(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022108410
(43)【公開日】2022-07-26
(54)【発明の名称】シーム溶接装置
(51)【国際特許分類】
B23K 11/30 20060101AFI20220719BHJP
B23K 11/06 20060101ALN20220719BHJP
H01L 23/02 20060101ALN20220719BHJP
【FI】
B23K11/30 340
B23K11/06 540
H01L23/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021003378
(22)【出願日】2021-01-13
(71)【出願人】
【識別番号】000227836
【氏名又は名称】日本アビオニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】岩月 忠宏
(57)【要約】
【課題】ローラ電極をワークの一辺の少なくとも一部上で転動させる転動区間を含む当該ローラ電極の移動範囲において当該ローラ電極の上下位置を検出する。
【解決手段】シーム溶接装置10は、ワークWのリッドW2の上面の一辺上を転動してワークWに対してシーム溶接を行うローラ電極16R及び16Lと、ローラ電極16R及び16Lを、上下方向に移動可能な状態で、ワークWに対して相対的かつ前記一辺に沿った水平方向に、前記一辺の少なくとも一部上を転動させる転動区間を含む移動範囲で移動させる第1駆動機構12と、を備える。さらに、シーム溶接装置10は、第1駆動機構12によりローラ電極16R及び16Lが前記移動範囲で移動しているときの当該ローラ電極16R及び16Lの上下位置を検出する位置検出センサ24R及び24Lを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークの上面の一辺上を転動して前記ワークに対してシーム溶接を行うローラ電極と、
前記ローラ電極を、上下方向に移動可能な状態で、前記ワークに対して相対的かつ前記一辺に沿った水平方向に、前記一辺の少なくとも一部上を転動させる転動区間を含む移動範囲で移動させる駆動機構と、
前記駆動機構により前記ローラ電極が前記移動範囲で移動しているときの前記ローラ電極の上下位置を検出する上下位置検出センサと、
を備えるシーム溶接装置。
【請求項2】
前記上下位置検出センサにより検出される前記上下位置は、前記ローラ電極の上下方向の移動距離により示される、
請求項1に記載のシーム溶接装置。
【請求項3】
前記ローラ電極を回転可能に保持し、前記ローラ電極とともに上下方向に移動可能な保持部材と、
前記保持部材を上下方向に移動可能に支持する支持部材と、をさらに備え、
前記駆動機構は、前記保持部材が前記支持部材に対して上下方向に移動可能な状態で、前記ローラ電極を前記ワークに対して相対的に移動させ、
前記上下位置検出センサは、前記支持部材に対する前記保持部材の相対位置を前記ローラ電極の前記上下位置として検出する、
請求項1又は2に記載のシーム溶接装置。
【請求項4】
前記駆動機構と前記シーム溶接のための前記ローラ電極に対する電圧印加とを制御するように構成されたコントローラと、
前記ローラ電極の前記ワークに対する前記水平方向の相対位置を水平位置として検出する水平位置検出センサと、をさらに備え、
前記移動範囲は、前記ローラ電極が前記一辺に乗り上げる区間を含み、
前記コントローラは、
前記シーム溶接の前に前記ローラ電極が前記移動範囲で相対的に移動した期間中に前記上下位置検出センサにより順次検出された前記上下位置及び前記水平位置検出センサにより順次検出された前記水平位置に基づいて、前記上下位置の上方への移動の終了時のタイミングで検出された前記水平位置を特定し、
前記駆動機構と前記ローラ電極に対する前記電圧印加とを制御し、前記特定した前記水平位置に応じた開始位置から前記ローラ電極に対する前記電圧印加を開始する前記シーム溶接を前記ローラ電極に行わせる、
請求項1から3のいずれか1項に記載のシーム溶接装置。
【請求項5】
前記駆動機構と前記シーム溶接のための前記ローラ電極に対する電圧印加とを制御するように構成されたコントローラと、
前記ローラ電極の前記ワークに対する前記水平方向の相対位置を水平位置として検出する水平位置検出センサと、をさらに備え、
前記移動範囲は、前記ローラ電極が前記一辺から落ちる区間を含み、
前記コントローラは、
前記シーム溶接の前に前記ローラ電極が前記移動範囲で相対的に移動した期間中に前記上下位置検出センサにより順次検出された前記上下位置及び前記水平位置検出センサにより順次検出された前記水平位置に基づいて、前記上下位置の下方への移動の開始直前のタイミングで検出された前記水平位置を特定し、
前記駆動機構と前記ローラ電極に対する前記電圧印加とを制御し、前記特定した水平位置に応じた終了位置まで前記ローラ電極に対する前記電圧印加を行う前記シーム溶接を前記ローラ電極に行わせる、
請求項1から4のいずれか1項に記載のシーム溶接装置。
【請求項6】
前記駆動機構及び前記ローラ電極を制御して前記ローラ電極にシーム溶接を行わせるコントローラをさらに備え、
前記コントローラは、前記シーム溶接を行わせている期間中に、前記上下位置検出センサが順次検出する前記上下位置が予め定められた範囲外となったときに、前記シーム溶接に異常が発生したときの処理として予め定められた処理を行う、
請求項1から5のいずれか1項に記載のシーム溶接装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ローラ電極によりシーム溶接を行うシーム溶接装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1が開示するように、ローラ電極をワークの上面の一辺上で転動させて、当該ワークをシーム溶接するシーム溶接装置が知られている。このようなシーム溶接装置は、ローラ電極を、上下方向に移動可能な状態で、ワークの上面の一辺に沿った方向に移動させることにより、シーム溶接を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願発明者は、上記のような従来のシーム溶接装置について種々の検討を行った。その結果、ローラ電極をワークの一辺の少なくとも一部上で転動させる転動区間を含むローラ電極の移動範囲において当該ローラ電極の上下位置(上下方向における位置)を検出できれば、当該位置を用いて、より良いシーム溶接を行えることを見出した。
【0005】
