(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022108383
(43)【公開日】2022-07-26
(54)【発明の名称】止水性能評価装置及び止水性能評価方法
(51)【国際特許分類】
G01M 3/04 20060101AFI20220719BHJP
【FI】
G01M3/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021003335
(22)【出願日】2021-01-13
(71)【出願人】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100168321
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 敦
(72)【発明者】
【氏名】小野村 寛
(72)【発明者】
【氏名】東田 豊彦
(72)【発明者】
【氏名】峯 永治
(72)【発明者】
【氏名】池田 和代
【テーマコード(参考)】
2G067
【Fターム(参考)】
2G067AA19
2G067AA36
2G067BB02
2G067BB07
2G067BB25
2G067CC02
2G067DD06
2G067DD07
(57)【要約】
【課題】基礎と当該基礎の上に設けられる構造体とを有する試験体の止水性能を評価することが可能な止水性能評価装置及び止水性能評価方法を提供することを目的とする。
【解決手段】基礎80と構造体90とを有する試験体100の止水性能を評価するための止水性能評価装置1であって、底面に所定方向に延びるように設定された基礎設置領域Bに基礎80が設置されることが可能である底部材10と、底部材10の底面上において、試験体100とともに、試験体100に水圧を与える水が給水される給水空間SSを囲む吸水側側壁20Aと、基礎設置領域Bにおいて所定方向に並ぶように底部材10に配置され、底部材10の底面から上向きに突出する姿勢で底部材10に着脱可能に結合される複数の杭部材30と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基礎と当該基礎の上に設けられる構造体とを有する試験体の止水性能を評価するための止水性能評価装置であって、
上を向いた底面を有し、当該底面に所定方向に延びる基礎設置領域が設定され、当該基礎設置領域において前記底面上に前記基礎が設置されることが可能である底部材と、
前記底部材の前記底面上において、前記基礎設置領域に設置される前記基礎及びその上に設けられる前記構造体とともに、前記試験体に水圧を与える水が給水される給水空間を囲むように、前記底部材から上向きに延びる側壁と、
前記基礎設置領域において前記所定方向に並ぶように前記底部材に配置され、前記底部材の前記底面から上向きに突出する姿勢で前記底部材に着脱可能に結合される複数の杭部材と、を備える、止水性能評価装置。
【請求項2】
前記基礎に前記構造体を取り付けるために配置される取付部材をさらに備え、
前記取付部材は、前記複数の杭部材のうち、前記構造体の取付領域に対応する特定の特定杭部材と前記底部材との結合により前記特定杭部材と前記底部材との間に挟まれて固定される少なくとも一つの被固定部と、平面視において前記被固定部から水平方向に離れた位置において前記基礎の上面から上向きに突出するとともに前記構造体が取り付けられる少なくとも一つの取付部と、を有する、請求項1に記載の止水性能評価装置。
【請求項3】
前記複数の特定杭部材は、前記所定方向について前記構造体の設計基準として予め定められた基準間隔をおいて前記底部材に配置される複数の基準杭部材である、請求項2に記載の止水性能評価装置。
【請求項4】
前記取付部材は、前記被固定部を含み、当該被固定部が前記特定杭部材と前記底部材との間に挟まれた状態で前記底面と平行に延びる支持部材と、当該支持部材において前記被固定部から離れた複数の部位に着脱可能に結合され、その結合された状態で前記支持部材から上向きに延びる取付軸と、を有し、当該取付軸の一部が前記基礎の上面から上向きに突出して前記取付部を構成する、請求項2または3に記載の止水性能評価装置。
【請求項5】
前記構造体の前記所定方向の両側に接続されることにより前記構造体の前記両側を支持するように、前記基礎設置領域における前記所定方向の両側において前記底部材から上向きに延びる構造体支持部材をさらに備える、請求項1~4のいずれか1項に記載の止水性能評価装置。
【請求項6】
前記底部材及び前記側壁において少なくとも前記基礎と接触する部分がステンレス鋼により形成されている、請求項1~5のいずれか1項に記載の止水性能評価装置。
【請求項7】
前記底部材は、前記基礎設置領域において前記所定方向に並ぶ複数の第1結合部を有し、
前記複数の杭部材は、前記複数の第1結合部のそれぞれに結合することが可能な第2結合部を有し、
前記複数の杭部材のそれぞれは、前記第2結合部と前記底部材の前記第1結合部とが結合することにより結合される、請求項1~6のいずれか1項に記載の止水性能評価装置。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の止水性能評価装置を用意する工程と、
前記複数の杭部材のそれぞれを前記底部材に結合する工程と、
各杭部材のうち少なくとも一部が前記基礎の上面よりも下に位置する状態となるように、前記複数の杭部材のそれぞれを前記底部材に結合した状態で前記基礎設置領域に前記基礎を設置する工程と、
前記基礎の上に前記構造体を設けることにより前記試験体を構築する工程と、
前記給水空間に水を給水することにより前記試験体の止水性能を評価する工程と、
前記試験体の止水性能を評価した後に、前記試験体を取り除く工程と、
前記試験体が取り除かれた後、前記杭部材と前記底部材とが結合した状態を解除し、少なくとも一つの前記杭部材を前記底部材から取り外す工程と、
取り外した前記杭部材に代えて新たな杭部材を前記底部材に結合する工程と、
新たな前記杭部材が前記底部材に結合した状態で前記基礎設置領域に新たな基礎を設置し、前記基礎の上に新たな構造体を設けることにより新たな試験体を構築し、前記新たな試験体の止水性能を評価する工程と、を備える、止水性能評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基礎と基礎の上に設けられる構造体とを有する試験体の止水性能を評価するための止水性能評価装置及び止水性能評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、扉の止水性能を評価するための止水性能評価装置が知られている。例えば、特許文献1には、扉に水圧を作用させるための水が注入される受水槽を備えた扉用試験装置が開示されている。前記受水槽は、上方に開口する直方体形状の水槽であり、第一壁と、第一壁と対向する第二壁と、第一壁と第二壁との間の第三壁、第四壁と、底面と、を有している。前記扉は、一方側が受水槽の内側に面するとともに他方側が受水槽の外側に面するように第一壁に取り付けられている。前記受水槽に水が供給されることにより前記扉の内側から当該扉に水圧が与えられ、この水圧に起因する前記扉からの水の漏出に基づいて当該扉の止水性能が評価される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記の特許文献1のように扉そのものの止水性能を評価するだけではなく、実際の建築物の構造を模擬した試験体の止水性能を評価することが望まれている。一般に、建築物は、地盤上に設置される基礎を含み、その基礎の上に扉等の部材を含む構造体が設置されることから、扉等の単体の止水性能だけでなく、基礎とその上に配置される構造体との組み合わせに係る構造の止水性能の評価が望まれる。例えば、前記扉等そのものの止水性能が高くても、当該扉等とその下の基礎との隙間から水が漏れると高い止水性は得られない。これに対して、特許文献1の止水性能評価装置では、扉そのものの止水性能を評価することはできても、基礎とその上に配置される構造体とを含む試験体の止水性能を評価することができない。
