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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022108428
(43)【公開日】2022-07-26
(54)【発明の名称】車いすの車輪洗浄機
(51)【国際特許分類】
   B60S 3/06 20060101AFI20220719BHJP
【FI】
B60S3/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021003408
(22)【出願日】2021-01-13
(71)【出願人】
【識別番号】591043695
【氏名又は名称】アタム技研株式会社
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 平
(72)【発明者】
【氏名】福田 強
(72)【発明者】
【氏名】臼井 健二
【テーマコード(参考)】
3D026
【Fターム(参考)】
3D026AA06
3D026AA12
3D026AA24
3D026AA29
3D026AA34
3D026AA47
(57)【要約】
【課題】ブラシ洗浄式の車いす車輪洗浄機において、4輪の車輪タイヤ部をブラシ部に挟み込ませる作業に大変手間がかかっており、これを解消するために、自動運転で車輪タイヤ部をブラシ部に挟み込ませる手段を提供すること。
【解決手段】車いすの車輪タイヤ部をブラシ部の上に載置し、洗浄運転を開始する際、最初に、ブラシ部の正方向回転運転と逆方向回転運転を短時間で且つ複数回行うことで、自動的に車輪タイヤ部をブラシ部に挟み込ませる初期運転を行い、その後引き続き本格的な洗浄運転を行えるようにした。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車いす車輪のタイヤ部がブラシに当たる位置にブラシ回転用の軸を軸保持治具により設置して動力によって回転するようにし、各軸に車いすの車輪位置に対応する洗浄用ブラシ部を軸の回転に伴って回転するように嵌入させ、各洗浄用ブラシ部はそれぞれ3個の異なる形状の回転ブラシで構成し、うち1個の第1ブラシは回転軸に対して放射状の毛先群を構成する植毛ブラシとし、車輪のタイヤ先端の接地面がブラシの毛先に十分に接触できる関係位置においてブラシ回転用の軸に軸方向に摺動自在な状態で嵌入し、他の2個の第2、第3ブラシは円盤にブラシ回転用の軸と平行方向に第1ブラシの円柱状植毛部を除きドーナツ形に植毛されたブラシとして、第1ブラシを挟み且つタイヤの側面を左右の両側から抱きかかえるような位置関係にてブラシの毛先がタイヤ側面に当たるよう前記第1ブラシのボス部ないしブラシ回転用の軸方向に摺動自在な状態で嵌入し、運転中は左右の第2、第3ブラシが常時スプリングにてタイヤ側面を両側から押す状態になるようにし、各ブラシ部の回転によって車いすのタイヤが同時に回転しながら擦り洗浄されることを特徴とする車いす洗浄機において、連続洗浄動作の初期において、車いす車輪のタイヤ部を各ブラシ部の第2、第3ブラシの毛先の隙間部辺りに載置した後、装置操作部の運転操作により、各ブラシ部を正方向回転と逆方向回転をそれぞれ所定の時間且つ各々複数回にわたって繰り返し動作させることを特徴とした車いすの車輪洗浄機。
【請求項2】
車いすを載置し且つ前期ブラシ回転用の軸を保持する機能を有する架台を設け、この架台には車いすの前輪タイヤ洗浄及び後輪タイヤ洗浄に用いる前記ブラシ回転用の軸に嵌入する前記ブラシ部を車いすの車輪位置に対応する位置に取り付け、各ブラシ部は一部が洗浄槽に浸かることによって洗浄液を含んだ状態で回転し、車いすの全車輪が同時に回転しながら擦り洗浄されるように構成したことを特徴とする請求項1に示す車いすの車輪洗浄機。
【請求項3】
車いすを載置する装置には、車いすを装置に押し付け、位置の安定を図るためのバンド帯等の車いす押し付け兼位置安定具を取り付け可能としたことを特徴とした、請求項1及び請求項2に示す車いすの車輪洗浄機。
【請求項4】
