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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022108588
(43)【公開日】2022-07-26
(54)【発明の名称】車両用外装品
(51)【国際特許分類】
   B60R 13/00 20060101AFI20220719BHJP
   H05B 3/20 20060101ALI20220719BHJP
   G01S 13/931 20200101ALN20220719BHJP
   G01S 7/03 20060101ALN20220719BHJP
【FI】
B60R13/00
H05B3/20 327A
G01S13/931
G01S7/03 246
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021003670
(22)【出願日】2021-01-13
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】廣谷 幸蔵
(72)【発明者】
【氏名】中野 裕之
(72)【発明者】
【氏名】新美 泰史
【テーマコード(参考)】
3D024
3K034
5J070
【Fターム(参考)】
3D024BA03
3D024BA07
3K034AA15
3K034BB13
3K034BC12
3K034HA09
3K034JA09
5J070AB24
5J070AF03
(57)【要約】
【課題】周囲の温度が繰り返し変化しても、ヒータ線のコネクタピンに対する接合状態を良好に維持する。
【解決手段】車両用外装品としてのエンブレム15は、装飾本体部21、ヒータシート51及びコネクタピン32を備える。装飾本体部21は、基材22及び透明樹脂層35を備え、ヒータシート51は、発熱本体部52及び延出部53を備える。ヒータ線57のうち延出部53における部分は、接合部58により、基材22の外周部22aの内部でコネクタピン32に接合される。外周部22aには、ヒータ線57を接合部58によりコネクタピン32に接合するための窓部30が、接合箇所を外周部22aの外部に露出させた状態で形成される。窓部30には、接合箇所への水の浸入を規制する止水部71が設けられる。止水部71は、ポッティング材が窓部30に充填されることにより形成される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を装飾する装飾本体部と、通電により発熱するヒータ線がシート基材の裏面に配線されてなるヒータシートと、電力供給のための機器が結合されるコネクタピンとを備え、
前記装飾本体部が、基材と、前記基材よりも表側に配置される透明樹脂層とを備え、
前記ヒータシートが、前記透明樹脂層よりも表側に配置される発熱本体部と、前記発熱本体部の周縁部から延びて前記透明樹脂層よりも裏側に配置される延出部とを備え、
前記ヒータ線のうち前記延出部における部分が、導電性材料からなる接合部により、前記基材の外周部の内部で前記コネクタピンに接合される車両用外装品であって、
前記外周部には、前記ヒータ線を前記接合部により前記コネクタピンに接合するための窓部が、接合箇所を前記外周部の外部に露出させた状態で形成されており、
前記窓部には、前記接合箇所への水の浸入を規制する止水部が設けられており、
前記止水部は、ポッティング材が前記窓部に充填されることにより形成されている車両用外装品。
【請求項2】
車両を装飾する装飾本体部と、通電により発熱するヒータ線がシート基材の裏面に配線されてなるヒータシートと、電力供給のための機器が結合されるコネクタピンとを備え、
前記装飾本体部が、基材と、前記基材よりも表側に配置された透明樹脂層とを備え、
前記ヒータシートが、前記透明樹脂層よりも表側に設けられた発熱本体部と、前記発熱本体部の周縁部から延びて前記透明樹脂層よりも裏側に配置される延出部とを備え、
前記ヒータ線のうち前記延出部における部分が、導電性材料からなる接合部により、前記基材の外周部の内部で前記コネクタピンに接合される車両用外装品であって、
前記外周部には、前記ヒータ線を前記接合部により前記コネクタピンに接合するための窓部が、接合箇所を前記外周部の外部に露出させた状態で形成されており、
前記窓部には、前記接合箇所への水の浸入を規制する止水部が設けられており、
前記止水部は、樹脂材料により形成されたカバーにより構成され、
