(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022108632
(43)【公開日】2022-07-26
(54)【発明の名称】基礎構造体の施工方法、及び基礎構造体のメンテナンス方法
(51)【国際特許分類】
E04B 1/76 20060101AFI20220719BHJP
E04B 1/72 20060101ALI20220719BHJP
【FI】
E04B1/76 500Z
E04B1/72
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021003737
(22)【出願日】2021-01-13
(71)【出願人】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】390039295
【氏名又は名称】株式会社コシイプレザービング
(74)【代理人】
【識別番号】100117101
【弁理士】
【氏名又は名称】西木 信夫
(74)【代理人】
【識別番号】100120318
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 朋浩
(72)【発明者】
【氏名】高橋 一聡
(72)【発明者】
【氏名】馬場 祐
(72)【発明者】
【氏名】畑 義行
(72)【発明者】
【氏名】久保 友治
(72)【発明者】
【氏名】奥埜 佑馬
【テーマコード(参考)】
2E001
【Fターム(参考)】
2E001DD01
2E001DH14
2E001FA21
2E001GA12
2E001HD02
2E001HD03
2E001HD05
2E001HD06
2E001HD07
2E001HD08
2E001HD09
(57)【要約】 (修正有)
【課題】基礎構造体の施工やメンテナンスを容易、確実にすることができる基礎構造体の施工方法を提供する。
【解決手段】基礎構造体は、立上り13を有する布基礎11と、立上り13に取り付けられた水切受金具75と、立上り13に貼り付けられた上断熱材20と、上断熱材20の下方に上断熱材20と隙間(配置空間62)を空けて立上り13に貼り付けられた下断熱材30と、配置空間62に詰め込まれた複数の多孔質粒状体を有する防蟻部材60と、を備える。基礎構造体の施工において、上断熱材20は、その上面23を水切受金具75に当接されることによって位置決めされる。基礎構造体のメンテナンスにおいて、目地材64に設けられた貫通孔を通じて防蟻薬剤が配置空間62に注入される。配置空間62に注入された防蟻薬剤は、複数の多孔質粒状体の隙間を通じて拡がる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向に沿う延出方向に沿って延びる立上りを有する基礎と、上記立上りに取り付けられており、当該立上りの側面と交差する向きに延びる第1片及び当該第1片の先端から下向きに突出する第2片を有する取付部材と、上記取付部材の下方に位置しており、第1の主面が上記立上りの側面に当接しており、かつ下面が水平方向に沿う板状の上断熱材と、上記上断熱材の下方に当該上断熱材と隙間を空けて位置しており、第1の主面が上記立上りの側面に当接し、かつ上面が水平方向に沿う板状の下断熱材と、上記上断熱材と上記下断熱材との隙間に位置する複数の多孔質粒状体、及び当該多孔質粒状体に保持された防蟻薬剤を有する防蟻部材と、を備える基礎構造体の施工方法であって、
上記基礎を打設する第1工程と、
上記取付部材を上記立上りに取り付ける第2工程と、
上記上断熱材の上面を上記取付部材の上記第1片に当接させた後、上記第1の主面を上記立上りの上記側面に当接させて当該上断熱材を当該立上りに貼り付ける第3工程と、
上記下断熱材を上記立上りに貼り付ける第4工程と、
上記上断熱材と上記下断熱材との隙間に複数の多孔質粒状体を配置する第5工程と、を備える基礎構造体の施工方法。
【請求項2】
水平方向に沿う延出方向に沿って延びる立上りを有する基礎と、上記立上りに取り付けられており、当該立上りの側面と交差する向きに延びる第1片及び当該第1片の先端から下向きに突出する第2片を有する取付部材と、上記取付部材の下方に位置しており、第1の主面が上記立上りの側面に当接しており、かつ下面が水平方向に沿う板状の上断熱材と、上記上断熱材の下方に当該上断熱材と隙間を空けて位置しており、第1の主面が上記立上りの側面に当接し、かつ上面が水平方向に沿う板状の下断熱材と、上記上断熱材と上記下断熱材との隙間に位置する複数の多孔質粒状体、及び当該多孔質粒状体に保持された防蟻薬剤を有する防蟻部材と、を備える基礎構造体の施工方法であって、
上記基礎を打設する第1工程と、
上記取付部材を上記立上りに取り付ける第2工程と、
上記下断熱材を上記立上りに貼り付ける第3工程と、
上記上断熱材の上面を上記取付部材の上記第1片に当接させた後、上記第1の主面を上記立上りの上記側面に当接させて当該上断熱材を当該立上りに貼り付ける第4工程と、
上記上断熱材と上記下断熱材との隙間に複数の多孔質粒状体を配置する第5工程と、を備える基礎構造体の施工方法。
【請求項3】
水平方向に沿う延出方向に沿って延びる立上りを有する基礎と、上記立上りに取り付けられており、当該立上りの側面と交差する向きに延びる第1片及び当該第1片の先端から下向きに突出する第2片を有する取付部材と、上記取付部材の下方に位置しており、第1の主面が上記立上りの側面に当接しており、かつ下面が水平方向に沿う板状の上断熱材と、上記上断熱材の下方に当該上断熱材と隙間を空けて位置しており、第1の主面が上記立上りの側面に当接し、かつ上面が水平方向に沿う板状の下断熱材と、上記上断熱材と上記下断熱材との隙間に位置する複数の多孔質粒状体、及び当該多孔質粒状体に保持された防蟻薬剤を有する防蟻部材と、上記上断熱材の第2の主面を覆う上外装材と、上記下断熱材の第2の主面を覆っており、上下方向において上記上外装材の下方に当該上外装材と隙間を空けて位置する下外装材と、上記上外装材と上記下外装材との隙間に位置しており、上記上断熱材と上記下断熱材との隙間の開口を閉塞する目地材と、を備える基礎構造体のメンテナンス方法であって、
