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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022108458
(43)【公開日】2022-07-26
(54)【発明の名称】レーザ加工装置
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/03 20060101AFI20220719BHJP
   B23K 26/062 20140101ALI20220719BHJP
   B23K 26/082 20140101ALI20220719BHJP
【FI】
G02F1/03
B23K26/062
B23K26/082
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021003464
(22)【出願日】2021-01-13
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【弁理士】
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】呉屋 真之
(72)【発明者】
【氏名】形部 聖
【テーマコード(参考)】
2K102
4E168
【Fターム(参考)】
2K102AA21
2K102BA09
2K102BB04
2K102BC04
2K102BD10
2K102CA10
2K102DA01
2K102DC07
2K102DC08
2K102DD05
2K102EA02
2K102EB10
2K102EB11
2K102EB12
4E168CB04
4E168DA60
4E168EA05
4E168FC04
4E168KB02
(57)【要約】
【課題】結晶素子の温度上昇によるレーザ光の出射方向の変動を抑制する。
【解決手段】被加工物Wに向けてランダム偏光のレーザ光L0を第1軸線Z1に沿って照射する照射部10と、照射部10により照射されたレーザ光L0が入射されるとともにレーザ光L0の第1偏光方向の成分である第1直線偏光L1を第1軸線Z1に沿って透過させる直線偏光子20と、直線偏光子20を透過した第1直線偏光L1が入射するとともに第1直線偏光L1の第1軸線Z1に対する第1出射方向θxを印加される電圧に応じて調整する第1KTN結晶素子40と、第1KTN結晶素子40に電圧を印加する第1電圧印加部45と、第1KTN結晶素子40により第1出射方向θxが調整された第1直線偏光L2を被加工物Wに出射する出射部80と、を備えるレーザ加工装置100を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物に向けてランダム偏光のレーザ光を第1軸線に沿って照射する照射部と、
前記照射部により照射された前記レーザ光が入射されるとともに前記レーザ光の第1偏光方向の成分である第1直線偏光を前記第1軸線に沿って透過させる直線偏光子と、
前記直線偏光子を透過した前記第1直線偏光が入射するとともに前記第1直線偏光の前記第1軸線に対する第1出射方向を印加される電圧に応じて調整する第1結晶素子と、
前記第1結晶素子に電圧を印加する第1電圧印加部と、
前記第1結晶素子により前記第1出射方向が調整された前記第1直線偏光を前記被加工物に出射する出射部と、を備えるレーザ加工装置。
【請求項2】
前記第1結晶素子を通過した前記第1直線偏光の偏光方向を前記第1偏光方向と90度異なる第2偏光方向に変える第1半波長板と、
前記第1半波長板を通過した前記第1直線偏光が入射するとともに前記第1直線偏光の前記第1軸線に対する第2出射方向を印加される電圧に応じて調整する第2結晶素子と、
前記第2結晶素子に電圧を印加する第2電圧印加部と、を備え、
前記出射部は、前記第1結晶素子により前記第1出射方向が調整され、かつ前記第2結晶素子により前記第2出射方向が調整された前記第1直線偏光を前記被加工物に出射する請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項3】
前記直線偏光子は、前記レーザ光の第2偏光方向の成分である第2直線偏光を前記第1軸線とは異なる第2軸線に沿って出射し、
前記直線偏光子により出射された前記第2直線偏光を反射させて前記第1軸線と平行な方向に導き、前記第1直線偏光と合流させる合流光学系と、
前記合流光学系の光路上に配置されるとともに前記第2直線偏光の偏光方向を前記第2偏光方向から前記第1偏光方向に変える合流半波長板と、を備える請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項4】
前記直線偏光子は、前記レーザ光の前記第2偏光方向の成分である第2直線偏光を前記第1軸線とは異なる第2軸線に沿って出射し、
前記直線偏光子により出射された前記第2直線偏光を反射させて前記第1軸線と平行な方向に導き、前記第1直線偏光と合流させる合流光学系と、
前記合流光学系の光路上に配置されるとともに前記第2直線偏光の偏光方向を前記第2偏光方向から前記第1偏光方向に変える合流半波長板と、を備える請求項2に記載のレーザ加工装置。
【請求項5】
前記合流光学系は、前記合流半波長板により前記第1偏光方向に変えられた前記第2直線偏光を前記第1軸線と交差する方向から前記第1軸線と平行な方向に反射させる反射板を有し、
前記反射板は、前記第1軸線から前記第1軸線に直交する方向にオフセットした位置に配置されている請求項3または請求項4に記載のレーザ加工装置。
【請求項6】
一対の前記反射板が前記第1軸線を挟んで配置されている請求項5に記載のレーザ加工装置。
【請求項7】
前記直線偏光子は、前記レーザ光の前記第2偏光方向の成分である第2直線偏光を前記第1軸線とは異なる第2軸線に沿って出射し、
前記直線偏光子から出射される前記第2直線偏光が入射するとともに前記第2直線偏光を反射させて第3軸線に沿って導く反射光学系と、
前記第3軸線に配置されるとともに前記第2直線偏光の偏光方向を前記第2偏光方向から前記第1偏光方向に変える分岐半波長板と、
前記分岐半波長板から導かれる前記第1偏光方向の前記第2直線偏光が入射するとともに前記第2直線偏光の前記第3軸線に対する第3出射方向を印加される電圧に応じて調整する第3結晶素子と、
前記第3結晶素子に電圧を印加する第3電圧印加部と、
前記第3結晶素子を通過した前記第2直線偏光の偏光方向を前記第1偏光方向から前記第2偏光方向に変える第2半波長板と、
前記第3結晶素子を透過した前記第2直線偏光が入射するとともに前記第2直線偏光の前記第2軸線に対する第4出射方向を印加される電圧に応じて調整する第4結晶素子と、
前記第4結晶素子に電圧を印加する第4電圧印加部と、を備え、
