(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022108551
(43)【公開日】2022-07-26
(54)【発明の名称】治具
(51)【国際特許分類】
B29D 30/32 20060101AFI20220719BHJP
【FI】
B29D30/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021003604
(22)【出願日】2021-01-13
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】特許業務法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大牟田 拓也
【テーマコード(参考)】
4F215
【Fターム(参考)】
4F215AH20
4F215VA02
4F215VD12
4F215VK15
4F215VL13
4F215VP04
4F215VP24
(57)【要約】
【課題】ビードロックに対するリング部材の装着作業に要する手間を軽減することができる治具を提供する。
【解決手段】治具1は、伸縮性を有する材料からなる円環状のリング部材10を径方向に拡縮径するための治具であって、複数のセグメント2と、リング部材10の内径に比べて径が小さい第1円Q1上の第1位置P1と、第1円Q1と同心でリング部材10の内径に比べて径が大きい第2円Q2上の第2位置P2と、の間で、複数のセグメント2を径方向へ変位可能にそれぞれ支持する複数の支持部5と、複数の支持部5を連係し、複数のセグメント2を同一円周上に位置させるリンク機構3と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
伸縮性を有する材料からなる円環状のリング部材を径方向に拡径するための治具であって、
前記リング部材の内周に当接可能な複数のセグメントと、
前記リング部材の内径に比べて径が小さい第1の円上の第1位置と、前記第1の円と同心で前記リング部材の内径に比べて径が大きい第2の円上の第2位置と、の間で、複数の前記セグメントを径方向へ変位可能にそれぞれ支持する複数の支持部と、
複数の前記支持部を連係し、複数の前記セグメントを同一円周上に位置させるリンク機構と、
を備える、治具。
【請求項2】
前記セグメントは、
周方向について均等に配置されている、
請求項1に記載の治具。
【請求項3】
前記セグメントは、
前記リング部材の内周に当接する曲面状の当接面を有する、
請求項1または請求項2に記載の治具。
【請求項4】
円環状の本体フレームをさらに備え、
前記本体フレームは、当該本体フレームの軸方向に平行で、かつ周方向に間隔をあけて設けられる複数の支持軸を有し、
前記支持部は、
前記セグメントを揺動可能に支持し、かつ当該セグメントが前記第1位置と前記第2位置の間の範囲で変位するように、前記支持軸に対して揺動可能に支持される支持プレートを有し、
前記リンク機構は、
周方向において隣り合う前記支持部の前記支持プレート同士を接続する複数の接続部材を有する、
請求項1から請求項3の何れか一項に記載の治具。
【請求項5】
前記本体フレームは、フックを引っ掛けることが可能な掛止部を有する、
請求項4に記載の治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、治具に関する。
【背景技術】
【0002】
生タイヤ成形装置には、円筒状材料を成形するフォーマーと、ビードを保持するビードセットリングと、円筒状材料にビードを固定するリング状のビードロックと、を備えたものがある(例えば、下記の特許文献1)。
【0003】
ビードロックは、拡縮径可能な複数のリングセグメントを有している。ビードをビードロックに固定する際、ビードとビードロックとの間にはウレタン等の伸縮性のある材料で構成されたリング部材が配置される。リング部材は、ビードとビードロック(リングセグメント)が直接接触することを防止し、各リングセグメントの拡縮径時に、ビードに傷がつくことを抑制する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ビードロックに装着されるリング部材は、製造するタイヤの仕様に応じて交換する必要がある。このため、生タイヤ成形装置を用いる場合には、リング部材をビードロックに装着する作業が発生する。このリング部材の装着作業は、従来複数の作業者が手作業で行っている。具体的には、リング部材の装着作業では、複数の作業者がバール等の工具を用いて共同して作業を行い、ビードロックに外嵌できる大きさにリング部材を拡径している。リング部材を手作業で拡径する場合、周方向について当該リング部材を一様に拡径することが難しく、また、複数の作業者が共同して作業を行う必要がある。このため、従来リング部材の装着作業には、多大な手間を要している。