上記目地材に貫通孔を設ける第1工程と、
上記貫通孔にノズルを挿通させる第2工程と、
上記ノズルから、上記上断熱材と上記下断熱材との隙間に防蟻薬剤を注入する第3工程と、を備える基礎構造体のメンテナンス方法。
【請求項4】
上記基礎構造体は、上記上断熱材と上記下断熱材との隙間の開口を閉塞するシート部材をさらに備えており、
上記第1工程は、上記シート部材に貫通孔を設ける工程を含む、請求項3に記載の基礎構造体のメンテナンス方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基礎構造体において断熱及び防蟻を行う技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、立上りを有する基礎と、当該立上りの側面に貼り付けられた下断熱材及び上断熱材と、防蟻部材(白蟻忌避部材)と、を備える基礎構造体を開示する。防蟻部材は、下断熱材と上断熱材との間に位置している。防蟻部材は、合成樹脂発泡体に白蟻忌避剤を含浸させることによって形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
基礎構造体の施工後、時間の経過とともに、合成樹脂発泡体が保持する白蟻忌避剤の効果が減少する。例えば、基礎構造体の施工から10年などの所定の期間が経過した場合、合成樹脂発泡体に白蟻忌避剤を再度付着させるメンテナンスが必要になる。
【0005】
合成樹脂発泡体の外側に外装材が位置すると、合成樹脂発泡体に白蟻忌避剤を直接に付着させることができない。また、合成樹脂発泡体と基礎の立ち上がりの側面との間などにも白蟻忌避剤を流入する必要がある。したがって、メンテナンスにおいては、例えばノズルを有する薬剤注入装置を用いて外装材の外側からノズルを挿入し、ノズルから注入した白蟻忌避剤を合成樹脂発泡体に付着させる。ノズルから流出した白蟻忌避剤が拡散する範囲は限定的なので、白蟻忌避剤を合成樹脂発泡体の表面全体に満遍なく付着させるためには、多数の位置にノズルを挿入して白蟻忌避剤を注入する必要があり、メンテナンスに手間がかかるという問題があった。
【0006】
また、そもそも合成樹脂発泡体は疎水性材料であるため、工場などで成形前の材料に白蟻忌避剤を固着させて防蟻性能を付与する技術はあるが、成分のほとんどが水である白蟻忌避剤を現場処理しても、表面に固着できないという問題があり、更新時の薬剤担持層としての十分条件を満たしていないという技術的な問題があった。
【0007】
本発明は、前述された事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、基礎構造体の施工やメンテナンスを容易、確実にする技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1) 本発明に係る基礎構造体の施工方法は、水平方向に沿う延出方向に沿って延びる立上りを有する基礎と、上記立上りに取り付けられており、当該立上りの側面と交差する向きに延びる第1片及び当該第1片の先端から下向きに突出する第2片を有する取付部材と、上記取付部材の下方に位置しており、第1の主面が上記立上りの側面に当接しており、かつ下面が水平方向に沿う板状の上断熱材と、上記上断熱材の下方に当該上断熱材と隙間を空けて位置しており、第1の主面が上記立上りの側面に当接し、かつ上面が水平方向に沿う板状の下断熱材と、上記上断熱材と上記下断熱材との隙間に位置する複数の多孔質粒状体、及び当該多孔質粒状体に保持された防蟻薬剤を有する防蟻部材と、を備える基礎構造体の施工方法であって、上記基礎を打設する第1工程と、上記取付部材を上記立上りに取り付ける第2工程と、上記上断熱材の上面を上記取付部材の上記第1片に当接させた後、上記第1の主面を上記立上りの上記側面に当接させて当該上断熱材を当該立上りに貼り付ける第3工程と、上記下断熱材を上記立上りに貼り付ける第4工程と、上記上断熱材と上記下断熱材との隙間に複数の多孔質粒状体を配置する第5工程と、を備える。
【0009】
作業者は、取付部材の第1片を基準にして上断熱材を立上りに貼り付けるので、作業者が上断熱材を立上りに貼り付ける作業が容易になる。また、複数の多孔質粒状体は、上断熱材と下断熱材との隙間に詰め込まれることによって保持される。したがって、作業者が
複数の多孔質粒状体を保持する手間が省かれる。その結果、基礎構造体の施工が容易になる。
【0010】
(2) 本発明に係る基礎構造体の施工方法は、水平方向に沿う延出方向に沿って延びる立上りを有する基礎と、上記立上りに取り付けられており、当該立上りの側面と交差する向きに延びる第1片及び当該第1片の先端から下向きに突出する第2片を有する取付部材と、上記取付部材の下方に位置しており、第1の主面が上記立上りの側面に当接しており、かつ下面が水平方向に沿う板状の上断熱材と、上記上断熱材の下方に当該上断熱材と隙間を空けて位置しており、第1の主面が上記立上りの側面に当接し、かつ上面が水平方向に沿う板状の下断熱材と、上記上断熱材と上記下断熱材との隙間に位置する複数の多孔質粒状体、及び当該多孔質粒状体に保持された防蟻薬剤を有する防蟻部材と、を備える基礎構造体の施工方法であって、上記基礎を打設する第1工程と、上記取付部材を上記立上りに取り付ける第2工程と、上記下断熱材を上記立上りに貼り付ける第3工程と、上記上断熱材の上面を上記取付部材の上記第1片に当接させた後、上記第1の主面を上記立上りの上記側面に当接させて当該上断熱材を当該立上りに貼り付ける第4工程と、上記上断熱材と上記下断熱材との隙間に複数の多孔質粒状体を配置する第5工程と、を備える。
【0011】
作業者は、取付部材の第1片を基準にして上断熱材を立上りに貼り付けるので、作業者が上断熱材を立上りに貼り付ける作業が容易になる。また、複数の多孔質粒状体は、上断熱材と下断熱材との隙間に詰め込まれることによって保持される。したがって、作業者が
複数の多孔質粒状体を保持する手間が省かれる。その結果、基礎構造体の施工が容易になる。