装置操作部には、目視にて車いすの車輪タイヤ部が各ブラシ部に勘合したことを確認できるまで押し続けるため、運転開始用のスイッチとは別にセット専用の操作スイッチを設けたことを特徴とする請求項1、請求項2及び請求項3に示す車いすの車輪洗浄機。
【請求項5】
装置操作部には、目視にて車いすの車輪タイヤ部が各ブラシ部に勘合する一連の動作は、予め決められた時間及び回数を行うようプログラムされており、運転開始ボタンを入れるだけで、車いす車輪のタイヤ部がブラシ部に挟み込まれる動作に引き続き、通常運転動作までを連続的に行うよう設定されたことを特徴 とする請求項1、請求項2及び請求項3に示す車いすの車輪洗浄機。
【請求項6】
車いすを載置する装置には、車いすを装置の上に載置する過程において車いすを装置上へ移動させるために使用するスロープを、装置との接合部を支点として回転させて開閉保持機構で位置固定し、後輪用のブラシ部の回転によって発生する洗浄液の装置外への飛散防止用の板として機能させたことを特徴とする請求項1~請求項5のいずれかに示す車いすの車輪洗浄機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車いすの車輪タイヤに付着した汚れを除去する目的の技術に関し、特に車いすの各車輪を、タイヤの側面洗浄まで含めて同時に洗浄し、且つ、車いすの車輪タイヤ部の洗浄作業性を大幅に向上する手段に係るものである。
【背景技術】
【0002】
老齢化社会の進行により、車いすの利用状況は益々拡大する傾向にあるが、現状、車いすの衛生状況は甚だ不満足であり、病人、身障者、高齢者等への感染防止のためにも、車いすを清潔な状態に保つことが焦眉の急となっている。
そのため、近年車いすの車輪タイヤ部を洗浄する装置も各種のものが提案されて普及しつつあるが、車輪タイヤ部の効果的な洗浄、車いすの装置への取り付け性、装置自体の掃除のしやすさ、装置の耐久性等の全ての課題を満足する装置は出来上がっていない。
【0003】
当社では、先に、独自に発明した車いすの車輪タイヤ部の洗浄装置を市場に提供し、種々高い評価を得ているが、一般に4輪を持つ車いすの車輪タイヤ部のブラシユニットへの装着には、労力と手間がかかるとの不満の声が寄せられていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8-308879号公報
【特許文献2】特開平10-337542号公報
【特許文献3】特開2003-65363号公報
【特許文献4】特開2003-276578号公報
【特許文献5】特開2004-136867号公報
【特許文献6】特開2008-80849号公報
【特許文献7】特開2012-23764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明は、従来の技術及びそれを前提とした車いすの車輪タイヤ部の洗浄手段による問題点を解決するため、比較的簡単な機器構成のもとで、車輪のタイヤのタイヤ側面を含めて新品に近い状態まで比較的短時間で洗浄・磨きのできる汎用性が高く且つ作業性を大幅に改良した洗浄機を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
当社では、先に、特許文献6において独自に発明した車いすの車輪タイヤ部の洗浄装置を市場に提供し、洗浄の仕上がり程度と装置の耐久性には高い評価を得ているが、4輪を持つ車いすの車輪タイヤ部のブラシ部への載置には、ブラシ部の第2及び第3ブラシについて両手を使って引き離し車輪タイヤ部を挟み込む作業を、それぞれの車輪に近い場所に回り込んでは行う必要があり、この作業が大変手間がかかるとの不満の声が寄せられていた。
本発明はこれを改善する手段についてのものである。
【0007】