前記カバーは、前記接合箇所に対し空隙部を介して配置され、前記窓部のうち、前記空隙部よりも表側の周縁部に対し密着した状態で前記窓部を塞いでいる車両用外装品。
【請求項3】
前記止水部は、前記窓部の前記周縁部に対し溶着されている請求項2に記載の車両用外装品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンブレム、オーナメント、マーク等、車両を装飾する車両用外装品に関する。
【背景技術】
【0002】
ミリ波レーダ装置が組込まれた車両では、同装置からミリ波が車外へ向けて送信される。先行車両、歩行者等を含む車外の物体に当たって反射されたミリ波は、上記ミリ波レーダ装置によって受信される。送信及び受信されたミリ波により、上記物体の認識や、車両と物体との距離、相対速度等の検出が行なわれる。
【0003】
上記車両では、ミリ波の送信方向におけるミリ波レーダ装置の前方に、エンブレム等の車両用外装品が配置される。車両用外装品は、ミリ波レーダ装置を隠し、かつミリ波の透過性を有する装飾本体部を備える。装飾本体部は、基材と、基材よりも表側に配置された透明樹脂層とを備える。
【0004】
上記車両用外装品では、意匠面(表面)に氷雪が付着するとミリ波が減衰され、ミリ波レーダ装置の検出性能が低下する問題がある。そこで、車両用外装品に融雪機能を付加することが考えられている。例えば、装飾本体部に対し、ヒータシート及びコネクタピンが設けられることにより、融雪機能が付加される。
【0005】
ヒータシートは、通電により発熱するヒータ線が、シート基材の裏面に配線されることにより形成される。ヒータシートは、透明樹脂層よりも表側に配置される発熱本体部と、発熱本体部の周縁部から延びて透明樹脂層よりも裏側に配置される延出部とを備える。
【0006】
コネクタピンは、電力供給のための機器が結合される箇所である。そして、ヒータ線のうち延出部における部分が、導電性材料からなる接合部によって、基材の外周部の内部でコネクタピンに接合されることにより、コネクタピンとヒータ線とが電気的に接続される。
【0007】
上記車両用外装品によると、上記機器から供給される電力がコネクタピンを介してヒータ線に供給されて、同ヒータ線が発熱する。そのため、車両用外装品の意匠面(表面)に氷雪が付着しても、ヒータ線が発した熱によって氷雪を融解させ、氷雪の付着に起因するミリ波の減衰を抑制することができる。
【0008】
なお、装飾本体部の表側にヒータシートを積層する技術は、例えば、特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2020-5057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記車両用外装品では、基材の上記外周部には、ヒータ線を接合部によってコネクタピンに接合するための窓部が、接合箇所を同外周部の外部に露出させた状態で形成される。この窓部には、接合箇所への水の浸入を規制する止水部が設けられる。
【0011】
ところが、車両用外装品を車両に組付けた後に、周囲の温度の変化が繰り返されると、止水部の構造によっては、次の問題が起こるおそれがある。この問題は、例えば、硬質の樹脂材料を窓部に充填することによって上記止水部が形成されて、同止水部が接合部及びヒータ線に接触している場合に起り得る。すなわち、温度変化が繰り返されると、止水部がヒータ線よりも多く膨張及び収縮しようとし、接合部とヒータ線との境界部に対し、応力が集中して加わる。その結果、接合部によるヒータ線のコネクタピンに対する接合が外れ、断線が起こるおそれがある。
【0012】
こうした問題は、ミリ波レーダ装置に限らず、車外の物体を検出するための電磁波を送信及び受信する装置が搭載された車両に組込まれ、かつ装飾本体部の表側にヒータシートが配置された車両用外装品であれば、同様に起り得る。また、電磁波を送受信する装置が搭載されていない車両に組込まれ、かつ装飾本体部の表側にヒータシートが配置された車両用外装品でも、上記と同様の現象が起こり得る。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決する車両用外装品は、車両を装飾する装飾本体部と、通電により発熱するヒータ線がシート基材の裏面に配線されてなるヒータシートと、電力供給のための機器が結合されるコネクタピンとを備え、前記装飾本体部が、基材と、前記基材よりも表側に配置される透明樹脂層とを備え、前記ヒータシートが、前記透明樹脂層よりも表側に配置される発熱本体部と、前記発熱本体部の周縁部から延びて前記透明樹脂層よりも裏側に配置される延出部とを備え、前記ヒータ線のうち前記延出部における部分が、導電性材料からなる接合部により、前記基材の外周部の内部で前記コネクタピンに接合される車両用外装品であって、前記外周部には、前記ヒータ線を前記接合部により前記コネクタピンに接合するための窓部が、接合箇所を前記外周部の外部に露出させた状態で形成されており、前記窓部には、前記接合箇所への水の浸入を規制する止水部が設けられており、前記止水部は、ポッティング材が前記窓部に充填されることにより形成されている。
