン等のモノアルカノールアミン等)塩、2級アミン(ジメチルアミン、ジエチルアミン及びジブチルアミン等のジアルキルアミン並びにジエタノールアミン等のジアルカノールアミン等)塩、3級アミン(トリメチルアミン、トリエチルアミン及びトリブチルアミン等のトリアルキルアミン、トリエタノールアミン等のトリアルキルアミン並びにN-メチルジエタノールアミン等のアルキルジアルカノールアミン)塩及び第4級アンモニウ
ム塩(テトラアルキルアンモニウム等)塩である。
【0041】
Mnが300未満の低分子ポリオール(a1)のうち、反応性の観点から好ましいのは炭素数3~20の3価~8価又はそれ以上の多価アルコールであり、更に好ましいのはグリセリン、トリメチロールプロパン及びペンタエリスリトールである。
また、硬化物の基材接着性の観点から好ましいのは、水酸基以外の官能基を有する炭素数5~20のポリオールであり、更に好ましいのはカルボキシル基を含有する2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸及び2,2-ビス(ヒドロキシメチル)ブタン酸である。
【0042】
Mnが300以上の高分子ポリオール(a2)としては、ポリエーテルポリオール(a21)、ポリエステルポリオール(a22)及びその他のポリオール(a23)等が挙げられる。
【0043】
ポリエーテルポリオール(a21)としては、前記低分子ポリオール(a1)のAO付加物が挙げられ、例えばポリ(オキシアルキレン)グリコール[ポリ(オキシエチレン)グリコール、ポリ(オキシプロピレン)グリコール及びポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、ポリ(オキシ-3-メチルテトラメチレン)グリコール等]、共重合ポリ(オキシアルキレン)ジオール[EO/PO共重合ジオール、THF/EO共重合ジオール及びTHF/3-メチルテトラヒドロフラン共重合ジオール等(重量比は例えば1/9~9/1)]及びビスフェノール系化合物のAO付加物;3官能以上のポリエーテルポリオール、例えば3価以上の多価アルコールのAO付加物[グリセリンのAO付加物及びトリメチロールプロパンのAO付加物等];並びにこれらの1種以上をメチレンジクロライドでカップリングしたものが挙げられる。
【0044】
上記におけるビスフェノール系化合物としては例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールB、ビスフェノールE及びビスフェノールF等、詳しくは特開2008-126108等に記載されたものが挙げられる。
上記におけるAO付加モル数は、硬化性ウレタン組成物中の無機フィラー(C)の分散性の観点から、好ましくは2~100モル、更に好ましくは2~50モル、特に好ましくは2~30モルである。
尚、ビスフェノール系化合物のAO付加物の場合、AO付加モル数は、硬化性ウレタン組成物中の無機フィラー(C)の分散性の観点から好ましくは2~10モル、更に好ましくは2~6モル、特に好ましくは2~4モルである。
【0045】
ポリエステルポリオール(a22)としては、前記化合物(S)における2価の水酸基含有化合物として例示したもの、縮合ポリエステルジオール、ポリラクトンジオール及びポリカーボネートジオールに加えて、ヒマシ油系ポリオール等が挙げられる。
上記(a22)のうち、好ましいのはポリカーボネートジオールである。
【0046】
ヒマシ油系ポリオールとしては、ヒマシ油(リシノール酸トリグリセリド)、部分脱水ヒマシ油、部分アシル化ヒマシ油、水添ヒマシ油及びこれらの変性物[ポリエーテルポリオール(a21)若しくはMnが300未満の低分子ポリオール(a1)とヒマシ油、部分脱水ヒマシ油若しくは水添ヒマシ油とのエステル交換反応により得られるエステルポリオール、及びポリエーテルポリオール(a21)若しくはMnが300未満の低分子ポリオール(a1)とヒマシ油脂肪酸若しくは水添ヒマシ油脂肪酸とのエステル化反応により得られるエステル等]等が挙げられる。
【0047】
その他のポリオール(a23)としては、ポリマーポリオール、ポリオレフィンポリオール、ポリアルカジエンポリオール、アクリルポリオール及びアミノ基含有ポリオール等が挙げられる。
【0048】
ポリマーポリオールとしては、1種以上のポリオール中で炭素数3~24のビニル単量体(例えばスチレン、アクリロニトリル)をラジカル重合開始剤の存在下で重合させた重合体粒子を分散安定化させてなるポリオール(重合体含量は例えば5~30重量%)が挙げられる。
ポリオレフィンポリオールとしては、ポリイソブテンポリオール等が挙げられる。
ポリアルカジエンポリオールとしては、ポリイソプレンポリオール、ポリブタジエンポリオール、水添化ポリイソプレンポリオール及び水添化ポリブタジエンポリオール等が挙げられる。
【0049】
アクリルポリオールとしては、(メタ)アクリル酸アルキル(アルキルの炭素数1~30)エステル[ブチル(メタ)アクリレート等]と水酸基含有アクリルモノマー[ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等]との共重合体等が挙げられる。
アミノ基含有ポリオールとしては、例えばポリ(n=2~6)アルキレン(炭素数2~6)ポリ(n=3~7)アミンのAO付加物[N,N,N’,N’,N”-ペンタキス(2-ヒドロキシプロピル)-ジエチレントリアミン等]が挙げられる。
【0050】
前記(ii)の「化合物(S)を含む水酸基成分とイソシアネート成分とを反応させて得られる末端に水酸基を有するウレタンプレポリマー」(a3)としては、化合物(S)と、必要により用いられる(a1)及び(a2)からなる群から選ばれる少なくとも1種と、後述のイソシアネート(b1)、(b2)、(b3)及びイソシアネート変性体(b4)からなる群から選ばれる少なくとも1種とを反応させて得られる末端に水酸基を有するウレタンプレポリマー等が挙げられる。
(a3)以外の水酸基を有するウレタンプレポリマー(a4)としては、(a1)及び(a2)からなる群から選ばれる少なくとも1種と、後述のイソシアネート(b1)、(b2)、(b3)及びイソシアネート変性体(b4)からなる群から選ばれる少なくとも1種とを反応させて得られる末端に水酸基を有するウレタンプレポリマーが挙げられる。
【0051】
末端に水酸基を有するプレポリマー(a3)及び(a4)を製造する際の後述のイソシアネート(b1)、(b2)、(b3)及びイソシアネート変性体(b4)からなる群から選ばれる少なくとも1種のイソシアネート成分中のイソシアネート基と、化合物(S)、(a1)及び(a2)からなる群から選ばれる少なくとも1種の水酸基成分中の水酸基とのモル比(NCO/水酸基)は、硬化性ウレタン組成物中の無機フィラー(C)の分散性及び硬化物の基材接着性の観点から、好ましくは0.25/1~0.99/1、更に好ましくは0.5/1~0.95/1、特に好ましくは0.6/1~0.9/1、最も好ましくは0.7/1~0.85/1である。
【0052】
(a3)及び(a4)の数平均分子量は、硬化物の基材接着性及び硬化性ウレタン組成物中の無機フィラー(C)の分散性の観点から、1,500~100,000が好ましく、更に好ましくは2,000~50,000である。
【0053】
(a3)及び(a4)の水酸基価は、硬化物の基材接着性の観点から、1~75mgKOH/gが好ましく、更に好ましくは2~60mgKOH/gである。