前記出射部は、前記第1結晶素子により前記第1出射方向が調整され、かつ前記第2結晶素子により前記第2出射方向が調整された前記第1直線偏光と、前記第3結晶素子により前記第3出射方向が調整され、かつ前記第4結晶素子により前記第4出射方向が調整された前記第2直線偏光とを、前記被加工物に出射する請求項2に記載のレーザ加工装置。
【請求項8】
前記直線偏光子は、前記レーザ光の前記第2偏光方向の成分である第2直線偏光を前記第1軸線とは異なる第2軸線に沿って出射し、
前記直線偏光子から出射される前記第2直線偏光が入射するとともに前記第2直線偏光を反射させて第3軸線に沿って導く反射光学系と、
前記反射光学系から出射される前記第2直線偏光が入射するとともに前記第2直線偏光の前記第3軸線に対する第3出射方向を印加される電圧に応じて調整する第3結晶素子と、
前記第3結晶素子に電圧を印加する第3電圧印加部と、
前記第3結晶素子を通過した前記第2直線偏光の偏光方向を前記第2偏光方向から前記第1偏光方向に変える第2半波長板と、
前記第2半波長板を透過した前記第2直線偏光が入射するとともに前記第2直線偏光の前記第3軸線に対する第4出射方向を印加される電圧に応じて調整する第4結晶素子と、
前記第4結晶素子に電圧を印加する第4電圧印加部と、を備え、
前記出射部は、前記第1結晶素子により前記第1出射方向が調整され、かつ前記第2結晶素子により前記第2出射方向が調整された前記第1直線偏光と、前記第3結晶素子により前記第3出射方向が調整され、かつ前記第4結晶素子により前記第4出射方向が調整された前記第2直線偏光とを、前記被加工物に出射する請求項2に記載のレーザ加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レーザ加工装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、100kHz~1MHz程度の発振周波数を有する短パルスレーザ発振器などのレーザ発振器が知られている。一方、レーザ光を走査するために広く用いられるガルバノ光学系は、機械的にミラーを振動させるものであり、走査周波数が最大でも1kHz程であるためレーザ発振器の発振周波数に比べて1~2桁周波数が低い。
【0003】
そして、電圧制御によってレーザ光の走査を行うことが可能な電気光学材料であるKTN結晶を利用した光ビームスキャナが提案されている(特許文献1)。特許文献1に開示される光ビームスキャナは、機械的にミラーを振動させるものではなく電圧制御によりレーザ光の走査を行うため、200kHzを超える高速な動作を実現することが可能となっている。
【0004】
一方、KTN結晶は、温度に応じて誘電率が変化して偏向特性に影響を及ぼすことが知られている。そのため、特許文献1では、ペルチェ素子をKTN結晶に接触させるとともに温度制御された気流をKTN結晶に吹き付けることにより、KTN結晶の温度変化を抑制し、偏向特性の安定性を高めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-105811号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、KTN結晶を用いた光ビームスキャナをレーザ加工用として用いる場合、レーザ光の出力が数百Wもの高出力となる可能性がある。この場合、ペルチェ素子や温度制御された気流を吹き付けるだけではKTN結晶を十分に冷却することができない可能性がある。また、KTN結晶を十分に冷却するには、十分な冷却能力を持つ冷却機構を設ける必要があり、製造コストが増大してしまう。
【0007】
また、KTN結晶に電圧を印加することにより走査可能なレーザ光は、所定の偏光方向の直線偏光成分のみである。そのため、走査可能なレーザ光の直線偏光成分を所望の出力とするためには、KTN結晶に入射するレーザ光の出力を直線偏光成分の出力よりも十分に大きくする必要がある。この場合、走査可能なレーザ光の直線偏光成分とは異なる他の直線偏光成分がKTN結晶を加熱する要因となり、所望のレーザ光の走査を行うことができない可能性がある。
【0008】
本開示は、このような事情に鑑みてなされたものであって、印加される電圧に応じてレーザ光の出射方向を調整する結晶素子を備えるレーザ加工装置において、結晶素子の温度上昇によるレーザ光の出射方向の変動を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一態様に係るレーザ加工装置は、被加工物に向けてランダム偏光のレーザ光を第1軸線に沿って照射する照射部と、前記照射部により照射された前記レーザ光が入射されるとともに前記レーザ光の第1偏光方向の成分である第1直線偏光を前記第1軸線に沿って透過させる直線偏光子と、前記直線偏光子を透過した前記第1直線偏光が入射するとともに前記第1直線偏光の前記第1軸線に対する第1出射方向を印加される電圧に応じて調整する第1結晶素子と、前記第1結晶素子に電圧を印加する第1電圧印加部と、前記第1結晶素子により前記第1出射方向が調整された前記第1直線偏光を前記被加工物に出射する出射部と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、印加される電圧に応じてレーザ光の出射方向を調整する結晶素子を備えるレーザ加工装置において、結晶素子の温度上昇によるレーザ光の出射方向の変動を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示の第1実施形態に係るレーザ加工装置の概略構成を示す正面図である。
図2】本開示の第1実施形態に係るレーザ加工装置の概略構成を示す平面図である。
図3】本開示の第2実施形態に係るレーザ加工装置の概略構成を示す正面図である。
図4図3の合流機構を示す部分拡大図である。
図5図3の合流機構の変形例を示す部分拡大図である。
図6】本開示の第3実施形態に係るレーザ加工装置の概略構成を示す正面図である。
図7図6に示す第1光学系の部分拡大図である。
図8図6に示す第2光学系の部分拡大図である。
図9】本開示の第4実施形態に係るレーザ加工装置の概略構成を示す正面図である。
図10図9に示す第2光学系の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
〔第1実施形態〕
以下、本開示の第1実施形態に係るレーザ加工装置100について、図面を参照して説明する。図1は、本実施形態に係るレーザ加工装置100の概略構成を示す正面図である。図2は、本実施形態に係るレーザ加工装置100の概略構成を示す平面図である。
【0013】
図1に示すように、本実施形態のレーザ加工装置100は、照射部10と、直線偏光子20と、縮小光学系30と、第1KTN結晶素子40と、第1電圧印加部45と、平凹レンズ47と、接続用光学系50と、半波長板(第1半波長板)60と、第2KTN結晶素子70と、第2電圧印加部75と、出射部80と、制御部90と、を備える。
【0014】