【0005】
本発明は上述の課題に鑑みてなされたものであり、基礎と当該基礎の上に設けられる構造体とを有する試験体の止水性能を評価することが可能な止水性能評価装置及び止水性能評価方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための止水性能評価装置は、基礎と当該基礎の上に設けられる構造体とを有する試験体の止水性能を評価するための止水性能評価装置であって、上を向いた底面を有し、当該底面に所定方向に延びる基礎設置領域が設定され、当該基礎設置領域において前記底面上に前記基礎が設置されることが可能である底部材と、前記底部材の前記底面上において、前記基礎設置領域に設置される前記基礎及びその上に設けられる前記構造体とともに、前記試験体に水圧を与える水が給水される給水空間を囲むように、前記底部材から上向きに延びる側壁と、前記基礎設置領域において前記所定方向に並ぶように前記底部材に配置され、前記底部材の前記底面から上向きに突出する姿勢で前記底部材に着脱可能に結合される複数の杭部材と、を備える。
【0007】
上記止水性能評価装置によれば、基礎とその上に配置される構造体とを有する試験体の止水性能を評価することができる。具体的に、上記止水性能評価装置において、底部材の底面に設定された基礎設置領域に基礎が設置され、当該基礎の上に構造体が設けられることにより、前記底面上に実際の建築物を模擬した試験体が構築されるとともに、底部材の底面上において前記試験体と側壁とにより給水空間が囲まれる。従って、この給水空間に給水をしてその水圧を前記試験体に与えることにより、当該試験体の止水性能を評価することが可能である。具体的には、前記構造体そのものの止水性能だけではなく、前記試験体全体の止水性能、例えば前記基礎と前記構造体との隙間を通じての漏水の有無、を評価することができる。
【0008】
前記止水性能評価装置において、前記複数の杭部材は、前記のように基礎設置領域内において前記底面の上に配置された前記基礎の内部において起立することにより、当該底面に沿った当該基礎の変位を効果的に抑制することができる。従って、前記給水空間から基礎に大きな水圧が作用しても、これに抗して基礎が前記底面に沿って変位するのを抑制することができる。このことは、前記基礎の変位による止水性能の評価精度の低下を抑制して高い精度での止水性能評価試験の実施を可能にする。
【0009】
また、試験済の試験体を取り除き、これに代えて前記基礎設置領域における前記底面上に新たな試験体を構築することにより、上記止水性能評価装置を用いて複数の止水性能評価を繰り返し実施することができる。さらに、前記複数の杭部材のそれぞれは前記底部材に対して着脱可能であるため、試験済の試験体を取り除いた後、適宜、杭部材を取り外して新たな杭部材に交換することが可能であり、これにより、当該杭部材による基礎の良好な拘束を維持することができる。例えば、試験済の試験体が取り除かれた後、その試験済の試験体の基礎の残渣が杭部材の表面に付着して次の基礎の施工あるいは当該基礎の拘束が困難であるような場合、当該杭部材を底部材から取り外して新たな杭部材に交換することにより、新たな杭部材により新たな試験体の基礎を確実に固定することができる。例えば、新たに施工される基礎の材料と杭部材との結合が前記残渣の影響によって弱くなることが抑制される。
【0010】
上記止水性能評価装置において、好ましくは、前記基礎に前記構造体を取り付けるために配置される取付部材をさらに備え、前記取付部材は、前記複数の杭部材のうち、前記構造体の取付領域に対応する特定の特定杭部材と前記底部材との結合により前記特定杭部材と前記底部材との間に挟まれて固定される少なくとも一つの被固定部と、平面視において前記被固定部から水平方向に離れた位置において前記基礎の上面から上向きに突出するとともに前記構造体が取り付けられる少なくとも一つの取付部と、を有する。
【0011】
この構成によれば、複数の杭部材の中から選ばれる複数の特定杭部材と底部材とを利用することにより、少ない部品点数で底部材に取付部材を固定することができ、この取付部材を介して基礎に構造体を取り付けることができる。しかも、当該取付部材の形状等の設定により、当該取付部材のうち底部材に固定される被固定部と構造体が取り付けられる取付部との相対位置関係を自由に設定することが可能である。
【0012】
例えば、前記所定方向について前記構造体の設計基準として予め基準間隔が定められており、当該基準間隔をおいて前記構造体の取付位置が設定されるような場合にも、前記構造によって対応することが可能である。具体的には、上記止水性能評価装置において、前記複数の特定杭部材は、前記所定方向について前記構造体の設計基準として予め定められた基準間隔をおいて前記底部材に配置される複数の基準杭部材であるものが用いられると、好適である。この構成によれば、複数の基準杭部材と底部材とを利用することにより、基準間隔をおいて底部材に取付部材を固定することができ、この取付部材を介して基準間隔をおいて基礎に構造体を取り付けることができる。
【0013】
上記止水性能評価装置において、好ましくは、前記取付部材は、前記被固定部を含み、当該被固定部が前記特定杭部材と前記底部材との間に挟まれた状態で前記底面と平行に延びる支持部材と、当該支持部材において前記被固定部から離れた複数の部位に着脱可能に結合され、その結合された状態で前記支持部材から上向きに延びる取付軸と、を有し、当該取付軸の一部が前記基礎の上面から上向きに突出して前記取付部を構成する。
【0014】
この構成によれば、取付軸は、支持部材における複数の部位において着脱可能である。よって、複数の部位のうち、構造体の取付位置に対して適切な部位に取付軸を取り付けることにより、その取付軸により構造体を所望の取付位置に取り付けることが可能である。
【0015】
上記止水性能評価装置において、好ましくは、前記構造体の前記所定方向の両側に接続されることにより前記構造体の前記両側を支持するように、前記基礎設置領域における前記所定方向の両側において前記底部材から上向きに延びる構造体支持部材をさらに備える。
【0016】
上記構成によれば、構造体支持部材が構造体の所定方向の両側を支持することにより、実際の建築物をより模擬した態様で試験体の止水性能を評価することができる。具体的に、実際の建築物では、例えば上下方向に延びる複数の柱が基礎の上に配置され、当該複数の柱どうしの間に配置された扉等の構造体の両側を支持することにより、構造体の所定の姿勢を上下方向に亘って維持する。前記構造体支持部材が構造体の所定方向の両側に接続され、実際の建築物の柱の役割を果たすことにより、構造体が実際の建築物に模擬した態様で支持される。よって、前記構造体支持部材に支持された当該構造体を有する試験体を用いることにより、実際の建築物をより模擬した態様で試験体の止水性能を評価することができる。
【0017】
上記止水性能評価装置は、好ましくは、前記底部材及び前記側壁において少なくとも前記基礎と接触する部分がステンレス鋼により形成されている。
【0018】