【0014】
上記の構成によれば、窓部を塞ぐ止水部は、ポッティング材が窓部に充填されることにより形成されている。ポッティング材は、窓部の壁面に密着している。そのため、窓部の外部から水が、ヒータ線のコネクタピンに対する接合箇所に侵入することが、止水部によって規制される。
【0015】
ここで、車両に組付けられた車両用外装品が、温度が繰り返し変化する環境下に置かれた場合、その温度変化に応じて、止水部及びヒータ線が、それぞれ膨張及び収縮する。
この点、上記の構成によれば、ポッティング材が用いられて止水部が形成されている。ポッティング材は、軟質の樹脂材料からなる。そのため、ヒータ線と止水部との線膨張率の差に拘わらず、接合部とヒータ線との境界部に対し、応力が集中して加わりにくい。従って、ヒータ線のコネクタピンに対する接合状態が良好に維持され、断線が抑制される。
【0016】
上記課題を解決する車両用外装品は、車両を装飾する装飾本体部と、通電により発熱するヒータ線がシート基材の裏面に配線されてなるヒータシートと、電力供給のための機器が結合されるコネクタピンとを備え、前記装飾本体部が、基材と、前記基材よりも表側に配置された透明樹脂層とを備え、前記ヒータシートが、前記透明樹脂層よりも表側に設けられた発熱本体部と、前記発熱本体部の周縁部から延びて前記透明樹脂層よりも裏側に配置される延出部とを備え、前記ヒータ線のうち前記延出部における部分が、導電性材料からなる接合部により、前記基材の外周部の内部で前記コネクタピンに接合される車両用外装品であって、前記外周部には、前記ヒータ線を前記接合部により前記コネクタピンに接合するための窓部が、接合箇所を前記外周部の外部に露出させた状態で形成されており、前記窓部には、前記接合箇所への水の浸入を規制する止水部が設けられており、前記止水部は、樹脂材料により形成されたカバーにより構成され、前記カバーは、前記接合箇所に対し空隙部を介して配置され、前記窓部のうち、前記空隙部よりも表側の周縁部に対し密着した状態で前記窓部を塞いでいる。
【0017】
上記の構成によれば、窓部を塞ぐ止水部は、樹脂材料を用いて形成されたカバーによって構成されている。止水部は、窓部の周縁部に対し密着した状態で窓部を塞いでいる。そのため、窓部の外部から水が、ヒータ線のコネクタピンに対する接合箇所に侵入することが、止水部によって規制される。
【0018】
ここで、車両に組付けられた車両用外装品が、温度が繰り返し変化する環境下に置かれた場合、その温度変化に応じて、止水部及びヒータ線が、それぞれ膨張及び収縮する。
この点、上記の構成によれば、止水部が樹脂製のカバーによって構成され、しかも、そのカバーが、ヒータ線のコネクタピンに対する接合部による接合箇所に対し、空隙部を介して配置されている。カバーは、上記接合部及びコネクタピンに直接接触していない。そのため、ヒータ線と止水部との線膨張率の差に拘わらず、接合部とヒータ線との境界部に対し、応力が集中して加わりにくい。従って、ヒータ線のコネクタピンに対する接合状態が良好に維持され、断線が抑制される。
【0019】
さらに、カバーからなる止水部は上記接合箇所から離れている。そのため、接合箇所が止水部によって押し潰されることがなく、押し潰されることが原因で、ヒータ線のコネクタピンに対する接合が外れて断線するおそれもない。
【0020】
上記車両用外装品において、前記止水部は、前記窓部の前記周縁部に対し溶着されていることが好ましい。
上記の構成によれば、止水部が窓部の周縁部に対し溶着されることにより、同止水部と窓部の周縁部とが溶融された状態で接合される。そのため、窓部の外部から内部への水の浸入が、この溶着部分によって規制される。
【発明の効果】
【0021】
上記車両用外装品によれば、周囲の温度が繰り返し変化しても、ヒータ線のコネクタピンに対する接合状態を良好に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】車両用外装品をエンブレムに具体化した第1実施形態を示す図であり、同エンブレムの正面図。
