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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022108399
(43)【公開日】2022-07-26
(54)【発明の名称】半導体レーザ装置
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/14 20060101AFI20220719BHJP
   H01S 5/022 20210101ALI20220719BHJP
【FI】
H01S5/14
H01S5/022
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021003362
(22)【出願日】2021-01-13
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成28年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 「高輝度・高効率次世代レーザー技術開発/次々世代加工に向けた新規光源・要素技術開発/高効率加工用GaN系高出力・高ビーム品質半導体レーザーの開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【弁理士】
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】山口 秀雄
【テーマコード(参考)】
5F173
【Fターム(参考)】
5F173AB46
5F173AR14
5F173AR58
5F173MC12
5F173MD07
5F173MD65
5F173ME54
5F173MF02
5F173MF13
5F173MF23
5F173MF27
5F173MF29
5F173MF33
5F173MF39
5F173MF40
(57)【要約】
【課題】ビーム品質及び光軸が安定化された出射光を出射できる半導体レーザ装置等を提供する。
【解決手段】半導体レーザ装置1は、外部共振器を備える半導体レーザ装置1であって、複数の光を出射する複数の光増幅部と、複数の光が入射され、複数の光が1つの光路上を伝搬するように複数の光を出射する回折格子50と、複数の光増幅部と回折格子50との間の光路上に挿脱自在に保持される遮光部材83とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部共振器を備える半導体レーザ装置であって、
複数の光を出射する複数の光増幅部と、
前記複数の光が入射され、前記複数の光が1つの光路上を伝搬するように前記複数の光を出射する回折格子と、
前記複数の光増幅部と前記回折格子との間の光路上に挿脱自在に保持される遮光部材とを備える
半導体レーザ装置。
【請求項2】
外部共振器を備える半導体レーザ装置であって、
複数の光を出射する複数の光増幅部と、
前記複数の光が入射される回折格子とを備え、
前記回折格子は、共振角度及び非共振角度に切り替え自在に保持され、前記共振角度に保持される場合に、前記複数の光が前記外部共振器によって形成される1つの光路上を伝搬するように出射し、前記非共振角度に保持される場合に、前記複数の光が前記外部共振器によって形成される光路と異なる光路上を伝搬するように出射する
半導体レーザ装置。
【請求項3】
外部共振器を備える半導体レーザ装置であって、
複数の光を出射する複数の光増幅部と、
前記複数の光が入射され、前記複数の光が1つの光路上を伝搬するように前記複数の光を出射する回折格子と、
前記複数の光増幅部と前記回折格子との間の光路上に配置され、前記複数の光が入射される光学素子とを備え、
前記光学素子は、共振角度及び非共振角度に切り替え自在に保持され、前記共振角度に保持される場合に、前記複数の光が前記外部共振器によって形成される1つの光路上を伝搬するように前記複数の光を出射し、前記非共振角度に保持される場合に、前記複数の光が前記外部共振器によって形成される光路と異なる光路上を伝搬するように前記複数の光を出射する
半導体レーザ装置。
【請求項4】
前記複数の光の各々をコリメートするコリメータレンズを備える
請求項1~3のいずれか1項に記載の半導体レーザ装置。
【請求項5】
前記コリメータレンズと前記回折格子との間の光路上に配置され、前記複数の光を前記回折格子で重畳させる結合光学系を備え、
請求項4に記載の半導体レーザ装置。
【請求項6】
前記コリメータレンズから出射された前記複数の光の各々の速軸方向と遅軸方向とを入れ替える90°像回転光学系を備える
請求項4又は5に記載の半導体レーザ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体レーザ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体レーザ装置から出射されるレーザ光を用いて、様々な製品の加工が行われている。この種の半導体レーザ装置では、加工品質を高めるために、出射光の高出力化が求められている。
【0003】
特許文献1に記載された半導体レーザ装置においては、互いに出射波長が異なる複数の半導体レーザ素子の各々から出射された光を、回折格子で合成することで出射光の高出力化を実現しようとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-54295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された半導体レーザ装置からのレーザ光は、例えば、光ファイバなどを用いて導光される。半導体レーザ装置が備える複数の半導体レーザ素子及びその他の光学素子の状態は、温度によって変化し得る。例えば、半導体レーザ素子の温度は、電流の印加が開始された時点から、徐々に上昇する。半導体レーザ素子においては、温度上昇に伴い各半導体層などが膨張するため、温度に応じて出射光の光軸が変動し得る。その他の光学素子及び光学素子を保持する保持部材も温度に応じて位置及び寸法が変動し得る。このため、特許文献1に記載された半導体レーザ装置において、複数の半導体レーザ素子に電流の印加を開始してから、半導体レーザ装置の各構成要素の温度が安定するまで、回折格子に入射される光の位置が変動し得る。このため、回折格子上で、複数の光が重畳されない場合がある。これに伴い、半導体レーザ装置から出射されるレーザ光のビーム品質が低下する。また、半導体レーザ装置から出射されるレーザ光の光軸も変動し得るため、レーザ光を光ファイバなどにレーザ光を入射する際に、光軸が変動することで、光ファイバの端面を劣化させる場合がある。
【0006】
本開示は、このような課題を解決するものであり、ビーム品質及び光軸が安定化された出射光を出射できる半導体レーザ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示に係る半導体レーザ装置の一態様は、外部共振器を備える半導体レーザ装置であって、複数の光を出射する複数の光増幅部と、前記複数の光が入射され、前記複数の光が1つの光路上を伝搬するように前記複数の光を出射する回折格子と、前記複数の光増幅部と前記回折格子との間の光路上に挿脱自在に保持される遮光部材とを備える。
