(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022108351
(43)【公開日】2022-07-26
(54)【発明の名称】水洗大便器、及び便座
(51)【国際特許分類】
E03D 11/02 20060101AFI20220719BHJP
A47K 13/00 20060101ALI20220719BHJP
【FI】
E03D11/02 Z
A47K13/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021003278
(22)【出願日】2021-01-13
(71)【出願人】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】丸山 隆志
(72)【発明者】
【氏名】米津 直人
(72)【発明者】
【氏名】宇田 拓哉
【テーマコード(参考)】
2D037
2D039
【Fターム(参考)】
2D037AA02
2D037AA12
2D037AD00
2D039AA02
2D039AD00
2D039DB04
(57)【要約】
【課題】便座の下面を清潔に保ち易い水洗大便器、及び便座を提供することを目的とする。
【解決手段】水洗大便器T1は、便鉢部22、及び便鉢部22の上端部に連続したリム部22Aを有した便器本体20と、便器本体20に載せられており、リム部22Aの内周縁から内側に向けて内周縁が突出する突出寸法Pが、前領域Fよりも、前領域Fより後方の横領域Sの方が大きい便座32とを備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
便鉢部、及び前記便鉢部の上端部に連続したリム部を有した便器本体と、
前記便器本体に載せられており、前記リム部の内周縁から内側に向けて内周縁が突出する突出量が、前領域よりも、前記前領域より後方の横領域の方が大きい便座と、
を備える水洗大便器。
【請求項2】
前記突出量は、前記便座における前端部から左右方向に向けて大きくなる請求項1に記載の水洗大便器。
【請求項3】
前記リム部の内周面の上端部は、上下方向に直線状に伸びて、前記リム部の上面に連続し、上方からの平面視において、前記リム部の内周縁に囲まれた領域の中央部からの放射方向における前記リム部の上面の幅は、前記リム部における前端部から左右方向に向けて徐々に大きくなる請求項1から請求項2までのいずれか1項に記載の水洗大便器。
【請求項4】
上方からの平面視において、前記リム部の内周縁に囲まれた領域の中央部からの放射方向における前記リム部の上面の幅の前記突出量に対する比は、前記リム部における前端から左右方向両側に向けて途中までが減少し、途中から前記リム部の内周縁の前後方向中央の位置に向けて増加する請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の水洗大便器。
【請求項5】
前記便座は、前部に前記リム部の上面に接触する接触部を有しており、
前記リム部の上面と、前記便座の下面との間の寸法は、前記便座における前記接触部よりも前方の領域において、内周側よりも外周側の方が大きい請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の水洗大便器。
【請求項6】
前記接触部は第1接触部であり、
前記便座は、後部に前記リム部の上面に接触する第2接触部が設けられ、
前記リム部の上面と、前記便座の下面との間の寸法は、前記第1接触部から前記第2接触部に向かうにつれて徐々に大きくなっている請求項5に記載の水洗大便器。
【請求項7】
前記第1接触部よりも前方の領域には、前記便座の内周縁の曲率半径が前記リム部の内周縁の曲率半径よりも小さい領域がある請求項6に記載の水洗大便器。
【請求項8】
前記第1接触部よりも前方の領域における前記便座の内周縁の曲率半径の最大値と最小値との差は、前記第1接触部が前記リム部の上面に接触する部分よりも前方の領域における前記リム部の内周縁の曲率半径の最大値と最小値との差よりも大きい請求項6から請求項7までのいずれか1項に記載の水洗大便器。
【請求項9】
前記リム部の内周面は、下端から上端にかけて直線状に伸びている請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載の水洗大便器。
【請求項10】
便鉢部、及び前記便鉢部の上端部に連続したリム部を有した便器本体に載せられた便座であって、
