(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022010830
(43)【公開日】2022-01-17
(54)【発明の名称】クロロプレンゴム系接着剤組成物
(51)【国際特許分類】
C09J 111/00 20060101AFI20220107BHJP
C09J 161/14 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
C09J111/00
C09J161/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020111590
(22)【出願日】2020-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000100698
【氏名又は名称】アイカ工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】中溝 隆太郎
【テーマコード(参考)】
4J040
【Fターム(参考)】
4J040CA141
4J040EB071
4J040HB02
4J040HB03
4J040HB18
4J040HB30
4J040KA23
4J040LA08
(57)【要約】
【課題】
高い熱時強度を示すクロロプレンゴム系接着剤組成物を得ることである。
【解決手段】
2価金属のハロゲン化物によりキレート化されたフェノール樹脂を含むクロロプレンゴム系接着剤組成物を提供することである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2価金属のハロゲン化物によりキレート化されたフェノール樹脂を含むクロロプレンゴム系接着剤組成物。
【請求項2】
キレート化されたフェノール樹脂が、フェノール樹脂100重量部に対し、2価金属のハロゲン化物0.2~150重量部によりキレート化されていることを特徴とする請求項1に記載のクロロプレンゴム系接着剤組成物。
【請求項3】
2価金属のハロゲン化物が、塩化カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛、塩化コバルトから選択されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のクロロプレンゴム系接着剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い熱時強度を示すクロロプレンゴム系接着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
クロロプレンゴム系接着剤組成物は、被着体に対する広い接着性、速い初期接着力の発現、耐熱性などの優れた特徴により、木工用、建築用、車両用などの用途に広く採用されている。
【0003】
クロロプレンゴム系接着剤組成物は、クロロプレンゴム、粘着付与成分としてのフェノール樹脂、ならびに加硫剤としての酸化マグネシウム等の配合剤と、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、n-ヘキサン、シクロヘキサン、アセトン、メチルエチルケトン、エチルアセテート、2-ブタノンなど溶剤を混合するなどして調製されている。
市場にもよるが、特に車両用は、高い熱時強度を示す様なクロロプレンゴム系接着剤組成物が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
特許文献1は、フェノール樹脂を酸化マグネシウムにてキレート化した例が示してあるが、熱時強度に関しては改善の余地が有った。
【0005】
【特許文献1】特開昭50-033511
【特許文献2】特開昭58-145719
【特許文献3】特開平1-156315
【特許文献4】特開平8-315825
【特許文献5】特開平1-192586
【特許文献6】特開平1-167321
【0006】
特許文献2は、キレート基を有するエーテル化フェノール樹脂に関するとあるが、重金属を捕捉するエ-テル結合を有するキレ-ト性イオン交換樹脂であって、接着剤として用いるには改善の余地が有った。特許文献3は、キレート樹脂の吸着効率が大きく向上し、しかも金属に対する選択性も向上させる公報で、接着に関する検討は行われていない。
【0007】
特許文献4は、電極内部の緩みが少なく、形態安定性に優れた電池用電極の製造法を提供する公報、特許文献5は、感圧記録紙用顕色剤及びその製法に関する公報で、何れも特許文献3同様、接着に関する検討は行われていない。
