(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022108272
(43)【公開日】2022-07-25
(54)【発明の名称】眼科用デバイスのための組成物
(51)【国際特許分類】
A61L 12/08 20060101AFI20220715BHJP
A61L 101/02 20060101ALN20220715BHJP
A61L 101/16 20060101ALN20220715BHJP
【FI】
A61L12/08
A61L101:02
A61L101:16
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022002101
(22)【出願日】2022-01-11
(31)【優先権主張番号】63/136,370
(32)【優先日】2021-01-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】510294139
【氏名又は名称】ジョンソン・アンド・ジョンソン・ビジョン・ケア・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Johnson & Johnson Vision Care, Inc.
【住所又は居所原語表記】7500 Centurion Parkway, Jacksonville, FL 32256, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】フランク・ニーリー
(72)【発明者】
【氏名】ドナルド・リーデラー
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー・ヴェグジン
【テーマコード(参考)】
4C058
【Fターム(参考)】
4C058AA09
4C058BB07
4C058CC05
4C058CC06
4C058JJ07
(57)【要約】
【課題】眼科用デバイスのための組成物を提供すること。
【解決手段】本発明は、ホウ酸塩及びリン酸塩含有組成物、とりわけ生理学的に適合可能なpH及び張度、並びに良好な静菌特性を実現するアイケア組成物に関する。本発明の組成物を使用する方法も開示されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.約0.1%w/v~約0.80%w/v以下のホウ酸塩化合物と、
b.約0.3%w/v~約0.9%w/vのリン酸塩化合物と、
c.眼科的に許容される担体と
を、含む組成物であって、
前記リン酸塩化合物の前記濃度が、重量基準で、前記ホウ酸塩化合物の量の少なくとも約1.5倍である、
組成物。
【請求項2】
約0.2%w/v~0.7%w/v以下のホウ酸塩化合物を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
約0.25%w/v~0.45%w/v以下のホウ酸塩化合物を含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
約0.25%w/v~0.4%w/v以下のホウ酸塩化合物を含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
約0.4%w/v~約0.85%w/vのリン酸塩化合物を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
約0.5%w/v~約0.8%w/vのリン酸塩化合物を含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記リン酸塩化合物が、重量基準で、前記ホウ酸塩化合物の量の少なくとも約2.5倍である、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記リン酸塩化合物対前記ホウ酸化合物の比が、重量基準で約1.5:1~約3:1である、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記リン酸塩化合物対前記ホウ酸化合物の比が、重量基準で約2:1~約3:1である、請求項7に記載の組成物。
【請求項10】
防腐剤を実質的に含まない、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
防腐剤を含まない、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
粘滑性ポリマーを更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記粘滑性ポリマーが、ポリエチレンオキシド(PEO)及びポリプロピレンオキシド(PPO)のブロックコポリマー、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリエーテル、ヒアルロン酸及びヒアルロン酸誘導体、キトサン、ポリソルベート、デキストラン、セルロース誘導体、非環式ポリアミド、それらの塩及びそれらの混合物から選択される、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
洗浄剤、湿潤剤、栄養剤、治療剤、金属イオン封鎖剤、粘度上昇剤、コンタクトレンズのコンディショニング剤、抗酸化剤など、及びそれらの混合物から選択される、追加の成分を更に含む、請求項1に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2021年1月12日に出願の、米国仮特許出願第63/136,370号の利益を主張するものであり、その出願全体があたかも本明細書に完全に記載されているかのごとく、参照により本明細書に組み込まれている。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、ホウ酸塩及びリン酸塩含有組成物、とりわけ生理学的に適合可能なpH及び張度、並びに良好な静菌特性を実現するアイケア組成物に関する。本発明の組成物を使用する方法も開示されている。
【背景技術】
【0003】
コンタクトレンズは、一般に、個別の包装製品として消費者に供給される。このようなコンタクトレンズを包装する単回単位容器は、保存液又は包装用溶液として緩衝食塩水又は脱イオン水を通常、使用する。
【0004】
このような包装用溶液は、少なくとも一部の場合、短期間の間、例えば、最終段階の包装製品の溶液調製及び殺菌の間、有害な又は望ましくない微生物の成長を促進しない環境を実現するべきである。更に、包装用溶液の少なくとも一部は、最も高い可能性として、一旦、コンタクトレンズが包装用溶液から取り出されて、眼に直接(すなわち、眼への直接施用によって)留置されると、コンタクトレンズに留まるので、包装用溶液は眼に優しくあるべきである。
【0005】
コンタクトレンズ(又は、他の眼科用デバイス)の包装用溶液は、コンタクトレンズ(又は、他の眼科用デバイス)を形成する材料とやはり適合可能であるべきである。
【0006】
眼科用デバイス向けの包装用溶液を調製する際の課題は、眼の快適さ、又は眼科用デバイスを形成する材料との溶液の適合性に負の影響を及ぼさない溶液の配合である。包装用溶液を含めた眼科用組成物の重要な成分の1つは、配合される緩衝液であり、緩衝液は、組成物のpHを許容される生理的範囲内に維持する一助となる。