照射部10は、金属板等の被加工物Wに向けてランダム偏光のレーザ光L0を軸線(第1軸線)Z1に沿って照射する装置である。照射部10は、20W以上かつ1000W以下の出力を有するレーザ光L0を照射する。
【0015】
直線偏光子20は、照射部10により照射されたレーザ光L0が入射される素子である。直線偏光子20は、レーザ光L0の軸線Z1および軸線Z1に直交する軸線X2により形成されるX1-Z1平面に沿った第1偏光方向の成分である第1直線偏光L1を軸線Z1に沿って透過させる。また、直線偏光子20は、レーザ光L0の第1偏光方向と90度異なる第2偏光方向の成分である第2直線偏光L2を軸線(第2軸線)X2に沿って出射する。直線偏光子20は、例えば、方解石や水晶により形成されている。
【0016】
縮小光学系30は、直線偏光子20を透過した第1直線偏光L1のビーム径を絞り、第1KTN結晶素子40に向けて軸線Z1に沿って出射する光学系である。縮小光学系30は、第1両凸レンズ31および第2両凸レンズ32を軸線Z1に沿って配置したものである。
【0017】
第1KTN結晶素子40は、カリウム(K),タンタル(Ta),ニオブ(Nb)からなる酸化物結晶である。第1KTN結晶素子40は、第1電圧印加部45により印加される電圧に応じて、一定の偏光方向の直線偏光の出射方向を調整可能な電気光学結晶である。ここでは、電気光学結晶としてKTN結晶素子を例として出しているが、ニオブ酸リチウムやタンタル酸リチウムでも適用可能である。
【0018】
図1に示す第1KTN結晶素子40は、直線偏光子20を透過した第1偏光方向の第1直線偏光L1の出射方向を調整可能とするように配置されている。第1KTN結晶素子40には、直線偏光子20を透過した第1直線偏光L1が入射する。第1KTN結晶素子40は、レーザ光L0のX1-Z1平面に沿った第1偏光方向の成分である第1直線偏光L1の軸線Z1に対する第1出射方向θxを第1電圧印加部45により印加される電圧に応じて調整する。
【0019】
第1電圧印加部45は、第1KTN結晶素子40に電圧を印加する装置である。第1電圧印加部45は、第1KTN結晶素子40が第1直線偏光L1を出射する第1出射方向θxを任意の角度に調整するように、第1KTN結晶素子40に印加する電圧を調整する。第1電圧印加部45は、制御部90から伝達される制御信号に応じて第1KTN結晶素子40に印加する電圧を調整する。
【0020】
接続用光学系50は、第1KTN結晶素子40から出射されて平凹レンズ47を通過した第1直線偏光L1を半波長板60に導く光学系である。接続用光学系50は、凸部分が対向して配置される平凸レンズ51および平凸レンズ52とを有する。
【0021】
半波長板60は、第1KTN結晶素子40を通過して接続用光学系50から出射される第1直線偏光L1の偏光方向を第1偏光方向と90度異なる第2偏光方向に変える部材である。半波長板60は、入射される第1直線偏光L1に半波長分の180度の位相差を与えることにより、第1直線偏光L1の偏光方向を第1偏光方向から第2偏光方向に変換する。
【0022】
半波長板60で第1直線偏光L1の偏光方向を90度変えているのは、X1-Z1平面に直交するY1-Z1平面に沿った第2偏光方向を有する第1直線偏光L1とすることで、第2KTN結晶素子70において第1直線偏光L1の軸線Z1に対する第2出射方向θyを第2電圧印加部75により印加される電圧に応じて調整するためである。第1KTN結晶素子40が調整する第1出射方向θxと第2KTN結晶素子70が調整する第2出射方向θyとを90度異ならせることにより、第1直線偏光L1の被加工物Wへの照射位置を2次元平面上の任意の位置に調整することができる。
【0023】
第2KTN結晶素子70は、カリウム(K),タンタル(Ta),ニオブ(Nb)からなる酸化物結晶である。第2KTN結晶素子70は、第2電圧印加部75により印加される電圧に応じて、一定の偏光方向の直線偏光の出射方向を調整可能な電気光学結晶である。
【0024】
図1に示す第2KTN結晶素子70は、半波長板60を通過した第2偏光方向を有する第1直線偏光L1の出射方向を調整可能とするように配置されている。第2KTN結晶素子70には、半波長板60を通過した第1直線偏光L1が入射する。第2KTN結晶素子70は、Y1-Z1平面に沿った第2偏光方向を有する第1直線偏光L1の軸線Z1に対する第2出射方向θyを第2電圧印加部75により印加される電圧に応じて調整する。
【0025】
第2電圧印加部75は、第2KTN結晶素子70に電圧を印加する装置である。第2電圧印加部75は、第2KTN結晶素子70が第1直線偏光L1を出射する第2出射方向θyを任意の角度に調整するように、第2KTN結晶素子70に印加する電圧を調整する。第2電圧印加部75は、制御部90から伝達される制御信号に応じて第2KTN結晶素子70に印加する電圧を調整する。
【0026】
出射部80は、第1KTN結晶素子40により第1出射方向θxが調整され、かつ第2KTN結晶素子70により第2出射方向θyが調整された第1直線偏光L1を被加工物Wに出射する装置である。出射部80は、両凸レンズである集光レンズ81と、ガスノズル82とを有する。
【0027】
集光レンズ81は、第2KTN結晶素子70から出射されて平凹レンズ77を通過した第1直線偏光L1を軸線Z1の近傍に集光するためのレンズである。ガスノズル82は、軸線Z1に沿って延びる円錐台状の筒であり、軸線Z1に沿って集光レンズ81から被加工物Wに向けて噴射される窒素ガスが内部を流通する。ガスノズル82により被加工物Wに向けて窒素ガスを噴射することにより、レーザ光により溶融した被加工物Wを吹き飛ばすことができる。
【0028】
制御部90は、第1電圧印加部45および第2電圧印加部75に制御信号を伝達する装置である。制御部90は、第1電圧印加部45が第1KTN結晶素子40に印加する電圧を調整するための第1制御信号を第1電圧印加部45に伝達し、第2電圧印加部75が第2KTN結晶素子70に印加する電圧を調整するための第2制御信号を第2電圧印加部75に伝達する。
【0029】
以上説明した本実施形態のレーザ加工装置100は、以下の作用及び効果を奏する。
本実施形態のレーザ加工装置100によれば、照射部10から照射されるランダム偏光のレーザ光L0が軸線Z1に沿って直線偏光子20に入射され、レーザ光L0の第1偏光方向の成分である第1直線偏光L1が直線偏光子20を透過する。直線偏光子20を透過した第1直線偏光L1は第1KTN結晶素子40に入射され、第1電圧印加部45により印加される電圧に応じて軸線Z1に対する第1出射方向θxが調整される。第1出射方向θxが調整された第1直線偏光L1は、出射部80により被加工物Wに出射される。
【0030】
