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特開2022-108469母屋補強を兼ねる天井吊ボルト懸吊金具
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  • 特開-母屋補強を兼ねる天井吊ボルト懸吊金具 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022108469
(43)【公開日】2022-07-26
(54)【発明の名称】母屋補強を兼ねる天井吊ボルト懸吊金具
(51)【国際特許分類】
   E04B 9/18 20060101AFI20220719BHJP
【FI】
E04B9/18 B
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021003482
(22)【出願日】2021-01-13
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-09-01
(71)【出願人】
【識別番号】501039330
【氏名又は名称】旭ビルト工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】513099603
【氏名又は名称】兵庫県公立大学法人
(74)【代理人】
【識別番号】100119275
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 信明
(72)【発明者】
【氏名】阪口 正一
(72)【発明者】
【氏名】永野 康行
(57)【要約】
【課題】現場の施工性に優れ、耐用荷重が4,000N/本を超え、母屋の傾きに拘わらず天井吊ボルトを懸吊することができるとともに、母屋も補強する金具を提供する。
【解決手段】リップ溝形鋼の母屋に固着されて天井下地材を吊下する天井吊ボルトを懸吊する懸吊金具であって、前記懸吊金具は前記母屋の略垂直方向にその表面を被覆する矩形の懸吊金具本体を具え、該懸吊金具本体が該母屋の上部リップ部と下部リップ部とに固着されるとともに、該母屋の傾きに拘わらず前記天井吊ボルトの垂直性を保持する懸吊保持手段を具える、構成とした。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
母屋であるリップ溝形鋼に固着されて天井下地材を吊下する天井吊ボルトを懸吊する懸吊金具であって、
前記懸吊金具は前記母屋の略垂直方向にその表面を被覆する矩形の懸吊金具本体を具え、該懸吊金具本体が該母屋の上部リップ部と下部リップ部とに固着されるとともに、該母屋の傾きに拘わらず前記天井吊ボルトの垂直性を保持する懸吊保持手段を具える、ことを特徴とする母屋補強を兼ねる天井吊ボルト懸吊金具。
【請求項2】
前記懸吊保持手段は前記懸吊金具本体から外部に向けて突設した1対のブラケット板の間に回動自在に軸支された略U字状のスイング金具から前記天井吊ボルトが懸吊されることにより形成される、ことを特徴とする請求項1に記載の母屋補強を兼ねる天井吊ボルト懸吊金具。
【請求項3】
前記懸吊金具は前記懸吊金具本体に並行する前記母屋の裏面を被覆する矩形の懸吊金具副本体を具えるとともに該懸吊金具本体および該懸吊金具副本体は該母屋の下面を被覆する連結板で連結されて一体化され、
前記懸吊保持手段は前記懸吊金具副本体から外部に向けて突設した1対のブラケット板の間に回動自在に軸支された略U字状のスイング金具から前記天井吊ボルトが懸吊されることにより形成される、ことを特徴とする請求項1に記載の母屋補強を兼ねる天井吊ボルト懸吊金具。
【請求項4】
前記懸吊金具本体はその裏側に前記母屋の上部リップ部と下部リップ部とを挟持するリップ部挟持片を具え、該リップ部挟持片の幅は上部リップ部と下部リップ部との離間幅よりも狭く形成され、
