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特開2022-108652解析装置、解析システム及び解析方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022108652
(43)【公開日】2022-07-26
(54)【発明の名称】解析装置、解析システム及び解析方法
(51)【国際特許分類】
   G01H 17/00 20060101AFI20220719BHJP
   G01M 99/00 20110101ALI20220719BHJP
【FI】
G01H17/00 Z
G01M99/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021003764
(22)【出願日】2021-01-13
(71)【出願人】
【識別番号】590000835
【氏名又は名称】株式会社KELK
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村田 知紀
【テーマコード(参考)】
2G024
2G064
【Fターム(参考)】
2G024AD01
2G024BA11
2G024BA22
2G024BA27
2G024CA13
2G024FA06
2G024FA11
2G064AA01
2G064AA11
2G064AB01
2G064AB02
2G064AB22
2G064BA02
2G064BD02
2G064CC02
2G064CC43
2G064DD02
(57)【要約】
【課題】安定した演算結果を出力すること。
【解決手段】解析装置は、機器の振動を検出する振動センサと、振動センサの検出データの標準偏差に基づいてピーク値を規定する演算部と、演算部による演算で出力された処理データを送信する無線通信機と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器の振動を検出する振動センサと、
前記振動センサの検出データの標準偏差に基づいてピーク値を規定する演算を実施する演算部と、
前記演算部による演算で出力された処理データを送信する無線通信機と、を備える、
解析装置。
【請求項2】
前記演算部は、前記振動センサの検出データについて、絶対値が標準偏差に係数を乗じた値より大きい加速度の平均値を、ピーク値として規定する、
請求項1に記載の解析装置。
【請求項3】
前記演算部は、前記係数を変更可能である、
請求項2に記載の解析装置。
【請求項4】
熱電発電モジュールを備え、
前記振動センサは、前記熱電発電モジュールが発生する電力により駆動する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の解析装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の解析装置と、
前記解析装置から送信された前記処理データを受信して、前記機器を診断する管理コンピュータと、を備える、
解析システム。
【請求項6】
機器の振動を検出する振動センサから検出データを取得することと、
前記振動センサの検出データの標準偏差に基づいてピーク値を規定する演算を実施することと、
前記演算で出力された処理データを送信することと、を含む、
解析方法。
【請求項7】
熱電発電モジュールが発生する電力により前記振動センサが駆動することを含む、
請求項6に記載の解析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、解析装置、解析システム及び解析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
機器の異常の有無を診断するために、機器の運転中に発生する振動を振動センサで検出する技術が知られている(例えば、特許文献1)。機器の振動を監視、解析する際に有効な演算として、加速度のピーク値、実効値(RMS:Root Mean Square Value)、オーバーオール値(Overall Value)、ピーク値を実効値で除した波高率(CF:Crest Factor)がある。これらの値を求めるために、加速度センサで取得した振動の波形データの絶対値の最大値、二乗平均平方根、二乗平均、絶対値の最大値を二乗平均平方根で除する演算をする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-020090号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、実効値、オーバーオール値は平均値であるため、繰り返し測定にばらつきがあっても演算結果の誤差が小さくなる。一方で、ピーク値は取得した波形の中の1点であるため、繰り返し測定のばらつきがあった場合は演算結果の誤差が大きくなる可能性がある。例えば、最大のピーク値から上位何点かの平均を取ることでばらつきを小さくする方法が考えられるが、最大ピークが他の値よりも著しく大きい場合はばらつきが大きく、演算結果の誤差が大きくなる可能性が依然としてある。機器の状態を監視する上で特に重要な波高率はピーク値に依存するため、ピーク値の誤差が大きいと機器の状態監視に弊害が生じるという問題があった。