【0008】
また、上記課題を解決するために、本開示に係る半導体レーザ装置の他の一態様は、外部共振器を備える半導体レーザ装置であって、複数の光を出射する複数の光増幅部と、前記複数の光が入射される回折格子とを備え、前記回折格子は、共振角度及び非共振角度に切り替え自在に保持され、前記共振角度に保持される場合に、前記複数の光が前記外部共振器によって形成される1つの光路上を伝搬するように出射し、前記非共振角度に保持される場合に、前記複数の光が前記外部共振器によって形成される光路と異なる光路上を伝搬するように出射する。
【0009】
また、上記課題を解決するために、本開示に係る半導体レーザ装置のさらに他の一態様は、外部共振器を備える半導体レーザ装置であって、複数の光を出射する複数の光増幅部と、前記複数の光が入射され、前記複数の光が1つの光路上を伝搬するように前記複数の光を出射する回折格子と、前記複数の光増幅部と前記回折格子との間の光路上に配置され、前記複数の光が入射される光学素子とを備え、前記光学素子は、共振角度及び非共振角度に切り替え自在に保持され、前記共振角度に保持される場合に、前記複数の光が前記外部共振器によって形成される1つの光路上を伝搬するように前記複数の光を出射し、前記非共振角度に保持される場合に、前記複数の光が前記外部共振器によって形成される光路と異なる光路上を伝搬するように前記複数の光を出射する。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、ビーム品質及び光軸が安定化された出射光を出射できる半導体レーザ装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施の形態1に係る半導体レーザ装置の全体構成を示す模式図である。
図2図2は、実施の形態1に係るレーザユニットの構成を示す断面図である。
図3図3は、実施の形態1に係る半導体レーザアレイの構成を示す模式的な斜視図である。
図4図4は、実施の形態1に係る半導体レーザ素子の構成の一例を示す模式的な斜視図である。
図5図5は、実施の形態1に係る半導体レーザ素子が出射する光の速軸方向及び遅軸方向を示す模式図である。
図6図6は、実施の形態1に係る半導体レーザ装置の制御方法を示すフローチャートである。
図7図7は、実施の形態2に係る半導体レーザ装置の全体構成を示す模式図である。
図8図8は、実施の形態3に係る半導体レーザ装置の全体構成を示す模式図である。
図9図9は、実施の形態4に係る半導体レーザ装置の全体構成を示す模式図である。
図10図10は、実施の形態4に係る第二ミラーの構成を示す模式図である。
図11図11は、実施の形態5に係る半導体レーザ装置の全体構成を示す模式図である。
図12図12は、実施の形態6に係る半導体レーザ装置の全体構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、いずれも本開示の一具体例を示すものである。したがって、以下の実施の形態で示される、数値、形状、材料、構成要素、及び、構成要素の配置位置や接続形態などは、一例であって本開示を限定する主旨ではない。
【0013】
また、各図は模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。したがって、各図において縮尺等は必ずしも一致していない。なお、各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡略化する。
【0014】
また、本明細書において、「上方」及び「下方」という用語は、絶対的な空間認識における上方向(鉛直上方)及び下方向(鉛直下方)を指すものではなく、積層構成における積層順を基に相対的な位置関係により規定される用語として用いる。また、「上方」及び「下方」という用語は、2つの構成要素が互いに間隔をあけて配置されて2つの構成要素の間に別の構成要素が存在する場合のみならず、2つの構成要素が互いに接する状態で配置される場合にも適用される。
【0015】
(実施の形態1)
実施の形態1に係る半導体レーザ装置について説明する。
【0016】
[1-1.全体構成]
まず、本実施の形態に係る半導体レーザ装置の全体構成について図1を用いて説明する。図1は、本実施の形態に係る半導体レーザ装置1の全体構成を示す模式図である。なお、図1及び以下に示す各図には、互いに直交するX軸、Y軸、及びZ軸が示されている。
【0017】
本実施の形態に係る半導体レーザ装置1は、外部共振器を備えるレーザ装置であり、複数の光を回折格子50によって合成し、合成された光を出射する。図1に示されるように、半導体レーザ装置1は、レーザユニットLUと、回折格子50と、遮光部材83とを備える。本実施の形態では、半導体レーザ装置1は、結合光学系70と、部分反射ミラー60と、カップリングレンズ90と、光ファイバ92と、制御器80と、電源82と、駆動装置84とをさらに備える。
【0018】
レーザユニットLUは、複数の光を出射する複数の光増幅部を有するユニットである。レーザユニットLUの構成について、図2を用いて説明する。図2は、本実施の形態に係るレーザユニットLUの構成を示す断面図である。図2には、レーザユニットLUの光軸に平行で、かつ、複数の光増幅部の配列方向に垂直な断面が示されている。図2に示されるように、レーザユニットLUは、半導体レーザアレイ110と、サブマウント15と、金属層16と、上部基台17と、下部基台18と、ヒートシンク19と、光学タブTBと、90°像回転光学系BTと、速軸コリメータレンズFACとを有する。
【0019】
半導体レーザアレイ110は、複数の光増幅部を有する半導体発光素子である。半導体レーザアレイ110の構成について図3を用いて説明する。図3は、本実施の形態に係る半導体レーザアレイ110の構成の一例を示す模式的な斜視図である。図3に示されるように、半導体レーザアレイ110は、複数の半導体レーザ素子11がアレイ状に配列された素子である。半導体レーザアレイ110は、複数の発光領域117を有する。複数の半導体レーザ素子11の各々が光増幅部に相当する。本実施の形態では、複数の半導体レーザ素子11は、共通基板130上に配置される。なお、図3においては、半導体レーザアレイ110が4個の半導体レーザ素子11を有する例が示されているが、半導体レーザアレイ110が有する半導体レーザ素子11の個数は4個に限定されない。半導体レーザアレイ110が有する半導体レーザ素子11の個数は、2個以上であればよい。また、半導体レーザアレイ110は、複数の半導体レーザ素子11が一体的に形成されていてもよいし、互いに分離されていてもよい。
【0020】
ここで、半導体レーザアレイ110が有する半導体レーザ素子11について、図4及び図5を用いて説明する。図4は、本実施の形態に係る半導体レーザ素子11の構成を示す模式的な斜視図である。図5は、本実施の形態に係る半導体レーザ素子11が出射する光の速軸方向及び遅軸方向を示す模式図である。
【0021】
