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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022108367
(43)【公開日】2022-07-26
(54)【発明の名称】回転駆動装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 57/04 20100101AFI20220719BHJP
【FI】
F16H57/04 J
F16H57/04 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021003308
(22)【出願日】2021-01-13
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】片山 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】阪口 和幸
(72)【発明者】
【氏名】家入 宏
【テーマコード(参考)】
3J063
【Fターム(参考)】
3J063AA01
3J063AB01
3J063AC03
3J063BA11
3J063CA01
3J063CB17
3J063CD42
3J063XD03
3J063XD43
3J063XD47
3J063XD62
3J063XF05
3J063XF06
(57)【要約】
【課題】一端側から他端側にかけてシャフト内を効率的に潤滑油を流動させ、シャフトの他端側を支持するベアリングへの潤滑油の到達時間を短縮できる回転駆動装置を提供する。
【解決手段】回転駆動装置100は、軸方向に一端3aおよび他端3bを有し、一端3a側から他端3b側に向けて冷媒が流動可能な冷媒流路が設けられたシャフトS3と、シャフトS3を内部に収容する変速機ケース14と、変速機ケース14内においてシャフトS3の他端3b側に配置され、シャフトS3を回転可能に支持するベアリング62bと、を備える。シャフトS3は、軸方向において他端3bに位置する端面3cを含む。変速機ケース14には、軸方向において隙間を空けて端面3cに対向する対向面部が設けられている。端面3cおよび対向面部のいずれか一方に、シャフト3Sの回転に伴って他端3b側に負圧を発生させる溝部が設けられている。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に一端および他端を有し、前記一端側から前記他端側に向けて潤滑由が流動可能な油路が設けられたシャフトと、
前記シャフトを内部に収容する変速機ケースと、
前記変速機ケース内において前記シャフトの前記他端側に配置され、前記シャフトを回転可能に支持するベアリングと、を備え、
前記シャフトは、前記軸方向において前記他端に位置する端面を含み、
前記変速機ケースには、前記軸方向において隙間を空けて前記端面に対向する対向面部が設けられており、
前記端面および前記対向面部のいずれか一方に、前記シャフトの回転に伴って前記他端側に負圧を発生させる溝部が設けられている、回転駆動装置。
【請求項2】
前記変速機ケースは、前記軸方向において前記シャフトの前記他端側に対向する対向壁部を有し、
前記対向壁部が有する内表面には、前記シャフトの中心軸と同軸となるように環状部が設けられており、
前記対向面部は、前記軸方向において前記シャフトの前記端面側に対向する前記環状部の端面によって構成されている、請求項1に記載の回転駆動装置。
【請求項3】
前記溝部は、複数設けられており、
複数の前記溝部は、前記シャフトの中心軸に対して放射状に設けられている、請求項1または2に記載の回転駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、変速機に搭載される回転駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の回転駆動装置として、特開2020-031492号公報(特許文献1)には、内部に潤滑由が流動可能な油路が設けられた駆動シャフトが、変速機内においてベアリングに回転可能に支持される構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-031492号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の駆動シャフトは、軸方向の一端側から他端側に向けて潤滑由が流れるように油路が設けられている。駆動シャフトは、一般的には、一端側と他端側でベアリングによって支持されている。駆動シャフトの一端側から他端側に潤滑由が流れる構成にあっては、駆動シャフト内を潤滑油が通過した後に、駆動シャフトの他端側に配置されたベアリングに潤滑油が供給される。このため、当該ベアリングに潤滑油が供給されるまでに時間を要し、運転開始直後には、当該ベアリングが潤滑不足となることが起こり得る。
