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特開2022-108620基礎構造体、及び基礎構造体のメンテナンス方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022108620
(43)【公開日】2022-07-26
(54)【発明の名称】基礎構造体、及び基礎構造体のメンテナンス方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/72 20060101AFI20220719BHJP
   E04B 1/76 20060101ALI20220719BHJP
【FI】
E04B1/72
E04B1/76 500Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021003722
(22)【出願日】2021-01-13
(71)【出願人】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】390039295
【氏名又は名称】株式会社コシイプレザービング
(74)【代理人】
【識別番号】100117101
【弁理士】
【氏名又は名称】西木 信夫
(74)【代理人】
【識別番号】100120318
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 朋浩
(72)【発明者】
【氏名】高橋 一聡
(72)【発明者】
【氏名】馬場 祐
(72)【発明者】
【氏名】畑 義行
(72)【発明者】
【氏名】久保 友治
(72)【発明者】
【氏名】奥埜 佑馬
【テーマコード(参考)】
2E001
【Fターム(参考)】
2E001DD01
2E001DH14
2E001FA21
2E001GA12
2E001GA24
2E001HF11
(57)【要約】
【課題】基礎構造体のメンテナンスを容易、確実にする。
【解決手段】基礎構造体は、延出方向に沿って延びる立上り13を有する布基礎11と、立上り13の側面15の下部に主面21が当接し、上面23が水平方向に沿う板状の下断熱材20と、立上り13の側面15の上部に主面31が当接し、下面34が水平方向に沿っており、下断熱材20と隙間(配置空間62)を空けて位置する板状の上断熱材30と、配置空間62に位置する複数の多孔質粒状体61及び多孔質粒状体61に保持された防蟻薬剤を有する防蟻部材60と、配置空間62の開口を閉塞するシート部材19と、を備える。シート部材19は、施工時において、配置空間62から多孔質粒状体61が脱落することを防止する。メンテナンスにおいて配置空間62に注入された防蟻薬剤は、複数の多孔質粒状体61の隙間を通じて延出方向に拡がる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向に沿う延出方向に沿って延びる立上りを有する基礎と、
上記立上りの側面に第1の主面が当接し、上面が水平方向に沿う板状の下断熱材と、
上記立上りの上記側面に第1の主面が当接し、下面が水平方向に沿っており、下方に位置する上記下断熱材と隙間を空けて位置する板状の上断熱材と、
上記隙間に位置する複数の多孔質粒状体及び当該多孔質粒状体に保持された防蟻薬剤を有する防蟻部材と、を備える基礎構造体。
【請求項2】
上記下断熱材の第2の主面を覆う板状の下外装材と、
上記上断熱材の第2の主面を覆う板状の上外装材と、
上記下外装材と上記上外装材との間であって、上記隙間の開口に対向する目地材と、をさらに備える請求項1に記載の基礎構造体。
【請求項3】
少なくとも上記第1の主面と対向する第2の主面における上記隙間の開口を閉塞するシート部材をさらに備える、請求項1または2に記載の基礎構造体。
【請求項4】
上記下断熱材は、
板状の断熱材本体と、
上記断熱材本体を覆うシート体とを有しており、
上記シート部材は、上記シート体から延出する、請求項3に記載の基礎構造体。
【請求項5】
水平方向に沿う延出方向に沿って延びる立上りを有する基礎と、上記立上りの側面に第1の主面が当接し、上面が水平方向に沿う板状の下断熱材と、上記立上りの上記側面に第1の主面が当接し、下面が水平方向に沿っており、下方に位置する上記下断熱材と隙間を空けて位置する板状の上断熱材と、上記隙間に位置する複数の多孔質粒状体及び当該多孔質粒状体に保持された防蟻薬剤を有する防蟻部材と、上記下断熱材の第2の主面を覆う板状の下外装材と、上記上断熱材の第2の主面を覆う板状の上外装材と、上記下外装材及び上記上外装材の間であって、上記隙間の開口に対向する目地材と、を備える基礎構造体のメンテナンス方法であって、