所定の位置で前記リップ部挟持片のみが上部リップ部と下部リップ部の間に挿入された後に回動されて前記懸吊金具本体が前記母屋に仮止めされ、
その後に前記懸吊金具本体を上部リップ部と下部リップ部とに螺着して固着される、ことを特徴とする請求項2に記載の母屋補強を兼ねる天井吊ボルト懸吊金具。
【請求項5】
前記連結板にはビス孔が貫設され、
前記懸吊金具本体は所定の位置で前記母屋の下面と前記連結板をビス止めにより仮止めされ、
その後に前記懸吊金具本体を上部リップ部と下部リップ部と螺着して固着される、ことを特徴とする請求項3に記載の母屋補強を兼ねる天井吊ボルト懸吊金具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、母屋に固着されて軽鉄天井下地材を吊下する天井吊ボルトを懸吊する懸吊金具であって母屋の補強を兼ねる天井吊ボルト懸吊金具に関する。
【背景技術】
【0002】
勾配屋根のある体育館のような大空間の天井は、例えば、傾斜状に配置したH形鋼からなる合掌梁に、リップ溝形鋼(C形鋼)からなる母屋を一定間隔おきに配置し、その母屋に天井吊ボルトが連結金具を介して懸吊され、この天井吊ボルトによって軽鉄天井下地が水平に懸吊されて天井板が固着されている。この場合、斜めに傾斜状に配置されたH形鋼により母屋も設置方向に直交する方向に傾くことから、天井吊ボルトを懸吊するための連結金具もこの傾きに対応する必要がある。
【0003】
上記の傾きに対応する連結金具としては、例えば、特許文献1に開示の「天井吊ボルト連結金具」がある。この「天井吊ボルト連結金具」は「母屋等の屋根枠部材に迅速容易に取り付けできると共に、構造簡単にして製作が容易となり、しかも全ての屋根勾配に対応可能な天井吊ボルト連結金具を提供する」ことを課題とし、その解決手段を「天井吊ボルトを、C形鋼等の型材からなる母屋等の屋根枠部材に垂下連結するための連結金具であり、下側板部と、この下側板部に対し略L字状に延びる上側板部とからなる金具本体の下側板部には、屋根枠部材に掛嵌する略U字状の掛嵌部が当該上側板部の上端部を内側に折り返すことによって成され、下側板部には天井吊ボルト用ねじ孔が形成され、この下側板部と上側板部との間には、下側板部を上側板部に対し所要角度に折り曲げ可能にするための板幅狭部が設けられている」構成としている。
【0004】
一方で、地震による天井材の落下事故を防止するため、大空間の天井は構造体の動きに追随して崩壊することを防ぐため、周囲の壁や柱とは構造的に不連続となるように縁を切り、天井自体が構造体とは独立した挙動となるようにすることが求められている。そのため、天井吊ボルト間には所定間隔にブレースを架け渡して、天井下地自体を地震の揺れに同調して増幅することのない剛構造とする必要があるが、これに因り天井吊ボルトを吊るす金具には従来にはない耐力が要求されるとともに、母屋の補強も考慮する必要がある。出願人は天井工事の施工性を考慮して、天井吊ボルトの設置本数を、2mにつき1本とした場合に、母屋補強する機能を具える天井吊ボルト懸吊金具に要求される耐用荷重を4,000N/本と試算した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003-090100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示の「天井吊ボルト連結金具」は、地震時においては母屋を補強することは疎か金具自体の耐力が不足して、天井材の落下事故となるおそれが生ずる。
【0007】