【0006】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、ビードロックに対するリング部材の装着作業に要する手間を軽減することができる治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る治具は、伸縮性を有する材料からなる円環状のリング部材を径方向に拡径するための治具であって、前記リング部材の内周に当接可能な複数のセグメントと、前記リング部材の内径に比べて径が小さい第1の円上の第1位置と、前記第1の円と同心で前記リング部材の内径に比べて径が大きい第2の円上の第2位置と、の間で、複数の前記セグメントを径方向へ変位可能にそれぞれ支持する複数の支持部と、複数の前記支持部を連係し、複数の前記セグメントを同一円周上に位置させるリンク機構と、を備える。
【0008】
好ましくは、この治具における前記セグメントは、周方向について均等に配置されている。
【0009】
好ましくは、この治具における前記セグメントは、前記リング部材の内周に当接する曲面状の当接面を有する。
【0010】
好ましくは、この治具は、円環状の本体フレームをさらに備え、前記本体フレームは、当該本体フレームの軸方向に平行で、かつ周方向に間隔をあけて設けられる複数の支持軸を有し、前記支持部は、前記セグメントを揺動可能に支持し、かつ当該セグメントが前記第1位置と前記第2位置に位置する範囲で変位するように、前記支持軸に対して揺動可能に支持される支持プレートを有し、前記リンク機構は、周方向において隣り合う前記支持部の前記支持プレート同士を接続する複数の接続部材を有する。
【0011】
好ましくは、この治具における前記本体フレームは、フックを引っ掛けることが可能な掛止部を有する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の治具によれば、ビードロックに対するリング部材の装着作業に要する手間を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係る治具を示す正面図である。
【
図4】操作部の操作によるセグメントの変位状態を示す部分拡大図である。
【
図5】治具におけるセグメントの変位及びリンク機構の動作の説明図である。
【
図6】治具におけるセグメントの変位及びリンク機構の動作を説明する側面視断面図である。
【
図7】ビードロックに対するリング部材の装着状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[リング部材]
本実施形態の治具1を用いる対象部材は、
図7上図に示すリング部材10である。リング部材10は、伸縮可能な材料により構成された円環状の部材であり、内孔11を有している。本実施形態のリング部材10はウレタン製である。リング部材10は、生タイヤ成形装置の一部を構成するビードロック12に装着される部材であり、拡径されていない状態では、内孔11の直径が直径D0となっている。本実施形態で示すビードロック12の直径(外径)は直径D3であり、その直径D3は内孔11の直径D1に比べて大きい(D3>D1)。
【0015】
[治具の全体構成]
図1及び
図2には、本発明の一実施形態に係る治具である治具1を示している。
図1及び
図2に示す治具1は、リング部材10(
図7参照)を拡径するための治具であり、複数のセグメント2と、リンク機構3と、円環状の本体フレーム4を備えている。なお、本説明では、本体フレーム4の中心軸Cの方向(
図2参照)を治具1の軸方向と定義し、その軸方向に直交する方向を治具1の径方向と定義する。
【0016】
[セグメント]
図1及び
図2に示すセグメント2は、治具1においてリング部材10(
