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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022108567
(43)【公開日】2022-07-26
(54)【発明の名称】工具本体
(51)【国際特許分類】
   B23B 27/16 20060101AFI20220719BHJP
   B23B 27/04 20060101ALI20220719BHJP
【FI】
B23B27/16 A
B23B27/04
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021003636
(22)【出願日】2021-01-13
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】000221144
【氏名又は名称】株式会社タンガロイ
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】加藤 巽
(72)【発明者】
【氏名】佐治 龍一
【テーマコード(参考)】
3C046
【Fターム(参考)】
3C046AA00
3C046EE09
(57)【要約】
【課題】切削インサートを交換しやすい工具本体を提供する。
【解決手段】交換可能な切削インサート2を固定する工具本体3は、工具本体3の第1面421に設けられたインサート取付座5と、インサート取付座5に載置された切削インサート2を拘束するクランプ部材6と、該クランプ部材6を操作する操作部材7と、を備えている。操作部材7は、第1面421から該第1面421とは反対側にある工具本体3の第2面422への向きにクランプ部材6を下降させることができ、かつ第2面422から第1面421への向きにクランプ部材6を上昇させることができる。クランプ部材6は、該クランプ部材6が下降した状態で切削インサート2の取付孔29の内周面に形成された縮径部292に当接するフック部61を有している。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
交換可能な切削インサートを固定する工具本体であって、
前記工具本体の第1面に設けられたインサート取付座と、
前記インサート取付座に載置された前記切削インサートを拘束するクランプ部材と、
前記第1面から該第1面とは反対側にある前記工具本体の第2面への向きに前記クランプ部材を下降させることができ、かつ前記第2面から前記第1面への向きに前記クランプ部材を上昇させることができる操作部材と、を備え、
前記クランプ部材は、該クランプ部材が下降した状態で前記切削インサートの取付孔の内周面に形成された縮径部に当接するフック部を有している、
工具本体。
【請求項2】
前記操作部材の少なくとも一部は、前記第2面側に露出している、
請求項1に記載の工具本体。
【請求項3】
前記クランプ部材は、該クランプ部材が前記切削インサートを拘束した状態において、該切削インサートの底面よりも前記第1面側に位置した突出部分と、前記底面よりも前記第2面側に位置した埋設部分と、を含み、
前記突出部分には、前記フック部が設けられ、
前記埋設部分には、前記第1面側から見たとき前記フック部とは反対側に向かって突出したテール部が設けられ、
前記インサート取付座は、前記埋設部分を収容するポケットを有し、該ポケットには、前記テール部を支持する傾斜面が形成されている、
請求項1又は2に記載の工具本体。
【請求項4】
前記テール部は、前記傾斜面に支持される部位において、円柱面の一部又は球面の一部で構成されている、
請求項3に記載の工具本体。
【請求項5】
前記クランプ部材には、前記切削インサートの前記取付孔の中心軸と平行な軸線を有するめねじが形成され、
前記操作部材には、前記めねじに螺合するおねじが形成されている、
請求項1から4のいずれか一項に記載の工具本体。
【請求項6】
前記操作部材は、前記おねじが形成された軸部と、該軸部の一端に設けられ、かつ該軸部よりも拡径に形成された頭部と、を有し、
前記軸部の外縁と前記頭部の外縁とを繋ぐ前記頭部の座面は、円錐状又は半球状に形成され、
前記第2面には、前記頭部の座面に倣う形状の凹部が形成されている、
請求項5に記載の工具本体。
【請求項7】
前記フック部は、中央部と、該中央部を挟んで互いに反対側に位置する第1端部及び第2端部と、を有し、前記中央部が前記切削インサートに当接しない一方、前記第1端部及び前記第2端部が前記切削インサートに当接する、
請求項1から6のいずれか一項に記載の工具本体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交換可能な切削インサートを固定する工具本体に関する。
【背景技術】
【0002】