【0054】
本発明において、水酸基成分(A)のモル平均官能基数は、硬化性の観点から、2~6又はそれ以上が好ましく、更に好ましくは2~5、特に好ましくは2~4、最も好ましくは2~3である。
【0055】
<イソシアネート成分(B)>
本発明におけるイソシアネート成分(B)としては、炭素数(NCO基中の炭素を除く、以下同様)2~18の脂肪族イソシアネート(b1)、炭素数8~15の芳香脂肪族イソシアネート(b2)、炭素数6~20の芳香族イソシアネート(b3)、これらのイソシアヌレート基、ウレトイミン基、アロファネート基、ビウレット基、ウレトイミン基、カルボジイミド基及び/又はウレトジオン基を有するイソシアネート変性体(b4)、前記(iii)の「化合物(S)を含む水酸基成分とイソシアネート成分とを反応させて得られる末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー」(b5)、前記(b5)以外のイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(b6)等が挙げられる。イソシアネート成分(B)は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0056】
炭素数2~18の脂肪族イソシアネート(b1)としては、エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ヘプタメチレンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,2,4-又は2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2,6-ジイソシアナトメチルカプロエート、2,6-ジイソシアナトエチルカプロエート、ビス(2-イソシアナトエチル)フマレート、ビス(2-イソシアナトエチル)カーボネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート(水添MDI)、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、ビス(2-イソシアナトエチル)-4-シクロヘキシレン-1,2-ジカルボキシレート及び2,5-又は2,6-ノルボルナンジイソシアネート等が挙げられる。
【0057】
炭素数8~15の芳香脂肪族イソシアネート(b2)としては、m-又はp-キシリレンジイソシアネート(XDI)、ジエチルベンゼンジイソシアネート及びα,α,α’,α’-テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)等が挙げられる。
【0058】
炭素数6~20の芳香族イソシアネート(b3)としては、1,3-又は1,4-フェニレンジイソシアネート、2,4-又は2,6-トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4’-又は2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、m-又はp-イソシアナトフェニルスルホニルイソシアネート、4,4’-ジイソシアナトビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジイソシアナトビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジイソシアナトジフェニルメタン及び1,5-ナフチレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0059】
イソシアヌレート基、ウレトイミン基、アロファネート基、ビウレット基、ウレトイミン基、カルボジイミド基及び/又はウレトジオン基を有するイソシアネート変性体(b4)としては、MDIのウレトイミン基を有する変成体、HDIのビウレット基を有する変性体及びHDIのイソシアヌレート基を有する変性体等が挙げられる。
【0060】
前記(iii)の「化合物(S)を含む水酸基成分とイソシアネート成分とを反応させて得られる末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー」(b5)は、前記化合物(S)と、必要により用いられる低分子ポリオール(a1)及び高分子ポリオール(a2)からなる群から選ばれる少なくとも1種と、過剰のイソシアネート(b1)、(b2)、(b3)及びイソシアネート変性体(b4)からなる群から選ばれる少なくとも1種とを反応させることにより得られる末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーが挙げられる。
【0061】
前記(b5)以外のイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(b6)は、低分子ポリオール(a1)及び高分子ポリオール(a2)からなる群から選ばれる少なくとも1種と、過剰のイソシアネート(b1)、(b2)、(b3)及びイソシアネート変性体(b4)からなる群から選ばれる少なくとも1種とを反応させることにより得られる末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーが挙げられる。
【0062】
(b6)において、(a1)及び(a2)としては、ウレタンプレポリマーの生産性及び硬化物の基材接着性の観点から、水酸基当量(水酸基1つ当りの分子量、以下同じ)が好ましくは1,000以下、更に好ましくは30~500のポリオールを用いることが好ましい。
【0063】
ウレタンプレポリマー(b6)の具体例としては、例えばグリセリンモノ(メタ)アクリレート(1モル)の水添MDI(2モル)付加体、ペンタエリスリトール(1モル)のTDI(4モル)付加体、トリメチロールプロパン(1モル)のHDI(3モル)又はTDI(3モル)付加体、ビスフェノールAのAO2モル付加物(1モル)の水添MDI(2モル)付加体及びポリ(オキシプロピレン)グリコール(1モル)のMDI(2モル)付加体等が挙げられる。
【0064】
本発明において、イソシアネート成分(B)として、硬化性ウレタン組成物の凝集力の観点から、3~8価の多価アルコールとイソシアネート(b1)、(b2)及び(b3)からなる群より選ばれる少なくとも1種との反応物であるイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを含有することが好ましい。
3~8価の多価アルコールとイソシアネート(b1)、(b2)及び(b3)からなる群より選ばれる少なくとも1種との反応物であるイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを含有すると、硬化性ウレタン組成物の硬化後の架橋度が高くなり、硬化物の凝集力が高くなる傾向があるため、基材塗工後の接着力が良好になる傾向がある。
【0065】
末端に水酸基を有するウレタンプレポリマー(a3)及び(a4)並びに末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(b5)及び(b6)の製造方法としては、既知のウレタンの製造方法が使用でき、例えば溶剤(トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジメチルホルムアミド、アセトン、メチルエチルケトン及びテトラヒドロフラン等)の存在下又は非存在下で、必要な水酸基成分とイソシアネート成分とを反応させる方法が挙げられる。