上記の課題を解決するために請求項1の発明は、車いす車輪のタイヤ部がブラシにあたる位置にブラシ回転用の軸を軸保持治具により設置して動力によって回転するようにし、各軸に車いすの車輪位置に対応する洗浄用ブラシ部を軸の回転に伴って回転するように嵌入させ、各洗浄用ブラシ部はそれぞれ3個の異なる形状の回転ブラシで構成し、うち1個の第1ブラシは回転軸に対して放射状の毛先群を構成する植毛ブラシとし、車輪のタイヤ先端の接地面がブラシの毛先に十分に接触できる関係位置においてブラシ回転用の軸に軸方向に摺動自在な状態で嵌入し、他の2個の第2、第3ブラシは円盤にブラシ回転用の軸と平行方向に第1ブラシの円柱状植毛部を除きドーナツ形に植毛されたブラシとして、第1ブラシを挟み且つタイヤの側面を左右の両側から抱きかかえるような位置関係にてブラシの毛先がタイヤ側面に当たるよう前記第1ブラシのボス部ないしブラシ回転用の軸方向に摺動自在な状態で嵌入し、運転中は左右の第2、第3ブラシが常時スプリングによってタイヤ側面を両側から押す状態になるようにし、各ブラシ部の回転によって車いすのタイヤが同時に回転しながら擦り洗浄されることを特徴とする車いす洗浄機において、連続洗浄動作の初期において、車いす車輪のタイヤ部を各ブラシ部の第2、第3ブラシの毛先の隙間部辺りに載置した後、装置操作部の運転操作により、各ブラシ部を正方向回転と逆方向回転をそれぞれ所定の時間且つ複数回にわたって繰り返し動作させることを特徴とした車いすの車輪洗浄機についてのものである。
【0008】
請求項2の発明は、車いすを載置し且つ前期ブラシ回転用の軸を保持する機能を有する課題を設け、この課題には車いすの前輪タイヤ洗浄及び後輪タイヤ洗浄に用いる前記ブラシ回転用の軸に嵌入する前記ブラシ部を車いすの車輪位置に対応する位置に取り付け、各ブラシ部は一部が洗浄槽に浸かることによって洗浄液を含んだ状態で回転し、車いすの全車輪が同時に回転しながら擦り洗浄されるように構成したことを特徴とする請求項1に示す車いすの車輪洗浄機についてのものである。
【0009】
請求項3の発明は、車いすを載置する装置には、車いすを装置に押し付け、位置の安定を図るためのバンド帯等の車いす押し付け兼位置安定具を取り付け可能としたことを特徴とした、請求項1及び請求項2に示す車いすの車輪洗浄機についてのものである。
【0010】
請求項4の発明は、装置操作部には、目視にて車いすの車輪タイヤ部が各ブラシ部に勘合したことを確認できるまで押し続けるため、運転開始のスイッチとは別にセット専用の操作スイッチを設けたことを特徴とする請求項1、請求項2及び請求項3に示す車いすの車輪洗浄機についてのものである。
【0011】
請求項5の発明は、装置操作部には、目視にて車いすの車輪タイヤ部が各ブラシ部に勘合する一連の動作は、予め決められた時間及び回数を行うようプログラムされており、運転開始ボタンを入れるだけで、車いす車輪のタイヤ部がブラシ部に挟み込まれる動作に引き続き、通常運転動作までを連続的に行うよう設定されたことを特徴とする請求項1、請求項2及び請求項3に示す車いすの車輪洗浄機についてのものである。
【0012】
請求項6の発明は、車いすを載置する装置には、車いすを装置の上に載置する過程において車いすを装置上へ移動させるために使用するスロープを、装置との接合部を支点として回転させて、開閉保持機構を組込んで位置固定し、後輪用のブラシ部の逆方向回転によって発生する洗浄液の装置外への飛散防止用の板として機能させたことを特徴とする請求項1~請求項5のいずれかに示す車いすの車輪洗浄機についてのものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、以上の様な手段で実施され、以下に示すような効果を奏する。
車いすやベッドフレーム等の福祉介護用器材を入れて運搬されるかご台車をそのままの状態で洗浄および乾燥工程を完了し、搬出することができるので、入れ替えの手間がかからず、移し替えに伴う福祉介護用器材の損傷も少なくすることが可能となる。
【0014】
当社発明のブラシ部による洗浄は、大変効果が高く市場から大きな評価を得てきたが、車いすの車輪タイヤ部をブラシ部に挟み込む際、ブラシ部の側面ブラシを両手で外方向に広げて車輪タイヤ部をはめ込む作業と共に作業用のスペースを作らねばならず、4個の車輪を持った一般的な車いすの場合、4ヵ所のそれぞれの車輪のブラシ部について、4ヵ所に回り込んでこのブラシに車輪タイヤ部をはめ込まねばならないという大変な労力と手間を要していた。
【0015】
