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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022108284
(43)【公開日】2022-07-25
(54)【発明の名称】電気活性親水性バイオポリマー
(51)【国際特許分類】
   H01G 11/84 20130101AFI20220715BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20220715BHJP
   C08F 226/10 20060101ALI20220715BHJP
   C08F 220/26 20060101ALI20220715BHJP
   A61L 27/16 20060101ALI20220715BHJP
   A61L 27/50 20060101ALI20220715BHJP
   H01G 11/56 20130101ALI20220715BHJP
   H01M 14/00 20060101ALN20220715BHJP
【FI】
H01G11/84
C08F2/44 B
C08F226/10
C08F220/26
A61L27/16
A61L27/50
H01G11/56
H01M14/00 P
【審査請求】有
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022041523
(22)【出願日】2022-03-16
(62)【分割の表示】P 2018534907の分割
【原出願日】2016-11-30
(31)【優先権主張番号】1523102.0
(32)【優先日】2015-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(71)【出願人】
【識別番号】518231345
【氏名又は名称】スーパーダイエレクトリクス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【弁理士】
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【弁理士】
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122345
【弁理士】
【氏名又は名称】高山 繁久
(72)【発明者】
【氏名】ハイゲイト、ドナルド ジェイムス
(57)【要約】      (修正有)
【課題】イオンおよび電子の両方の伝達ならびに制御に基づく電気化学的生物医学装置に適しているコポリマーの形成方法を提供する。
【解決手段】架橋電子活性親水性コポリマーを形成する方法であって、当該方法は:少なくとも1つの疎水性モノマーと、少なくとも1つの親水性モノマーと、水と、少なくとも1つのアミノ酸と、少なくとも1つの架橋剤とを有するコモノマー溶液を提供するステップと;コモノマー溶液を重合させるステップとを有する、前記方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋電子活性親水性コポリマーを形成する方法であって、当該方法は:
少なくとも1つの疎水性モノマーと、少なくとも1つの親水性モノマーと、水と、少なくとも1つのアミノ酸と、少なくとも1つの架橋剤とを有するコモノマー溶液を提供するステップと;
前記コモノマー溶液を重合させるステップとを有する、
前記方法。
【請求項2】
前記の少なくとも1つのアミノ酸が、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)およびチロシン、または、それらの組み合わせから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記の少なくとも1つのアミノ酸が、フェニルアラニンおよびトリプトファン、または、それらの組み合わせから選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記の少なくとも1つの親水性モノマーが、メタクリル酸、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、エチルアクリレート、ビニルピロリドン、プロペン酸メチルエステル、モノメタクリロイルオクセチルフタレート、アンモニウムスルファトエチルメタクリレート、ポリビニルアルコール、または、それらの組み合わせから選択される、いずれかの先行する請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記の少なくとも1つの親水性モノマーが、ビニルピロリドンおよびヒドロキシエチルメタクリレート、または、それらの組み合わせから選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記の少なくとも1つの疎水性モノマーが、メチルメタクリレート、アリルメタクリレート、アクリロニトリル、メタクリルオキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、2,2,2-トリフルオロエチルメタクリレート、または、それらの組み合わせから選択される、いずれかの先行する請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記の少なくとも1つの疎水性モノマーが、アクリロニトリルおよびメチルメタクリレート、または、それらの組み合わせから選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記架橋剤が、アリルメタクリレートまたはエチレングリコールジメタクリレートである、いずれかの先行する請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記の架橋剤および前記疎水性モノマーの両方が、アリルメタクリレートである、いずれかの先行する請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記重合ステップが、熱、UVまたはガンマ放射によって実行される、いずれかの先行する請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記重合ステップが、UVまたはガンマ放射によって実行される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記コモノマー溶液が、重合開始剤をさらに有する、いずれかの先行する請求項に記載の方法。