図7参照)を装着する部位を構成する。セグメント2は、基部20と当接部21を備えている。基部20は、金属製のプレートにより構成されており、治具1の軸方向視において円弧状となる形状を有している。当接部21は、基部20の円弧形状に沿って基部20から軸方向一側に突設される部位である。セグメント2では、当接部21の径方向外側に形成された凸曲面を、リング部材10と当接する当接面21aとしている。当接面21aは、リング部材10の内孔11の内周形状に沿う円弧形状を有しており、内孔11の内周部に対して面接触する。
【0017】
基部20には、軸孔20aが形成されている。軸孔20aには、後で説明する支持プレート50の軸部51d,52dが挿入される。そして、セグメント2は、軸部51d,52dによって、支持プレート50に対して揺動可能な状態で支持される。
【0018】
図1に示すように、治具1では、各セグメント2が同一円周上に配置されている。なお、本実施形態では、6個のセグメント2を備えた治具1を例示しているが、治具1におけるセグメント2の個数はこれに限定されず、2個以上であればよい。
【0019】
[リンク機構]
図1に示すリンク機構3は、同一円周上に配置された複数のセグメント2を、同一円周上に位置させつつ径方向に変位させるための機構であり、複数の支持部5と複数の接続部材6を備えている。また、治具1の骨格を構成する本体フレーム4も、リンク機構3の一部を構成している。
【0020】
[本体フレーム]
図3には、本体フレーム4単体の形態を示している。
図3に示す本体フレーム4は、円環状の板材で構成されている。本実施形態の本体フレーム4は金属製である。本体フレーム4には、軸方向の一側に突出する複数の支持軸40が設けられている。支持軸40は、治具1の中心線Cの軸心を中心とする同一円周上に、周方向に等間隔で配置されている。本実施形態の本体フレーム4では、6個の支持軸40が、同一円周上で周方向において60°ずつ角度が異なる位置に設けられている。
【0021】
本体フレーム4には、フックを引っ掛けることが可能な掛止部41が設けられている。本実施形態の掛止部41は、本体フレーム4より径方向外側に突出して設けられた丸環(アイボルト)により構成されている。また、本体フレーム4には、後で説明する操作部7を配置するためのステー42が設けられている。ステー42は、本体フレーム4より径方向外側に突出して設けられている。
【0022】
[支持部]
図1に示すように、治具1は6組の支持部5を備えている。支持部5は、セグメント2を径方向に変位可能に支持する部位である。本説明では、治具1における6組の各支持部5を、それぞれ周方向の並び位置に応じて、第1支持部5A、第2支持部5B、第3支持部5C、第4支持部5D、第5支持部5E、第6支持部5Fと称して区別する。なお、以下の説明で単に「支持部5」という場合には、支持部5の並び位置を考慮せずに、各支持部5A~5Fに共通する構成を説明している。
【0023】
図1及び
図2に示すように、支持部5は、支持プレート50を備えている。支持プレート50は、支持軸40によって揺動可能に支持されている。
【0024】
[支持プレート]
図1に示すように、治具1を構成する各支持プレート50は、それぞれ形状が異なる第1プレート51と第2プレート52を含んでいる。治具1では、第6支持部5Fのみが、第2プレート52を有しており、その他5箇所の各支持部5A~5Eは、第1プレート51を有している。
【0025】
第1プレート51は、治具1の軸方向視において略L字状の形態を有する部材であり、略L字の谷部近傍に軸孔51aが形成されている。第1プレート51は、軸孔51aに支持軸40が挿入されることで、本体フレーム4に対して揺動可能に支持されている。また、第1プレート51は、軸孔51aから径方向内側に向かって延びる第1腕部51bと、軸孔51aから径方向外側に向かって延びる略扇形形状の第2腕部51cと、を有している。
【0026】
第1腕部51bには、径方向内側の端部に軸部51dが設けられている。軸部51dは、セグメント2の軸孔20aに挿入されており、当該セグメント2を揺動可能に支持している。軸部51dは、第1プレート51が支持軸40回りに回動することで、径方向への移動を伴って変位する。
【0027】
第2腕部51cには、径方向外側における周方向の一側と他側の端部に、一対の軸部51e,51fが設けられている。各軸部51e,51fは、第1プレート51が支持軸40回りに回動することで、周方向への移動を伴って変位する。各軸部51e,51fは、後で説明する接続部材6をそれぞれ揺動可能に支持している。
【0028】