前記リム部の内周縁から内側に向けて内周縁が突出する突出量が、前領域よりも、前記前領域より後方の横領域の方が大きい便座。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、水洗大便器、及び便座に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、便鉢部の前端部において、便鉢部の中央部に向けて突出した部分を有していない水洗大便器が開示されている。このような構成によって、この水洗大便器は、便鉢部の清掃を行い易くすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の水洗大便器には、便座が載せられている。この水洗大便器において、便座の内周縁は、便鉢部の内周よりも内側に突出しており、便座の下面の内周縁部が便鉢部内に臨む構成である。このため、この水洗大便器は、便座の下面の内周縁部に便鉢部内において跳ねた尿が付着し易く、便座の内周縁部の下面を清潔に保ち難い。
【0005】
本開示は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、便座の下面を清潔に保ち易い水洗大便器、及び便座を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つ目の開示の水洗大便器は、便鉢部、及び前記便鉢部の上端部に連続したリム部を有した便器本体と、前記便器本体に載せられており、前記リム部の内周縁から内側に向けて内周縁が突出する突出量が、前領域よりも、前記前領域より後方の横領域の方が大きい便座とを備える。
【0007】
2つ目の開示の便座は、便鉢部、及び前記便鉢部の上端部に連続したリム部を有した便器本体に載せられた便座であって、前記リム部の内周縁から内側に向けて内周縁が突出する突出量が、前領域よりも、前記前領域より後方の横領域の方が大きい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態の水洗大便器を右方から見た側面図である。
【
図4】便座が倒伏状態にされた実施形態の水洗大便器を上方から見た平面図であって、リム部の内周縁に囲まれた領域の中央部からの放射方向を示す。
【
図5】リム部の上面の幅寸法、便座の突出寸法、便座の突出寸法に対するリム部の上面の幅寸法の比を示す表である。
【
図6】便座が倒伏状態にされた実施形態の水洗大便器を上方から見た平面図であって、リム部の内周縁に囲まれた領域の中央部からの放射方向を示す。
【
図7】便座の下面とリム部の上面との間の外周側及び内周側の隙間寸法を示す表である。
【
図8】便座が倒伏状態にされた実施形態の水洗大便器の右半を上方から見た平面図であって、曲率半径が変化する位置でリム部の内周縁及び便座の内周縁を区分けした状態を示す。
【
図9】便座の内周縁の曲率半径、及びリム部の内周縁の曲率半径を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<実施形態>
以下、本開示を具体化した実施形態を
図1から
図9を参照しつつ説明する。以下の説明において、前後の方向については、
図1における左側を前方、右側を後方と定義する。上下の方向については、
図1にあらわれる向きをそのまま上方、下方と定義する。左右の方向については、
図1における奥側を右方、手前側を左方と定義する。具体的には、前後方向、左右方向、上下方向は、倒伏状態の便座32に着座した着座者から見て前後方向、左右方向、上下方向をそれぞれ示すものとする。前後方向は、厳密な前後方向に限らない。前後方向に対して僅かに傾いた向きも前後方向に含まれる。左右方向は、厳密な左右方向に限らない。左右方向に対して僅かに傾いた向きも左右方向に含まれる。上下方向は、厳密な上下方向に限らない。上下方向に対して僅かに傾いた向きも上下方向に含まれる。
【0010】
[便器本体の概要]
実施形態における水洗大便器T1は、
図1に示すように、便器本体20及び機能部30を備えている。便器本体20は、
図2に示すように、便鉢部22、リム部22A、便器排水部23、及び外周壁部24を有している。便器本体20は、陶器製である。便鉢部22、リム部22A、便器排水部23、及び外周壁部24は、一体に形成されている。
【0011】
便鉢部22は、棚部22B、及び窪み部22Cを有している。棚部22Bは、リム部22Aの内面の下端に連続して便鉢部22の中央部に向けて延びている。窪み部22Cは、上端が棚部22Bの内周縁に連続して下方に窪むように形成されている。窪み部22Cの下流端には、後述する便器排水部23が連続している。