【請求項13】
前記重合開始剤が、アゾビスイソブチロニトリルまたは2-ヒドロシキ-2-メチルプリオフェノンである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記コモノマー溶液が、固体の形態である前記アミノ酸を、前記コモノマー溶液の残りの成分のうちの少なくとも1つに追加することによって提供される、いずれかの先行する請求項に記載の方法。
【請求項15】
前記コモノマー溶液が:
a. 中間溶液を形成するために、水中で前記の少なくとも1つの疎水性モノマーと前記の少なくとも1つの親水性モノマーとを混合すること;および、
b. 前記コモノマー溶液を形成するために、前記中間溶液に前記の少なくとも1つのアミノ酸と前記架橋剤とを追加すること
によって提供される、いずれかの先行する請求項に記載の方法。
【請求項16】
重合後に前記コポリマーを水和させるステップをさらに有する、いずれかの先行する請求項に記載の方法。
【請求項17】
前記コポリマーが、水和に続いて少なくとも7日の間、貯蔵される、いずれかの先行する請求項に記載の方法。
【請求項18】
前記コポリマーが、水和したコポリマーが、前記水和したコポリマーの総重量に基づいて、少なくとも10重量%の水を有するように水和される、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
請求項1-18のいずれかに記載の方法によって取得され得る、均質で等方性の電子活性親水性コポリマー。
【請求項20】
少なくとも1つの疎水性モノマーと、少なくとも1つの親水性モノマーと、水と、少なくとも1つのアミノ酸と、少なくとも1つの架橋剤とを有する、コモノマー溶液。
【請求項21】
請求項2から9または12から13の追加的特徴のうちのいずれか1つを有する、請求項20に記載のコモノマー溶液。
【請求項22】
請求項19に記載のコポリマーを有する、生物適合性医学装置。
【請求項23】
請求項19に記載のコポリマーを有する、柔軟な生物適合性神経接触装置。
【請求項24】
請求項19に記載のコポリマーを有する、人工内耳。
【請求項25】
請求項19に記載のコポリマーを有する、ペースメーカー電極。
【請求項26】
スーパーキャパシタを有する生物適合性医学装置であって、前記スーパーキャパシタが、2つの電極と、その間に配置された請求項19に記載のコポリマーとを有する、前記生物適合性医学装置。
【請求項27】
当該装置が、神経接触装置、人工内耳またはペースメーカーである、請求項26に記載の生物適合性医学装置。
【請求項28】
請求項19に記載のコポリマーを有し、化学成分がその構造全体に分散されている生物適合性感知システムであって、前記化学成分が、特定の化合物を検出することが可能である、前記システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、電子活性親水性ポリマー、および、それらの製造に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
補綴装置における神経組織と電子システムとの間のインターフェースのような電気化学的生物医学装置は、イオンおよび電子の両方の伝達ならびに制御に基づく。そのようであるので、生物医学用途の文脈では、イオン伝導性材料と電子伝導性材料の特性を別々に制御し得ることが所望される。
【0003】
イオン伝導性ポリマー(ICP)は、伝導プロセスが主にイオン移動に基づく材料である。従来の固体のICPは、ナフィオン(登録商標)に代表されるが、これは、固体ポリマー型燃料電池および電気分解装置の製造用の業界標準材料となったフッ化炭素系のカチオン(プロトン)伝導体である。
【0004】
電子伝導性ポリマー(ECP)は、周知であり、かつ、伝導プロセスが主に電子移動に基づく材料を意味するものと理解される。水中に分散体として供給される商用材料、例えばポリエチレンジオキシチオフェン:ポリスチレンスルホン酸(PEDOT:PSS、クレヴィオス500(登録商標)として市販されている)が、伝導率3×10S/mを有し、かつ、燃料電池において伝導体として通常用いられるグラファイトの伝導率を越える一方で、ECPは、一般の金属のものに近似する電気伝導率10S/mを達成したポリアセチレンを含む。これらの材料は有益な電子伝導特性を有するが、それらの生物受容性の程度は証明されておらず、したがって、生物医学分野における利用可能性は限られている。
【0005】
英国特許第2479449号明細書は、膜材料であって、電子伝導性ポリマー(ECP)とイオン伝導性ポリマー(ICP)とを有し、それらの接合点に相互貫入領域を有する前記膜材料を開示している。該膜材料は、電子伝導性ポリマーの領域と、親水性のイオン伝導性ポリマーの領域とからなる。該材料は、主に電子伝導性ポリマーの領域でのみ電子伝導性であり、あらゆる親水性は、主にポリマーの親水性のイオン伝導性領域に限られている。
【発明の概要】
【0006】
少なくとも1つの疎水性モノマーと、少なくとも1つの親水性モノマーと、水と、少なくとも1つのアミノ酸と、少なくとも1つの架橋剤とを有するコモノマー溶液の重合が、新規な電子活性親水性コポリマーの製造をもたらすことが見出された。この材料は、その伝導特性およびその水特性において、均質かつ等方性である。それは、その構造全体にわたって、親水性かつ電子伝導性である。結果として生じるコポリマー材料は、それらの生物受容性、親水特性、柔軟性およびに化学分解に対する抵抗力のおかげで、生物医学用途に適している。
【0007】
第1の態様では、本発明は、電子活性親水性コポリマーを形成する方法を提供し、当該方法は:
少なくとも1つの疎水性モノマーと、少なくとも1つの親水性モノマーと、水と、少なくとも1つのアミノ酸と、少なくとも1つの架橋剤とを有するコモノマー溶液を提供するステップと;
コモノマー溶液を重合させるステップとを有する。
【0008】
第2の態様では、本発明は、本発明の第1の態様による方法によって取得可能である、均質で等方性の電子活性親水性コポリマーを提供する。
【0009】
第3の態様では、本発明は、少なくとも1つの疎水性モノマーと、少なくとも1つの親水性モノマーと、水と、少なくとも1つのアミノ酸と、少なくとも1つの架橋剤とを有するコモノマー溶液を提供する。
【0010】