図2】第1実施形態におけるヒータシートの一部を装飾本体部とともに示す部分背面図。
図3】第1実施形態におけるエンブレムの下部構造を、フロントグリルの一部及びミリ波レーダ装置の一部とともに示す部分側断面図。
図4図3の4-4線に沿ったソケット部の断面図。
図5】第1実施形態において、接合部によるヒータ線の接合箇所を、その周辺箇所とともに示す部分断面図。
図6】第2実施形態のエンブレムを示す図であり、図4に対応するソケット部の断面図。
図7】第2実施形態において、接合部によるヒータ線の接合箇所を、その周辺箇所とともに示す部分断面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(第1実施形態)
以下、車両用外装品を車両の前部に取付けられるエンブレムに具体化した第1実施形態について、図1図5を参照して説明する。
【0024】
なお、以下の記載に関し、車両の前進方向を前方とし、後進方向を後方として説明する。また、上下方向は車両の上下方向を意味し、左右方向は車幅方向であって車両の前進時の左右方向と一致するものとする。また、各図では、エンブレムにおける各部を認識可能な大きさとするために、各部の縮尺を適宜変更して図示している。
【0025】
図3に示すように、車両10の前部の車幅方向における中央部分であって、フロントグリル11の後方には、前方監視用のミリ波レーダ装置13が配置されている。ミリ波レーダ装置13は、電磁波におけるミリ波を車外のうち、前方へ向けて送信し、かつ、車外の物体に当たって反射されたミリ波を受信する機能を有する。ミリ波とは、波長が1mm~10mmであり、周波数が30GHz~300GHzである電波をいう。
【0026】
上記フロントグリル11の厚みは、一般的なフロントグルと同様、一定ではない。また、フロントグリル11では、樹脂製基材の表面に金属めっき層が形成されることがある。従って、フロントグリル11は、送信又は反射されたミリ波と干渉する。このため、フロントグリル11において、ミリ波の送信方向におけるミリ波レーダ装置13の前方には、窓部12が開口されている。図3では、窓部12の下部が図示されている。
【0027】
上記窓部12には、エンブレム15が配置されている。エンブレム15の車両前方側(図3の右側)の面は、意匠面15aを構成している。意匠面15aの外形形状は、横長の楕円形状をなしている。ここで、エンブレム15を説明するにあたり、意匠面15a側を表側といい、意匠面15aとは反対側(図3では左側)を裏側というものとする。
【0028】
エンブレム15は、起立した状態で配置される。この配置状態では、エンブレム15の表側が車両10の前側に対応し、エンブレム15の裏側が車両10の後側に対応する。
そのため、単体のエンブレム15の説明に際し、車両前後方向に対応する方向を特定する場合には、「表」及び「裏」の語を用いるものとする。車両10に取付けられた状態のエンブレム15を説明する場合についても同様である。
【0029】
エンブレム15は、装飾本体部21及びヒータシート51を備えている。次に、エンブレム15を構成する各部材について説明する。
<装飾本体部21>
図1及び図3に示すように、装飾本体部21は、車両10においてミリ波レーダ装置13からのミリ波の送信方向の前方に配置されて、同車両10を装飾する部分である。装飾本体部21の主要部分は、エンブレム15の意匠面15aに対応して横長の略楕円の板状をなしており、ミリ波透過性を有する。
【0030】
装飾本体部21は、基材22、透明樹脂層35及び加飾層41を備えている。基材22は、装飾本体部21の裏側部分を構成する部材である。基材22は、その骨格部分を構成する基材本体部23と、基材本体部23の外周部に設けられた枠部31とを備えている。
【0031】
基材本体部23は、AES(アクリロニトリル-エチレン-スチレン共重合)樹脂によって、有色に形成されている。基材本体部23における表側の部分には、表裏方向に対し直交に近い状態で交差する略平らな一般部24と、その一般部24よりも表側へ突出する凸部25とが形成されている。一般部24は、図1におけるエンブレム15の背景領域16に対応し、凸部25は、同エンブレム15の模様領域17に対応している。ここでは、模様領域17は、「A」という文字部分18とその周りの環状部分19とにより構成されている。
【0032】
図3に示すように、基材本体部23における外周部には、表側の面において開放されて裏側へ凹む環状凹部26が形成されている。環状凹部26は、基材本体部23の周縁部に対応する形状である略楕円の環状をなしている。