【0012】
リム部22Aは、帯状をなして便鉢部22の上端部に連続して設けられている。右側のリム部22Aの前後方向中央部には、吐水口22Dが開口して形成されている。吐水口22Dは、図示しない導水部から供給される洗浄水を便鉢部22内に吐水する。吐水口22Dは、洗浄水を前向きに吐水する。上方からの平面視において、リム部22Aは、便鉢部22を覆っていない(
図2、3参照。)。リム部22Aの内周面22Fは、下端から上端にかけて直線状に伸びている(
図2、3参照。)。リム部22Aの内周面22Fの上端部は、上下方向に直線状に伸びている(
図2、3参照。)。リム部22Aの上面22Eは、曲面22Gを介して内周面22Fの上端縁に連続している。上面22Eは、概ね水平方向に拡がっている。上面22Eは、曲面22Hを介して、後述する外周壁部24の上端縁に連続している。リム部22Aの内周面22Fは、上端に向かうにつれて外向き(すなわち、上方からの平面視において、リム部22Aの内周縁に囲まれた領域の中央部T(
図4参照)から放射方向に離れる向き)に傾斜している(
図2、3参照。)。リム部22Aの内周面22Fの上端と下端との横方向(すなわち、上方からの平面視において、リム部22Aの内周縁に囲まれた領域の中央部T(
図4参照)からの放射方向)の寸法Lは、吐水口22Dの左右方向の寸法よりも小さい(
図3参照。)。
【0013】
便器排水部23は、上昇流路23B及び下降流路23Cを有している。上昇流路23Bは、便鉢部22の窪み部22Cの下流端に連続し、後向き斜め上方に延びている。下降流路23Cは、上昇流路23Bの下流端に連続し、概ね鉛直方向に垂下している。下降流路23Cの下流端は鉛直下方に開口している。
【0014】
外周壁部24は、
図1に示すように、前壁24A、及び左右壁24Bを有している。前壁24A及び左右壁24Bは、下向きに内側に傾斜している(
図1、3参照。)。外周壁部24の下端は設置面10に接触する。左右壁24Bは、上下方向及び前後方向に拡がっている。左右壁24Bの各々の後部には、便器排水部23を左右から覆うように、化粧板25が取り付けられている(
図1参照。)。
図1は、左側に取り付けられた化粧板25を示す。
【0015】
[機能部の概要]
機能部30は、便器装置31を有している。便器装置31は、水洗大便器T1を設置面10に設置した設置状態において、便器本体20の後部に設置される。便器装置31は、
図2に示すように、リム部22Aの上方に沿って配置された便座32と、リム部22Aを覆う便蓋33と、を軸R1、R2によって起立状態と倒伏状態に回動自在に軸支している。つまり、便座32は、便器本体20に載せられており、起立状態と倒伏状態との間を回転自在に設けられている。便器装置31には、洗浄ノズル装置や夜間に便鉢部22内を照らす照明装置等の機能部品が収容されている。洗浄ノズル装置及び照明装置は図示しない。
【0016】
便座32の内周縁は、
図4に示すように、前後方向に長い概ね楕円形状をなしている。便座32の内周縁において、前端部及び後端部の曲率半径は、左側及び右側の曲率半径よりも小さい。前端部の曲率半径は、後端部の曲率半径よりも小さい。便座32は、倒伏状態において、前部にリム部22Aの上面22Eに接触する接触部である一対の第1接触部32Aと、後部にリム部22Aの上面22Eに接触する接触部である一対の第2接触部32Bを有している。
【0017】
一対の第1接触部32A、及び一対の第2接触部32Bは、便座32の左側及び右側に1つずつ設けられている。第1接触部32A、及び第2接触部32Bは、便座32の下面32Cから下方に向けて突出している(
図2参照。)。第1接触部32A、及び第2接触部32Bは、上方から見た平面視における外形形状が長円形状をなしている。第1接触部32Aの長手方向は、便座32の前端に向けて左右方向中央に傾いている。第2接触部32Bの長手方向は、左右方向に向いている。第1接触部32Aの全体は、リム部22Aの上面22Eに位置している。第2接触部32Bの一部は、リム部22Aの内周縁よりもリム部22Aの内側に位置している。第1接触部32A、及び第2接触部32Bは、便座32を軸支する軸R1よりも前方に位置している。第1接触部32Aは、第2接触部32Bよりも軸R1から離れている。ここでいうリム部22Aの内周縁とは、リム部22Aの内周面22Fの上端縁である。便座32において一対の第1接触部32Aよりも前方の領域は、前領域Fである。便座32において一対の第1接触部32Aから後の領域は、横領域Sである。