【0005】
本開示は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、本開示の目的は、一端側から他端側にかけてシャフト内を効率的に潤滑油を流動させ、シャフトの他端側を支持するベアリングへの潤滑油の到達時間を短縮できる回転駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に基づく回転駆動装置は、軸方向に一端および他端を有し、上記一端側から上記他端側に向けて冷媒が流動可能な冷媒流路が設けられたシャフトと、上記シャフトを内部に収容する変速機ケースと、上記変速機ケース内において上記シャフトの上記他端側に配置され、上記シャフトを回転可能に支持するベアリングと、を備える。上記シャフトは、上記軸方向において上記他端に位置する端面を含む。上記変速機ケースには、上記軸方向において隙間を空けて上記端面に対向する対向面部が設けられている。上記端面および上記対向面部のいずれか一方に、上記シャフトの回転に伴って上記他端側に負圧を発生させる溝部が設けられている。
【0007】
上記構成によれば、シャフトの他端に設けられた端面、あるいは、当該端面に対して隙間をあけて対向する対向面部に溝部が設けられていることにより、シャフトが回転した場合には、溝部に沿って空気が上記他端の周囲に送出されて、シャフトの他端側に負圧が発生する。これにより、シャフトの一端側に供給される潤滑油が、シャフトの他端側に向けて吸い込まれ、シャフト内で効率的に潤滑油を流動させることができる。この結果、シャフトの一端側から外部に潤滑油が漏れ出すことを抑制しつつ、シャフトの他端側に配置されたベアリングへの潤滑油の到達時間を短縮することができる。
【0008】
上記本開示に基づく回転駆動装置にあっては、上記変速機ケースは、上記軸方向において上記シャフトの上記他端側に対向する対向壁部を有する。この場合には、上記対向壁部が有する内表面には、上記シャフトの中心軸と同軸となるように環状部が設けられていてもよく、上記対向面部は、上記軸方向において上記シャフトの上記端面側に対向する上記環状部の端面によって構成されていてもよい。
【0009】
上記構成によれば、シャフトの端面から軸方向に間隔をあけて当該端面に対向する環状部を変速機ケースに設けることにより、簡素な構成で、一端側から他端側にかけてシャフト内を効率的に潤滑油を流動させ、シャフトの他端側を支持するベアリングへの潤滑油の到達時間を短縮できる。
【0010】
上記本開示に基づく回転駆動装置にあっては、上記溝部は、複数設けられていてもよい。この場合には、複数の上記溝部は、上記シャフトの上記中心軸に対して放射状に設けられていてもよい。
【0011】
上記構成によれば、シャフト内の空気をより効果的に他端側からシャフト外部に送出することができる。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、一端側から他端側にかけてシャフト内を効率的に潤滑油を流動させ、シャフトの他端側を支持するベアリングへの潤滑油の到達時間を短縮できる回転駆動装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施の形態に係る動力伝達装置の構成を示す図である。
図2図1の車両用動力伝達装置に備えられる複数のシャフトの位置関係を示す断面図である。
図3】実施の形態に係る動力伝達装置に具備される潤滑装置を示す図である。
図4】実施の形態に係る動力伝達装置に具備される回転駆動装置を示す概略断面図である。
図5】実施の形態に係る動力伝達装置の変速機ケースに設けられた環状部を示す斜視図である。
図6】実施の形態に係る回転駆動装置においてシャフトの他端側の空気の流れを示す図である。