上記目地材に貫通孔を設ける第1工程と、
上記貫通孔にノズルを挿通させる第2工程と、
上記ノズルから上記隙間に防蟻薬剤を注入する第3工程と、を備える基礎構造体のメンテナンス方法。
【請求項6】
上記基礎構造体は、少なくとも上記第1の主面と対向する第2の主面における上記隙間の開口を閉塞するシート部材をさらに備えており、
上記第1工程は、上記シート部材に貫通孔を設ける工程を含む、請求項5に記載の基礎構造体のメンテナンス方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基礎構造体において断熱及び防蟻を行う技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、立上りを有する基礎と、当該立上りの側面に貼り付けられた下断熱材及び上断熱材と、防蟻部材(白蟻忌避部材)と、を備える基礎構造体を開示する。防蟻部材は、下断熱材と上断熱材との間に位置している。防蟻部材は、合成樹脂発泡体に白蟻忌避剤を含浸させることによって形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-177441号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
基礎構造体の施工後、時間の経過とともに、合成樹脂発泡体が保持する白蟻忌避剤の効果が減少する。例えば、基礎構造体の施工から10年などの所定の期間が経過した場合、合成樹脂発泡体に白蟻忌避剤を再度付着させるメンテナンスが必要になる。
【0005】
合成樹脂発泡体の外側に外装材が位置すると、合成樹脂発泡体に白蟻忌避剤を直接に付着させることができない。また、合成樹脂発泡体と基礎の立ち上がりの側面との間などにも白蟻忌避剤を流入する必要がある。したがって、メンテナンスにおいては、例えばノズルを有する薬剤注入装置を用いて外装材の外側からノズルを挿入し、ノズルから注入した白蟻忌避剤を合成樹脂発泡体に付着させる。ノズルから流出した白蟻忌避剤が拡散する範囲は限定的なので、白蟻忌避剤を合成樹脂発泡体の表面全体に満遍なく付着させるためには、多数の位置にノズルを挿入して白蟻忌避剤を注入する必要があり、メンテナンスに手間がかかるという問題があった。
【0006】
また、そもそも合成樹脂発泡体は疎水性材料であるため、工場などで成形前の材料に白蟻忌避剤を固着させて防蟻性能を付与する技術はあるが、成分のほとんどが水である白蟻忌避剤を現場処理しても、表面に固着できないという問題があり、更新時の薬剤担持層としての十分条件を満たしていないという技術的な問題があった。
【0007】
本発明は、前述された事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、基礎構造体のメンテナンスを容易、確実にする技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1) 本発明に係る基礎構造体は、水平方向に沿う延出方向に沿って延びる立上りを有する基礎と、上記立上りの側面に第1の主面が当接し、上面が水平方向に沿う板状の下断熱材と、上記立上りの上記側面に第1の主面が当接し、下面が水平方向に沿っており、下方に位置する上記下断熱材と隙間を空けて位置する板状の上断熱材と、上記隙間に位置する複数の多孔質粒状体及び当該多孔質粒状体に保持された防蟻薬剤を有する防蟻部材と、を備える。
【0009】
基礎構造体のメンテナンスにおいて、下断熱材と上断熱材との隙間に注入された防蟻薬剤は、複数の多孔質粒状体の隙間を通じて延出方向に拡がる。
【0010】
(2) 本発明に係る基礎構造体は、上記下断熱材の第2の主面を覆う板状の下外装材と、上記上断熱材の第2の主面を覆う板状の上外装材と、上記下外装材と上記上外装材との間であって、上記隙間の開口に対向する目地材と、をさらに備えていてもよい。
【0011】
上記構成によれば、下外装材と上外装材との間の目地材の奥に、防蟻部材が配置された上記隙間が位置する。したがって、作業者は、防蟻部材の位置を確認することなく、防蟻部材が配置された空間(隙間)に防蟻薬剤を注入することができる。その結果、基礎構造体のメンテナンスがさらに容易になる。