上記構成によれば、基礎と接触する底部材及び側壁においてステンレス鋼が採用されているため、止水性能評価装置の耐久性を向上することができる。具体的に、ステンレス鋼は、腐食に対する耐性を有するため、給水空間に給水が行われる止水性能評価装置の耐久性に優れる。さらに、ステンレス鋼は、試験済の試験体の基礎を取り除く際の打撃に対して強く破損しにくいため、止水性能評価装置の繰り返しの使用に対する耐久性に優れる。
【0019】
上記止水性能評価装置は、好ましくは、前記底部材は、前記基礎設置領域において前記所定方向に並ぶ複数の第1結合部を有し、前記複数の杭部材は、前記複数の第1結合部のそれぞれに結合することが可能な第2結合部を有し、前記複数の杭部材のそれぞれは、前記第2結合部と前記底部材の前記第1結合部とが結合することにより結合される。
【0020】
複数の杭部材のそれぞれと底部材との結合は、当該複数の杭部材の第2結合部と底部材の第1結合部との結合によって達成されるので、当該結合により、前記複数の杭部材と前記底部材との隙間に基礎の材料が入り込んで固着してしまうことが抑制される。このことは、底部材に対する杭部材の着脱及び交換を常に円滑に行うことを可能にする。
【0021】
上記課題を解決するための止水性能評価方法は、上記の止水性能評価装置を用意する工程と、前記複数の杭部材のそれぞれを前記底部材に結合する工程と、各杭部材のうち少なくとも一部が前記基礎の上面よりも下に位置する状態となるように、前記複数の杭部材のそれぞれを前記底部材に結合した状態で前記基礎設置領域に前記基礎を設置する工程と、前記基礎の上に前記構造体を設けることにより前記試験体を構築する工程と、前記給水空間に水を給水することにより前記試験体の止水性能を評価する工程と、前記試験体の止水性能を評価した後に、前記試験体を取り除く工程と、前記試験体が取り除かれた後、前記杭部材と前記底部材とが結合した状態を解除し、少なくとも一つの前記杭部材を前記底部材から取り外す工程と、取り外した前記杭部材に代えて新たな杭部材を前記底部材に結合する工程と、新たな前記杭部材が前記底部材に結合した状態で前記基礎設置領域に新たな基礎を設置し、前記基礎の上に新たな構造体を設けることにより新たな試験体を構築し、前記新たな試験体の止水性能を評価する工程と、を備える。
【0022】
上記止水性能評価方法によれば、複数の杭部材のそれぞれを底部材に結合するという簡単な工程により、複数の杭部材が底部材の底面の基礎設置領域から突出する姿勢で底部材に結合される。このように複数の杭部材が底部材から突出した状態で基礎を設置することにより、杭部材を基礎の内部に起立させることができる。従って、底面に沿った当該基礎の変位を効果的に抑制し、前記給水空間から基礎に大きな水圧が作用しても、これに抗して基礎が前記底面に沿って変位するのを抑制することができる。
【0023】
また、試験済の試験体を取り除いた後、少なくとも一つの杭部材が取り外され、新たな杭部材に交換される。新たな杭部材を用いて底面上に新たな試験体を構築することにより、上記止水性能評価装置を用いて複数の止水性能評価を繰り返し実施することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の止水性能評価装置及び止水性能評価方法によれば、基礎と当該基礎の上に設けられる構造体とを有する試験体の止水性能を評価することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の実施形態に係る止水性能評価装置の斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る止水性能評価装置の正面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る止水性能評価装置の上面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る止水性能評価装置の側面図である。
【
図6】
図3のVI-VI切断線からみた側面図である。
【
図7】杭受部材と杭部材との螺合状態を示す側面図である。
【
図9B】
図9AのVIIIBで示す矢印方向から見た取付部材の側面図である。
【
図9C】取付部材と基礎との関係を示す上面図である。
【
図10】止水性能評価試験において底部材及び杭部材が基礎に埋め込まれている様子を示す模式図である。
【
図11】軽量鉄骨造の構造体を有する試験体が設けられた止水性能評価装置の正面模式図である。
【
図12】前記実施形態とは別の形態の底部材及び杭部材の側面図である。
【
図13】前記実施形態とは別の形態の底部材及び杭部材の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下添付図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の実施の形態は、本発明を具体化した例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
【0027】
一般に、建築物は、地盤上に設置されるコンクリート等の基礎を含み、その基礎の上に扉、出入りの可能な掃き出し窓等の構造体が設置されている。本実施形態に係る止水性能評価装置1は、
図1に示すように、基礎80と基礎80の上に設けられる構造体90とを有する試験体100を止水性能評価装置1内に設置した状態で、実際の建築物に模擬した試験体100の止水性能を評価するための装置である。
【0028】
止水性能評価装置1は、
図1に示すように、底部材10と、給水側側壁20Aと、漏水受側側壁20Bと、底部材10に配置される複数の杭部材30と、構造体90を基礎80に取り付けるための複数の取付部材40と、構造体90を支持する一対の構造体支持部材50と、を備える。
【0029】
底部材10は、止水性能評価装置1の底部を構成している。底部材10は、
図1、
図3、
図5及び
図7に示すように、底部材本体11と、底部材本体11に固定されている複数の杭受部材12とを有する。
【0030】
底部材10の底部材本体11は、
図1、
図5、
図7に示すように上面11aを有する。当該上面11aは、底部材10の上を向いた底面を構成している。上面11aは水平方向に沿う面である。また、底部材本体11は長方形状の板状の形態を有している。よって、上面11aは長方形状の平面である。上面11aの長辺が延びる方向を上面11aの長手方向とし、以下、上面長手方向とする。また、上面11aの短辺が延びる方向を上面11aの短手方向とし、以下、上面短手方向とする。
【0031】
図1及び
図3に示すように、底部材本体11の上面11aの一部には、所定方向に延びる基礎設置領域Bが設定されている。前記所定方向は本実施形態では上面長手方向である。基礎設置領域Bは、上面11a上に基礎80が設置される領域である。
【0032】
上面11aは、前記基礎設置領域Bを境界にして給水領域SAと漏水受領域LAとに分かれている。
【0033】
給水領域SAは、当該領域の上部に給水空間SSが形成される領域である。給水空間SSは、基礎80と基礎80の上に設けられる構造体90とを有する試験体100に水圧を与える水が給水される空間である。給水空間SSは、構造体90が例えば玄関ドアであれば、玄関ドアの外側に面する側の空間として想定されている。
【0034】
一方、漏水受領域LAは、当該領域の上部に漏水受空間LSが形成される領域である。漏水受空間LSは、前記試験体100を介して給水空間SSから漏水する水を受ける空間である。漏水受空間LSは、構造体90が玄関ドアであれば、玄関ドアの内側に面する側の空間として想定されている。
【0035】