さらなる態様は、独立形式請求項に規定され、かつ、様々な生物適合性医学装置を含む。かかる生物適合性医学装置の1つは、スーパーキャパシタを有するものである。それらの改善された電子特性の結果として、本明細書に記載のコポリマーは、スーパーキャパシタ内の電解質成分として用いられてもよい。本明細書に記載のコポリマーがこの文脈で用いられる時、結果として生じるスーパーキャパシタは、特に高い容量値を達成し、当の医学装置の改善された性能を許容する。さらに、本明細書に記載のコポリマーの機械的特性の結果として、結果として生じるスーパーキャパシタは、追加のセパレータを必要としないようになっている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施例1により製造された架橋コポリマーの伝導率試験の結果を示す。
図2図2は、実施例2により製造された架橋コポリマーの電気特性を示す。
図3図3は、実施例3により製造された架橋コポリマーの伝導率試験の結果を示す。
図4図4は、50、100、150および200mVs-1の掃引速度において再蒸留水中で水和されたVP:EDTA:HOのサイクリックボルタモグラムを示す。
図5図5は、50、100、150および200mVs-1の掃引速度において生理食塩水中で水和されたVP:EDTA:HOのサイクリックボルタモグラムを示す。
図6図6は、50、100、150および200mVs-1の掃引速度において再蒸留水中で水和されたVP:PHENYL:HOのサイクリックボルタモグラムを示す。
図7図7は、50、100、150および200mVs-1の掃引速度において生理食塩水中で水和されたVP:PHENYL:HOのサイクリックボルタモグラムを示す。
図8図8は、生理食塩水中で水和されたVP:PHENYL:HOおよび生理食塩水中で水和されたVP:EDTA:HOについての、電位ステップの大きさの関数としての、1Vから種々の負電位までのクロノアンペロメトリーの過渡電圧の統合によって取得された電荷を示す。
図9図9は、生理食塩水中で水和されたVP:PHENYLの現象論的に特有な容量の周波数依存を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
好ましい実施形態の説明
本明細書で用いられる時、用語「モノマー」は、本技術分野におけるその通常の定義を採用し、したがって、ポリマーを形成するために別のモノマーに化学的に結合してもよい分子化合物を意味する。
【0013】
本明細書で用いられる時、用語「コモノマー溶液」は、本技術分野におけるその通常の定義を採用し、したがって、重合される時にコポリマーを形成する相溶性モノマーの溶液
を意味する。
【0014】
本明細書で用いられる時、用語「架橋剤」は、ポリマー鎖の間の化学結合を形成することが可能な分子化合物を意味し、かつ、メチレンビスアクリルアミド、N-(1-ヒドロキシ-2,2-ジメトキシエチル)アクリルアミド、アリルメタクリレートおよびエチレングリコールジメタクリレートのような化合物を含む。アリルメタクリレートおよびエチレングリコールジメタクリレートが好ましい。架橋剤は、疎水性であっても、親水性であってもよい。
【0015】
本明細書で用いられる時、用語「重合開始剤」は、本技術分野におけるその通常の定義を採用し、したがって、化学重合、例えば遊離基重合のプロセスを開始させることが可能な剤を意味する。アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)およびヒドロシキ-2-メチルプリオフェノンが、かかる開始剤の例である。アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)は、重合が熱的手段によるものである時に実用性を有し、かつ、ヒドロシキ-2-メチルプリオフェノンは、UV重合とともに用いるのに適している。
【0016】
本明細書で用いられる時、用語「中間溶液」は、溶液であって、それにさらなる成分が追加される前記溶液を意味する。例えば、コモノマー溶液を形成する文脈では、用語「中間溶液」は、完全なコモノマー溶液の成分のいくつかを含むが、すべては含まない溶液を意味する。
【0017】
本明細書で用いられる時、用語「コポリマー」は、本技術分野におけるその通常の定義を採用し、したがって、ポリマーであって、そのポリマー鎖が2つ以上の異なるタイプのモノマーを有する前記ポリマーを意味する。
【0018】
本明細書で用いられる時、用語「水特性」は、ポリマー材料に関して用いられる時は、水および生理食塩水のような他の水溶液環境に関するそのポリマー材料の特性および挙動、すなわち水溶液環境におけるその親水性および安定性を意味する。
【0019】
本明細書で用いられる時、用語「均質」は、ポリマー材料に関して用いられる時は、ポリマー材料であって、その物理特性(例えば、伝導特性および水特性)がその構造全体にわたって実質的に均一である、すなわち、それらが単一の「相」にある前記ポリマー材料を意味する。
【0020】
本明細書で用いられる時、用語「等方性」は、ポリマー材料に関して用いられる時は、ポリマー材料であって、その特性が全方位において同一である前記ポリマー材料を意味する。
【0021】
本明細書で用いられる時、用語「均質」は、コモノマー溶液に関して用いられる時は、均一に混合された相溶性モノマーを有するコモノマー溶液を意味する。
【0022】
本明細書で用いられる時、用語「親水性ポリマー」は、ポリマーであって、それが架橋されていない時は水に溶解し、かつ、架橋されている時は、安定的な弾性固体を形成するために水を吸収し、かつ、膨張する前記ポリマーを意味する。
【0023】
本明細書で用いられる時、用語「親水性モノマー」は、本技術分野におけるその通常の定義を採用し、したがって、水分子と親和性を有するモノマーを意味する。用語「疎水性モノマー」もまた、本技術分野におけるその通常の定義を採用し、したがって、水分子をはじくモノマーを意味する。
【0024】
本明細書で用いられる時、用語「アミノ酸」は、本技術分野におけるその通常の定義を採用し、したがって、アミノおよびカルボン酸官能基と、各アミノ酸に固有の側鎖とを有する有機化合物を意味する。該用語は、伝統的な「天然」アミノ酸を包含するが、アミノ酸バックボーンを有する任意の化合物(すなわち、任意の側鎖を有する)もまた包含する。
【0025】
本明細書で用いられる時、用語「電気活性」は、本技術分野におけるその通常の定義を採用し、したがって、電子活性材料およびイオン活性材料の両方を包含し得る。
【0026】
本明細書で用いられる時、用語「電子活性材料」は、本技術分野におけるその通常の定義を採用し、したがって、伝導プロセスが主に電子移動に基づく材料、または、電子がインターフェースにおける出力として産出される材料を意味する。