旋削工具は、交換可能な切削インサートと、該切削インサートを固定する工具本体と、を備えている。切削インサートは、一方の端面から他方の端面に挿通されたクランプねじ等により工具本体のインサート取付座に固定される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2016/186113号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
切削インサートをクランプねじにより固定する場合、切削インサートが受ける切削抵抗の向きによっては右ねじではなく左ねじを使うことがある。例えば、特許文献1に記載の切削インサートを自動旋盤のくし形刃物台に取り付けて溝入れ加工に用いる場合、右ねじで固定すると切削抵抗でねじが緩むおそれがあるため、左ねじで固定することがある。製造現場において右ねじと左ねじとが混在していると、ねじが締まる向きか緩む向きか使用の都度確認することになり、作業者の手間が増える。
【0005】
また、くし形刃物台に旋削工具が取り付けられた状態において、他の旋削工具や機械の内壁が障害物になり、作業者がインサート取付座に対向する向きからクランプねじを抜き取りにくいことがある。機械の内壁とインサート取付座との隙間が極めて狭い場合、くし形刃物台から旋削工具を取り外し、切削インサートを交換してから旋削工具をくし形刃物台に取り付けていた。あるいは、頭部だけでなく軸部の先端にもレンチ穴が形成されたクランプねじを用いて、インサート取付座がある側面とは反対側の側面に露出した軸部をレンチで回して切削インサートを交換していた。
【0006】
後者の場合、インサート取付座とは反対側からクランプねじを取り外すことができるので、工具本体をくし形刃物台から取り外さなくても切削インサートを交換できる利点がある。反面、後者の場合には、切削インサートを工具本体から取り外す際に使用済みの切削インサートとともにクランプねじをくし形刃物台の下にある機内の切りくずを処理・廃棄する箇所に落として紛失してしまうことがある。
【0007】
そこで、本発明は、切削インサートを交換しやすい工具本体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る工具本体は、交換可能な切削インサートを固定する工具本体であって、工具本体の第1面に設けられたインサート取付座と、インサート取付座に載置された切削インサートを拘束するクランプ部材と、該クランプ部材を操作する操作部材と、を備えている。操作部材は、第1面から該第1面とは反対側にある前記工具本体の第2面への向きにクランプ部材を下降させることができ、かつ第2面から第1面への向きにクランプ部材を上昇させることができる。クランプ部材は、該クランプ部材が下降した状態で切削インサートの取付孔の内周面に形成された縮径部に当接するフック部を有している。
【0009】
この態様によれば、クランプ部材を上昇させてフック部と切削インサートとに隙間をあければ、切削インサートを取り外すことができる。切削インサートの交換のたびにクランプ部材をインサート取付座から完全に抜き取ってしまう必要がないため、切削インサートの交換作業でクランプ部材が脱落することを未然に防ぐことができる。そのため、切削インサートを交換しやすい工具本体を提供することができる。
【0010】
上記態様において、操作部材の少なくとも一部は、第2面側に露出していてもよい。
【0011】
この態様によれば、インサート取付座とは反対側の第2面側から操作して切削インサートを交換できる。インサート取付座に手が届きにくい壁際等であっても切削インサートを交換しやすい工具本体を提供することができる。
【0012】
上記態様において、クランプ部材は、該クランプ部材が切削インサートを拘束した状態において、該切削インサートの底面よりも第1面側に位置した突出部分と、底面よりも第2面側に位置した埋設部分と、を含み、突出部分には、フック部が設けられ、埋設部分には、第1面側から見たときフック部とは反対側に向かって突出したテール部が設けられ、インサート取付座は、埋設部分を収容するポケットを有し、該ポケットには、テール部を支持する傾斜面が形成されていてもよい。
【0013】
この態様によれば、クランプ部材を下降させたとき、該クランプ部材が僅かに弾性変形してテール部を支点にフック部が回動する。フック部と切削インサートとの当接が安定するため、工具本体が切削インサートをより確実に拘束できるようになる。
【0014】
上記態様において、テール部は、傾斜面に支持される部位において、円柱面の一部又は球面の一部で構成されていてもよい。
【0015】
この態様によれば、テール部の下面と傾斜面とが点接触するため、支点の位置が安定する。フック部が設計どおりに安定して切削インサートに当接するため、工具本体が切削インサートをより確実に拘束できるようになる。
【0016】
上記態様において、クランプ部材には、切削インサートの取付孔の中心軸と平行な軸線を有するめねじが形成され、操作部材には、めねじに螺合するおねじが形成されいてもよい。
【0017】
