(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022108565
(43)【公開日】2022-07-26
(54)【発明の名称】複合管
(51)【国際特許分類】
F16L 11/11 20060101AFI20220719BHJP
【FI】
F16L11/11
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021003634
(22)【出願日】2021-01-13
(71)【出願人】
【識別番号】000128968
【氏名又は名称】株式会社オンダ製作所
(71)【出願人】
【識別番号】591265611
【氏名又は名称】株式会社プラ技研
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】菊澤 良治
(72)【発明者】
【氏名】深尾 洋一
【テーマコード(参考)】
3H111
【Fターム(参考)】
3H111AA02
3H111BA15
3H111CA43
3H111CB04
3H111CB14
3H111CB23
3H111EA04
(57)【要約】
【課題】コルゲート管を構成する基管と被覆層との密着度合を高めることができる。
【解決手段】複合管10は、管体11と、管体11の外周を覆うコルゲート管12と、を備える。コルゲート管12は、樹脂材料で構成された基管20と、樹脂材料で構成され、基管20の外周面を被覆する被覆層30とを有する。基管20は、山部と、山部よりも外径の小さい谷部とが基管20の軸線方向において交互に設けられた蛇腹状である。山部21は、山部21と隣り合う2つの谷部を接続する溝部23を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管体と、
前記管体の外周を覆うコルゲート管と、を備え、
前記コルゲート管は、樹脂材料で構成された基管と、樹脂材料で構成され、前記基管の外周面を被覆する被覆層と、を有し、
前記基管は、山部と、前記山部よりも外径の小さい谷部とが前記基管の軸線方向において交互に設けられた蛇腹状であり、
前記山部は、前記山部と隣り合う2つの谷部を接続する溝部を有する、
複合管。
【請求項2】
前記溝部は、前記山部において前記基管の周方向に互いに間隔をおいて複数設けられている、
請求項1に記載の複合管。
【請求項3】
複数の前記溝部は、前記山部において前記周方向において等間隔にて設けられている、
請求項2に記載の複合管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合管に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、管体と、管体の外周を覆うコルゲート管とを備える複合管がある。コルゲート管は、樹脂材料で構成された基管と、樹脂材料で構成され、基管の外周面を被覆する被覆層とを有している。
【0003】
例えば特許文献1には、こうした複合管及びその製造方法が開示されている。
特許文献1に記載の複合管は、管体と、基管としての中間層との間に設けられ、管体と中間層との接着を抑制するフィルム層を有している。
【0004】
特許文献1に記載の複合管の製造方法は、管体の外周にフィルム層を被せる被せ工程と、フィルム層の外周に、中間層と被覆層とを押出成形する形成工程とを有している。
押出工程では、管体の外周に被せられたフィルム層の外周に対して、第1のダイから、中間層形成用の溶融された樹脂材料が円筒状に押し出されて被覆されることで第1の樹脂材が形成される。また、第1の樹脂材の外周には、第2のダイから、被覆層形成用の溶融された樹脂材料が円筒状に押し出されて被覆されることで第2の樹脂材が形成される。管体、フィルム層、及び第1、第2の樹脂材で構成される管状押出体が形成された後、第2のダイの下流側に配置された波付け金型で波付け工程が行われる。
【0005】
波付け工程では、山部と谷部とが軸線方向に沿って交互に配列された蛇腹状の被覆層及び中間層が成形される。
波付け金型よりも上流側に第2のダイを配置することが難しい場合がある。この場合、波付け金型の下流側において、基管(中間層)の外周に対して被覆層を形成する製造方法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、こうした従来の複合管においては、コルゲート管を構成する基管と被覆層との密着度合の更なる向上が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための複合管は、管体と、前記管体の外周を覆うコルゲート管と、を備え、前記コルゲート管は、樹脂材料で構成された基管と、樹脂材料で構成され、前記基管の外周面を被覆する被覆層と、を有し、前記基管は、山部と、前記山部よりも外径の小さい谷部とが前記基管の軸線方向において交互に設けられた蛇腹状であり、前記山部は、前記山部と隣り合う2つの谷部を接続する溝部を有する。