【0012】
(3) 本発明に係る基礎構造体は、少なくとも上記第1の主面と対向する第2の主面における上記隙間の開口を閉塞するシート部材をさらに備えていてもよい。
【0013】
基礎構造体の施工時において、複数の多孔質粒状体は、シート部材によって、下断熱材の上面の上に保持される。
【0014】
(4) 上記下断熱材は、板状の断熱材本体と、上記断熱材本体を覆うシート体とを有しており、上記シート部材は、上記シート体から延出していてもよい。
【0015】
断熱材本体を覆うシート体は、断熱材本体が白蟻によって食害されることを防止する。
【0016】
(5) 本発明に係る基礎構造体のメンテナンス方法は、水平方向に沿う延出方向に沿って延びる立上りを有する基礎と、上記立上りの側面に第1の主面が当接し、上面が水平方向に沿う板状の下断熱材と、上記立上りの上記側面に第1の主面が当接し、下面が水平方向に沿っており、下方に位置する上記下断熱材と隙間を空けて位置する板状の上断熱材と、上記隙間に位置する複数の多孔質粒状体及び当該多孔質粒状体に保持された防蟻薬剤を有する防蟻部材と、上記下断熱材の第2の主面を覆う板状の下外装材と、上記上断熱材の第2の主面を覆う板状の上外装材と、上記下外装材及び上記上外装材の間であって、上記隙間の開口に対向する目地材と、を備える基礎構造体のメンテナンス方法であって、上記目地材に貫通孔を設ける第1工程と、上記貫通孔にノズルを挿通させる第2工程と、上記ノズルから上記隙間に防蟻薬剤を注入する第3工程と、を備える。
【0017】
本発明は、基礎構造体のメンテナンス方法として捉えることもできる。
【0018】
(6) 上記基礎構造体は、少なくとも上記第1の主面と対向する第2の主面における上記隙間の開口を閉塞するシート部材をさらに備えており、上記第1工程は、上記シート部材に貫通孔を設ける工程を含んでいてもよい。
【0019】
目地材及びシート部材に設けられた貫通孔を通じて、多孔質粒状体が配置された空間に防蟻薬剤が注入される。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、防蟻性能を有する基礎構造体のメンテナンスが容易、確実である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1(A)は、基礎構造体10の一部の斜視図であり、図1(B)は、外装材41、42を外した状態の基礎構造体10の一部の斜視図である。
図2図2は、布基礎11を打設する工程を説明する説明図である。
図3図3は、基礎構造体10の縦断面図である。
図4図4は、基礎構造体10の施工方法を説明する説明図である。
図5図5は、基礎構造体10のメンテナンス方法を説明する説明図である。
図6図6は、変形例における下断熱材25を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明される実施形態は、本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、本発明の実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。
【0023】
図1は、建物の躯体(不図示)を支持する基礎構造体10の一部の斜視図である。基礎構造体10は、布基礎11と、下断熱材20及び上断熱材30と、シート部材19と、下外装材41及び上外装材42と、目地材64と、を備える。なお、布基礎11に代えて、べた基礎が用いられてもよい。
【0024】
布基礎11は、フーチング12と、立上り13と、複数のアンカーボルト14と、を備える。フーチング12は、図3に示されるように地中に埋設されている。立上り13は、フーチング12から上向きに突出している。すなわち、立上り13は、地面から上向きに突出している。立上り13の上面16は、図1に示されるように、水平方向に沿う延出方向9に沿って延びている。なお、以下では、水平方向に沿い、かつ延出方向9に直交する方向を幅方向8と記載して説明する。
【0025】
作業者は、例えば図2に示されるように、地面に設けた溝51に砕石(不図示)を敷設した後、捨てコンクリート52を打設し、次いで溝51に沿って型枠53を設置する。作業者は、型枠53に保持させて鉄筋(不図示)を設置し、かつ支持板54を用いてアンカーボルト14を設置した後、型枠53内に生コンクリートを流し込んで布基礎11を打設する。
【0026】