【0066】
反応には、公知の反応装置(撹拌機を備えた混合槽、スタティックミキサー等)が使用でき、反応温度は、反応性及び熱劣化抑制の観点から好ましくは10~160℃、更に好ましくは25~120℃であり、安定性の観点から気相部を窒素で置換するのが好ましい。
【0067】
本発明において、イソシアネート成分(B)の平均官能基数は、硬化性の観点から、2~6又はそれ以上であることが好ましく、更に好ましくは2~5、特に好ましくは2~4である。
【0068】
イソシアネート成分(B)のNCO当量(NCO基1つ当りの分子量、以下同じ)は、硬化物の基材接着性の観点から、1000以下が好ましく、更に好ましくは500以下、特に好ましくは300以下である。
また、イソシアネート成分(B)中のイソシアネート基含量(イソシアネート成分(B)中に含まれるイソシアネート基の重量割合、以下同じ)は、硬化物の基材接着性の観点から、好ましくは0.5~50重量%、更に好ましくは1~35重量%、特に好ましくは3~30重量%、とりわけ好ましくは4~25重量%、最も好ましくは12~24重量%である。
【0069】
<無機フィラー(C)>
本発明の硬化性ウレタン組成物は、水酸基成分(A)、イソシアネート成分(B)及び無機フィラー(C)を含有する。
無機フィラー(C)としては、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、フライアッシュ、脱水汚泥、天然シリカ、合成シリカ、カオリン、クレー、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、アルミナ、水酸化マグネシウム、タルク、マイカ、ハイドロタルサイト、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、焼成タルク、ウォラストナイト、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、燐酸マグネシウム、セピオライト、ゾノライト、ホウ酸アルミニウム、シリカバルーン、ガラスフレーク、ガラスバルーン、シリカ、製鉄スラグ、銅、鉄、酸化鉄、カーボンブラック、センダスト、アルニコ磁石、各種フェライト等の磁性粉、セメント、ガラス粉末、珪藻土、三酸化アンチモン、マグネシウムオキシサルフェイト、水和アルミニウム、水和石膏、ミョウバン、無機顔料(アルミナホワイト、グラファイト、亜鉛華、鉛白、ホワイトカーボン、モリブデンホワイト、リサージ、リトポン、バライト、カドミウム赤、カドミウム水銀赤、ベンガラ、モリブデン赤、鉛丹、黄鉛、カドミウム黄、バリウム黄、ストロンチウム黄、チタン黄、チタンブラック、酸化クロム緑、酸化コバルト、コバルト緑、コバルト・クロム緑、群青、紺青、コバルト青、セルリアン青、マンガン紫、コバルト紫等)等が挙げられる。
無機フィラー(C)の体積平均粒径は、好ましくは0.01~20μmである。
これらは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
これらのうち、硬化性ウレタン組成物の硬化性の観点から、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、アルミナ、タルク、ウォラストナイト、シリカ及び酸化鉄が好ましい。
【0070】
硬化性ウレタン組成物中の無機フィラー(C)の含有量は、硬化性ウレタン組成物の重量を基準として、硬化性ウレタン組成物の基材への塗工性の観点から、好ましくは50~95重量%、更に好ましくは55~90重量%、特に好ましくは60~85重量%である。
硬化性ウレタン組成物中の無機フィラー(C)の重量と化合物(S)の重量(前記(ii)、(iii)の場合における構成単量体として含有するものを含む)との重量比率(無機フィラー/化合物(S))は、硬化性ウレタン組成物中の無機フィラー(C)の分散性の観点から、2~90が好ましく、更に好ましくは3~85である。
【0071】
<硬化性ウレタン組成物>
本発明の硬化性ウレタン組成物は、水酸基成分(A)、イソシアネート成分(B)及び無機フィラー(C)を含有する硬化性ウレタン組成物であって、以下の(i)~(iii)のうち少なくとも1つを満たす硬化性ウレタン組成物である。
(i)前記(A)が下記一般式(1)で表される化合物(S)を含有する。
(ii)前記水酸基成分(A)が前記化合物(S)を含む水酸基成分とイソシアネート成分とを反応させて得られる満タンに水酸基を有するウレタンプレポリマーを含有する。
(iii)前記イソシアネート成分(B)が前記化合物(S)を含む水酸基成分とイソシアネート成分とを反応させて得られる末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを含有する。
本発明の硬化性ウレタン組成物は、無機フィラー(C)の分散のさせやすさ及び製造のしやすさの観点から、前記水酸基成分(A)を含有する主剤と、イソシアネート成分(B)を含有する硬化剤とからなる2液硬化性ウレタン組成物であり、主剤及び/又は硬化剤に無機フィラー(C)を含有するものであることが好ましい。
また、2液硬化性ウレタン組成物である場合、分散性の観点から、化合物(S)を含む(構成単量体として含有するものを含む)成分中に無機フィラー(C)を含有するものであることが好ましい。つまり、前記(i)及び/又は(ii)の場合は主剤中に無機フィラー(C)を含有することが好ましく、(iii)の場合は硬化剤中に無機フィラー(C)を含有することが好ましい。
【0072】
本発明の硬化性ウレタン組成物中には、水酸基成分及び/又は構成単量体として前記化合物(S)が含まれる。
硬化性ウレタン組成物中の化合物(S)の含有量(前記(ii)、(iii)の場合における構成単量体として含有するものを含む)は、水酸基成分(A)及びイソシアネート成分(B)の合計重量を基準として硬化性ウレタン組成物中の無機フィラー(C)の分散性の観点から、好ましくは0.1~50重量%、更に好ましくは0.5~30重量%、特に好ましくは1~20重量%である。
水酸基成分(A)中の化合物(S)の含有量(前記(ii)の場合における構成単量体として含有するものを含む)は、水酸基成分(A)の重量に基づいて、硬化性ウレタン組成物中の無機フィラー(C)の分散性の観点から、好ましくは1~99重量%、更に好ましくは5~70重量%、特に好ましくは10~60重量%である。
【0073】
硬化性ウレタン組成物中の化合物(S)に由来する前記一般式(1)におけるYの濃度は、前記水酸基成分(A)及び前記イソシアネート成分(B)の合計重量を基準として、硬化性ウレタン組成物中の無機フィラー(C)の分散性の観点から、0.01~0.8mmol/gが好ましく、更に好ましくは0.02~0.75mmol/gである。
硬化性ウレタン組成物中の化合物(S)に由来する前記一般式(1)におけるYの濃度は、硬化性ウレタン組成物中の無機フィラー(C)の分散性の観点から、硬化性ウレタン組成物の重量を基準として、0.005~0.4mmol/gが好ましく、更に好ましくは0.01~0.3mmol/gである。