図7】実施の形態に係る回転駆動装置に空気および冷媒が流れる様子を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示の実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。なお、以下に示す実施の形態においては、同一のまたは共通する部分について図中同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0015】
図1は、実施の形態に係る動力伝達装置の構成を示す図である。図1を参照して、実施の形態1に係る動力伝達装置12について説明する。
【0016】
図1に示すように、動力伝達装置12は、車両10に搭載されている。車両10は、エンジン駆動車両、走行用の駆動力源としてエンジンの他に走行用回転機すなわち駆動用電動機を有するハイブリッド車両である。なお、車両10は、駆動力源として電動モータのみを備えている電気自動車でもよい。
【0017】
動力伝達装置12は、複数のシャフトが車両幅方向に沿って配置されるFF(フロントエンジン・フロントドライブ)等の横置き型のトランスアクスルが好適に用いられるが、FR型や4輪駆動型の動力伝達装置であってもよい。動力伝達装置12の出力部は、例えば駆動力源からギヤ機構等を介して伝達された駆動力を左右の駆動輪へ出力するディファレンシャル装置などである。
【0018】
具体的には、動力伝達装置12は、車両幅方向と略平行な第1シャフトS1~第4シャフトS4を備えている。第1シャフトS1上には、駆動力源であるエンジン20に連結された入力軸22が設けられているとともに、その第1シャフトS1と同心にシングルピニオン型の遊星歯車装置24および第1電動機MG1が配設されている。
【0019】
遊星歯車装置24および第1電動機MG1は電動式差動部26として機能するものである。差動機構である遊星歯車装置24のキャリア24cに入力軸22が連結され、サンギヤ24sに第1電動機MG1が連結されている。リングギヤ24rには、出力歯車Geが設けられている。
【0020】
第1電動機MG1は差動制御用回転機に相当する。第1電動機MG1は、電動モータおよび発電機として択一的に用いられるものである。発電機として機能する回生制御などでサンギヤ24sの回転速度が連続的に制御されることにより、エンジン20の回転速度が連続的に変化させられて出力歯車Geから出力される。また、第1電動機MG1のトルクが0とされてサンギヤ24sが空転させられることにより、エンジン20の連れ廻りが防止される。エンジン20は、燃料の燃焼によって動力を発生する内燃機関である。
【0021】
第2シャフトS2上には、シャフト28の両端に減速大歯車Gr1および減速小歯車Gr2が設けられた減速歯車装置30が配設されている。減速大歯車Gr1は、出力歯車Geと噛み合わされている。減速大歯車Gr1は、第3シャフトS3上に配設された第2電動機MG2のモータ出力歯車Gmと噛み合わされている。
【0022】
第2電動機MG2は、電動モータおよび発電機として択一的に用いられるものである。第2電動機MG2は、電動モータとして機能するように力行制御されることにより、ハイブリッド車両の走行用(駆動用)駆動力源として用いられる。この第2電動機MG2は走行用電動機に相当する。
【0023】
減速小歯車Gr2は、第4シャフトS4上に配設されたディファレンシャル装置32のデフリングギヤGdと噛み合わされている。エンジン20および第2電動機MG2からの駆動力がディファレンシャル装置32を介して左右のドライブシャフト36に分配され、左右の駆動輪38に伝達される。このディファレンシャル装置32は出力部に相当し、デフリングギヤGdは入力ギヤに相当する。
【0024】
上記の、遊星歯車装置24、出力歯車Ge、減速大歯車Gr1、減速小歯車Gr2、デフリングギヤGd等によってギヤ機構が構成されている。
【0025】
図2は、図1の車両用動力伝達装置に備えられる複数のシャフトの位置関係を示す断面図である。
【0026】
図2に示すように、第4シャフトS4は、第1シャフトS1~第4シャフトS4の中で最も車両下方側位置に定められており、第2シャフトS2および第3シャフトS3は第4シャフトS4の上方位置に定められており、第1シャフトS1は第4シャフトS4よりも車両前側の斜め上方位置に定められている。
【0027】
ケース14内の上部にはキャッチタンク70が設けられている。キャッチタンク70は、両上方側が開口するように形成されている。たとえば、デフリングギヤGdの回転に伴って掻き上げられた潤滑油が、キャッチタンク70の有する開口部から流入してキャッチタンク70の内部に貯留される。当該キャッチタンク70によって第3オイル貯留部72が形成されている。