そこで、本願発明が解決しようとする課題は、現場の施工性に優れ、耐用荷重が4,000N/本を超え、母屋の傾きに拘わらず天井吊ボルトを懸吊することができるとともに、母屋も補強する金具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を達成するために、本願請求項1に係る母屋補強を兼ねる天井吊ボルト懸吊金具は、母屋であるリップ溝形鋼に固着されて天井下地材を吊下する天井吊ボルトを懸吊する懸吊金具であって、前記懸吊金具は前記母屋の略垂直方向の表面を被覆する矩形の懸吊金具本体を具え、該懸吊金具本体が該母屋の上部リップ部と下部リップ部とに固着されるとともに、該母屋の傾きに拘わらず前記天井吊ボルトの垂直性を保持する懸吊保持手段を具える、ことを特徴としている。
なお、本願における「上部」、「下部」、「垂直方向」、「表面」及び「裏面」は、母屋を所定の位置に取り付けたときの概念であって、「母屋の垂直方向の表面」とはリップ部が形成されている面である。
また、本願請求項2に係る母屋補強を兼ねる天井吊ボルト懸吊金具は、請求項1に記載の母屋補強を兼ねる天井吊ボルト懸吊金具であって、前記懸吊保持手段は前記懸吊金具本体から外部に向けて突設した1対のブラケット板の間に回動自在に軸支された略U字状のスイング金具から前記天井吊ボルトが懸吊されることにより形成される、ことを特徴としている。
そして、本願請求項3に係る母屋補強を兼ねる天井吊ボルト懸吊金具は、請求項1に記載の母屋補強を兼ねる天井吊ボルト懸吊金具であって、前記懸吊金具は前記懸吊金具本体に並立する前記母屋の裏面を被覆する矩形の懸吊金具副本体を具えるとともに該懸吊金具本体および該懸吊金具副本体は該母屋の下面を被覆する連結板で連結されて一体化され、前記懸吊保持手段は前記懸吊金具副本体から外部に向けて突設した1対のブラケット板の間に回動自在に軸支された略U字状のスイング金具から前記天井吊ボルトが懸吊されることにより形成される、ことを特徴としている。
さらに、本願請求項4に係る母屋補強を兼ねる天井吊ボルト懸吊金具は、請求項2に記載の母屋補強を兼ねる天井吊ボルト懸吊金具であって、前記懸吊金具本体はその裏側に前記母屋の上部リップ部と下部リップ部とを挟持するリップ部挟持片を具え、該リップ部挟持片の幅は上部リップ部と下部リップ部との離間幅よりも狭く形成され、所定の位置で前記リップ部挟持片のみが上部リップ部と下部リップ部の間に挿入された後に回動されて前記懸吊金具本体が前記母屋に仮止めされ、その後に前記懸吊金具本体を上部リップ部と下部リップ部とに螺着して固着される、ことを特徴としている。
また、本願請求項5に係る母屋補強を兼ねる天井吊ボルト懸吊金具は、請求項3に記載の母屋補強を兼ねる天井吊ボルト懸吊金具であって、前記連結板にはビス孔が貫設され、前記懸吊金具本体は所定の位置で前記母屋の下面と前記連結板をビス止めにより仮止めされ、その後に前記懸吊金具本体を上部リップ部と下部リップ部と螺着して固着される、ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本願発明は上記の構成により以下の効果を奏する。
(1)本願発明に係る母屋補強を兼ねる天井吊ボルト懸吊金具は母屋の垂直方向の表面を被覆する矩形の懸吊金具本体が母屋の上部リップ部と下部リップ部とを固着するため、取り付け部分の断面がボックス型となって母屋を補強するとともに、天井吊ボルト懸吊金具自体の吊ボルトの吊下による引張力が増大する。また、母屋の傾きに拘わらず天井吊ボルトの垂直性を保持する懸吊保持手段を具えることから、天井吊ボルトに曲げ応力が働かず、本来の耐力を維持することができる。
(2)懸吊保持手段を懸吊金具本体から外部に向けて突設した1対のブラケット板の間に回動自在に軸支された略U字状のスイング金具から天井吊ボルトを懸吊することにより、天井吊ボルトは自動的に垂直性を保持する。また、1対のブラケット板が懸吊金具本体から外部に向けて突設しているため、母屋の表面の傾きが水平面に対して90°以下の角度となる場合に適した懸吊保持手段となる。