半導体レーザ素子11は、光を出射する光増幅部の一例であり、図4に示されるように、基板114と、N型クラッド層112と、活性層111と、P型クラッド層113と、コンタクト層115と、電極116P及び116Nと、絶縁層120とを有する。
【0022】
基板114は、一方の主面に半導体層が積層され、他方の主面に電極116Nが配置される板状の基材である。本実施の形態では、基板114は、N型の半導体基板である。N型クラッド層112は、基板114の上方に配置され、活性層111より屈折率が低いN型の半導体層である。活性層111は、N型クラッド層112の上方に配置される発光層である。P型クラッド層113は、活性層111の上方に配置され、活性層111より屈折率が低いP型の半導体層である。コンタクト層115は、電極116PとオーミックコンタクトするP型の半導体層である。
【0023】
絶縁層120は、電極116Pとコンタクト層115とを電気的に絶縁する誘電体層である。絶縁層120の中央にはY軸方向に延びるスリットが形成されている。絶縁層120のスリット内において、コンタクト層115と電極116Pとがコンタクトする。これにより、電極116Pからコンタクト層115に電流が注入される電流注入領域が形成される。本実施の形態では、Y軸方向に延びる電流注入領域が形成される。絶縁層120のスリットの下方に配置される活性層111に電流が注入される。活性層111のうち電流が注入される領域が発光領域117を形成する。
【0024】
発光領域117のX軸方向(つまり、活性層111の主面に平行で、かつ、電流注入領域の長手方向に対して垂直な方向)における寸法W1は、発光領域117のZ軸方向(つまり、活性層111の積層方向)における寸法W2より長い。半導体レーザ素子11において、X軸方向は、遅軸(スロー軸)方向と称され、Z軸方向は、速軸(ファスト軸)方向と称される。図5において、軸118aは速軸を示し、軸118bは遅軸を示す。図5に示されるように、発光領域117から出射された光の速軸方向における広がり角は、遅軸方向における広がり角より大きい。このため、図5に示されるように発光領域117から出射される光B20の断面形状は、楕円となる。図4に示されるように、半導体レーザアレイ110では、複数の半導体レーザ素子11は、遅軸方向(つまり、X軸方向)に配列されている。
【0025】
図5に示される半導体レーザ素子11のY軸方向の一方の端面がフロント側端面11Fであり、他方の端面がリア側端面11Rである。フロント側端面11Fは、光の反射率が低い端面であり、フロント側端面11Fの発光領域117から光が出射される。フロント側端面11Fの反射率は例えば10%以下である。フロント側端面11Fには、発光領域117から出射される光に対する反射率を低減するための誘電体多層膜などが形成されていてもよい。リア側端面11Rは、フロント側端面11Fより光の反射率が高い端面である。リア側端面11Rの反射率は例えば90%以上である。リア側端面11Rには、発光領域117から出射される光に対する反射率を高めるための誘電体多層膜などが形成されていてもよい。
【0026】
半導体レーザアレイ110が有する複数の半導体レーザ素子11は、互いに異なる波長の光を出射する。隣り合う二つの半導体レーザ素子11が出射する光の波長は、例えば、数nm程度互いに異なっている。半導体レーザ素子11が出射する光の波長は、例えば、390nm以上450nm以下程度に設定される。
【0027】
半導体レーザ素子11の各半導体層を形成する半導体材料は特に限定されない。各半導体材料として、例えば、窒化物系半導体などを用いることができる。
【0028】
図2に戻り、サブマウント15は、半導体レーザアレイ110が配置される放熱部材である。サブマウント15は、例えば、金属材料などの熱伝導率が高い材料で形成される。
【0029】
上部基台17は、下部基台18の上方に配置され、半導体レーザアレイ110を下部基台18とともに挟み込んでいる基台である。なお、上部基台17と半導体レーザアレイ110との間に金属層16が挿入される。
【0030】
下部基台18は、半導体レーザアレイ110がサブマウント15を介して実装される基台である。半導体レーザアレイ110は、下部基台18の上面に実装されている。
【0031】
また、上部基台17及び下部基台18に採用される材料は、特に限定されない。上部基台17及び下部基台18に採用される材料は、例えば、金属材料でもよいし、樹脂材料でもよいし、セラミック材料でもよい。
【0032】
また、上部基台17及び下部基台18の形状は、特に限定されない。
【0033】
なお、上部基台17と下部基台18とは電気的に絶縁されていてもよい。上部基台17と下部基台18との間には、例えば、図示しない電気的に絶縁性を有する絶縁材が配置されている。絶縁材は、例えば、絶縁シートである。絶縁シートは、電気的な絶縁性を有していればよく、任意の材料が採用されてよい。
【0034】
ヒートシンク19は、下部基台18が載置され、下部基台18の熱を放熱させるための台である。ヒートシンク19に採用される材料は、特に限定されない。ヒートシンク19に採用される材料は、例えば、金属でもよいし、セラミックでもよい。また、ヒートシンク19には、水等の液体を通過させるための流路が設けられていてもよい。当該流路に水等の液体を流すことで、ヒートシンク19の放熱性は、向上され得る。
【0035】
光学タブTBは、光学素子を保持する保持部材である。本実施の形態では、光学タブTBは、90°像回転光学系BTを保持する。また、光学タブTBは、90°像回転光学系BTを介して速軸コリメータレンズFACを保持する。本実施の形態では、光学タブTBは、上部基台17に固定される。光学タブTBは、例えば、図2に示されるように、接着剤ABを用いて上部基台17に接着される。
【0036】
90°像回転光学系BTは、光の速軸方向と遅軸方向とを入れ替える光学系である。本実施の形態では、90°像回転光学系BTは、速軸コリメータレンズFACと回折格子50との間の光路上に配置され、速軸コリメータレンズFACから出射された複数の光の各々の速軸方向と遅軸方向とを入れ替える。90°像回転光学系BTは、入射した光の像を光軸を中心に90°回転させることで光の速軸方向と遅軸方向とを入れ替える。本実施の形態に係るレーザユニットLUは、90°像回転光学系BTを備えることで、遅軸方向に配列された複数の光を、速軸方向に配置された複数の光に変換することができる。このように、複数の光を速軸方向に配列することができる。したがって、回折格子50の格子の配列方向と、複数の光の配列方向及び光の速軸方向とを一致させることが可能となる。これにより、回折格子50において、格子の配列方向における合成される複数の光のビーム径を小さくすることができる。ここで、回折格子50において、格子の配列方向における光の径を小さくするほど合成効率を高めることができる。したがって、回折格子50における格子の配列方向と、光の径を小さくできる速軸方向とを一致させることで、複数の光の合成効率を高めることができる。
【0037】