この態様によれば、おねじとめねじとの簡素な構成でクランプ部材を昇降させる操作部材を構成できる。おねじで直に切削インサートを固定するのではなく、クランプ部材を介して固定するため、切削抵抗の向きに左右されずにねじの向きを選択できる。
【0018】
上記態様において、操作部材は、おねじが形成された軸部と、該軸部の一端に設けられ、かつ該軸部よりも拡径に形成された頭部と、を有し、軸部の外縁と頭部の外縁とを繋ぐ頭部の座面は、円錐状又は半球状に形成され、第2面には、頭部の座面に倣う形状の凹部が形成されていてもよい。
【0019】
この態様によれば、ねじ部材である操作部材を締めるに従ってねじの頭部が凹部に案内され、ねじの軸部がインサート取付座に対して位置決めされる。そのため、操作部材に連結されているクランプ部材と、インサート取付座に載置されている切削インサートとを位置決めしやすい。
【0020】
上記態様において、フック部は、中央部と、該中央部を挟んで互いに反対側に位置する第1端部及び第2端部と、を有し、中央部が切削インサートに当接しない一方、第1端部及び第2端部が切削インサートに当接してもよい。
【0021】
フック部の先端の形状や切削インサートの取付孔の形状には、公差として許された僅かなばらつきがある。この態様によれば、フック部や取付孔の形状に少々ばらつきがあっても、フック部が縮径部の内周面に確実に二点で当接するため、クランプ部材による切削インサートの拘束が安定する。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、切削インサートを交換しやすい工具本体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る旋削工具の一例を示す斜視図である。
図2図2は、図1に示された旋削工具を分解して示す斜視図である。
図3図3は、図1に示された先端部を拡大して示す斜視図である。
図4図4は、図3に示された先端部をクランプ部材の対称面で切断した断面図である。
図5図5は、図4に示されたクランプ部材をフック部側から見た斜視図である。
図6図6は、図4に示されたクランプ部材をテール部側から見た斜視図である。
図7図7は、図4に示されたクランプ部材を第1面側から見た平面図である。
図8図8は、拘束を緩めて切削インサートを取り外した状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、各図において、同一の符号を付したものは、同一又は同様の構成を有する。以下、図面を参照して各構成について詳しく説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る旋削工具1の一例を示す斜視図である。旋削工具1は、交換可能な切削インサート2と、切削インサート2を固定する工具本体3と、を備えている。図示した例では、旋削工具1が、くし形刃物台に固定される自動旋盤用の溝入れ工具として構成されている。
【0025】
図2は、図1に示された旋削工具1を分解して示す斜視図である。図2に示すように、工具本体3は、ホルダ4と、該ホルダ4に取り付けられたクランプ部材6及び操作部材7と、を備えている。ホルダ4は、基端41Eから該基端41Eとは反対側の先端42Eまで延在する棒状に形成されている。
【0026】
先端42E及びその近傍の部分を含むホルダ4の先端部42には、切削インサート2を載置するインサート取付座5が設けられている。先端部42よりも基端41E側は、工作機械に固定可能なシャンクとして構成されている。インサート取付座5は、後述する切削インサート2の底面(例えば、第2端面22)に当接して切削インサート2を拘束する着座面52と、後述する切削インサート2の周側面23に当接して切削インサート2を拘束する壁面53と、を有している。
【0027】
図3は、図1に示された先端部42を拡大して示す斜視図である。図3に示すように、先端部42は、先端面425と、該先端面425に臨む第1乃至第4面421,422,423,424と、を有している。前述したホルダ4の先端42Eは、先端面425上に位置している。前述したインサート取付座5は、第1面421に設けられている。第2面422は、第1面421とは反対側に位置している。第3及び第4面423,424は、第1面421と第2面422との間を繋いでいる。
【0028】
以下の説明において、ホルダ4の高さ方向Dhにおける第1面421から第2面422への向きを下向きと呼び、高さ方向Dhにおける第2面422から第1面421への向きを上向きと呼ぶことがある。ホルダ4の高さ方向(上下方向)Dhは、先端部42の第1面421と第2面422とを結ぶ方向であり、ホルダ4の基端41Eと先端42Eとを結ぶホルダ4の長手方向DLに必ずしも直交していなくてよい。
【0029】
図3に示すように、クランプ部材6は、インサート取付座5に載置された切削インサート2を拘束する。切削インサート2は、第1端面21と、第1端面21とは反対側の第2端面22と、第1端面21及び第2端面22を繋ぐ周側面23と、第1端面21及び第2端面22を貫通する取付孔29と、を有している。周側面23は、被削物を切削する切れ刃24と、該切れ刃24に臨むすくい面25及び逃げ面26と、を含んでいる。