本発明では、この点に着目し、車輪タイヤ部をそれぞれのブラシに載せて、ブラシ部を数回正方向回転と逆方向回転を繰り返し動作させるだけで、スムーズに車いすの車輪タイヤ部をブラシ部にはめ込ませる仕組みを考案しこの装置に取り入れたものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態について、ブラシ部の一部断面正面図である。
図2】本発明の実施形態の一実施例についての参考斜視図である。
図3】本発明の実施形態の一実施例につての平面図である。
図4】本発明の実施形態の一実施例についての正面図である。
図5】本発明の実施形態について、ブラシ部の一部断面位置A-A´を示す正面図である。
図6】本発明の実施形態について、図5に関連する断面図である。
図7】本発明の実施形態の操作部の一実施例についての正面図である。
図8】本発明の実施形態の操作部の他の実施例についての正面図である。
図9】本発明の実施形態の内、スロープを洗浄液飛散防止用の板となるよう取付け形状を変更した実施形態についての参考斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
発明の実施の形態並びに作用について、以下に説明する。
本発明の車いす洗浄機は、車いすの車輪タイヤ部の洗浄を目的とした装置についてのものである。
【0018】
車いすの車輪タイヤ部のほぼ全体を洗浄するためには、U型形状をしたタイヤの接地部だけでなく、タイヤの側面部も同時に洗浄する機能が必要とされるが、これを実現した最初の事例は、当社が先に発明した次に示す洗浄ブラシである。
【0019】
すなわち、車いす車輪のタイヤ部がブラシに当たる位置にブラシ回転用の軸を軸保持具により設置して動力によって回転するようにし、各軸に車いすの車輪位置に対応する洗浄ブラシ部を軸の回転に伴って回転するように嵌入させ、各洗浄用ブラシ部はそれぞれ3個の異なる形状の回転ブラシで構成し、うち1個の第1ブラシは回転用の軸に対して放射状の毛先群を構成する植毛ブラシとし、車輪タイヤ先端の接地面がブラシの毛先に十分に接触できる位置関係においてブラシ回転用の軸に軸方向に摺動自在な状態で嵌入し、他の2個の第2、第3のブラシは円盤にブラシ回転用の軸と平行方向に第1ブラシの円柱状植毛部を除きドーナッツ形に植毛されたブラシとして、第1ブラシを挟み且つタイヤ側面を左右の両側から抱えるような位置関係にてブラシの毛先がタイヤ側面に当たるよう前記第1ブラシのボス部ないしブラシ回転用の軸に軸方向に摺動自在な状態で嵌入し、運転中は左右の第2、第3ブラシが常時スプリングにてタイヤ側面を両側から押す状態になるようにし、各ブラシ部の回転によって車いすのタイヤが同時に回転しながら擦り洗浄されることを特徴とする車いす洗浄機である。
【0020】
この発明による車いすの車輪タイヤ部の洗浄方法により、それ以前の車いす車輪のタイヤ部のほぼ全体の洗浄が可能となり、タイヤ全体特にタイヤ側面部の洗浄効果に優れ、これまでのタイヤ洗浄の課題が一挙に解決されると共に、著しい作業改善につながった。
【0021】
一方、この発明のブラシは、左右の第2、第3ブラシが常時スプリングにてタイヤ側面を両側から押す状態となるため、車いすの車輪タイヤ部をブラシの第2ブラシ及び第3ブラシに挟み込んだ状態にセットするために、例えば4輪を同時に洗浄させる車輪洗浄機の場合、4ヵ所の車輪について、個々に、車輪位置に作業場所を移動しては、ブラシの第2ブラシと第3ブラシを両手で引き離しながら車輪のタイヤ部を挟み込ませる手間を講じる必要があり、車輪洗浄機1台について1日当たり車いす数十台を処理する場合には、大変な労力を要する事態ともなっていた。
【0022】
そこでこれを解決する手段として発明したのが本発明である。
すなわち、側面側のブラシの第2ブラシと第3ブラシの毛先の変形後の復元力を利用して自動的に車いすの車輪タイヤ部をブラシの第2及び第3ブラシの間に挟み込ませる手段についてのものであり、その仕組みは次のようなものである。
【0023】
ブラシ左右の第2ブラシと第3ブラシのドーナツ形に植毛されたブラシはタイヤ部側面を効果的に擦り洗浄するために、比較的太く強度のある腰の強い毛先としている。従って、タイヤ部がブラシの側面の毛先に当たった場合には、ブラシ側から見ると毛先がブラシ側面を押す力となって作用する。
【0024】