速軸コリメータレンズFACは、半導体レーザアレイ110から出射された複数の光の各々をコリメートするコリメータレンズの一例であり、複数の光の各々の速軸方向における発散を抑制する。速軸コリメータレンズFACは、半導体レーザアレイ110の各フロント側端面11Fの近傍に配置される。これにより、半導体レーザアレイ110から出射された光の速軸方向における寸法を抑制できる。本実施の形態では、速軸コリメータレンズFACは、90°像回転光学系BTに固定される。これにより、速軸コリメータレンズFACと、90°像回転光学系BTとの相対位置の変動を抑制できる。速軸コリメータレンズFACとして、例えばシリンドリカルレンズを用いることができる。
【0038】
図1に戻り、結合光学系70は、レーザユニットLUから出射された複数の光を回折格子50で重畳させる光学系である。結合光学系70は、レーザユニットLUが有する速軸コリメータレンズFACと回折格子50との間の光路上に配置される。本実施の形態では、結合光学系70は、シリンドリカルレンズである。
【0039】
回折格子50は、複数の光増幅部の各々からの光が入射され、入射された複数の光が1つの光路上を伝搬するように当該複数の光を出射する光学素子である。複数の光増幅部の各々からの光は、回折格子50のほぼ同一の位置に入射し、回折される。回折格子50は、入射した各光を波長に応じて回折する。このため、各光の波長に応じて入射角度を適切に定めることで、各光の回折格子50に対する出射角度(つまり、回折角度)をほぼ同一にすることができる。つまり、回折格子50によって、複数の互いに波長の異なる光を合成することができる。すなわち、回折格子50から出射された各光は、互いに光軸が整合される。なお、本実施の形態では、回折格子50として反射型の回折格子を用いる例を示すが、回折格子50として透過型の回折格子を用いてもよい。
【0040】
本実施の形態では、回折格子50における格子の配列方向と、複数の光の速軸方向とが一致するように、複数の光が回折格子50に入射される。また、複数の光は、速軸方向に配列される。これにより、回折格子50において、格子の配列方向における合成される複数の光のビーム径を小さくすることができる。上述したとおり、回折格子50における格子の配列方向と、光の径を小さくできる速軸方向とを一致させることで、複数の光の合成効率を高めることができる。
【0041】
部分反射ミラー60は、回折格子50から出射された光の一部を透過し、かつ、他の一部を反射するミラーである。部分反射ミラー60は、レーザユニットLUに含まれる複数の半導体レーザ素子11のリア側端面11Rとの間で外部共振器を構成し、出力カプラとして機能する。当該外部共振器内で複数の光が共振することにより部分反射ミラー60からレーザ光である出射光が出射する。部分反射ミラー60は、例えば、平面ミラーである。なお、部分反射ミラー60は、凹面ミラーであってもよい。
【0042】
カップリングレンズ90は、部分反射ミラー60から出射された出射光を光ファイバ92に結合するレンズである。カップリングレンズ90は、部分反射ミラー60から出射された出射光を光ファイバ92の端面に集光することで、出射光を光ファイバ92に入射する。カップリングレンズ90として、例えば、球面レンズを用いることができる。
【0043】
光ファイバ92は、部分反射ミラー60から出射された出射光を伝搬する導光部材である。
【0044】
電源82は、レーザユニットLUに電力を供給する直流電源である。具体的には、電源82は、レーザユニットLUに含まれる半導体レーザアレイ110に直流電流を印加する。電源82から半導体レーザアレイ110への印加電流は、制御器80によって制御される。
【0045】
遮光部材83は、複数の光増幅部と回折格子50の間の光路上に挿脱自在に保持される部材である。遮光部材83は、光路上に挿入されることで、複数の光増幅部からの光を遮断する。これにより、外部共振器内で光が共振するのを妨げることができる。遮光部材83は、その配置位置を光路上の非共振位置及び光路から外れた共振位置に切り替え自在に保持される。遮光部材83は、光路から外れた共振位置に保持される場合に、複数の光が外部共振器内において共振することを妨げない。一方、遮光部材83は、光路上の非共振位置に保持される場合に、複数の光を遮ることで、複数の光が外部共振器において共振することを妨げる。遮光部材83として、例えば、金属などの光を反射、散乱、又は吸収する部材を用いることができる。遮光部材83が共振位置に保持される状態は、半導体レーザ装置1の外部共振器内において複数の光が共振する共振状態の一例である。遮光部材83が非共振位置に保持される状態は、半導体レーザ装置1の外部共振器内において複数の光が共振しない非共振状態の一例である。本実施の形態に係る遮光部材83は、共振状態と、非共振状態とを切り替える切替装置の一例である。
【0046】
駆動装置84は、遮光部材83を光路上に挿脱自在に保持する装置である。駆動装置84は、遮光部材83を、共振位置又は非共振位置で保持する。駆動装置84は、遮光部材83の位置を移動させることで、遮光部材83を共振位置又は非共振位置に配置する。駆動装置84として、例えば、遮光部材83を平行移動させる移動ステージを用いることができる。駆動装置84は、制御器80によって制御される。
【0047】
制御器80は、半導体レーザ装置1を制御する機器である。本実施の形態では、制御器80は、電源82と、駆動装置84とを制御する。具体的には、制御器80は、電源82を制御することで、複数の光増幅部である半導体レーザアレイ110への印加電流を制御する。また、制御器80は、駆動装置84を制御することで、半導体レーザ装置1の共振状態と、非共振状態とを切り替える。具体的には、制御器80は、駆動装置84を制御することで、遮光部材83の位置を制御する。なお、制御器80が、駆動装置84を制御することによって、遮光部材83の位置を切り替えることを、制御器80が、遮光部材83の位置を切り替えるとも表現する。制御器80は、複数の光の光軸が安定していない場合に、遮光部材83が非共振位置で保持されるように駆動装置84を制御する。一方、制御器80は、複数の光の光軸が安定している場合に、遮光部材83が共振位置で保持され得るように駆動装置84を制御する。制御器80による制御方法の詳細については、後述する。制御器80は、例えば、マイコンによって実現できる。マイコンは、プログラムが格納されたROM、RAMなどのメモリと、プログラムを実行するプロセッサ(CPU)と、タイマと、A/D変換器、D/A変換器などを含む入出力回路とを有する1チップの半導体集積回路である。なお、制御器80は、マイコン以外のパーソナルコンピュータ、電気回路などを用いて実現されてもよい。
【0048】
[1-2.制御方法]
次に、本実施の形態に係る半導体レーザ装置1の制御方法について、図6を用いて説明する。図6は、本実施の形態に係る半導体レーザ装置1の制御方法を示すフローチャートである。
【0049】