【0027】
本明細書で用いられる時、用語「イオン活性材料」は、本技術分野におけるその通常の定義を採用し、したがって、伝導プロセスが主にイオン移動に基づく材料を意味する。
【0028】
本明細書で用いられる時、用語「生物適合性」および「生物受容性」は、全体にわたって交換可能に用いられ、かつ、本技術分野におけるそれらの通常の定義を採用し、すなわち、それは、悪影響をもたらすことなく生体系と接触する特定の材料の能力である。
【0029】
本明細書で用いられる時、用語「液体電解質」は、本技術分野におけるその通常の定義を採用し、したがって、水、アセトニトリル、プロピレンカーボネートまたはテトラヒドロフランのような溶剤に溶解した、カチオン(カリウム、ナトリウム、カルシウムおよびマグネシウムのような)ならびにアニオン(クロライド、カーボネートおよびホスフェートのような)の溶液を意味する。本明細書で用いられる時、用語「水性電解質」は、本技術分野におけるその通常の定義を採用し、したがって、カチオン(カリウム、ナトリウム、カルシウムおよびマグネシウムのような)とアニオン(クロライド、カーボネートおよびホスフェートのような)とを含有する水溶液を意味する。
【0030】
第1の態様では、本発明は、電子活性親水性コポリマーを形成する方法を提供し、当該方法は:
少なくとも1つの疎水性モノマーと、少なくとも1つの親水性モノマーと、水と、少なくとも1つのアミノ酸と、少なくとも1つの架橋剤とを有するコモノマー溶液を提供するステップと;
コモノマー溶液を重合させるステップとを有する。
【0031】
好ましくは、少なくとも1つのアミノ酸は、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン、チロシンおよびエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、または、それらの組み合わせから選択される。これらのアミノ酸を用いることが、特に良好な電子特性を有する親水性ポリマーをもたらすことが見出された。理論によって拘束されることを望むことなく、芳香系または非局在化した孤立電子対内の電子共役が、ポリマー材料の電子特性を有利に変更すると考えられる。好ましくは、コモノマー溶液は、1つのアミノ酸または2つの異なるアミノ酸を有する。
【0032】
好ましくは、アミノ酸は、天然アミノ酸から選択される。より好ましくは、アミノ酸は、その側鎖に芳香族基を有するアミノ酸(好ましくは、天然アミノ酸)から選択される。より好ましくは、少なくとも1つのアミノ酸は、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジンおよびチロシン、または、それらの組み合わせから選択される。さらにより好ましくは、少なくとも1つのアミノ酸は、フェニルアラニンおよびトリプトファン、または、それらの組み合わせから選択される。いくつかの実施形態では、コモノマー溶液は、フ
ェニルアラニンおよびトリプトファンを有する。
【0033】
好ましい実施形態では、アミノ酸は、コモノマー溶液の既存の成分に対して固体の形態で追加される。固体アミノ酸は、粉体の形態であってもよい。
【0034】
好ましくは、少なくとも1つの親水性モノマーは、メタクリル酸、ヒドロキシエチルメタクリレート(例えば、2-ヒドロキシエチルメタクリレート)、エチルアクリレート、ビニルピロリドン(例えば、n-ビニル-2-ピロリドン)、プロペン酸メチルエステル(例えば、プロペン酸2-メチルエステル)、モノメタクリロイルオクセチルフタレート、ポリビニルアルコール、アンモニウムスルファトエチルメタクリレート、または、それらの組み合わせから選択される。好ましくは、コモノマー溶液は、1つの親水性モノマーを有する。
【0035】
より好ましくは、少なくとも1つの親水性モノマーは、ビニル-2-ピロリドンおよび2-ヒドロキシエチルメタクリレート、または、それらの組み合わせから選択される。より好ましくは、少なくとも1つの親水性モノマーは、1-ビニル-2-ピロリドン(VP)および2-ヒドロキシエチルメタクリレート、または、それらの組み合わせから選択される。
【0036】
好ましくは、少なくとも1つの疎水性モノマーは、メチルメタクリレート、アクリロニトリル、メタクリルオキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、2,2,2-トリフルオロエチルメタクリレート、アリルメタクリレート、または、それらの組み合わせから選択される。好ましくは、コモノマー溶液は、1つの疎水性モノマーを有する。
【0037】
より好ましくは、少なくとも1つの疎水性モノマーは、アクリロニトリルおよびメチルメタクリレート、または、それらの組み合わせから選択される。
【0038】
好ましくは、少なくとも1つの架橋剤は、アリルメタクリレートまたはエチレングリコールジメタクリレートから選択される。好ましくは、コモノマー溶液は、1つの親水性モノマーを有する。
【0039】
上記の定義から、上記で用いられた用語が、必ずしも相互に排他的ではないことが理解されるであろう。例えば、用語「疎水性モノマー」および「架橋剤」は、必ずしも相互に排他的ではない。本発明では、疎水性モノマーと架橋剤とは、同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0040】
疎水性モノマーは、特定の実施形態では、架橋剤と同一であってもよい。例えば、特定の実施形態では、架橋剤および疎水性モノマーの両方が、アリルメタクリレートであってもよい。
【0041】
いくつかの実施形態では、親水性モノマーおよび/または疎水性モノマーは、非架橋である。用語「非架橋疎水性モノマー」、「非架橋親水性モノマー」および「架橋剤」の間に重複はない。これらの実施形態では、架橋剤と、疎水性モノマーと、親水性モノマーとは、異なる化学種である。
【0042】
好ましくは、重合ステップは、熱、UVまたはガンマ放射によって実行される。
【0043】
より好ましくは、重合ステップは、UVまたはガンマ放射によって実行される。
【0044】
好ましい実施形態では、コポリマー溶液はさらに、重合開始剤を有する。重合開始剤は
、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)または2-ヒドロシキ-2-メチルプリオフェノンであってもよい。
【0045】
