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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022108586
(43)【公開日】2022-07-26
(54)【発明の名称】冷却方法および冷却装置
(51)【国際特許分類】
   F25D 3/04 20060101AFI20220719BHJP
【FI】
F25D3/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021003667
(22)【出願日】2021-01-13
(71)【出願人】
【識別番号】520512269
【氏名又は名称】株式会社BOBAN
(71)【出願人】
【識別番号】509317531
【氏名又は名称】株式会社MARS Company
(74)【代理人】
【識別番号】100144886
【弁理士】
【氏名又は名称】大坪 賢吾
(72)【発明者】
【氏名】山田 行介
(72)【発明者】
【氏名】芳野 弥彦
(72)【発明者】
【氏名】井筒 伊朗
【テーマコード(参考)】
3L044
【Fターム(参考)】
3L044AA03
3L044BA04
3L044CA04
3L044DC01
3L044FA01
3L044KA04
(57)【要約】
【課題】冷却から取り出しまでの一連の工程をスムーズに行うことができる冷却方法および冷却装置を提供する。
【解決手段】冷却装置2は、氷スラリーSを貯留し、氷スラリーS中に投入された被冷却物Fを冷却する冷却槽3を有する。また、冷却槽3は、氷スラリーS中の被冷却物Fを冷却槽3外に排出する排出口32を有する。そして、被冷却物Fの冷却を終えるまでは、氷スラリーSの液面を排出口32の下方に位置させ、被冷却物Fの冷却を終えると、氷スラリーSの液面を排出口32まで上昇させ、排出口32から被冷却物Fを冷却槽3外に排出する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排出口を有する冷却槽に貯留された氷スラリー中に被冷却物を投入して冷却する冷却ステップと、
前記排出口から前記氷スラリー中の前記被冷却物を前記冷却槽外へ排出する排出ステップと、を有し、
前記冷却ステップでは、前記氷スラリーの液面を前記排出口よりも下側に位置させ、
前記排出ステップでは、前記氷スラリーの液面を前記排出口まで上昇させることを特徴とする冷却方法。
【請求項2】
前記冷却ステップでは、前記氷スラリーを前記冷却槽の周方向に流動させる請求項1に記載の冷却方法。
【請求項3】
前記排出ステップでは、前記氷スラリーを前記冷却槽の周方向に流動させる請求項1または2に記載の冷却方法。
【請求項4】
前記冷却ステップでは、前記冷却槽から回収した前記氷スラリーを、前記冷却槽内の前記氷スラリーに噴射する請求項2または3に記載の冷却方法。
【請求項5】
前記排出ステップでは、前記冷却槽内に液面上昇用の流体を供給することにより前記氷スラリーの液面を前記排出口まで上昇させる請求項1ないし4のいずれか1項に記載の冷却方法。
【請求項6】
前記冷却槽には、前記氷スラリー中の前記被冷却物を前記排出口に導くガイドが設けられている請求項1ないし5のいずれか1項に記載の冷却方法。
【請求項7】
氷スラリーを貯留し、前記氷スラリー中に投入された被冷却物を冷却する冷却槽を有し、
前記冷却槽は、前記氷スラリー中の前記被冷却物を前記冷却槽外に排出する排出口を有し、
前記被冷却物の冷却を終えるまでは、前記氷スラリーの液面を前記排出口の下方に位置させ、
前記被冷却物の冷却を終えると、前記氷スラリーの液面を前記排出口まで上昇させ、前記排出口から前記被冷却物を前記冷却槽外に排出することを特徴とする冷却装置。
【請求項8】
前記被冷却物の冷却中は、前記氷スラリーを前記冷却槽の周方向に流動させる請求項8に記載の冷却方法。
【請求項9】
前記被冷却物を前記冷却槽外へ排出するときは、前記氷スラリーを前記冷却槽の周方向に流動させる請求項7または8に記載の冷却装置。
【請求項10】
前記冷却槽から回収した前記氷スラリーを、前記冷却槽内の前記氷スラリーに噴射する請求項8または9に記載の冷却装置。
【請求項11】