更に、毛先がタイヤ部によって押し曲げられた状態よりも、タイヤ部によって押し曲げられていた状態からタイヤ部の押し曲げる力が軽減して毛先が直線状に復元する状態になるにつれて、毛先がブラシ側面を押す力が強くなることが明らかとなっている。
【0025】
この毛先の形状変化に伴う毛先からタイヤ部側面が受ける力の変化を利用して、車いす押し付け具を使用あるいは車いすに重しを載せるなどして車いすのタイヤ部からブラシ部に強い重力がかかった状態にすれば、ブラシの第2ブラシ及び第3ブラシの隙間にタイヤ部が入り込もうとしこの際には、この動作に負けて左右ブラシの植毛は湾曲させられ且つ若干第2ブラシと第3ブラシはタイヤ部から離れる動作はするものの、この状態でブラシ部の正方向回転の洗浄動作を開始し継続しても、タイヤ部はブラシの第2ブラシと第3ブラシの間に完全に挟み込まれることはなく回転動作を継続することとなる。
【0026】
しかしながらここで、一旦ブラシ部を正方向回転させた後、次にはブラシ部が逆方向回転させると、先に正方向回転により湾曲変形していた毛先は、回転方向が変わる際に、元の直線状態に戻る動作に入ることになるが、この際に、タイヤ側面を押し返す力が最大になる現象として現われる。
【0027】
しかし、タイヤ部はブラシの第2ブラシと第3ブラシに挟まれて両側から押されることとなるので、結果としては、ブラシはタイヤ側面を押すものの、それ以上に押す力が強い状態では、ブラシ自体の毛先の復元力が側面ブラシの背後から加えられているスプリングの力に打ち勝つと、結果としてブラシ部の第2ブラシと第3ブラシがタイヤ部から離れる動きとなる。
【0028】
このブラシ部の第2ブラシと第3ブラシが、ブラシ部の正方向回転と逆方向回転動作が繰り返されることによって、タイヤ部はブラシ部に入り込もうとする動作が進行し、ブラシ部の第2ブラシと第3ブラシがタイヤ部から受ける力がブラシ部の背後に備えられているスプリングの力と釣り合った状態でタイヤ部はブラシ部に完全に挟み込まれ、この段階になればブラシ部を正方向回転のまま動作させることにより、タイヤ部は軸ブラシ及びこれら側面ブラシにより効果的に擦り洗浄される。
【0029】
なお、上記説明のタイヤ部のブラシによる洗浄の初期段階において、正方向回転動作と逆方向運転動作を数回繰り返す運転パターンの導入によるタイヤ部のブラシへの挟み込み動作については、運転操作部に設けた洗浄スタートのためのスイッチとは別に設けたセットスイッチを押し操作している時間中だけ行われ、タイヤ部がブラシ部に挟み込まれた状態を目視確認した後、この押し操作をやめて、改めて洗浄動作運転を開始させる洗浄スイッチを操作する操作方法と、このセットスイッチは設けず、洗浄スイッチの操作のみで、予めプログラムさせておいた運転動作シーケンスに基づき自動的にタイヤ部のブラシへの挟み込み動作と、これに引き続き洗浄動作運転を開始し継続する方法があり、どちらかを選択することが可能である。
【実施例0030】
本発明の車いすの車輪洗浄機は、図1図2図3及び図4に示すように、車いすを載置し軸保持機能を有する架台1を使用する実施形態のうち、ブラシ回転用の軸2、2´を設け、この軸はモータ3による動力を伝動装置4によって回転するように構成する。軸2、2´にはそれぞれ2個の前輪洗浄用ブラシ部5、5´及び後輪洗浄用ブラシ部6、6´を軸の回転に伴って回転し、且つそれぞれ軸2、2´に対して摺動できるように嵌入する。
【0031】
前記ブラシ部5、5´及び6、6´にはそれぞれ3個の異なる形状の回転ブラシで構成されており、いずれも軸2、2´の回転に伴って回転するがそのうち1個の第1ブラシ7は図1に示すように軸2に対して放射状の毛先群が植毛されたものとし、ブラシ固定用のボス8はブラシの幅より長く設定され、軸2の回転に伴って回転する構造のもので、軸2に対して摺動できるように嵌入する。
【0032】
その際タイヤ接地部がブラシの毛先に十分接触できるように位置関係を設定する。なお、軸2がまる材の場合は空転止めが必要であるが、角材の場合は空転止めの必要はなく、ボス8の形状も軸2に嵌合可能な通し穴を設けた形状となる。
【0033】