本発明は、上記点に鑑みてなされたものであり、ローラ電極をワークの一辺の少なくとも一部上で転動させる転動区間を含む当該ローラ電極の移動範囲において当該ローラ電極の上下位置を検出することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)上記課題を解決するため、本発明に係るシーム溶接装置は、ワークの上面の一辺上を転動して前記ワークに対してシーム溶接を行うローラ電極と、前記ローラ電極を、上下方向に移動可能な状態で、前記ワークに対して相対的かつ前記一辺に沿った水平方向に、前記一辺の少なくとも一部上を転動させる転動区間を含む移動範囲で移動させる駆動機構と、前記駆動機構により前記ローラ電極が前記移動範囲で移動しているときの前記ローラ電極の上下位置を検出する上下位置検出センサと、を備える。
【0007】
(2)前記上下位置検出センサにより検出される前記上下位置は、前記ローラ電極の上下方向の移動距離により示される、ようにしてもよい。
【0008】
(3)前記シーム溶接装置は、前記ローラ電極を回転可能に保持し、前記ローラ電極とともに上下方向に移動可能な保持部材と、前記保持部材を上下方向に移動可能に支持する支持部材と、をさらに備え、前記駆動機構は、前記保持部材が前記支持部材に対して上下方向に移動可能な状態で、前記ローラ電極を前記ワークに対して相対的に移動させ、前記上下位置検出センサは、前記支持部材に対する前記保持部材の相対位置を前記ローラ電極の前記上下位置として検出する、ようにしてもよい。
【0009】
(4)前記シーム溶接装置は、前記駆動機構と前記シーム溶接のための前記ローラ電極に対する電圧印加とを制御するように構成されたコントローラと、前記ローラ電極の前記ワークに対する前記水平方向の相対位置を水平位置として検出する水平位置検出センサと、をさらに備え、前記移動範囲は、前記ローラ電極が前記一辺に乗り上げる区間を含み、前記コントローラは、前記シーム溶接の前に前記ローラ電極が前記移動範囲で相対的に移動した期間中に前記上下位置検出センサにより順次検出された前記上下位置及び前記水平位置検出センサにより順次検出された前記水平位置に基づいて、前記上下位置の上方への移動の終了時のタイミングで検出された前記水平位置を特定し、前記駆動機構と前記ローラ電極に対する前記電圧印加とを制御し、前記特定した水平位置に応じた終了位置で前記ローラ電極に対する前記電圧印加を終了する前記シーム溶接を前記ローラ電極に行わせる、ようにしてもよい。
【0010】
(5)前記シーム溶接装置は、前記駆動機構と前記シーム溶接のための前記ローラ電極に対する電圧印加とを制御するように構成されたコントローラと、前記ローラ電極の前記ワークに対する前記水平方向の相対位置を水平位置として検出する水平位置検出センサと、をさらに備え、前記移動範囲は、前記ローラ電極が前記一辺から落ちる区間を含み、前記コントローラは、前記シーム溶接の前に前記ローラ電極が前記移動範囲で相対的に移動した期間中に前記上下位置検出センサにより順次検出された前記上下位置及び前記水平位置検出センサにより順次検出された前記水平位置に基づいて、前記上下位置の下方への移動の開始直前のタイミングで検出された前記水平位置を特定し、前記駆動機構と前記ローラ電極に対する前記電圧印加とを制御し、前記特定した水平位置に応じた終了位置まで前記ローラ電極に対する前記電圧印加を行う前記シーム溶接を前記ローラ電極に行わせる、ようにしてもよい。
【0011】
(6)前記駆動機構及び前記ローラ電極を制御して前記ローラ電極にシーム溶接を行わせるコントローラをさらに備え、前記コントローラは、前記シーム溶接を行わせている期間中に、前記上下位置検出センサが順次検出する前記上下位置が予め定められた範囲外となったときに、前記シーム溶接に異常が発生したときの処理として予め定められた処理を行う、ようにしてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、上下位置検出センサにより、ローラ電極をワークの一辺の少なくとも一部上で転動させる転動区間を含む当該ローラ電極の移動範囲において当該ローラ電極の上下位置を検出することができる。さらに、上記(1)~(3)で検出した上下位置に基づく上記(4)~(6)の構成により、より良いシーム溶接が行われる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態に係るシーム溶接装置の構成を示す図である。
【
図2】
図2は、
図1の支持部材と保持部材との位置関係を示す図である。
【
図3】
図3は、
図1の支持部材と保持部材との位置関係を示す図である。
【
図4】
図4は、
図1の支持部材と保持部材との位置関係を示す図である。
【
図5】
図5は、
図1のコントローラにより実行される頂点位置登録処理のフローチャートである。
【
図6】
図6は、ローラ電極がワークに対して相対的に移動する様子を示す図である。
【
図7】
図7は、ローラ電極がワークの一辺上を転動する様子を示す図である。
【
図8】
図8は、ローラ電極がワークに対して相対的に移動する様子を示す図である。
【
図9】
図9は、
図1のコントローラにより実行されるシーム溶接処理のフローチャートである。
【
図10】
図10は、変形例に係る位置検出センサが取り付けられた支持部材を、保持部材及びローラ電極とともに示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態に係るシーム溶接装置10について、図面を参照して説明する。
【0015】
図1に示すように、シーム溶接装置10は、左右方向に対向する一対のローラ電極16R及び16Lにより、ステージ11上に配置された立方体形状のワークWに対してパラレルシーム溶接を行うパラレルシーム溶接装置として構成されている。ワークWは、水晶子等の電子部品を収容したパッケージW1と、パッケージW1の開口を塞ぐリッドW2と、から構成されており、リッドW2がパッケージW1にパラレルシーム溶接される。パラレルシーム溶接装置は、ワークWの上面つまりリッドW2の上面の4辺のうちの対向する2辺ごとにパラレルシーム溶接を行う。
【0016】
シーム溶接装置10は、ステージ11と、第1駆動機構12と、第2駆動機構13と、支持部材14R及び14Lと、保持部材15R及び15Lと、ローラ電極16R及び16Lと、を備える。
【0017】
ステージ11は、前後方向及び左右方向を含む水平方向に延びている表面を有する。ステージ11の表面には、ワークWを保持するキャリアボード90が固定されている。ワークWは、キャリアボード90に設けられた凹部90Aに嵌め入れられて固定されることにより、ステージ11上に配置されている。
【0018】