【0005】
本開示は、安定した演算結果を出力することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に従えば、機器の振動を検出する振動センサと、前記振動センサの検出データの標準偏差に基づいてピーク値を規定する演算を実施する演算部と、前記演算部による演算で出力された処理データを送信する無線通信機と、を備える、解析装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、正規分布に従う振動現象において、安定した演算結果を出力することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1実施形態に係る解析装置を模式的に示す断面図である。
図2図2は、第1実施形態に係る熱電発電モジュールを模式的に示す斜視図である。
図3図3は、第1実施形態に係る解析装置を示すブロック図である。
図4図4は、第1実施形態に係る解析方法を示すフローチャートである。
図5図5は、第1実施形態に係る解析方法において検出データの一例を示す図である。
図6図6は、図5のヒストグラムを示す図である。
図7図7は、第1実施形態に係る解析方法においてピーク値を規定する方法を説明する説明図である。
図8図8は、第2実施形態に係る解析システムを模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示に係る実施形態について図面を参照しながら説明するが、本開示はこれに限定されない。以下で説明する実施形態の構成要素は、適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。
【0010】
実施形態においては、XYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照しつつ各部の位置関係について説明する。所定面内のX軸と平行な方向をX軸方向、所定面内においてX軸と直交するY軸と平行な方向をY軸方向、所定面と直交するZ軸と平行な方向をZ軸方向とする。X軸及びY軸を含むXY平面は、所定面と平行である。
【0011】
(第1実施形態)
[解析装置]
図1は、本実施形態に係る解析装置1を模式的に示す断面図である。解析装置1は、機器Bに設置される。機器Bは、例えば工場のような産業施設に設けられる。機器Bとして、回転機械が例示される。回転機械として、ポンプを作動させるモータが例示される。
【0012】
図1に示すように、解析装置1は、受熱部2と、放熱部3と、周壁部4と、熱電発電モジュール5と、振動センサ6と、マイクロコンピュータ8と、無線通信機9と、伝熱部材10と、基板11と、蓄電部14と、を備える。
【0013】
受熱部2は、機器Bに設置される。受熱部2は、プレート状の部材である。受熱部2は、アルミニウム又は銅のような金属材料によって形成される。受熱部2は、機器Bからの熱を受ける。受熱部2の熱は、伝熱部材10を介して、熱電発電モジュール5に伝達される。
【0014】
放熱部3は、間隙を介して受熱部2に対向する。放熱部3は、プレート状の部材である。放熱部3は、アルミニウム又は銅のような金属材料によって形成される。放熱部3は、熱電発電モジュール5からの熱を受ける。放熱部3の熱は、解析装置1の周囲の大気空間に放出される。
【0015】
受熱部2は、機器Bの表面に対向する受熱面2Aと、受熱面2Aの反対方向を向く内面2Bとを有する。受熱面2Aは、-Z方向を向く。内面2Bは、+Z方向を向く。受熱面2A及び内面2Bのそれぞれは、平坦である。受熱面2A及び内面2Bのそれぞれは、XY平面と平行である。XY平面内において、受熱部2の外形は、実質的に四角形である。なお、受熱部2の外形は四角形でなくてもよい。受熱部2の外形は円形でもよいし楕円形でもよいし任意の多角形でもよい。
【0016】
放熱部3は、大気空間に面する放熱面3Aと、放熱面3Aの反対方向を向く内面3Bとを有する。放熱面3Aは、+Z方向を向く。内面3Bは、-Z方向を向く。放熱面3A及び内面3Bのそれぞれは、平坦である。放熱面3A及び内面3Bのそれぞれは、XY平面と平行である。XY平面内において、放熱部3の外形は、実質的に四角形である。なお、放熱部3の外形は四角形でなくてもよい。放熱部3の外形は円形でもよいし楕円形でもよいし任意の多角形でもよい。