本実施の形態に係る半導体レーザ装置1では、半導体レーザアレイ110に電流を印加する場合に、電流を印加する前と比較して温度が上昇する。このため、半導体レーザアレイ110の各半導体層などが膨張し、半導体レーザアレイ110から出射される光の光軸が変動し得る。また、半導体レーザアレイ110から放出される熱に起因して、半導体レーザアレイ110からの熱が伝導するサブマウント15、金属層16、上部基台17、及び下部基台18も膨張し得る。このため、上部基台17に固定される光学タブTB、90°像回転光学系BT、速軸コリメータレンズFACと、半導体レーザアレイ110から出射される複数の光との相対位置が移動し得る。以上のように、半導体レーザ装置1においては、半導体レーザアレイ110への電流印加開始から半導体レーザ装置1内の各構成要素の温度が安定するまで、半導体レーザアレイ110が出射する複数の光の光軸が安定しない。このように複数の光の光軸が安定していない場合、回折格子50に入射される複数の光の位置が変動し得る。このため、回折格子50上で、複数の光が重畳されない場合がある。これに伴い、半導体レーザ装置1から出射される出射光のビーム品質が低下する。また、半導体レーザ装置1から出射される出射光の光軸も変動し得るため、出射光を光ファイバ92に入射する際に、光軸が変動することで、光ファイバ92の端面を劣化させる場合がある。そこで、本実施の形態に係る半導体レーザ装置1の制御方法においては、以上の問題を解決するために、以下に示すような制御を行う。
【0050】
図6に示されるように、まず、制御器80は、半導体レーザ装置1を非共振状態に維持する(S10)。本実施の形態では、制御器80は、駆動装置84を制御することで、遮光部材83を非共振位置に保持する。
【0051】
続いて、制御器80は、複数の光増幅部に電流を印加する(S20)。本実施の形態では、制御器80は、電源82を制御することで、レーザユニットLUの半導体レーザアレイ110に電流を印加する。これに伴い、半導体レーザアレイ110から複数の光が出射されるが、遮光部材83が非共振位置に保持されているため、複数の光は遮光部材83によって遮光される。このため、外部共振器内で、複数の光が共振しない。
【0052】
続いて、制御器80は、複数の光の光軸が安定したか否かを判定する(S30)。本実施の形態では、制御器80は、半導体レーザアレイ110へ電流の印加を開始してからの経過時間を測定し、所定の暖機時間を経過するまで、複数の光の光軸は安定していないと判定し、暖機時間を経過した後に、複数の光の光軸が安定したと判定する。ここで、暖機時間は、半導体レーザ装置1の構成に応じて適宜決定される。暖機時間は、例えば、半導体レーザ装置1の実験に基づいて決定されてもよい。また、暖機時間は、半導体レーザアレイ110への印加電流の大きさに応じて変化してもよい。
【0053】
制御器80は、光軸が安定していないと判定した場合(S30でNo)、ステップS30に戻る。一方、制御器80は、光軸が安定したと判定した場合(S30でYes)、半導体レーザ装置1から出射光を出射する出射指示の有無を判定する(S40)。ここで、出射指示の有無は、例えば、ユーザによって制御器80の外部から入力される出射開始信号の有無によって判定されてもよいし、制御器80の内部で生成される出射開始信号の有無に基づいて決定されてもよい。
【0054】
制御器80は、出射指示がなかったと判定した場合(S40でNo)、ステップS40に戻る。一方、制御器80は、出射指示があったと判定した場合(S40でYes)、半導体レーザ装置1を共振状態に切り替える(S50)。つまり、制御器80は、駆動装置84を制御することで、遮光部材83を移動させて、共振位置で保持する。これにより、複数の光が外部共振器内で共振する。これに伴い、部分反射ミラー60から出射光が出射される。
【0055】
続いて、制御器80は、出射停止指示の有無を判定する(S60)。ここで、出射停止指示の有無は、例えば、ユーザによって制御器80の外部から入力される出射停止信号の有無によって判定されてもよいし、制御器80の内部で生成される出射停止信号の有無に基づいて決定されてもよい。
【0056】
制御器80は、出射停止指示がなかったと判定した場合(S60でNo)、ステップS60に戻る。一方、制御器80は、出射停止指示があったと判定した場合(S60でYes)、半導体レーザ装置1を非共振状態に切り替える(S70)。つまり、制御器80は、駆動装置84を制御することで、遮光部材83を移動させて、非共振位置で保持する。これにより、複数の光の共振が停止する。これに伴い、部分反射ミラー60から出射光が出射されなくなる。
【0057】
続いて、ステップS40に戻り、上述した半導体レーザ装置1の制御が継続される。
【0058】
本実施の形態に係る半導体レーザ装置1では、以上のように、半導体レーザアレイ110が出射する複数の光の光軸が安定した後に、複数の光を外部共振器で共振させて、出射光を出射する。このため、半導体レーザ装置1では、複数の光を、回折格子50上で重畳させることができるため、安定化されたビーム品質の出射光を出射することができる。また、半導体レーザ装置1では、複数の光の光軸が安定化されているため、光軸が安定化された出射光を出射できる。
【0059】
また、本実施の形態では、遮光部材83は、重畳されていない複数の光が伝搬する光軸上の位置に挿入されるため、遮光部材83に入射する光の単位面積当たりの強度を低減できる。したがって、遮光部材83の複数の光による損傷を軽減できる。
【0060】
(実施の形態2)
実施の形態2に係る半導体レーザ装置について説明する。本実施の形態に係る半導体レーザ装置は、共振状態と非共振状態とを回折格子50を用いて切り替える点において、実施の形態1に係る半導体レーザ装置1と相違する。以下、本実施の形態に係る半導体レーザ装置について、実施の形態1に係る半導体レーザ装置1との相違点を中心に図7を用いて説明する。
【0061】
図7は、本実施の形態に係る半導体レーザ装置101の全体構成を示す模式図である。図7に示されるように、半導体レーザ装置101は、レーザユニットLUと、回折格子50とを備える。本実施の形態では、半導体レーザ装置101は、結合光学系70と、部分反射ミラー60と、カップリングレンズ90と、光ファイバ92と、制御器180と、電源82と、駆動装置52と、ビームダンパ183とをさらに備える。
【0062】
本実施の形態に係る回折格子50は、回動自在に保持される。より詳しくは、回折格子50は、共振角度及び非共振角度に切り替え自在に保持される。回折格子50が共振角度に保持される場合に、回折格子50は、半導体レーザアレイ110からの複数の光が外部共振器によって形成される1つの光路上を伝搬するように出射する。また、回折格子50が非共振角度に保持される場合に、回折格子50は、複数の光が外部共振器によって形成される光路と異なる光路上を伝搬するように出射する。本実施の形態では、回折格子50は、駆動装置52に保持され、駆動装置52によって回動される。本実施の形態に係る回折格子50は、半導体レーザ装置101の共振状態と、非共振状態とを切り替える切替装置の一例である。
【0063】
駆動装置52は、回折格子50を回動自在に保持する装置である。駆動装置52は、回折格子50を、共振角度又は非共振角度で保持する。駆動装置52は、回折格子50を回動することで、回折格子50を共振角度又は非共振角度で保持する。駆動装置52として、例えば、回折格子50を回動する回動ステージを用いることができる。駆動装置52は、制御器180によって制御される。
【0064】