第1駆動機構12は、ステージ11を移動及び回転させることで、ステージ11の上方に配置されているローラ電極16R及び16Lをステージ11及びワークWに対して相対的に移動及び回転させる。このような相対移動及び相対回転のため、第1駆動機構12は、ステージ11を前後左右方向の2軸方向に移動させ、かつ、ステージ11を当該ステージ11の上面の中心を上下方向に貫く軸を中心軸として回転させることが可能に構成されている。第1駆動機構12の具体的構成は、任意である。例えば、第1駆動機構12は、ステージ11を回転させるターンテーブルと、このターンテーブルをボールネジ及びモータ等により左右に移動させる第1移動装置と、この第1移動装置をボールネジ及びモータ等により前後に移動させる第2移動装置と、を有する。
【0019】
第2駆動機構13は、支持部材14R及び14Lを駆動して上下方向に移動させる。さらに、第2駆動機構13は、支持部材14R及び14Lそれぞれを個別に左右方向に移動させることもできる。後述のように、支持部材14Rは、ローラ電極16Rを保持する保持部材15Rを支持しており、支持部材14Lは、ローラ電極16Lを保持する保持部材15Lを支持する。従って、第2駆動機構13は、支持部材14R及び14Lを介して、ローラ電極16R及び16Lと保持部材15R及び15Lとを移動させることになる。
【0020】
第2駆動機構13は、モータ13Aと、モータ13Aにより動作して支持部材14R及び14Lを上下方向に移動させるボールネジ13Bと、支持部材14R及び14Lをそれぞれ左右方向に移動させるリニアモータ13R及び13Lと、を備える。
【0021】
ボールネジ13Bは、上下方向に沿って延びモータ13Aにより回転させられるネジ軸13BAと、ネジ軸13BAと不図示の鋼球を介して螺合するナット13BBと、を備える。ナット13BBは、ネジ軸13BAの回転により、上下方向に移動する。ナット13BBは、ネジ軸13BAと連れ回りしないように、例えば、上下方向に延びるガイドレール上を移動するように構成されてもよい。
【0022】
直接図示していないが、ナット13BBの右側面及び左側面にはリニアモータ13R及び13Lがそれぞれ固定されている。リニアモータ13R及び13Lは、ナット13BBの右側面に固定され左右方向に延びている固定子13RAと、当該固定子13RA上を左右方向に移動する移動子13RBと、を備える。リニアモータ13Lは、左右方向に延びている固定子13LAと、当該固定子13LA上を左右方向に移動する移動子13LBと、を備える。
【0023】
移動子13RB及び13LBには、支持部材14R及び14Lがそれぞれ固定されている。従って、リニアモータ13R及び13Lは、互いに独立して、支持部材14R及び14Lをそれぞれ左右方向に移動させる。
【0024】
上述のようにリニアモータ13Rは、ナット13BBに固定されている。つまり、支持部材14Rはリニアモータ13Rを介してナット13BBに固定されており、支持部材14Lはリニアモータ13Lを介してナット13BBに固定されている。従って、ナット13BBが上下方向に移動すると、支持部材14R及び14Lも上下方向に移動する。
【0025】
以上のような構成により、第2駆動機構13は、モータ13Aによりボールネジ13Bのナット13BBを上下方向に移動させることで、支持部材14R及び14Lを上下方向に移動させることができる。さらに、第2駆動機構13は、リニアモータ13R及びリニアモータ13Lにより、支持部材14R及び14Lを左右方向に移動させることができる。
【0026】
支持部材14Rは、ローラ電極16Rを保持する保持部材15Rを支持する。ここでは、支持部材14Rの貫通孔14RAに、保持部材15Rの中間部15RBが通ることで、保持部材15Rが支持される。ローラ電極16Rは、保持部材15Rの下端部15RAにより、回転軸の軸線方向を左右方向として回転可能に保持されている。
【0027】
保持部材15Rの中間部15RBは、上下方向に延びており、支持部材14Rの貫通孔14RAを通り、当該貫通孔14RAの内面に対して摺動可能となっている。つまり、保持部材15Rは、支持部材14Rに対して相対的に上下方向に移動する。
【0028】
保持部材15Rの上端部15RCは、中間部15RBに接続されており、中間部15RBよりも水平方向に張り出している。このため、上端部15RCは、貫通孔14RAを通ることができない。これにより、保持部材15Rは、上端部15RCが抜け止めとなり、支持部材14Rから抜け落ちることが防止されている。上端部15RCは、重りとしても機能し、保持部材15Rを下方に付勢している。
【0029】
支持部材14R及び保持部材15Rと同様に、支持部材14Lは、保持部材15Lを支持している。保持部材15Lの下端部15LAは、ローラ電極16Lを回転軸の軸線方向を左右方向として回転可能に保持している。さらに、保持部材15Lは、支持部材14Lの貫通孔14LAを通り、当該貫通孔14LAの内面に対して摺動可能な中間部15LB、及び、重り及び支持部材14Lに対する抜け止めとして機能する上端部15LCも備える。
【0030】
以上のように、支持部材14R及び14Lは、保持部材15R及び15Lを支持しているため、保持部材15R及び15L及びこれらに保持されているローラ電極16R及び16Lは、支持部材14R及び14Lとともに移動する。
【0031】
ここで、支持部材14R及び14L、保持部材15R及び15L、及び、ローラ電極16R及び16Lの上下方向の位置関係について、
図2~
図4を参照して説明する。
【0032】
図2に示すように、第2駆動機構13により支持部材14R及び14Lが上方位置に位置しているとき、ローラ電極16R及び16LはワークWに接触しない。このとき、保持部材15R及び15Lは、上端部15RC及び15LCが支持部材14R及び14Lに引っ掛かった状態にある。
【0033】
図3に示すように、支持部材14R及び14Lが下方に移動すると、保持部材15R及び15Lも一緒に下方に移動し、ローラ電極16R及び16L(具体的には後述の作用端16RA及び16LA)はワークWに接触する。その後、
図4に示すように、さらに支持部材14R及び14Lが移動すると、ワークWがローラ電極16R及び16Lを介して保持部材15R及び15Lを相対的に上方に押し上げる。換言すると、保持部材15R及び15Lは、支持部材14R及び14Lに対して上方に相対移動する。
図4の状態では、保持部材15R及び15Lが、その自重により、ローラ電極16R及び16LをワークWに押し付ける。
【0034】
これらのように、保持部材15Rは、ローラ電極16Rとともに、支持部材14Rに対して相対的に上下方向に移動する。同様に、保持部材15Lは、ローラ電極16Lとともに、支持部材14Lに対して相対的に上下方向に移動する。