本開示に係るレーザ加工装置100によれば、照射部10から照射されるランダム偏光のレーザ光のうち第1偏光方向の成分である第1直線偏光L1が第1KTN結晶素子40に入射されるが、第1偏光方向とは異なる方向のレーザ光の成分は第1KTN結晶素子40に入射されない。第1偏光方向とは異なる方向のレーザ光の成分は、第1KTN結晶素子40による第1出射方向θxの調整ができない成分である。第1KTN結晶素子40に入射されるレーザ光を第1直線偏光L1に絞ることにより、第1KTN結晶素子40に入射されるレーザ光の光量を抑制し、第1KTN結晶素子40の温度上昇によるレーザ光の出射方向の変動を抑制することができる。
【0031】
また、本実施形態のレーザ加工装置100によれば、第1KTN結晶素子40を通過した第1直線偏光L1は半波長板60を通過する際に第1偏光方向と偏光方向が90度異なる第2偏光方向に変わり、第2偏光方向を有する第1直線偏光L1が第2KTN結晶素子70に入射される。第2KTN結晶素子70は、第2電圧印加部75により印加される電圧に応じて軸線Z1に対する第2出射方向θyを調整する。第2出射方向θyが調整された第1直線偏光L1は、出射部80により被加工物Wに出射される。
【0032】
本実施形態に係るレーザ加工装置100によれば、直線偏光子20を透過した第1直線偏光L1は、第1KTN結晶素子40により軸線Z1に対する第1出射方向θxが調整される。軸線Z1に対する第1出射方向θxが調整された第1直線偏光L1は、半波長板60を通過する際に第1偏光方向と偏光方向が90度異なる第2偏光方向に変わり、第2KTN結晶素子70により軸線Z1に対する第2出射方向θyが調整される。ここで、第1偏光方向と第2偏光方向は90度異なる方向であり、第1出射方向θxと第2出射方向θyも90度異なる方向である。本実施形態のレーザ加工装置100によれば、第1直線偏光L1の第1出射方向θxと第2出射方向θyとを調整することにより、レーザ光が2次元方向の任意の照射位置へ照射されるように調整することができる。
【0033】
〔第2実施形態〕
次に、本開示の第2実施形態に係るレーザ加工装置100Aについて、図面を参照して説明する。本実施形態は第1実施形態の変形例であり、以下で特に説明する場合を除き、第1実施形態と同様であるものとし、以下での説明を省略する。図3は、本実施形態に係るレーザ加工装置100Aの概略構成を示す正面図である。本実施形態においては、第1KTN結晶素子40と、第1電圧印加部45と、平凹レンズ47と、接続用光学系50と、半波長板60と、第2KTN結晶素子70と、第2電圧印加部75と、出射部80と、制御部90の図示を省略している。
【0034】
第1実施形態のレーザ加工装置100は、直線偏光子20から第1KTN結晶素子40へ第1直線偏光L1を透過させて縮小光学系30へ導く一方で、直線偏光子20から出射される第2直線偏光L2は縮小光学系30へ導かないものであった。それに対して、本実施形態のレーザ加工装置100Aは、直線偏光子20から出射される第2直線偏光L2を第1直線偏光L1と合流させて縮小光学系30へ導く合流光学系110を備えるものである。図3に示すように、本実施形態のレーザ加工装置100Aは、合流光学系110と、合流半波長板120と、を備える。
【0035】
合流光学系110は、直線偏光子20により軸線X2に沿って出射された第2直線偏光L2を反射させて軸線Z1と平行な方向に合流させる光学系である。図3に示すように、合流光学系110は、第1反射板111と、第2反射板112と、合流機構113と、を有する。
【0036】
第1反射板111は、直線偏光子20により出射された第2直線偏光L2を反射させて合流半波長板120に導く部材である。第2反射板112は、合流半波長板120を通過した第2直線偏光L2を反射させて軸線Z1と交差する方向に導く部材である。合流機構113は、第2反射板112により反射された軸線Z1と交差する方向に導かれる第2直線偏光L2を軸線Z1と交差する方向から軸線Z1と平行な方向に反射させる機構である。
【0037】
合流半波長板120は、合流光学系110の光路上に配置されるとともに直線偏光子20から出射される第2直線偏光L2の偏光方向を第2偏光方向と90度異なる第1偏光方向に変える部材である。合流半波長板120は、入射される第2直線偏光L2に半波長分の180度の位相差を与えることにより、第2直線偏光L2の偏光方向を第2偏光方向から第1偏光方向に変換する。
【0038】
ここで、合流機構113の詳細について、図4を参照して説明する。図4は、図3の合流機構113を示す部分拡大図である。図4に示すように、合流機構113は、反射板113aと反射板113bとを有する。反射板113aおよび反射板113bは、合流半波長板120により第1偏光方向に偏光方向が変換された第2直線偏光L2を軸線Z1と交差する方向から軸線Z1と平行な方向に反射させる。
【0039】
図4に示すように、反射板113aおよび反射板113bは、軸線Z1から軸線Z1に直交する軸線X3に沿った方向にそれぞれオフセットした(離間した)位置に配置されている。反射板113aおよび反射板113bは、軸線Z1を通過する第1直線偏光L1のビーム幅Wb1よりも間隔が広くなるように軸線Z1を挟んで配置されている。
【0040】
図4に示すように、合流半波長板120から導かれる第2直線偏光L2はビーム幅Wb2を有する。ビーム幅Wb2のうちの一部は、反射板113aで反射してビーム幅Wb2aの第2直線偏光L2aとして軸線Z1に沿って縮小光学系30に導かれる。ビーム幅Wb2のうちの他の一部は、反射板113bで反射してビーム幅Wb2bの第2直線偏光L2bとして軸線Z1に沿って縮小光学系30に導かれる。
【0041】
図4に示すように、反射板113aで反射された第2直線偏光L2aおよび反射板113bで反射された第2直線偏光L2bは、合流機構113により、軸線Z1に沿って直線偏光子20から導かれる第1直線偏光L1と合流し、縮小光学系30へ導かれる。第2直線偏光L2aおよび第2直線偏光L2bは、それぞれ第1偏光方向に偏光されているため、第1直線偏光L1と同一の偏光方向となる。
【0042】
ここで、図4に示す合流機構113の変形例について図5を参照して説明する。図5は、図3の合流機構113の変形例を示す部分拡大図である。図5に示すように、合流機構113は、反射板113cを有する。反射板113cは、合流半波長板120により第1偏光方向に偏光方向が変換された第2直線偏光L2を軸線Z1と交差する方向から軸線Z1と平行な方向に反射させる。
【0043】
図5に示すように、反射板113cは、軸線Z1から軸線Z1に直交する軸線X3に沿った方向にオフセットした(離間した)位置に配置されている。反射板113cは、軸線Z1を通過するビーム幅Wb1の第1直線偏光L1を避けるように配置されている。
【0044】
図5に示すように、合流半波長板120から導かれる第2直線偏光L2はビーム幅Wb2を有する。ビーム幅Wb2は、反射板113cで反射してビーム幅Wb2の第2直線偏光L2として軸線Z1に沿って縮小光学系30に導かれる。