【0007】
緩衝液としてホウ酸/ホウ酸塩を使用する利益は、低濃度で製剤に静菌特徴(殺菌特徴とは対照的に)をもたらすという二次的影響を伴って、製剤(緩衝液に添加される)のpHを生理的pH(約7)近くに維持する、その特有の能力に関する。このような「静的」特徴は、眼を刺激する可能性を低減する。しかし、ホウ酸/ホウ酸塩の濃度が低くなると、ある特性の微生物(例えば、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa))に対するその有効性をやはり犠牲にする傾向がある。
【0008】
リン酸塩もまた、緩衝液となる可能性があることが知られているが、不運なことに、リン酸塩もまた、微生物成長の既知の促進剤である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明者は、ホウ酸/ホウ酸塩及びリン酸緩衝液を適切に組み合わせることによって、適切に緩衝化された静菌性組成物(例えば、包装用溶液)が実現され得ることを発見した。より詳細には、このような緩衝溶液は、以下に詳述するとおり、ホウ酸/ホウ酸塩対リン酸緩衝液の特定の比で、ホウ酸/ホウ酸塩とリン酸塩とを組み合わせることによって実現することができる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、
a.約0.1%w/v~約0.80%w/v以下のホウ酸塩化合物と
b.約0.3%w/v~約0.9%w/vのリン酸塩化合物と
c.眼科的に許容される担体と
を含む、組成物であって、
リン酸塩化合物の濃度が、重量基準で、ホウ酸塩化合物の量の少なくとも約1.5倍である、
組成物に関する。
【0011】
本発明はまた、開示組成物の作製方法及び使用方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明のある種の組成物を接種して0、1及び2日目に存在する黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)の微生物コロニー形成単位(CFU)を示すグラフである。
【
図2】本発明のある種の組成物を接種して0、1及び2日目に存在する緑膿菌(Pseudomonas aeuroginosa)の微生物コロニー形成単位(CFU)を示すグラフである。
【
図3】本発明のある種の組成物を接種して0、1及び2日目に存在する大腸菌(Escherichia coli)の微生物コロニー形成単位(CFU)を示すグラフである。
【
図4】本発明のある種の組成物を接種して0、1及び2日目に存在する枯草菌(Bacillus subtilis)の微生物コロニー形成単位(CFU)を示すグラフである。
【
図5】本発明のある種の組成物を接種して0、1及び2日目に存在するネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)の微生物コロニー形成単位(CFU)を示すグラフである。
【
図6】本発明のある種の組成物を接種して0、1及び2日目に存在するカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)の微生物コロニー形成単位(CFU)を示すグラフである。
【
図7】本発明のある種の組成物を接種して0、1及び2日目に存在するアスペルギルス・ブラシリエンシス(Aspergillus brasiliensis)の微生物コロニー形成単位(CFU)を示すグラフである。
【
図8】本発明のある種の組成物を接種して0、1及び2日目に存在するフサリウム・ケラトプラスチクム(Fusarium keratoplasticum)の微生物コロニー形成単位(CFU)を示すグラフである。
【
図9】対照緩衝液に対して、各実施例緩衝液に及ぼす微生物減少率の比較を下に示すグラフ(チャート9)である。
【
図10】本発明のある特定の組成物を接種した1、2及び3日目に、緑膿菌のCFU/mLの回収数(PBS中では、0日目に1350CFU/mLの送達数)を示すグラフである。
【
図11】本発明のある特定の組成物を接種した1、2及び3日目における、緑膿菌の対数減少を示すグラフである。
【
図12】本発明のある特定の組成物を接種した3日目における、緑膿菌の減少数の割合を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
上に示したとおり、本発明は、眼科的に許容される担体としてホウ酸塩化合物及びリン酸塩化合物を含む組成物に関する。
【0014】
本組成物は、眼科用デバイスの保存に、又は眼科用デバイス向けの包装用溶液として、有用となり得る。
【0015】
本組成物は、眼の不快感の軽減などの、アイケアの利益のために眼への直接施用に有用となり得る。
【0016】
本発明の組成物及び方法は、本明細書に記載される本発明の工程、必須要素及び限定事項、並びに本明細書に記載されるいずれかの、追加的若しくは任意選択的成分、構成要素、若しくは限定事項を、包含することができ、それらからなることができ、又はそれらから本質的になることができる。本明細書で使用する場合、「含む(comprising)」という用語(及びその文法的変形)は、「有する(having)」又は「含む(including)」を包括する意味で用いられ、「のみからなる(consisting only of)」とする排他的な意味では用いられない。本明細書で使用する場合、「a」及び「the」という用語は、単数に加えて複数も包含すると理解される。
【0017】
特に指示がないかぎり、引用されるすべての文書は、関連する部分において、参考として本明細書に組み込まれているが、いずれの文献の引用も、それが本発明に関連する先行技術であることの容認として解釈されるべきではない。更に、参照により本明細書に組み込まれるすべての文書は、これらが本明細書と矛盾しない範囲においてのみ本明細書に組み込まれる。
【0018】
本明細書において開示されている本発明は、本明細書において具体的に開示されていない任意の化合物又は要素(又は、化合物群若しくは要素群)がなくても実施し得るものである。
【0019】
本明細書で使用する場合、「薬学的に許容される」は、生物学的に耐容性があり、他には、毒性、不適合性、不安定性、刺激、アレルギー反応などの過度の有害作用なく、眼及び眼の周辺組織に施用又は曝露するのに生物学的に好適であることを意味する。
【0020】
百分率、部及び比率はすべて、特に指定しないかぎり、本発明の組成物の総重量に基づいている。列挙された成分に関連するこのような重量はすべて活性レベルに基づいているので、特に指定しないかぎり、市販の物質に含まれることがある担体又は副産物を含まない。
【0021】
ホウ酸塩化合物
本明細書の組成物は、ホウ酸塩を含む。本発明で使用する場合、用語「ホウ酸塩」とは、ホウ酸、ホウ酸の塩、その他の薬学的に許容されるホウ酸塩、又はこれらの組合せを指す。好適なホウ酸塩には、以下に限定されないが、ホウ酸;ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウムなどのアルカリ金属塩;ホウ酸カルシウム、ホウ酸マグネシウムなどのアルカリ土類金属塩;ホウ酸マンガンなどの遷移金属塩;及びそれらの混合物などの薬学的に許容される塩が含まれる。
【0022】