【0012】
(3) 本発明に係る基礎構造体のメンテナンス方法は、水平方向に沿う延出方向に沿って延びる立上りを有する基礎と、上記立上りに取り付けられており、当該立上りの側面と交差する向きに延びる第1片及び当該第1片の先端から下向きに突出する第2片を有する取付部材と、上記取付部材の下方に位置しており、第1の主面が上記立上りの側面に当接しており、かつ下面が水平方向に沿う板状の上断熱材と、上記上断熱材の下方に当該上断熱材と隙間を空けて位置しており、第1の主面が上記立上りの側面に当接し、かつ上面が水平方向に沿う板状の下断熱材と、上記上断熱材と上記下断熱材との隙間に位置する複数の多孔質粒状体、及び当該多孔質粒状体に保持された防蟻薬剤を有する防蟻部材と、上記上断熱材の第2の主面を覆う上外装材と、上記下断熱材の第2の主面を覆っており、上下方向において上記上外装材の下方に当該上外装材と隙間を空けて位置する下外装材と、上記上外装材と上記下外装材との隙間に位置しており、上記上断熱材と上記下断熱材との隙間の開口を閉塞する目地材と、を備える基礎構造体のメンテナンス方法であって、上記目地材に貫通孔を設ける第1工程と、上記貫通孔にノズルを挿通させる第2工程と、上記ノズルから、上記上断熱材と上記下断熱材との隙間に防蟻薬剤を注入する第3工程と、を備える。
【0013】
下断熱材と上断熱材との隙間に注入された防蟻薬剤は、複数の多孔質粒状体の隙間を通じて延出方向に拡がる。したがって、多数の位置にノズルを挿入して防蟻薬剤を注入する必要がなく、作業者の手間が省かれる。
【0014】
(4) 上記基礎構造体は、上記上断熱材と上記下断熱材との隙間の開口を閉塞するシート部材をさらに備えており、上記第1工程は、上記シート部材に貫通孔を設ける工程を含んでいてもよい。
【0015】
目地材及びシート部材に設けられた貫通孔を通じて、多孔質粒状体が配置された空間に防蟻薬剤が注入される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、防蟻性能を有する基礎構造体の施工やメンテナンスが容易、確実である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1(A)は、第1実施形態に係る基礎構造体10の一部の斜視図であり、
図1(B)は、上外装材25及び下外装材35を外した状態の基礎構造体10の一部の斜視図である。
【
図2】
図2は、布基礎11を打設する工程を説明する説明図である。
【
図3】
図3(A)は、水切受金具75の斜視図であり、
図3(B)は、上断熱材セット17の断面図であり、
図3(C)は、下断熱材セット18の断面図である。
【
図5】
図5は、基礎構造体10の施工方法を説明する説明図である。
【
図6】
図6は、基礎構造体10のメンテナンス方法を説明する説明図である。
【
図7】
図7は、変形例における下断熱材37を説明する説明図である。
【
図8】
図8は、第2実施形態に係る基礎構造体10の施工方法を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明される実施形態は、本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、本発明の実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。
【0019】
[第1実施形態]
図1は、建物の躯体(不図示)を支持する基礎構造体10の一部の斜視図である。基礎構造体10は、布基礎11と、上断熱材セット17及び下断熱材セット18と、水切受金具75と、水切り部材40と、目地材64と、を備える。なお、布基礎11に代えて、べた基礎が用いられてもよい。
【0020】
布基礎11は、フーチング12と、立上り13と、複数のアンカーボルト14と、を備える。フーチング12は、
図4に示されるように地中に埋設されている。立上り13は、フーチング12から上向きに突出している。すなわち、立上り13は、地面から上向きに突出している。立上り13の上面16は、
図1に示されるように、水平方向に沿う延出方向9に沿って延びている。なお、以下では、水平方向に沿い、かつ延出方向9に直交する方向を幅方向8と記載して説明する。
【0021】
作業者は、例えば
図2に示されるように、地面に設けた溝51に砕石(不図示)を敷設した後、捨てコンクリート52を打設し、次いで溝51に沿って型枠53を設置する。作業者は、型枠53に保持させて鉄筋(不図示)を設置し、かつ支持板54を用いてアンカーボルト14を設置した後、型枠53内に生コンクリートを流し込んで布基礎11を打設する。基礎を打設する工程は、第1工程の一例である。
【0022】
アンカーボルト14は、立上り13に埋設された不図示の埋設部と、埋設部から上向きに突出するボルト部と、を有する。
図1に示されるように、打設された布基礎11においては、アンカーボルト14のボルト部のみが視認可能である。
【0023】
アンカーボルト14及びナット(不図示)は、例えば柱脚金具を固定する。当該柱脚金具は、柱を固定する。当該柱は、梁などの構造材を固定する。すなわち、基礎構造体10は、柱や梁などからなる建物の躯体を支持する。なお、アンカーボルト14の配置本数、配置方法は、建物構造によって様々な形態があるため、本図示内容によって、実施形態を制限するものではない。
【0024】
図4に示される水切受金具75は、水切り部材40を支持し、かつ基礎構造体10の施工時において、上断熱材セット17の位置決め及び水平出しを行う部材である。水切受金具75は、取付部材の一例である。
【0025】
図3(A)に示されるように、水切受金具75は、断面形状が略コの字であって、取付片76、第1片77、及び第2片78の3つの片を有している。水切受金具75は、例えば、鋼板をプレス加工により折り曲げることによって製造される。
【0026】
取付片76は、矩形板状であって、ボルトが挿通される挿通孔79を有している。図示例では、2つの挿通孔79が取付片76に設けられている。作業者は、例えば挿通孔79に挿通したボルト(不図示)を、布基礎11の立上り13の上端部に埋め込まれたナットに締結して、水切受金具75を立上り13に取り付ける(