【0045】
図5に示すように、反射板113cで反射された第2直線偏光L2は、合流機構113により、軸線Z1に沿って直線偏光子20から導かれる第1直線偏光L1と合流し、縮小光学系30へ導かれる。第2直線偏光L2は、第1偏光方向に偏光されているため、第1直線偏光L1と同一の偏光方向となる。
【0046】
以上説明した本実施形態が奏する作用及び効果について説明する。
本実施形態のレーザ加工装置100Aによれば、直線偏光子20により軸線Z1とは異なる軸線X2に沿って出射された第2直線偏光L2は、合流光学系110により反射されて軸線Z1と平行な方向に合流される。第2直線偏光L2は、合流光学系110を通過する際に合流半波長板120により偏光方向が第2偏光方向から第1偏光方向に変えられる。
【0047】
直線偏光子20を透過する第1直線偏光L1の偏光方向と、合流光学系110により合流される第2直線偏光L2の偏光方向とは、第1偏光方向で一致する。そのため、照射部10により照射されるランダム偏光のレーザ光のうち、第1偏光方向の成分である第1直線偏光L1と、第2偏光方向の成分である第2直線偏光L2の双方を、第1KTN結晶素子40が第1出射方向θxを調整可能な第1偏光方向の成分を有する状態で第1KTN結晶素子40に導くことができる。
【0048】
また、本実施形態のレーザ加工装置100Aによれば、反射板113a,113b,113cを軸線Z1から軸線Z1に直交する方向にオフセットした位置に配置することにより、直線偏光子20を透過する第1直線偏光L1が反射板113a,113b,113cにより遮られないようにすることができる。また、反射板113a,113b,113cにより、軸線Z1と交差する方向から軸線Z1と平行な方向に第2直線偏光L2を反射させることにより、第2直線偏光L2を第1直線偏光L1に合流させた状態で第1KTN結晶素子40に導くことができる。
【0049】
また、本実施形態のレーザ加工装置100Aによれば、反射板113a,113bを軸線Z1を挟んで配置することにより、直線偏光子20を透過する第1直線偏光L1が反射板113a,113bにより遮られないようにすることができる。また、第2直線偏光L2の一部を反射板113a,113bの一方で反射させ、第2直線偏光L2の他の一部を反射板113a,113bの他方で反射させ、第2直線偏光L2を第1直線偏光L1に合流させた状態で第1KTN結晶素子40に導くことができる。
【0050】
〔第3実施形態〕
次に、本開示の第3実施形態に係るレーザ加工装置100Bについて、図面を参照して説明する。本実施形態は、第1実施形態および第2実施形態の変形例であり、以下で特に説明する場合を除き、第1実施形態と同様であるものとし、以下での説明を省略する。図6は、本実施形態のレーザ加工装置100Bの概略構成を示す平面図である。図7は、図6に示す第1光学系OP1の部分拡大図である。図8は、図6に示す第2光学系OP2の部分拡大図である。
【0051】
第1実施形態のレーザ加工装置100は、直線偏光子20から第1KTN結晶素子40へ第1直線偏光L1を透過させて縮小光学系30へ導く一方で、直線偏光子20から出射される第2直線偏光L2は縮小光学系30へ導かないものであった。それに対して、本実施形態のレーザ加工装置100Bは、直線偏光子20を透過する第1直線偏光L1を被加工物Wへ導く第1光学系OP1と、直線偏光子20から出射される第2直線偏光L2を被加工物Wへ導く第2光学系OP2とを備えるものである。
【0052】
図6に示すように、第1光学系OP1は、照射部10と、直線偏光子20と、縮小光学系30と、第1KTN結晶素子40と、第1電圧印加部45と、平凹レンズ47と、接続用光学系50と、半波長板(第1半波長板)60と、第2KTN結晶素子70と、第2電圧印加部75と、制御部90と、を備える。
【0053】
第1光学系OP1が備える各部の構成は、第1実施形態と同様であるため、以下での説明を省略する。ただし、第1実施形態の第1出射方向θxは本実施形態では第1出射方向θx1であり、第1実施形態の第2出射方向θyは本実施形態では第2出射方向θy1(図7参照)である
【0054】
図6に示すように、第2光学系OP2は、反射光学系125と、分岐半波長板127と、縮小光学系130と、第3KTN結晶素子140と、第3電圧印加部145と、平凹レンズ147と、接続用光学系150と、半波長板(第2半波長板)160と、第4KTN結晶素子170と、第4電圧印加部175と、制御部190と、を備える。
【0055】
反射光学系125は、直線偏光子20から出射される第2直線偏光L2が入射するとともに第2偏光方向を有する第2直線偏光L2を反射させて軸線Z2に沿って導く光学系である。
分岐半波長板127は、軸線Z2に配置されるとともに第2直線偏光L2の偏光方向を第2偏光方向から第1偏光方向に変える部材である。
【0056】
縮小光学系130は、分岐半波長板127を透過した第2直線偏光L2のビーム径を絞り、第3KTN結晶素子140に向けて軸線Z2に沿って出射する光学系である。縮小光学系130は、第1両凸レンズ131および第2両凸レンズ132を軸線Z2に沿って配置したものである。
【0057】
第3KTN結晶素子140は、カリウム(K),タンタル(Ta),ニオブ(Nb)からなる酸化物結晶である。第3KTN結晶素子140は、第3電圧印加部145により印加される電圧に応じて、一定の偏光方向を有する直線偏光の出射方向を調整可能な電気光学結晶である。ここでは、電気光学結晶としてKTN結晶素子を例として出しているが、ニオブ酸リチウムやタンタル酸リチウムでも適用可能である。
【0058】
図6に示す第3KTN結晶素子140は、分岐半波長板127を通過した第1偏光方向を有する第2直線偏光L2の出射方向を調整可能とするように配置されている。第3KTN結晶素子140には、分岐半波長板127を通過した第2直線偏光L2が入射する。第3KTN結晶素子140は、X1-Z2平面に沿った第1偏光方向を有する第2直線偏光L2の軸線Z2に対する第3出射方向θx2を第3電圧印加部145により印加される電圧に応じて調整する。
【0059】
第3電圧印加部145は、第3KTN結晶素子140に電圧を印加する装置である。第3電圧印加部145は、第3KTN結晶素子140が第2直線偏光L2を出射する第3出射方向θx2を任意の角度に調整するように、第3KTN結晶素子140に印加する電圧を調整する。第3電圧印加部145は、制御部190から伝達される制御信号に応じて第3KTN結晶素子140に印加する電圧を調整する。
【0060】
接続用光学系150は、第3KTN結晶素子140から出射されて平凹レンズ147を通過した第2直線偏光L2を半波長板160に導く光学系である。接続用光学系150は、凸部分が対向して配置される平凸レンズ151および平凸レンズ152とを有する。
【0061】