【0009】
同構成によれば、基管の山部に上記溝部が設けられているため、被覆層は、基管に対し、基管の周方向において機械的に結合しやすくなる。すなわち、基管と被覆層との間には、基管の周方向に対してアンカー効果が発揮されやすくなる。したがって、コルゲート管を構成する基管と被覆層との密着度合を高めることができる。
【0010】
上記複合管において、前記溝部は、前記山部において前記基管の周方向に互いに間隔をおいて複数設けられていることが好ましい。
同構成によれば、基管の山部に複数の溝部が上記態様にて設けられているため、被覆層は、基管に対して周方向において一層機械的に結合しやすくなる。したがって、基管と被覆層との密着度合が一層向上する。
【0011】
上記複合管において、複数の前記溝部は、前記山部において前記周方向において等間隔にて設けられていることが好ましい。
同構成によれば、基管の山部に複数の溝部が上記態様にて設けられているため、基管と被覆層との密着度合が周方向においてばらつくことを抑制できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、コルゲート管を構成する基管と被覆層との密着度合を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図5】同実施形態の複合管の製造装置を示す概略図。
【
図6】同実施形態のコルゲータの金型の成形面を示す平面図。
【
図7】コルゲータ内を通過する基管を示す半断面図。
【
図8】基管の外周面に被覆層が形成される様子を示す半断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、
図1~
図8を参照して、一実施形態について説明する。
まず、複合管10の構成について説明する。
図1~
図4に示すように、複合管10は、管体11と、管体11の外周を覆うコルゲート管12とを備える。
【0015】
管体11は、樹脂材料により構成されている。
管体11を構成する樹脂材料としては、例えば、ポリブデン、ポリエチレン、架橋ポリエチレン、及びポリプロピレン等のポリオレフィン、並びに塩化ビニル等が挙げられる。上記樹脂材料は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、管体11を構成する樹脂材料には、他の添加剤が含有されていてもよい。
【0016】
本実施形態の管体11は、架橋ポリエチレン製である。
コルゲート管12は、樹脂材料で構成された基管20と、樹脂材料で構成され、基管20の外周面を被覆する被覆層30とを有している。
【0017】
基管20は、山部21と、山部21よりも外径の小さい谷部22とが基管20の軸線方向において交互に設けられた蛇腹状である。
山部21は、山部21と隣り合う2つの谷部22を接続する溝部23を有している。
【0018】
溝部23は、山部21において基管20の周方向に互いに間隔をおいて複数(本実施形態では6つ)設けられている。複数の溝部23は、山部21において周方向において等間隔にて設けられている。
【0019】
図4に示すように、溝部23は、断面V字状である。溝部23の底面は、谷部22の底面よりも径方向の外側に位置している。
基管20を構成する樹脂材料としては、例えばポリウレタン、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びエチレンプロピレンジエンゴム、並びにこれらの混合物が挙げられる。なお、上記樹脂材料には、他の添加剤が含有されていてもよい。
【0020】
基管20は、発泡体であることが好ましい。
本実施形態の基管20は、独立気泡の発泡ポリエチレン製である。
図3に示すように、谷部22の隅部と被覆層30との間には、空気層Sが形成されている。
【0021】
被覆層30を構成する樹脂材料としては、例えばポリブデン、ポリエチレン、架橋ポリエチレン、及びポリプロピレン等のポリオレフィン、並びに塩化ビニル等が挙げられる。上記樹脂材料は1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、被覆層30を構成する樹脂材料には、他の添加物が含有されていてもよい。
【0022】
本実施形態の被覆層30は、ポリエチレン製である。