図5(A))。すなわち、取付片76は、
図4に示されるように、主面を立上り13の側面15に当接させて立上り13の上端部に固定される。水切受金具を立上り13に取り付ける工程は、第2工程の一例である。
【0027】
第1片77は、
図3(A)に示されるように、矩形板状であって、取付片76の長手方向の一端(図における上端)から、取付片76の主面に直交する向きに突出している。すなわち、第1片77は、
図4に示されるように、立上り13の側面に直交する向き(幅方向8)に延びている。幅方向8は、立上りの側面に交差する向きの一例である。
【0028】
第2片78は、
図3(A)に示されるように、第1片77の突出の先端から、第1片77の主面に直交する向き(図における下向き)に突出しており、取付片76と対向している。
図4に示されるように、第2片78は、後述の水切り部材40の排水片42と当接する。すなわち、第2片78は、水切り部材40の位置合わせ及び排水片42の保持に用いられる。
【0029】
図1に示されるように、複数の水切受金具75が立上り13に取り付けられている。複数の水切受金具75は、延出方向9において互いに離間して並んでいる。
図1に示す例では、1つの上断熱材セット17に対して2つの水切受金具75が立上り13に取り付けられている。当該2つの水切受金具75は、延出方向9における上断熱材セット17の両端部において、上断熱材セット17の位置決め及び水平出しを行う。なお、1つの上断熱材セット17に対して1つの水切受金具75が立上り13に取り付けられていてもよいし、1つの上断熱材セット17に対して3つ以上の水切受金具75が立上り13に取り付けられていてもよい。
【0030】
図4に示されるように、水切り部材40は、傾斜片41、排水片42、及び不図示の取付部を有する。水切り部材40は、例えば鋼板をプレス加工によって折り曲げて傾斜片41及び排水片42を形成した後、取付部を溶接することによって製造される。
【0031】
傾斜片41は、水切受金具75の第2片78から立上り13の上方に向かって延びている。すなわち、傾斜片41は、水平方向及び上下方向に対して傾いており、雨水などを立上り13の上方から後述の上外装材25の外側に向かって導く。また、傾斜片41は、立上り13が延びる延出方向9(
図1)に沿う長尺の部材であり、延出方向9における立上り13の全長に亘って、水が立上り13や後述の上断熱材20及び下断熱材30に流れ込むことを防止する。なお、
図1では、水切り部材40の図示が省略されている。
【0032】
排水片42は、傾斜片41の下端から下向きに突出している。排水片42は、幅方向8において水切受金具75の第2片78と当接している。排水片42が第2片78と当接することにより、幅方向8において水切り部材40が位置決めされる。また、排水片42は、第2片78と当接することにより、幅方向8における変形を抑制される。
【0033】
図4の矢印に示されるように、傾斜片41から流れ込んだ水は、排水片42を伝って、外装材25、35の外側に排出される。
【0034】
取付部は、傾斜片41と接続されている。水切り部材40は、ねじなどによって取付部が水切受金具75に固定されることにより、水切受金具75に取り付けられる(
図5(F))。すなわち、水切り部材40は、延出方向9(
図1)における複数箇所において、各水切受金具75にそれぞれ支持されている。なお、作業者が水切り部材40を水切受金具に取り付ける工程は、後述の上断熱材20や下断熱材30を布基礎11の立上り13に貼り付ける工程(
図6(A)~(C))の前に行われてもよいし、後述の多孔質粒状体61を配置空間62に配置する工程(
図6(D)の後や目地材64を施工する工程(
図6(E))の後に行われてもよい。
【0035】
上断熱材セット17は、
図3(B)に示されるように、上断熱材20と、上断熱材20に装着された上外装材25とを備える。
【0036】
上断熱材20は、2つの主面21、22及び4つの端面を有する矩形板状である。
図4に示されるように、上断熱材20の一辺の長さ(図における上下方向の長さ)は、例えば、上下方向における立上り13の長さの約半分である。なお、上断熱材20が下断熱材30よりも安価である場合、上下方向における上断熱材20の長さは、可能な範囲で長くされてもよい。
【0037】
上断熱材20は、例えば、以下に挙げる一の樹脂、或いは複数の樹脂を発泡させて成形される。使用可能な樹脂として、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリスチレン(PS)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、フッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン)、アクリルニトリルブタジエンスチレン(ABS)樹脂、アクリルニトリルスチレン(AS)樹脂、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)等の汎用プラスチックが挙げられる。また、使用可能な樹脂として、ポリアミド(PA)、ポリアセタール(POM)、ポリカーボネート(PC)、変性ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリブチレンテレフタラート(PBT)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、環状ポリオレフィン(COP)等のエンジニアリングプラスチックが挙げられる。また、使用可能な樹脂として、ポリイミド(PI)、フェノール樹脂(PF)、エポキシ樹脂(EP)、メラミン樹脂(MF)、尿素樹脂(UF)、不飽和ポリエステル樹脂(UP)、アルキド樹脂等の熱硬化性樹脂が挙げられる。なお、上記樹脂のうち、汎用プラスチックに含まれるポリスチレン(PS)やアクリルニトリルスチレン(AS)樹脂、或いはこれらの混合物が、発泡させた際に優れた断熱性能及び好適な機械的強度を有するため好ましい。また、上断熱材20は、押出発泡成形や金型を用いた型内発泡成形等の公知の方法により上記樹脂を発泡成形することで製造できるが、断熱性能及び機械的強度の観点から押出発泡成形品が好ましい。