【0028】
キャッチタンク70は、第1電動機MG1の車両上方側に設けられている。なお、キャッチタンク70は、第2電動機MG2の車両上方側に設けられていてもよい。
【0029】
このような車両10においては、EV(Electric Vehicle)走行モードおよびHV(Hybrid Vehicle)走行モードが実行可能である。
【0030】
具体的には、EV走行モードは、エンジン20を回転停止させた状態で第2電動機MG2を力行制御することにより駆動力源として用いて走行するもので、低要求駆動力すなわち低負荷の領域で選択される。
【0031】
HV走行モードは、第1電動機MG1に回生制御によって反力を発生させつつ、エンジン20を駆動力源として用いて走行するもので、EV走行モードよりも高要求駆動力すなわち高負荷の領域で選択される。なお、HV走行モードの代わりに、或いはHV走行モードに加えて、常にエンジン20のみを駆動力源として用いて走行するエンジン走行モード等が設けられてもよい。
【0032】
図3は、実施の形態に係る動力伝達装置に具備される潤滑装置を示す図である。
図3に示すように、潤滑装置40は、吸入装置として第1オイルポンプP1および第2オイルポンプP2を備えており、それぞれ異なる独立の第1供給経路42、第2供給経路44に接続されて動力伝達装置12の各部を分担して潤滑するようになっている。
【0033】
第1オイルポンプP1は、図1に示すように、デフリングギヤGdと噛み合わされたポンプ駆動歯車Gpを介して出力部(ディファレンシャル装置32)によって機械的に回転駆動される。第2オイルポンプP2は、入力軸22に連結されてエンジン20により機械的に回転駆動される。
【0034】
第1オイルポンプP1は、デフリングギヤGdに連動して回転する減速大歯車Gr1や減速小歯車Gr2等にポンプ駆動歯車Gpを噛み合わせて回転駆動されるようにすることも可能である。
【0035】
第1オイルポンプP1および第2オイルポンプP2は、ケース14の底部に設けられたオイル貯留部46から潤滑油を吸入して、第1供給経路42、第2供給経路44へ出力する。オイル貯留部46は、ケース14そのものによって構成されている。オイル貯留部46は、隔壁52によって車両前後方向における後方側部分に区分けされた第1オイル貯留部50と、車両前後方向における前方側部分に区分けされた第2オイル貯留部56とを備えている。
【0036】
第1オイル貯留部50は、ディファレンシャル装置32の下方に位置する。第2オイル貯留部56は、遊星歯車装置24等が配置された第1シャフトS1の下方に位置する。第1オイル貯留部50内には、第1オイルポンプP1の吸入口58が配置されている。第2オイル貯留部56内には、第2オイルポンプP2の吸入口60が配置されている。吸入口58、60は、それぞれ独立に設けられた別々の吸入油路を介して第1オイルポンプP1、第2オイルポンプP2に接続されている。
【0037】
第1供給経路42は、第1オイルポンプP1の吐出側に接続されて動力伝達装置12の各部に潤滑油を供給する。具体的には、第1供給経路42は、動力伝達装置12の各部のベアリング62やギヤ機構64(Ge、Gr1、Gr2、Gd、Gm、Gpなど)等へ潤滑油を供給するとともに、第3オイル貯留部72へ潤滑油を供給するように構成されている。
【0038】
第2オイルポンプP2の吐出側に接続された第2供給経路44は、第2オイル貯留部56の上方に位置する入力軸22や遊星歯車装置24、第1電動機MG1に潤滑油を供給して冷却する。第2供給経路44には熱交換器66が設けられており、潤滑油を冷却して第1電動機MG1および第2電動機MG2に供給する。これにより、第1電動機MG1および第2電動機MG2を冷却することができる。熱交換器66は、たとえば空冷や水冷による熱交換で潤滑油を冷却するオイルクーラである。
【0039】
第3オイル貯留部72は、静止時油面高さLstよりも車両上方側に設けられている。第3オイル貯留部72は、第1オイル貯留部50および第2オイル貯留部56よりも車両上方側に設けられている。
【0040】
第3オイル貯留部72は、第1流出口74を有する。潤滑油が予め設定されている所定量を超えて貯留された場合には、潤滑油が自重によって第1流出口74から第1オイル貯留部50に向けて流出する。
【0041】