重合開始剤の存在は、重合が熱またはUV放射によるものである時に、特に好ましい。1つの実施形態では、重合は熱的手段によるものであり、かつ、開始剤はアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)である。別の実施形態では、重合はUB放射によるものであり、かつ、開始剤は2-ヒドロシキ-2-メチルプリオフェノンである。
【0046】
コモノマー溶液の個別の成分は、それらが均一に混合し、そのことによって均質な溶液を形成するように、十分な量で含まれるべきである。疎水性モノマーは、コモノマー溶液の総重量に基づいて、5重量%から80重量%まで、好ましくは5重量%から60重量%まで、最も好ましくは40-60重量%の量で存在してもよい。親水性モノマーは、コモノマー溶液の総重量に基づいて、5重量%から90重量%まで、好ましくは5重量%から80重量%まで、最も好ましくは40-60重量%の量で存在してもよい。架橋剤は、コモノマー溶液の総重量に基づいて、1重量%から25重量%まで、好ましくは2重量%から15重量%まで、最も好ましくは2重量%から10重量%までの量でコモノマー溶液中に存在してもよい。アミノ酸は、コモノマー溶液の総重量に基づいて、0.05重量%から30重量%まで、好ましくは0.1重量%から10重量%まで、最も好ましくは0.5重量%から1.5重量%までの量で存在してもよい。
【0047】
コモノマー溶液中の水の量は、均一に混合された均質な溶液を提供するのに十分でなければならず、かつ、モノマー成分中では溶解しない少なくとも1つのアミノ酸と、架橋剤とを溶解させるのに十分でなければならない。コモノマー溶液中の水の量は、コモノマー溶液の総重量に基づいて、1重量%から50重量%まで、好ましくは5重量%から50重量%まで、最も好ましくは5重量%から15重量%までであってもよい。
【0048】
好ましい実施形態では、コポリマーは、重合に続いて水和される。この水和ステップは、蒸留脱イオン(DD)水、または、生理食塩水のような水溶液を用いて実行されてもよい。生理食塩水が水和ステップに用いられる時、生理食塩水は、好ましくは水中に0.002g/ccから0.1g/ccまでのNaCl、より好ましくは水中に0.009g/ccのNaClを有する。この水和ステップが、水和したコポリマーの総重量に基づいて、少なくとも10重量%、好ましくは少なくとも20重量%であるコポリマー中の水の量をもたらすことが好ましい。理論によって拘束されることを望むことなく、水がこの量で存在する時、それは、「可塑剤」として作用し得、かつ、コポリマーの他の成分が十分な分子間移動性を有することを可能にし得、コモノマーの形態が経時的に自己組織化するようになっている。例えば、この自己組織化は、約7-14日の期間内に発生し得る。製造、および/または、さらなる水和に続いて、コポリマーの電気特性が経時的に改善されることが観察された。
【0049】
コモノマー溶液は、UV、ガンマまたは熱放射を用いて提供され、かつ、重合されてもよい。熱重合が70℃までの温度で実行されてもよい一方で、UVまたはガンマ放射は周囲温度および圧力の下で実行されてもよい。
【0050】
コモノマー溶液は、多数の異なる順番で溶液成分を混合することによって提供されてもよい。1つの実施形態では、親水性および疎水性モノマーがまず混合され、その後、水が追加され、アミノ酸および架橋剤の追加が続く。別の実施形態では、アミノ酸が水に溶解され、結果として生じるアミノ酸溶液が、親水性モノマーと、疎水性モノマーと、架橋剤との混合物に追加されてもよい。
【0051】
好ましくは、コモノマー溶液は:
中間溶液を形成するために、水中で少なくとも1つの疎水性モノマーと少なくとも1つの親水性モノマーとを混合すること;および、
コモノマー溶液を形成するために、中間溶液に少なくとも1つのアミノ酸と架橋剤とを追加すること
によって提供される。
【0052】
これは、本発明の第1の態様の特に好ましい実施形態である。なぜなら、驚くべきことに、このやり方でポリマー成分を混合することが、そうでなければコモノマー溶液中に存在する水の量で溶解したであろう量の2倍まで多くのアミノ酸がコモノマー溶液中に溶解することを可能にしたことが見出されたからである。コモノマー溶液中により多くのアミノ酸を溶解させることが所望される。なぜなら、それは、より多くのアミノ酸がポリマーに組み込まれることをもたらし、したがって、特に改善された電子特性を提供するからである。このことは、実施例において示される。
【0053】
好ましくは、中間溶液中の親水性モノマーおよび疎水性モノマー:水の容積比は、2:1から10:1までである。より好ましくは、中間溶液中の親水性モノマーおよび疎水性モノマー:水の容積比は、4:1である。
【0054】
好ましくは、中間溶液中の親水性モノマー:疎水性モノマーの容積比は、10:1から1:5までである。より好ましくは、中間溶液中の親水性モノマー:疎水性モノマーの容積比は、1:1である。
【0055】
最も好ましくは、中間溶液中の親水性モノマー:疎水性モノマー:水の容積比は、1:1:0.5である。
【0056】
好ましくは、コポリマーは重合後に水和される。より好ましくは、コポリマーは、水和したコポリマーが、水和したコポリマーの総重量に基づいて、少なくとも10重量%の水、好ましくは少なくとも20重量%の水を有するように水和される。
【0057】
好ましくは、コポリマーは、水和に続いて、少なくとも7日、好ましくは少なくとも14日の間、貯蔵される。
【0058】
好ましい実施形態では、電子活性親水性コポリマーを形成する方法は:
疎水性モノマーと、親水性モノマーと、水と、アミノ酸と、架橋剤とからなるコモノマー溶液を提供するステップと;
コモノマー溶液を重合させるステップとを有する。
【0059】
第2の態様では、本発明は、本発明の第1の態様に関連して提示された実施形態のいずれかによる方法によって取得可能である、均質かつ等方性の電子活性親水性コポリマーを提供する。かかる均質なコポリマーは、新規であると思われる。
【0060】
第3の態様では、本発明は、少なくとも1つの疎水性モノマーと、少なくとも1つの親水性モノマーと、水と、少なくとも1つのアミノ酸と、少なくとも1つの架橋剤とを有するコモノマー溶液を提供する。
【0061】
好ましい疎水性モノマー、親水性モノマー、アミノ酸および架橋剤は、上記で定義されている。
【0062】
上記のコモノマー溶液は、本願による均質で等方性の電子活性親水性コポリマーをもたらす。
【0063】