【0018】
[リム部の上端部の内周縁よりもリム部の内側に向けて便座の内周縁が突出する突出量について]
便器本体20の上方に倒伏状態に配置された便座32の内周縁部は、リム部22Aの内周縁よりも内側に突出している(
図2、3、4参照。)。リム部22Aの内周縁の位置は、
図4に示すリム部22Aの内周面22Fの位置に相当する。
【0019】
上方から見た平面視において、リム部22Aの内周縁に囲まれた領域の中央部Tからの放射方向A1,B1,C1,D1におけるリム部22Aの上面22Eの幅である幅寸法W(以下、単に幅寸法Wともいう)、便座32においてリム部22Aの内周縁から内側に向けて便座32の内周縁が突出する突出量である突出寸法P(以下、単に突出寸法Pともいう)、及び幅寸法Wの突出寸法Pに対する比R(以下、単に比Rともいう)を
図5に示す。比Rは、幅寸法Wを突出寸法Pによって除した値である。放射方向A1は、左右方向中央において前に向かう方向である。放射方向D1は、リム部22Aの前後方向中央部において右に向かう方向である。放射方向A1,B1,C1,D1は、上方からの平面視において、隣合う方向同士のなす角度が概ね30°である。
【0020】
ここでいうリム部22Aの上面22Eの幅とは、リム部22Aの内周縁に囲まれた領域の中央部Tからの放射方向における外周壁部24の上端と、リム部22Aの内周面22Fの上端と、の間の寸法である。つまり、リム部22Aの上面22Eは、外周壁部24の上端に連続する曲面22Hと、内周面22Fの上端に連続する曲面22Gと、を含む。
【0021】
図4、5に示すように、便座32が倒伏状態において、リム部22Aの内周縁から内側に向けて内周縁が突出する突出寸法Pは、便座32における前端部から左右方向に向けて大きくなっている。突出寸法Pは、便座32における前領域Fよりも、前領域Fより後方の横領域Sの方が大きい。上方からの平面視において、リム部22Aの内周縁に囲まれた領域の中央部Tからの放射方向A1,B1,C1,D1におけるリム部22Aの上面22Eの幅寸法Wは、リム部22Aにおける前端部から左右方向に向けて徐々に大きくなっている。
【0022】
上方からの平面視において、幅寸法Wの突出寸法Pに対する比Rは、リム部22Aにおける前端から左右方向両側に向けて途中までが減少し、途中から左右方向両側の各々におけるリム部22Aの内周縁の前後方向中央の位置に向けて増加している(
図5参照。)。具体的には、比Rは、放射方向A1からC1にかけて減少し、放射方向C1からD1に向けて増加している。
【0023】
[便座の倒伏状態において、リム部の上面と便座の下面との間の寸法について]
リム部22Aの内周縁に囲まれた領域の中央部Tからの放射方向A11,B11,C11,D11,E11,F11,G11,H11,I11,J11,K11を
図6に示す。放射方向A11は、左右方向中央において前に向かう方向である。放射方向H11は、リム部22Aの前後方向中央部において概ね右に向かう方向である。放射方向D11は、第1接触部32Aを横切る。放射方向J11は、第2接触部32Bを横切る。
【0024】
便座32の倒伏状態において、リム部22Aの内周縁に囲まれた領域の中央部Tからの放射方向A11,B11,C11,D11,E11,F11,G11,H11,I11,J11,K11の各々におけるリム部22Aの上面22Eと、便座32の下面32Cとの間の寸法G1,G2(以下、単に寸法G1,G2ともいう)を
図7に示す。寸法G1は、リム部22Aの外周側における寸法である。寸法G2は、リム部22Aの内周側における寸法である。寸法G1,G2は、
図7に示すように、第1接触部32Aから第2接触部32Bに向かうにつれて徐々に大きくなっている。具体的には、放射方向E11,F11,G11,H11にかけて、寸法G1,G2は徐々に大きくなっている。
【0025】
便座32の倒伏状態において、便座32における第1接触部32Aよりも前方の領域(前領域F)において、寸法G2よりも寸法G1の方が大きくなっている。つまり、放射方向D11よりも前方に位置する放射方向A11,B11,C11において、リム部22Aの上面22Eと、便座32の下面32Cとの間の寸法は、内周側の寸法G2よりも外周側の寸法G1の方が大きくなっている。
【0026】