半波長板160は、第3KTN結晶素子140を通過して接続用光学系150から出射される第2直線偏光L2の偏光方向を第1偏光方向と90度異なる第2偏光方向に変える部材である。半波長板160は、入射される第2直線偏光L2に半波長分の180度の位相差を与えることにより、第2直線偏光L2の偏光方向を第1偏光方向から第2偏光方向に変換する。
【0062】
半波長板160で第2直線偏光L2の偏光方向を90度変えているのは、X1-Z2平面に直交するY1-Z2平面に沿った第2偏光方向を有する第2直線偏光L2とすることで、第4KTN結晶素子170において第2直線偏光L2の軸線Z2に対する第4出射方向θy2(図8参照)を第4電圧印加部175により印加される電圧に応じて調整するためである。第3KTN結晶素子140が調整する第3出射方向θx2と第4KTN結晶素子170が調整する第4出射方向θy2とを90度異ならせることにより、第2直線偏光L2の被加工物Wへの照射位置を2次元平面上の任意の位置に調整することができる。
【0063】
第4KTN結晶素子170は、カリウム(K),タンタル(Ta),ニオブ(Nb)からなる酸化物結晶である。第4KTN結晶素子170は、第4電圧印加部175により印加される電圧に応じて、一定の偏光方向を有する直線偏光の出射方向を調整可能な電気光学結晶である。
【0064】
図6に示す第4KTN結晶素子170は、半波長板160を通過した第2偏光方向を有する第2直線偏光L2の出射方向を調整可能とするように配置されている。第4KTN結晶素子170には、半波長板160を通過した第2直線偏光L2が入射する。第4KTN結晶素子170は、Y1-Z2平面に沿った第2偏光方向を有する第2直線偏光L2の軸線Z2に対する第4出射方向θy2を第4電圧印加部175により印加される電圧に応じて調整する。
【0065】
第4電圧印加部175は、第4KTN結晶素子170に電圧を印加する装置である。第4電圧印加部175は、第4KTN結晶素子170が第2直線偏光L2を出射する第4出射方向θy2を任意の角度に調整するように、第4KTN結晶素子170に印加する電圧を調整する。第4電圧印加部175は、制御部190から伝達される制御信号に応じて第4KTN結晶素子170に印加する電圧を調整する。
【0066】
出射部180は、第1KTN結晶素子40により第1出射方向θx1が調整され、かつ第2KTN結晶素子70により第2出射方向θy1が調整された第1直線偏光L1と、第3KTN結晶素子140により第3出射方向θx2が調整され、かつ第4KTN結晶素子170により第4出射方向θy2が調整された第2直線偏光L2とを被加工物Wに出射する装置である。出射部180は、両凸レンズである集光レンズ181と、ガスノズル182とを有する。
【0067】
集光レンズ181は、第2KTN結晶素子70から出射されて平凹レンズ77を通過した第1直線偏光L1を集光し、第4KTN結晶素子170から出射されて平凹レンズ177を通過した第2直線偏光L2を集光するためのレンズである。ガスノズル182は、軸線Z1および軸線Z2と平行に延びる円錐台状の筒であり、集光レンズ181から被加工物Wに向けて噴射される窒素ガスが内部を流通する。ガスノズル182により被加工物Wに向けて窒素ガスを噴射することにより、レーザ光により溶融した被加工物Wを吹き飛ばすことができる。
【0068】
本実施形態のレーザ加工装置100Bによれば、直線偏光子20により軸線Z1とは異なる軸線X2に沿って出射された第2直線偏光L2は、反射光学系125により反射されて軸線Z2に沿って分岐半波長板127に導かれる。分岐半波長板127は、第2直線偏光L2の偏光方向を第2偏光方向から第1偏光方向に変え、第2直線偏光L2を第3KTN結晶素子140へ導く。第3KTN結晶素子140へ導かれた第2直線偏光L2は、第3KTN結晶素子140により軸線Z2に対する第3出射方向θx2が調整される。
【0069】
軸線Z2に対する第3出射方向θx2が調整された第2直線偏光L2は、半波長板160を通過する際に第1偏光方向と偏光方向が90度異なる第2偏光方向に変わり、第4KTN結晶素子170により軸線Z2に対する第4出射方向θy2が調整される。ここで、第1偏光方向と第2偏光方向は90度異なる方向であり、第3出射方向θx2と第4出射方向θy2も90度異なる方向である。本実施形態のレーザ加工装置100Bによれば、第2直線偏光L2の第3出射方向θx2と第4出射方向θy2とを調整することにより、レーザ光が2次元方向の任意の照射位置へ照射されるように調整することができる。
【0070】
〔第4実施形態〕
次に、本開示の第4実施形態に係るレーザ加工装置100Cについて、図面を参照して説明する。本実施形態は、第3実施形態の変形例であり、以下で特に説明する場合を除き、第3実施形態と同様であるものとし、以下での説明を省略する。図9は、本実施形態のレーザ加工装置100Cの概略構成を示す平面図である。図10は、図9に示す第2光学系OP2の部分拡大図である。
【0071】
本実施形態のレーザ加工装置100Cは、直線偏光子20を透過する第1直線偏光L1を被加工物Wへ導く第1光学系OP1と、直線偏光子20から出射される第2直線偏光L2を被加工物Wへ導く第2光学系OP2とを備える点で第3実施形態と共通している。
【0072】
一方、本実施形態のレーザ加工装置100Cは、分岐半波長板127を備えておらず、第3KTN結晶素子140Aおよび第4KTN結晶素子170Aの偏光方向が第3実施形態の第3KTN結晶素子140および第4KTN結晶素子170の偏光方向とは異なる。本実施形態の第3KTN結晶素子140Aには、第2偏光方向を有する第2直線偏光L2が入射する。
【0073】
図9に示す第3KTN結晶素子140Aは、第2偏光方向を有する第2直線偏光L2の出射方向を調整可能とするように配置されている。図10に示すように、第3KTN結晶素子140Aは、Y2-Z2平面に沿った第2偏光方向を有する第2直線偏光L2の軸線Z2に対する第3出射方向θy3を第3電圧印加部145により印加される電圧に応じて調整する。
【0074】
図9に示す第4KTN結晶素子170Aは、半波長板160を通過した第1偏光方向を有する第2直線偏光L2の出射方向を調整可能とするように配置されている。第4KTN結晶素子170Aには、半波長板160を通過した第2直線偏光L2が入射する。第4KTN結晶素子170は、X3-Z2平面に沿った第1偏光方向を有する第2直線偏光L2の軸線Z2に対する第4出射方向θx3を第4電圧印加部175により印加される電圧に応じて調整する。
【0075】
第4電圧印加部175は、第4KTN結晶素子170Aに電圧を印加する装置である。第4電圧印加部175は、第4KTN結晶素子170Aが第2直線偏光L2を出射する第4出射方向θx3を任意の角度に調整するように、第4KTN結晶素子170Aに印加する電圧を調整する。第4電圧印加部175は、制御部190から伝達される制御信号に応じて第4KTN結晶素子170Aに印加する電圧を調整する。