前記被冷却物を前記冷却槽外へ排出するときは、前記冷却槽内に液面上昇用の流体を供給することにより前記氷スラリーの液面を前記排出口まで上昇させる請求項7ないし10のいずれか1項に記載の冷却装置。
【請求項12】
前記冷却槽に設けられ、前記氷スラリー中の前記被冷却物を前記排出口に導くガイドを有する請求項7ないし11のいずれか1項に記載の冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却方法および冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、氷スラリーを製造するための製氷装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開1999-294911号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この製氷装置で製造した氷スラリーを用いた被冷却物の冷却方法については具体的な開示がない。
【0005】
本発明の目的は、冷却から取り出しまでの一連の工程をスムーズに行うことができる冷却方法および冷却装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
【0007】
(1) 排出口を有する冷却槽に貯留された氷スラリー中に被冷却物を投入して冷却する冷却ステップと、
前記排出口から前記氷スラリー中の前記被冷却物を前記冷却槽外へ排出する排出ステップと、を有し、
前記冷却ステップでは、前記氷スラリーの液面を前記排出口よりも下側に位置させ、
前記排出ステップでは、前記氷スラリーの液面を前記排出口まで上昇させることを特徴とする冷却方法。
【0008】
(2) 前記冷却ステップでは、前記氷スラリーを前記冷却槽の周方向に流動させる上記(1)に記載の冷却方法。
【0009】
(3) 前記排出ステップでは、前記氷スラリーを前記冷却槽の周方向に流動させる上記(1)または(2)に記載の冷却方法。
【0010】
(4) 前記冷却ステップでは、前記冷却槽から回収した前記氷スラリーを、前記冷却槽内の前記氷スラリーに噴射する上記(2)または(3)に記載の冷却方法。
【0011】
(5) 前記排出ステップでは、前記冷却槽内に液面上昇用の流体を供給することにより前記氷スラリーの液面を前記排出口まで上昇させる上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の冷却方法。
【0012】
(6) 前記冷却槽には、前記氷スラリー中の前記被冷却物を前記排出口に導くガイドが設けられている上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の冷却方法。
【0013】
(7) 氷スラリーを貯留し、前記氷スラリー中に投入された被冷却物を冷却する冷却槽を有し、
前記冷却槽は、前記氷スラリー中の前記被冷却物を前記冷却槽外に排出する排出口を有し、
前記被冷却物の冷却を終えるまでは、前記氷スラリーの液面を前記排出口の下方に位置させ、
前記被冷却物の冷却を終えると、前記氷スラリーの液面を前記排出口まで上昇させ、前記排出口から前記被冷却物を前記冷却槽外に排出することを特徴とする冷却装置。
【0014】
(8) 前記被冷却物の冷却中は、前記氷スラリーを前記冷却槽の周方向に流動させる上記(7)に記載の冷却方法。
【0015】
(9) 前記被冷却物を前記冷却槽外へ排出するときは、前記氷スラリーを前記冷却槽の周方向に流動させる上記(7)または(8)に記載の冷却装置。
【0016】
(10) 前記冷却槽から回収した前記氷スラリーを、前記冷却槽内の前記氷スラリーに噴射する上記(8)または(9)に記載の冷却装置。
【0017】
(11) 前記被冷却物を前記冷却槽外へ排出するときは、前記冷却槽内に液面上昇用の流体を供給することにより前記氷スラリーの液面を前記排出口まで上昇させる上記(7)ないし(10)のいずれかに記載の冷却装置。
【0018】
(12) 前記冷却槽に設けられ、前記氷スラリー中の前記被冷却物を前記排出口に導くガイドを有する上記(7)ないし(11)のいずれかに記載の冷却装置。
【発明の効果】
【0019】