便座32の倒伏状態におけるリム部22Aの前後方向中央部よりも前方の領域であって、第1接触部32Aよりも後方の領域において、寸法G2よりも寸法G1の方が小さくなっている。具体的には、放射方向H11よりも前方、且つ放射方向D11よりも後方に位置する放射方向E11,F11,G11において、寸法G2よりも寸法G1の方が小さくなっている。
【0027】
[便座の内周縁の曲率半径について]
上方からの平面視において、曲率半径が変化する位置でリム部22Aの内周縁及び便座32の内周縁を区切り、リム部22Aの内周縁及び便座32の内周縁を領域A21,B21,C21,D21,E21,F21,G21に分けた状態を
図8に示す。領域A21,B21,C21,D21,E21,F21,G21の各々において、リム部22Aの内周縁及び便座32の内周縁の曲率半径は概ね同じである。
【0028】
図9は、領域A21,B21,C21,D21,E21,F21,G21の各々における値を示す。領域G21における便座32の内周縁の曲率半径H1は、測定していない。領域B21,C21における便座32の内周縁の曲率半径H1は同じである。
【0029】
第1接触部32Aは、
図8に示すように、領域C21と領域B21に跨るように位置している。第1接触部32Aよりも前方の領域(前領域F)には、
図9に示すように、リム部22Aの内周縁の曲率半径H2よりも小さい領域A21がある。具体的には、第1接触部32Aよりも前方の領域(前領域F)である領域A21における便座32の内周縁の曲率半径H1は30mmであり、領域A21におけるリム部22Aの内周縁の曲率半径H2は120mmである。第1接触部32Aよりも前方の領域(前領域F)において、便座32の内周縁の曲率半径H1と、リム部22Aの内周縁の曲率半径H2との比は、1:1.5から1:5が好ましく、1:3から1:4がより好ましい。
【0030】
第1接触部32Aよりも前方の領域(前領域F)における便座32の内周縁の曲率半径H1の最大値と最小値との差は、第1接触部32Aがリム部22Aの上面22Eに接触する部分よりも前方の領域(前領域F)におけるリム部22Aの内周縁の曲率半径H2の最大値と最小値との差よりも大きくなっている。
【0031】
具体的には、第1接触部32Aがリム部22Aの上面22Eに接触する部分よりも前方の領域B21,A21において、リム部22Aの内周縁の曲率半径H2は、それぞれ130mm、120mmである。つまり、第1接触部32Aがリム部22Aの上面22Eに接触する部分よりも前方の領域(前領域F)におけるリム部22Aの内周縁の曲率半径H2の最大値は130mmであり、最小値は120mmである。第1接触部32Aがリム部22Aの上面22Eに接触する部分よりも前方の領域(前領域F)におけるリム部22Aの内周縁の曲率半径H2の最大値と最小値との差は、130mm-120mm=10mmである。
【0032】
これに対して、第1接触部32Aがリム部22Aの上面22Eに接触する部分よりも前方の領域B21,A21において、便座32の内周縁の曲率半径H1は、それぞれ150mm、30mmである。つまり、第1接触部32Aがリム部22Aの上面22Eに接触する部分よりも前方の領域(前領域F)における便座32の内周縁の曲率半径H1の最大値は150mmであり、最小値は30mmである。第1接触部32Aがリム部22Aの上面22Eに接触する部分よりも前方の領域(前領域F)における便座32の内周縁の曲率半径H1の最大値と最小値との差は、150mm-30mm=120mmである。
【0033】
上記のように構成された実施形態の作用及び効果について説明する。
【0034】
本開示の水洗大便器T1は、便鉢部22、及び便鉢部22の上端部に連続したリム部22Aを有した便器本体20と、便器本体20に載せられており、リム部22Aの内周縁から内側に向けて内周縁が突出する突出寸法Pが、前領域Fよりも、前領域Fより後方の横領域Sの方が大きい便座32とを備えている。この構成によれば、水洗大便器T1は、前領域Fにおいて、リム部22Aに対向せず露出する便座32の下面32Cの面積を抑えることができるため、便鉢部22内において跳ねた尿が便座32の下面32Cに付着し難くすることができる。これと共に、横領域Sの突出寸法Pが前領域Fの突出寸法Pよりも大きいので、リム部22Aに対して便座32が左右方向にずれた際に、リム部22Aの上面22Eが便座32の内周縁よりも内側に見え難くすることができる。
【0035】