第3オイル貯留部72は、第1流出口74よりも車両下方側に第2流出口80を有している。第2流出口80は、第3オイル貯留部72に貯留される潤滑油が予め設定された所定量以下の場合すなわち予め設定された所定量を超えていない場合であっても、第2オイル貯留部56を経由することなく第1オイル貯留部50に向けて潤滑油を自重によって連続的に流出させる。
【0042】
図4は、実施の形態に係る動力伝達装置に具備される回転駆動装置を示す概略断面図である。
【0043】
図4に示すように、実施の形態に係る回転駆動装置100は、変速機ケースとしてのケース14、第2電動機MG2に設けられた第3シャフトS3と、ベアリング62a、62b、62cとを含む。
【0044】
第3シャフトS3は、軸方向に一端3aおよび他端3bを有する。第3シャフトS3には、当該一端3a側から他端3b側に向けて潤滑油が流動可能な油路3dが設けられている。第3シャフトS3は、軸方向において他端3b側に位置する端面3cを有する。
【0045】
第3シャフトS3は、第2電動機MG2のロータが固設されたロータシャフトS31と、当該ロータシャフトS31にスプライン嵌合により同心に連結された連結シャフトS32とを含む。ロータシャフトS31との嵌合部において、連結シャフトS32の外径は、ロータシャフトS31の内径よりも小さくなっている。
【0046】
ロータシャフトS31は、第3シャフトS3の他端3b側に配置されている。連結シャフトS32は、第3シャフトS3の一端3a側に配置されている。連結シャフトS32には、モータ出力歯車Gmが設けられている。
【0047】
第3シャフトS3は、ケース14内において、ベアリング62a、62b、62cによって回転可能に支持されている。
【0048】
ベアリング62aは、第3シャフトS3の一端3a側に配置されている。ベアリング62bは、第3シャフトS3の他端3b側に配置されている。ベアリング62cは、第3シャフトS3の略中央に配置されている。
【0049】
ケース14は、第3シャフトS3、ならびにベアリング62a、62b、62cを内部に収容する。ケース14は、ベアリング62a、62b、62cを支持している。
【0050】
ケース14は、第3シャフトS3の軸方向において、上記第3シャフトS3の端面3cに対向する対向壁部141を有する。対向壁部141が有する内表面141aには、環状部142が設けられている。
【0051】
環状部142は、第3シャフトS3の中心軸と同軸となるように設けられている。環状部142の中心軸と第3シャフトS3の中心軸とは同軸上に配置されている。環状部142は、軸方向において上記第3シャフトS3の端面3cに対向する端面142cを有する。当該端面142cは、上記軸方向において隙間を空けて端面3cに対向するようにケース14に設けられた対向面部に相当する。なお、当該隙間は、第3シャフトS3の回転によってポンプ効果を発揮可能とするものである。
【0052】
本実施の形態においては、環状部142は、ケース14と別部材によって構成されている場合を例示するが、これに限定されず、環状部142は、ケース14の一部を構成し、ケース14と一体に構成されていてもよい。
【0053】
図5は、実施の形態に係る動力伝達装置の変速機ケースに設けられた環状部を示す斜視図である。
【0054】
図5に示すように、環状部142の端面142cは、複数の溝部143が設けられている。複数の溝部143は、第3シャフトS3の回転に伴って、ポンプ作用を発揮させ、第3シャフトS3の他端3b側に負圧を発生させるためのものである。なお、溝部143の本数は、負圧を発生させることが可能な限り、単数でもよい。
【0055】
複数の溝部143は、第3シャフトS3の中心軸に対して放射状に設けられている。これにより、後述するように、第3シャフトS3が回転した際に、第3シャフトS3内の空気をより効果的に他端3b側から第3シャフトS3外部に送出することができる。
【0056】
溝部143は、端面142cの内周縁側から外周縁側に向かうように設けられている。溝部143の始点は、端面142cの内周縁でもよいし、当該内周縁から離れた位置でもよい。同様に、溝部143の終点は、端面142cの外周縁でもよいし、当該外周縁から内側に離れた位置であってもよい。また、溝部143は、外周縁側に向かって湾曲していてもよいし、屈曲していてもよい。
【0057】