【0033】
基材22は、裏側へ突出するソケット部27を自身の下部に有している。ソケット部27は、電力供給のための機器Aのプラグ部Bが抜き差しされる箇所である。ソケット部27の表側の部分には、環状凹部26から裏方向に延びる凹部28が形成されている。さらに、ソケット部27には、その裏面において開放されて表側へ凹む凹部29が形成されている。
【0034】
なお、基材本体部23は、上記AES樹脂に代えて、ASA(アクリロニトリル-スチレン-アクリレート共重合)樹脂、PC(ポリカーボネート)樹脂、PC樹脂及びABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合)樹脂のポリマーアロイ等によって形成されてもよい。
【0035】
枠部31は、基材本体部23の外周部に沿って設けられることで略楕円形の環状をなしている(図1参照)。枠部31の多くの部分は、上記環状凹部26内に充填された状態で形成されている。また、枠部31の下部の一部は、ソケット部27における凹部28内に充填された状態で形成されている。枠部31は、例えば、PC樹脂とカーボンブラックとの混合材料によって形成されており、黒色をなしている。
【0036】
図3及び図4に示すように、ソケット部27には、互いに左右方向に離間した状態で、それぞれ表裏方向に延びる2つのコネクタピン32が配置されている。各コネクタピン32の表側の部分32aは平板状をなし、基材本体部23及び枠部31に埋設されている。また、コネクタピン32の裏側の部分32bは棒状をなしている。部分32bの一部は、上記凹部29内に配置されている。
【0037】
基材22の外周部22aであって、ソケット部27の下部には、同ソケット部27の下面において開口する窓部30が形成されている。窓部30は、後述するヒータ線56,57をコネクタピン32に接合する作業を行なうために設けられている。
【0038】
基材22(基材本体部23)の裏面の周縁部における複数箇所には、エンブレム15をフロントグリル11又は車体に取付けるための取付部(図示略)が設けられている。取付部は、クリップ、ビス、係合爪等によって構成されている。
【0039】
図1及び図3に示すように、透明樹脂層35は、装飾本体部21の主要部分の表側部分を構成する部材である。透明樹脂層35は、PC樹脂によって透明に形成されている。ここでの透明には、無色透明のほか、着色透明(有色透明)も含まれる。この点は、後述するシート基材55についても同様である。透明樹脂層35における裏側部分は、上記基材本体部23における表側部分の形状に対応した形状に形成されている。すなわち、透明樹脂層35における裏側部分であって、基材本体部23の一般部24の表側となる箇所には、表裏方向に対し直交に近い状態で交差する略平らな一般部36が形成されている。透明樹脂層35における裏側部分であって、基材本体部23の凸部25の表側となる箇所には、一般部36よりも表側へ凹む凹部37が形成されている。透明樹脂層35の外周部は、上記枠部31の表側に位置している。なお、透明樹脂層35は、上記PC樹脂に代えてPMMA(ポリメタクリル酸メチル)樹脂等、透明な樹脂によって形成されてもよい。
【0040】
加飾層41は、基材本体部23と透明樹脂層35との間であって、枠部31によって囲まれた領域に形成されており、ミリ波透過性を有している。加飾層41は、例えば、黒色、青色等の濃色を有する有色加飾層と、インジウム(In)等の金属材料からなる光輝加飾層との組合わせによって構成されている。
【0041】
上記装飾本体部21において、枠部31は、基材本体部23及び透明樹脂層35に対し溶着されることで、それらの基材本体部23及び透明樹脂層35を連結している。
装飾本体部21において、ミリ波が透過される領域は、厚みが一定となるように形成されている。
【0042】
<ヒータシート51>
図2及び図3に示すように、ヒータシート51は、シート基材55及び2本のヒータ線56,57を備えている。シート基材55は、PC樹脂等の透明な樹脂材料によって形成されている。各ヒータ線56,57は、通電により発熱する金属材料によって構成されており、シート基材55の裏面に配線されている。
【0043】