本実施形態では、基礎設置領域Bの形状は長方形状である。よって、給水領域SA及び漏水受領域LAもまた長方形状である。本実施形態の場合、上面長手方向は基礎設置領域Bの長手方向と一致し、上面短手方向は基礎設置領域Bの短手方向と一致する。なお、基礎設置領域Bの形状は、長方形状に限定されず、例えば円弧状、楕円形状等であってもよい。また、基礎設置領域Bは、基礎設置領域Bを挟んで給水領域SAが漏水受領域LAよりも大きくなる位置に設定されている。具体的に、基礎設置領域Bは、長方形状の上面11aにおいて上面短手方向の中心よりも漏水受領域LA側にずれた位置に設定されている。なお、基礎設置領域Bの設定位置は、前記に限定されず、例えば上面短手方向の中心であってもよい。
【0036】
底部材本体11は、給水口10aと、複数の排水口10bと、を有する。給水口10aは、給水空間SSに水を給水するための開口である。複数の排水口10bそれぞれは、給水空間SS及び漏水受空間LSそれぞれから水を排水するための開口である。給水口10aは、給水領域SAにおいて底部材本体11を上下方向に貫通することにより形成されている。複数の排水口10bそれぞれは、給水領域SA及び漏水受領域LAそれぞれにおいて底部材本体11を上下方向に貫通することにより形成されている。
【0037】
止水性能評価試験は、試験体100が基礎設置領域B上に配置された状態で給水口10aから給水空間SSに水が給水されることにより行われる。給水口10aには底部材本体11の下部に給水配管が接続されており、底部材本体11の下部から水位が上がるように給水空間SSに水が給水される。給水が行われる場合、給水領域SA及び漏水受領域LAそれぞれの排水口10bは弁等が閉められることにより閉状態にある。そして、給水空間SSから試験体100を介して漏水受空間LSに漏水する水量に基づいて止水性能が評価される。止水性能評価試験の終了後、各排水口10bは弁等が開かれることにより開状態となり、各排水口10bから給水空間SS及び漏水受空間LS内の水が排水される。
【0038】
底部材10には複数のねじ穴12aが形成されている。本実施形態では、複数の杭受部材12が前記底部材本体11の上面11aに固定されることにより、底部材10に複数のねじ穴12aが形成される。複数のねじ穴12aそれぞれは、複数の杭部材30それぞれが底部材10から上向きに突出するように複数の杭部材30それぞれと着脱可能に結合する。ねじ穴12aは第1結合部の一例である。
【0039】
各杭受部材12は、
図7に示すように、概ね中央部に設けられたねじ穴12aを囲む内周面12bを有する。内周面12bには雌ねじ12cが形成されている。各杭受部材12は、ねじ穴12aが上下方向を向く姿勢で底部材本体11の上面11aに固定されている。各杭受部材12は、例えば溶接により上面11aに固定されている。杭受部材12は、本実施形態では、
図7に示すように六角ナットである。ただし、杭受部材12は、杭部材30が螺合可能な部材であれば六角ナットに限定されず、例えば板状の板ナットであってもよい。
【0040】
前記複数の杭受部材12は、
図1、
図3及び
図5に示すように、基礎設置領域Bにおいて上面長手方向に並んでいる。本実施形態では、複数の杭受部材12は一列の直線上に並んでいる。ただし、複数の杭受部材12は上面11aの基礎設置領域Bにおいて上面長手方向に並んでいればよく、複数列の直線上に並んでいてもよいし、曲線上に並んでいてもよいし、またランダムに並んでいてもよい。
【0041】
給水側側壁20Aは、底部材本体11の上面11a上において、基礎設置領域Bに形成される基礎80と基礎80の上に設けられる構造体90とを有する試験体100とともに給水空間SSを囲む。つまり、給水側側壁20Aは前記試験体100とともに給水空間SSを囲む側壁に相当する。給水側側壁20Aは、底部材本体11の上面11aのうち給水領域SAに対応する部分の縁部から上向きに延びている。
【0042】
漏水受側側壁20Bは、底部材本体11の上面11a上において、前記試験体100とともに漏水受空間LSを囲む。漏水受側側壁20Bは、底部材本体11の上面11aのうち漏水受領域LAに対応する部分の縁部から上向きに延びている。
【0043】
給水側側壁20A及び漏水受側側壁20Bは、前記一対の構造体支持部材50を挟むように配置されている。前記給水側側壁20A及び漏水受側側壁20Bは、給水空間SSと漏水受空間LSとの境界において各構造体支持部材50の上面短手方向に隣接している。当該構造体支持部材50は、基礎設置領域Bに対して上面長手方向に隣接して配置されている。当該構造体支持部材50は、底部材本体11の上面11aから上に延びる。
【0044】
給水側側壁20A及び漏水受側側壁20Bのそれぞれは、枠部20aと側板部20bとを有する。枠部20aは、複数の縦桟と複数の横桟とを有している。各縦桟は底部材本体11から上向きに伸びている。複数の縦桟は底部材本体11の周縁に並んでいる。複数の横桟は複数の縦桟の上端及び下端を接続するように延びている。側板部20bは、板状部材であり、枠部20aに取り付けられる。本実施形態では、枠部20aは木材である。側板部20bは透明の板状部材であると好ましい。本実施形態では、側板部20bは例えばアクリル樹脂から形成される。側板部20bが透明の板状部材である場合、止水性能評価装置1の外部から給水側側壁20A及び漏水受側側壁20Bにより囲まれる空間の内部の状態(例えば水位)を把握しやすく好ましい。
【0045】
また、
図1に示すように、給水側側壁20Aは、漏水受側側壁20Bの高さ寸法よりも大きな高さ寸法を有する。しかし、給水側側壁20A及び漏水受側側壁20Bの高さ寸法は同一であってもよい。
【0046】
複数の杭部材30は、基礎設置領域Bに設置される基礎80に対する杭として機能する。複数の杭部材30それぞれは、
図5及び
図7に示すように、底部材本体11の上面11aから上向きに突出する姿勢で底部材10の複数の杭受部材12のねじ穴12aそれぞれに着脱可能に結合される。複数の杭部材30はそれぞれ、
図7に示すように、軸部30aと、頭部30bと、を有する。複数の杭部材30それぞれの軸部30aが底部材10の前記複数のねじ穴12aそれぞれに上から挿入され結合される。軸部30aは、底部材10が有するねじ穴12a(第1結合部の一例)に螺合挿入可能な第2結合部の一例である。
【0047】
各杭部材30の軸部30aは、円筒状の外周面30cを有する。この外周面30cに杭受部材12の雌ねじ12cと螺合可能な雄ねじ30dが形成されている。各杭部材30の頭部30bは、軸部30aに連続している。各軸部30aがねじ穴12aに螺合された状態で頭部30bは軸部30aよりも上に位置する。頭部30bは、軸部30aよりも大径である。各杭部材30は、本実施形態では、
図7に示すように六角ボルトである。ただし、杭部材30は、六角ボルトに限定されず、例えば頭部に把手を有する蝶ボルトであってもよい。
【0048】
複数の杭部材30は、
図1、
図3及び
図5に示すように基礎設置領域Bにおいて上面長手方向に並ぶように底部材10に配置される。本実施形態では、複数の杭部材30は前記複数の杭受部材12と螺合されることにより一列の直線上に並んでいる。ただし、複数の杭部材30は、複数の杭受部材12と同様に上面11aの基礎設置領域Bにおいて上面長手方向に並んでいればよく、その配置は限定されない。
【0049】