本発明の冷却方法および冷却装置によれば、冷却槽に貯留された氷スラリーの液面を上昇させるだけで、排出ステップに移行することができる。そのため、そのため、被冷却物の冷却から排出までの一連の工程をスムーズに行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】第1実施形態に係る冷却システムの全体構成を示す模式図である。
図2図1の冷却システムが有する冷却槽を示す部分断面斜視図である。
図3】冷却槽内で生じる氷スラリーの水流の様子を示す側面図である。
図4】冷却槽内で生じる氷スラリーの水流の様子を示す平面図である。
図5】冷却方法を説明するための模式図である。
図6】冷却方法を説明するための模式図である。
図7】冷却方法を説明するための模式図である。
図8】冷却方法を説明するための模式図である。
図9】第2実施形態に係る冷却システムの全体構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の冷却方法および冷却装置を添付図面に示す実施形態に基づいて詳細に説明する。なお、図1中の紙面上側が鉛直方向上側であり、紙面下側が鉛直方向下側である。
【0022】
<第1実施形態>
図1に示す冷却システム1は、被冷却物Fを凍結させる冷却装置2と、冷却装置2に氷スラリーSを供給する氷スラリー供給装置7と、冷却システム1の各部の駆動を制御する制御装置8とを有する。なお、氷スラリーSとは、塩水中に微細な氷が混濁したシャーベット状の氷のことをいい、スラリー氷、アイススラリー、スラリーアイス等とも呼ばれる。氷スラリーSは、流動性を有するため、被冷却物Fに対して万遍なく接触することができる。また、柔らかいため、接触による被冷却物Fの損傷も実質的に生じない。そのため、被冷却物Fの損傷を防ぎつつ、被冷却物Fをより短時間で凍結させることができる。その結果、外傷がなく高い鮮度を有する高品質な被冷却物Fの冷凍品が得られる。なお、本実施形態の冷却システム1では、被冷却物Fを凍結させているが、これに限定されず、被冷却物を冷却することができればよい。
【0023】
被冷却物Fは、魚である。ただし、被冷却物Fとしては、特に限定されず、魚の他、例えば、エビ、イカ、タコ、貝類等の魚介類、イチゴ、リンゴ、バナナ、みかん、桃、ぶどう等の果物、キャベツ、レタス、キュウリ、トマト、なす、にんじん等の野菜、牛肉、豚肉、鶏肉、馬肉等の食肉等の生鮮食品、これら生鮮食品を加工(調理)した加工食品等の各種食品が挙げられる。また、被冷却物としては、食品に限定されず、例えば、植物、遺体、各種臓器、血液、精子、卵子等如何なるものであってもよい。必要に応じて、被冷却物Fをパック等の収容具に収容した状態で凍結させてもよい。
【0024】
<氷スラリー供給装置7>
氷スラリー供給装置7は、圧縮機71と、凝縮器72と、蒸発器73と、蒸発器73内に塩水Bを循環させて氷スラリーSを生成する塩水循環回路74と、氷スラリーSを冷却装置2に供給する供給回路75とを有する。また、塩水循環回路74は、生成された氷スラリーSを貯留する貯留槽741と、貯留槽741と蒸発器73とを接続する管路742とを有する。管路742には、図示しないバルブやポンプが設けられ、これらの駆動を制御することにより、貯留槽741内の塩水Bを蒸発器73に循環させることができる。また、供給回路75は、貯留槽741内の氷スラリーSを冷却装置2に供給する管路751と、冷却装置2内の氷スラリーSを貯留槽741に戻す管路752とを有する。これら管路751、752には、図示しないバルブやポンプが設けられ、これらの駆動を制御することにより、貯留槽741内の氷スラリーSを冷却装置2に供給したり、冷却装置2内の氷スラリーSを冷却槽3に戻したりすることができる。
【0025】
氷スラリー供給装置7は、次のように氷スラリーSを生成し、生成した氷スラリーSを冷却装置2に供給する。圧縮機71の駆動により冷媒Rが圧縮されて高温高圧ガス状となる。圧縮機71で高温高圧ガス状となった冷媒Rは、凝縮器72に流入し、図示しない送風ファンの作動による空気との熱交換により凝縮・液化して高圧液状となる。凝縮器72で高圧液状となった冷媒Rは、蒸発器73に流入し、蒸発器73内での塩水Bとの熱交換により蒸発・気化して低圧ガス状となる。塩水Bとの熱交換によって低圧ガス状となった冷媒Rは、圧縮機71に戻され、圧縮機71により圧縮されて再び高温高圧ガス状となって吐出される。氷スラリー供給装置7は、このような熱交換サイクルで冷媒Rを循環させることにより、蒸発器73で塩水Bを連続的に冷却する。その結果、塩水Bの一部が凍結して氷Iとなり、氷Iと塩水Bとの混合物である氷スラリーSが生成される。このようにして生成され、貯留槽741に貯留された氷スラリーSは、管路751を通って冷却装置2に供給される。