Yの濃度は、硬化性ウレタン組成物を製造する際の仕込み量から算出することができる。
【0074】
前記水酸基成分(A)及び前記イソシアネート成分(B)の合計重量を基準とする酸価は、硬化性ウレタン組成物中の無機フィラー(C)の分散性の観点から、1.7~90mgKOH/gが好ましく、更に好ましくは2~60mgKOH/gである。
硬化性ウレタン組成物の酸価は、硬化性ウレタン組成物中の無機フィラー(C)の分散性の観点から、硬化性ウレタン組成物の重量を基準として、0.8~45mgKOH/gが好ましく、更に好ましくは1~30mgKOH/gである。
硬化性ウレタン組成物の酸価は、硬化性ウレタン組成物中のNCO含有量から算出される当量のモノアミンでイソシアネート基をつぶす(イソシアネート基にモノアミンを反応させてウレア基にする)以外はJIS K0070:1992に記載の方法に準じて測定することができる。
【0075】
硬化性ウレタン組成物において、イソシアネート成分(B)中のイソシアネート基と水酸基成分(A)中の水酸基とのモル比(NCO基/水酸基)は、好ましくは0.7/1~2/1、更に好ましくは0.8/1~1.5/1、特に好ましくは0.9/1~1.3/1、最も好ましくは1/1~1.2/1である。
【0076】
本発明の硬化性ウレタン組成物は、溶剤[例えば芳香族系溶剤(トルエン及びキシレン等)、エステル系溶剤(酢酸エチル及び酢酸ブチル等)、アミド系溶剤(ジメチルホルムアミド等)、ケトン系溶剤(アセトン及びメチルエチルケトン等)及びエーテル系溶剤(テトラヒドロフラン等)]を含有することができる。
【0077】
溶剤を含有することにより硬化性ウレタン組成物のハンドリング性が向上する。
溶剤の使用量は、水酸基成分(A)、イソシアネート成分(B)及び無機フィラー(C)の合計重量に基づいて、硬化性ウレタン組成物のハンドリング性及びレベリング性の観点から好ましくは80重量%以下、更に好ましくは10~50重量%である。
【0078】
本発明の硬化性ウレタン組成物は、硬化物の基材接着性向上のために、更に粘着性付与剤(E)を含有することができる。
【0079】
粘着性付与剤(E)としては、例えばテルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、フェノール樹脂、芳香族炭化水素変性テルペン樹脂、ロジン樹脂、変性ロジン樹脂、合成石油樹脂(脂肪族、芳香族又は脂環式合成石油樹脂等)、クマロン-インデン樹脂、キシレン樹脂、スチレン系樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、及びこれらの内の水素添加可能な不飽和二重結合を有するものの水素添加物等が挙げられる。粘着性付与剤は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
これらの内、接着性の観点から酸価及び/又は水酸基価を有するものが好ましく、ロジン樹脂、フェノール樹脂、テルペンフェノール樹脂、キシレン樹脂及びこれらの水素添加物が更に好ましく、テルペンフェノール樹脂及びその水素添加物が特に好ましい。
【0080】
粘着性付与剤(E)の酸価又は水酸基価(分子中に酸基と水酸基を共に有する場合は酸価と水酸基価の合計値)は、硬化性ウレタン組成物に用いる他のポリオール成分との相溶性の観点から、好ましくは10~400mgKOH/g、更に好ましくは20~300mgKOH/g、特に好ましくは50~250mgKOH/g、最も好ましくは100~220mgKOH/gである。
【0081】
粘着性付与剤(E)の使用量は、硬化性ウレタン組成物の場合は水酸基成分(A)、イソシアネート成分(B)及び無機フィラー(C)の合計重量に基づいて、硬化物の基材接着性及び耐熱性の観点から、好ましくは100重量%以下、更に好ましくは1~50重量%、特に好ましくは3~40重量%、とりわけ好ましくは5~35重量%、最も好ましくは10~30重量%である。
【0082】
本発明の硬化性ウレタン組成物は、硬化反応促進のため必要により一般的にウレタン化反応に用いられる触媒を含有することができる。触媒の具体例としては、例えば有機金属化合物[ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズラウレート、ビスマスカルボキシレート、ビスマスアルコキシド及びジカルボニル基を有する化合物とビスマスとのキレート化合物等]、無機金属化合物[酸化ビスマス、水酸化ビスマス、ハロゲン化ビスマス等];アミン[トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、ジアザビシクロウンデセン等]及びこれらの2種以上の併用が挙げられる。
触媒の使用量は特に限定はないが、水酸基成分(A)及びイソシアネート成分(B)の合計重量に基づいて、好ましくは0.0001~0.3重量%、更に好ましくは0.001~0.2重量%、特に好ましくは0.01~0.1重量%である。
【0083】
本発明の硬化性ウレタン組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲で、更に酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、充填剤及び顔料等の添加剤を含有することができる。
【0084】
酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール化合物〔トリエチレングリコール-ビス[3-(3-t-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリチル-テトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2-チオ-ジエチレンビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]等〕及び亜リン酸エステル化合物[トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、2,2-メチレンビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(2,6-ジ-t-ブチルフェニル)ペンタエリスリトール-ジ-ホスファイト、テトラキス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)4,4’-ビフェニレン-ジ-ホスホナイト等]が挙げられる。これらの酸化防止剤は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
酸化防止剤の使用量は、水酸基成分(A)、イソシアネート成分(B)及び無機フィラー(C)の合計重量に基づいて、酸化防止効果及び硬化物の基材接着性の観点から、好ましくは5重量%以下、更に好ましくは0.05~1重量%である。
【0085】