制御器180は、半導体レーザ装置101を制御する機器である。本実施の形態では、制御器180は、電源82と、駆動装置52とを制御する。具体的には、制御器180は、電源82を制御することで、複数の光増幅部である半導体レーザアレイ110への印加電流を制御する。また、制御器180は、駆動装置52を制御することで、半導体レーザ装置101の共振状態と、非共振状態とを切り替える。具体的には、制御器180は、駆動装置52を制御することで、回折格子50の回動角度を制御する。なお、制御器180が、駆動装置52を制御することによって、回折格子50の回動角度を切り替えることを、制御器180が、回折格子50の回動角度を切り替えるとも表現する。制御器180は、複数の光の光軸が安定していない場合に、回折格子50が非共振角度で保持されるように駆動装置52を制御する。一方、制御器180は、複数の光の光軸が安定している場合に、回折格子50が共振角度で保持され得るように駆動装置52を制御する。
【0065】
ビームダンパ183は、回折格子50が非共振角度で保持される場合に、回折格子50から出射される光が入射する機器である。
【0066】
本実施の形態に係る半導体レーザ装置101においても、制御器180は、半導体レーザ装置101の半導体レーザアレイ110から出射された複数の光の光軸が安定していないと判定した場合には、制御器180は、半導体レーザ装置101を非共振状態に維持する。一方、制御器180は、半導体レーザ装置101の半導体レーザアレイ110から出射された複数の光の光軸が安定していると判定した場合には、制御器180は、出射開始信号などに基づいて、半導体レーザ装置101を共振状態に切り替える。
【0067】
これにより、本実施の形態に係る半導体レーザ装置101においても、実施の形態1に係る半導体レーザ装置1と同様の効果が奏される。また、本実施の形態では、外部共振器内に遮光部材などを挿入する必要がないため、外部共振器内の構成を簡素化することができる。
【0068】
(実施の形態3)
実施の形態3に係る半導体レーザ装置について説明する。本実施の形態に係る半導体レーザ装置は、複数の光の光軸が安定したか否かを判定する手段において、実施の形態1に係る半導体レーザ装置1と相違する。以下、本実施の形態に係る半導体レーザ装置について、実施の形態1に係る半導体レーザ装置1との相違点を中心に図8を用いて説明する。
【0069】
図8は、本実施の形態に係る半導体レーザ装置201の全体構成を示す模式図である。図8に示されるように、半導体レーザ装置201は、レーザユニットLUと、回折格子50と、遮光部材83とを備える。本実施の形態では、半導体レーザ装置201は、結合光学系70と、部分反射ミラー60と、カップリングレンズ90と、光ファイバ92と、制御器280と、電源82と、駆動装置84と、ビームスプリッタ85と、ビームモニタ86とをさらに備える。
【0070】
ビームスプリッタ85は、複数の光増幅部と回折格子50との間の光路上に配置され、半導体レーザアレイ110から出射される複数の光が入射され、複数の光の一部を反射する光学素子である。ビームスプリッタ85は、例えば、1%程度の反射率を有する部分反射ミラーである。ビームスプリッタ85は、光軸に対して傾斜して配置される。具体的には、ビームスプリッタ85は、反射光がビームモニタ86に入射するように、光軸に対して傾斜して配置される。
【0071】
ビームモニタ86は、複数の光の光軸の位置をモニタする検出器である。ビームモニタ86は、ビームスプリッタ85からの反射光の光路上に配置され、当該反射光の位置を検出することで複数の光の光軸の位置をモニタする。ビームモニタ86は、複数の光の光軸の位置に対応する信号を制御器280に出力する。ビームモニタ86として、例えば、CCD(Charge Coupled Device)カメラなどの撮像装置を用いることができる。
【0072】
制御器280は、半導体レーザ装置201を制御する機器である。本実施の形態では、制御器280は、電源82と、駆動装置84とを制御する。本実施の形態に係る制御器280は、ビームモニタ86から複数の光の光軸の位置に対応する信号を受信し、当該信号に基づいて、複数の光の光軸の位置が安定したか否かを判定する。制御器280は、例えば、所定の時間にわたって、複数の光の光軸の位置の変動量が所定の値以下である場合に、複数の光の光軸の位置が安定したと判定してもよい。制御器280は、複数の光の光軸の位置が安定したか否かを判定する方法以外については、実施の形態1に係る制御器80と同様に制御を行う。
【0073】
本実施の形態に係る半導体レーザ装置201においても、実施の形態1に係る半導体レーザ装置1と同様の効果が奏される。また、本実施の形態では、ビームモニタ86を用いて複数の光の光軸の位置をモニタできるため、複数の光の光軸の位置が安定したか否かを確実に判定することができる。
【0074】
(実施の形態4)
実施の形態4に係る半導体レーザ装置について説明する。本実施の形態に係る半導体レーザ装置は、主に、複数の光増幅部、及び、外部共振器内の光学系の構成において、実施の形態1に係る半導体レーザ装置1と相違する。以下、本実施の形態に係る半導体レーザ装置について、実施の形態1に係る半導体レーザ装置1との相違点を中心に図8を用いて説明する。
【0075】
図9は、本実施の形態に係る半導体レーザ装置301の全体構成を示す模式図である。図9に示されるように、半導体レーザ装置301は、複数のレーザユニットLU1~LU8と、回折格子50と、遮光部材83とを備える。本実施の形態では、半導体レーザ装置301は、第一ミラーMR11~MR18と、第二ミラーMR2と、第三ミラーMR3と、第四ミラーMR4と、制御器380と、電源82と、駆動装置84とをさらに備える。
【0076】
レーザユニットLU1~LU8は、複数の光を出射する複数の光増幅部の一例である。レーザユニットLU1~LU8の各々は、実施の形態1に係るレーザユニットLUと同様の構成を有する。レーザユニットLU1~LU8は、X軸方向に直線状に配列され、Y軸方向に複数の光を出射する。レーザユニットLU1~LU8の各々には、電源82から電流が印加される。例えば、レーザユニットLU1~LU8は、直列に接続されて、各レーザユニットに同一の電流が印加される。電源82からレーザユニットLU1~LU8への印加電流は、制御器380によって制御される。
【0077】
第一ミラーMR11~MR18は、それぞれ、レーザユニットLU1~LU8からY軸方向に離隔して配置される。第一ミラーMR11~MR18の各々は、レーザユニットLU1~LU8の各々に含まれる複数の半導体レーザ素子11のフロント側端面11Fと対向する位置に配置される。つまり、第一ミラーMR11~MR18の各々は、レーザユニットLU1~LU8の各々に含まれる複数の半導体レーザ素子11から出射される複数の光の光軸上に配置される。
【0078】
第一ミラーMR11~MR18の反射面は、平面であり、光軸に対して傾斜して配置されている。これにより、第一ミラーMR11~MR18は、それぞれ、レーザユニットLU1~LU8からの光を第二ミラーMR2に向けて反射する。第一ミラーMR11~MR14は、互いに他の第一ミラーで反射した光を遮ることを抑制するために、互いにY軸方向にシフトして配置される。第一ミラーMR15~MR18も、第一ミラーMR11~MR14と同様に、互いにY軸方向にシフトして配置される。