【0026】
以上のように、氷スラリー供給装置7は、満液式の蒸発器73を用いているため、乾式と比べて高い仕事効率を発揮でき、冷媒Rと塩水Bとの熱交換効率を高めることができる。そのため、氷スラリーSを効率的に生成することができる。ただし、氷スラリー供給装置7としては、氷スラリーSを冷却装置2に供給することができれば、特に限定されない。
【0027】
<冷却装置2>
図1および図2に示すように、冷却装置2は、被冷却物Fを冷却し凍結させるための冷却槽3を有する。冷却槽3は、横断面形状が円形の有底筒状である。ただし、冷却槽3の形状は、特に限定されない。また、冷却槽3の上端には、被冷却物Fを冷却槽3内に投入するための投入口31が設けられている。また、冷却槽3の側面には、凍結済の被冷却物Fを冷却槽3外に排出するための排出口32が設けられている。ただし、投入口31や排出口32の位置は、特に限定されない。また、冷却槽3の側面には、凍結済の被冷却物Fを冷却槽3外に排出する際に、被冷却物Fを排出口32に誘導するためのガイド33が設けられている。
【0028】
冷却槽3には、貯留槽741に貯留された氷スラリーSが管路751を通って供給される。そして、冷却槽3に貯留された氷スラリーS中に被冷却物Fが投入される。氷スラリーSの温度は、被冷却物Fの凍結点(凝固点)よりも低い。そのため、氷スラリーS中に投入された被冷却物Fは、氷スラリーSによって凍結点以下まで冷却され、やがて凍結する。氷スラリーSによれば、氷Iが残存している間は、その潜熱によって温度が融点に保持されるため、長時間にわたって被冷却物Fを冷却し続けることができる。そのため、被冷却物Fを効率的に冷却し、より短時間で凍結させることができる。一例として、塩水Bが飽和食塩水である氷スラリーSの場合、氷が残存している間は、約-21.3℃に保持される。
【0029】
図2に示すように、冷却装置2は、さらに、冷却槽3内の氷スラリーSの温度を検出する温度センサー41を有する。温度センサー41で検出される温度が氷スラリーSの融点よりも高い場合、氷スラリーSから氷Iが消失したことを意味する(なお、以下では、氷Iを含まない状態でもスラリーSと言う)。そこで、この場合、制御装置8は、冷却槽3内の氷スラリーSを管路752から貯留槽741に戻すと共に、貯留槽741内の氷スラリーSを冷却槽3内に供給し、冷却槽3内の氷スラリーSをフレッシュなものに入れ替える。これにより、冷却槽3内の氷スラリーSの温度がその融点付近で安定し、被冷却物Fを安定的かつ効率的に冷却し、より短時間で凍結させることができる。
【0030】
なお、上述では、温度センサー41で検出される温度が氷スラリーSの融点よりも高い場合に氷スラリーSの入れ替えを行っているが、これに限定されず、例えば、温度センサー41の出力に関わらず、常にまたは周期的に貯留槽741と冷却槽3との間で氷スラリーSを循環させて、冷却槽3内の氷スラリーSを入れ替えてもよい。
【0031】
冷却装置2は、さらに、冷却槽3内の氷スラリーSに推力を与え、図2中の矢印で示すような、冷却槽3の周方向に沿う水流Mを発生させる推力付与機構5を有する。このような水流Mを生じさせることにより、氷スラリーSが攪拌され、冷却槽3の周方向に周回するように流動する。そのため、被冷却物Fの冷却効率が向上する。また、氷スラリーS内での氷Iの凝集を防ぐことができ、氷スラリーS内の温度ムラを抑えることもできる。
【0032】
推力付与機構5は、冷却槽3内の氷スラリーSを回収する管路56と、管路56を介して回収した氷スラリーSを冷却槽3内の氷スラリーSに向けて噴射する噴射管57とを有する。噴射管57から冷却槽3内の氷スラリーSに向けて氷スラリーSを噴射することにより、噴射された氷スラリーSが冷却槽3内の氷スラリーSに勢いよくぶつかり、冷却槽3内の氷スラリーSに推力が付与され、水流Mが生じる。なお、管路56および噴射管57には、図示しないポンプやバルブが設けられており、これらの駆動を制御することにより、冷却槽3から氷スラリーSを回収したり、回収した氷スラリーSを冷却槽3内の氷スラリーSに向けて噴射したりすることができる。