紫外線吸収剤としては、サリチル酸誘導体(サリチル酸フェニル、サリチル酸-P-オクチルフェニル、サリチル酸-P-第三ブチルフェニル等)、ベンゾフェノン化合物[2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシ-5-スルホベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-2’-カルボキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-5-スルホベンゾフェノン・トリヒドレート、2-ヒドロキシ-4-n-オクトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-オクタデシロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、4-ドデシロキシ-2-ヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-(2-ヒドロキシ-3-メタクリロキシ)プロポキシベンゾフェノン、ビス(2-メトキシ-4-ヒドロキシ-5-ベンゾイルフェニル)メタン等]、ベンゾトリアゾール化合物{2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチル-フェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-t-ブチル-フェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’-t-ブチル-5’-メチル-フェニル)-5-クロロベンゾトリアゾ-ル、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-t-ブチル-フェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-4’-n-オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-t-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-t-アミルフェニル)ベンゾトリアゾ―ル、2-[2’-ヒ
ドロキシ-3’-(3”,4”,5”,6”-テトラヒドロフタルイミドメチル)-5’-メチルフェニル]ベンゾトリアゾール、2,2-メチレンビス[4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール]等}、シアノアクリレート化合物(2-エチルヘキシル-2-シアノ-3,3’-ジフェニルアクリレート、エチル-2-シアノ-3,3’-ジフェニルアクリレート等)等が挙げられる。紫外線吸収剤は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
紫外線吸収剤の使用量は、水酸基成分(A)、イソシアネート成分(B)及び無機フィラー(C)の合計重量に基づいて、紫外線吸収効果及び硬化物の基材接着性の観点から、好ましくは5重量%以下、更に好ましくは0.1~1重量%である。
【0086】
可塑剤としては、炭化水素[プロセスオイル、液状ポリブタジエン、液状ポリイソブチレン、液状ポリイソプレン、流動パラフィン、塩素化パラフィン、パラフィンワックス、エチレンとα-オレフィン(炭素数3~20)の共重合(重量比99.9/0.1~0.1/99.9)オリゴマー(Mw5,000~100,000)、プロピレンとエチレンを除くα-オレフィン(炭素数4~20)の共重合オリゴマー(重量比99.9/0.1~0.1/99.9)オリゴマー(Mw5,000~100,000)];塩素化パラフィン;エステル〔フタル酸エステル[ジエチルフタレート(DEP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジ-2-エチルヘキシルフタレート(DOP)、ジデシルフタレート、ジラウリルフタレート、ジステアリルフタレート、ジイソノニルフタレート等]、アジピン酸エステル[ジ(2-エチルヘキシル)アジペート(DOA)、ジオクチルアジペート等]及びセバチン酸エステル(ジオクチルセバケート等)等〕;動植物油脂(リノール酸、リノレン酸等);及びこれらの内の水素添加可能な不飽和二重結合を有するものの水素添加物等が挙げられる。可塑剤は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
可塑剤の使用量は、水酸基成分(A)、イソシアネート成分(B)及び無機フィラー(C)の合計重量に基づいて、硬化物の基材接着性及び凝集力の観点から好ましくは100重量%以下、更に好ましくは0.5~30重量%である。
【0087】
顔料としては、有機顔料(シェラック、不溶性アゾ顔料、溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、フタロシアニンブルー、染色レーキ等)が挙げられる。上記顔料は、体積平均粒径が好ましくは0.01~5μm程度の微粒子であり、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
顔料の使用量は、水酸基成分(A)、イソシアネート成分(B)及び無機フィラー(C)の合計重量に基づいて、凝集力の観点から、好ましくは250重量%以下、更に好ましくは0.1~50重量%である。
【0088】
上記溶剤、粘着性付与剤(E)、触媒並びに酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、充填剤及び顔料等の添加剤は、主剤及び硬化剤のいずれに添加しても、主剤、硬化剤及び無機フィラー(C)の配合時に添加してもよいが、予め主剤に添加しておくことが好ましい。
【0089】
<硬化物>
本発明の硬化性ウレタン組成物の硬化物は、前記本発明の硬化性ウレタン組成物をウレタン化反応させて硬化した物である。
本発明の硬化性ウレタン組成物の硬化物のウレタン基濃度は、硬化性ウレタン組成物中に含まれる前記水酸基成分(A)及び前記イソシアネート成分(B)の合計重量を基準として、硬化物の基材接着性の観点から、好ましくは0.02~4.5mmol/g、更に好ましくは0.03~4.3mmol/g、特に好ましくは0.04~4.0mmol/gである。
本発明の硬化性ウレタン組成物の硬化物のウレタン基濃度は、硬化物の基材接着性の観点から、硬化物の重量を基準として、好ましくは0.01~0.8mmol/g、更に好ましくは0.02~0.7mmol/g、特に好ましくは0.03~0.65mmol/gである。
本発明の硬化性ウレタン組成物の硬化物のウレア基濃度は、硬化性ウレタン組成物中に含まれる前記水酸基成分(A)及び前記イソシアネート成分(B)の合計重量を基準として、硬化物の基材接着性の観点から、好ましくは0.02~1.6mmol/g、更に好ましくは0.03~1.5mmol/g、特に好ましくは0.04~1.4mmol/gである。
本発明の硬化性ウレタン組成物の硬化物のウレア基濃度は、硬化物の基材接着性の観点から、硬化物の重量を基準として、好ましくは0.01~0.40mmol/g、更に好ましくは0.03~0.37mmol/g、特に好ましくは0.05~0.35mmol/gである。
本発明の硬化性ウレタン組成物の硬化物のウレタン基及びウレア基の合計濃度は、硬化性ウレタン組成物中に含まれる前記水酸基成分(A)及び前記イソシアネート成分(B)の合計重量を基準として、硬化物の基材接着性の観点から、好ましくは0.04~6.1mmol/g、更に好ましくは0.06~5.8mmol/g、特に好ましくは0.08~5.4mmol/gである。