ホウ酸塩化合物は、各場合において、本組成物全体の約0.1%、好ましくは約0.2%~、好ましくは約0.25%w/v~0.80%以下(又は約0.80%)、好ましくは0.7%(又は約0.7%)、好ましくは0.6%(又は約0.6%)、好ましくは0.5%(又は約0.5%)、好ましくは0.45%(又は約0.45%)、好ましくは0.4%(又は約0.4%)、好ましくは0.35%(又は約0.35%)、好ましくは0.3%(又は約0.3%)w/vの濃度で、組成物中に存在することができる。ホウ酸塩化合物は、本組成物全体の約0.1%w/v~0.40%(又は約0.40%)w/v以下、好ましくは約0.2%w/v~0.35%(又は約0.35%)w/v以下又は好ましくは約0.25%w/v~0.30%(又は約0.30%)w/v以下の濃度で、組成物中に存在することができる。
【0023】
リン酸塩化合物
本明細書の組成物は、リン酸塩化合物を含む。本発明で使用する場合、用語「リン酸塩」とは、リン酸、リン酸の塩、その他の薬学的に許容されるリン酸塩、又はこれらの組合せを指す。好適なリン酸塩は、1種以上のリン酸二水素塩、リン酸一水素塩などとして配合され得る。本組成物において有用なリン酸塩化合物の例には、アルカリ及び/又はアルカリ土類金属の薬学的に許容されるリン酸塩から選択されるものである。リン酸塩化合物は、1種又は複数のリン酸一水素ナトリウム(Na2HPO4)、リン酸二水素ナトリウム(NaH2PO4)及びリン酸二水素カリウム(KH2PO4)を含むことができる。
【0024】
リン酸塩化合物は、本組成物全体の0.3%(又は約0.3%)w/v~0.9%(又は約0.9%)w/v、好ましくは0.4%(又は約0.4%)w/v~0.85%(又は約0.85%)w/v、好ましくは0.5%(又は約0.5%)w/v~0.8%(又は約0.8%)w/v、又は好ましくは0.6%(又は約0.6%)w/v~0.75%(又は約0.75%)w/vの濃度で組成物中に存在することができる。
【0025】
リン酸塩化合物の濃度は、重量基準で、ホウ酸塩化合物の量の少なくとも1.5(又は約1.5)倍、好ましくは少なくとも2.0(又は約2.0)倍、及び好ましくは少なくとも2.5(又は約2.5)倍とすることができるが、最大で4倍、好ましくは最大で3倍とすることができる。
【0026】
リン酸塩化合物対ホウ酸塩化合物の比は、重量基準で、1.5:1(又は約1.5:1)~3:1(又は約3:1)、好ましくは2:1(又は約2:1)~3:1(又は約3:1)、又は好ましくは2:1(又は約2:1)とすることができる。
【0027】
眼科的に許容される担体
本明細書の組成物は、眼科的に許容される担体を含む。眼科的に許容される担体は、水又は水性賦形剤溶液とすることができる。用語「水性」とは、通常、賦形剤が、重量基準で、少なくとも約50%、より好ましくは少なくとも約75%、及び特に、少なくとも約90%、及び最大で約95%、又は好ましくは約99%が水である、製剤を意味する。水は蒸留水である。担体は、眼に刺すように痛む、眼を刺激する、又はそうでない場合、眼に不快感を引き起こすおそれのある、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノールなどのC1~4アルコールを不含とすることができる。
【0028】
水は、眼科的に許容される担体中に、重量基準で、本組成物全体の約96%~約99.9%、好ましくは約98%~約99.5%、又は好ましくは約99.0%~約99.5%の濃度で存在することができる。
【0029】
眼科的に許容される担体は、重量基準で、本組成物全体の約96%~約99.5%、好ましくは約98%~約99.5%、又は好ましくは約98.5%~約99.2%の濃度で存在することができる。
【0030】
本組成物は、滅菌であってもよく、すなわち、こうして、発売又は使用前に、このような製品にとって必要な程度にまで製品中の微生物汚染物質が存在しないことが統計学的に実証される。本組成物は、組成物中に存在するコンタクトレンズに対して、又は眼に対して(又は、眼の周辺領域に対して)、不利益作用、陰性作用、有害作用を有することがないよう、又は実質的に有することがないように選択することができる。
【0031】
本発明による組成物は、眼及び眼科用デバイスと生理学的に適合可能である。具体的には、本組成物は、コンタクトレンズなどの眼科用デバイスと共に使用するため「眼科的に安全」であるべきであり、これは、この溶液で処理されるコンタクトレンズは、リンスすることなく眼の表面に直接留置する、又は眼に直接施用するのに、一般に好適かつ安全であること、すなわち、この溶液は、任意の装着頻度のコンタクトレンズを含めた、この溶液で濡らされた、任意の施用頻度の眼科用デバイスにとって安全かつ快適であることを意味する。眼科的に安全な組成物は、眼と適合性がある張度及びpHを有しており、ISO規格及び米国食品医薬品局(FDA)の規制に準拠すると、眼科的に適合性があり、かつ非細胞傷害性である、物質及びその量を含む。
【0032】
本発明の組成物は、通常の涙液の浸透圧に近似するよう、等張化剤を用いて調節されてもよく、その浸透圧は、0.9パーセントの塩化ナトリウム溶液又は2.5パーセントのグリセロール溶液に等しい。本組成物は、単独で、又はグリセロールなどの他の等張化剤と組み合わせて使用される生理食塩水と実質的に等張化されてもよく、そうでない場合、無菌水と単にブレンドされて低張性になる、又は高張性となる場合、コンタクトレンズなどの眼科用デバイスは、それらの望ましい光学パラメータを失うおそれがある。それに対応して、過剰量の生理食塩水は、高張性の組成物の形成をもたらすおそれがあり、これにより、眼を刺すような痛み及び眼の刺激が引き起こされる。本組成物のオスモル濃度は、少なくとも約200mOsm/kg、好ましくは約200~約450mOsm/kg、好ましくは約205~約380mOsm/kg、好ましくはキログラムあたり約210~約360ミリオスモル(mOsm/kg)、好ましくは約250~約350mOsm/kg、又は好ましくは、約300~約330mOsm/kgとすることができる。本眼科用組成物は、一般に、滅菌水性組成物として製剤化される。
【0033】
好適な等張性調節剤の例には、以下に限定されないが、グリセリン、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化亜鉛及び塩化マグネシウム、アルカリ金属ハロゲン化物、デキストロースなど、及びそれらの混合物が含まれる。これらの作用剤は、約0.01~約2.5%w/v、及び好ましくは約0.2~約1.5%w/vの範囲の量で、個々に使用されてもよい。
【0034】
等張性調節剤は、重量基準で、本組成物全体の約0.4~約0.9、好ましくは、約0.4~約0.7又は好ましくは約0.5%~約0.6重量%の濃度で配合することができる、塩化ナトリウムとすることができる。
【0035】
本発明の組成物は、約5.0のpH~約8.0のpH、好ましくは約6.5のpH~約8.0のpH、好ましくは約6.5のpH~約7.5のpH、好ましくは約7のpHを有することができる。組成物(上記)は、好ましくは、本組成物が直接、接触する、又は直接施用されるヒト組織の生理的pHに一致するpHを好ましくは有することができる。
【0036】