本発明のコポリマーは、様々な用途で用いられ得、かつ、生物適合性材料が所望される場合に特に有用である。例えば、本発明のコポリマーは、神経接触インターフェース、人工内耳およびペースメーカーのような生物適合性医学装置に用いられても良い。本発明の材料の親水特性は、それらを生物医学用途に特に適したものにする。
【0064】
1つの実施形態では、当の生物適合性医学装置は、スーパーキャパシタを含み、ここで、本明細書に開示されるコポリマーは、スーパーキャパシタシステム内の電解質成分として用いられる。当業者によって理解されるであろうが、スーパーキャパシタは概して、2つの電極と、その間に配置された電解質成分とを有する。スーパーキャパシタによって達成される最大容量値は、電極の性質はもちろん、電解質の性質に基づくかも知れない。また、当業者によって理解されるであろうが、複数の異なる種類のスーパーキャパシタシステムがある。これらは、二重層スーパーキャパシタ、疑似容量性スーパーキャパシタおよびハイブリッドスーパーキャパシタを含む。二重層スーパーキャパシタは、典型的には、比較的安価である炭素電極を有する。二重層スーパーキャパシタの容量は、大部分は静電容量である。その一方で、疑似容量性スーパーキャパシタは、電解質とともに酸化還元(レドックス)反応を経験することが可能である比較的高価な電極を有する。かかるレドックス活性電極は、例えば、ランタン、ルテニウムまたはバナジウムを有し得る。疑似容量性スーパーキャパシタの容量は、したがって、電気化学容量によって有意に増加(または増大)する。ハイブリッドスーパーキャパシタは、異なる特徴を有する電極の組み合わせを有し、かつ、例えば、1つの炭素電極と、1つの電解質とのレドックス反応を経験することが可能な電極とを有し得る。ハイブリッドスーパーキャパシタの容量は、したがって、静電容量と電気化学容量との組み合わせである。従来、上記スーパーキャパシタシステム内の電解質成分は、液体電解質であり、かつ、かかる液体電解質は、典型的には生物受容性ではなく、したがって、重大なリスクおよび大規模な密閉システムなしでは、生体内で用いられ得ない。
【0065】
本明細書に開示されるコポリマーが、従来のスーパーキャパシタの液体電解質の代わりに用いられる時、結果として生じるスーパーキャパシタは、特に高い容量値を達成する。本明細書に開示されるコポリマーが、二重層スーパーキャパシタに用いられる時、達成される容量値は、従来の液体電解質を用いて達成される容量値と比較すると、3桁大きい。本明細書に開示されるコポリマーが、疑似容量性スーパーキャパシタに用いられる時、これらの高容量値は維持される。良好な容量値はまた、ハイブリッドスーパーキャパシタの文脈でも達成される。要すれば、所定のスーパーキャパシタシステムについて、所定の電極を用いると、最大容量は、スーパーキャパシタ内の電解質成分として本明細書に開示されるコポリマーを用いる時に増加する。さらに、これらのコポリマーの電解特性は、医療用の生理食塩水中で水和される時、優れたままであり、そのことによって、医療用途に特に適した蓄電装置を提供する。さらに、コポリマーは、商業的に許容される電圧範囲にわたって安定したままである。
【0066】
さらに、本明細書に開示されるコポリマーは、機械的に安定している。これらの改善された機械的特性の結果として、電解質成分として本明細書に開示されるコポリマーを含むスーパーキャパシタは、追加のセパレータを必要としない。従来、液体電解質がスーパーキャパシタシステム内で用いられる時、スーパーキャパシタは、2つの電極の間の分離を維持するために、追加のセパレータをさらに有する必要がある。本明細書に記載のコポリマーが従来の液体電解質の代わりに用いられる時、それらの機械的特性および自己支持的性質は、電極の間の分離が、追加のセパレータの不存在下でさえ維持されるようなものである。
【0067】
別の実施形態では、本明細書に開示されるコポリマーは、生物適合性感知システムに用
いられる。感知システムは、1つ以上の化学成分を含んでいてもよく、ここで、これらの化学成分は、特定の化合物を検出することが可能である。かかる感知システムは、生物医学の文脈で広範な利用可能性を有する。有利なことに、これら1つ以上の化学成分は、本明細書に開示されるコポリマーの構造全体に分散していてもよく、かつ、結果として生じるコポリマーは、感知システムに含まれていてもよい。本明細書に開示されるコポリマーは、化学成分のための支持マトリックスとして作用し、ここで、化学成分は、コポリマー構造内で安定的に保持され、かつ、それらの感知能力は保たれる。かかる感知システムによって検出される特定の化合物は、グルコースを含み得る。当業者は、グルコースを検出することが可能な化学成分に精通しているであろうし、かつ、かかる化学成分は、ベネジクト試薬(無水炭酸ナトリウムと、クエン酸ナトリウムと、硫酸銅(II)五水和物とを有する)を含み得る。
【0068】
さらなる実施形態では、本明細書に開示されるコポリマーは、光起電力電池に用いられる。本明細書に開示されるコポリマーの光透過性は、光起電力電池の効率的な機能を許容する。
【0069】
別の実施形態では、本明細書に開示されるコポリマーは、電気伝導性接着接合点を形成するために用いられてもよく、ここで、接着接合点は、隣接する電気伝導性成分の間に配置される。好ましくは、隣接する電気伝導性成分は、接着接合点とともに、生物医学装置に含まれてもよい、積み重ねられた2D電気チップのような積み重ねられた集積回路を形成する。
【0070】
本発明は、以下の実施例にしたがって、ここで示されるであろう。
【実施例0071】
実施例1
アミノ酸または酸が水中に溶解され、結果として生じる溶液が他のコモノマーに追加される方法1。
フェニルアラニン水溶液が、マグネチックスターラーバーを用いて撹拌しながら、50℃で10mlの水に0.32gのフェニルアラニンを溶解させることによって形成された。(これは、所定の温度における可能な限りの最大濃度であったし、かつ、温度に対する濃度に関する公開データと一致していた)。水溶液の25容量%(0.5ml)が、その後、1mlのアクリロニトリルと1mlの1-ビニル-2のピロリドンとからなる撹拌された混合物(計2ml)に、液滴で追加された。架橋剤としての0.075mlのアリルメタクリレートと、開始剤としての0.05mlの2-ヒドロキシ-2-メチルプリオフェノンとが、その後、混合物に追加された。それは、その後、結果物が固体架橋コポリマーとなるまで、ほぼ10分間、UV下で硬化された。AIBNのような代替的な開始剤が、熱重合のために用いられ得る。
【0072】
伝導率が試験され、かつ、結果が表1(下)および図1に示される。
【0073】