本発明の硬化性ウレタン組成物の硬化物のウレタン基及びウレア基の合計濃度は、硬化物の基材接着性の観点から、硬化物の重量を基準として、好ましくは0.02~1.2mmol/g、更に好ましくは0.05~1.07mmol/g、特に好ましくは0.08~1.00mmol/gである。
【0090】
本発明において、硬化性ウレタン組成物の硬化物中のウレタン樹脂の架橋点密度(硬化性ウレタン組成物中に含まれる前記水酸基成分(A)及び前記イソシアネート成分(B)の合計重量を基準とする架橋点のモル数)は、硬化物の基材接着性の観点から、0.05~1.0mmol/gが好ましく、更に好ましくは0.1~0.9mmol/gである。
架橋点密度とは、ウレタン樹脂中の架橋点のモル濃度を意味し、官能基数3以上の水酸基成分(A)及び官能基数3以上のイソシアネート成分(B)の官能基数及びウレタン樹脂中における合計モル濃度(mmol/g)を適切な範囲に設定することにより調整可能である。
架橋点密度は、下記数式(1)から求めることができる。
架橋点密度(mmol/g)={Σ(fa-2)×wa/ma}/W×1000 (1)
fa:ウレタン樹脂の原料として使用する化合物aの官能基数
wa:ウレタン樹脂の原料として使用する化合物aの重量(g)
ma:ウレタン樹脂の原料として使用する化合物aの分子量(g/mоl)
W:水酸基成分(A)及び前記イソシアネート成分(B)の合計重量(g)
【0091】
硬化温度は、硬化性ウレタン組成物の硬化性及び耐熱性の観点から、好ましくは10~160℃、更に好ましくは25~120℃である。
硬化温度における硬化性ウレタン組成物の粘度(主剤及び硬化剤を混合したものの粘度)は、成形性(厚塗りができ、硬化後に反り及びヒケ等の外観不良がないこと)及び塗工性の観点から、好ましくは0.01~100Pa・s、更に好ましくは0.02~50Pa・s、特に好ましくは0.03~10Pa・sである。
【0092】
本発明の硬化性ウレタン組成物は、注型成形、ロールコート、スリットコート等の手法を用いて用途に応じた様々な形態に成形することが出来る。形態としては、加工容易性の観点や用途範囲の広さの観点から、シートが好ましい。
シートの好ましい厚みは特性や用途によって異なるが、小型化、薄型化の要望の強い部材の場合には10~500μmと薄い方が好ましく、より好ましくは10~300μmである。
【0093】
上記シートの成形方法としては、硬化性ウレタン組成物を混練した後、直接Tダイから押し出す方法、ロールで圧延する方法、延伸する方法、硬化性ウレタン組成物を金型に充填した後に加圧プレスする方法、硬化性ウレタン組成物を溶液状態にした後にキャストしたり、他の樹脂や金属シート上にコーティングする方法などを用いることができる。
本発明の硬化性ウレタン組成物の硬化物からなるシートには、粘着剤をコーティングしたり、両面テープを貼り付けることにより、シート自体に粘着層を付与することができる。
【実施例0094】
以下、実施例により本発明を更に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0095】
製造例1 [化合物(S-1)の製造]
反応容器中にポリ(オキシプロピレン)グリコール[三洋化成工業(株)製「サンニックスPP-1000」:Mn=1000]1000重量部及び無水ピロメリット酸109重量部を仕込み、窒素雰囲気下、攪拌、混合して100±10℃で3時間反応させ酸無水物基部分のハーフエステル化を行い、無水ピロメリット酸1モルにポリ(オキシプロピレン)グリコールが2モル反応した化合物(S-1)を得た。
【0096】
製造例2 [化合物(S-2)の製造]
ポリ(オキシプロピレン)グリコール1000重量部をポリ(オキシテトラメチレン)グリコール[BASF製「PolyTHF650」:Mn=650]650重量部に変更する以外は製造例1と同様にして化合物(S-2)を得た。
【0097】
製造例3 [化合物(S-3)の製造]
ポリ(オキシプロピレン)グリコール1000重量部をポリエステルジオール[三洋化成工業(株)製「サンエスター4610」(ポリエチレンブチレンアジペート):Mn=1070]1070重量部に変更する以外は製造例1と同様にして化合物(S-3)を得た。
【0098】
製造例4 [化合物(S-4)の製造]
ポリ(オキシプロピレン)グリコール1000重量部をビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物[三洋化成工業(株)製「ニューポールBPE-40」:Mn=410]410重量部に変更する以外は製造例1と同様にして化合物(S-4)を得た。
【0099】
製造例5 [化合物(S-5)の製造]
ポリ(オキシプロピレン)グリコール1000重量部をポリテトラメチレングリコール[三菱化学(株)製「PTMG250」:Mn=250]250重量部に変更する以外は製造例1と同様にして化合物(S-5)を得た。
【0100】
製造例6 [化合物(S-6)の製造]
ポリ(オキシプロピレン)グリコール1000重量部をポリカーボネートジオール[旭化成(株)製「デュラノール T4671」:Mn=1000]1000重量部に変更する以外は製造例1と同様にして化合物(S-6)を得た。
【0101】
比較製造例1 [化合物(比S-1)の製造]
反応容器中にプロピレングリコールのPO/EOブロック付加物[三洋化成工業(株)製「サンニックスPL-910」:Mn=900、水酸基価=124.7]900重量部、無水トリメリット酸384重量部及びアルカリ触媒(N-エチルモルホリン)2.0重量部を仕込み、窒素雰囲気下、0.20MPa、100±10℃で5時間反応させ酸無水物基部分のハーフエステル化を行い、プロピレングリコールのPO/EOブロック付加物1モルに無水トリメリット酸が2モル反応したエステル化物を得た。続いてEO198重量部を100±10℃で、圧力が0.50MPa以下となるよう制御しながら、5時間かけて滴下した後、100±10℃で1時間熟成して、前記エステル化合物のカルボキシル基にEOを付加させた比較用の化合物(比S-1)を得た。
【0102】
製造例1~6、比較製造例1で得られた化合物(S-1)~(S-6)及び(比S-1)の物性値を表1に示す。
【0103】
【0104】
製造例11 [イソシアネート成分(b-1)の製造]
反応容器中にビスフェノールA・エチレンオキサイド付加物[三洋化成工業(株)製「ニューポールBPE-40」:Mn=410]170重量部及び4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート[東ソー(株)製「ミリオネートMT」、NCO含有量33.6重量%]320重量部を仕込み、窒素気流下、攪拌、混合して70~80℃で3時間反応させた後、カルボジイミド変性4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート[BASF INOACポリウレタン(株)製「ルプラネートMM-103」、NCO含有量29.5重量%]510重量部を仕込み、窒素気流下、攪拌、混合して、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(b-1)を得た。
【0105】
製造例12 [イソシアネート成分(b-2)の製造]