ヒータシート51は、発熱本体部52と、その発熱本体部52の周縁部、第1実施形態では下縁部から延びる延出部53とを備えている。延出部53が発熱本体部52から延びる方向を、延出部53の延出方向という。また、延出部53の面に沿って、上記延出方向に対し直交する方向を、延出部53の幅方向というものとする。発熱本体部52は、エンブレム15の意匠面15aに対応して横長の楕円形状に形成されている。発熱本体部52は、透明樹脂層35の表側に積層されている。発熱本体部52では、各ヒータ線56,57は、互いに異なる配線パターンで配線されている(図2参照)。
【0044】
延出部53は、装飾本体部21における外周部の下端部を経由して透明樹脂層35よりも裏側へ回り込むように、同透明樹脂層35の下面、枠部31の下面等に沿って曲げられている。
【0045】
図3及び図4に示すように、上記幅方向における延出部53の両側部には、開口部54がそれぞれ形成されている。両開口部54は、上記幅方向に互いに離間している。
図2図4に示すように、2本のヒータ線56,57は、上記発熱本体部52だけでなく延出部53にも配線されている。すなわち、ヒータ線56は、両端部に端末部56a,56bを有している。ヒータ線57は、両端部に端末部57a,57bを有している。端末部56a,57aは、延出部53の裏面であって、上記幅方向における一方の側部にまとめられて配線されている。端末部56a,57aのそれぞれの一部は、一方の開口部54に対し、上記延出方向に交差している。同様に、端末部56b,57bは、延出部53の裏面であって、上記幅方向における他方の側部にまとめられて配線されている。端末部56b,57bのそれぞれの一部は、他方の開口部54に対し、上記延出方向に交差している。
【0046】
図3及び図4に示すように、装飾本体部21における外周部の下端部を経由して裏側へ回り込んだ延出部53の一部は、枠部31の外周面と凹部28の内壁面との間に配置されている。
【0047】
各コネクタピン32の表側の部分32aの一部に対し、延出部53の一部であって、上記開口部54の周辺部分が表側(外周側)から重ねられている。端末部56a,57aは、一方の開口部54内ではんだ付けが行なわれることにより、表側の部分32aに対し接合されている。同様に、端末部56b,57bは、他方の開口部54内ではんだ付けが行なわれることにより、表側の部分32aに対し接合されている。図3及び図4中、符号58は、はんだ合金からなり、かつはんだ付けにより形成された接合部を示している。これらの接合部58により、端末部56a,56b及び端末部57a,57bが、基材22の外周部22aの内部で、コネクタピン32の上記表側の部分32aに対し電気的に接続されている。
【0048】
なお、上記接合は、上記はんだ付け以外にも、導電性接着剤を用いた接着、溶接等により行なわれてもよい。
端末部56a,56b及び端末部57a,57bが接合部58によってコネクタピン32に接合された部分を、接合箇所というものとする。窓部30には、上記接合箇所への水の浸入を規制する止水部71が設けられている。第1実施形態では、止水部71は、基材22よりも軟質の樹脂材料が窓部30に充填されることにより形成されている。この樹脂材料として、ポッティング材が用いられている。ここで、ポッティング材とは、一般に、電気回路等を、衝撃や振動、あるいは湿気や腐食から保護することを目的として、電気回路全体を埋め込む充填材であり、ゴム状、ゲル状等をなす。ポッティング材としては、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂等を用いることができる。止水部71は、上記接合箇所に直接接触している。
【0049】
そして、上記のように構成されたエンブレム15は、図3に示すように、起立させられた状態で窓部12の内部に配置され、取付部においてフロントグリル11又は車体に取付けられている。
【0050】
さらに、ソケット部27の凹部29に対し、機器Aのプラグ部Bが、エンブレム15の裏側から差し込まれることで、ヒータ線56,57が機器Aに対し電気的に接続されている。
【0051】
次に、上記のように構成された第1実施形態の作用について説明する。また、作用に伴い生ずる効果についても併せて説明する。
図3図5に示すように、第1実施形態のエンブレム15では、基材22の外周部22aに窓部30が形成されており、ここから端末部56a,56b及び端末部57a,57bのコネクタピン32との接合箇所に水が浸入するおそれがある。しかし、窓部30は止水部71によって塞がれている。止水部71は、軟質の樹脂材料からなるポッティング材が窓部30に充填されることにより形成されていて、そのポッティング材が、窓部30の壁面に密着している。止水部71と壁面との間は、隙間がない、又はほとんどない状態になっている。そのため、窓部30の外部から水が上記接合箇所に侵入する現象を、止水部71によって規制することができる。