(3)1対のブラケット板を母屋の裏面を被覆する矩形の懸吊金具副本体から外部に向けて突設しているため、母屋の裏面の傾きが水平面に対して90°以下の角度となる場合に適した懸吊保持手段となる。
(4)所定の位置で懸吊金具本体のリップ部挟持片を横向けにして上部リップ部と下部リップ部との間に挿入した後に回動させることにより母屋に仮止めでき、その後に上部リップ部と下部リップ部とに螺着して固着することにより、母屋補強を兼ねる天井吊ボルト懸吊金具を正確な位置に簡単に固定することができるため、優れた施工性を有することになる。
(5)所定の位置で母屋の下面と連結板を下方向からビス止めにより仮止めした後に上部リップ部と下部リップ部とに螺着して固着することにより、母屋補強を兼ねる天井吊ボルト懸吊金具を正確な位置に簡単に固定することができ、優れた施工性を有することになる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施例1に係る母屋補強を兼ねる天井吊ボルト懸吊金具の側面図である。
図2図2は、実施例1に係る母屋補強を兼ねる天井吊ボルト懸吊金具の正面図である。
図3図3は、実施例2に係る母屋補強を兼ねる天井吊ボルト懸吊金具の側面図である。
図4図4は、実施例2に係る母屋補強を兼ねる天井吊ボルト懸吊金具の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を実施するための形態に係る実施例1および実施例2について、図1ないし図4に基づいて説明する。なお、図1ないし図4において、符号1は実施例1に係る母屋補強を兼ねる天井吊ボルト懸吊金具(以下、単に「天井吊ボルト懸吊金具」という。)、符号2は実施例2に係る天井吊ボルト懸吊金具、符号11は懸吊金具本体、符号13は懸吊金具副本体、符号15は連結板、符号17はリップ部挟持片、符号25はブラケット板、符号27はスイング金具、符号30は母屋、符号31は上部リップ部、符号33は下部リップ部、符号41は天井吊ボルト、である。
【実施例0012】
以下に述べる天井吊ボルト懸吊金具1および後述する天井吊ボルト懸吊金具2は、母屋30として縦100mm×横50mm×リップ幅20mm×板厚2.3mmのリップ溝形鋼に使用されることを想定している。
【0013】
天井吊ボルト懸吊金具1は、板厚が2.3mmの鋼製平板で形成されている。すなわち、天井吊ボルト懸吊金具1の主要部品の懸吊金具本体11は、その大きさが縦99mm×横60mmであり、懸吊金具本体11の上辺および下辺の中央部分の幅20mmに切込みが入れられて後方に折り曲げられ、さらに上部リップ部31および下部リップ33を挟むように上方向および下方向に折り返されてリップ部挟持片17が形成される。そして、懸吊金具本体11には、天井吊ボルト懸吊金具1を母屋30に取り付けたときに、上部リップ部31および下部リップ33に当接する位置にそれぞれ2箇所ずつのビス孔が貫設されている。なお、リップ部挟持片17は、ハット型に加工した帯板を懸吊金具本体11の裏面に添着して形成することもできる。
【0014】
懸吊保持手段は、懸吊金具本体11の両脇から外側に向けて90°折り曲げられた縦64mm×横41.6mmの1対のブラケット板25と、1対のブラケット板25間に回動自在に軸支されているU字状に折り曲げられたスイング金具27と、から形成されていて、懸吊金具本体11および1対のブラケット板25の下辺は同一レベルである。そして、スイング金具27の中央には約φ9mmの天井吊ボルト41に螺合するナットが固着されて天井吊ボルト螺入孔が形成され、スイング金具27に天井吊ボルト41を螺入することができるようになっている。
【0015】
つぎに、母屋30の表面の傾きが水平面に対して90°以下の角度となっている場合における天井吊ボルト41の取付作業の順序例について説明する。