【0008】
特許文献6は、フェノール系樹脂からなる成形体の熱処理物である有機半導体に関する公報で、この公報も接着に関する検討は行われていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
高い熱時強度を示すクロロプレンゴム系接着剤組成物を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願の発明者らは、フェノール樹脂を、2価金属のハロゲン化物によりキレート化されたフェノール樹脂を含むクロロプレンゴム系接着剤組成物を発明するに至った。
【発明の効果】
【0011】
本発明のクロロプレンゴム系接着剤組成物は、高い熱時強度を示すので、木工用、建築用としてはもとより、高い信頼性が要求される車両用にも展開することが出来る。
【発明を実施するための形態】
【0012】
フェノール樹脂を2価金属のハロゲン化物によりキレート化されたフェノール樹脂を含むクロロプレンゴム系接着剤組成物を提供することである。
【0013】
フェノール樹脂は、アルキルフェノール樹脂、テルペンフェノール樹脂、何れも使用することができる。より好適には、アルキルフェノール樹脂である。
アルキルフェノール樹脂はアイカ工業社より販売されており、商品名:ショウノールBKS-307、商品名:ショウノールCKS-380A、商品名:ショウノールCKS-3898、商品名:ショウノールCKM-908、商品名:ショウノールBKS-355、商品名:ショウノールCKM-947、商品名:ショウノールCKM-1636、商品名:ショウノールCKM-5254C、商品名:ショウノールADM-8000、商品名:ADM-8200等が販売されている。
【0014】
フェノール樹脂のキレート化剤としては、2価の金属のハロゲン化物が使用される。2価の金属のハロゲン化物としては、塩化カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛、塩化コバルト等が挙げられる。なお、鉛化物は、環境配慮の観点から使用しない方が良い。
2価の金属のハロゲン化物の添加量は、フェノール樹脂100重量部に対し、0.2~150重量部、より好適には0.5~120重量部である。
【0015】
クロロプレン系ゴムは、市販品を使用することができる。デンカ社より、商品名:A-30、商品名:A-70、商品名:A-90、商品名:A-91、商品名:A-100、商品名:A-120、商品名:A-400、商品名:TA-85、商品名:M-40、商品名:M-130L、商品名:M-130H、商品名:DCR-11、商品名:DCR-12L/H等が販売されている。
なお、A-400、M-130L、M-130Hはトルエンカット品であるが、これらを使用しても何ら問題ない。
添加量としてはフェノール樹脂100重量部に対し、100~300重量部、より好適には150~250重量部である。
【0016】
溶剤としては、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、n-ヘキサン、シクロヘキサン、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、酢酸エチルの溶剤が挙げられ、複数の溶剤を組み合わせることが出来る。
なお、溶解性の観点から、フェノール樹脂のキレート化物溶液とゴム溶液をべつべつに作製し、最終的にこれら二液を混合する工程を取った方が良い。
フェノール樹脂のキレート化物溶液の溶剤添加量は、フェノール樹脂100重量部に対し50~150重量部、より好適には70~130重量部である。
ゴム溶液の溶剤添加量は、ゴムの添加量100重量部に対し、600~1000重量部、より好適には700~900重量部である。
【0017】
フェノール樹脂のキレート化物溶液作製の際、2価の金属のハロゲン化物の溶解性を向上させる為、水を添加することもできる。水の添加量は、フェノール樹脂100重量部に対し、0.1~20重量部、より好適には0.5~15重量部である。また水は、純度の関係でイオン交換水を用いた方が良い。
【0018】
ゴム溶液を作製する際、架橋剤として2価の金属のハロゲン化物を用いてもよいし、従来から使用されている酸化マグネシウム、酸化亜鉛等の金属酸化物を使用しても構わない。
添加量としては、2価の金属のハロゲン化物と金属酸化物の合計が、ゴムの添加量100重量部に対し、3~15重量部、より好適には4.5~12重量部である。