アンカーボルト14は、立上り13に埋設された不図示の埋設部と、埋設部から上向きに突出するボルト部と、を有する。図1に示されるように、打設された布基礎11においては、アンカーボルト14のボルト部のみが視認可能である。
【0027】
アンカーボルト14及びナット(不図示)は、例えば柱脚金具を固定する。当該柱脚金具は、柱を固定する。当該柱は、梁などの構造材を固定する。すなわち、基礎構造体10は、柱や梁などからなる建物の躯体を支持する。なお、アンカーボルト14の配置本数、配置方法は、建物構造によって様々な形態があるため、本図示内容によって、実施形態を制限するものではない。
【0028】
下断熱材20は、図1及び図3に示されるように、2つの主面21、22及び4つの端面を有する矩形板状である。下断熱材20の一辺の長さ(図における上下方向の長さ)は、上下方向における立上り13の長さの約半分である。
【0029】
作業者は、例えば下断熱材20の主面21或いは布基礎11の立上り13の側面15の下部に接着剤を塗布し、側面15の下端と下断熱材20の一端面とを上下方向において位置合わせして、図4(A)に示されるように下断熱材20を布基礎11に貼り付ける。すなわち、下断熱材20の主面21は、布基礎11の立上り13の側面15の下部に当接している。主面21は、下断熱材の第1の主面の一例である。なお、接着剤には、例えば変成シリコーン系の接着剤が用いられる。また、下断熱材20が貼り付けられる立上り13は、基礎構造体10の外周を形成しており、側面15は、建物の外側を向く、いわゆる外側面である。
【0030】
立上り13の側面15に貼り付けられた下断熱材20の4つの端面のうちの2つの端面は、水平方向に沿い、他の2つの端面は、上下方向に沿う。水平方向に沿う2つの端面のうち、上にある方の端面は上面23であり、下にある方の端面は下面24である。すなわち、下断熱材20の上面23は、幅方向8及び延出方向9に沿い、かつ延出方向9に沿って延びる矩形の平面である。そして、上面23は、上下方向における立上り13の中間位置近くに位置している。なお、以下では、下断熱材20の上下方向に沿う2つの端面を側端面と記載して説明する。
【0031】
複数の下断熱材20が、立上り13に貼り付けられている。一の下断熱材20の側端面は、他の下断熱材20の側端面と当接している。すなわち、複数の下断熱材20は、延出方向9において互いに隣接して並んでいる。複数の下断熱材20の各上面23は、ほぼ段差無く並んでいる。すなわち、複数の上面23は、ほぼ面一である。
【0032】
図4(A)に示されるように、矩形状の細長いシート部材19が、ホットメルトなどの不燃性の接着剤を用いて下断熱材20に貼り付けられている。作業者は、例えばシート部材19の下端部或いは下断熱材20の主面22の上端部にホットメルトを塗布し、ヒートガンを用いてホットメルトを加熱して、シート部材19を下断熱材20の主面22に貼り付ける。すなわち、シート部材19は、下断熱材20の主面22の上端から上向きに突出している。
【0033】
延出方向9におけるシート部材19の長さは、延出方向9における下断熱材20の長さと同じであってもよいし、下断熱材20の長さの整数倍の長さであってもよい。すなわち、シート部材19は、1つの下断熱材20に貼り付けられていてもよいし、複数の下断熱材20に貼り付けられていてもよい。図4(B)に示す例では、シート部材19は、複数の下断熱材20に貼り付けられている。
【0034】
シート部材19は、白蟻が齧ることができない硬度であって、かつ後述のメンテナンスにおいて作業者が容易に貫通孔66(図5(B))を設けることが可能な硬度であることが好ましい。例えば、シート部材19は、単一のシート或いは複数の層からなる積層シートであり、約10μm~800μm程度の範囲の厚みとされる。好ましくは、シート部材19は、約10μm~400μm程度の範囲の厚みとされる。さらに好ましくは、シート部材19は、約40μm~80μmの範囲の厚みとされる。例えば、シート部材19は、厚みが約50μmのポリエチレンテレフタレート系樹脂シートに、厚みが約25μmのエチレン酢酸ビニル共重合(EVA)系樹脂を接着層として積層して形成される。なお、上記以外の厚み及び材質のシート部材19が用いられていてもよい。
【0035】