表1 25容積%の0.32g/10mlフェニルアラニンを有するAN/VP(2ml) サンプルが、毎回の加熱サイクル(50℃)後に重合され、かつ、サンプルの伝導率が、7日後に再試験された(r)。
【0074】
【表1】
【0075】
材料は、2つの手段で試験された:
(i)熱サイクルの効果を立証するため。なぜなら、他の試験では、アミノ酸の結晶が、モノマー混合物の熱サイクル(周囲から50℃までの温度)の結果として形成されたことが示され、かつ、電気特性に対する結晶成長の何らかの効果を示す必要があったからである。
【0076】
変化する膨張率(モノマー混合物の熱サイクル後に水揚げを変えることをほのめかす)を考慮すれば、熱サイクルとの相関性は、明白ではなかった。
【0077】
(ii)製造後の経時的な電気特性の変化を立証するため。サンプルが周囲温度で貯蔵され、かつ、水和が維持されれば、ピーク電流が経時的に増加したことが明らかであった。この場合、試験は、初期電流の2倍と4倍との間の増加が測定された時である7日後に止められた。
【0078】
実施例2
アミノ酸または酸が、他のコモノマーと水とからなる予め混合された溶液中に溶解される方法2。
溶液が、1mlのアクリロニトリルおよび1mlの1-ビニル-2-ピロリドンを0.5mlの水と混合することによって形成された。0.02gのフェニルアラニンが追加され、かつ、混合物が50℃で加熱され、かつ、マグネチックスターラーバーを用いて撹拌
された。モノマーと水との混合物に完全に溶解され得たアミノ酸の量が、方法1によって可能である所定の温度における可能な限りの最大濃度を越え、かつ、公開データに与えられた量を有意に超えたことが見出された。
【0079】
架橋剤としての0.075mlのアリルメタクリレートと、開始剤としての0.05mlの2-ヒドロキシ-2-メチルプリオフェノンとが、混合物に追加された。それは、その後、固体架橋コポリマーを製造するために、10分間、UV下で硬化された。
【0080】
架橋ポリマーは、平衡に到達するまでDD水中で水和され、かつ、電気特性が13日にわたって周期的に試験される。水和したサンプルは、水分損失が最少化されるように密閉して保たれ、かつ、膨張比が、測定値についての水和レベルを維持するために追加の水が必要かどうかを判定するために測定される。
【0081】
電気特性が図2に示され、かつ、表2(下)において表にされる。見られ得るように、測定された最大電流は、試験期間にわたって30倍に増加した。
【0082】
表2:0.02gのフェニルアラニンを有するAN/VP+H
【0083】
【表2】
【0084】
実施例3
アミノ酸が、他のコモノマーと水とからなる予め混合された溶液中に溶解される方法2を用いて、2つのアミノ酸の混合物から作成されたサンプル。
溶液が、1mlのアクリロニトリルおよび1mlの1-ビニル-2-ピロリドンを0.5mlの水と混合することによって形成された。0.02gのフェニルアラニンおよび0.06gのトリプトファンが追加され、かつ、混合物が、マグネチックスターラーバーを用いて撹拌され、かつ、50℃で加熱された。架橋剤としての0.075mlのアリルメタクリレートと、開始剤としての0.05mlの2-ヒドロキシ-2-メチルプリオフェノンとが、混合物に追加された。それは、その後、架橋コポリマーを製造するために、UV下で硬化された。
【0085】
伝導率が試験され、かつ、結果が図3に示される。電気測定値が、ここでも、水和後の経時的な最大電流の増加を示した。
【0086】
実施例4-5
下表における用語は、実施例4から5までにわたって適用される:
【0087】
【表3】
【0088】
実施例4-5にわたって、種々のコポリマーが調製された。実施例4-5にわたるコポリマーは、下表に列挙され、かつ、実施例1-3のものと同様の方法論を用いて調製された。下表の「コポリマー」の列に列挙される簡略化された用語は、実施例4-5全体で用いられるであろう:
【0089】
【表4】
【0090】
実施例4-5のコポリマーの電気特性が、円筒型電極装置内または扁平型電極装置内のいずれかで、定電位条件下で試験された。
【0091】
円筒型電極装置は、断面積が0.06cmであるガラス状炭素棒である作用電極および対電極を有する。電極表面は、巨視的に滑らかであり、したがって、それらの断面積は、有効電気活性面積として採用され得る。準参照電極は、活性ポリマーフィルムに挿入されたAgワイヤーからなる。
【0092】
扁平型電極装置は、大きな幾何学的領域(5cmより上)についてのこれらの材料の適合性を評価するために用いられた。
【0093】
すべての測定値は、周囲条件および湿度の下、Ivium社のCompactstatを用いて記録された。コポリマー構造の不可逆的変化(例えば、過酸化)は、作用電極と参照電極との間の開路電位の系統的解析によってモニタリングされた。
【0094】
実施例4
2つのVP:EDTA:HOコポリマーが、実施例1-3のものと同様の方法論を用
いて調製された。第1のコポリマーは、その後、再蒸留水中で水和され、かつ、第2のコポリマーは、生理食塩水(100mlの再蒸留水中に0.9gのNaCl)中で水和された。
【0095】
2つのVP:PHENYL:HOコポリマーが、実施例1-3のものと同様の方法論を用いて調製された。第1のコポリマーは、その後、再蒸留水中で水和され、かつ、第2のコポリマーは、生理食塩水(100mlの再蒸留水中に0.9gのNaCl)中で水和された。
【0096】
上記の4つのコポリマーのそれぞれの電気特性が試験され、かつ、結果が図4(VP:EDTA:HO、再蒸留水中で水和)、図5(VP:EDTA:HO、生理食塩水中で水和)、図6(VP:PHENYL:HO、再蒸留水中で水和)および図7(VP:PHENYL:HO、生理食塩水中で水和)に示される。
【0097】
図4図7は、50、100、150および200mVs-1の掃引速度におけるサイクリックボルタモグラムである。これらの図は、所定の電位掃引速度における生理食塩水の水和の際の容量性電流の増加を示す。これらの図は、水和後、コポリマーマトリックス全体にイオン浸透があり、このことが、電極表面における、より小型の電気化学二重層の形成を可能にすることを示す。これらの結果は、したがって、感知用途における使用のために、ポリマーマトリックスに化学成分を組み込むことの可能性を支持する。
【0098】
実施例5
VP:PHENYL:HOコポリマーが、実施例1-3のものと同様の方法論を用いて調製された。コポリマーは、その後、生理食塩水中で水和された。
【0099】