本眼科用組成物のpHは、以下に限定されないが、塩酸などの無機酸、及び水酸化ナトリウムなどの塩基などの酸及び塩基を使用して調節することができる。
【0037】
本発明の組成物はまた、眼科用デバイスを包装するため、及びこのような眼科用デバイスを保存するための包装用溶液として有用である。
【0038】
本明細書で使用する場合、「眼科用デバイス」とは、眼中又は眼表面に留まる物体を指す。これらのデバイスは、光学補正を実現することができるか、又は化粧用とすることができる。眼科用デバイスには、以下に限定されないが、ソフトコンタクトレンズ、眼内レンズ、オーバーレイレンズ、眼挿入物、涙点プラグ及び光学挿入物が含まれる。眼科用デバイスは、コンタクトレンズとすることができる。本組成物と共に有用なコンタクトレンズは、さまざまな従来の技法を使用して製造されて、所望の後部及び前部のレンズ表面を有する成形物品を得ることができる。回転成形法は、米国特許第3,408,429号及び同第3,660,545号に開示されている。静的キャスト法は、米国特許第4,113,224号、同第4,197,266号及び同第5,271,875号に開示されており、それらの各々は、参照により本明細書に組み込まれている。好適なコンタクトレンズを製造するのに有用なコンタクトレンズのポリマー材料には、以下に限定されないが、アコフィルコン(acofilcon)A、アロフィルコン(alofilcon)A、アルファフィルコン(alphafilcon)A、アミフィルコン(amifilcon)A、アスティフィルコン(astifilcon)A、アタラフィルコン(atalafilcon)A、バラフィルコン(balafilcon)A、ビスフィルコン(bisfilcon)A、ブフィルコン(bufilcon)A、コムフィルコン(comfilcon)、クロフィルコン(crofilcon)A、シクロフィルコン(cyclofilcon)A、ダーフィルコン(darfilcon)A、デルタフィルコン(deltafilcon)A、デレフィルコン(delefilcon)、デルタフィルコン(deltafilcon)B、ジメフィルコン(dimefilcon)A、ドロオキシフィルコン(drooxifilcon)A、イプシフィルコン(epsifilcon)A、エステリフィルコン(esterifilcon)A、エタフィルコン(etafilcon)A、ファンフィルコン(fanfilcon)A、フォコフィルコン(focofilcon)A、ガリフィルコン(galyfilcon)A、ゲンフィルコン(genfilcon)A、ゴバフィルコン(govafilcon)A、ヘフィルコン(hefilcon)A、ヘフィルコンB、ヘフィルコンD、ヒラフィルコン(hilafilcon)A、ヒラフィルコンB、ヒオキシフィルコン(hioxifilcon)B、ヒオキシフィルコンC、ヒクソイフィルコン(hixoifilcon)A、ハイドロフィルコン(hydrofilcon)A、レネフィルコン(lenefilcon)A、リクリフィルコン(licryfilcon)A、リクリフィルコンB、リドフィルコン(lidofilcon)A、リドフィルコンB、ロトラフィルコン(lotrafilcon)A、ロトラフィルコンB、マフィルコン(mafilcon)A、メシフィルコン(mesifilcon)A、メタフィルコン(methafilcon)B、ミパフィルコン(mipafilcon)A、ナラフィルコン(narafilcon)A、ナラフィルコンB、ネルフィルコン(nelfilcon)A、ネトラフィルコン(netrafilcon)A、オクフィルコン(ocufilcon)A、オクフィルコンB、オクフィルコンC、オクフィルコンD、オクフィルコンE、オフィルコン(ofilcon)A、オマフィルコン(omafilcon)A、オキシフィルコン(oxyfilcon)A、ペンタフィルコン(pentafilcon)A、パーフィルコン(perfilcon)A、ペバフィルコン(pevafilcon)A、フェムフィルコン(phemfilcon)A、ポリマコン(polymacon)、リオフィルコン(riofilcon)A、サムフィルコン(samfilcon)A、セノフィルコン(senofilcon)A、セノフィルコンC、シラフィルコン(silafilcon)A、シロキシフィルコン(siloxyfilcon)A、ソモフィルコン(somofilcon)A、ステンフィルコン(stenfilcon)A、テフィルコン(tefilcon)A、テトラフィルコン(tetrafilcon)A、トリフィルコン(trifilcon)A、バスルフィルコン(vasurfilcon)、ビフィルコン(vifilcon)及びキシロフィルコン(xylofilcon)Aが含まれる。好ましくは、コンタクトレンズは、コンフィルコン、エタフィルコンA、ガリフィルコンA、セノフィルコンA、ネルフィルコンA、ヒラフィルコン、テトラフィルコンA、バスルフィルコン、ビフィルコン及びポリマコンから選択される(又は、これらからなる群から選択される)ポリマー材料を使用して製造される。
【0039】
従来のヒドロゲルコンタクトレンズは、シリコーン含有成分を含有しておらず、一般に、シリコーンヒドロゲルよりも水分含有量は高く、酸素透過度及び弾性率は低い。従来のヒドロゲルは、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル(「HEMA」)、N-ビニルピロリドン(「NVP」)又はポリビニルアルコールなどの親水性モノマーを主に含有するモノマー混合物から調製される。米国特許第4,495,313号、同第4,889,664号及び同第5,039,459号は、従来のヒドロゲルの形成物を開示している。従来のヒドロゲルは、イオン性又は非イオン性とすることができ、ポリマコン、エタフィルコン、ネルフィルコン、オクフィルコン、レネフィルコンなどを含む。これらの従来のヒドロゲル材料の酸素透過度は、通常、20~30バーラー未満である。
【0040】
ケイ素ヒドロゲル製剤には、バラフィルコン、サムフィルコン、ロトラフィルコンA及びB、デルフィルコン、ガリフィルコン、セノフィルコンA、B及びC、ナラフィルコン、コムフィルコン、フォルモフィルコン、リオフィルコン、ファンフィルコン、ステンフィルコン、ソモフィルコン、カリフィルコン(kalifilcon)などが含まれる。「シリコーンヒドロゲル」は、少なくとも1つの親水性成分及び少なくとも1つのシリコーン含有成分から作製されるポリマーネットワークを指す。シリコーンヒドロゲルは、60~200、60~150又は80~130psiの範囲の弾性率、20~60%の範囲の水分含有量を有することができる。