下断熱材20に貼り付けられたシート部材19は、図3に示されるように、幅方向8において立上り13の側面15と対向している。また、シート部材19は、延出方向9に沿って延びている。延出方向9に沿って延びるシート部材19は、下断熱材20の上面23及び立上り13の側面15とともに、複数の多孔質粒状体61(図4(C))が配置される配置空間62を区画する。
【0036】
作業者は、図4(C)に示されるように、複数の多孔質粒状体61を配置空間62に配置する。多孔質粒状体61は、複数の孔を有しており、液状の防蟻薬剤を保持可能である。作業者は、例えば、多孔質粒状体61に防蟻薬剤を含浸させた後、多孔質粒状体61を配置空間62に配置し、或いは、多孔質粒状体61を配置空間62に配置した後、防蟻薬剤を配置空間62に流し込む。多孔質粒状体61と、多孔質粒状体61に保持された防蟻薬剤とは、防蟻部材60(図3)を形成する。なお、図3に示されるように、多孔質粒状体61は、シート部材19の上端まで敷設されず、上端よりも下となる位置まで敷設されている。すなわち、シート部材19の上端部は、防蟻部材60よりも上に位置する。シート部材19の上端部は、後述の上断熱材30の仮保持に用いられる。
【0037】
多孔質粒状体61は、球形である。したがって、図3の拡大図が示すように、配置空間62に配置された複数の多孔質粒状体61の間には、隙間が形成される。後述のメンテナンスにおいて、当該隙間を通じて液状の防蟻薬剤が延出方向9に拡がる。延出方向9において防蟻薬剤が拡がり易く、かつ適正な量の防蟻薬剤を保持できるように、多孔質粒状体61の直径は、5mm以下が好ましい。多孔質粒状体61として、例えば、いわゆる軽石や、高吸水性ポリマー等が用いられる。高吸水性ポリマーは、例えば、デンプンとアクリロニトリルとのクラフト共重合体を加水分解することによって生成される。
【0038】
上断熱材30は、図1及び図3に示されるように、2つの主面31、32及び4つの端面を有する矩形板状である。上断熱材30の一辺の長さ(図における上下方向の長さ)は、上下方向における立上り13の長さの約半分である。
【0039】
作業者は、例えば上断熱材30の主面31或いは布基礎11の立上り13の側面15の上部に接着剤を塗布した後、主面31が立上り13の側面15に当接しないように、かつ主面32がシート部材19に当接するようにして上断熱材30を防蟻部材60の上に載置する。次に、作業者は、上断熱材30を立上り13側に倒して上断熱材30の主面31を立上り13の側面15に当接させ、図4(D)に示されるように上断熱材30を布基礎11に貼り付ける。主面31は、上断熱材の第1の主面の一例である。なお、接着剤には、例えば変成シリコーン系の接着剤が用いられる。
【0040】
立上り13の側面15に貼り付けられた上断熱材30の4つの端面のうちの2つの端面は、水平方向に沿い、他の2つの端面は、上下方向に沿う。水平方向に沿う2つの端面のうち、上にある方の端面は上面33であり、下にある方の端面は下面34である。すなわち、下断熱材20の下面34は、幅方向8及び延出方向9に沿い、かつ延出方向9に沿って延びる矩形の平面であって、上下方向において、下断熱材20の上面23と対向している。すなわち、上断熱材30は、下断熱材20と隙間(配置空間62)を空けて下断熱材20の上に位置している。上述のシート部材19は、下断熱材20と上断熱材30との隙間の開口を閉塞し、当該開口から防蟻薬剤が流出することを防止する。
【0041】
複数の上断熱材30が、立上り13に貼り付けられている。一の上断熱材30の側端面は、他の上断熱材30の側端面と当接している。すなわち、複数の上断熱材30は、延出方向9において互いに隣接して並んでいる。複数の上断熱材30の各下面34は、ほぼ段差無く並んでいる。すなわち、複数の下面34は、ほぼ面一である。
【0042】
下断熱材20及び上断熱材30は、例えば、以下に挙げる一の樹脂、或いは複数の樹脂を発泡させて成形される。使用可能な樹脂として、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリスチレン(PS)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、フッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン)、アクリルニトリルブタジエンスチレン(ABS)樹脂、アクリルニトリルスチレン(AS)樹脂、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)等の汎用プラスチックが挙げられる。