【0076】
本実施形態のレーザ加工装置100Cによれば、直線偏光子20により軸線Z1とは異なる軸線X2に沿って出射され、第2偏光方向を有する第2直線偏光L2は、反射光学系125により反射されて軸線Z2に沿って第3KTN結晶素子140Aへ導かれる。第3KTN結晶素子140Aへ導かれた第2直線偏光L2は、第3KTN結晶素子140Aにより軸線Z3に対する第3出射方向θy3が調整される。軸線Z2に対する第3出射方向θy3が調整された第2直線偏光L2は、半波長板160を通過する際に第2偏光方向と偏光方向が90度異なる第1偏光方向に変わり、第4KTN結晶素子170Aにより軸線Z3に対する第4出射方向θx3が調整される。ここで、第1偏光方向と第2偏光方向は90度異なる方向であり、第3出射方向と第4出射方向も90度異なる方向である。本実施形態のレーザ加工装置100Cによれば、第2直線偏光L2の第3出射方向θy3と第4出射方向θx3とを調整することにより、レーザ光が2次元方向の任意の照射位置へ照射されるように調整することができる。
【0077】
以上説明した本実施形態に記載のレーザ加工装置は、例えば以下のように把握される。
本開示に係るレーザ加工装置(100)は、被加工物(W)に向けてランダム偏光のレーザ光(L0)を第1軸線(Z1)に沿って照射する照射部(10)と、前記照射部により照射された前記レーザ光が入射されるとともに前記レーザ光の第1偏光方向の成分である第1直線偏光(L1)を前記第1軸線に沿って透過させる直線偏光子(20)と、前記直線偏光子を透過した前記第1直線偏光が入射するとともに前記第1直線偏光の前記第1軸線に対する第1出射方向(θx)を印加される電圧に応じて調整する第1結晶素子(40)と、前記第1結晶素子に電圧を印加する第1電圧印加部(45)と、前記第1結晶素子により前記第1出射方向が調整された前記第1直線偏光を前記被加工物に出射する出射部(80)と、を備える。
【0078】
本開示に係るレーザ加工装置によれば、照射部から照射されるランダム偏光のレーザ光が第1軸線に沿って直線偏光子に入射され、レーザ光の第1偏光方向の成分である第1直線偏光が直線偏光子を透過する。直線偏光子を透過した第1直線偏光は第1結晶素子に入射され、第1電圧印加部により印加される電圧に応じて第1軸線に対する第1出射方向が調整される。第1出射方向が調整された第1直線偏光は、出射部により被加工物に出射される。
【0079】
本開示に係るレーザ加工装置によれば、照射部から照射されるランダム偏光のレーザ光のうち第1偏光方向の成分である第1直線偏光が第1結晶素子に入射されるが、第1偏光方向とは異なる方向のレーザ光の成分は第1結晶素子に入射されない。第1偏光方向とは異なる方向のレーザ光の成分は、第1結晶素子による第1出射方向の調整ができない成分である。第1結晶素子に入射されるレーザ光を第1直線偏光に絞ることにより、第1結晶素子に入射されるレーザ光の光量を抑制し、第1結晶素子の温度上昇によるレーザ光の出射方向の変動を抑制することができる。
【0080】
本開示に係るレーザ加工装置において、前記第1結晶素子を通過した前記第1直線偏光の偏光方向を前記第1偏光方向と90度異なる第2偏光方向に変える第1半波長板(60)と、前記第1半波長板を通過した前記第1直線偏光が入射するとともに前記第1直線偏光の前記第1軸線に対する第2出射方向(θy)を印加される電圧に応じて調整する第2結晶素子(70)と、前記第2結晶素子に電圧を印加する第2電圧印加部(75)と、を備え、前記出射部は、前記第1結晶素子により前記第1出射方向が調整され、かつ前記第2結晶素子により前記第2出射方向が調整された前記第1直線偏光を前記被加工物に出射する構成としてもよい。
【0081】
本構成に係るレーザ加工装置によれば、第1結晶素子を通過した第1直線偏光は第1半波長板を通過する際に第1偏光方向と偏光方向が90度異なる第2偏光方向に変わり、第2偏光方向に偏光された第1直線偏光が第2結晶素子に入射される。第2結晶素子は、第2電圧印加部により印加される電圧に応じて第1軸線に対する第2出射方向を調整する。第2出射方向が調整された第1直線偏光は、出射部により被加工物に出射される。
【0082】
本構成に係るレーザ加工装置によれば、直線偏光子を透過した第1直線偏光は、第1結晶素子により第1軸線に対する第1出射方向が調整される。第1軸線に対する第1出射方向が調整された第1直線偏光は、第1半波長板を通過する際に第1偏光方向と偏光方向が90度異なる第2偏光方向に変わり、第2結晶素子により第1軸線に対する第2出射方向が調整される。ここで、第1偏光方向と第2偏光方向は90度異なる方向であり、第1出射方向と第2出射方向も90度異なる方向である。本構成のレーザ加工装置によれば、第1直線偏光の第1出射方向と第2出射方向とを調整することにより、レーザ光が2次元方向の任意の照射位置へ照射されるように調整することができる。
【0083】
上記構成に係るレーザ加工装置において、前記直線偏光子は、前記レーザ光の前記第2偏光方向の成分である第2直線偏光(L2)を前記第1軸線とは異なる第2軸線(X2)に沿って出射し、前記直線偏光子により出射された前記第2直線偏光を反射させて前記第1軸線と平行な方向に導き、前記第1直線偏光と合流させる合流光学系(90)と、前記合流光学系の光路上に配置されるとともに前記第2直線偏光の偏光方向を前記第2偏光方向から前記第1偏光方向に変える合流半波長板(95)と、を備える構成としてもよい。
【0084】
本構成に係るレーザ加工装置によれば、直線偏光子により第1軸線とは異なる第2軸線に沿って出射された第2直線偏光は、合流光学系により反射されて第1軸線と平行な方向に導かれ、第1直線偏光と合流する。第2直線偏光は、合流光学系を通過する際に合流半波長板により偏光方向が第2偏光方向から第1偏光方向に変えられる。直線偏光子を透過する第1直線偏光の偏光方向と、合流光学系により合流される第2直線偏光の偏光方向とは、第1偏光方向で一致する。そのため、照射部により照射されるランダム偏光のレーザ光のうち、第1偏光方向の成分である第1直線偏光と、第2偏光方向の成分である第2直線偏光の双方を、第1結晶素子が第1出射方向を調整可能な第1偏光方向の成分となる状態で第1結晶素子に導くことができる。
【0085】
上記構成に係るレーザ加工装置において、前記合流光学系は、前記合流半波長板により前記第1偏光方向に変えられた前記第2直線偏光を前記第1軸線と交差する方向から前記第1軸線と平行な方向に反射させる反射板(113a,113b,113c)を有し、前記反射板は、前記第1軸線から前記第1軸線に直交する方向にオフセットした位置に配置されている。
【0086】