【0035】
図1に示すローラ電極16R及び16Lは、ワークWのリッドW2をパッケージW1にパラレルシーム溶接する。ローラ電極16R及び16Lは、左右方向に間隔を空けて対向している。ローラ電極16R及び16Lは、対向するローラ電極側の端部に円錐台形状の作用端16RA及び16LAをそれぞれ備える。溶接時には、作用端16RA及び16LAのテーパ側面がワークWつまりリッドW2の上面の2辺にそれぞれ当たる。溶接時、ローラ電極16R及び16Lを連続的に通電させながら、第1駆動機構12によりローラ電極16R及び16Lを前後方向に相対移動させる。これにより、これらの作用端16RA及び16LAが、前記2辺上でそれぞれ転動しながら、リッドW2との接触箇所を順次加熱していく。これにより、パラレルシーム溶接が行われる。
【0036】
シーム溶接装置10は、上記構成の他、制御系を構成する部材として、位置検出センサ21~24Lと、コントローラ25と、記憶部26と、入出力装置27と、を備えている。なお、
図1において、位置検出センサ21~23Lは、模式的にブロックで描かれており、これらの実際の位置は
図1に反映されていない。
【0037】
位置検出センサ21は、例えば、第1駆動機構12内に配置され、ステージ11の前後方向及び左右方向の各位置を検出する2つのロータリエンコーダ又はリニアエンコーダからなる。このような位置検出センサ21は、ステージ11の位置を検出することで、ステージ11さらにステージ11上のワークWに対するローラ電極16R及び16Lの相対的な水平位置を検出する水平位置検出センサとして構成されている。位置検出センサ22は、例えば、ナット13BBの上下方向の位置(支持部材14R及び14L)を検出するリニアエンコーダからなる。位置検出センサ22は、モータ13A内又は外に配置され、モータ13A又はネジ軸13BAの回転位置及び回転数を検出することで、ナット13BBの位置を検出するロータリエンコーダからなってもよい。
【0038】
位置検出センサ23Rは、例えば、リニアモータ13R内に配置され、移動子13RB及び支持部材14Rの左右方向の位置を検出するリニアエンコーダからなる。位置検出センサ23Lは、例えば、リニアモータ13L内に配置され、移動子13LB及び支持部材14Lの左右方向の位置を検出するリニアエンコーダからなる。
【0039】
位置検出センサ24Rは、
図2~
図4に示すように、保持部材15Rに設けられたスケール24RAと、支持部材14Rの下面に取り付けられ、スケール24RAの情報を読み取るセンサ24RBと、を備えるリニアエンコーダからなる。位置検出センサ24Rは、保持部材15R及びローラ電極16Rの支持部材14Rに対する上下方向の相対位置を検出する。位置検出センサ24Lは、位置検出センサ24Rと同様に、保持部材15Lに設けられたスケール24LAと、支持部材14Lの下面に取り付けられたセンサ24LBと、を備えるリニアエンコーダからなる。位置検出センサ24Lは、保持部材15L及びローラ電極16Lの支持部材14Lに対する上下方向の相対位置を検出する。このように、位置検出センサ24R及び24Lは、ローラ電極16R及び16Lの上下方向の位置である上下位置をそれぞれ検出する上下位置検出センサとして構成されている。
【0040】
コントローラ25は、マイクロコンピュータ、PLC(Programmable Logic Controller)等のコンピュータにより構成されている。記憶部26は、コントローラ25により実行されるプログラム等を記憶する。記憶部26は、コントローラ25に含まれるメモリとして構成されてもよい。入出力装置27は、タッチパネル等のユーザインターフェースからなり、ユーザからの情報入力を受け付け、受け付けた情報をコントローラ25に供給したり、コントローラ25からの情報を外部出力にしたりする。
【0041】
コントローラ25は、シーム溶接を行うため、第1駆動機構12及び第2駆動機構13を制御するとともに、ローラ電極16R及び16Lに対するシーム溶接のための電圧の印加を制御するように構成されている。例えば、コントローラ25は、不図示の電源からの電力を溶接用の電力に変換してローラ電極16R及び16Lに供給する電源回路を備え、当該電源回路により、ローラ電極16R及び16Lに対するシーム溶接用の電圧の印加(印加の有無、印加する電圧の電圧値等)を制御する。電圧が印加されたローラ電極16R及び16LがワークWに接触すると、これらに溶接電流が流れ、ローラ電極16R及び16Lが通電する。この状態でローラ電極16R及び16Lが転動することでシーム溶接が行われる。コントローラ25には、入出力装置27を介して、シーム溶接を行うための各種パラメータ、及び、位置検出センサ21~24Lそれぞれの検出結果も入力される。コントローラ25は、入力された前記の検出結果に基づいて、第1駆動機構12等をフィードバック制御又はサーボ制御することでシーム溶接を行う。シーム溶接の具体的内容は、後述する。
【0042】
コントローラ25は、溶接前にワークWの上面の4頂点(上面の辺の一端及び他端)の位置を記憶部26に登録する頂点位置登録処理、及び、登録した前記4頂点の位置に基づいてシーム溶接を行うシーム溶接処理を実行する。4頂点の位置は、後述のようにローラ電極16R及び16Lの位置に基づいて特定され、4頂点の位置は、ローラ電極16R及び16Lの位置とともに、ステージ11に設定されたXYZ座標により特定される。以下、XYZ座標について説明してから、前記各処理を説明する。
【0043】
ステージ11には、上記XYZ座標のための、互いに直交するX軸、Y軸、及びZ軸が設定されている。
図1では、X軸方向が前後方向、Y軸方向が左右方向となっているが、第1駆動機構12によりステージ11が
図1の状態から90度回転すると、X軸方向が左右方向、Y軸方向が前後方向となる(
図8も参照)。ローラ電極16R及び16LのXYZ座標は、第1駆動機構12及び第2駆動機構13が所定の初期状態のときを原点とする。
【0044】
第1駆動機構12により、ステージ11が移動した場合、ローラ電極16R及び16Lがステージ11に対して相対的に動いたことになる。ローラ電極16R及び16LのXYZ座標のうちのXY座標は、ステージ11の初期位置から現在位置までの前後方向及び左右方向の移動量、及び、ローラ電極16R及び16Lの初期位置から現在位置までの左右方向の移動量により特定される。コントローラ25は、位置検出センサ21と位置検出センサ23R及び23Lとの各検出結果から前記各移動量を特定し、特定した結果からローラ電極16RのXY座標であるPr(X,Y)と、ローラ電極16LのXY座標であるPl(X,Y)とを特定する。