【0030】
第2端面22の少なくとも一部は、インサート取付座5の着座面52に支持される底面として構成されている。図示した例では、第1端面21と第2端面22とが略同一の形状を有している。そのため、切削インサート2を上下反転させて第1端面21を底面にしてインサート取付座5に切削インサート2を装着できる。
【0031】
図示した例では、周側面23が取付孔29の中心軸Zに対して180度対称に形成されている。周側面23は、第2端面22を底面にしてインサート取付座5に切削インサート2を装着する際に使用可能な二つの切れ刃24と、第1端面21を底面にしてインサート取付座5に切削インサート2を装着する際に使用可能な二つの切れ刃24と、合計四つ(図8参照)の切れ刃24を含んでいる。
【0032】
図4は、図3に示された先端部をクランプ部材6の対称面で切断した断面図である。断面の位置を図3中にIV-IV線で示す。図4に示すように、切削インサート2の取付孔29の内周面は、拡径部291と、該拡径部291よりも内径が小さい縮径部292と、を有している。図示した例では、第1端面21及び第2端面22の各々に拡径部291が形成され、第1端面21及び第2端面22の中間部に縮径部292が形成されている。
【0033】
クランプ部材6は、縮径部292に当接するフック部61と、インサート取付座5に当接するテール部62と、を有している。図5は、図4に示されたクランプ部材6をフック部61側から見た斜視図である。図5に示すように、クランプ部材6は、ホルダ4の高さ方向Dhに延在する円柱状の胴部60を有している。前述したフック部61及びテール部62は、胴部60に設けられている。
【0034】
図6は、図4に示されたクランプ部材6をテール部62側から見た斜視図である。図示した例では、胴部60の底面にめねじ(ねじ穴)67が形成されている。めねじ67は、その軸線が切削インサート2の取付孔29の中心軸Z(図4に示す)と平行になるように形成されている。図6に示すように、テール部62の下面622は、下方へ膨らむように緩やかに湾曲している。図示した例では、下面622が、クランプ部材6の対称面に垂直な中心軸を有し、曲率円の半径が大きい円柱面の一部で構成されている。下面622を曲率円の半径が大きい球面の一部で構成してもよい。
【0035】
図7は、図4に示されたクランプ部材6をホルダ4の先端部42の第1面421側から見た平面図である。図7に示すように、第1面421側から見たとき、つまり上方から見たとき、テール部62はフック部61とは反対側に向かって突出している。フック部61の先端は、中央部613と、該中央部613を挟んで互いに反対側に位置する第1及び第2端部611,612と、を有している。
【0036】
フック部61は、中央部613が切削インサート2に当接しない一方、第1及び第2端部(両端部)611,612が切削インサートの縮径部292に当接するように、第1及び第2端部611,612が角張って形成されている。詳しく述べると、第1面421側から見たフック部61の先端の外形は、第1及び2端部611,612に挟まれた中央部613が後述する胴部60の突出部分601よりも曲率円の半径が大きい円弧状に形成され、第1及び第2端部611,612の各々が突出部分601よりも曲率円の半径が小さい円弧状に形成されている。
【0037】
再び図4を参照して操作部材7について説明する。操作部材7は、ホルダ4の高さ方向Dhにおいて第1面421から第2面422への向きにクランプ部材6を下降させたり、第2面422から第1面421への向きにクランプ部材6を上昇させたりすることができる。図示した例では、操作部材7が、おねじが形成された軸部72と、軸部72の一端に設けられ、かつ軸部72よりも拡径の頭部71と、を有するねじ部材として構成されている。軸部72のおねじは、クランプ部材6のめねじ67に螺合するように形成されている。
【0038】
なお、操作部材7は、クランプ部材6に螺合するねじ部材に限定されない。クランプ部材6を昇降させることができれば、ウォームギアであってもよいし、他の伝達機構であってもよい。図示した例では、ねじ部材において、軸部72の外縁と頭部71の外縁とを繋ぐ頭部71の座面が円錐状に形成されている。座面の形状は、半球状であってもよい。ホルダ4の第2面422には、頭部71の座面に倣う形状の凹部58が形成されている。
【0039】
前述したフック部61は、クランプ部材6が下降した状態で切削インサート2の取付孔29の内部に形成された縮径部292に当接し、クランプ部材6が上昇した状態で縮径部292から離間する。前述した胴部60は、クランプ部材6が切削インサート2を拘束した状態において、切削インサート2の底面(図示した例では第2端面22)よりも第1面421側に位置した突出部分601と、底面よりも第2面422側に位置した埋設部分602と、を含んでいる。