ブラシ部を構成する3個のブラシのうち、第2ブラシ9、第3ブラシ10は、円盤11、11´に軸2と平行に、第1ブラシ7の直径に相当する中心部を除いた形態にてドーナツ状に植毛される。第2ブラシ9、第3ブラシ10は第1ブラシ7のボス8の外側に嵌入できる形状とし、第1ブラシ7を対応して挟むように第1ブラシ7のボス8に両側から摺動自在な状態で嵌入する。
なお、各ブラシの植毛はポリイミド樹脂等の耐摩耗性樹脂線や金属線を一般の刷毛と類似の構造でベース材に埋め込んだものとするが、汚れ除去の効果を高めるためには比較的剛性の高い素材を用いる。
【0034】
このブラシ部は、ブラシ部のスプリング保持部13がブラシ部のスプリング12、12´のストッパーの役割を果たしており、第2ブラシ9と第3ブラシ10は、ブラシ部に車輪タイヤ部14、14´が載置されて第1ブラシ7にタイヤ先端部の接地部が接触した際、タイヤの側面に加圧接触して洗浄作用がなされるようスプリング12、12´にて絶えず内方に押し付けられている。
なお、各ブラシ部はブラシ部の軸に嵌入された状態で左右に自由に移動できるので車輪回転時の歪みによる振れにも追随できる。
【0035】
洗浄用ブラシ部は少なくともブラシの毛先が洗浄液中に没入するような洗浄液槽機能を架台1が兼ねるように気密構成とし洗浄液を投入し、車輪のタイヤを洗浄すると共にブラシに付着した汚れを除去する構成とする。また、洗浄液槽機能を兼ねた架台1はタイヤや洗浄液そのものの汚れの程度により、交換ないし洗剤濃度の変更が容易にできるように上方を一部大気に開放した構成としている。
また、車いすを架台1に載置した際、車いすが安定するため、前方への移動防止具18を架台1に設けている。
【0036】
次に、車いすを車いすの車輪洗浄機に載置する場合から説明すると、車いすを洗浄機に載置する前に、予め車いすの4輪が位置する辺りの場所に4個のブラシ部5、5´、6、6´を左右方向に移動させておく。同種類の車いすを引き続き連続して洗浄する場合は、この事前作業は省略される。
この後車いすをスロープ部15を使って車いすの車輪洗浄機の4ヵ所のブラシ部に、それぞれ車輪がブラシ部のほぼ真上に載るようにブラシ部の位置を微調整しながら載置する。
【0037】
次に、車いすを洗浄機の必要な位置に固定すると共に車いすの車輪タイヤ部14、14´がブラシ部に上から強く押し付けられるように、車いす固定バンド16を架台1に設けた固定バンド引掛け部17、17´あるいは17A、17A´を使って取り付ける。
【0038】
この後は、運転操作部21の洗浄スイッチ19の操作により、車いすの車輪タイヤ部の洗浄が始まる。
車いすの車輪タイヤ部14、14´の洗浄工程は、予めプログラムされている動作シーケンスに従って、初めに車輪タイヤ部14、14´のブラシ部への挟み込みのための自動運転動作が始まる。これは車輪タイヤ部14、14´がブラシ部の側面が側面ブラシの間に確実に挟み込まれ、車輪タイヤ部14、14´の接地面が第1ブラシ7に乗る状態に、車輪タイヤ部14、14´に対するブラシ部の位置調整がなされることを目的としている。
【0039】
具体的には、まず1~3秒間程度ブラシ部が洗浄運転を行う正方向回転動作を行い、次に一旦停止した後、引き続き1~3秒間程度逆方向回転を行う、次にまた一旦停止し、1~3秒間程度正方向回転動作を行い、また一旦停止し、再度1~3秒間程度逆方向回転動作を行うものである。
【0040】
この正方向回転、一旦停止、逆方向回転及び一旦停止の一連の動作を複数回行うことにより、車いすの車輪タイヤ部14、14´はほぼ完全にブラシ部に挟み込まれ車輪タイヤ部14、14´の先端は第1ブラシ7の毛先に当たる位置まで到達する。
この後は正方向回転動作の連続によりブラシの接地面と両側面は有効に擦り洗浄が行うことが可能となる。
【0041】
この洗浄動作初期のブラシ部の正逆方向回転の繰り返し動作の作用と効果について実施例を、図5及び図6の(a)、(b) 、(c) 、(d) 、(e) に基づいて説明する。
車いすの4ヵ所の車輪を、それぞれ擦り洗浄を行うブラシ部の上に載置した後、車いすの車輪がブラシ部に必要な重量をもって押し付けられるように、予め架台1に設けられた、車いす固定バンド16を架台1に設けた固定バンド引掛け部17A、17A´を使って取り付ける。この固定バンドによる車いすの取付固定の方法は、この代わりに、重量物を車いすの座面等に載せる方法で代用することが出来る。