本開示の水洗大便器T1における突出寸法Pは、便座32における前端部から左右方向に向けて大きくなる。この構成によれば、水洗大便器T1は、前端部において、リム部22Aに対向せず露出する便座32の下面32Cの面積を左右方向両側よりも抑えることができるため、便鉢部22内における左右方向両側に比べ、跳ねた尿が便座32の前端部の下面32Cに付着し難くすることができる。これと共に、横領域Sの突出寸法Pが前領域Fの突出寸法Pよりも大きいので、リム部22Aに対して便座32が左右方向にずれた際に、リム部22Aの上面22Eが便座32の内周縁よりも内側に見え難くすることができる。
【0036】
本開示の水洗大便器T1のリム部22Aの内周面22Fの上端部は、上下方向に直線状に伸びて、前記リム部22Aの上面22Eに連続し、上方からの平面視において、リム部22Aの内周縁に囲まれた領域の中央部Tからの放射方向A1,B1,C1,D1におけるリム部22Aの上面22Eの幅は、リム部22Aにおける前端部から左右方向に向けて徐々に大きくなる。この構成によれば、小便が付着し易く、付着したままとなりがちな前領域Fのリム部22Aの上面22Eの幅を小さくすることによって、水洗大便器T1は、小便の飛沫が付着したままになりがちな領域を少なくできると共に、リム部22Aの内周面22Fの清掃を行い易い。
【0037】
本開示の水洗大便器T1は、上方からの平面視において、リム部22Aの内周縁に囲まれた領域の中央部Tからの放射方向A1,B1,C1,D1におけるリム部22Aの上面22Eの幅寸法Wのリム部22Aの上面22Eの幅の突出寸法Pに対する比Rは、リム部22Aにおける前端から左右方向両側に向けて途中までが減少し、途中からリム部22Aの内周縁の前後方向中央の位置に向けて増加する。この構成によれば、比Rは、便鉢部22における前端と、左右方向両側との間が、便鉢部22における前端、及び左右方向両側よりも小さいので、便鉢部22の前端部における曲率半径を大きくし易い。これによって、便鉢部22の前端部における洗浄水の流れる向きを緩やかに変更することができるため、便鉢部22内の洗浄を良好にすることができると共に、便鉢部22から洗浄水が飛び出すことを抑制することができる。
【0038】
本開示の水洗大便器T1の便座32は、前部にリム部22Aの上面22Eに接触する第1接触部32Aを有しており、リム部22Aの上面22Eと、便座32の下面32Cとの間の寸法は、便座32における第1接触部32Aよりも前方の領域(前領域F)において、内周側よりも外周側の方が大きい。この構成によれば、便座32の内周側においては、リム部22Aの上面22Eと便座32の下面32Cとの間に跳ねた尿が進入し難くすると共に、便座32の外周側においては、便座32を起立状態にする際に手を掛け易くすることができる。
【0039】
本開示の水洗大便器T1の便座32は、後部にリム部22Aの上面22Eに接触する第2接触部32Bが設けられ、リム部22Aの上面22Eと、便座32の下面32Cとの間の寸法は、第1接触部32Aから第2接触部32Bに向かうにつれて徐々に大きくなっている。便座32を軸支する軸R1は、第2接触部32Bよりも後方に設けられる。このため、リム部22Aの上面22Eと、リム部22Aの上面22Eに対向する倒伏状態の便座32の下面32Cとの間の寸法が第1接触部32Aから第2接触部32Bに向かうにつれて徐々に小さくなる構成の場合、第2接触部32Bよりも軸R1から離れた第1接触部32A付近の便座32にリム部22Aに向かう方向の荷重をかけると、てこの作用が働き、軸R1が支点となり、第2接触部32B側が位置する付近が作用点となり、リム部22Aの上面22Eに大きな荷重が係ることが考えられる。しかし、この構成によれば、第2接触部32B側がリム部22Aの上面22Eに先当たりし難くなるので、第2接触部32B側が位置するリム部22Aの上面22Eに大きな荷重が係ることを防止できる。
【0040】
本開示の水洗大便器T1の第1接触部32Aよりも前方の領域(前領域F)には、便座32の内周縁の曲率半径H1がリム部22Aの内周縁の曲率半径H2よりも小さい領域A21がある。この構成によれば、リム部22Aにおいては、前方の領域(前領域F)における曲率半径H2の変化を抑え易いため、便鉢部22内において、洗浄水を良好に旋回させて流し易くすることができる。便座32においては、前方の領域(前領域F)における曲率半径H1の変化を大きくし易いため、便座32の内周縁における左右方向の開口幅を狭くし易く、使用者が着座し易くすることができる。
【0041】