【0033】
なお、図示するように、管路56は、冷却槽3の下端部に接続され、当該部分から氷スラリーSを回収する。氷スラリーSは、氷Iが上側に浮き易く、下方の方が氷Iの密度が低くなり易い性質を有する。そのため、下端部側から氷スラリーSを回収することにより、氷Iの含有量(密度)が低い氷スラリーSを回収することができ、管路56や噴射管57に設けられたポンプやバルブのつまりを防ぐことができる。また、冷却槽3内の氷Iの減少を抑えることもできる。そのため、安定した冷却が可能となる。なお、本実施形態では、管路56が冷却槽3の底部に接続されているが、これに限定されず、例えば、側面の下端部に接続されていてもよい。また、管路56の接続位置は、下端部に限定されず、中央部や上端部であってもよい。
【0034】
噴射管57の先端部に位置する噴射口571は、噴射管57を上下に押しつぶしたような扁平形状(ダックビル形状)となっている。そのため、噴射口571が絞られてその面積が減少し、噴射管57内の氷スラリーSの流速が増し、噴射口571から勢いよく氷スラリーSが噴射される。そのため、冷却槽3内の氷スラリーSにより大きな推力を与えることができる。ただし、噴射口571の形状は、特に限定されない。
【0035】
図3に示すように、噴射口571は、冷却槽3内の氷スラリーSの液面よりも上方に設置されている。噴射口571からは、冷却槽3内の氷スラリーSの液面に向けて斜め下側方向に氷スラリーSが噴射される。また、図4に示すように、鉛直方向からの平面視において、噴射口571からは、接線方向(径方向に直交する方向)に沿って氷スラリーSが噴射される。これにより、冷却槽3内の氷スラリーSに推力を効率的に与えることができ、水流Mを容易に発生させることができる。特に、本実施形態では、噴射口571が外縁側(冷却槽3の内壁近傍)に位置しているため、冷却槽3内の氷スラリーSに推力をより効率的に与えることができ、水流Mをより容易に発生させることができる。
【0036】
ここで、氷スラリーSには塩水Bが含まれている。塩水Bの密度は、被冷却物Fの密度よりも高くなり易いため、氷スラリーS内の被冷却物Fが氷スラリーSの液面に浮か上がってしまう場合がある。氷スラリーSの液面に被冷却物Fが浮か上がると、被冷却物Fと氷スラリーSとの接触面積が減り、冷却効率が低下する。そこで、前述したように、冷却槽3内の氷スラリーSに向けて、その上方から氷スラリーSを斜め下側方向に噴射することにより、図3に示すように、その衝撃で被冷却物Fを氷スラリーS内に沈めることができる。また、冷却槽3内の氷スラリーSが攪拌されて、冷却槽3の軸方向(鉛直方向)にも流動する。そのため、被冷却物Fが氷スラリーS中に潜っている状態をより長く維持することができ、被冷却物Fと氷スラリーSとの接触面積の減少を防ぐことができると共に、被冷却物F同士の密着も防ぐことができる。そのため、被冷却物Fの冷却効率の低下を効果的に抑制することができる。なお、氷スラリーSの噴射角θ(氷スラリーSの液面に対する傾き)としては、特に限定されないが、例えば、20°~70°程度とすることができる。
【0037】
なお、後述する冷却方法の説明において詳述するが、冷却装置2では、冷却槽3内の氷スラリーSの液面を上昇させることにより、氷スラリーS内の被冷却物Fを排出口32から冷却槽3外へ排出する。また、被冷却物Fを冷却するときのみならず、凍結した被冷却物Fを排出口32から冷却槽3外へ排出するときも水流Mを発生させている。そこで、推力付与機構5は、図2に示すように、噴射口571を上下方向に移動させる昇降機構55を有する。昇降機構55によって噴射口571を上下方向に移動させることにより、噴射口571を氷スラリーSの液面上昇に追従させることができる。そのため、噴射口571と氷スラリーSの液面との離間距離を好ましい距離に保つことができ、冷却時および排出時の両方において、その時に適した水流Mを発生させることができる。
【0038】