図7に示すように、杭受部材12が底部材本体11の上面11aに固定された状態で、杭部材30の軸部30aが杭受部材12のねじ穴12aに螺合挿入される。具体的には、軸部30aの雄ねじ30dと杭受部材12の雌ねじ12cとの螺合が進行しながら、ねじ穴12aに軸部30aが上から挿入される。これにより、杭部材30は、上面11aから杭受部材12よりも上の位置まで延びる姿勢で底部材本体11に保持される。さらに説明すると、杭部材30が杭受部材12に螺合した状態において、杭部材30と杭受部材12とが螺合している螺合部分36よりも上に延設部分37が延びる。延設部分37は、杭部材30が杭受部材12よりも上の位置まで延びる部分である。延設部分37の長さ37Lは、杭部材30の上下方向の長さから螺合部分36の長さ36Lを差し引いた長さである。
【0050】
複数の取付部材40は、前記基礎80の上に位置する構造体90を取り付けるための位置として予め設定された取付位置に構造体90を取り付けるためのものである。複数の取付部材40それぞれは、
図1、
図3及び
図5に示すように、構造体90の基礎80に対する複数の取付位置のそれぞれに配置される。複数の取付部材40は、複数の特定杭受部材12Aと複数の特定杭部材30Aとにより固定される。複数の特定杭受部材12Aとして、
図1、
図3及び
図5に示すように複数の杭受部材12の中から構造体90の取付位置に対応する位置の複数の杭受部材12が選ばれる。同様に、複数の特定杭部材30Aとして、複数の杭部材30の中から構造体90の取付位置に対応する位置の複数の杭部材30が選ばれる。つまり、複数の特定杭部材30Aは、複数の杭部材30のうち、構造体90の取付領域に対応する特定の特定杭部材に対応する。
【0051】
各取付部材40は、
図9A~
図9Cに示すように、支持部材41と、少なくとも一つの取付軸42と、を有する。各支持部材41は、複数の被固定部41Aと、複数の取付軸保持部41Bと、を有する。
【0052】
各支持部材41は、複数の取付軸保持部41Bの少なくとも一つにより、支持部材41から上向きに延びる姿勢で少なくとも一つの取付軸42を支持する。各取付軸42の先端が構造体90を基礎80の上で支持する。
【0053】
各支持部材41は、複数の特定杭受部材12A及び複数の特定杭部材30Aにより、複数の被固定部41Aを介して固定される。支持部材41は板状部材である。支持部材41には、板状部材を上下方向に貫通する複数の貫通孔44が形成されている。各貫通孔44の孔径は、各特定杭部材30Aの軸部30Aaの直径よりも大きく、かつ、各特定杭部材30Aの頭部30bの直径よりも小さい。各特定杭部材30Aの軸部30Aaが各貫通孔44に挿入される。各軸部30Aaのうち各貫通孔44から下向きに突出した部分が、底部材10の各特定杭受部材12Aのねじ穴12Aaと螺合する。これにより、各特定杭部材30Aの頭部30bと各特定杭受部材12Aとの間に支持部材41が挟まれて固定される。支持部材41のうち各特定杭部材30Aの頭部30bと各特定杭受部材12Aとの間に挟まれた部分が被固定部41Aである。各支持部材41は、特定杭受部材12Aに固定された状態において、底部材本体11の上面11aと平行に延びる。具体的に、板状部材である支持部材41の板状面は、特定杭受部材12Aに固定された状態において、底部材本体11の上面11aに沿っている。
【0054】
本実施形態では、前記複数の貫通孔44は上面長手方向に並ぶ一対の貫通孔44である。当該一対の貫通孔44それぞれの周囲に一対の被固定部41aが位置する。前記複数の貫通孔は一つの貫通孔に代えてもよい。
【0055】
各支持部材41の複数の取付軸保持部41Bは、複数の被固定部41Aから水平方向に離れた複数の部位に配置されている。前記水平方向は、上面長手方向及び上面短手方向を含む水平面内の任意の方向である。前記水平方向は、本実施形態では上面短手方向である。本実施形態では、
図9Cに示すように、三つの取付軸保持部41Bが、二つの被固定部41Aのうち一つの被固定部41Aから上面短手方向に離れた1つの部位と、もう一つの被固定部41Aから上面短手方向に離れた2つの部位と、に配置されている。各取付軸保持部41Bは、
図9Aに示すように貫通孔41Baを囲む内周面を有する。内周面には雌ねじが形成されている。支持部材41の上面と貫通孔41Baの内周面とにより、取付軸42が螺合する凹部が形成されている。取付軸保持部41Bは、この凹部が形成されるように貫通孔41Baが上下方向を向く姿勢で支持部材41の上面に固定されている。当該凹部は、支持部材41により形成される底部を有し、この底部は取付軸42の螺合による挿入深さが定義される。取付軸保持部41Bは、例えば溶接により支持部材41の上面に固定されている。取付軸保持部41Bは例えばナットである。取付軸保持部41Bは本実施形態では
図9Aに示すように六角ナットである。しかし、取付軸保持部41Bは六角ナットに限定されない。
【0056】
複数の取付軸42それぞれは、複数の取付軸保持部41Bそれぞれにより保持される。
これにより、複数の取付軸42は、支持部材41において複数の被固定部41Aから上面短手方向に離れた複数の部位に配置される。各取付軸42は外周面42bを有する。外周面42bには、取付軸保持部41Bの雌ねじと螺合可能な雄ねじが形成されている。取付軸42の雄ねじと取付軸保持部41Bの雌ねじとが螺合することにより、取付軸42は、支持部材41に結合された状態で支持部材41から上向きに延びる。そして、基礎80の上面から突出する取付軸42の一部が取付部42aを構成する。取付軸42は本実施形態ではアンカーボルトとして機能する。なお、各支持部材41に配置されている全ての取付軸保持部41Bにより複数の取付軸42が保持されている必要はなく、所望の数の取付軸保持部41Bにより所望の数の取付軸42が保持されていればよい。
【0057】
一対の構造体支持部材50のそれぞれは、柱部51と、梁支持部52と、を有する。各柱部51は、基礎設置領域Bにおける上面長手方向の両端に対して上面長手方向に隣接して底部材本体11の上面11aから上向きに延びる。柱部51は、構造体90の上面長手方向の両側から構造体90を支持する。
【0058】
各梁支持部52は、各柱部51の上端に取り付けられている。梁支持部52の上面は水平方向に沿う板状面となっており、構造体90の梁を載置可能である。
【0059】
なお、上記では構造体支持部材50の柱部51は給水側側壁20A及び漏水受側側壁20Bとは別途に設けられている。しかし、柱部51は給水側側壁20A及び漏水受側側壁20Bの一部であってもよい。また、構造体支持部材50は省略されてもよい。構造体支持部材50が省略される場合でも、構造体90は取付部材40により基礎80の上に取り付け可能である。
【0060】
また、上記の止水性能評価装置1は、
図1、
図3~
図6及び
図8に示すように、保護部材60をさらに備える。保護部材60は、給水側側壁20A、漏水受側側壁20B及び構造体支持部材50において基礎設置領域Bに設置される基礎80と接触する接触部分を衝撃から保護する。前記衝撃は、例えば基礎設置領域Bから基礎80を取り除くために基礎80を壊すべく与えられる衝撃である。そのため、保護部材60は、給水側側壁20A、漏水受側側壁20B及び構造体支持部材50における前記接触部分を覆うように配置される。具体的に、保護部材60は、基礎設置領域Bに設置される基礎80と、給水側側壁20A及び漏水受側側壁20Bの少なくとも一方及び構造体支持部材50との間に配置される。このような保護部材60は板状部材である。前記保護部材60は、その板状面が、給水側側壁20A、漏水受側側壁20B及び構造体支持部材50に沿うように配置されている。また、前記保護部材60の上下方向の高さは、基礎設置領域Bに配置される基礎80の上下方向の高さ以上となるように設定されている。
【0061】