また、使用可能な樹脂として、ポリアミド(PA)、ポリアセタール(POM)、ポリカーボネート(PC)、変性ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリブチレンテレフタラート(PBT)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、環状ポリオレフィン(COP)等のエンジニアリングプラスチックが挙げられる。また、使用可能な樹脂として、ポリイミド(PI)、フェノール樹脂(PF)、エポキシ樹脂(EP)、メラミン樹脂(MF)、尿素樹脂(UF)、不飽和ポリエステル樹脂(UP)、アルキド樹脂等の熱硬化性樹脂が挙げられる。なお、上記樹脂のうち、汎用プラスチックに含まれるポリスチレン(PS)やアクリルニトリルスチレン(AS)樹脂、或いはこれらの混合物が、発泡させた際に優れた断熱性能及び好適な機械的強度を有するため好ましい。また、下断熱材20及び上断熱材30は、押出発泡成形や金型を用いた型内発泡成形等の公知の方法により上記樹脂を発泡成形することで製造できるが、断熱性能及び機械的強度の観点から押出発泡成形品が好ましい。
【0043】
下断熱材20及び上断熱材30の厚みは、例えば同一であり、数十mmから百数十mmの範囲内とされる。延出方向9における下断熱材20及び上断熱材30の長さは、例えば同一であり、数十cmから二百数十cmの範囲内とされる。上下方向における上断熱材30の長さは、上下方向における立上り13の長さの約半分であり、数十cmから百数十cmの範囲内とされる。下断熱材20及び上断熱材30は、例えば、厚み15mm~200mm、幅800mm~1000mm、長さ900mm~3000mmの定尺の原板を、建物の仕様に応じて切断等して用いられる。なお、上断熱材30が下断熱材20よりも安価である場合、上下方向における上断熱材30の長さは、可能な範囲で長くされてもよい。
【0044】
下外装材41は、矩形板状である。下外装材41は、例えば、厚みが数mm程度の無機系成型材である。下外装材41の主面は、下断熱材20の主面22と略同一の形状及び大きさである。作業者は、図4(E)に示されるように、下外装材41の主面を下断熱材20の主面22に当接させて、下外装材41を下断熱材20に取り付ける。すなわち、下外装材41は、下断熱材20を覆う。下断熱材20の主面22は、第2の主面の一例である。
【0045】
上外装材42は、矩形板状である。上外装材42は、例えば、厚みが数mm程度の無機系成型材である。上外装材42の主面は、上断熱材30の主面32と略同一の形状及び大きさである。作業者は、図4(E)に示されるように、上外装材42の主面を上断熱材30の主面32に当接させて、上外装材42を上断熱材30に取り付ける。すなわち、上外装材42は、上断熱材30を覆う。上断熱材30の主面32は、第2の主面の一例である。
【0046】
図3に示されるように、下断熱材20に取り付けられた下外装材41と、上断熱材30に取り付けられた上外装材42との隙間は、例えば変成シリコーン系の目地材64によって埋められている。作業者は、下外装材41及び上外装材42を断熱材20、30に取り付けた後(図4(E))、図4(F)に示されるように、目地材64を下外装材41と上外装材42との隙間に注入して、目地材64を施工する。
【0047】
なお、下外装材41が下断熱材20に予め取り付けられており、また、上外装材42が上断熱材30に予め取り付けられていてもよい。その場合、作業者は、一体である下外装材41及び下断熱材20と、一体である上外装材42及び上断熱材30とを立上り13に貼り付けた後、目地材64を下外装材41と上外装材42との隙間に注入して目地材64を施工する。
【0048】
目地材64は、防蟻部材60及びシート部材19の側方に位置しており、幅方向8において、下断熱材20と上断熱材30との隙間(配置空間62)の開口と対向している。すなわち、防蟻部材60は、目地材64の奥に位置している。したがって、後述のメンテナンスにおいて、目地材64を通じて防蟻薬剤を配置空間62に注入することができる。
【0049】
複数の多孔質粒状体61の隙間にある防蟻薬剤、或いは多孔質粒状体61の孔から染み出した防蟻薬剤は、時間の経過とともに下断熱材20と立上り13の側面15との隙間、及び隣接する複数の下断熱材20の隙間に浸入する。当該隙間に浸入した防蟻薬剤は、白蟻が当該隙間を通って躯体に侵入することを防止する。なお、防蟻薬剤は、シート部材19により、隙間(配置空間62)の開口から流出することを防止される。すなわち、防蟻薬剤は、効率良く下断熱材20と立上り13の側面15との隙間や隣接する複数の下断熱材20の隙間に浸入する。