【0040】
フック部61は、突出部分601に設けられ、テール部62及びめねじ67は、埋設部分602に設けられている。突出部分601においてフック部61とは反対側の部位は、第2面422側から第1面421側に向かうに従いフック部61に近づく傾斜面に形成されている。突出部分601においてフック部61が切削インサート2の取付孔29の径方向に突出しているにもかかわらず、反対側の部位が傾斜面に形成されているため、突出部分601の第1面421側の先端部が先太り形状にならない。そのため、取付孔29に対してフック部61を滑らかに挿抜できる。クランプ部材6を緩めた状態で、切削インサート2をインサート取付座から取り外したり、切削インサート2をインサート取付座5に取り付けたりすることができる。
【0041】
インサート取付座5には、埋設部分602を収容するポケット56が設けられている。ポケット56には、テール部62の下面622を支持する傾斜面561と、ポケット56の底面から第2面422まで貫通する貫通孔57と、が形成されている。前述したように、テール部62の下面622は下方へ膨らんでいる。これに対し、インサート取付座5の傾斜面561は平面状に形成されている。そのため、下面622と傾斜面561との接触面積が小さい。図4に示すように、操作部材7の少なくとも一部は、第2面422側に露出している。図示した例では、ポケット56の貫通孔57に操作部材7の軸部72が挿通され、第2面422側に操作部材7の頭部71が露出している。
【0042】
以上のように構成された本実施形態の工具本体3によれば、第1面421側へ上昇し、第2面422側へ下降するクランプ部材6を用いて、切削インサート2を拘束できる。図8は、拘束を緩めて切削インサート2を取り外した状態を示す斜視図である。クランプ部材6を上昇させて拘束を緩めれば、切削インサート2を取り外したり取り付けたりできるため、図8に示すように、切削インサート2の交換のたびにクランプ部材6や操作部材7をホルダ4から取り外さなくてもよい。スクリューオン式と比べて、クランプねじが脱落して紛失するおそれがないし、狭いスペースでも切削インサート2を交換しやすい。
【0043】
図4に示すように、クランプ部材6を昇降させる操作部材7がインサート取付座5とは反対側の第2面422側に露出しているため、第2面422側から操作して切削インサート2を交換できる。くし形刃物台等が障害物になってインサート取付座5に対向する向きから切削インサート2を交換しにくい場合であっても、くし形刃物台から工具本体3を取り外すことなく切削インサート2を交換できる。
【0044】
クランプ部材6が回動するとき、図4に示すように、支点となるテール部62によって回転中心が位置決めされるため、切削インサート2に対してフック部61の当接する位置が安定する。図6に示すように、テール部62の下面622が膨らんでいてインサート取付座5の傾斜面561との接触面積が小さいため、クランプ部材6の回転中心を狭い領域内に設計どおりに配置しやすい。
【0045】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。実施形態が備える各要素並びにその配置、材料、条件、形状及びサイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、異なる実施形態で示した構成同士を部分的に置換し又は組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0046】
1…旋削工具、2…切削インサート、3…工具本体、4…ホルダ、5…インサート取付座、6…クランプ部材、7…操作部材、21…第1端面、22…第2端面、23…周側面、24…切れ刃、25…すくい面、26…逃げ面、29…取付孔、41…基端部、41E…基端、42…先端部、42E…先端、52…着座面、53…壁面、56…ポケット、57…貫通孔、58…凹部、60…胴部、61…フック部、62…テール部、67…めねじ、71…頭部、72…軸部、291…拡径部、292…縮径部、421…第1面、422…第2面、423…第3面、424…第4面、425…先端面、561…傾斜面、601…突出部分、602…埋設部分、611…第1端部、612…第2端部、613…中央部、下面…622、Dh…ホルダの高さ方向、DL…ホルダの長手方向、Z…取付孔の中心軸。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2021-06-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
交換可能な切削インサートを固定する工具本体であって、
前記工具本体の第1面に設けられたインサート取付座と、
前記インサート取付座に載置された前記切削インサートを拘束するクランプ部材と、