【0038】
上断熱材20の厚みは、数十mmから百数十mmの範囲内とされる。延出方向9における上断熱材20の長さは、数十cmから二百数十cmの範囲内とされる。上下方向における上断熱材20の長さは、数十cmから百数十cmの範囲内とされる。上断熱材20は、例えば、厚み15mm~200mm、幅800mm~1000mm、長さ900mm~3000mmの定尺の原板を、建物の仕様に応じて切断等して用いられる。
【0039】
上外装材25は、矩形板状である。上外装材25は、例えば、厚みが数mm程度の無機系成型材である。上外装材25の主面は、上断熱材20の主面22と略同一の形状及び大きさである。上外装材25は、例えば、接着材などによって主面が上断熱材20の主面22に貼り付けられることにより、上断熱材20と一体とされている。なお、上外装材25と上断熱材20とは、建築の現場以外の工場などで一体とされてもよいし、作業者によって建築の現場において一体とされてもよい。上断熱材20の主面22は、第2の主面の一例である。
【0040】
作業者は、例えば、立上り13の側面15の上部或いは上断熱材20の主面21に接着剤を塗布した後、
図5(A)に示されるように、上断熱材20の主面21が立上り13の側面15に接触しないように上断熱材セット17の上端部を斜め下から水切受金具75に嵌め込む。作業者は、上断熱材セット17の上端を軸にして上断熱材セット17を回転させ、上断熱材20の主面21を立上り13の側面15の上部に押し付けて上断熱材セット17を立上り13の上部に貼り付ける(
図5(B))。なお、接着剤には、例えば変成シリコーンの接着剤が用いられる。また、上断熱材セット17が貼り付けられる立上り13は、基礎構造体10の外周を形成しており、側面15は、建物の外側を向く、いわゆる外側面である。立上り13の側面15に当接する上断熱材20の主面21は、第1の主面の一例である。上断熱材20を立上り13に貼り付ける工程は、第3工程の一例である。
【0041】
上断熱材セット17は、上端が水切受金具75の第1片77に当接することにより、上下方向において位置決めされるとともに、水平出しされる。すなわち、水切受金具75により、上断熱材セット17を立上り13に貼り付ける作業者の作業が容易になる。立上り13に貼り付けられた上断熱材セット17の上断熱材20の4つの端面のうちの2つの端面は水平方向に沿い、他の2つの端面は上下方向に沿う。水平方向に沿う2つの端面のうち上にある方の端面は上面23であり、下にある方の端面は下面24である。すなわち、上断熱材20の下面24は、幅方向8及び延出方向9に沿い、かつ延出方向9に沿って延びる矩形の平面である。そして、下面24は、上下方向における立上り13の中間位置近くに位置している。なお、以下では、上下方向に沿う上記2つの端面を側端面と記載して説明する。
【0042】
図1に示されるように、複数の上断熱材セット17が立上り13に取り付けられている。複数の上断熱材セット17は、延出方向9において互いに隣接して並んでいる。すなわち、一の上断熱材20の側端面は、隣接する他の上断熱材20の側端面と当接している。
【0043】
互いに隣接する複数の上断熱材20の各下面24は、ほぼ段差無く並んでいる。すなわち、複数の下面24は、ほぼ面一である。
【0044】
下断熱材セット18は、
図3(C)に示されるように、下断熱材30と、下外装材35とを備える。下断熱材セット18は、上断熱材セット17と同一の構成(仕様)である。すなわち、下断熱材30は、上断熱材20と同一の構成であり、下外装材35は、上外装材25と同一の構成である。ただし、下断熱材セット18の構成は、上断熱材セット17の構成と相違していてもよい。例えば、上下方向における下断熱材30及び下外装材35の長さは、上下方向における上断熱材20及び上外装材25の長さよりも長くてもよいし、短くてもよい。なお、以下では、矩形板状である下断熱材30の主面を主面31、32と記載して説明する。
【0045】
作業者は、立上り13の側面15の下部或いは下断熱材30の主面31に接着剤を塗布した後、上断熱材セット17の下方に、上断熱材セット17と隙間を空け、かつ下断熱材30の主面31を立上り13の側面15の下部に当接させて、下断熱材セット18を立上り13に貼り付ける(
図5(C))。その際、作業者は、下断熱材30の一の端面(上面)が上断熱材20の下面24と平行となるように、上断熱材セット17を立上り13に貼り付ける。すなわち、作業者は、上断熱材セット17を基準に下断熱材セット18を施工する。下断熱材30を立上り13に貼り付ける工程は、第4工程の一例である。
【0046】
立上り13に貼り付けられた下断熱材セット18の下断熱材30の4つの端面のうち、2つの端面は水平方向に沿い、他の2つの端面は上下方向に沿っている。水平方向に沿う2つの端面のうち、上にある方の端面は上面33であり、下にある方の端面は下面34である。すなわち、下断熱材30の上面33は、幅方向8及び延出方向9に沿い、かつ延出方向9に沿って延びる矩形の平面である。そして、上面33は、上下方向において上断熱材20の下面24と対向している。下断熱材30の上面33と上断熱材20の下面24との間の空間が、上断熱材20と下断熱材30との隙間である。なお、以下では、下断熱材30の4つの端面のうち、上下方向に沿う上記2つの端面を側端面と記載して説明する。
【0047】
図1に示されるように、複数の下断熱材セット18が立上り13に取り付けられている。複数の下断熱材セット18は、延出方向9において互いに隣接して並んでいる。すなわち、一の下断熱材30の側端面は、隣接する他の下断熱材30の側端面と当接している。
【0048】
互いに隣接する複数の下断熱材30の各上面33は、ほぼ段差無く並んでいる。すなわち、複数の上面33は、ほぼ面一である。