【0052】
ここで、車両10に組付けられたエンブレム15が、周辺の温度が繰り返し変化する環境下に置かれた場合、その温度変化に応じて、止水部71と端末部56a,56b及び端末部57a,57bとが、それぞれ膨張及び収縮する。仮に、止水部71が、基材22と同様、硬質の樹脂材料であるAES樹脂、PC樹脂等によって形成されていると、ヒータ線56,57と止水部71との線膨張率の差により、止水部71が端末部56a,56b及び端末部57a,57bよりも多く膨張及び収縮した場合、次の現象が起こる。すなわち、接合部58と端末部56a,56b及び端末部57a,57bとの境界部Cに対し、応力が集中して加わる。その結果、端末部56a,56b及び端末部57a,57bのコネクタピン32に対する接合部58による接合が外れ、断線が起こるおそれがある。
【0053】
この点、第1実施形態では、基材本体部23及び枠部31よりも軟質の樹脂材料であるポッティング材が、止水部71の材料として用いられている。そして、このポッティング材が窓部30に充填されることにより止水部71が形成されている。そのため、ヒータ線56,57と止水部71との線膨張率の差に拘わらず、上記境界部Cに対し、応力が集中して加わることが起こりにくい。従って、端末部56a,56b及び端末部57a,57bのコネクタピン32に対する接合状態を良好に維持して、断線を抑制することができる。
【0054】
ところで、エンブレム15の意匠面15aに氷雪が付着した場合には、図3に示すように、電力が機器Aのプラグ部B及びコネクタピン32を介してヒータ線56,57に供給される。ヒータ線56,57が通電により発熱する。ヒータ線56,57が発した熱の一部は、エンブレム15の意匠面15aに伝達される。この熱により、上記意匠面15aに付着している氷雪が融解され、氷雪によるミリ波の減衰が抑制される。
【0055】
特に、第1実施形態では、ヒータシート51がエンブレム15において最も表側の箇所に配置されている。そのため、ヒータ線56,57の発した熱がエンブレム15の意匠面15a(表面)に伝わりやすく、氷雪を効率よく融解させることができる。
【0056】
なお、ミリ波レーダ装置13からミリ波が送信されると、そのミリ波は、エンブレム15の装飾本体部21における基材本体部23、加飾層41及び透明樹脂層35と、ヒータシート51の発熱本体部52とを順に透過する。透過したミリ波は、先行車両、歩行者等を含む車両前方の物体に当たって反射された後、ヒータシート51の発熱本体部52と、装飾本体部21における透明樹脂層35、加飾層41及び基材本体部23とを順に透過する。装飾本体部21を透過したミリ波は、ミリ波レーダ装置13によって受信される。ミリ波レーダ装置13では、送信及び受信された上記ミリ波に基づき、物体の認識や、車両10と同物体との距離、相対速度等の検出が行われる。
【0057】
また、エンブレム15に対し車両10の前側から可視光が照射されると、その可視光は、ヒータシート51の発熱本体部52と、装飾本体部21の透明樹脂層35とを透過し、加飾層41で反射される。車両10の前方からエンブレム15を見ると、発熱本体部52及び透明樹脂層35を通して、それらの裏側(奥側)に加飾層41が位置するように見える。このように、加飾層41によってエンブレム15が装飾され、同エンブレム15及びその周辺部分の外観が向上する。
【0058】
なお、可視光の加飾層41での上記反射は、ミリ波レーダ装置13よりも前側で行われる。加飾層41は、ミリ波レーダ装置13を覆い隠す機能を発揮する。そのため、エンブレム15の前側からは、ミリ波レーダ装置13が見えにくい。従って、ミリ波レーダ装置13がエンブレム15を介して透けて見える場合に比べて外観が向上する。
【0059】
第1実施形態によると、上記以外にも、次の効果が得られる。
・第1実施形態では、図3及び図4に示すように、一方のコネクタピン32と端末部56a,57aとが、基材22の外周部22aの内部で接合されている。また、他方のコネクタピン32と端末部56b,57bとが、上記外周部22aの内部で接合されている。接合部分が外周部22aによって覆われている。そのため、接合が透明樹脂層35の表側で行なわれる場合とは異なり、接合部分による見栄えの低下がない。
【0060】
(第2実施形態)
次に、車両用外装品をエンブレムに具体化した第2実施形態について、図6及び図7を参照して説明する。
【0061】