シリコーンヒドロゲルの例としては、アクアフィルコン(acquafilcon)、アスモフィルコン(asmofilcon)、バラフィルコン、コムフィルコン、デレフィルコン、エンフィルコン(enfilcon)、ファンフィルコン、フォルモフィルコン(formofilcon)、ガリフィルコン、ロトラフィルコン、ナラフィルコン、リオフィルコン、サムフィルコン、セノフィルコン、ソモフィルコン、及びステンフィルコン(これらの変形のすべてを含む)、及び米国特許第4,659,782号、同第4,659,783号、同第5,244,981号、同第5,314,960号、同第5,331,067号、同第5,371,147号、同第5,998,498号、同第6,087,415号、同第5,760,100号、同第5,776,999号、同第5,789,461号、同第5,849,811号、同第5,965,631号、同第6,367,929号、同第6,822,016号、同第6,867,245号、同第6,943,203号、同第7,247,692号、同第7,249,848号、同第7,553,880号、同第7,666,921号、同第7,786,185号、同第7,956,131号、同第8,022,158号、同第8,273,802号、同第8,399,538号、同第8,470,906号、同第8,450,387号、同第8,487,058号、同第8,507,577号、同第8,637,621号、同第8,703,891号、同第8,937,110号、同第8,937,111号、同第8,940,812号、同第9,056,878号、同第9,057,821号、同第9,125,808号、同第9,140,825号、同第9156,934号、同第9,170,349号、同第9,244,196号、同第9,244,197号、同第9,260,544号、同第9,297,928号、同第9,297,929号、並びに国際公開第03/22321号、同第2008/061992号、及び米国特許出願公開第2010/0048847号で調製されるシリコーンヒドロゲルが含まれる。これらの特許は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0041】
コンタクトレンズポリマー材料は、好ましくは、シリコーンヒドロゲルポリマーである。シリコーンヒドロゲルは、アククアフィルコン、アスモフィルコン、バラフィルコンA、コンフィルコン、デレフィルコン、エンフィルコン、ガリフィルコン、ロトラフィルコン、セノフィルコン、サムフィルコン、ソモフィルコン、ステンフィルコンから選択することができる(又は、これらからなる群から選択される)。
【0042】
本組成物はまた、眼の不快感に対する軽減を実現するため、湿潤性又は再湿潤性点眼剤として、眼への直接施用に有用となることがある(例えば、眼に関連する灼熱感又は一般的な眼への刺激)。
【0043】
本明細書に記載されている組成物は、防腐剤を不含であってもよく、又は実質的に不含であってもよい。用語「防腐剤」は、抗菌特性を有する化合物を意味する。具体的な防腐剤の例には、以下に限定されないが、4-クロロクレゾール、4-クロロキシレノール、ベンザルコニウム、塩化ベンザルコニウム、安息香酸、ベンジルアルコール、クロルヘキシジン、クロロブタノール、イミド尿素、m-クレゾール、メチルパラベン、フェノール類0.5%、フェノキシエタノール、ソルベート、プロピオン酸、プロピルパラベン、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸、チメロソール(thimerosol)、安定化オキシクロロ錯体(SOC-99.5%の亜塩素酸塩、0.5%の塩素酸塩であり、微量の二酸化塩素を含む)、ポリクオタニウム化合物(ポリクオタニウム-42、ポリクオタニウム-1など)、過ホウ酸塩(例えば、過ホウ酸ナトリウム)、ビグアニド化合物(例えば、ポリヘキサメチレンビグアニド又はポリアミノプロピルビグアニド)が含まれる。
【0044】
防腐剤に関連する用語「実質的に不含」は、防腐剤が、本発明の組成物中に、該組成物全体の重量基準で、2%未満(又は約2%)、好ましくは1.5%未満(又は約1.5%)、及び好ましくは1%未満(又は約1%)、好ましくは0.5%未満(又は約0.5%)、好ましくは0.1%未満(又は約0.1%)、好ましくは0.05%未満(又は約0.05%)、好ましくは0.01%未満(又は約0.01%)、好ましくは0.005%未満(又は約0.005%)の濃度で存在する。好ましくは、本発明の組成物は、防腐剤が不含である。
【0045】
上記のとおり、コンタクトレンズは、本発明の組成物に浸漬されて、好適な包装容器、好ましくは単回用コンタクトレンズ単位向けの包装容器に保存することができる。一般に、コンタクトレンズを保存するための包装容器は、本発明の組成物中に浸漬されている未使用コンタクトレンズを含有する容器を封止する封止層を少なくとも含む。密封容器は、気密密封された包装容器とすることができる。気密密封した包装容器は、ブリスターパックとすることができ、この中に、コンタクトレンズを含有する凹型ウェルが、ブリスターパックを開けるために、剥がすようになされている金属製シート又はプラスチック製シートによって覆われている。密封容器は、任意の好適な、一般に、不活性な包装用材料から形成することができ、レンズへの妥当な程度の保護を実現する。この包装用材料は、ポリアルキレン、PVC、ポリアミド、ガラス、ガラス状ポリマーなどのプラスチック性材料から形成することができる。
【0046】
任意の水溶性の粘滑性(又は、粘滑様、例えば、粘度向上能などの粘滑特性を有する)ポリマーもまた、本発明の組成物に使用することができ、ただし、この粘滑性ポリマーは、保存中のコンタクトレンズに対して、又は本発明の組成物中で使用される濃度においてコンタクトレンズの装着者に対して、又は眼に対して(又は、眼の周辺領域に対して)不利益作用がない(又は実質的にない)ことを条件とする。特に、有用な成分は、水溶性、例えば、現在有用な液状水性媒体中で使用される濃度で可溶性であるものである。好適な水溶性粘滑性ポリマーには、以下に限定されないが、ポリエチレンオキシド(PEO)及びポリプロピレンオキシド(PPO)のブロックコポリマー;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン;ポリアクリル酸;ポリエチレングリコール(例えば、ポリエチレングリコール300、ポリエチレングリコール400)及びポリ酸化エチレンなどのポリエーテル;ヒアルロン酸及びヒアルロン酸誘導体;キトサン;ポリソルベート80、ポリソルベート60及びポリソルベート40などのポリソルベート;デキストラン70などのデキストラン;カルボキシメチルセルロースメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース及びメチルエチルセルロースなどのセルロース誘導体;その全体が参照により本明細書に組み込まれている米国特許第7,786,185号に開示されている2,500~1,800,000ダルトンの重量平均分子量を有するものなどの非環式ポリアミド;上記のいずれかの塩及び上記のいずれかの混合物などの粘滑性ポリマーが含まれる。好ましくは、PEO及びPPOのブロックコポリマーは、その全体が参照により本明細書に組み込まれている米国特許第6,440,366号に開示されているものを含めた、ポロキサマー及びポロキサミンを含む。好ましくは、水溶性粘滑性ポリマーは、ポリビニルピロリドン、メチルエチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリメタクリル酸、カルボキシメチルセルロース、グリセロール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、ポリエチレングリコール及びそれらの混合物から選択される。
【0047】
平滑剤は、100,000を超える分子量を有することができる。グリセロール、プロピレングリコール及び1,3-プロパンジオールが、平滑剤として使用される場合、それらは100,000未満の分子量を有することができる。
【0048】