さらに、止水性能評価装置1は、
図5及び
図6に示すようにキャスタ3を備えており、キャスタ3により容易に移動可能に構成されている。また、止水性能評価装置1は、
図2及び
図4に示すように油圧ジャッキ2を備えており、油圧ジャッキ2により当該所定の位置に安定して設置可能に構成されている。
【0062】
前記底部材本体11及び前記保護部材60の材料としては金属が採用される。特に、前記底部材本体11及び前記保護部材60の材料としてステンレス鋼が採用されるのが好ましい。
【0063】
次に、上記の止水性能評価装置1における止水性能評価試験の手順について
図1及び
図10を用いて説明する。
【0064】
まず、上記止水性能評価装置1を用意する。当該止水性能評価装置1の基礎設置領域Bにおいて、複数の杭受部材12が底部材本体11の上面11aに固定されている。
図10に示すように、複数の杭部材30のそれぞれを底部材10に結合する。具体的に、複数の杭部材30のそれぞれの軸部30aを、杭受部材12のねじ穴12aに螺合することにより杭部材30を底部材10に結合する。
【0065】
図9A及び
図9Bに示すように、複数の特定杭受部材12Aと複数の特定杭部材30Aとの間に各取付部材40を挟んだ状態で、複数の特定杭受部材12Aと複数の特定杭部材30Aとを螺合することにより各取付部材40を固定する。具体的に、頭部30Abを支持部材41の上に突出させた状態で、各支持部材41の各貫通孔44に各特定杭部材30Aの軸部30Aaを挿入しつつ、当該軸部30Aaを各特定杭受部材12Aと螺合する。また、各支持部材41の各取付軸保持部41Bに各取付軸42を螺合することにより、支持部材41に取付軸42を取り付ける。
【0066】
次に、
図1に示すように、複数の杭受部材12と複数の杭部材30とを螺合した状態で基礎設置領域Bに基礎80の材料を投入し固化することで基礎80を設置する。基礎80は、例えば、基礎設置領域Bを取り囲むように木枠を配置し、木枠内に生のコンクリートを投入して固化することにより形成される。本実施形態では、基礎設置領域Bの上面長手方向の両側にステンレス鋼からなる保護部材60が配置されている。よって、基礎80は、ともにステンレス鋼である底部材本体11及び保護部材60と接触しつつ固化される。さらに、基礎80と底部材本体11との接触部分及び基礎80と保護部材60との接触部分に
図8に示すようにシール部材70を設ける。また、基礎80が設置された状態で、各取付軸42の取付部42aが
図8に示すように基礎80の上から突出するように基礎80が設置される。
【0067】
次に、基礎80の上に突出した複数の取付部42aを介して基礎80上に構造体90を取り付けることにより試験体100を構築する。また、構造体90の上面長手方向の両側を構造体支持部材50に接続する。基礎80と構造体90との間の隙間にコンクリートが充填されることにより止水処理が施される。
【0068】
次に、複数の排水口10bを閉状態とし、給水口10aから給水空間SSに水を給水することにより止水性能評価試験を行う。止水性能評価試験は、試験体100を介して給水空間SSから漏水受空間LSに漏水する水量に基づいて行われる。具体的に、止水性能評価試験において、構造体90そのものの止水性能だけではなく、試験体100全体の止水性能、例えば基礎80と構造体90との隙間を通じての漏水の有無、を評価する。止水性能評価試験が終わった後、複数の排水口10bを開状態とし、複数の排水口10bを介して給水空間SS及び漏水受空間LSから水を排出する。
【0069】
次に、試験済の試験体100を取り除く。まず、構造体90を基礎80から取り外す。次に、基礎80を底部材10から取り除く。例えば、底部材本体11の上面11aと基礎80との間に部材を挿入し基礎80を底部材本体11から取り除く。また、基礎80をハンマーで打撃して粉砕して底部材本体11から取り除く。
【0070】
基礎80を底部材本体11から取り除いた後、杭受部材12の表面及び杭部材30の延設部分37の表面には基礎80の残渣が付着している場合がある。杭部材30に付着している残渣の量及び形状等によっては、新たに設置する基礎80を十分に固定できなくなる場合があるため当該杭部材30を再利用できない。よって、複数の杭部材30のうち、少なくとも一つの再利用できない杭部材30を取り除く。ここで、杭受部材12と杭部材30とは螺合部分36において密着しており基礎80が当該螺合部分36に浸入し難い。よって、杭部材30と杭受部材12との固着を抑制することができるため、残渣の影響を受けることなく杭部材30と杭受部材12との螺合を解除し、杭部材30を杭受部材12から取り外すことができる。なお、杭受部材12は底部材10に固定されたままである。
【0071】
次に、取り外した杭部材30に代えて新たな杭部材30を杭受部材12に螺合する。新たな杭部材30が杭受部材12に螺合した状態で新たな基礎80を設置する。新たな基礎80の上に新たな構造体90を設けることにより新たな試験体100を形成する。この新たな試験体100に対して止水性能評価試験を行う。
【0072】
上記止水性能評価装置1によれば、基礎80とその上に配置される構造体90とを有する試験体100の止水性能を評価することができる。具体的に、上記止水性能評価装置1において、底部材本体11の上面11aに設定された基礎設置領域Bに基礎が設置され、当該基礎80の上に構造体90が設けられることにより、前記上面11a上に実際の建築物を模擬した試験体100が構築されるとともに、底部材本体11の上面11aにおいて試験体100と給水側側壁20Aとにより給水空間SSが囲まれる。従って、この給水空間SSに給水をしてその水圧を前記試験体100に与えることにより、当該試験体100の止水性能を評価することが可能である。
【0073】
前記止水性能評価装置1において、複数の杭部材30は、前記のように基礎設置領域B内において上面11aの上に配置された前記基礎80の内部において起立することにより、基礎80が上面11aに対して定着することで、当該上面11aに沿った当該基礎80の変位を効果的に抑制することができる。従って、前記給水空間SSから基礎80に大きな水圧が作用しても、これに抗して基礎80が前記上面11aに沿って変位するのを抑制することができる。このことは、前記基礎80の変位による止水性能の評価精度の低下を抑制して高い精度での止水性能評価試験の実施を可能にする。
【0074】
また、試験済の試験体100を取り除き、これに代えて前記基礎設置領域Bにおける前記上面11a上に新たな試験体100を構築することにより、上記止水性能評価装置1を用いて複数の止水性能評価を繰り返し実施することができる。さらに、前記複数の杭部材30のそれぞれは前記底部材10に対して着脱可能であるため、試験済の試験体100を取り除いた後、適宜、杭部材30を取り外して新たな杭部材30に交換することが可能であり、これにより、当該杭部材30による基礎80の良好な拘束を維持することができる。例えば、試験済の試験体100が取り除かれた後、その試験済の試験体100の基礎80の残渣が杭部材30の表面に付着して次の基礎80の施工あるいは当該基礎80の拘束が困難であるような場合、当該杭部材30を底部材10から取り外して新たな杭部材30に交換することにより、新たな杭部材30により新たな試験体100の基礎80を確実に固定することができる。したがって、新たに施工される基礎80の材料と杭部材30との結合が前記残渣の影響によって弱くなることが抑制される。
【0075】