【0050】
建物が建てられてから、約10年などの耐用期間が経過すると、配置空間62に保持された防蟻薬剤が枯渇する。当該耐用期間の経過後、或いは経過前に、防蟻薬剤を配置空間62に注入するメンテナンスが行われる。すなわち、メンテナンスは、約10年などの耐用期間ごとに行われる。
【0051】
当該メンテナンスにおいて、作業者は、針状の器具を用いて、目地材64及びシート部材19に貫通孔65、66(図5)を設ける。目地材64の貫通孔65とシート部材19の貫通孔66とは、幅方向8において並んでいる。作業者が目地材64及びシート部材19に貫通孔66を設ける工程は、第1工程の一例である。
【0052】
作業者は、貫通孔65、66を設けた後、薬剤注入装置70のノズル71を貫通孔65、66に挿通させて、液状の防蟻薬剤を配置空間62に注入する。配置空間62に注入された防蟻薬剤は、複数の多孔質粒状体61の隙間を通じて延出方向9に拡がるとともに、多孔質粒状体61の孔に浸入する。また、配置空間62に拡がった防蟻薬剤は、立上り13の側面15と下断熱材20との隙間、及び隣接する複数の下断熱材20の隙間に浸入し、当該隙間から白蟻が建物の躯体に侵入することを防止する。なお、防蟻薬剤は、配置空間62に拡がる際、シート部材19により、下断熱材20と上断熱材30との隙間(配置空間62)の開口から流出することを防止される。作業者がノズル71をシート部材19の貫通孔66に挿通する工程は、第2工程の一例である。作業者が防蟻薬剤を配置空間62に注入する工程は、第3工程の一例である。
【0053】
[作用効果]
本実施形態では、シート部材19によって、複数の多孔質粒状体61が配置空間62から脱落することが防止される。したがって、基礎構造体10の施工が容易になる。
【0054】
また、本実施形態では、基礎構造体10のメンテナンスにおいて、下断熱材20と上断熱材30との隙間(配置空間62)に注入された防蟻薬剤は、複数の多孔質粒状体61の隙間を通じて延出方向9に拡がる。したがって、延出方向9における目地材64の端から端に亘って多数の貫通孔65、66を設けなくても、防蟻薬剤を配置空間62に満遍なく行き渡らせることができる。その結果、基礎構造体10のメンテナンスが容易、確実になる。
【0055】
また、本実施形態では、基礎構造体10のメンテナンスにおいて、下断熱材20と上断熱材30との隙間(配置空間62)に注入された防蟻薬剤は、シート部材19によって当該隙間の開口から流出することを防止される。すなわち、基礎構造体10は、防蟻薬剤の使用量を低減することができる。
【0056】
また、本実施形態では、目地材64の奥に防蟻部材60が位置する。したがって、作業者は、上下方向において防蟻部材60がどこに位置するかを把握することなく、目地材64に貫通孔65を設けて、防蟻部材60が配置された配置空間62に防蟻薬剤を注入することができる。その結果、防蟻部材60がどこに位置するかを把握する作業者の手間が省かれ、基礎構造体10のメンテナンスがさらに容易になる。
【0057】
[変形例]
本変形例では、図3に示される下断熱材20及びシート部材19に代えて図6に示される下断熱材25を備える基礎構造体10(図1)が説明される。なお、実施形態で説明した構成と同一の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。また、以下で説明する構成以外の構成は、実施形態で説明した構成と同一である。
【0058】
下断熱材25は、図6(A)に示される断熱材本体80と、断熱材本体80に貼り付けられたシート体90(図6(B))とを有する。断熱材本体80の構成は、下断熱材20の構成と同一であり、断熱材本体80は、主面81、82、上面83、下面84、及び2つの側端面を有する矩形板状である。
【0059】