【0017】
XY平面内において、受熱部2の外形及び寸法と、放熱部3の外形及び寸法とは、実質的に等しい。なお、受熱部2の外形及び寸法と、放熱部3の外形及び寸法とは、異なってもよい。
【0018】
周壁部4は、受熱部2の内面2Bの周縁部と放熱部3の内面3Bの周縁部との間に配置される。周壁部4は、受熱部2と放熱部3とを連結する。周壁部4は、合成樹脂によって形成される。
【0019】
XY平面内において、周壁部4は、環状である。XY平面内において、周壁部4の外形は、実質的に四角形である。受熱部2と放熱部3と周壁部4とによって、解析装置1の内部空間12が規定される。周壁部4は、内部空間12に面する内面4Bを有する。受熱部2の内面2Bは、内部空間12に面する。放熱部3の内面3Bは、内部空間12に面する。解析装置1の外部空間は、解析装置1の周囲の大気空間である。
【0020】
受熱部2、放熱部3、及び周壁部4は、内部空間12を規定する解析装置1のハウジングとして機能する。以下の説明において、受熱部2、放熱部3、及び周壁部4を適宜、ハウジング20、と総称する。
【0021】
受熱部2の内面2Bの周縁部と周壁部4の-Z側の端面との間にシール部材13Aが配置される。放熱部3の内面3Bの周縁部と周壁部4の+Z側の端面との間にシール部材13Bが配置される。シール部材13A及びシール部材13Bのそれぞれは、例えばOリングを含む。シール部材13Aは、内面2Bの周縁部に設けられた凹部に配置される。シール部材13Bは、内面3Bの周縁部に設けられた凹部に配置される。シール部材13A及びシール部材13Bにより、解析装置1の外部空間の異物が内部空間12に侵入することが抑制される。
【0022】
熱電発電モジュール5は、ゼーベック効果を利用して電力を発生する。機器Bは、熱電発電モジュール5の熱源として機能する。熱電発電モジュール5は、受熱部2と放熱部3との間に配置される。熱電発電モジュール5の-Z側の端面51が加熱され、熱電発電モジュール5の-Z側の端面51と+Z側の端面52との間に温度差が与えられることによって、熱電発電モジュール5は電力を発生する。
【0023】
端面51は、-Z方向を向く。端面52は、+Z方向を向く。端面51及び端面52のそれぞれは、平坦である。端面51及び端面52のそれぞれは、XY平面と平行である。XY平面内において、熱電発電モジュール5の外形は、実質的に四角形である。
【0024】
端面52は、放熱部3の内面3Bに対向する。熱電発電モジュール5は、放熱部3に固定される。放熱部3と熱電発電モジュール5とは、例えば接着剤により接着される。
【0025】
なお、図1に示す例においては、熱電発電モジュール5は放熱部3に接触しているが、受熱部2に接触してもよい。
【0026】
振動センサ6は、機器Bの振動を検出する。振動センサ6は、熱電発電モジュール5が発生する電力により駆動する。振動センサ6は、内部空間12に配置される。本実施形態において、振動センサ6は、受熱部2の内面2Bに支持される。
【0027】
振動センサ6として、加速度センサが例示される。なお、振動センサ6は、速度センサ又は変位センサでもよい。本実施形態において、振動センサ6は、X軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向の3つの方向における機器Bの振動を検出することができる。
【0028】
マイクロコンピュータ8は、解析装置1を制御する。マイクロコンピュータ8は、熱電発電モジュール5が発生する電力により駆動する。マイクロコンピュータ8は、内部空間12に配置される。本実施形態において、マイクロコンピュータ8は、基板11に支持される。
【0029】
無線通信機9は、解析装置1の外部に存在する管理コンピュータ100(図3等参照)と通信する。無線通信機9は、熱電発電モジュール5が発生する電力により駆動する。無線通信機9は、内部空間12に配置される。本実施形態において、無線通信機9は、基板11に支持される。
【0030】
伝熱部材10は、受熱部2と熱電発電モジュール5とを接続する。伝熱部材10は、受熱部2の熱を熱電発電モジュール5に伝達する。伝熱部材10は、アルミニウム又は銅のような金属材料によって形成される。伝熱部材10は、Z軸方向に長い棒状部材である。伝熱部材10は、内部空間12に配置される。
【0031】
基板11は、制御基板を含む。基板11は、内部空間12に配置される。基板11は、支持部材11Aを介して受熱部2に接続される。基板11は、支持部材11Bを介して放熱部3に接続される。基板11は、受熱部2及び放熱部3のそれぞれから離れるように、支持部材11A及び支持部材11Bに支持される。
【0032】