(1)天井吊ボルト41の設置個所に天井吊ボルト懸吊金具1を横に向けて(リップ部挟持片17が水平方向に向くようにして)、リップ部挟持片17を上部リップ部31および下部リップ33の間に挿入した後、天井吊ボルト懸吊金具1を正規の向きとなるように回動する。これで天井吊ボルト懸吊金具1の仮止め作業は終了するが、天井吊ボルト懸吊金具1の位置がズレている場合には、天井吊ボルト懸吊金具1をスライドして正規の位置にすることができる。
(2)懸吊金具本体11に貫設されているビス孔にビスをねじ込むことにより、懸吊金具本体11は固定されるとともに、母屋30は補強されて天井吊ボルト懸吊金具1の取付作業は完了する。
(3)所定の位置に取り付けた天井吊ボルト懸吊金具1のスイング金具27の中央に貫設されている天井吊ボルト螺入孔に天井吊ボルト41を螺入させて、天井吊ボルト41を下から垂直方向に引っ張る。
以上により、天井吊ボルト41の取付作業は完了するが、上記(1)ないし(3)の作業は、すべて下方からできる。
【実施例0016】
つぎに、天井吊ボルト懸吊金具2について説明する。
【0017】
天井吊ボルト懸吊金具2も板厚が2.3mmの鋼製平板で形成されていて、天井吊ボルト懸吊金具2の主要部品の懸吊金具本体11は、その表面から見た大きさが縦99mm×横60mmの矩形であり、大きさが縦64mm×横60mmの懸吊金具副本体13が懸吊金具本体11に並立し、その下辺同士を連結板15が連結している。すなわち、懸吊金具本体11、懸吊金具副本体13および連結板15は略U字状となって1枚の平板を折り曲げて形成されている。そして、懸吊金具本体11には、天井吊ボルト懸吊金具2を母屋30に取り付けたときに、上部リップ部31および下部リップ33に当接する位置にそれぞれ2箇所ずつのビス孔が貫設されている。なお、実施例では懸吊金具本体11に上部リップ部31を挟持する挟持片31が形成されているが、必須のものではない。
【0018】
懸吊保持手段は、懸吊金具副本体13の両脇から外側に向けて90°折り曲げられた縦64mm×横41.6mmの1対のブラケット板25と、1対のブラケット板25の中心間に回動自在に軸支されているU字状に折り曲げられたスイング金具27と、から形成されていて、懸吊金具副本体13および1対のブラケット板25の縦の長さは同一である。そして、スイング金具27の中央には約φ9mmの天井吊ボルト41に螺合するナットが固着されて天井吊ボルト螺入孔が形成され、スイング金具27に天井吊ボルト41を螺入することができるようになっている。
【0019】
つぎに、母屋30の裏面の傾きが水平面に対して90°以下の角度となっている場合における天井吊ボルト41の取付作業の順序例について説明する。
(1)天井吊ボルト41の設置個所に懸吊金具副本体13が母屋30の裏面に当接するようにして、天井吊ボルト懸吊金具2を挿入し、連結板15のビス孔にビスをねじ込んで、天井吊ボルト懸吊金具2の仮止め作業は終了する。
(2)懸吊金具本体11に貫設されているビス孔にビスをねじ込むことにより、懸吊金具本体11は固定されるとともに、天井吊ボルト懸吊金具1の取付作業は完了する。
(3)所定の位置に取り付けた天井吊ボルト懸吊金具2のスイング金具27の中央に貫設されている天井吊ボルト螺入孔に天井吊ボルト41を螺入させて、天井吊ボルト41を下から垂直方向に引っ張る。
以上により、天井吊ボルト41の取付作業は完了するが、上記(1)ないし(3)の作業は、実施例1と同様にすべて下方からできる。
【0020】
ここで、天井吊ボルト懸吊金具1を縦100mm×横50mm×リップ幅20mm×板厚2.3mmの母屋(リップ溝形鋼)に取り付けた状態の実大試験を(一財)日本建築総合試験所で令和2年6月に行ったので、参考までにその概要を報告する。