水溶性ポリマーのいずれかが本発明の包装用溶液に使用される場合、この水溶性ポリマーは、組成物全体のすべての重量基準で、最大で約0.5、1又は2重量%、好ましくは約0.001~約2%、約0.005~約1%、約0.01~約0.5重量%、又は約100ppm~約0.5重量%の量で含まれて、存在することができる。
【0049】
水溶性ポリマーのいずれかが本発明の直接施用向けアイケア製剤又は点眼剤に使用される場合、この水溶性ポリマーは、組成物全体のすべての重量基準で、最大で約2、5又は10重量%、好ましくは約0.001~約10%、約0.005~約2%、約0.01~約0.5重量%又は約100ppm~約2重量%の量で含まれて、存在することができる。
【0050】
理論によって限定されないが、水溶性粘滑性ポリマーは、眼科用デバイスが、その製品包装に付着するのを防止する一助となり、包装から取り出された後に眼に留置される際に、組成物中に包装されているコンタクトレンズの初期(及び/又は長期の)快適さを増強することができると考えられる。
【0051】
粘滑性ポリマーは、セルロース誘導体とすることができる。セルロース誘導体は、本発明の組成物全体の重量基準で、約0.002~約0.01、又は好ましくは約0.004~約0.006の濃度で存在することができる。
【0052】
さまざまな他の材料が、本明細書に記載されている組成物内に含まれ得る。
【0053】
眼への直接施用のための本発明の組成物の場合、界面活性剤が含まれてもよい。このような使用に好適な界面活性剤には、以下に限定されないが、イオン性及び非イオン性界面活性剤(非イオン性界面活性剤が好ましいが)、RLM100、POE20セチルステアリルエーテル(Procol(登録商標)CS20など)、ポロキサマー(Pluronic(登録商標)F68など)、及びブロックコポリマー(2007年12月10日に出願の「Use of PEO-PBO Block Copolymers in Ophthalmic Compositions」と題する、米国特許出願公開第2008/0138310号(参照により本明細書に組み込まれている)に説明されているポリ(オキシエチレン)-ポリ(オキシブチレン)化合物など)が含まれる。
【0054】
界面活性剤は、本発明の組成物全体の重量基準で、約0.01~約3%、好ましくは約0.01~約1%、好ましくは約0.02~約0.5%、又は好ましくは約0.02~約0.1%の濃度で存在することができる。
【0055】
所望の場合、1種又は複数の追加の成分が、場合により本組成物に含まれてもよい。このような任意選択の成分は、組成物に対して少なくとも1つの有益な特性又は所望の特性を付与又は実現するよう選択される。このような追加であるが、任意選択の成分は、眼科用デバイスケア組成物に従来から使用されている成分から選択することができる。このような任意選択の成分の例は、洗浄剤(例えば、直接施用向け点眼剤又は洗浄剤[又は、アイケア溶液])、湿潤剤、栄養剤、治療剤、金属イオン封鎖剤、粘度上昇剤、コンタクトレンズのコンディショニング剤、抗酸化剤など、及びそれらの混合を含む(又は、これらから選択されるか、又はこれらからなる群から選択される)。これらの任意選択の成分はそれぞれ、組成物に有益な特性又は所望の特性を付与する又は実現するのに有効な量で組成物中に含まれることができ、このような有益な特性又は所望の特性は、ユーザーに認識可能である。例えば、このような任意選択の成分は、他のアイケア組成物製品又は眼科用デバイスケア組成物製品に使用される、このような成分の量に類似の量で組成物中に含まれ得る。
【0056】
本発明の眼科用溶液中の成分はすべて、水溶性であるべきである。本明細書で使用する場合、水溶性とは、成分が、単独で又は他の成分と組み合わされるかのどちらか一方で、選択された濃度において、並びに眼科用溶液を製造する、滅菌する及び保存するために一般的な温度及びpHレジメにわたり、ヒトの眼に見える沈殿物又はゲル粒子を形成しないことを意味する。
【0057】
1種又は複数の治療剤もまた、眼科用溶液に配合されてもよい。選択された活性剤が過酸化物の存在下で不活性であるかぎり、幅広い治療剤が使用されてもよい。好適な治療剤は、眼の前部及び後部を含めた、眼の環境の任意の部分を処置又は標的とするものを含み、医薬剤、ビタミン、栄養補給食品、それらの組合せなどを含む。活性剤の好適なクラスには、抗ヒスタミン薬、抗生物質、緑内障薬、炭酸脱水酵素阻害剤、抗ウイルス剤、抗炎症剤、非ステロイド系抗炎症薬、抗真菌薬、麻酔剤、縮瞳薬、散瞳薬、免疫抑制剤、抗寄生虫薬、抗原虫薬、それらの組合せなどが含まれる。活性剤が含まれる場合、その活性剤は、所望の治療結果を生じるのに十分な量(「治療的に有効な量」)で含まれる。
【0058】
有用な任意選択の金属イオン封鎖剤には、以下に限定されないが、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム(EDTA)、ヘキサメタリン酸アルカリ金属塩、クエン酸、クエン酸ナトリウムなど、及びそれらの混合物が含まれる。
【0059】
有用な任意選択の抗酸化剤には、以下に限定されないが、ピロ亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、N-アセチルシステイン、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエンなど、及びそれらの混合物が含まれる。
【0060】
コンタクトレンズ(又は他の眼科用デバイス)を包装及び保存する方法は、デバイスを包装に少なくとも組み込む工程を含み、この場合、デバイスは、上記の組成物に浸漬される。本方法は、コンタクトレンズの製造後、直接、利用者/装着者に送付される前に、本組成物にデバイスを浸漬する工程を含むことができる。あるいは、本組成物へのデバイスの組込み及び組成物中でのデバイスの保存(包装中のすべて)は、乾燥状態のデバイスの製造及び輸送後であるが、最終利用者(装着者)に送付される前の中間点で行われてもよく、この場合、乾燥デバイスは、本組成物中にデバイスを浸漬することによって濡らされる。したがって、利用者に送付するためのパッケージは、本組成物に浸漬される1つ以上の未使用デバイス(例えば、コンタクトレンズ)を含有する密封容器を含むことができる。
【0061】
好ましい一実施形態では、本発明の組成物中にデバイスを包装する工程は、以下を含む:
(1)少なくとも第1及び第2の金型部分を備える金型内でデバイス(例えば、コンタクトレンズ)を成形する工程
(2)金型部分からデバイスを取り出し、未反応モノマー及び加工剤を除去する工程
(3)本組成物及びデバイスを包装(又は容器)に導入する工程、及び
(4)包装を封止する工程。
【0062】
本方法はまた、包装の内容物を滅菌する工程を含んでもよい。殺菌は、容器の封止前に、又は最も好都合には容器の封止後に行われてもよく、当分野において公知の任意の好適な方法によって、例えば、約120℃以上の温度で均衡を保った密封容器の加圧滅菌によって行うことができる。この包装は、デバイス及び本組成物を収容するための凹部を含む、プラスチック製ブリスター包装(又は、パッケージ)とすることができ、この場合、凹部は、パッケージ内容物の滅菌前にリッドストックで密封される。用語「リッドストック」は、本明細書で使用する場合、アルミニウムホイルと、ブリスターの凹側を覆うよう熱封止されたポリマーの他の層を含めた、ホイル積層コンポジット材料を意味する。