【0049】
図4に示されるように、上断熱材20の下面24と下断熱材30の上面33との隙間は、防蟻部材60が配置される空間である。以下、当該隙間を配置空間62と記載して説明する。
【0050】
上断熱材20の下面24と下断熱材30の上面33との距離L1、すなわち上下方向における配置空間62の長さL1は、上述の水切受金具75の第2片78の突出長さL2よりも短い。したがって、下断熱材セット18を上断熱材セット17よりも先に立上り13に貼り付けると、第2片78により、上断熱材セット17を立上り13に貼り付けることが困難になる。そのため、上断熱材セット17が立上り13に貼り付けられた後、下断熱材セット18が立上り13に貼り付けられる。
【0051】
防蟻部材60は、複数の多孔質粒状体61及び防蟻薬剤を有する。多孔質粒状体61は、複数の孔を有しており、液状の防蟻薬剤を保持可能である。
【0052】
作業者は、
図5(D)に示されるように、複数の多孔質粒状体61を配置空間62に詰め込む。作業者は、例えば、多孔質粒状体61に防蟻薬剤を含浸させた後、配置空間62に詰め込み、或いは、多孔質粒状体61を配置空間62に詰め込んだ後、防蟻薬剤を配置空間62に注入する。多数の多孔質粒状体61は、上断熱材20の下面24と下断熱材30の上面33とに押圧されることにより、配置空間62に保持される。複数の多孔質粒状体61を配置空間62に配置する工程は、第5工程の一例である。
【0053】
多孔質粒状体61は、球形である。したがって、
図3の拡大図が示すように、配置空間62に配置された複数の多孔質粒状体61の間には、隙間が形成される。後述のメンテナンスにおいて、当該隙間を通じて液状の防蟻薬剤が延出方向9に拡がる。延出方向9において防蟻薬剤が拡がり易く、かつ適正な量の防蟻薬剤を保持できるように、多孔質粒状体61の直径は、5mm以下が好ましい。多孔質粒状体61として、例えば、いわゆる軽石や、高吸水性ポリマー等が用いられる。高吸水性ポリマーは、例えば、デンプンとアクリロニトリルとのクラフト共重合体を加水分解することによって生成される。
【0054】
図4に示されるように、上外装材25と下外装材35との隙間は、例えば変成シリコーン系の目地材64によって埋められている。作業者は、複数の多孔質粒状体61を配置空間62に詰め込んだ後(
図5(D))、
図5(E)に示されるように、目地材64を上外装材25と下外装材35との隙間に注入して、目地材64を施工する。施工された目地材64は、
図4に示されるように、配置空間62の開口を閉塞する。配置空間62の開口を閉塞する目地材64は、防蟻薬剤が当該開口から流出することを防止する。
【0055】
目地材64は、防蟻部材60の側方に位置しており、幅方向8において防蟻部材60と並んでいる。すなわち、目地材64の奥に防蟻部材60が位置している。したがって、後述のメンテナンスにおいて、目地材64を通じて防蟻薬剤を配置空間62に注入することができる。
【0056】
複数の多孔質粒状体61の隙間にある防蟻薬剤、或いは多孔質粒状体61の孔から染み出した防蟻薬剤は、時間の経過とともに下断熱材30と立上り13の側面15との隙間、及び隣接する複数の下断熱材30の隙間に浸入する。当該隙間に浸入した防蟻薬剤は、白蟻が当該隙間を通って躯体に侵入することを防止する。なお、防蟻薬剤は、配置空間62の開口を閉塞する目地材64により、当該開口から流出することを防止される。すなわち、防蟻薬剤は、効率良く下断熱材30と立上り13の側面15との隙間や隣接する複数の下断熱材30の隙間に浸入する。
【0057】
建物が建てられてから、約10年などの耐用期間が経過すると、配置空間62に保持された防蟻薬剤が枯渇する。当該耐用期間の経過後、或いは経過前に、防蟻薬剤を配置空間62に注入するメンテナンスが行われる。すなわち、メンテナンスは、約10年などの耐用期間ごとに行われる。
【0058】
当該メンテナンスにおいて、作業者は、針状の器具を用いて、目地材64に貫通孔65(
図6)を設ける。作業者が目地材64に貫通孔65を設ける工程は、第1工程の一例である。
【0059】
作業者は、貫通孔65を設けた後、薬剤注入装置70のノズル71を貫通孔65に挿通させて、液状の防蟻薬剤を配置空間62に注入する。配置空間62に注入された防蟻薬剤は、複数の多孔質粒状体61の隙間を通じて延出方向9に拡がるとともに、多孔質粒状体61の孔に浸入する。また、配置空間62に拡がった防蟻薬剤は、立上り13の側面15と下断熱材30との隙間、及び隣接する複数の下断熱材30の隙間に浸入し、当該隙間から白蟻が建物の躯体に侵入することを防止する。なお、防蟻薬剤は、配置空間62に拡がる際、目地材64により、配置空間62の開口から流出することを防止される。作業者がノズル71を目地材64の貫通孔65に挿通する工程は、第2工程の一例である。作業者が防蟻薬剤を配置空間62に注入する工程は、第3工程の一例である。
【0060】
[第1実施形態の作用効果]
本実施形態では、多数の多孔質粒状体61は、上断熱材20の下面24と下断熱材30の上面33とに押圧されることにより、配置空間62に保持される。したがって、基礎構造体10の施工が容易になる。
【0061】
また、本実施形態では、水切受金具75の第1片77に当接させることによって上断熱材20を位置決めして布基礎11の立上り13に貼り付けている。したがって、上断熱材20を立上り13に貼り付ける際に作業者が上断熱材20を位置決めする作業が容易になる。すなわち、基礎構造体10の施工が容易になる。
【0062】
また、本実施形態では、基礎構造体10のメンテナンスにおいて、上断熱材20と下断熱材30との隙間(配置空間62)に注入された防蟻薬剤は、複数の多孔質粒状体61の隙間を通じて延出方向9に拡がる。したがって、延出方向9における目地材64の端から端に亘って多数の貫通孔65を設けなくても、防蟻薬剤を配置空間62に満遍なく行き渡らせることができる。その結果、基礎構造体10のメンテナンスが容易、確実になる。
【0063】