(1)試験目的
本願発明に係る天井吊ボルト懸吊金具を母屋に取り付け、吊りボルト間にはブレースを架け渡し、このブレースに軸力が作用した場合に、天井吊ボルト懸吊金具と母屋が地震時の水平力に対して負担可能な強度を有することを確認する。
(2)本試験のパラメータは以下の通りである。
母屋:C-100×50×20×2。3
天井吊ボルト懸吊金具:天井吊ボルト懸吊金具1を使用
母屋の支持スパン:天井吊ボルト懸吊金具の強度確認用として400mm、母屋の強度確認用として3600mmの2種類
※屋根勾配が22°の場合、吊ボルトに対するブレースの角度は、吊り長さが1500mm以下を想定すると概ね30°から80°となる。このとき母屋の垂直軸(弱軸)に対するブレースの角度は概ね25°から70°となるため、5種類の角度(垂直軸に対して70°、50°、25°、45°、60°)で試験を行った。
試験は試験体の両端をM16ボルトで固定し、中央に設けたブレース材を電動アクチュエータにより引張載荷することにより行った。荷重値の検出には最大容量10kNのロードセルを用い、ブレース材の鉛直変形を変位計で測定した。載荷履歴は、電動アクチュエータの引張方向に単調漸増載荷とし、耐力が明瞭に低下するまで加力した。
(3)試験結果
すべての試験体は6,000N以上で破断したが、天井吊ボルト懸吊金具自体が破断したものは皆無であり、母屋材圧縮側の局部座屈、天井吊ボルト懸吊金具のビス止め位置での母屋材リップ部の破断、天井吊ボルト懸吊金具の止めビスの抜け落ち、であった。
(4)考察
実験結果から天井吊ボルト懸吊金具の耐力は十分であることが確認され、かつ、母材補強の効果が確認された。
【符号の説明】
【0021】
1 実施例1に係る母屋補強を兼ねる天井吊ボルト懸吊金具
2 実施例2に係る母屋補強を兼ねる天井吊ボルト懸吊金具
11 懸吊金具本体
13 吊金具副本体
15 連結板
17 リップ部挟持片
25 ブラケット板
27 スイング金具
30 母屋
31 上部リップ部
33 下部リップ部
41 天井吊ボルト
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2021-05-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
母屋であるリップ溝形鋼に固着されて天井下地材を吊下する天井吊ボルトを懸吊する懸吊金具であって、
前記懸吊金具は前記母屋の略垂直方向にその表面を被覆する矩形の懸吊金具本体を具え、該懸吊金具本体が該母屋の上部リップ部と下部リップ部とに固着されるとともに、該母屋の傾きに拘わらず前記天井吊ボルトの垂直性を保持する懸吊保持手段を具え、
前記懸吊保持手段は前記懸吊金具本体から外部に向けて突設した1対のブラケット板の間に回動自在に軸支された略U字状のスイング金具から前記天井吊ボルトが懸吊されることにより形成される、ことを特徴とする母屋補強を兼ねる天井吊ボルト懸吊金具。
【請求項2】
母屋であるリップ溝形鋼に固着されて天井下地材を吊下する天井吊ボルトを懸吊する懸吊金具であって、
前記懸吊金具は前記母屋の略垂直方向にその表面を被覆する矩形の懸吊金具本体を具え、該懸吊金具本体が該母屋の上部リップ部と下部リップ部とに固着されるとともに、該母屋の傾きに拘わらず前記天井吊ボルトの垂直性を保持する懸吊保持手段を具え、
前記懸吊金具は前記懸吊金具本体に並行する前記母屋の裏面を被覆する矩形の懸吊金具副本体を具えるとともに該懸吊金具本体および該懸吊金具副本体は該母屋の下面を被覆する連結板で連結されて一体化され、
前記懸吊保持手段は前記懸吊金具副本体から外部に向けて突設した1対のブラケット板の間に回動自在に軸支された略U字状のスイング金具から前記天井吊ボルトが懸吊されることにより形成される、ことを特徴とする母屋補強を兼ねる天井吊ボルト懸吊金具。