管体11と基管20との間には、隙間が形成されている。例えば、管体11の呼び径が13Aである場合、管体11と基管20との間の隙間の大きさは、1.25mm~1.75mmであることが好ましい。本実施形態では、上記隙間の大きさが1.5mmである。
【0023】
次に、複合管10の製造装置40について説明する。
図5に示すように、製造装置40は、同図の左側から右側へ向けて管体11を移動させつつ管体11の外周にコルゲート管12を形成することで複合管10を製造する。以下、管体11の移動方向を移動方向Aとする。
【0024】
製造装置40は、押出機41、ダイ41A、繰り出し機46、押出機42、ダイ42A、コルゲータ44、押出機43、ダイ43A、冷却槽45、及び引き取り機47を移動方向Aにおいて上流側から順に備えている。なお、押出機41は、ダイ41Aの上方に配置されている。押出機42は、ダイ42Aの上方に配置されている。また、押出機43は、ダイ43Aの上方に配置されている。
【0025】
繰り出し機46は、管体11を移動方向Aに沿って下流側に繰り出す。
押出機41は、ダイ41Aに向けて接着抑制剤を押し出す。ダイ41Aは、管体11がダイ41Aを通過する際に、接着抑制剤を管体11の外周面に付与する。接着抑制剤は、管体11の外周面に基管20が接着することを抑制するものであり、例えばシリコーンオイルである。なお、接着抑制剤を省略することもできる。
【0026】
押出機42は、ダイ42Aに向けて基管20形成用の溶融状態の樹脂材料を押し出す。この樹脂材料には、樹脂材料の発泡反応を促進する発泡剤が注入または混練されている。発泡剤としては、化学発泡剤を用いてもよいし、物理発泡剤を用いてもよい。あるいは、発泡剤として、化学発泡剤及び物理発泡剤を併用してもよい。ダイ42Aは、管体11がダイ42Aを通過する際に、上記樹脂材料を、管体11の外周に円筒状に押し出す。これにより、管体11の外周を覆う樹脂材20Aが形成される。
【0027】
図6に示すように、コルゲータ44は、左右に2つに分割して構成された金型49を備えている。なお、同図では、一方の金型49の成形面50を示している。図示は省略するが、コルゲータ44は、左右両側においてそれぞれ設けられた循環経路に沿って並設された複数の金型49を備えている。コルゲータ44は、管体11の移動に同期して複数の金型49を循環させる。
【0028】
成形面50は、断面半円弧状である。成形面50には、基管20の山部21を成形する半円環状の凹部51と、谷部22を成形する半円環状の凸部52とが軸線方向において交互に設けられている。
【0029】
凹部51には、溝部23を成形する3つの突部53が周方向において互いに間隔をおいて設けられている。突部53は、金型49の成形面50において型割面以外の部分に設けられている。
【0030】
凹部51には、図示しない吸引装置により凹部51内の空気を吸引する吸引溝54が設けられている。
コルゲータ44は、左右2つの金型49を互いに接近させるとともに、成形面50を樹脂材20Aに接触させる。金型49は、成形面50により樹脂材20Aを圧縮しつつ樹脂材20Aを成形するとともに、金型49を循環させることで樹脂材20A及び管体11を移動方向Aの下流側へ移動させる。
【0031】
このとき、
図7に矢印にて示すように、吸引装置により吸引溝54を通じて金型49の凹部51内の空気を吸引することで、金型49の凹部51内は負圧とされる。これにより、樹脂材20Aは、径方向の外側へ向かって変形するとともに、凹部51によって成形される。そして、山部21と谷部22とが軸線方向において交互に設けられた蛇腹状の基管20が成形される。
【0032】
図5及び
図8に示すように、押出機43は、ダイ43Aに向けて被覆層30形成用の溶融状態の樹脂材料を押し出す。ダイ43Aは、基管20及び管体11がダイ43Aを通過する際に、上記樹脂材料を、基管20の外周に円筒状に押し出す。これにより、基管20の外周を覆う樹脂材30Aが形成される。
【0033】
このとき、
図8に矢印にて示すように、ダイ43Aに設けられた図示しない吸引装置により、樹脂材30Aと基管20との間の空気を吸引する。これにより、樹脂材30Aは、径方向の内側へ向かって変形するとともに、基管20の山部21及び谷部22に密着する。これにより、基管20の外周面を被覆する被覆層30が形成される。すなわち、コルゲート管12が形成される。
【0034】
図5に示すように、コルゲート管12及び管体11は、冷却槽45を通過する際に、冷却される。これにより、コルゲート管12を構成する基管20及び被覆層30が硬化する。これにより、複合管10が形成される。
【0035】
なお、複合管10は、引き取り機47によって引き取られるとともに、図示しない巻き取り機により巻き取られる。