さらに、前記複数の杭部材30のそれぞれと前記底部材10との着脱可能な結合は、当該複数の杭部材30のそれぞれの軸部30aと杭受部材12のねじ穴12aとの螺合によって達成されるので、当該螺合により、前記複数の杭部材30と前記底部材10との隙間に基礎80の材料が入り込んで固着してしまうことが抑制される。このことは、底部材10に対する杭部材30の着脱及び交換を常に円滑に行うことを可能にする。
【0076】
また、上記実施形態において底部材本体11がステンレス鋼である場合には、止水性能評価装置1の耐久性を向上することができる。具体的に、ステンレス鋼は、腐食に対する耐性を有するため、給水が行われる止水性能評価装置1の耐久性に優れる。さらに、ステンレス鋼は、止水性能評価装置1を繰り返し使用するために試験済の試験体100の基礎80を取り除く際の打撃に対して強く破損しにくいため、止水性能評価装置1の耐久性に優れる。また、保護部材60がステンレス鋼である場合にも同様に止水性能評価装置1の耐久性に優れる。
【0077】
また、上記実施形態では、杭受部材12のねじ穴12aが上下方向を向く姿勢で杭受部材12を底部材本体11の上面11aに固定するだけのシンプルな構成で、杭部材30の螺合挿入を受け入れるねじ穴12aを形成することが可能である。さらに、ねじ穴12aに杭部材30の軸部30aを螺合挿入するというシンプルな構造で、底部材10の杭受部材12と杭部材30との着脱可能な結合を実現することができる。
【0078】
また、複数の特定杭部材30Aと底部材10の複数の特定杭受部材12Aとを利用することにより、少ない部品点数で取付部材40を底部材10に固定することができ、この取付部材40を介して基礎80に構造体90を取り付けることができる。しかも、当該取付部材40の形状等の設定により、当該取付部材40のうち被固定部41Aと構造体90が取り付けられる取付部42aとの相対位置関係を自由に設定することが可能である。例えば、構造体90の取付位置に適合するように、被固定部41Aと取付部42aとの水平方向の距離を長くし、あるいは短くするように取付部材40の形状等を設定することができる。
【0079】
また、各取付軸42は、各支持部材41における複数の部位において着脱可能である。よって、複数の部位のうち、構造体の取付位置に対して適切な部位に各取付軸42を取り付けることにより、その取付軸42の取付部42aにより構造体90を所望の取付位置に取り付けることが可能である。
【0080】
また、構造体支持部材50が構造体90の上面長手方向の両側を支持することにより、実際の建築物をより模擬した態様で試験体100の止水性能を評価することができる。具体的に、実際の建築物では、例えば上下方向に延びる複数の柱が基礎80の上に配置され、当該複数の柱どうしの間に配置された扉等の構造体90の両側を支持することにより、構造体90の所定の姿勢を上下方向に亘って維持する。前記構造体支持部材50が構造体90の上面長手方向の両側に接続され、実際の建築物の柱の役割を果たすことにより、構造体90が実際の建築物に模擬した態様で支持される。よって、前記構造体支持部材50に支持された当該構造体90を有する試験体100を用いることにより、実際の建築物をより模擬した態様で試験体100の止水性能を評価することができる。
【0081】
さらに、実際の建築物では、上下方向に延びる複数の柱に加えて、柱から柱にかけてそれらの上端に亘って梁が配置されている。梁支持部52により構造体90の梁を支持させることにより、実際の建築物をより模擬した態様で試験体100を構築することができる。
【0082】
また、シール部材70が設けられていると、当該接触部分からの水漏れが抑制される。当該接触部分からの水漏れは本実施形態では止水性能の評価対象ではないため、評価精度の低下を抑制できるため好ましい。また、底部材本体11及び保護部材60がステンレス鋼である場合に、ステンレス鋼に対する接着性能に優れるシール部材70を用いることが望ましい。
【0083】
上記止水性能評価装置1には複数の構造芯が設定されている。本実施形態では、前記複数の構造芯は、第1構造芯Naと、複数の第2構造芯Nbn(nは0~5)とを含む。第1構造芯Naは、
図3及び
図9Cに示すように、基礎80の上面短手方向の中心において上面長手方向に延びる直線である。複数の第2構造芯Nbnは、基礎設置領域Bの上面長手方向において予め設定された基準間隔Dをおいた位置において上面短手方向に延びる直線である。前記基準間隔Dは、例えば構造体90を構成するために上面長手方向に組み合わされる複数の要素(例えば、壁下地材)の幅のうち最小幅を基準に設定されている。構造体90は、前記基準間隔Dに相当する幅寸法の整数倍の幅寸法を有するように設計される。
【0084】
複数の特定杭受部材12Aは、第1構造芯Na及び複数の第2構造芯Nbn(nは0~5)を基準とする位置に配置されている。各特定杭受部材12Aは、
図3及び
図9Cを用いて説明すると、次の2点により定まる位置に配置されている。第1に、各特定杭受部材12Aの位置は、第1構造芯Na上の位置である。第2に、各特定杭受部材12Aの位置は、第2構造芯Nbnに対して、上面長手方向に予め定められた所定距離dだけ離れた位置(位置Nbnα、位置Nbnβ)である。各特定杭部材30Aは各特定杭受部材12Aと同じ位置に配置されている。
【0085】
これら各特定杭受部材12A及び各特定杭部材30Aは、基準間隔Dを空けて基礎設置領域Bに配置されている。具体的に、
図3において、例えば互いに隣接する第2構造芯Nbnそれぞれの左側の特定杭受部材12Aどうしは、上面長手方向に基準間隔Dを空けて配置されている。例えば、第2構造芯Nb1の左側の特定杭受部材12Aと第2構造芯Nb2の左側の特定杭受部材12Aとは基準間隔Dだけ離れている。
【0086】
複数の取付部材40は、第2構造芯Nb0、Nb1、Nb4及びNb5それぞれの上面長手方向に隣接する複数の特定杭受部材12A及び複数の特定杭部材30Aにより固定される。第2構造芯Nb0、Nb1、Nb4及びNb5は、本実施形態での構造体90の取付位置である。
【0087】
各取付部材40は、各特定杭受部材12Aと各特定杭部材30Aとに挟まれる被固定部41Aに対して水平方向に離れた位置に配置される複数の取付軸42を有する。複数の取付軸42の配置位置は、各取付部材40が複数の特定杭受部材12A及び複数の特定杭部材30Aにより固定された状態で、
図3及び
図9Cを用いて説明すると、各被固定部41Aから上面短手方向に予め定められた所定距離nだけ離れた位置である。
【0088】
前記複数の取付軸42の取付位置は構造体90の取付位置と一致する。前記配置位置に配置された各取付軸42の基礎80から突出する取付部42aに対して構造体90が取り付けられる。これにより、基準間隔Dに基づいて設計された構造体90は、基準間隔Dに基づいた取付位置において基礎80の上に取り付けられる。
【0089】
次に、上記のような止水性能評価装置1において、基礎80と、軽量鉄骨造より構成された構造体90とを有する試験体100が設置される例について
図11を用いて説明する。
図11の構造体90は基準間隔Dを例えば500mmとして設計されている。構造体90は、玄関中央部分91と、玄関中央部分91の両側部を支持する一対の側部支持部95と、を有する。玄関中央部分91は、玄関ドア92と、玄関ドア92を取り囲むように支持する玄関フレーム93と、玄関フレーム93を支持するドア支持部94と、を有する。玄関中央部分91の幅寸法は、例えば基準間隔Dの3倍の1500mmである。各側部支持部95の幅寸法は、例えば基準間隔Dの1倍の500mmである。
【0090】