【請求項3】
前記懸吊金具本体はその裏側に前記母屋の上部リップ部と下部リップ部とを挟持するリップ部挟持片を具え、該リップ部挟持片の幅は上部リップ部と下部リップ部との離間幅よりも狭く形成され、
所定の位置で前記リップ部挟持片のみが上部リップ部と下部リップ部の間に挿入された後に回動されて前記懸吊金具本体が前記母屋に仮止めされ、
その後に前記懸吊金具本体を上部リップ部と下部リップ部とに螺着して固着される、ことを特徴とする請求項1に記載の母屋補強を兼ねる天井吊ボルト懸吊金具。
【請求項4】
前記連結板にはビス孔が貫設され、
前記懸吊金具本体は所定の位置で前記母屋の下面と前記連結板をビス止めにより仮止めされ、
その後に前記懸吊金具本体を上部リップ部と下部リップ部と螺着して固着される、ことを特徴とする請求項2に記載の母屋補強を兼ねる天井吊ボルト懸吊金具。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
上記課題を達成するために、本願請求項1に係る母屋補強を兼ねる天井吊ボルト懸吊金具は、母屋であるリップ溝形鋼に固着されて天井下地材を吊下する天井吊ボルトを懸吊する懸吊金具であって、前記懸吊金具は前記母屋の略垂直方向にその表面を被覆する矩形の懸吊金具本体を具え、該懸吊金具本体が該母屋の上部リップ部と下部リップ部とに固着されるとともに、該母屋の傾きに拘わらず前記天井吊ボルトの垂直性を保持する懸吊保持手段を具え、前記懸吊保持手段は前記懸吊金具本体から外部に向けて突設した1対のブラケット板の間に回動自在に軸支された略U字状のスイング金具から前記天井吊ボルトが懸吊されることにより形成される、ことを特徴としている。
なお、本願における「上部」、「下部」、「垂直方向」、「表面」及び「裏面」は、母屋を所定の位置に取り付けたときの概念であって、「母屋の垂直方向の表面」とはリップ部が形成されている面である。
また、本願請求項2に係る母屋補強を兼ねる天井吊ボルト懸吊金具は、母屋であるリップ溝形鋼に固着されて天井下地材を吊下する天井吊ボルトを懸吊する懸吊金具であって、前記懸吊金具は前記母屋の略垂直方向にその表面を被覆する矩形の懸吊金具本体を具え、該懸吊金具本体が該母屋の上部リップ部と下部リップ部とに固着されるとともに、該母屋の傾きに拘わらず前記天井吊ボルトの垂直性を保持する懸吊保持手段を具え、前記懸吊金具は前記懸吊金具本体に並行する前記母屋の裏面を被覆する矩形の懸吊金具副本体を具えるとともに該懸吊金具本体および該懸吊金具副本体は該母屋の下面を被覆する連結板で連結されて一体化され、前記懸吊保持手段は前記懸吊金具副本体から外部に向けて突設した1対のブラケット板の間に回動自在に軸支された略U字状のスイング金具から前記天井吊ボルトが懸吊されることにより形成される、ことを特徴としている。
そして、本願請求項3に係る母屋補強を兼ねる天井吊ボルト懸吊金具は、請求項1に記載の母屋補強を兼ねる天井吊ボルト懸吊金具であって、前記懸吊金具本体はその裏側に前記母屋の上部リップ部と下部リップ部とを挟持するリップ部挟持片を具え、該リップ部挟持片の幅は上部リップ部と下部リップ部との離間幅よりも狭く形成され、所定の位置で前記リップ部挟持片のみが上部リップ部と下部リップ部の間に挿入された後に回動されて前記懸吊金具本体が前記母屋に仮止めされ、その後に前記懸吊金具本体を上部リップ部と下部リップ部とに螺着して固着される、ことを特徴としている。
さらに、本願請求項4に係る母屋補強を兼ねる天井吊ボルト懸吊金具は、請求項2に記載の母屋補強を兼ねる天井吊ボルト懸吊金具であって、前記連結板にはビス孔が貫設され、前記懸吊金具本体は所定の位置で前記母屋の下面と前記連結板をビス止めにより仮止めされ、その後に前記懸吊金具本体を上部リップ部と下部リップ部と螺着して固着される、ことを特徴としている。