ビスフェノールA・エチレンオキサイド付加物をポリテトラメチレングリコール[BASF製「PolyTHF650」:Mn=650]260重量部に代え、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート[東ソー(株)製「ミリオネートMT」、NCO含有量33.6重量%]を310重量部に、カルボジイミド変性4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート[BASF INOACポリウレタン(株)製「ルプラネートMM-103」、NCO含有量29.5重量%]を430重量部に変える以外は製造例6と同様にして、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(b-2)を得た。
【0106】
製造例13 [イソシアネート成分(b-3)の製造]
反応容器中にポリテトラメチレングリコール[BASF製「PolyTHF650」:Mn=650]346重量部、4、4’-ジフェニルメタンジイソシアネートと4、2-ジフェニルメタンジイソシアネートの混合物[BASF INOAC ポリウレタン(株)製「モノメリックMDI-MI」、NCO含有量33.6重量%]654重量部を仕込み、窒素気流下、攪拌、混合して末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(b-3)を得た。
【0107】
製造例14 [イソシアネート成分(b-4)の製造]
反応容器中にポリ(オキシプロピレン)グリコール[三洋化成工業(株)製「PP-1000」」:Mn=1000]590重量部、(S-1)235重量部及びヘキサメチレンジイソシアネート[旭化成(株)製「デュラネート50M」、NCO含有量50.0重量%]175重量部を仕込み、窒素気流下、攪拌、混合して70~80℃で10時間反応して、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(b-4)を得た。
【0108】
製造例15 [イソシアネート成分(b-5)の製造]
反応容器中にポリテトラメチレングリコール[三菱化学(株)製「PTMG1000」:Mn=1000]550重量部、(S-2)220重量部及びイソホロンジイソシアネート[住化コベストロウレタン(株)「DESMODUR I」、NCO含有量37.8重量%]230重量部を仕込み、窒素気流下、攪拌、混合して70~80℃で10時間反応して、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(b-5)を得た。
【0109】
製造例16 [イソシアネート成分(b-6)の製造]
反応容器中にひまし油系ポリオール[豊国製油(株)製「ELA-DR」:Mn=950、水酸基平均3官能]484重量部、4、4’-ジフェニルメタンジイソシアネートと4、2-ジフェニルメタンジイソシアネートの混合物[BASF INOAC ポリウレタン(株)製「モノメリックMDI-MI」、NCO含有量33.6重量%]516重量部を仕込み、窒素気流下、攪拌、混合して末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(b-6)を得た。
【0110】
製造例17 [水酸基成分(a-1)の製造]
反応容器中にポリエステルジオール[三洋化成工業(株)製「サンエスター4610」:Mn=1,070]412重量部、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート[東ソー(株)製「ミリオネートMT」、NCO含有量33.6重量%]88重量部を仕込み、窒素気流下、撹拌、混合して60~70℃で6時間反応させ、末端に水酸基を有するウレタンプレポリマー(a-1)を得た。
【0111】
製造例18 [水酸基成分(a-2)の製造]
反応容器中にポリ(オキシプロピレン)グリコール[三洋化成工業(株)製「PP-1000」」:Mn=1000]500重量部、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート[東ソー(株)製「ミリオネートMT」、NCO含有量33.6重量%]112重量部を仕込み、窒素気流下、攪拌、混合して60~70℃で6時間反応させ、末端に水酸基を有するウレタンプレポリマー(a-2)を得た。
【0112】
製造例19 [水酸基成分(a-3)の製造]
反応容器中にポリテトラメチレングリコール[三菱化学(株)製「PTMG1000」:Mn=1000]273重量部、ポリテトラメチレングリコール[BASF製「PolyTHF650」:Mn=650]60重量部、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物[三洋化成工業(株)製「ニューポールBPE-20T」:Mn=320]305重量部、化合物(S-2)140重量部、ヘキサメチレンジイソシアネート[旭化成(株)製「デュラネート50M」、NCO含有量50.0重量%]222重量部を仕込み、窒素気流下、攪拌、混合して80~90℃で6時間反応させ、末端に水酸基を有するウレタンプレポリマー(a-3)を得た。
【0113】
製造例20 [水酸基成分(a-4)の製造]
反応容器中にポリテトラメチレングリコール[BASF製「PolyTHF650」:Mn=650]748重量部、(S-2)92重量部及びイソホロンジイソシアネート[住化コベストロウレタン(株)「DESMODUR I」、NCO含有量37.8重量%]160重量部を仕込み、窒素気流下、攪拌、混合して80~90℃で5時間反応させ、末端に水酸基を有するウレタンプレポリマー(a-4)を得た。
【0114】
製造例21 [水酸基成分(a-5)の製造]
反応容器中にポリ(オキシプロピレン)グリコール[三洋化成工業(株)製「PP-1000」」:Mn=1000]650重量部、(S-4)260重量部及びヘキサメチレンジイソシアネート[旭化成(株)製「デュラネート50M」、NCO含有量50.0重量%]90重量部を仕込み、窒素気流下、攪拌、混合して70~80℃で10時間反応させ、末端に水酸基を有するウレタンプレポリマー(a-5)を得た。
【0115】
製造例22 [水酸基成分(a-6)の製造]
反応容器中にポリテトラメチレングリコール[三菱化学(株)製「PTMG1000」:Mn=1000]466重量部、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物[三洋化成工業(株)製「ニューポールBPE-40」:Mn=410]186重量部、(S-1)140重量部及びイソホロンジイソシアネート[住化コベストロウレタン(株)「DESMODUR I」、NCO含有量37.8重量%]208重量部を仕込み、窒素気流下、攪拌、混合して80~90℃で8時間反応させ、末端に水酸基を有するウレタンプレポリマー(a-6)を得た。
【0116】
ウレタンプレポリマー(b-1)~(b-6)及び(a-1)~(a-6)のイソシアネート含有量、水酸基価、酸価及びMnは下記表2の通りである。
【0117】
【0118】
実施例1~11、13~17、20~27及び比較例1~4
表3又は4に示す部数の各成分を用いて、水酸基成分(A)と無機フィラー(C)とを混合して主剤とし、イソシアネート成分(B)を硬化剤として、2液硬化性ウレタン組成物(Y1)~(Y11)、(Y13)~(Y17)、(Y20)~(Y27)及び(比Y1)~(比Y4)を得た。得られた2液硬化性ウレタン組成物(Y1)~(Y11)、(Y13)~(Y17)、(Y20)~(Y27)及び(比Y1)~(比Y4)の主剤及び硬化剤を、表3又は4に示す量で、プラネタリーミキサーを用いて混合して硬化性ウレタン組成物を得た。