【0045】
ローラ電極16RのZ座標であるPr(Z)は、支持部材14Rの初期位置から現在位置までの移動量及び保持部材15Rの支持部材14Rに対する相対的な移動量により特定される。同様に、ローラ電極16LのZ座標は、支持部材14Lの移動量及び保持部材15Lの支持部材14Lに対する相対的な移動量により特定される。コントローラ25は、位置検出センサ22と位置検出センサ24R及び24Lとの各検出結果から前記各移動量を特定し、特定した結果からPr(Z)及びPl(Z)とを特定する。
【0046】
上記各座標Pr(X,Y,Z)、Pl(X,Y,Z)の特定は、位置検出センサ21~24Lからの検出結果に基づいて定期的に順次行われる。
【0047】
次に、溶接前にワークWの上面の4頂点の位置を記憶部26に登録する頂点位置登録処理について
図5を参照して説明する。コントローラ25は、記憶部26に記憶されたプログラムを実行することにより、頂点位置登録処理を実行する。以下の説明では、ワークWの上面の4頂点を、
図6に示すように、頂点V1~V4ともいう。
【0048】
図5に示す頂点登録処理において、コントローラ25は、まず、第1駆動機構12及び第2駆動機構13を制御し、これらを第1初期状態に遷移させる(ステップS101)。これにより、ステージ11と、ローラ電極16R及び16Lとが、第1初期位置に移動させられる。なお、このときの第1初期位置は、
図1のように、ステージ11のX軸方向が前後方向となっている位置である。
図5には示していないが、ステップS101以降、コントローラ25は、第1初期位置を原点としたローラ電極16R及び16LのXYZ座標を位置検出センサ21~24Lからの検出結果に基づいて監視する。
【0049】
その後、コントローラ25は、ローラ電極16R及び16Lそれぞれを第1登録開始位置に移動させる(ステップS102)。第1登録開始位置は、ステージ11に対する相対位置である。第1登録開始位置は、例えば、入出力装置27を介してユーザにより入力される。第1登録開始位置は、当該位置からローラ電極16R及び16Lを第1駆動機構12によりステージ11に対して相対的に前後方向に移動させたときに、
図6及び
図7に示すように、ローラ電極16R及び16LがワークWの対向する2辺の一端である頂点V1及びV2にそれぞれ乗り上げることができる位置である。コントローラ25は、第1駆動機構12及び第2駆動機構13を制御し、ステージ11と支持部材14R及び14Lとを移動させることで、ローラ電極16R及び16Lを第1登録開始位置に移動させる。ローラ電極16R及び16Lの第1登録開始位置への移動は、ステージ11及び支持部材14R及び14Lをユーザが手動で動かすことにより行われてもよい。
【0050】
ステップS102のあと、コントローラ25は、ステージ11を前後方向に所定距離だけ移動させる制御を第1駆動機構12に対して行う(ステップS103)。これにより、ローラ電極16R及び16Lが、ステージ11に対して相対的に前後方向に所定距離だけ移動する。前記の所定距離は、
図6及び
図7に示すように、ローラ電極16Rの作用端16RA及びローラ電極16Lの作用端16LA(
図7では図示せず)が、ワークWの対向する2辺に頂点V1及びV2からそれぞれ乗り上げ、転動し、その後頂点V3及びV4からそれぞれ落ちることができる距離である。前記の所定距離の終端位置は、例えばコントローラ25により検出される。コントローラ25は、ローラ電極16R及び16LのZ座標が下降し続けかつ下降の合計距離が所定の閾値以上となったかを監視する。下降し続けた合計距離が所定の閾値以上となった場合、後述のように、作用端16RA及び作用端16LAが頂点V1及びV3から落ちたといえる。コントローラ25は、この場合、ステージ11を前記所定距離の終端位置まで移動させたとして、ステージ11を移動させる制御を終了する。当該所定距離は、ユーザにより入力されてもよい。ステップS103のステージ11の移動は、ユーザにより手動で行われてもよい。ステップS103において、コントローラ25は、前記の制御又は手動によるステージ11の移動中のローラ電極16R及び16Lの各XYZ座標のうちXZ座標であるPr(X,Z)、Pl(X,Z)を記憶部26に順次記録していく。
【0051】
ステップS103のあと、コントローラ25は、記憶部26に順次記録したPr(X,Z)、Pl(X,Z)に基づいて、ワークWの上面の4頂点のXZ座標を特定する(ステップS104)。
【0052】
図7に示すように、ローラ電極16RがワークWの頂点V1に乗り上げるとき、その中心軸が、頂点V1を中心とし、Rを半径とした円の軌跡を描く。ここで、Rは、ローラ電極16Rの作用端16RAにおける頂点V1と接触する円周の半径である。しかしながら、作用端16RAの側面は、テーパとなっており、テーパのどの部分が頂点V1と接触するかはわかっていないので、前記のRは未知の値である。
【0053】
コントローラ25は、記憶部26に順次記録したPr(X,Z)のうち、座標Zが上昇し、かつ、Pr(X,Z)が円の軌跡を描く区間を特定する。円の軌跡を描く区間は、例えば、Pr(X,Z)をXZ座標平面上でプロットし、円弧のテンプレート画像とのパターンマッチングで特定される。また、通常、ローラ電極16Rの中心軸の位置は、ワークWへの乗り上げ時及び落下時以外は、それほど大きく変動しない。仮に変動があったとしても、それは、ワークWの辺の寸法誤差等による微小な凸凹にすぎない。このため、コントローラ25は、順次記録したPr(X,Z)のうち、座標Zが上昇し続けかつ上昇の合計距離が所定の閾値以上となった区間を円の軌跡の区間として特定してもよい。コントローラ25は、円の軌跡を描く区間を構成するPr(X,Z)から
図7に示すように3つの座標Pr(X1,Z1)~Pr(X3,Z3)を抽出する。3点のPrは、例えば、ランダムで抽出される。その後、コントローラ25は、抽出した3つの座標を下記の式(1)のX,Zに代入した3つの式からなる連立方程式を解き、頂点V1の座標V1(Xa,Za)を特定する。
(X-Xa)
2+(Z-Za)
2=R
2・・・(1)
【0054】
コントローラ25は、ローラ電極16Lが乗り上げる頂点V2の座標V2(Xb,Zb)は、頂点V1の座標と同じなので、座標AのXa及びZaを、頂点V2の座標V2(Xb,Zb)として特定する。なお、頂点V2の座標V2(Xb,Zb)について、上記と同様の方法で独自に特定してもよい。
【0055】
さらに、