以上、推力付与機構5について説明したが、推力付与機構5の構成は、水流Mを発生させることができれば、特に限定されない。例えば、本実施形態では、冷却槽3内の氷スラリーSを回収し、回収した氷スラリーSを噴射口571から噴射することにより水流Mを発生させているが、噴射口571から噴射する液体としては、これに限定されない。また、冷却時および排出時の少なくとも一方において、噴射口571が冷却槽3内の氷スラリーS中すなわち液面よりも下側に位置していてもよい。また、例えば、冷却槽3内に配置された撹拌装置を回転させることにより、水流Mを発生させてもよい。撹拌装置としては、特に限定されず、例えば、冷却槽3の中心軸まわりに回転する軸と、軸に設置された撹拌羽根とを有する構成とすることができる。また、昇降機構55を省略してもよい。すなわち、噴射口571が冷却槽3に対して固定されていてもよい。
【0039】
図2に示すように、冷却装置2は、さらに、冷却槽3内の氷スラリーSの液面の高さを計測する液面センサー42を有する。これにより、冷却時および排出時において、冷却槽3内の氷スラリーSの液面の高さを容易に制御することができる。
【0040】
図1に示すように、冷却装置2は、さらに、冷却槽3で凍結された被冷却物Fを回収する回収装置6を有する。回収装置6は、排出口32から排出された被冷却物Fを回収する被冷却物回収容器61を有する。被冷却物回収容器61の底面には、多数の細孔611が形成され、被冷却物Fと共に排出された氷スラリーSがこの細孔611から被冷却物回収容器61外へ排出される。これにより、被冷却物Fと氷スラリーSとを容易に分離することができる。
【0041】
回収装置6は、さらに、被冷却物回収容器61の下方に位置し、細孔611を介して被冷却物回収容器61外に排出された氷スラリーSを回収する氷スラリー回収タンク62を有する。また、氷スラリー回収タンク62は、管路63を介して冷却槽3に接続されており、管路63を介して冷却槽3内の氷スラリーSが流入する。本実施形態では、管路63に氷Iの通過を規制する図示しないフィルターが設けられており、氷スラリーS中の塩水Bだけが冷却槽3から氷スラリー回収タンク62に流入する。管路63には図示しないバルブが設けられており、バルブの駆動を制御することにより、氷スラリー回収タンク62内に貯留される氷スラリーSの量を制御することができる。
【0042】
このようにして氷スラリー回収タンク62に貯留された氷スラリーSは、管路64を介して冷却槽3内に供給され、被冷却物Fを排出する際に冷却槽3内の氷スラリーSの水位を上昇させるための液面上昇用の流体として用いられる。これにより、排出口32から排出された氷スラリーSを再利用することができ、被冷却物Fの凍結にかかるコストを削減することができる。ただし、液面上昇用の流体としては、氷スラリーSの液面を上昇させることができれば、特に限定されない。
【0043】
<制御装置8>
制御装置8は、例えば、コンピューターから構成され、情報を処理するプロセッサーと、プロセッサーに通信可能に接続されたメモリーと、を有する。メモリーには冷却システム1の運転に必要な各種プログラムが保存されている。プロセッサーは、メモリーに記憶された各種プログラム等を読み込んで実行する。これにより、以下に説明するような冷却システム1の運転が実現される。
【0044】
以上、冷却システム1の構成について説明した。次に、冷却システム1を用いた被冷却物Fの冷却方法について説明する。冷却システム1を用いた被冷却物Fの冷却方法は、冷却ステップと、排出ステップとを有する。
【0045】
<冷却ステップ>
まず、図5に示すように、氷スラリー供給装置7から冷却槽3内に氷スラリーSを供給し、液面センサー42の検出結果に基づいて、冷却槽3内に所定量の氷スラリーSを貯留する。この状態では、冷却槽3内の氷スラリーSの液面は、排出口32よりも下方に位置する。これにより、未凍結の被冷却物Fが排出口32から意図せずに排出されてしまうのを防ぐことができる。そのため、被冷却物Fをより確実に凍結させることができる。次に、推力付与機構5を駆動して、冷却槽3内の氷スラリーSに水流Mを生じさせる。そして、水流Mが安定した後に、図6に示すように、未凍結の被冷却物Fを投入口31から冷却槽3内の氷スラリーS中に投入し、凍結させる。なお、氷スラリーS中に被冷却物Fを投入した後に、水流Mを発生させてもよい。
【0046】
<排出ステップ>