第2実施形態は、止水部71の構成が第1実施形態と異なっている。止水部71は、硬質の樹脂材料からなるカバーによって構成されている。第2実施形態では、止水部71は基材本体部23と同様、AES樹脂によって形成されている。
【0062】
止水部71は、接合部58による端末部56a,56b及び端末部57a,57bのコネクタピン32に対する接合箇所に対し、空隙部G1を介して配置されている。止水部71は、窓部30のうち、上記接合箇所よりも表側(外周側)に位置する周縁部72であって、同接合箇所を取り囲む箇所に対し溶着されている。溶着は、例えば、超音波溶着法、レーザ溶着法、熱板溶着法等の溶着法によってなされる。
【0063】
上記以外の構成は第1実施形態と同様である。そのため、第1実施形態で説明したものと同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
従って、第2実施形態によっても第1実施形態と同様の作用及び効果が得られる。すなわち、第2実施形態のエンブレム15では、硬質の樹脂材料を用いて形成された止水部71によって窓部30が塞がれている。止水部71が窓部30の周縁部72に対し溶着されることにより、止水部71と周縁部72とが溶融された状態で接合されている。止水部71が周縁部72に対し密着した状態で窓部30を塞いでいる。そのため、窓部30の外部から水が、上記接合箇所に侵入するのを、止水部71によって規制できる。
【0064】
また、第2実施形態では、止水部71が樹脂製のカバーによって構成され、しかも、その止水部71が、上記接合箇所に対し、空隙部G1を介して配置されている。止水部71は、第1実施形態とは異なり、上記接合箇所に直接接触していない。そのため、ヒータ線56,57と止水部71との線膨張率の差に拘わらず、接合部58と端末部56a,56b及び端末部57a,57bとの境界部Cに対し、応力が集中して加わりにくい。従って、端末部56a,56b及び端末部57a,57bのコネクタピン32に対する接合状態を良好に維持して、断線を抑制できる。
【0065】
さらに、止水部71は上記接合箇所から離れている。そのため、接合箇所が止水部71によって押し潰されることがない。押し潰されることが原因で、接合部58による端末部56a,56b及び端末部57a,57bのコネクタピン32に対する接合が外れて断線が起こる現象を抑制できる。
【0066】
なお、上記実施形態は、これを以下のように変更した変形例として実施することもできる。上記実施形態及び以下の変形例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0067】
・ヒータシート51におけるヒータ線56,57の数が1又は3以上の複数に変更されてもよい。
・延出部53は、発熱本体部52の周縁部のうち、下縁部とは異なる箇所、例えば上縁部、側縁部等から延びていてもよい。
【0068】
・エンブレム15の意匠面15aの外形形状は、横長の楕円形状とは異なる形状に変更されてもよい。
・ヒータシート51の発熱本体部52におけるヒータ線56,57が、上記第1及び第2実施形態とは異なる配線パターンで配線されてもよい。
【0069】
・上記車両用外装品は、車外の物体を検出するための電磁波を送信及び受信する装置が搭載された車両に組込まれ、かつ装飾本体部の表側にヒータシートが配置された車両用外装品であれば適用可能である。この場合、装置が送信及び受信する電磁波には、ミリ波、赤外線等が含まれる。
【0070】
・車外の物体を検出するための電磁波を送信及び受信する装置は、前方監視用以外にも、後方監視用、前側方監視用、又は後側方監視用の装置であってもよい。この場合、車両用外装品は、電磁波の送信方向における上記装置の前方に配置される。
【0071】
・上記車両用外装品は、車外の物体を検出するための電磁波を送信及び受信する装置が搭載されない車両に組込まれてもよい。
・上記車両用外装品は、エンブレムのほかに、オーナメント、マーク等、車両を装飾する機能を有する車両用外装品にも適用可能である。
【符号の説明】
【0072】
10…車両
15…エンブレム(車両用外装品)
21…装飾本体部
22…基材
22a…外周部
30…窓部
32…コネクタピン
35…透明樹脂層
51…ヒータシート
52…発熱本体部
53…延出部
55…シート基材
56,57…ヒータ線
58…接合部
71…止水部
72…周縁部
A…機器
G1…空隙部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7