本構成のレーザ加工装置によれば、反射板を第1軸線から第1軸線に直交する方向にオフセットした位置に配置することにより、直線偏光子を透過する第1直線偏光が反射板により遮られないようにすることができる。また、反射板により、第1軸線と交差する方向から第1軸線と平行な方向に第2直線偏光を反射させることにより、第2直線偏光を第1直線偏光に合流させた状態で第1結晶素子に導くことができる。
【0087】
上記構成に係るレーザ加工装置において、一対の前記反射板が前記第1軸線を挟んで配置されている構成としてもよい。
本構成に係るレーザ加工装置によれば、一対の反射板を第1軸線を挟んで配置することにより、直線偏光子を透過する第1直線偏光が反射板により遮られないようにすることができる。また、第2直線偏光の一部を一対の反射板の一方で反射させ、第2直線偏光の他の一部を一対の反射板の他方で反射させ、第2直線偏光を第1直線偏光に合流させた状態で第1結晶素子に導くことができる。
【0088】
上記構成に係るレーザ加工装置において、前記直線偏光子は、前記レーザ光の前記第2偏光方向の成分である第2直線偏光(L2)を前記第1軸線とは異なる第2軸線(X2)に沿って出射し、前記直線偏光子から出射される前記第2直線偏光が入射するとともに前記第2直線偏光を反射させて第3軸線(Z2)に沿って導く反射光学系(125)と、前記第3軸線に配置されるとともに前記第2直線偏光の偏光方向を前記第2偏光方向から前記第1偏光方向に変える分岐半波長板(127)と、前記分岐半波長板から導かれる前記第1偏光方向の前記第2直線偏光が入射するとともに前記第2直線偏光の前記第3軸線に対する第3出射方向(θx2)を印加される電圧に応じて調整する第3結晶素子(140)と、前記第3結晶素子に電圧を印加する第3電圧印加部(145)と、前記第3結晶素子を通過した前記第2直線偏光の偏光方向を前記第1偏光方向から前記第2偏光方向に変える第2半波長板(160)と、前記第3結晶素子を透過した前記第2直線偏光が入射するとともに前記第2直線偏光の前記第2軸線に対する第4出射方向(θy2)を印加される電圧に応じて調整する第4結晶素子(170)と、前記第4結晶素子に電圧を印加する第4電圧印加部(175)と、を備え、前記出射部は、前記第1結晶素子により前記第1出射方向が調整され、かつ前記第2結晶素子により前記第2出射方向が調整された前記第1直線偏光と、前記第3結晶素子により前記第3出射方向が調整され、かつ前記第4結晶素子により前記第4出射方向が調整された前記第2直線偏光とを、前記被加工物に出射する構成としてもよい。
【0089】
本構成に係るレーザ加工装置によれば、直線偏光子により第1軸線とは異なる第2軸線に沿って出射された第2直線偏光は、反射光学系により反射されて第3軸線に沿って分岐半波長板に導かれる。分岐半波長板は、第2直線偏光の偏光方向を第2偏光方向から第1偏光方向に変え、第2直線偏光を第3結晶素子へ導く。第3結晶素子へ導かれた第2直線偏光は、第3結晶素子により第3軸線に対する第3出射方向が調整される。第3軸線に対する第3出射方向が調整された第2直線偏光は、第2半波長板を通過する際に第1偏光方向と偏光方向が90度異なる第2偏光方向に変わり、第4結晶素子により第2軸線に対する第4出射方向が調整される。ここで、第1偏光方向と第2偏光方向は90度異なる方向であり、第3出射方向と第4出射方向も90度異なる方向である。本構成のレーザ加工装置によれば、第2直線偏光の第3出射方向と第4出射方向とを調整することにより、レーザ光が2次元方向の任意の照射位置へ照射されるように調整することができる。
【0090】
上記構成に係るレーザ加工装置において、前記直線偏光子は、前記レーザ光の前記第2偏光方向の成分である第2直線偏光(L2)を前記第1軸線とは異なる第2軸線(X2)に沿って出射し、前記直線偏光子から出射される前記第2直線偏光が入射するとともに前記第2直線偏光を反射させて第3軸線(Z2)に沿って導く反射光学系(125)と、前記反射光学系から出射される前記第2直線偏光が入射するとともに前記第2直線偏光の前記第3軸線(Z2)に対する第3出射方向(θy3)を印加される電圧に応じて調整する第3結晶素子(140)と、前記第3結晶素子に電圧を印加する第3電圧印加部(145)と、前記第3結晶素子を通過した前記第2直線偏光の偏光方向を前記第2偏光方向から前記第1偏光方向に変える第2半波長板(160)と、前記第2半波長板を透過した前記第2直線偏光が入射するとともに前記第2直線偏光の前記第3軸線に対する第4出射方向(θx3)を印加される電圧に応じて調整する第4結晶素子(170)と、前記第4結晶素子に電圧を印加する第4電圧印加部(175)と、を備え、前記出射部は、前記第1結晶素子により前記第1出射方向が調整され、かつ前記第2結晶素子により前記第2出射方向が調整された前記第1直線偏光と、前記第3結晶素子により前記第3出射方向が調整され、かつ前記第4結晶素子により前記第4出射方向が調整された前記第2直線偏光とを、前記被加工物に出射する構成としてもよい。
【0091】
本構成に係るレーザ加工装置によれば、直線偏光子により第1軸線とは異なる第2軸線に沿って出射され、レーザ光の第2偏光方向の成分である第2直線偏光は、反射光学系により反射されて第3軸線に沿って第3結晶素子へ導かれる。第3結晶素子へ導かれた第2直線偏光は、第3結晶素子により第3軸線に対する第3出射方向が調整される。第3軸線に対する第3出射方向が調整された第2直線偏光は、第2半波長板を通過する際に第2偏光方向と偏光方向が90度異なる第1偏光方向に変わり、第4結晶素子により第2軸線に対する第4出射方向が調整される。ここで、第1偏光方向と第2偏光方向は90度異なる方向であり、第3出射方向と第4出射方向も90度異なる方向である。本構成のレーザ加工装置によれば、第2直線偏光の第3出射方向と第4出射方向とを調整することにより、レーザ光が2次元方向の任意の照射位置へ照射されるように調整することができる。
【符号の説明】
【0092】
10 照射部
20 直線偏光子
30,130 縮小光学系
40 第1KTN結晶素子
45 第1電圧印加部
50,150 接続用光学系
60 半波長板(第1半波長板)
70 第2KTN結晶素子
75 第2電圧印加部
80,180 出射部
90,190 制御部
100,100A,100B,100C レーザ加工装置
113 合流機構
113a,113b,113c 反射板
120 合流半波長板
125 反射光学系
127 分岐半波長板
140,140A 第3KTN結晶素子
145 第3電圧印加部
160 半波長板(第2半波長板)
170,170A 第4KTN結晶素子
175 第4電圧印加部
L0 レーザ光
L1 第1直線偏光
L2,L2a,L2b 第2直線偏光
OP1 第1光学系
OP2 第2光学系
W 被加工物
Wb1,Wb2,Wb2a,Wb2b ビーム幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
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図10