【0079】
第一ミラーMR11~MR14は、反射面がXY平面に平行な平面上において、放物線上に並ぶように配置される。また、第一ミラーMR15~MR18は、反射面がXY平面に平行な平面上において、放物線上に並ぶように配置される。なお、ここで、放物線上とは、数学的に厳密な放物線上に限定されず、放物線上からわずかにずれた位置も含まれる。例えば、数学的に厳密な放物線から、各第一ミラーの反射面の寸法程度ずれた位置も放物線上に含まれる。
【0080】
第一ミラーMR11~MR14の反射面の傾き角は、互いに異なり、第一ミラーMR15~MR18の反射面の傾き角は、互いに異なる。
【0081】
第二ミラーMR2は、第一ミラーMR11~MR18で反射した光が入射され、第三ミラーMR3に向けて反射するミラーである。本実施の形態では、第二ミラーMR2のX軸方向の位置は、レーザユニットLU4のX軸方向の位置とレーザユニットLU5のX軸方向の位置との間である。以下、第二ミラーMR2の構成について、図10を用いて説明する。図10は、本実施の形態に係る第二ミラーMR2の構成を示す模式図である。図10に示されるように、第二ミラーMR2は、レーザユニットLU1~LU8と同数のミラーMR21~MR28を有する。図9に示される第一ミラーMR11~MR18で反射した光は、それぞれ、図10に示される第二ミラーMR2のミラーMR21~MR28に入射される。第二ミラーMR2のミラーMR21~MR28は、それぞれ、平面ミラーであり、入射された光を第三ミラーMR3に向けて反射する。第二ミラーMR2のミラーMR21~MR24の反射面の傾き角は、互いに異なり、第二ミラーMR2のミラーMR25~MR28の反射面の傾き角は、互いに異なる。
【0082】
図9に示される第三ミラーMR3は、第二ミラーMR2のミラーMR21~MR28で反射した光が入射され、第四ミラーMR4に向けて反射するミラーである。第三ミラーMR3は、例えば、平面ミラーである。
【0083】
第四ミラーMR4は、第三ミラーMR3で反射した光が入射され、回折格子50に向けて反射するミラーである。第四ミラーMR4で反射された複数の光は、互いに異なる入射角度で回折格子50に入射する。第四ミラーMR4は、例えば、平面ミラーである。
【0084】
回折格子50は、実施の形態1に係る回折格子50と同様に、複数の光増幅部の各々からの光が入射され、入射された複数の光が1つの光路上を伝搬するように当該複数の光を出射する光学素子である。本実施の形態では、回折格子50は、出力カプラとしての機能も有する。つまり、回折格子50に入射する光の一部が回折されて出射光となる。また、回折格子50に入射する光の他の一部は、反射されて、第四ミラーMR4、第三ミラーMR3、第二ミラーMR2、及び第一ミラーMR11~MR18を介してレーザユニットLU1~LU8に戻る。つまり、回折格子50と、各レーザユニットに含まれる半導体レーザ素子11のリア側端面11Rとが外部共振器を形成し、当該外部共振器内で光が発振することでレーザ光が生成される。本実施の形態では、回折格子50は、透過型の回折格子であり、回折された出射光は、回折格子50を透過する。なお、本実施の形態に係る半導体レーザ装置301において、回折格子50として、反射型の回折格子を用いてもよい。
【0085】
遮光部材83は、実施の形態1に係る遮光部材83と同様の構成を有する。本実施の形態では、遮光部材83は、第二ミラーMR2と、第三ミラーMR3との間の光路上に挿脱自在に保持される。遮光部材83は、駆動装置84によって保持される。
【0086】
駆動装置84は、実施の形態1に係る駆動装置84と同様の構成を有する。駆動装置84は、制御器380によって制御される。
【0087】
制御器380は、半導体レーザ装置301を制御する機器である。本実施の形態では、制御器380は、電源82と、駆動装置84とを制御する。本実施の形態に係る制御器380は、実施の形態1に係る制御器80と同様に制御を行う。
【0088】
本実施の形態に係る半導体レーザ装置301においても、実施の形態1に係る半導体レーザ装置1と同様の効果が奏される。また、半導体レーザ装置301においては、複数のレーザユニットLU1~LU8を備えるため、実施の形態1に係る半導体レーザ装置1より高い光出力を得ることができる。
【0089】
なお、本実施の形態では、回折格子50を出力カプラとして用いたが、回折格子50を出力カプラとして用いずに、実施の形態1などと同様に、部分反射ミラーを出力カプラとして用いてもよい。つまり、回折格子50から出射される光の光路上に部分反射ミラーを配置し、当該部分反射ミラーと、各レーザユニットに含まれる半導体レーザ素子11のリア側端面11Rとで外部共振器を形成してもよい。このような構成を有する半導体レーザ装置によっても、上記半導体レーザ装置301と同様の効果が奏される。
【0090】
(実施の形態5)
実施の形態5に係る半導体レーザ装置について説明する。本実施の形態に係る半導体レーザ装置は、主に、複数の光増幅部の構成において、実施の形態1に係る半導体レーザ装置1と相違する。以下、本実施の形態に係る半導体レーザ装置について、実施の形態1に係る半導体レーザ装置1との相違点を中心に図11を用いて説明する。
【0091】
図11は、本実施の形態に係る半導体レーザ装置401の全体構成を示す模式図である。図11に示されるように、半導体レーザ装置401は、複数のレーザモジュールCPと、回折格子50と、遮光部材83とを備える。本実施の形態では、半導体レーザ装置401は、速軸コリメータレンズFACと、結合光学系70と、部分反射ミラー60と、カップリングレンズ90と、光ファイバ92と、制御器480と、電源482と、駆動装置84とをさらに備える。
【0092】
複数のレーザモジュールCPは、複数の光を出射する複数の光増幅部の一例である。本実施の形態では、複数のレーザモジュールCPの各々は、CANパッケージと、半導体レーザ素子11とを含む。半導体レーザ素子11は、図4及び図5に示される実施の形態1に係る半導体レーザ素子11と同様の構成を有し、一つの光を出射する。複数のレーザモジュールCPは、X軸方向に配列されている。複数のレーザモジュールCPの各々に含まれる半導体レーザ素子11は、速軸方向がX軸方向と平行になるように配置される。
【0093】
複数のレーザモジュールCPの各々には、電源482から電流が印加される。例えば、複数のレーザモジュールCPは、直列に接続されて、電源482から各レーザモジュールCPに同一の電流が印加される。電源482から複数のレーザモジュールCPへの印加電流は、制御器480によって制御される。
【0094】
速軸コリメータレンズFACは、複数のレーザモジュールCPから出射された複数の光の各々をコリメートするコリメータレンズの一例であり、複数の光の各々の速軸方向における発散を抑制する。
【0095】
遮光部材83は、実施の形態1に係る遮光部材83と同様の構成を有する。本実施の形態では、遮光部材83は、速軸コリメータレンズFACと、回折格子50との間の光路上に挿脱自在に保持される。遮光部材83は、駆動装置84によって保持される。
【0096】