シート体90は、ホットメルトなどの接着剤を用いて、断熱材本体80の主面81、82、上面83、及び下面84に貼り付けられている。すなわち、シート体90は、断熱材本体80の主面81、82、上面83、及び下面84を覆っている。シート体90の端部であって、断熱材本体80の主面82に貼り付けられた部分と連続する端部92は、断熱材本体80の主面82の上端から上向きに突出している。また、シート体90の他の端部であって、断熱材本体80の上面83に貼り付けられた部分と連続する端部93は、断熱材本体80の上面83と主面82とが交わる端から上向きに突出している。端部92と端部93とは、ホットメルトなどの接着剤によって互いに接着されており、シート部材19を形成している。すなわち、シート体90は、断熱材本体80に貼り付けられた部分であるシート本体91と、シート本体91から上向きに突出するシート部材19とを有している。なお、シート体90は、1つのシートで構成されていてもよいし、複数枚のシートで構成されていてもよい。
【0060】
シート体90の厚みや材質等は、実施形態で説明したシート部材19の厚みや材質と同じである。
【0061】
作業者は、下断熱材25の主面21を立上り13の側面15(図3)に当接させて、下断熱材25を立上り13に貼り付ける。
【0062】
[変形例の作用効果]
本変形例では、シート体90は、断熱材本体80の主面81、82、上面83、及び下面84を覆う。したがって、基礎構造体10は、白蟻による断熱材本体80の食害を防止することができる。
【0063】
また、断熱材本体80の上面83がシート体90で覆われているから、配置空間62に注入された防蟻薬剤が断熱材本体80の上端部に染み込むことが防止される。その結果、基礎構造体10は、メンテナンスにおいて配置空間62に注入される防蟻薬剤の使用量を低減することができる。
【0064】
なお、下断熱材25のシート部材19は、ホットメルトや変成シリコーンなどの接着剤を用いて上断熱材30の主面32に貼り付けられていてもよい。
【0065】
また、下断熱材25のシート部材19は、シート本体91の端部92、93によって形成されていなくてもよい。シート部材19は、実施形態と同様に、シートをシート本体91に貼り付けることによって形成されていてもよい。
【0066】
また、断熱材本体80の主面81、82、上面83、及び下面84に加え、側端面もシート本体91によって覆われていてもよい。
【0067】
[その他の変形例]
上述の実施形態では、下外装材41及び上外装材42が下断熱材20及び上断熱材30に装着された例を説明した。しかしながら、下外装材41及び上外装材42が下断熱材20及び上断熱材30に装着されていなくてもよい。
【0068】
上述の実施形態では、布基礎11の外周を構成する立上り13の外側面である側面15に下断熱材20及び上断熱材30が貼り付けられた例を説明した。しかしながら、下断熱材20及び上断熱材30は、立上り13の内側面に貼り付けられていてもよい。その場合、下外装材41及び上外装材42は設けられない。例えば、シート部材19より下の位置において下断熱材20の主面22に当接する土間コンクリートが設けられる。すなわち、シート部材19は、外部に露出する。作業者は、メンテナンスにおいて、外部に露出するシート部材19に貫通孔66を設けた後、当該貫通孔66にノズル71を挿通して、防蟻薬剤を配置空間62に注入する。なお、下断熱材20に代えて、変形例で説明した下断熱材25が用いられてもよい。
【0069】
上述の実施形態では、下断熱材20を立上り13に貼り付けた後、シート部材19を下断熱材20に貼り付ける例を説明した。しかしながら、建築現場或いは工場等においてシート部材19が下断熱材20に貼り付けられていてもよい。作業者は、シート部材19が貼り付けられた下断熱材20を立上り13に貼り付ける。
【0070】
上述の実施形態において、シート部材19の上端部は、ホットメルトや変成シリコーンなどの接着剤を用いて上断熱材30の主面32に貼り付けられていてもよい。シート部材19の下端部及び上端部が固定されることにより、シート部材19に貫通孔66を設ける際に、シート部材19が変形することが防止される。
【符号の説明】
【0071】
10・・・基礎構造体
11・・・布基礎(基礎)
13・・・立上り
15・・・側面
19・・・シート部材
20、25・・・下断熱材
21・・・主面(第1の主面)
22・・・主面(第2の主面)
23・・・上面
30・・・下断熱材
31・・・主面(第1の主面)
32・・・主面(第2の主面)
34・・・下面
41・・・下外装材
42・・・上外装材
60・・・防蟻部材
61・・・多孔質粒状体
62・・・配置空間(隙間)
64・・・目地材
65、66・・・貫通孔
71・・・ノズル
80・・・断熱材本体
図1
図2
図3
図4
図5
図6