複数の特定杭受部材12Aは、上面長手方向においては、第2構造芯Nb0~Nb5(軽量鉄骨造においては軸組の最小幅)に対応する位置において底部材本体11に固定されている。第2構造芯Nb0~Nb5それぞれは、第2構造芯Nb0を原点(0mm)とすると、上面長手方向に沿って0mm、500mm、1000mm、1500mm、2000mm、2500mmの地点である。玄関中央部分91及び一対の側部支持部95を基礎80の上に支持するために、第2構造芯Nb0、Nb1、Nb4及びNb5に対応する位置それぞれに各取付部材40が底部材本体11に固定されている。各取付部材40は、前記第2構造芯Nb0、Nb1、Nb4及びNb5に対応する位置それぞれに配置された複数の特定杭受部材12A及び複数の特定杭部材30Aにより固定されている。基礎80が設置された状態で基礎80からは、各取付部材40の複数の取付部42aの一部が突出する。
【0091】
第2構造芯Nb0及び第2構造芯Nb1に対応する位置において基礎80の上面から突出している取付部42aにより、一対の側部支持部95のうち一方が基礎80の上に支持される。また、第2構造芯Nb4及び第2構造芯Nb5に対応する位置おいて基礎80の上面から突出している取付部42aにより、一対の側部支持部95のうち他方が基礎80の上に支持される。第2構造芯Nb1及び第2構造芯Nb4に対応する位置おいて基礎80の上面から突出している取付部42aにより、玄関中央部分91が基礎80の上に支持される。具体的に、玄関中央部分91のドア支持部94が取付部42aにより基礎80の上に支持される。これにより、玄関ドア92、玄関フレーム93及びドア支持部94を含む玄関中央部分91が一体として基礎80の上に支持される。玄関ドア92に対応する部分の基礎80は、一対の側部支持部95、玄関フレーム93及びドア支持部94に対応する部分の基礎80の高さ寸法よりも小さい高さ寸法を有する。よって、玄関ドア92に対応する部分の基礎80と玄関ドア92との間の隙間は土間コンクリート98により塞がれている。
【0092】
図11では軽量鉄骨造の構造体90を有する試験体100について説明したが、構造体90の例はこれに限られず、構造体90は例えば重量鉄骨造及び木造であってもよい。
【0093】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下の態様を採用することもできる。
【0094】
(A)止水性能評価装置1は、前記給水空間SS及び前記漏水受空間LSのうち、試験体100に水圧を与える前記給水空間SSを少なくとも有していればよい。つまり、前記漏水受空間LSは省略可能である。この場合、前記漏水受側側壁20Bは省略される。底部材本体11のうち漏水受領域LAに相当する部分は省略されてもよいし、そのまま維持されてもよい。この場合、給水空間SSから試験体100を介して漏水した水は止水性能評価装置1の外に漏れ出る。この漏水の有無により止水性能評価を行うことが可能である。
【0095】
(B)本発明において、複数の各杭部材は、底部材の底面から上向きに突出する姿勢で底部材に着脱可能に結合されればよく、その具体的な結合状態は限定されない。例えば、前記実施形態に係る複数の杭受部材12を用いることなく、底部材を構成する底板に直接にねじ穴を形成してもよい。このような構成の一例を
図12を用いて説明する。
【0096】
図12の例では、底部材は単一の底板101から構成されている。底板101は上を向いた底面101aを有する。底板101は、底面101aに対して窪むように形成されているねじ穴121aを有する。ねじ穴121aは上方に開口している。当該ねじ穴121aは第1結合部の一例である。ねじ穴121aは、雌ねじ121cが形成された内周面121bを有する。このねじ穴121aに上記実施形態の
図7に示す杭部材30が上から螺合可能である。具体的に、
図12に示すように、杭部材30の軸部30a(第2結合部の一例)の雄ねじ30dが、底板101の雌ねじ121cに螺合する。これにより、底面101aから杭部材30が上向きに突出した状態となる。なお、ねじ穴121aを底部材10の上面から下面まで貫通する貫通孔としてもよい。当該貫通孔は杭部材30の雄ねじ30dが螺合可能な雌ねじが形成された内周面を有する。
【0097】
(C)本発明において、複数の各杭部材と底部材との結合は、上記実施形態のように螺合による結合に限定されない。例えば、底部材に形成された凹部(第1結合部の一例)に杭部材(第2結合部の一例)が嵌合又は圧入されることにより、杭部材と底部材とが結合されてもよい。この場合、前記凹部を形成する底部材の内周面及び杭部材の外周面は、平坦面であってもよい。凹部の内径と杭部材の外径とは概ね同一である。具体的に
図12の例で説明すると、本例では、底板101のねじ穴121aの代わりに円柱面により構成される内周面を有する凹部に、円柱面により構成される外周面を有する杭部材が嵌合又は圧入により差し込まれる。これにより、杭部材は上方に延びる姿勢で底板から起立する。この杭部材30を交換する際には、杭部材30を底板101から引き抜く。
【0098】
(D)本発明では、前記実施形態とは逆に、杭部材に雌ねじが形成され、底部材に雄ねじが形成されてもよい。このような構成の一例を
図13を用いて説明する。
【0099】
図13の例では、底部材は、底部材本体102と、凸部122aとを有する。底部材本体102は上を向いた底面102aを有する。凸部122aは、底面102aから突出している。凸部122aは、雄ねじ122cが形成された外周面122bを有する。凸部122aは第1結合部の一例である。杭部材301は、棒状部材であり、中央部に下方に開口する凹部301aを有する。凹部301aは第2結合部の一例である。凹部301aは、雄ねじ122cと螺合可能な雌ねじ301cが形成された内周面301bを有する。この凸部122aに杭部材301が上から螺合する。具体的に、凸部122aの雄ねじ122cが、杭部材301の雌ねじ301cに螺合する。これにより、底部材本体102の底面102aから杭部材301が上向きに突出した状態となる。この場合においても、上記と同様に、結合方式は螺合に限定されない。例えば、凹部に対して凸部が嵌合又は圧入されることにより、凹部と凸部とが結合されてもよい。
【0100】
(E)本発明に係る複数の杭部材のぞれぞれは、その少なくとも一部が基礎の上面よりも下において基礎に埋め込まれていればよく、当該杭部材の一部が基礎の上面から突出していてもよい。この場合でも、杭部材のうち当該基礎に埋まっている部分が当該基礎の底面に沿った変位を抑制することができる。さらに、基礎の上面から突出した杭部材の先端部に構造体が取り付けられることにより、当該構造体が取付部材を介することなく基礎の上に支持されることも可能である。
【符号の説明】
【0101】
1 :止水性能評価装置
10、101、102 :底部材
11 :底部材本体
11a、101a、102a :上面(底面)
12 :杭受部材
12A :特定杭受部材
12a :ねじ穴
12b :内周面
12c :雌ねじ
20A :給水側側壁
30 :杭部材
30A :特定杭部材
30a、30Aa :軸部
30c :外周面
30d :雄ねじ
40 :取付部材
41 :支持部材
41A :被固定部
42 :取付軸
42a :取付部
50 :構造体支持部材
80 :基礎
90 :構造体
100 :試験体
121a :ねじ穴(第1結合部)
121b :内周面
121c :雌ねじ
122a :凸部(第1結合部)
122b :外周面
122c :雄ねじ
301 :杭部材
301a :凹部(第2結合部)
301b :内周面
301c :雌ねじ
B :基礎設置領域
D :基準間隔
LA :漏水受領域
SS :給水空間