第2プレート52は、治具1の軸方向視において略V字状の形態を有する部材であり、略V字の谷部近傍に軸孔52aが形成されている。第2プレート52は、軸孔52aに支持軸40が挿入されており、本体フレーム4に対して揺動可能に支持されている。また、第2プレート52は、軸孔52aから径方向内側に向かって延びる第1腕部52bと、軸孔52aから径方向外側に向かって延びる第2腕部52cと、を有している。
【0029】
第1腕部52bの径方向内側の端部には、軸部52dが設けられている。軸部52dは、セグメント2の軸孔20aに挿入されており、当該セグメント2を揺動可能に支持している。軸部52dは、第2プレート52が支持軸40回りに回動することで、径方向への移動を伴って変位する。
【0030】
また、第2腕部52cの径方向外側の端部には、軸部52eが設けられている。軸部52eは、後で説明する接続部材6を揺動可能に支持している。軸部52eは、第2プレート52が支持軸40回りに回動することで、周方向への移動を伴って変位する。
【0031】
以上説明した各支持プレート50(第1プレート51及び第2プレート52)は、支持軸40回りに揺動することで、第2腕部51c,52cの周方向への変位を、第1腕部51b、52bの径方向への変位に変換する。
【0032】
[接続部材]
図1に示すように、接続部材6は、周方向に隣り合う二つの支持プレート50,50同士を接続する部材である。接続部材6は、棒状の本体部6aと、本体部6aの両端に形成された一対の軸孔6b,6bを有している。
【0033】
周方向に隣り合う第1支持部5Aと第2支持部5Bは、接続部材6によって接続されて、リンク機構3の一部を構成している。具体的には、接続部材6は、第1支持部5Aの軸部51fが一側の軸孔6bに挿入され、かつ、第2支持部5Bの軸部51eが他側の軸孔6bに挿入されることで、第1支持部5Aと第2支持部5Bの各支持プレート50(第1プレート51)を接続する。
【0034】
また、周方向に隣り合う第2支持部5Bと第3支持部5Cは、接続部材6によって接続されて、リンク機構3の一部を構成している。具体的には、接続部材6は、第2支持部5Bの軸部51fが一側の軸孔6bに挿入され、かつ、第3支持部5Cの軸部51eが他側の軸孔6bに挿入されることで、第2支持部5Bと第3支持部5Cの各支持プレート50(第1プレート51)を接続する。
【0035】
また、周方向に隣り合う第3支持部5Cと第4支持部5Dは、接続部材6によって接続されて、リンク機構3の一部を構成している。具体的には、接続部材6は、第3支持部5Cの軸部51fが一側の軸孔6bに挿入され、かつ、第4支持部5Dの軸部51eが他側の軸孔6bに挿入されることで、第3支持部5Cと第4支持部5Dの各支持プレート50(第1プレート51)を接続する。
【0036】
また、周方向に隣り合う第4支持部5Dと第5支持部5Eは、接続部材6によって接続されて、リンク機構3の一部を構成している。具体的には、接続部材6は、第4支持部5Dの軸部51fが一側の軸孔6bに挿入され、かつ、第5支持部5Eの軸部51eが他側の軸孔6bに挿入されることで、第4支持部5Dと第5支持部5Eの各支持プレート50(第1プレート51)を接続する。
【0037】
また、周方向に隣り合う第5支持部5Eと第6支持部5Fは、接続部材6によって接続されて、リンク機構3の一部を構成している。具体的には、接続部材6は、第5支持部5Eの軸部51fが一側の軸孔6bに挿入され、かつ、第6支持部5Fの軸部52eが他側の軸孔6bに挿入されることで、第5支持部5Eと第6支持部5Fの各支持プレート50(第1プレート51と第2プレート52)を接続する。
【0038】
治具1では、第1支持部5Aから第6支持部5Fまでの周方向に隣り合う各支持プレート50,50をそれぞれ接続部材6で接続することによって、略円環状である一連のリンク機構3が構成されている。なお、リンク機構3では、第6支持部5Fと第1支持部5Aは隣り合っているが、接続部材6で接続されていない。第1支持部5Aには、後で説明するリンク機構3の操作部7が接続されている。
【0039】
[リンク機構]
図1に示す治具1では、本体フレーム4と接続部材6で接続された二つの各支持プレート50,50は、支持軸40の軸中心から各軸部51d,52dまでの距離が同じであり、接続部材6の長さも同じである。このため、接続部材6で接続された二つの各支持プレート50,50は、一方の支持プレート50が支持軸40回りに揺動するときに他方の支持プレート50が決まった動きをする「1自由度のてこクランク機構」を構成している。