【0019】
以下、本発明について実施例及び比較例を挙げてより詳細に説明するが、具体例を示すものであって、特にこれらに限定するものではない。なお、部数は全て重量部である。
【実施例0020】
実施例1のクロロプレンゴム系接着剤組成物の作製
CKM-947を100g、MEKを100g、イオン交換水を3g、塩化カルシウムを1g、セパラブルフラスコに秤取り、撹拌羽を装着した新東科学社製、商品名:スリーワンモーターBL600にて2~3時間撹拌を行い溶解させ、フェノール樹脂のキレート化物溶液を得た。
A-90を200g、酸化マグネシウムを4g、酸化亜鉛を10g、n-ヘキサンを280g、シクロヘキサンを280g、MEKを400g、酢酸エチルを200g、セパラブルフラスコに秤取り、撹拌羽を装着した新東科学社製、商品名:スリーワンモーターBL600にて2~3時間撹拌を行い溶解させ、ゴム溶液を得た。
別のセパラブルフラスコに、フェノール樹脂のキレート化物溶液を51g、ゴム溶液を343.5g秤取り、撹拌羽を装着した新東科学社製、商品名:スリーワンモーターBL600にて1~2時間撹拌を行い溶解させ、実施例1のクロロプレンゴム系接着剤組成物の作製を行った。
【0021】
実施例2~25、比較例1~8のクロロプレンゴム系接着剤組成物の作製
表1~3に示した配合割合で、フェノール樹脂のキレート化物溶液、ゴム溶液を実施例1の樹脂組成物の作製と同様の手順で作製した後、実施例2~25、比較例1~8のクロロプレンゴム系接着剤組成物を作製した。
【0022】
常態強度、熱時強度、熱時クリープ試験、試験片作製方法
幅152.4mm、長さ304.8mmの11号帆布を用意し、実施例1~25、比較例1~8のクロロプレンゴム接着剤組成物を帆布に、面積が152.4mm×228.6mmと成るように、刷毛を用いて片面300g/m2に成るように塗布し、室温にて20分間保管した。この操作を3回繰り返した後、クロロプレンゴム接着剤組成物を塗布した帆布同士を貼り合わせ、5kgのハンドロールで片道5回圧着して接着試験体を作製した。この試験片を用い、常態強度、熱時強度、熱時クリープ試験を行った。
【0023】
常態強度測定方法
ASTM-D-1876-01に準拠して測定を行った。
ローラー圧着後の接着試験体を23℃及び相対湿度50%の雰囲気下で1時間養生してから、25.4mm幅に切断して測定用試験片とした。その試験片を引張試験機(エー・アンド・デイ社製 商品名:テンシロン)を用いて、23℃の雰囲気下において引張り速度254mm/minでT字剥離接着強さを測定した。なお、試験は10回行い、その平均値を常態強度とした。結果を表4~6に示す。判定基準は、3N/mm以上は合格、3N/mm未満は不合格である。
【0024】
熱時強度測定方法
ASTM-D-1876-01に準拠して測定を行った。
接着試験体を23℃及び相対湿度50%の雰囲気下で7日間養生してから、25.4mm幅に切断して測定用試験片とした。その試験片を引張試験機(エー・アンド・デイ社製 商品名:テンシロン)を用いて、80℃の雰囲気下において引張り速度254mm/minでT字剥離接着強さを測定した。なお、試験は10回行い、その平均値を熱時強度とした。結果を表4~6に示す。判定基準は、1.5N/mm以上は合格、1.5N/mm未満は不合格である。
【0025】
熱時クリープ試験方法
ASTM-D-1876-01に準拠して測定を行った。
接着試験体を23℃及び相対湿度50%の雰囲気下で7日間養生してから、25.4mm幅に切断して測定用試験片とした。その試験片にT字剥離となる様に200gの重り取り付けて、80℃の雰囲気下で24時間保管して試験片の剥がれた長さを測定した。なお、試験は10回行い、その平均値を熱時クリープ試験値とした。結果を表4~6に示す。判定基準は、5mm未満が合格、5mm以上は不合格である。なお、比較例8は、全剥離であったので、剥離と記入した。
【0026】
フェノール樹脂を、2価金属のハロゲン化物にてキレート化したフェノール樹脂を含むクロロプレンゴム系接着剤組成物である実施例1~25は、常態強度、熱時強度、クリープ試験全て合格と成った。
【0027】
フェノール樹脂を、2価金属のハロゲン化物にてキレート化したフェノール樹脂を含むクロロプレンゴム系接着剤組成物でない比較例1~8は、常態強度こそ合格と成ったが、熱時強度、熱時クリープ試験は不合格と成った。
【0028】
【0029】
【0030】
【0031】
【0032】
【0033】