また、本実施形態では、上外装材25と上断熱材20とが一体であるから、上外装材25と上断熱材20とを別個に設置するよりも、作業者の手間が低減する。同様に、下外装材35と下断熱材30とが一体であるから、下外装材35と下断熱材30とを別個に設置するよりも、作業者の手間が低減する。その結果、基礎構造体10の施工がさらに容易になる。
【0064】
また、防蟻部材60は、目地材64の奥に位置しているから、作業者は、防蟻部材60の位置を確認することなく、目地材64を通じて、多孔質粒状体61が配置された配置空間62に防蟻薬剤を注入することができる。すなわち、防蟻部材60の位置を確認する作業者の手間が省かれる。その結果、基礎構造体のメンテナンスがさらに容易になる。
【0065】
また、目地材64は、配置空間62の開口を閉塞するから、防蟻薬剤が配置空間62から流出することを防止することができる。
【0066】
また、本実施形態では、上断熱材セット17を立上り13に貼り付けた後、下断熱材セット18を立上り13に貼り付ける。したがって、上下方向における上断熱材20と下断熱材30との隙間の長さL1(
図4)を水切受金具75の第2片78の突出長さL2よりも短くすることができる。その結果、上下方向における上断熱材20と下断熱材30との隙間の長さが過剰に長くなって、使用する多孔質粒状体61の個数が多くなり過ぎたり、多孔質粒状体61の個数が隙間の長さに比べ少なすぎて多孔質粒状体61が配置空間62に保持されなくなることが防止される。
【0067】
[第2実施形態]
本実施形態では、下断熱材30が布基礎11の立上り13に貼り付けられた後、上断熱材20が立上り13に貼り付けられる例を説明する。なお、基礎構造体10の構成は、第1実施形態で説明した基礎構造体10の構成と同じである。
【0068】
作業者は、第1実施形態と同様にして布基礎11を施工した後、布基礎11の立上り13に水切受金具75を取り付ける(
図8(A))。布基礎11を施工する工程は、第1工程の一例である。水切受金具75を布基礎11の立上り13に取り付ける工程は、第2工程の一例である。
【0069】
次に、作業者は、立上り13の側面15の下部或いは下断熱材30の主面31に接着剤を塗布した後、下断熱材30の主面31を立上り13の側面15の下部に当接させて、下断熱材セット18を立上り13に貼り付ける(
図8(B))。下断熱材30を立上り13に貼り付ける工程は、第3工程の一例である。
【0070】
次に、作業者は、立上り13の側面15の上部或いは上断熱材20の主面21に接着剤を塗布した後、
図8(C)に示されるように、上断熱材20の主面21が立上り13の側面15に接触しないように上断熱材セット17の上端部を斜め下から水切受金具75に嵌め込む。作業者は、上断熱材セット17の上端を軸にして上断熱材セット17を回転させ、上断熱材20の主面21を立上り13の側面15の上部に押し付けて上断熱材セット17を立上り13の上部に貼り付ける。上断熱材20を立上り13に貼り付ける工程は、第4工程の一例である。
【0071】
次に、作業者は、
図8(D)に示されるように、複数の多孔質粒状体61を配置空間62に詰め込む。作業者は、例えば、多孔質粒状体61に防蟻薬剤を含浸させた後、配置空間62に詰め込み、或いは、多孔質粒状体61を配置空間62に詰め込んだ後、防蟻薬剤を配置空間62に注入する。多数の多孔質粒状体61は、上断熱材20の下面24と下断熱材30の上面33とに押圧されることにより、配置空間62に保持される。複数の多孔質粒状体61を配置空間62に配置する工程は、第5工程の一例である。
【0072】
次に、作業者は、
図8(E)に示されるように、目地材64を上外装材25と下外装材35との隙間に注入して、目地材64を施工する。
【0073】
次に、作業者は、
図8(F)に示されるように、水切り部材40を水切受金具75に取り付ける。なお、作業者が水切り部材40を水切受金具75に取り付ける工程は、作業者が目地材64を施工する工程や作業者が上断熱材20や下断熱材30を施工する工程の前に行われてもよい。
【0074】
基礎構造体10のメンテナンスは、第1実施形態と同様にして行われる。
【0075】
[第2実施形態の作用効果]
本実施形態では、多数の多孔質粒状体61は、上断熱材20の下面24と下断熱材30の上面33とに押圧されることにより、配置空間62に保持される。したがって、基礎構造体10の施工が容易になる。
【0076】
また、本実施形態では、水切受金具75の第1片77に当接させることによって上断熱材20を位置決めして布基礎11の立上り13に貼り付けている。したがって、上断熱材20を立上り13に貼り付ける際に作業者が上断熱材20を位置決めする作業が容易になる。すなわち、基礎構造体10の施工が容易になる。
【0077】
[変形例]
本変形例では、
図3(C)に示される下断熱材30に代えて
図7(B)、(C)に示される下断熱材37を備える基礎構造体10(
図1)が説明される。なお、第1実施形態で説明した構成と同一の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。また、以下で説明する構成以外の構成は、第1実施形態で説明した構成と同一である。
【0078】
下断熱材37は、
図7(A)に示される断熱材本体80と、断熱材本体80に貼り付けられたシート部材90(
図7(B))とを有する。断熱材本体80の構成は、下断熱材30の構成と同一であり、断熱材本体80は、主面81、82、上面83、下面84、及び2つの側端面を有する矩形板状である。
【0079】