VP:EDTA:HOコポリマーが、実施例1-3のものと同様の方法論を用いて調製された。コポリマーは、その後、生理食塩水中で水和された。
【0100】
上記の2つのコポリマーのそれぞれの電気特性が試験され、かつ、結果が図8に示される。図8は、電位ステップの大きさの関数としての、1Vから種々の負電位までのクロノアンペロメトリーの過渡電圧の統合によって取得された電荷をプロットする。
【0101】
図は、各コポリマーが、超容量性の挙動を示すことを示す。各コポリマーの容量は、0.005Fcm-2のオーダーである。
【0102】
実施例6
VP:PHENYLコポリマーが、実施例1-3のものと同様の方法論を用いて調製された。コポリマーは、その後、生理食塩水中で水和された。電気特性が試験された。結果が図9に示される。
【0103】
図9は、コポリマーの現象論的に特有な容量の周波数依存を示す。容量値が、開路電位における電気化学インピーダンススペクトロスコピーを検査することによって取得された。特有の容量は、0.004Fg-1に近似する値に近付く。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2022-04-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
均質で等方性の電子活性親水性コポリマーを有するスーパーキャパシタであって、前記コポリマーは:
少なくとも1つの疎水性モノマーと、少なくとも1つの親水性モノマーと、水と、少なくとも1つのアミノ酸と、少なくとも1つの架橋剤とを有するコモノマー溶液を提供するステップと;
前記コモノマー溶液を重合させるステップとを有する、
方法によって取得され得るものである前記スーパーキャパシタ
【請求項2】
均質で等方性の電子活性親水性コポリマーを有する光起電力電池であって、前記コポリマーは:
少なくとも1つの疎水性モノマーと、少なくとも1つの親水性モノマーと、水と、少なくとも1つのアミノ酸と、少なくとも1つの架橋剤とを有するコモノマー溶液を提供するステップと;
前記コモノマー溶液を重合させるステップとを有する、
方法によって取得され得るものである前記光起電力電池。
【請求項3】
前記の少なくとも1つのアミノ酸が、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)およびチロシン、または、それらの組み合わせから選択される、請求項1に記載のスーパーキャパシタ、または請求項2に記載の光起電力電池
【請求項4】
前記の少なくとも1つのアミノ酸が、フェニルアラニンおよびトリプトファン、または、それらの組み合わせから選択される、請求項1に記載のスーパーキャパシタ、または請求項2に記載の光起電力電池
【請求項5】
前記の少なくとも1つの親水性モノマーが、メタクリル酸、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、エチルアクリレート、ビニルピロリドン、プロペン酸メチルエステル、モノメタクリロイルオクセチルフタレート、アンモニウムスルファトエチルメタクリレート、ポリビニルアルコール、または、それらの組み合わせから選択される、請求項に記載のスーパーキャパシタ、または請求項2に記載の光起電力電池
【請求項6】
前記の少なくとも1つの親水性モノマーが、ビニルピロリドンおよびヒドロキシエチルメタクリレート、または、それらの組み合わせから選択される、請求項に記載のスーパーキャパシタ、または請求項2に記載の光起電力電池
【請求項7】
前記の少なくとも1つの疎水性モノマーが、メチルメタクリレート、アリルメタクリレート、アクリロニトリル、メタクリルオキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、2,2,2-トリフルオロエチルメタクリレート、または、それらの組み合わせから選択される、請求項に記載のスーパーキャパシタ、または請求項2に記載の光起電力電池
【請求項8】
前記の少なくとも1つの疎水性モノマーが、アクリロニトリルおよびメチルメタクリレート、または、それらの組み合わせから選択される、請求項に記載のスーパーキャパシタ、または請求項2に記載の光起電力電池
【請求項9】
前記架橋剤が、アリルメタクリレートまたはエチレングリコールジメタクリレートである、請求項に記載のスーパーキャパシタ、または請求項2に記載の光起電力電池
【請求項10】
記架橋剤および前記疎水性モノマーの両方が、アリルメタクリレートである、請求項に記載のスーパーキャパシタ、または請求項2に記載の光起電力電池
【請求項11】
前記重合ステップが、熱、UVまたはガンマ放射によって実行される、請求項に記載のスーパーキャパシタ、または請求項2に記載の光起電力電池
【請求項12】
前記重合ステップが、UVまたはガンマ放射によって実行される、請求項に記載のスーパーキャパシタ、または請求項2に記載の光起電力電池
【請求項13】
前記コモノマー溶液が、重合開始剤をさらに有する、請求項に記載のスーパーキャパシタ、または請求項2に記載の光起電力電池
【請求項14】
前記重合開始剤が、アゾビスイソブチロニトリルまたは2-ヒドロシキ-2-メチルプリオフェノンである、請求項13に記載のスーパーキャパシタまたは光起電力電池
【請求項15】
前記コモノマー溶液が、固体の形態である前記アミノ酸を、前記コモノマー溶液の残りの成分のうちの少なくとも1つに追加することによって提供される、請求項に記載のスーパーキャパシタ、または請求項2に記載の光起電力電池
【請求項16】
前記コモノマー溶液が:
a. 中間溶液を形成するために、水中で前記の少なくとも1つの疎水性モノマーと前記の少なくとも1つの親水性モノマーとを混合すること;および、
b. 前記コモノマー溶液を形成するために、前記中間溶液に前記の少なくとも1つのアミノ酸と前記架橋剤とを追加すること
によって提供される、請求項に記載のスーパーキャパシタ、または請求項2に記載の光起電力電池
【請求項17】
前記方法が、重合後に前記コポリマーを水和させるステップをさらに有する、請求項に記載のスーパーキャパシタ、または請求項2に記載の光起電力電池
【請求項18】
前記コポリマーが、水和に続いて少なくとも7日の間、貯蔵される、請求項に記載のスーパーキャパシタ、または請求項2に記載の光起電力電池
【請求項19】
前記コポリマーが、水和したコポリマーが、前記水和したコポリマーの総重量に基づいて、少なくとも10重量%の水を有するように水和される、請求項に記載のスーパーキャパシタ、または請求項2に記載の光起電力電池