図7に示すように、ローラ電極16RがワークWの頂点V3から落ちるとき、その中心軸が、頂点V3を中心とし、Rを半径とした円の軌跡を描く。このため、コントローラ25は、記憶部26に順次記録したPr(X,Z)のうち、座標Zが下降し、かつ、Pr(X,Z)が円の軌跡を描く区間を特定する。当該区間の特定は、上記のテンプレートマッチングで行ってもよい。また、順次記録したPr(X,Z)のうち、座標Zが下降し続けかつ下降の合計距離が所定の閾値以上となった区間を円の軌跡の区間として特定してもよい。コントローラ25は、座標Zが下降しながら円の軌跡を描く区間を構成するPr(X,Z)から
図7に示すように3つの座標Pr(X4,Z4)~Pr(X6,Z6)を抽出する。3点のPrは、例えば、ランダムで抽出される。その後、コントローラ25は、抽出した3つの座標を上記の式(1)のX,Zに代入した3つの式からなる連立方程式を解き、頂点V3の座標V3(Xc,Zc)を特定する。
【0056】
上記と同様にして、コントローラ25は、記憶部26に順次記録したPl(X,Z)に基づいて、ローラ電極16Lが落下したワークWの頂点V4の座標V4(Xd,Zd)も特定する。
【0057】
その後、コントローラ25は、上記で特定した頂点V1~V4の座標V1(Xa,Za)~V4(Xd,Zd)を記憶部26に登録する(ステップS105)。
【0058】
その後、コントローラ25は、第1駆動機構12及び第2駆動機構13を制御し、ローラ電極16R及び16Lを上方に移動させて、ステージ11を90度回転させ、これらを第2初期状態に遷移させる(ステップS106)。これにより、ステージ11と、ローラ電極16R及び16Lとが、第2初期位置に移動させられる。なお、このときの第2初期位置は、
図8のように、ステージ11のY軸方向が前後方向となっている位置である。
図5には示していないが、ステップS107以降、コントローラ25は、第2初期位置を原点とするローラ電極16R及び16LのXYZ座標を位置検出センサ21~24Lからの検出結果に基づいて監視する。
【0059】
その後、コントローラ25は、ローラ電極16R及び16Lそれぞれを第2登録開始位置に移動させる(ステップS107)。第2登録開始位置は、ステージ11に対する相対位置である。第2登録開始位置は、例えば、入出力装置27を介してユーザにより入力される。第2登録開始位置は、当該位置からローラ電極16R及び16Lを第1駆動機構12によりステージ11に対して相対的に前後方向に移動させたときに、
図8に示すように、ローラ電極16R及び16LがワークWの対向する2辺の頂点V2及びV4にそれぞれ乗り上げることができる位置である。コントローラ25は、第1駆動機構12及び第2駆動機構13を制御し、ステージ11と支持部材14R及び14Lとを移動させることで、ローラ電極16R及び16Lを第2登録開始位置に移動させる。ローラ電極16R及び16Lの第2登録開始位置への移動は、ステージ11及び支持部材14R及び14Lをユーザが手動で動かすことにより行われてもよい。
【0060】
ステップS107のあと、コントローラ25は、ステージ11を前後方向に所定距離だけ移動させる制御を第1駆動機構12に対して行う(ステップS108)。これにより、ローラ電極16R及び16Lが、ステージ11に対して相対的に前後方向に所定距離だけ移動する。前記の所定距離は、ローラ電極16Rの作用端16RA及びローラ電極16Lの作用端16LAがワークWの対向する2辺に頂点V2及びV4からそれぞれ乗り上げ、転動し、その後頂点V1及びV3からそれぞれ落ちることができる距離である。前記の所定距離の終端位置は、ステップS103と同様に、例えばコントローラ25により検出される。前記の所定距離は、ユーザにより入力されてもよい。ステップS108のステージ11の移動は、ユーザにより手動で行われてもよい。ステップS108において、コントローラ25は、前記の制御又は手動によるステージ11の移動中のローラ電極16R及び16Lの各XYZ座標のうちYZ座標であるPr(Y,Z)、Pl(Y,Z)を記憶部26に順次記録していく。
【0061】
ステップS108のあと、コントローラ25は、記憶部26に順次記録したPr(Y,Z)、Pl(Y,Z)に基づいて、ワークWの上面の4頂点V1~V4のYZ座標を特定する(ステップS109)。当該4頂点V1~V4のYZ座標の特定は、上記XZ座標の特定と同様の方法で行うことができるので(X座標をY座標に読み替える)、詳細は省略する。
【0062】
その後、コントローラ25は、上記で特定した頂点V1~V4の座標V1(Ya,Za)~V4(Yd,Zd)を記憶部26に登録し(ステップS110)、頂点登録処理を終了する。
【0063】
頂点登録処理の終了後、コントローラ25は、
図9に示すシーム溶接処理を実行する。コントローラ25は、当該シーム溶接処理において、まず、頂点登録処理で記憶部26に登録した頂点V1~V4の座標V1(Xa,Za)~V4(Yd,Zd)を読み出す(ステップS201)。その後、コントローラ25は、第1駆動機構12及び第2駆動機構13を制御し、これらを第1初期状態に遷移させる(ステップS202)。
【0064】
その後、コントローラ25は、頂点V1又はV2の座標に基づいて、ローラ電極16R及び16Lを第1溶接開始位置に移動させるよう第1駆動機構12及び第2駆動機構13を制御する(ステップS203)。第1溶接開始位置は、X座標が頂点V1又はV2のX座標であるXa又はXbで、支持部材14R及び14Lつまりナット13BBの上下方向の位置と支持部材14R及び14Lの左右方向の位置とが第1登録開始位置と同じ位置である。このような位置により、第1溶接開始位置にあるローラ電極16R及び16Lは、ワークWの上面の頂点V1及びV2に接触する位置に位置することになる(
図7の右側の実線のローラ電極16Rの位置参照)。
【0065】
その後、コントローラ25は、ローラ電極16R及び16Lが第1溶接終了位置に到達するまでローラ電極16R及び16Lによりシーム溶接を行う(ステップS204)。第1溶接終了位置は、上記で登録した頂点V3又はV4のX座標Xc又はXdの位置であり、YZ座標は変わらない。コントローラ25は、ローラ電極16R及び16Lに電圧を印加してこれらを通電しつつ、ローラ電極16R及び16Lが第1溶接終了位置の位置まで転動するよう第1駆動機構を制御してステージ11を移動させる。コントローラ25は、このとき、位置検出センサ24Rからの検出結果に基づいて、保持部材15R及びローラ電極16Rの支持部材14Rに対する上下方向の相対位置が予め定められた所定の範囲外となったか否かを監視する。例えば、コントローラ25は、前記の検出結果に基づく現在の相対位置が、第1溶接開始位置における相対位置を基準とした特定の範囲から外れたか否かを監視する。例えば、ワークWがキャリアボード90の凹部90Aから何らかの原因で飛び出した場合、ローラ電極16Rの転動中、保持部材15R及びローラ電極16Rの上下位置は大きく変化する。このような場合、前記相対位置が前記所定の範囲の外となるので、コントローラ25は、異常の旨の情報を入出力装置27に出力するなどの処理を行う。コントローラ25は、上記監視を、保持部材15L及びローラ電極16Lについても行う。