【0040】
リンク機構3では、何れか1個の支持プレート50が支持軸40回りに揺動するとき、接続部材6によって互いに接続されたその他の(5個の)各支持プレート50が同じ角度で支持軸40回りに揺動される。このため、治具1では、各支持プレート50の軸部51d、52dの径方向の位置を常に揃えること(つまり、同一円周状に位置させること)ができ、これにより、各支持プレート50に支持されている各セグメント2の径方向の位置を揃えることができる。
【0041】
以上説明したように、治具1では、リンク機構3によって、複数のセグメント2を同一円周状に位置させつつ、径方向に変位させることができる。
【0042】
[操作部]
図1及び
図4に示すように、治具1は、操作部7を備えている。操作部7は、作業者がリンク機構3を操作するための部位である。本実施形態の操作部7では、作業者の操作によって第1支持部5Aの支持プレート50を揺動させることができる。なお、本実施形態の治具1における操作部7は、第1支持部5A以外の他の各支持部5における支持プレート50を揺動させることができるように構成されたものであってもよい。
【0043】
操作部7は、棒状の本体部70を備えている。本体部70の一端部には、軸孔71が形成されている。また、本体部70の他端部には、第1ナット72と第2ナット73を螺合させることが可能なねじ部74が形成されている。
【0044】
本体フレーム4には、本体部70を案内するためのサポート部材43が設けられている。サポート部材43には、本体部70を挿入可能な軸孔43aが形成されている。サポート部材43は、ステー42に設けられた回転軸42aで支持されており、本体フレーム4に対して回転軸42a回りに回転可能とされている。本体部70は、軸孔43aに挿入され、軸孔43aの軸方向に変位可能とされている。
【0045】
本体部70は、ねじ部74が存在する位置までサポート部材43の軸孔43aに挿入されている。そして、軸孔43aに挿入されているねじ部74には、軸方向一方側のサポート部材43の端部に第1ナット72が配置され、軸方向他方側の端部に第2ナット73が配置されている。つまり、サポート部材43は、各ナット72,73により挟まれた状態となっている。このような構成により、第1ナット72と第2ナット73の螺合位置を変更することで、軸孔43aの軸方向についてサポート部材43に対する本体部70の位置を変更することができる。
【0046】
軸孔71には、第1支持部5Aの軸部51eが挿入されている。これにより、操作部7が、第1支持部5Aに接続される。そして、治具1では、操作部7においてサポート部材43と第1支持部5の間に位置している部分の本体部70の長さを変更することで、第1支持部5Aの支持プレート50を揺動させることができる。
【0047】
具体的には、治具1では、作業者が、操作部7の第1ナット72と第2ナット73を締めたり緩めたりして、ねじ部74に対する各ナット72,73の螺合位置を変更する。これにより、サポート部材43と第1支持部5の間に位置している部分の本体部70の長さが変更され、第1支持部5Aの支持プレート50が揺動される。そして、リンク機構3で接続された各セグメント2が、治具1の径方向へ変位される。
【0048】
[セグメントの変位]
図5左図には、各セグメント2が、最も径方向内側の第1位置P1に変位された状態の治具1を示している。第1位置P1に位置している各セグメント2は、軸方向から見て当接面21aが第1円Q1上に位置している。このときの第1円Q1の直径D1は、リング部材10の内孔11の直径D0以下の寸法である(D1≦D0)。
【0049】
図5右図には、各セグメント2が、最も径方向外側の第2位置P2に変位された状態の治具1を示している。第2位置P2に位置している各セグメント2は、当接面21aの周方向における中央の位置(当接面21aの頂点)が軸方向から見て第2円Q2に接している。このときの第2円Q2の直径D2は、リング部材10の内孔11の直径D0に比べて大きい寸法である(D2>D0)。
【0050】
このように、治具1では、各第1腕部51b,52bに設けられた各セグメント2が、径方向内側の第1位置P1から径方向外側の第2位置P2の間の範囲で変位するように、各支持プレート50を各支持軸40回りに揺動可能としている。