【0119】
実施例18~19
表4に示す部数の各成分を用いて、イソシアネート成分(B)と無機フィラー(C)とを混合して硬化剤とし、水酸基成分(A)を主剤として、2液硬化性ウレタン組成物(Y18)~(Y19)を得た。得られた2液硬化性ウレタン組成物(Y18)~(Y19)の主剤及び硬化剤を、表4に示す量で、プラネタリーミキサーを用いて混合して硬化性ウレタン組成物を得た。
【0120】
実施例12
表3に示す部数の各成分を用いて、半量の無機フィラーと水酸基成分(A)とを混合して主剤とし、半量の無機フィラーとイソシアネート成分(B)とを混合して硬化剤として、2液硬化性ウレタン組成物(Y12)を得た。得られた2液硬化性ウレタン組成物(Y12)の主剤及び硬化剤を、表3に示す量で、プラネタリーミキサーを用いて混合して硬化性ウレタン組成物を得た。
【0121】
【0122】
【0123】
尚、表における各成分の詳細は以下の通りである。
・(S-1)~(S-6)及び(比S-1):製造例1~6、比較製造例1で得られた化合物
・(a-1)~(a-6):製造例17~22で得られた末端水酸基を有するウレタンプレポリマー
・(a-7):ポリエーテルジオール[三洋化成工業(株)製「サンニックスPP-1000」:Mn=1000]
・(a-8):ポリテトラメチレングリコール[BASF製「PolyTHF650」:Mn=650]
・(a-9):ポリエステルジオール[三洋化成工業(株)製「サンエスター4610」:Mn=1070]
・(a-10):ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物[三洋化成工業(株)製「ニューポールBPE-40」:Mn=410]
・(a-11):ポリエーテルポリオール[三洋化成工業(株)製「サンニックスGP-250」:Mn=250、水酸基平均3官能]
・(a-12):ポリエーテルポリオール[三洋化成工業(株)製「ニューポールNP-300」:Mn=300、水酸基平均4官能]
・(a-13):ポリエーテルポリオール[三洋化成工業(株)製「サンニックスSP-750」:Mn=750、水酸基平均6官能]
・(a-14):ポリカーボネートジオール[旭化成(株)製「デュラノール G4672」:Mn=2000]
・(a-15):ポリカーボネートジオール[旭化成(株)製「デュラノール T4671」:Mn=1000]
・(a-16):ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物[三洋化成工業(株)製「ニューポールBPE-20T」:Mn=320]
【0124】
・(b-1)~(b-6):製造例11~16で得られた末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー
・(b-7):イソシアヌレート(ヘキサメチレンジイソシアネート3量体化合物)[旭化成(株)製「デュラネートTPA-100」、イソシアネート基平均3官能]
・(b-8):イソホロンジイソシアネート[Evonik製「ベスタナート IPDI」、イソシアネート基平均2官能]
・(b-9):ヘキサメチレンジイソシアネート[旭化成(株)製「デュラネート50M」、イソシアネート基平均2官能]
・(b-10):4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート[東ソー(株)製「ミリオネート MT」、イソシアネート基平均2官能]
・(C-1):炭酸カルシウム[備北粉化工業(株)製「ライトンA」平均粒子径:1.8μm]
・(C-2):アルミナ[アドマテックス製「アドマファイン AO-509」粒径:7~13μm]
・(C-3):酸化鉄[ナカライテスク(株)製「酸化鉄(III)」]
【0125】
(1)硬化性ウレタン組成物の硬化物の機械物性
実施例又は比較例で得た硬化性ウレタン組成物を、それぞれ離型箱(縦20cm×横10cm×深さ2.5cm)に硬化後の厚みが2mmとなるように流し込み、100℃の循風乾燥機に10時間乾燥した後、50℃のインキュベーターで3日養生後、ダンベルを作成した。
作成したダンベルを用いて、JIS K7311に準拠して、引張強度を測定し、その値を表3~4に示す。引張強度の数値が大きいほど無機フィラーの分散性が良く(A)及び(B)の硬化物と無機フィラー(C)との界面密着性が高いことを意味する。
【0126】
(2)基材接着力の測定方法
実施例又は比較例で得た硬化性ウレタン組成物を、それぞれPETフィルム(膜厚50μm)に硬化後の厚みが50μmとなるようにアプリケーターを用いて塗工し、100℃の循風乾燥機で5分乾燥した後、ロールを用いてPETフィルムを貼り合わせて、50℃のインキュベーターで3日間養生し、ラミネートフィルムを得た。
ラミネートフィルムを200mm×25mmの大きさに裁断し、引張試験機を用い、23℃で引っ張り速度300mm/分の条件でT型剥離強度(単位:N/25mm)を測定した。測定は5つの試料について行い、その平均値を表3~4に示す。
【0127】
(3)無機フィラーの分散性の評価方法
(2)において、PETフィルム(膜厚50μm)に硬化後の厚みが50μmとなるようにアプリケーターを用いて塗工した後の外観を観察し、無機フィラーの分散性を以下の評価水準で評価した。結果を表3~4に示す。
<評価水準>
〇:塗工面にかすれが発生せず、無機フィラーの浮きもない。
△:塗工面にかすれがわずかに発生し、無機フィラーの浮きがある。
×:塗工面にかすれが発生し、無機フィラーの浮きが目立つ。
【0128】
表3~4の結果から、硬化性ウレタン組成物の硬化物中に化合物(S)を構成単量体として含む実施例1~27の評価結果は、硬化物の機械物性が高く、基材接着性に優れており、無機フィラーの分散性が高いことが分かる。
一方、硬化性ウレタン組成物の硬化物中に化合物(S)を構成単量体として含まない比較例1~4は、無機フィラーの分散性が悪く、硬化物の機械物性も低く、比較例1~2は基材接着性も低くなることが分かる。特に、化合物(S)を構成単量体として含む実施例10又は19と、それ以外の条件はほぼ同じ比較例1又は2とを比較すると、比較例1及び2は機械物性、基材接着性及び無機フィラーの分散性の全てにおいて劣っていることが分かる。また、実施例11と比較例3との比較から、化合物(S)を用いずにウレタン基とウレア基の合計濃度を高くすることで基材接着性は高くできるものの、無機フィラーの分散性が極めて低くなることがわかる。さらに、芳香族テトラカルボン酸の全てのカルボキシル基が反応した化合物(比S-1)を用いた比較例4と、化合物(S)を構成単量体として含む実施例10との比較から、化合物(比S-1)を用いることで基材接着性は高くすることができるものの、無機フィラーの分散性が極めて劣ることが分かる。
本発明の硬化性ウレタン組成物は、無機フィラーの分散性が良好であり、硬化性ウレタン組成物の硬化物は基材接着性が優れるので、無機フィラーの特性を有するバインダー、粘接着剤、封止材、塗料の用途(例えば、シーリング材、電磁波シールド用バインダー、電磁波吸収シート用バインダー、放熱ギャップフィラー、放熱粘着剤、遮熱塗料、導電性塗料等)に有用である。