本開示の水洗大便器T1は、第1接触部32Aよりも前方の領域(前領域F)における便座32の内周縁の曲率半径H1の最大値と最小値との差は、第1接触部32Aがリム部の上面に接触する部分よりも前方の領域(前領域F)におけるリム部22Aの内周縁の曲率半径H2の最大値と最小値との差よりも大きい。この構成によれば、リム部22Aにおいては、前方の領域(前領域F)における曲率半径H2の最大値と最小値との差が便座32より小さいので、便鉢部22内において、洗浄水を良好に旋回させて流し易くすることができる。便座32においては、前方の領域(前領域F)における曲率半径H1の最大値と最小値との差がリム部22Aより大きいので、前領域Fにおける便座32の曲率半径H1を小さくし易い。これによって便座32の内周縁における左右方向の開口幅を狭くし易く、使用者が着座し易くすることができる。
【0042】
本開示の水洗大便器T1のリム部22Aの内周面22Fは、下端から上端にかけて直線状に伸びている。この構成によれば、リム部22Aの内周面22Fが下端から上端にかけて直線状に伸びているので、本開示の水洗大便器T1は、リム部22Aの内周面22Fの清掃を行い易い。
【0043】
本開示の便座32は、便鉢部22、及び便鉢部22の上端部に連続したリム部22Aを有した便器本体20に載せられている。便座32は、リム部22Aの内周縁から内側に向けて内周縁が突出する突出寸法Pが、前領域Fよりも、前領域Fより後方の横領域Sの方が大きい。この構成によれば、便座32は、前領域Fにおいて、リム部22Aに対向せず露出する下面32Cの面積を抑えることができ、便鉢部22内において跳ねた尿が下面32Cに付着し難くすることができる。これと共に、横領域Sの突出寸法Pが前領域Fの突出寸法Pよりも大きいので、リム部22Aに対して便座32が左右方向にずれた際に、リム部22Aの上面22Eが便座32の内周縁よりも内側に見え難くすることができる。
【0044】
<他の実施形態>
本開示は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本開示の技術的範囲に含まれる。
(1)実施形態において第1接触部よりも前方の領域には、便座の内周縁の曲率半径がリム部の内周縁の曲率半径よりも小さい領域があることを開示している。これに限らず、第2接触部よりも後方の領域に、便座の内周縁の曲率半径がリム部の内周縁の曲率半径よりも小さい領域がある構成としてもよい。例えば、便鉢の前部から後向きに洗浄水が吐水される構成である場合、リム部においては、後方の領域における曲率半径の変化を抑え易いため、便鉢部内において、洗浄水を良好に旋回させて流し易くすることができる。便座においては、後方の領域における曲率半径の変化を大きくし易いため、便座の内周縁における左右方向の開口幅を狭くし易く、使用者が着座し易くすることができる。
(2)実施形態では、第1接触部よりも前方の領域における便座の内周縁の曲率半径の最大値と最小値との差は、第1接触部がリム部の上面に接触する部分よりも前方の領域におけるリム部の内周縁の曲率半径の最大値と最小値との差よりも大きいことを開示している。これに限らず、第2接触部よりも後方の領域における便座の内周縁の曲率半径の最大値と最小値との差は、第2接触部がリム部の上面に接触する部分よりも後方の領域におけるリム部の内周縁の曲率半径の最大値と最小値との差よりも大きくしてもよい。この構成によれば、リム部においては、後方の領域における曲率半径の最大値と最小値との差が便座より小さいので、便鉢部内において、洗浄水を良好に旋回させて流し易くすることができる。便座においては、後方の領域における曲率半径の最大値と最小値との差がリム部より大きいので、便座の内周縁における左右方向の開口幅を狭くし易く、使用者が着座し易くすることができる。
(3)実施形態では、リム部の内周面が上端に向かうにつれて外向きに傾斜している。これに限らず、リム部の内周面が上端に向かうにつれて内向き(すなわち、上方からの平面視において、リム部の内周縁に囲まれた領域の中央部に近づく向き)に傾斜していてもよい。この場合、リム部の内周面の上端と下端との横方向(すなわち、上方からの平面視において、リム部の内周縁に囲まれた領域の中央部からの放射方向)の寸法は、吐水口の左右方向の寸法よりも小さいことが好ましい。
【符号の説明】
【0045】
20…便器本体、22…便鉢部、22A…リム部、22E…リム部の上面、22F…リム部の内周面、32…便座、32A…第1接触部(接触部)、32B…第2接触部、32C…便座の下面、F…前領域(前方の領域)、P…突出寸法(突出量)、S…横領域、T1…水洗大便器、W…幅寸法(リム部の上面の幅)