【0063】
以下の実施例は、当業者が本組成物を実施することを可能にするために提示されており、本発明を単に例示するに過ぎない。実施例は、特許請求の範囲に定義されている本発明の範囲を限定するものとして読み込まれるべきではない。
【実施例0064】
(実施例1)
表1は、対照と共に、眼科用デバイス(例えば、コンタクトレンズ)を保存するための溶液として、又はこのデバイス向けの包装用溶液として有用な組成物(すなわち、試験実施例1~実施例5)を示しており、それらの組成物はそれぞれ、従来の混合技術を使用して調製することができる。
【0065】
【0066】
表1の組成物はそれぞれ、一旦、調製すると、その元の試験カップ容器から注ぎ、150mLの分析用フィルターユニットを使用する0.22μmの膜に通してろ過滅菌した。次に、保存及び試験を行うため、ろ過した個々の組成物を新しい個々の滅菌試験カップに無菌で移送した。
【0067】
以下の微生物を使用して、微生物活性を評価した:
・黄色ブドウ球菌(Quanti-Cult Plus(商標))-ATCC6538(Remel Inc.)
・大腸菌(BioBall(登録商標)Multishot550)-NCTC12923(ATCC8739)(bioMerieux)
・枯草菌(Quanti-Cult Plus(商標))-ATCC6633(Remel Inc.)
・緑膿菌((Quanti-Cult Plus(商標)))-ATCC9027(Remel Inc.)
・カンジダ・アルビカンス((Quanti-Cult Plus(商標)))-ATCC10231(Remel Inc.)
・ネズミチフス菌(KWIK-STIK(商標))-ATCC14028(Microbiologics,Inc.)
・アスペルギルス・ブラシリエンシス((Quanti-Cult Plus(商標)))-ATCC16404(Remel Inc.)
・フサリウム・ケラトプラスチクム(KWIK-STIK(商標))-ATCC36031(Microbiologics、Inc.)
【0068】
Quanti-Cult Plus及びBioBall Multishot微生物に関すると、1:1(微生物試料対組成物)の溶液を表1の各組成物に関して調製した。スプレッドプレート培養を行うため、200μlの接種材料を二連で使用した。
【0069】
残るKWIK-STIK(商標)微生物(スワブ/ペレット提供)については、再構成するため、Microbiologics,Incの使用説明書に従った。保存溶液は、一般方法の場合、使い捨て2チップ血球計算盤の説明書(Bulldog Bio)を使用して作製した。得られた結果に基づいて、段階希釈を行い、各緩衝液に関して計数可能な接種材料を得た。二連でスプレッドプレート培養に使用した接種材料は、100μlとした。
【0070】
細菌微生物は、トリプシン大豆寒天(TSA)培地で、酵母及び真菌は、サブローデキストロース寒天(SDA)、又はクロラムフェニコールを含むSDAでプレート培養した。TSAのプレートは、30~35℃で24~72時間、インキュベートし、SDAのプレートは、20~25℃で48時間~4日間、インキュベートした。
【0071】
定量分析は、0、1及び2日目に行った。
図1~
図8は、得られた結果を要約する。
【0072】
図1~
図8中のデータは、表1の組成物は、静菌/静真菌能及び殺細菌/殺真菌活性をもたらすことを実証している。以下の
図9は、2日後の対照に対する、組成物実施例1~実施例5の各々に関する微生物減少率の比較を示している。組成物実施例1及び実施例2は、対照に対してほとんど等価な減少パターンを示し、2日後には、すべての微生物に対して、均衡状態(すなわち、接種した微生物の初期数からの増加がない)を示した。しかし、組成物実施例2は、すべての接種した微生物全体で、ほとんど一定した減少%を示している。
【0073】
(実施例2)
表2の組成物は、従来の混合技術を使用して、以下に記載されているとおりに調製した眼科用デバイス(例えば、コンタクトレンズ)を保存するための溶液として、このデバイス向けの包装用溶液として有用である。
【0074】
【表2】
*MEC及びEDTAが存在しない組成物で測定した。これらの成分の濃度のために、このような成分は、単独で又は組み合わせて、残りの成分と比較すると、pH及びオスモル濃度にわずかな影響を及ぼすことが認識される。
【0075】
表2の組成物は、一旦、調製すると、その元の試験カップ容器から注ぎ、250mLの迅速フローろ過ユニットを使用する0.22μmの膜に通してろ過滅菌した。次に、ろ過済み組成物を、緑膿菌ATTC培養タイプ番号9027を使用する、緑膿菌(Quanti Cult plus)に対する微生物成長試験を行うため、滅菌容器に無菌で移送した。
【0076】
緑膿菌(PA)Quanti-Cult plusを製造業者の使用説明書に準拠して再懸濁させて、約500μLの一定分量を、2つの個別のトリプシンソイ寒天(TSA)プレートにスプレッドプレート培養した。このプレートを30~35℃において2日間、インキュベートした。接種ループを使用して、OmniPur WFI Quality Water,Sterile Filtered,Calbiochem(WFI)中、TSAプレートの表面からのPAを再懸濁した。
【0077】
この懸濁液を50mLの遠心管に滅菌ピペットを用いて無菌で移送した。
【0078】
このPA懸濁液をWFI quality sterile waterで段階的に希釈し、血球計算盤(使い捨て血球計算盤、Bulldog Bio)を使用して、約1.0×107細胞/mLの標的集団数を含む1:1000希釈液を得た。
【0079】
1:1000PA希釈液の一定分量10μLを表1の組成物40mL及び1×PBS対照溶液に接種し、約2500CFU/mLの開始PA標的集団数を得た。(PBS=AccuGENE 1xリン酸緩衝生理食塩水、1.7mM KH2PO4、5mM Na2HPO4、150mM NaCl、pH7.4、カタログ番号51225、LONZA)。PBS対照溶液100μLを三連で、TSAプレートにプレート培養し、30~35℃でインキュベートして、0日目のPA送達数を求めた。
【0080】
表2及びPBS対照のPA接種済み組成物を室温で保存し、1日目、2日目及び3日目に、試料をTSAに三連でスプレッドプレート培養した(100~300μLの一定分量)。次に、これらのプレートを30~35℃でインキュベートし、室温保存後のPA集団数を定量した。表1中の組成物に関する結果を、
図10~
図12(以下)中の「実施例7」として表す。
【0081】
図10~
図12に示されているとおり、表2の組成物(「実施例7」として示されている)は、PBS対照に比べて、PA集団数の一層大きな減少を引き起こし、したがって、所望の静菌特性を実現する。PA集団の減少は、初期PA集団数からの増加を予防する更なる証拠、すなわち静菌作用が実現されることを提示した。
【0082】
(実施例3)
表3の組成物は、従来の混合技術を使用して、以下に記載されているとおりに調製した眼科用デバイス(例えば、コンタクトレンズ)を保存するための溶液として、このデバイス向けの包装用溶液として有用である。
【0083】
【0084】
好ましい実施形態:
1.