駆動装置84は、実施の形態1に係る駆動装置84と同様の構成を有する。本実施の形態では、駆動装置84は、制御器480によって制御される。
【0097】
制御器480は、半導体レーザ装置401を制御する機器である。本実施の形態では、制御器480は、電源482と、駆動装置84とを制御する。制御器480は、制御対象である電源482が異なる点以外は、実施の形態1に係る制御器80と同様に制御を行う。
【0098】
本実施の形態に係る半導体レーザ装置401においても、実施の形態1に係る半導体レーザ装置1と同様の効果が奏される。
【0099】
(実施の形態6)
実施の形態6に係る半導体レーザ装置について説明する。本実施の形態に係る半導体レーザ装置は、共振状態と非共振状態とを回折格子50を用いて切り替える点において、実施の形態5に係る半導体レーザ装置401と相違する。以下、本実施の形態に係る半導体レーザ装置について、実施の形態5に係る半導体レーザ装置401との相違点を中心に図12を用いて説明する。
【0100】
図12は、本実施の形態に係る半導体レーザ装置501の全体構成を示す模式図である。図12に示されるように、半導体レーザ装置501は、複数のレーザモジュールCPと、回折格子50とを備える。本実施の形態では、半導体レーザ装置501は、結合光学系70と、部分反射ミラー60と、カップリングレンズ90と、光ファイバ92と、制御器580と、電源482と、駆動装置52と、ビームダンパ183とをさらに備える。
【0101】
本実施の形態に係る回折格子50は、実施の形態2に係る回折格子50と同様に、回動自在に保持される。より詳しくは、回折格子50は、共振角度及び非共振角度に切り替え自在に保持される。本実施の形態では、回折格子50は、駆動装置52に保持され、駆動装置52によって回動される。
【0102】
駆動装置52は、実施の形態2に係る駆動装置52と同様の構成を有する。本実施の形態では、駆動装置52は、制御器580によって制御される。
【0103】
制御器580は、半導体レーザ装置501を制御する機器である。本実施の形態では、制御器580は、電源482と、駆動装置52とを制御する。制御器580は、制御対象である電源482が異なる点以外は、実施の形態2に係る制御器180と同様に制御を行う。
【0104】
本実施の形態に係る半導体レーザ装置501においても、実施の形態5に係る半導体レーザ装置401と同様の効果が奏される。
【0105】
(変形例など)
以上、本開示に係る半導体レーザ装置について、各実施の形態に基づいて説明したが、本開示は、上記各実施の形態に限定されるものではない。
【0106】
例えば、上記各実施の形態では、制御器は、半導体レーザ装置に含まれるが、制御器は、半導体レーザ装置に含まれなくてもよい。言い換えると、制御器は、半導体レーザ装置の外部から半導体レーザ装置を制御してもよい。
【0107】
また、上記実施の形態1~3、5、及び6では、半導体レーザ装置は、部分反射ミラー60を備えたが、例えば、回折格子50が出力カプラとして機能し得る場合などには、部分反射ミラー60を備えなくてもよい。
【0108】
例えば、上記各実施の形態では、半導体レーザ装置は、制御器を備えるが、半導体レーザ装置は、制御器を備えなくてもよい。言い換えると、制御器は、半導体レーザ装置の外部から半導体レーザ装置を制御してもよい。
【0109】
また、上記各実施の形態では、半導体レーザ装置は、カップリングレンズ90及び光ファイバ92を備えたが、半導体レーザ装置は、カップリングレンズ90及び光ファイバ92を備えなくてもよい。
【0110】
また、上記各実施の形態に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態や、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で上記各実施の形態における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本開示に含まれる。
【0111】
例えば、実施の形態4に係る半導体レーザ装置301において、実施の形態2と同様に、回折格子50を回動することによって、共振状態及び非共振状態を切り替える構成を用いてもよい。
【0112】
また、実施の形態2及び6においては、回折格子50を回動することによって、共振状態と、非共振状態とを切り替えたが、外部共振器内の他の光学素子を回動することによって、共振状態と、非共振状態とを切り替えてもよい。つまり、本開示に係る半導体レーザ装置は、複数の光増幅部と回折格子50の間の光路上に配置され、複数の光が入射される光学素子を備え、当該光学格子は、共振角度及び非共振角度に切り替え自在に保持されてもよい。当該光学素子が共振角度に保持される場合に、複数の光が外部共振器によって形成される1つの光路上を伝搬するように複数の光を出射し、非共振角度に保持される場合に、複数の光が外部共振器によって形成される光路と異なる光路上を伝搬するように複数の光を出射してもよい。当該光学素子は、共振状態と、非共振状態とを切り替える切替装置の一例である。例えば、実施の形態4に係る第三ミラーMR3、第四ミラーMR4などの光学素子が、共振角度及び非共振角度に切り替え自在に保持されてもよい。
【0113】
また、実施の形態2、4、5、及び6に係る発明において、実施の形態3に係る半導体レーザ装置201で用いられる複数の光の光軸が安定したか否かを判定する手段を用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本開示の半導体レーザ装置は、ビーム品質及び光軸が安定化された高出力な光源として、例えば、レーザ加工機などの光源に適用できる。
【符号の説明】
【0115】
1、101、201、301、401、501 半導体レーザ装置
11 半導体レーザ素子
11F フロント側端面
11R リア側端面
15 サブマウント
16 金属層
17 上部基台
18 下部基台
19 ヒートシンク
50 回折格子
52、84 駆動装置
60 部分反射ミラー
70 結合光学系
80、180、280、380、480、580 制御器
82、482 電源
83 遮光部材
85 ビームスプリッタ
86 ビームモニタ
90 カップリングレンズ
92 光ファイバ
110 半導体レーザアレイ
111 活性層
112 N型クラッド層
113 P型クラッド層
114 基板
115 コンタクト層
116N、116P 電極
117 発光領域
118a、118b 軸
120 絶縁層
130 共通基板
183 ビームダンパ
AB 接着剤
B20 光
BT 90°像回転光学系
CP レーザモジュール
FAC 速軸コリメータレンズ
LU、LU1、LU2、LU3、LU4、LU5、LU6、LU7、LU8 レーザユニット
MR11、MR12、MR13、MR14、MR15、MR16、MR17、MR18 第一ミラー
MR2 第二ミラー
MR21、MR22、MR23、MR24、MR25、MR26、MR27、MR28 ミラー
MR3 第三ミラー
MR4 第四ミラー
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図12