【0042】
このように、車いすの車輪タイヤ部14、14´がブラシ部のほぼ真上から押さえつけられることにより、車輪タイヤ部14、14´はブラシの第2ブラシ9と第3ブラシ10の間に入り込もうとする状態及び位置関係となっている。
【0043】
この状態で、図5及び図6に示すようにブラシ部を例えば1~3秒間正方向回転させると、図6の(a)に示すように、車輪タイヤ部14、14´はブラシ部の第2ブラシ9と第3ブラシ10の毛先は押し曲がるように変形する。
【0044】
この後一旦ブラシ部の正方向回転を停止し、次にブラシ部を逆方向回転させると、図6の(b)に示すように正方向回転により押し曲げられていた毛先は湾曲変形から元の直線状態へ復元する状態を経て、図6の(c)に示すように、車輪タイヤ部14、14´はブラシ部の第2ブラシ9と第3ブラシ10の毛先は正方向回転の場合とは反対の方向に押し曲がるように変形する。更に再度ブラシ部を例えば1~3秒間正方向回転させると、図6の(d)に示すように、押し曲げられていた毛先は湾曲変形から元の直線状態へ復元する状態を経て、図6の(e)に示すような図6の(a)の毛先と同様な形態へと変形する。
【0045】
上記のブラシ部の正方向回転と逆方向回転の繰り返し動作を経て、スプリング12、12´の内側方向へ働く力に打ち勝って、車輪タイヤ部14、14´はブラシ部の第2ブラシ9と第3ブラシ10の間に挟まれ、車輪タイヤ部14、14´の接地面は第1ブラシ7の毛先に到達できる。
【0046】
この動作による効果は以下に述べるとおりである。
当社が先に発明し商品化に成功した上述のブラシ式のタイヤ部洗浄装置では、車輪タイヤ部14、14´をブラシ部に挟み込ませるためには、4ヵ所のブラシ部の位置に移動しては、ブラシ部の第2ブラシ9と第3ブラシ10を両手で引き離して車輪タイヤ部14、14´を挟み込む面倒な作業が必要であったが、本発明の手段を適用すれば、4ヵ所の車輪ブラシ部に車いすの4輪を載置した後、車いすを車いす固定バンド16を使って架台1に押し付ける状態にした後、図8に示す洗浄スイッチ19を押し洗浄動作を開始するだけで、正方向回転の連続した継続洗浄運転の前に、予めプログラムされた工程で洗浄ブラシ部の短時間の正方向回転と短時間の逆方向回転をそれぞれ複数回繰り返す中で、車いすの車輪タイヤ部14、14´は直接ブラシ部に手をかけることなく自動的にブラシ部の第2ブラシ9と第3ブラシ10の間に入り込み、車輪タイヤ部14、14´の先端は第1ブラシに到達できる。
【0047】
この後引き続きブラシ部は正方向回転動作を開始し、所定の時間この正方向回転動作を行うことで、車いす車輪タイヤ部の効果的な洗浄を完了することができる。
【0048】
この装置には、更に、車いすがスロープ部15を利用して装置の上に載置された後は、このスロープ部15を、後輪用のブラシの回転によってもたらされる洗浄液の装置外への飛散を防止するために利用する手段を講じている。
図9に示すようにスロープ部15の接地側を持ち上げて、装置本体とスロープ部15の接合部22を支点として装置本体側へ、開閉保持機構23が機能する位置まで回転させることにより、スロープ部15は飛散防止板として機能するようになる。なお、この開閉保持機構23を解除した後、スロープ部15の先端部を元に戻せば本来のスロープ部15として改めて機能することとなる。
【符号の説明】
【0049】
1 架台
2、2´ 軸
3 モータ
4 伝動装置
5、5´ 前輪洗浄用ブラシ部
6、6´ 後輪洗浄用ブラシ部
7 第1ブラシ
8 ボス
9 第2ブラシ
10 第3ブラシ
11、11´ 円盤
12、12´ スプリング
13 スプリング保持部
14、14´ 車輪タイヤ部
15 スロープ部
16 車いす固定バンド
17、17´、17A、17A´ 固定バンド引掛け部
18 移動防止具
19 洗浄スイッチ
20 セットスイッチ
21 運転操作部
22 接合部
23 開閉保持機構
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9