a.約0.1%w/v~約0.80%w/v以下のホウ酸塩化合物と
b.約0.3%w/v~約0.9%w/vのリン酸塩化合物と
c.眼科的に許容される担体と
を含む組成物であって、
リン酸塩化合物の濃度が、重量基準で、ホウ酸塩化合物の量の少なくとも約1.5倍である、
組成物。
2.約0.2%w/v~0.7%w/v以下のホウ酸塩化合物を含む、実施形態1の組成物。
3.約0.25%w/v~0.45%w/v以下のホウ酸塩化合物を含む、実施形態1及び/又は2の組成物。
4.約0.25%w/v~0.4%w/v以下のホウ酸塩化合物を含む、実施形態1~3のいずれかの組成物。
5.約0.4%w/v~約0.85%w/vのリン酸塩化合物を含む、実施形態1~4のいずれかの組成物。
6.約0.5%w/v~約0.8%w/vのリン酸塩化合物を含む、実施形態1~5のいずれかの組成物。
7.リン酸塩化合物が、重量基準で、ホウ酸塩化合物の量の少なくとも約2.5倍である、実施形態1~6のいずれかの組成物。
8.リン酸塩化合物対ホウ酸化合物の比が、重量基準で約1.5:1~約3:1である、実施形態1~7のいずれかの組成物。
9.リン酸塩化合物対ホウ酸化合物の比が、重量基準で約2:1~約3:1である、実施形態1~8のいずれかの組成物。
10.防腐剤を実質的に含まない、実施形態1~9のいずれかの組成物。
11.防腐剤を含まない、実施形態1~10のいずれかの組成物。
12.粘滑性ポリマーを更に含む、実施形態1~11のいずれかの組成物。
13.粘滑性ポリマーが、ポリエチレンオキシド(PEO)及びポリプロピレンオキシド(PPO)のブロックコポリマー、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリエーテル、ヒアルロン酸及びヒアルロン酸誘導体、キトサン、ポリソルベート、デキストラン、セルロース誘導体、非環式ポリアミド、それらの塩及びそれらの混合物から選択される、実施形態1~12のいずれかの組成物。
14.洗浄剤、湿潤剤、栄養剤、治療剤、金属イオン封鎖剤、粘度上昇剤、コンタクトレンズのコンディショニング剤、抗酸化剤など、及びそれらの混合物から選択される、追加の成分を更に含む、実施形態1~13のいずれかの組成物。
【0085】
〔実施の態様〕
(1) a.約0.1%w/v~約0.80%w/v以下のホウ酸塩化合物と、
b.約0.3%w/v~約0.9%w/vのリン酸塩化合物と、
c.眼科的に許容される担体と
を、含む組成物であって、
前記リン酸塩化合物の前記濃度が、重量基準で、前記ホウ酸塩化合物の量の少なくとも約1.5倍である、
組成物。
(2) 約0.2%w/v~0.7%w/v以下のホウ酸塩化合物を含む、実施態様1に記載の組成物。
(3) 約0.25%w/v~0.45%w/v以下のホウ酸塩化合物を含む、実施態様2に記載の組成物。
(4) 約0.25%w/v~0.4%w/v以下のホウ酸塩化合物を含む、実施態様3に記載の組成物。
(5) 約0.4%w/v~約0.85%w/vのリン酸塩化合物を含む、実施態様1に記載の組成物。
【0086】
(6) 約0.5%w/v~約0.8%w/vのリン酸塩化合物を含む、実施態様5に記載の組成物。
(7) 前記リン酸塩化合物が、重量基準で、前記ホウ酸塩化合物の量の少なくとも約2.5倍である、実施態様1に記載の組成物。
(8) 前記リン酸塩化合物対前記ホウ酸化合物の比が、重量基準で約1.5:1~約3:1である、実施態様7に記載の組成物。
(9) 前記リン酸塩化合物対前記ホウ酸化合物の比が、重量基準で約2:1~約3:1である、実施態様7に記載の組成物。
(10) 防腐剤を実質的に含まない、実施態様1に記載の組成物。
【0087】
(11) 防腐剤を含まない、実施態様10に記載の組成物。
(12) 粘滑性ポリマーを更に含む、実施態様1に記載の組成物。
(13) 前記粘滑性ポリマーが、ポリエチレンオキシド(PEO)及びポリプロピレンオキシド(PPO)のブロックコポリマー、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリエーテル、ヒアルロン酸及びヒアルロン酸誘導体、キトサン、ポリソルベート、デキストラン、セルロース誘導体、非環式ポリアミド、それらの塩及びそれらの混合物から選択される、実施態様12に記載の組成物。
(14) 洗浄剤、湿潤剤、栄養剤、治療剤、金属イオン封鎖剤、粘度上昇剤、コンタクトレンズのコンディショニング剤、抗酸化剤など、及びそれらの混合物から選択される、追加の成分を更に含む、実施態様1に記載の組成物。