図6は、実施の形態に係る回転駆動装置においてシャフトの他端側の空気の流れを示す図である。なお、図6は、図4に示す矢印VI方向に見た環状部142およびその周辺の平面図である。
【0058】
図6に示すように、第3シャフトS3が回転した場合には、図中破線矢印で示すように、複数の溝部143によって空気が、環状部142の端面142cと第3シャフトS3の端面3cとの隙間から第3シャフトS3の径方向外側に向けて排出される。これにより、第3シャフトS3の他端3b側に負圧が発生し、第3シャフトS3の他端3b側の圧力が、第3シャフトS3の一端3a側の圧力よりも低くなる。
【0059】
図7は、実施の形態に係る回転駆動装置に空気および冷媒が流れる様子を示す概略断面図である。
【0060】
車両10の運転開始が開始された場合には、第1供給経路42を通って潤滑油が、図7中の矢印AR1に示すように、第3シャフトS3の一端3a側から油路3dに導入される。
【0061】
一般的に、油路3dに導入された潤滑油は、矢印AR3に示すように、一部が一端3aから第3シャフトS3の外部に漏出し、その残りが、矢印AR2に示すように、他端3b側に向かう。
【0062】
ここで、本実施の形態においては、上述のように対向面部としての端面142cに溝部143が設けられることにより、第3シャフトS3が回転することで、第3シャフトS3の他端3b側に負圧が発生する。このため、矢印AR5に示すように、第3シャフトS3内の空気が吸い込まれる。
【0063】
これにより、第3シャフトS3の一端3a側に供給された潤滑油が、第3シャフトS3の他端3b側に向けて吸い込まれ、第3シャフトS3内で効率的に潤滑油を流動させることができる。この結果、第3シャフトS3の一端3a側から外部に潤滑油が漏れ出すことを抑制しつつ、第3シャフトS3の他端3b側に配置されたベアリング62bへの潤滑油の到達時間を短縮することができる。
(その他の変形例)
なお、上述した実施の形態においては、溝部143が、環状部142の端面142cに設けられる場合を例示したが、これに限定されず、第3シャフトS3の端面3cに設けられていてもよい。
【0064】
さらに、上述した実施の形態においては、環状部142が設けられる場合を例示して説明したが、これに限定されず、環状部142が省略されてもよい。この場合には、上述の対向壁部141が厚肉に構成され、ポンプ作用を発生可能な隙間を持って、内表面141aが直接第3シャフトS3の端面3cに対向していてもよい。なお、環状部142を設ける場合には、ケース14の形状を変更せずに、簡素な構成で、第3シャフトS3内を効率的に潤滑油を流動させ、第3シャフトS3の他端3b側を支持するベアリングへの潤滑油の到達時間を短縮できる。
【0065】
加えて、上述の実施の形態においては、回転駆動装置100の構成が、第2電動機MG2の第3シャフトS3に適用される場合を例示して説明したが、これに限定されず、第1電動機MG1の第1シャフトS1、あるいは減速歯車装置30の第2シャフトS2等にも適用されてもよい。
【0066】
以上、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0067】
3a 一端、3b 他端、3c 端面、3d 油路、10 車両、12 動力伝達装置、14 ケース、20 エンジン、22 入力軸、24 遊星歯車装置、24c キャリア、24r リングギヤ、24s サンギヤ、26 電動式差動部、28 シャフト、30 減速歯車装置、32 ディファレンシャル装置、36 ドライブシャフト、38 駆動輪、40 潤滑装置、42 第1供給経路、44 第2供給経路、46 オイル貯留部、50 第1オイル貯留部、52 隔壁、56 第2オイル貯留部、58,60 吸入口、62,62a,62b,62c ベアリング、64 ギヤ機構、66 熱交換器、70 キャッチタンク、72 第3オイル貯留部、74 第1流出口、80 第2流出口、100 回転駆動装置、141 対向壁部、141a 内表面、142 環状部、142c 端面、143 溝部、Gd デフリングギヤ、Ge 出力歯車、Gm モータ出力歯車、Gp ポンプ駆動歯車、Gr1 大歯車、Gr2 減速小歯車、MG1 第1電動機、MG2 第2電動機、P1 第1オイルポンプ、P2 第2オイルポンプ、S1 第1シャフト、S2 第2シャフト、S3 第3シャフト、S4 第4シャフト、S31 ロータシャフト、S32 連結シャフト。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7