被冷却物Fの凍結を終えたら、図7に示すように、水流Mを発生させたまま、氷スラリー回収タンク62に貯留されている氷スラリーSを管路64から冷却槽3内に投入し、冷却槽3内の氷スラリーSの水位を排出口32まで上昇させる。これにより、図8に示すように、氷スラリーS中の被冷却物Fが排出口32から冷却槽3外へ排出され、回収装置6で回収される。ここで、被冷却物Fは、遠心力によって冷却槽3の内壁側に偏って周回するため、自然と被冷却物Fがガイド33に導かれて排出口32から排出される。そのため、使用者の手を煩わせることなく、簡単に被冷却物Fを排出することができる。被冷却物Fと共に排出口32から排出された氷スラリーSは、氷スラリー回収タンク62に回収された後、管路64から再び冷却槽3内に投入される。これにより、冷却槽3内の氷スラリーSの水位が維持され、被冷却物Fの排出が安定して行われる。なお、前記「冷却槽3内の氷スラリーSの水位を排出口32まで上昇させる」とは、「排出口32から被冷却物Fが排出される水位まで上昇させる」の意味であり、例えば、ガイド33の形状等によっては、水位は、排出口32よりも若干低くてもよい。
【0047】
以上のような冷却システム1および冷却方法によれば、冷却槽3内の氷スラリーSの液面を上昇させるだけで、氷スラリーS内の被冷却物Fを排出することができる。そのため、被冷却物Fの凍結から排出までの一連の工程をスムーズに行うことができる。
【0048】
<第2実施形態>
本実施形態は、複数の冷却装置3が接続されていること以外は、前述した第1実施形態と同様である。なお、以下の説明では、本実施形態に関し、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項に関してはその説明を省略する。また、図9において、前述した実施形態と同様の構成については、同一符号を付している。
【0049】
図9に示す冷却システム1は、複数の冷却槽3が並んで配置されている。そして、複数の冷却槽3が、被冷却物Fを冷却槽3に投入する搬入装置91と、冷却槽3から排出された凍結済の被冷却物Fを回収する回収装置92とで接続されている。なお、回収装置92は、前述した第1実施形態の被冷却物回収容器61に替えて設けられている。搬入装置91および回収装置92としては、それぞれ、特に限定されないが、本実施形態では、多数のローラーが回転することにより被冷却物Fを搬送するローラーコンベアで構成されている。
【0050】
未凍結の被冷却物Fは、搬入装置91によって所定の冷却槽3まで搬送され、投下される。排出口32から排出された凍結済の被冷却物Fは、回収装置92上に落下し、そのまま回収装置92によって搬送され、回収される。なお、被冷却物Fと共に排出口32から排出された氷スラリーSは、隣り合うローラーの隙間を通って回収装置92の下方に設置された氷スラリー回収タンク62に回収される。このように、複数の冷却槽3を搬入装置91と回収装置92とで接続することにより、単位時間当たりに凍結させることのできる被冷却物Fの数が増加し、生産性が高まる。
【0051】
このような第2実施形態によっても、前述した第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0052】
以上、本発明の冷却方法および冷却装置について、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、各部の構成は、同様の機能を発揮する任意の構成のものに置換することができ、また、任意の構成を付加することもできる。また、各実施形態を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0053】
1…冷却システム、2…冷却装置、3…冷却槽、31…投入口、32…排出口、33…ガイド、41…温度センサー、42…液面センサー、5…推力付与機構、54…撹拌装置、541…軸、542…撹拌羽根、55…昇降機構、56…管路、57…噴射管、571…噴射口、6…回収装置、61…被冷却物回収容器、611…細孔、62…氷スラリー回収タンク、63…管路、64…管路、631…フィルター、7…氷スラリー供給装置、71…圧縮機、72…凝縮器、73…蒸発器、74…塩水循環回路、741…貯留槽、742…管路、75…供給回路、751…管路、752…管路、8…制御装置、91…搬入装置、92…回収装置、B…塩水、D…離間距離、I…氷、F…被冷却物、M…水流、R…冷媒、S…氷スラリー、θ…噴射角
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9