前記第1面から該第1面とは反対側にある前記工具本体の第2面への向きに前記クランプ部材を下降させることができ、かつ前記第2面から前記第1面への向きに前記クランプ部材を上昇させることができる操作部材と、を備え、
前記クランプ部材は、該クランプ部材が前記切削インサートを拘束した状態において、該切削インサートの底面よりも前記第1面側に位置した突出部分と、前記底面よりも前記第2面側に位置した埋設部分と、を含み、
前記突出部分には、
前記第1面側から見たとき前記切削インサートに向かって突出したフック部と、
前記第1面側から見たとき前記フック部とは反対側に位置し前記第2面側から前記第1面側に向かうに従い前記フック部に近づくように傾斜して形成された部位と、が設けられ、
前記埋設部分には、
前記第1面側から見たとき前記フック部とは反対側に突出したテール部が設けられ、
前記フック部は、該クランプ部材が下降した状態で前記切削インサートの取付孔の内周面に形成された縮径部に当接し、
前記インサート取付座は、前記埋設部分を収容するポケットを有し、該ポケットには、前記テール部を支持する傾斜面が形成されている、
工具本体。
【請求項2】
前記テール部は、前記傾斜面に支持される部位において、円柱面の一部又は球面の一部で構成されている、
請求項に記載の工具本体。
【請求項3】
前記操作部材の少なくとも一部は、前記第2面側に露出している、
請求項1又は2に記載の工具本体。
【請求項4】
前記クランプ部材には、前記切削インサートの前記取付孔の中心軸と平行な軸線を有するめねじが形成され、
前記操作部材には、前記めねじに螺合するおねじが形成されている、
請求項1からのいずれか一項に記載の工具本体。
【請求項5】
前記操作部材は、前記おねじが形成された軸部と、該軸部の一端に設けられ、かつ該軸部よりも拡径に形成された頭部と、を有し、
前記軸部の外縁と前記頭部の外縁とを繋ぐ前記頭部の座面は、円錐状又は半球状に形成され、
前記第2面には、前記頭部の座面に倣う形状の凹部が形成されている、
請求項に記載の工具本体。
【請求項6】
前記フック部は、中央部と、該中央部を挟んで互いに反対側に位置する第1端部及び第
2端部と、を有し、前記中央部が前記切削インサートに当接しない一方、前記第1端部及
び前記第2端部が前記切削インサートに当接する、
請求項1からのいずれか一項に記載の工具本体。
【手続補正書】
【提出日】2021-12-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
交換可能な切削インサートを固定する工具本体であって、
前記工具本体の第1面に設けられたインサート取付座と、
前記インサート取付座に載置された前記切削インサートを拘束するクランプ部材と、
前記第1面から該第1面とは反対側にある前記工具本体の第2面への向きに前記クランプ部材を下降させることができ、かつ前記第2面から前記第1面への向きに前記クランプ部材を上昇させることができる操作部材と、を備え、
前記クランプ部材は、該クランプ部材が前記切削インサートを拘束した状態において、該切削インサートの底面よりも前記第1面側に位置した突出部分と、前記底面よりも前記第2面側に位置した埋設部分と、を含み、
前記突出部分には、
前記第1面側から見たとき前記切削インサートに向かって突出したフック部と、
前記第1面側から見たとき前記フック部とは反対側に位置し前記第2面側から前記第1面側に向かうに従い前記フック部に近づくように傾斜して形成された部位と、が設けられ、
前記埋設部分には、
前記第1面側から見たとき前記フック部とは反対側に突出したテール部が設けられ、
前記フック部は、該クランプ部材が下降した状態で前記切削インサートの取付孔の内周面に形成された縮径部に当接し、
前記インサート取付座は、前記埋設部分を収容するポケットを有し、該ポケットには、前記テール部を支持する傾斜面が形成され
前記テール部は、前記傾斜面に支持される部位において、前記クランプ部材の対称面に垂直な中心軸を有する円柱面の一部、又は、球面の一部、で構成されている、
工具本体。
【請求項2】
前記操作部材の少なくとも一部は、前記第2面側に露出している、
請求項1に記載の工具本体。
【請求項3】
前記クランプ部材には、前記切削インサートの前記取付孔の中心軸と平行な軸線を有するめねじが形成され、
前記操作部材には、前記めねじに螺合するおねじが形成されている、
請求項1又は2に記載の工具本体。
【請求項4】
前記操作部材は、前記おねじが形成された軸部と、該軸部の一端に設けられ、かつ該軸部よりも拡径に形成された頭部と、を有し、
前記軸部の外縁と前記頭部の外縁とを繋ぐ前記頭部の座面は、円錐状又は半球状に形成され、
前記第2面には、前記頭部の座面に倣う形状の凹部が形成されている、
請求項に記載の工具本体。
【請求項5】
前記フック部は、中央部と、該中央部を挟んで互いに反対側に位置する第1端部及び第
2端部と、を有し、前記中央部が前記切削インサートに当接しない一方、前記第1端部及
び前記第2端部が前記切削インサートに当接する、
請求項1からのいずれか一項に記載の工具本体。