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0036】
基管20の山部21に上記溝部23が設けられているため、被覆層30は、基管20に対し、基管20の周方向において機械的に結合しやすくなる。すなわち、基管20と被覆層30との間には、基管20の周方向に対してアンカー効果が発揮されやすくなる(以上、作用1)。
【0037】
押出機43から円筒状に押し出された被覆層30形成用の樹脂材30Aと基管20との間から空気を吸引する際に、基管20の谷部22に存在する空気が山部21の溝部23を通じて吸引されやすくなる(以上、作用2)。
【0038】
次に、本実施形態の効果について説明する。
(1)山部21は、山部21と隣り合う2つの谷部22を接続する溝部23を有する。
こうした構成によれば、上記作用1を奏することから、基管20と被覆層30との密着度合が向上する。
【0039】
(2)溝部23は、山部21において基管20の周方向に互いに間隔をおいて複数設けられている。
こうした構成によれば、基管20の山部21に複数の溝部23が上記態様にて設けられているため、被覆層30は、基管20に対して周方向において一層機械的に結合しやすくなる。したがって、基管20と被覆層30との密着度合が一層向上する。
【0040】
(3)複数の溝部23は、山部21において周方向において等間隔にて設けられている。
こうした構成によれば、基管20の山部21に複数の溝部23が上記態様にて設けられているため、基管20と被覆層30との密着度合が周方向においてばらつくことを抑制できる。
【0041】
(4)谷部22の隅部と被覆層30との間には、空気層Sが形成されている。こうした空気層Sを有することにより、コルゲート管12による断熱効果を高めることができる。
(5)上記作用2を奏することから、基管20に対して被覆層30を密着させることができる。
【0042】
また、溝部23の数や大きさ、径方向における溝部23の底面の位置を変更することによって、谷部22に存在する空気の吸引されやすさを変更することができる。
例えば、溝部23の底面の位置が径方向の外側であるほど、樹脂材30Aと基管20との間から空気を吸引する際に、基管20の谷部22に存在する空気が溝部23を通じて吸引されにくくなる。このため、谷部22の隅部と被覆層30との間に空気層Sが形成されやすくなる。このように、基管20と被覆層30との密着度合を容易に変更することができる。
【0043】
(6)溝部23を成形する突部53は、金型49の成形面50において型割面以外の部分に設けられている。
こうした構成によれば、左右一対の金型49を互いに離して基管20から離型させる際に、溝部23が金型49に干渉すること、所謂無理抜きになることを抑制できる。
【0044】
(7)管体11と基管20との間には、隙間が形成されている。
こうした構成によれば、製造後の複合管10において、コルゲート管12に対する管体11の抜き差しが容易となる。
【0045】
<変更例>
上記実施形態は、例えば以下のように変更して実施することもできる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0046】
・谷部22の隅部において被覆層30を密着させることで、空気層Sを形成しないようにすることもできる。
・溝部23の底面の径方向における位置を適宜変更することができる。例えば、溝部23の底面を、径方向において谷部22の底面と同一の位置に設定することもできるし、谷部22の底面よりも径方向の内側に設定することもできる。
【0047】
・複数の溝部23は、周方向において不等間隔にて設けられるものであってもよい。
・溝部23は、周方向において1つ以上あればよい。
・本発明に係る複合管10の製造方法は、上記実施形態において例示した方法に限定されない。例えば、特許文献1に記載の複合管10と同様な製造方法、すなわち、コルゲータ44の上流側において、基管20形成用の樹脂材料を押し出すとともに被覆層30形成用の樹脂材料を押し出すものであってもよい。この場合であっても、上記実施形態の効果(1)に準じた効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0048】
10…複合管
11…管体
12…コルゲート管
20…基管
20A…樹脂材
21…山部
22…谷部
23…溝部
30…被覆層
40…製造装置
41…押出機
41A…ダイ
42…押出機
42A…ダイ
43…押出機
43A…ダイ
44…コルゲータ
45…冷却槽
46…繰り出し機
47…引き取り機
49…金型
50…成形面
51…凹部
52…凸部
53…突部
54…吸引溝
S…空気層