シート部材90は、ホットメルトや変成シリコーンなどの接着剤を用いて、断熱材本体80の主面81、82、上面83、及び下面84に貼り付けられている。すなわち、シート部材90は、断熱材本体80の主面81、82、上面83、及び下面84を覆っている。シート部材90の端部であって、断熱材本体80の主面82に貼り付けられた部分と連続する端部93は、断熱材本体80の主面82の上端から斜め上向きに突出している。また、シート部材90の他の端部であって、断熱材本体80の上面83に貼り付けられた部分と連続する端部94は、断熱材本体80の上面83と主面82とが交わる端から斜め上向きに突出している。端部93と端部94とは、ホットメルトや変成シリコーンなどの接着剤によって互いに接着されており、突出片92を形成している。すなわち、シート部材90は、断熱材本体80に貼り付けられた部分であるシート本体91と、シート本体91から斜め上向きに突出する突出片92とを有している。突出片92は、断熱材本体80の主面82と上面83とが交わる端から突出している。なお、シート部材90は、1つのシートで構成されていてもよいし、複数枚のシートで構成されていてもよい。
【0080】
シート部材90は、白蟻が齧ることができない硬度であることが好ましい。例えば、シート部材90は、単一のシート或いは複数の層からなる積層シートであり、約10μm~800μm程度の範囲の厚みとされる。好ましくは、シート部材90は、約10μm~400μm程度の範囲の厚みとされる。さらに好ましくは、シート部材90は、約40μm~80μmの範囲の厚みとされる。例えば、シート部材90は、厚みが約50μmのポリエチレンテレフタレート系樹脂シートに、厚みが約25μmのエチレン酢酸ビニル共重合(EVA)系樹脂を接着層として積層して形成される。なお、上記以外の厚み及び材質のシート部材90が用いられていてもよい。
【0081】
なお、下断熱材37の主面22に下外装材35が貼り付けられることにより、下断熱材セット18が製造される。
【0082】
作業者は、下断熱材37の主面21を立上り13の側面15(
図3)に当接させて、下断熱材37を立上り13に貼り付ける。次に、作業者は、シート部材90の突出片92をガイドとして、複数の多孔質粒状体61を配置空間62に詰め込む。その後、作業者は、突出片92を折り曲げて配置空間62に押し込んだ後、目地材64を施工する。
【0083】
[変形例の作用効果]
本変形例では、シート部材90の突出片92は、作業者が複数の多孔質粒状体61を配置空間62に詰め込む際のガイドとして用いられる。したがって、突出片92が設けられない場合よりも、複数の多孔質粒状体61を配置空間62に詰め込む作業者の手間が低減する。その結果、基礎構造体10の施工がさらに容易になる。
【0084】
また、本変形例では、シート部材90は、断熱材本体80の主面81、82、上面83、及び下面84を覆う。したがって、基礎構造体10は、白蟻による断熱材本体80の食害を防止することができる。
【0085】
また、断熱材本体80の上面83がシート部材90のシート本体91で覆われているから、配置空間62に注入された防蟻薬剤が断熱材本体80の上端部に染み込むことが防止される。その結果、基礎構造体10は、メンテナンスにおいて配置空間62に注入される防蟻薬剤の使用量を低減することができる。
【0086】
なお、シート部材90のシート本体91は、断熱材本体80を覆っていなくてもよい。例えば、シート本体91は、断熱材本体80の上面83のみ或いは主面82のみに貼り付けられていてもよい。
【0087】
[その他の変形例]
上述の第1実施形態及び第2実施形態では、上断熱材20と上外装材25とが一体で施工され、また、下断熱材30と下外装材35とが一体で施工される例を説明した。しかしながら、上断熱材20を立上り13に貼り付けた後、上外装材25を上断熱材20に装着し、下断熱材30を立上り13に貼り付けた後、下外装材35を下断熱材30に装着してもよい。
【0088】
上述の第1実施形態及び第2実施形態では、上外装材25及び下外装材35が上断熱材20及び下断熱材30に装着された例を説明した。しかしながら、上外装材25及び下外装材35が上断熱材20及び下断熱材30に装着されていなくてもよい。
【0089】
上述の第1実施形態及び第2実施形態では、布基礎11の外周を構成する立上り13の外側面である側面15に上断熱材20及び下断熱材30が貼り付けられた例を説明した。しかしながら、上断熱材20及び下断熱材30は、立上り13の内側面に貼り付けられていてもよい。その場合、上外装材25及び下外装材35は設けられない。例えば、下断熱材30の上面33より下の位置において下断熱材30の主面32に当接する土間コンクリートが設けられる。すなわち、配置空間62の開口は、外部に露出する。作業者は、メンテナンスにおいて、外部に露出する配置空間62の開口から防蟻薬剤を注入する。なお、下断熱材30に代えて、変形例で説明した下断熱材37が用いられてもよい。その場合、下断熱材37の突出片92は、土間コンクリートの上面や上断熱材20の主面22に貼り付けられる。
【0090】
上述の第1実施形態及び第2実施形態では、水切受金具75を、上断熱材20の位置決めを行う部材として用いた例を説明した。しかしながら、水切受金具75とは別に、上断熱材20の位置決めを行う取付部材が立上り13に取り付けられていてもよい。当該取付部材は、水切受金具75と同じ形状であってもよいし、異なる形状であってもよい。例えば、当該部材は、取付片76及び第1片77を有する断面L字状に形成される。
【0091】
上述の実施形態では、上下方向における配置空間62の長さL1が、水切受金具75の第2片78の突出長さL2よりも短い例を説明した。しかしながら、長さL1は、突出長さL2よりも長くてもよい。
【符号の説明】
【0092】
10・・・基礎構造体
11・・・布基礎(基礎)
13・・・立上り
15・・・側面
17・・・上断熱材セット
18・・・下断熱材セット
20・・・上断熱材
21・・・主面(第1の主面)
22・・・主面(第2の主面)
24・・・下面
25・・・上外装材
30・・・下断熱材
31・・・主面(第1の主面)
32・・・主面(第2の主面)
33・・・上面
35・・・下外装材
40・・・水切り部材
60・・・防蟻部材
61・・・多孔質粒状体
62・・・配置空間(隙間)
64・・・目地材
65・・・貫通孔
71・・・ノズル
75・・・水切受金具
77・・・第1片
78・・・第2片
80・・・断熱材本体(下断熱材)
90・・・シート部材
91・・・シート本体
92・・・突出片