【0051】
以上説明したように、治具1は、円環状の本体フレーム4を備えている。本体フレーム4は、当該本体フレーム4の軸方向に平行で、かつ周方向に間隔をあけて設けられる複数の支持軸40を有している。支持部5は、セグメント2を揺動可能に支持し、かつ当該セグメント2が第1位置P1と第2位置P2の間の範囲で変位するように、支持軸40に対して揺動可能に支持される支持プレート50を有している。リンク機構3は、周方向において隣り合う支持部5,5の支持プレート50,50同士を接続する複数の接続部材6を有している。このような構成により、リンク機構3によって複数のセグメント2を径方向に変位させ、周方向についてリング部材10を一様に拡径することが可能な治具1を構成することができる。
【0052】
このような治具1を用いてリング部材10を拡径するとき、リング部材10は、各セグメント2が第1位置P1に位置し、当接面21aが軸方向視において第1円Q1上に位置している状態とした治具1に対して、内孔11に各セグメント2の当接面21aを宛がうようにして配置される。この状態で、リング部材10の内孔11は直径D1となっている。このときの直径D1は、リング部材10が拡径されていない状態の内孔11の直径D0にほぼ等しい(D0≒D1)。そして、操作部7を操作し、各セグメント2を第2位置P2に変位させることで、内径11が直径D2となる状態にリング部材10を拡径することができる。なお、この状態の治具1では、軸方向視における当接面21aの周方向の中央が、第2円Q2に接している。
【0053】
第2円Q2の直径D2は、ビードロック12の直径D3に比べて大きい寸法であり(D2>D3)、内孔11が直径D2に拡径されている状態では、内孔11にビードロック12を挿入することができる。
【0054】
また、第2位置P2に変位している各セグメント2は、周方向に均等に配置されており、かつ軸方向視における当接面21aの周方向の中央が第2円Q2に接している状態であるため、リング部材10を周方向について一様に拡径させることができる。
【0055】
このように、治具1では、セグメント2が周方向について均等に配置されている。このため、治具1を用いれば、リング部材10を周方向について一様に拡径することができる。治具1を用いた場合、リング部材10は、拡径された後も内孔11の形状が円形に維持され、内孔11に対するビードロック12の挿入が容易になる。また、治具1におけるセグメント2は、リング部材10の内周に当接する曲面状の当接面21aを有しているため、セグメント2の押圧力が内孔11の内周部で1点に集中して作用することがなく、リング部材10が一様に拡径された後も、内孔11が確実に略円形に維持される。
【0056】
[治具の使用方法]
ここでは、
図1に示す治具1を用いてリング部材10を拡径し、
図7に示すビードロック12にリング部材10を装着する場合の、治具1の使用方法を説明する。
【0057】
まず初めに、
図5左図及び
図6左図に示すように、操作部7の第1ナット72と第2ナット73の螺合位置を変更し、各セグメント2を第1位置P1に配置しておく。この状態では、各セグメント2の当接面21aは軸方向視で第1円Q1上に位置している。そして、作業者は、この状態で治具1に対してリング部材10を配置する。具体的には、各セグメント2の当接面21aに内孔11の内周を宛がうようにして、リング部材10を治具1に装着する。このとき、リング部材10の内孔11の直径は、直径D0に略等しい直径D1となっている。このリング部材10を治具1に装着する作業は、一人の作業者で行うことができる。
【0058】
次に、
図5右図及び
図6右図に示すように、操作部7の第1ナット72と第2ナット73の螺合位置を変更し、各セグメント2を第2位置P2に変位させる。この状態では、各セグメント2の当接面21aは、軸方向視における周方向の中央が第2円Q2に接している。そして、各セグメント2が変位する際、各当接面21aが、内孔11の内周部を径方向外側へ押圧する。つまり、治具1では、セグメント2を径方向外側に変位させて、当接面21aで内孔11の内周面を径方向外側へ押圧してリング部材10を拡径する。このとき、リング部材10の内孔11の直径は、ビードロック12の直径D3よりも大きい直径D2となっている。
【0059】