【0066】
その後、コントローラ25は、第1駆動機構12及び第2駆動機構13を制御し、ローラ電極16R及び16Lを上方に移動させて、ステージ11を90度回転させ、これらを第2初期状態に遷移させる(ステップS205)。
【0067】
その後、コントローラ25は、頂点V2又はV4の座標に基づいて、ローラ電極16R及び16Lを第2溶接開始位置に移動させるよう第1駆動機構12及び第2駆動機構13を制御する(ステップS206)。第2溶接開始位置は、そのY座標が頂点V2又はV4のY座標であるYb又はYdで、支持部材14R及び14Lつまりナット13BBの上下方向の位置と支持部材14R及び14Lの左右方向の位置とが第2登録開始位置と同じ位置である。このような位置により、第2溶接開始位置にあるローラ電極16R及び16Lは、ワークWの上面の頂点V2及びV4にそれぞれ接触する位置に位置することになる。
【0068】
その後、コントローラ25は、ローラ電極16R及び16Lが第2溶接終了位置に到達するまでローラ電極16R及び16Lによりシーム溶接を行う(ステップS207)。第2溶接終了位置は、上記で登録した頂点V1又はV3のY座標Ya又はYcの位置であり、XZ座標は変わらない。コントローラ25は、ローラ電極16R及び16Lに電圧を印加してこれらを通電しつつ、ローラ電極16R及び16Lが第2溶接終了位置の位置まで転動するよう第1駆動機構を制御してステージ11を移動させる。コントローラ25は、このとき、上記と同様に、位置検出センサ24Rからの検出結果に基づいて、保持部材15R及びローラ電極16Rの支持部材14Rに対する上下方向の相対位置が予め定められた所定の範囲外となったか否かを監視する。
【0069】
以上説明したように、本実施の形態では、第1駆動機構12がローラ電極16R及び16Lを、上下方向に移動可能な状態で、ワークWに対して相対的かつワークWの上面の一辺に沿った水平方向に、前記の一辺上を転動させる転動区間を含む移動範囲で移動させる。そして、ローラ電極16R及び16Lが前記の移動範囲で移動しているときのローラ電極16R及び16Lの上下位置を検出する位置検出センサ24R及び24Lが設けられている。これにより、一辺上を転動させる転動区間を含む移動範囲で移動するローラ電極16R及び16Lの上下位置を検出することができる。特に、この実施の形態では、この上下位置に基づいて、上記頂点位置登録処理を行うことができ、さらに、シーム溶接処理での異常検出も行うことができるので、より良いシーム溶接を行うことができる。
【0070】
頂点位置登録処理では、ローラ電極16R及び16LがワークWに対して乗り上げる及びワークWから落ちる位置を特定できればよい。従って、第1駆動機構12は、ローラ電極16R及び16Lを、ワークWの一辺の一部(両端部)のみで転動するように移動させてもよい。
【0071】
上記の位置検出センサ24R及び24Lとして、反射光の受光タイミングに基づいて距離を検出する光学式の距離センサを採用してもよい。この場合、位置検出センサ24R及び24Lは、ローラ電極16R及び16L、又は、保持部材15R及び15L等に取り付けられ、ステージ11又はキャリアボード90等のワークWを支持する部材等のローラ電極16R及び16Lの移動中に上下方向に不動な所定部材までの距離を検出することで、ローラ電極16R及び16Lの上下位置を検出してもよい。
【0072】
また、上記実施の形態では、位置検出センサ24R及び24Lにより検出されるローラ電極16R及び16Lの上下位置は、ローラ電極16R及び16Lの上下方向の支持部材14R及び14Lそれぞれに対する移動距離により示される。これにより、ローラ電極16R及び16Lが支持部材14R及び14Lに対して移動したことを検出できる。位置検出センサ24R及び24Lは、加速度などを検出することで、所定の基準位置からの移動量を検出するモーションセンサなどにより構成されてもよい。
【0073】
また、本実施の形態では、ローラ電極16R及び16Lを回転可能に保持し、ローラ電極16R及び16Lとともに上下方向に移動可能な保持部材15R及び15Lと、保持部材15R及び15Lを上下方向に移動可能に支持する支持部材14R及び14Lと、がさらに設けられている。さらに、第1駆動機構12は、保持部材15R及び15Lが支持部材14R及び14Lに対して上下方向に移動可能な状態で、ローラ電極16R及び16LをワークWに対して相対的に移動させる。そして、位置検出センサ24R及び24Lは、支持部材14R及び14Lに対する保持部材15R及び15Lの相対位置をローラ電極16R及び16Lの上下位置として検出する。これにより、ローラ電極16R及び16Lの位置をより良いかたちで検出できる。
【0074】
前記の位置検出センサ24R及び24Lを、
図10に示すように、支持部材14R及び14Lの各下面にそれぞれ設けられ、保持部材15R及び15Lの下端部15RA及び15LAとの上下方向の距離を検出する光学式の距離センサからなる位置検出センサ124R及び124Lとしてもよい。位置検出センサ124R及び124Lは、反射光の受光タイミングに基づいて前記の距離を検出することで、ローラ電極16R及び16Lの上下位置を検出する。位置検出センサ124R及び124Lは、支持部材14R及び14Lの各上面に設けられ、上端部15RC及び15LCとの距離を測定してもよい。また、位置検出センサ124R及び124Lは、保持部材15R及び15Lに設けられて、支持部材14R及び14Lとの距離を検出するようにしてもよい。これら位置検出センサの距離検出の対象は、位置検出センサが設けられる部材と一体で移動する部材とするとよい。例えば、ステージ11等を対象とした場合、光の反射面の場所がステージ11等の移動により変化してしまい、ステージ11に寸法誤差等の凹凸がある場合、反射面の場所により検出距離が変わってしまうおそれがある。他方、前記距離検出の対象を、位置検出センサが設けられる部材と一体で移動する部材とすることで、反射面を常に同じ場所とすることができ、前記の不都合の発生が抑制される。
【0075】
さらに、本実施の形態では、頂点位置登録処理でローラ電極16R及び16Lの上下位置(Z座標)及び水平位置(X座標又はY座標)により、ワークWの頂点V1~V4の位置を特定し、当該位置に基づいて溶接を行うので、精密な溶接が実現されている。
【0076】