各セグメント2は、各支持プレート50の軸部51d、52dに対して揺動可能に支持されている。このため、各支持プレート50が拡径方向へ揺動し、各第1腕部51b,52bの角度が支持軸40回りに変化することに伴って、内孔11の内周形状に各当接面21aが沿うように、各軸部51d、52d回りに各セグメント2が揺動される。これにより、内孔11の内周部を各セグメント2が押圧する向きを、確実に半径方向外側とすることができる。
【0060】
操作部7の第1ナット72及び第2ナット73の螺合位置を変更する操作は、例えば、電動レンチ等の電動工具を用いて行うことができる。このため、治具1を用いたリング部材10の装着作業では、リング部材10を拡径する作業において、複数の作業者がバール等の工具を用いて共同して作業を行う必要がなく、一人の作業者が電動工具を用いて第1ナット72を締め付けるだけでよい。つまり、治具1を用いてリング部材10を拡径する作業を行うことで、作業者の負担を軽減することができる。
【0061】
次に、治具1の掛止部41にホイスト等の設備の吊りフックを引っ掛けて吊り上げ、リング部材10を装着する位置(本実施形態ではビードロック12(
図7参照))まで搬送する。そして、拡径された状態のリング部材10の内孔11に、ビードロック12を挿入する。なお、治具1の掛止部41にホイスト等の設備の吊りフックを作業開始前から予め引っ掛けておいて、ホイスト等の設備で治具1を吊り上げた状態で、リング部材10の装着作業を行ってもよい。
【0062】
このように、治具1の本体フレーム4は、フックを引っ掛けることが可能な掛止部41を有している。このような構成の治具1によれば、ホイスト等を用いて治具1を吊り上げるとともに、治具1を所望の位置まで容易に移動させることができる。このため、治具1をビードロック12に運搬する作業を最小限の人数で容易に行うことが可能となる。
【0063】
次に、
図5左図及び
図6左図に示すように、操作部7の第1ナット72及び第2ナット73の螺合位置を変更して、各支持プレート50を縮径方向に揺動させ、各セグメント2を第1位置P1に変位させる。このとき、各当接面21aが軸方向視で第1円Q1上に位置する位置に各セグメント2が配置される。またこのとき、内孔11が直径D0に近づくように縮径され、リング部材10がビードロック12の外周に嵌めつけられる。そして、リング部材10がビードロック12の外周に装着された後で、内孔11から治具1を取り外す。このリング部材10から治具1を取り外す作業は、一人の作業者で行うことができる。以上で、ビードロック12に対するリング部材10の装着作業が完了する。
【0064】
なお、以上に説明したリング部材10の装着手順と逆の手順とすれば、ビードロック12に装着されているリング部材10を、治具1を用いて取り外すことも可能である。
【0065】
以上説明したように、治具1は、伸縮性を有する材料からなる円環状のリング部材10を径方向に拡縮径するための治具である。治具1は、複数のセグメント2と、リング部材10の内径に比べて径が小さい第1円Q1上の第1位置P1と、第1円Q1と同心でリング部材10の内径に比べて径が大きい第2円Q2上の第2位置P2と、の間で、複数のセグメント2を径方向へ変位可能にそれぞれ支持する複数の支持部5と、複数の支持部5を連係し、複数のセグメント2を同一円周上に位置させるリンク機構3と、を備えている。
【0066】
このような構成の治具1によれば、ビードロック12に対するリング部材10の装着作業に要する手間を軽減することができる。また、治具1を用いることで、リング部材10の装着作業を最小限の人数で行うことが可能となる。
【0067】
以上のとおり開示した実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。つまり、本発明の治具は、図示する形態に限らず本発明の範囲内において他の形態のものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0068】
以上説明された治具は、タイヤの製造装置に係るビードロックに装着されるリング部材を拡径する用途だけでなく、それ以外の用途に用いられる伸縮性を有する材料からなるリング状の部材を拡径する用途にも適用されうる。
【符号の説明】
【0069】
1・・・治具
2・・・セグメント
3・・・リンク機構
4・・・本体フレーム
5・・・支持部
6・・・接続部材
10・・・リング部材
21・・・当接部
40・・・支持軸
41・・・掛止部
50・・・支持プレート
P1・・・第1位置
P2・・・第2位置