上記シーム溶接の際の上記の溶接開始位置は、ローラ電極16R及び16Lがシーム溶接をするために移動を開始する移動開始位置と、電圧の印加が開始される電圧印加開始位置と、を含む。同様に、上記の溶接終了位置は、シーム溶接が終了してローラ電極16R及び16Lの移動が終了する移動終了位置と、電圧の印加が終了する電圧印加終了位置と、を含む。上記実施の形態では、頂点V1~V4のX座標又はY座標の位置を、移動開始位置及び電圧印加開始位置、又は、移動終了位置及び電圧印加終了位置としている。しかし、上記各位置は頂点V1~V4の位置からずれた位置であってもよい。例えば、上記移動開始位置及び電圧印加開始位置を、ローラ電極16R及び16Lの進行方向におけるワークWの頂点V1及びV2(
図6)、又は、頂点V2及びV4(
図8)の手前としてもよい。移動開始位置と電圧印加開始位置とは異なる位置であってもよい。例えば、移動開始位置と電圧印加開始位置とのうち前者のみを前記手前とし、後者を頂点V1及びV2(
図6)、又は、頂点V2及びV4(
図8)の位置としてもよい。上記移動終了位置及び電圧印加終了位置を、ローラ電極16R及び16Lの進行方向におけるワークWの頂点V3及びV4(
図6)、又は、頂点V1及びV3(
図8)の奥側としてもよい。移動終了位置と電圧印加終了位置とは異なる位置であってもよい。例えば、移動終了位置と電圧印加終了位置とのうち前者のみを前記奥側とし、後者を頂点V3及びV4(
図6)、又は、頂点V1及びV3(
図8)の位置としてもよい。上記4つの位置は、頂点位置登録処理で登録された頂点V1~V4の位置と所定の関係にある位置(例えば、同じ位置、又は、所定の距離ずらした位置)であればよい。このように、特定された頂点V1~V4の位置に応じた移動開始位置、電圧印加開始位置、移動終了位置、及び、電圧印加終了位置に基づいてシーム溶接が行われることで、精密な溶接が実現される。
【0077】
頂点位置登録処理及びシーム溶接では、支持部材14R及び14Lは上下に移動しない。そのため、ローラ電極16R及び16Lの上下位置であるZ座標は、支持部材14R又は14Lに対する相対移動量が問題となる。このため、当該Z座標の特定には、支持部材14R及び14Lの初期位置から現在位置までの移動量と、保持部材15R及び15Lの支持部材14R及び14Lに対する相対的な移動量と、のうちの後者の相対的な移動量のみが使用されてもよい。
【0078】
コントローラ25は、頂点V1~V4のX座標又はY座標を特定するのに、上記(1)の式を用いなくてもよい。
図7によれば、ローラ電極16RがワークWに乗り上げた位置(つまり頂点V1)は、ローラ電極16Rが上昇し終えた終了タイミングの位置であるので、この位置を頂点V1の位置としてもよい。このように、コントローラ25は、ローラ電極16R及び16Lの上下位置(Z座標)及び水平位置(X座標又はY座標)に基づいて、ローラ電極16R及び16Lの上方への移動(特に、所定の距離以上上昇し続けているとき)の終了時のタイミング(
図7)の水平位置(X座標又はY座標)を、頂点V1及びV2(
図6)、又は、頂点V2及びV4(
図8)の位置(つまり、ローラ電極16R及び16Lが乗り上げた位置)としてもよい。さらに、
図7によれば、ローラ電極16RがワークWから落ちた位置(つまり頂点V3)は、ローラ電極16Rが下方に移動する開始直前のタイミングの位置であるので、この位置を頂点V3の位置としてもよい。このように、コントローラ25は、ローラ電極16R及び16Lの上下位置(Z座標)及び水平位置(X座標又はY座標)に基づいて、ローラ電極16R及び16Lの下方への移動(特に、所定の距離以上上昇し続けているとき)の開始直前のタイミング(
図7)の水平位置(X座標又はY座標)を、頂点V3及びV4(
図6)、又は、頂点V1及びV3(
図8)の位置(つまり、ローラ電極16R及び16Lが落ちる直前の位置)としてもよい。
【0079】
さらに、コントローラ25は、シーム溶接の期間中に、位置検出センサ24R及び24L(124R及び124Lでもよい)が順次検出する上下位置が予め定められた範囲外となったときに、シーム溶接に異常が発生したときの処理として予め定められた処理を行うことで、シーム溶接の異常に対して適切な処理ができ、より良いシーム溶接が可能となる。予め定められた処理として、コントローラ25は、シーム溶接の中止を行ってもよい。上記のような処理は、特に、ワークWがキャリアボード90に順次保持され、順次シーム溶接が行われる場合に効果を発揮する。このような場合、ワークWのキャリアボード90への位置ずれが生じ得るからである。
【0080】
上記実施の形態については種々の変形を施してもよい。例えば、上記実施の形態の各部材及び装置は、同様の機能を有する他の部材に適宜変更可能である。例えば、リニアモータ13R及び13Lは、モータとボールネジとの組み合わせに変更してもよい。位置検出センサ21などは、光学式の距離計等の適宜のセンサにより構成されてもよい。ローラ電極は1つであってもよい。また、キャリアボード90は、複数のワークWを保持するものであってもよい。この場合、各ワークWについて頂点V1~V4の位置が特定及び登録されてもよい。
図6の状態で頂点V1~V4のX座標の登録を行ったあと、ステージ11を回転させずにシーム溶接を行い、その後、ステージ11の頂点V1~V4のY座標の登録及びシーム溶接を行ってもよい。また、頂点V1~V4の座標の登録に際し、Z座標は省略してもよい。他方、コントローラ25は、Z座標に基づいて、シーム溶接の際の移動部材14R及び14Lの位置等を決定してもよい。ステージ11を固定とし、ローラ電極16R及び16L等を移動させることで、これらをステージ11に対して相対的に移動させるようにシーム溶接装置10を構成してもよい。
【0081】
以上、実施の形態を参照して本発明を説明したが、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではない。例えば、本発明には、本発明の技術思想の範囲内で当業者が理解し得る、上記の実施の形態に対する様々な変更が含まれる。上記実施の形態に挙げた各構成は、矛盾の無い範囲で適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0082】
10…シーム溶接装置、11…ステージ、12…第1駆動機構、13…第2駆動機構、14R,14L…支持部材、15R,15L…保持部材、16R,16L…ローラ電極、16RA,16LA…作用端、21…位置検出センサ、22…位置検出センサ、23R,23L…位置検出センサ、24R,24L…位置検出センサ、25…コントローラ、27…入出力装置、W…ワーク、W1…パッケージ、W2…リッド。