蓄電部14は、熱電発電モジュール5が発生した電力を蓄える。蓄電部14として、キャパシタ又は二次電池が例示される。
【0033】
[熱電発電モジュール]
図2は、本実施形態に係る熱電発電モジュール5を模式的に示す斜視図である。図2に示すように、熱電発電モジュール5は、p型熱電半導体素子5Pと、n型熱電半導体素子5Nと、第1電極53と、第2電極54と、第1基板51Sと、第2基板52Sとを有する。XY平面内において、p型熱電半導体素子5Pとn型熱電半導体素子5Nとは、交互に配置される。第1電極53は、p型熱電半導体素子5P及びn型熱電半導体素子5Nのそれぞれに接続される。第2電極54は、p型熱電半導体素子5P及びn型熱電半導体素子5Nのそれぞれに接続される。p型熱電半導体素子5Pの下面及びn型熱電半導体素子5Nの下面は、第1電極53に接続される。p型熱電半導体素子5Pの上面及びn型熱電半導体素子5Nの上面は、第2電極54に接続される。第1電極53は、第1基板51Sに接続される。第2電極54は、第2基板52Sに接続される。
【0034】
p型熱電半導体素子5P及びn型熱電半導体素子5Nのそれぞれは、例えばBiTe系熱電材料を含む。第1基板51S及び第2基板52Sのそれぞれは、セラミックス又はポリイミドのような電気絶縁材料によって形成される。
【0035】
第1基板51Sは、端面51を有する。第2基板52Sは、端面52を有する。第1基板51Sが加熱されることによって、p型熱電半導体素子5P及びn型熱電半導体素子5Nのそれぞれの+Z側の端部と-Z側の端部との間に温度差が与えられる。p型熱電半導体素子5Pの+Z側の端部と-Z側の端部との間に温度差が与えられると、p型熱電半導体素子5Pにおいて正孔が移動する。n型熱電半導体素子5Nの+Z側の端部と-Z側の端部との間に温度差が与えられると、n型熱電半導体素子5Nにおいて電子が移動する。p型熱電半導体素子5Pとn型熱電半導体素子5Nとは第1電極53及び第2電極54を介して接続される。正孔と電子とによって第1電極53と第2電極54との間に電位差が発生する。第1電極53と第2電極54との間に電位差が発生することにより、熱電発電モジュール5は電力を発生する。第1電極53にリード線55が接続される。熱電発電モジュール5は、リード線55を介して電力を出力する。
【0036】
[マイクロコンピュータ]
図3は、本実施形態に係る解析装置1を示すブロック図である。図3に示すように、熱電発電モジュール5、蓄電部14、振動センサ6、マイクロコンピュータ8、及び無線通信機9は、1つのハウジング20に収容される。
【0037】
マイクロコンピュータ8は、検出データ取得部81と、演算部82と、通信制御部83とを有する。
【0038】
検出データ取得部81は、予め設定された測定時間及びサンプリング周波数(ODR:Output Data Rate)において、振動センサ6の検出データを取得する。振動センサ6の検出データは、振動波形を含む。測定時間及びサンプリング周波数は、サンプリング点数がマイクロコンピュータ8のメモリ容量に依存する上限値を超えない等の条件を満たす範囲で設定される必要がある。
【0039】
演算部82は、マイクロコンピュータ8の各部が予め記憶されたプログラムを実行するように制御する。演算部82は、検出データ取得部81により取得された振動センサ6の検出データに基づいて演算処理を実施し、処理データを出力する。処理データとは、検出データがデータ処理されることにより生成されるデータをいう。
【0040】
演算部82は、例えば高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transform)のような振動解析方法に基づいて、振動センサ6の検出データを処理して処理データを出力することができる。演算部82は、FFT解析を実施する前に、バンドバスフィルタ(BPF:Band Pass Filter)として、ハイパスフィルタ(HPF:High Pass Filter)処理、ローパスフィルタ(LPF:Low Pass Filter)処理を行ってもよい。
【0041】
演算部82により生成される処理データは、例えば振動センサ6の検出データから算出される機器Bの振動のピーク値、実効値、振動数、オーバーオール値、及び波高率の少なくとも一つを含む。
【0042】
演算部82は、振動センサ6の検出データを処理して、機器Bの振動のピーク値を算出できる。振動のピーク値は、振動の最大値及び最小値を含む。振動のピーク値は、振動波形の全範囲のピーク値でもよいし、複数の周波数範囲のそれぞれにおけるピーク値でもよい。振動のピーク値は、加速度のピーク値でもよいし、速度のピーク値でもよいし、変位のピーク値でもよい。
【0043】
演算部82は、検出データ取得部81により取得された振動波形(例えば加速度データ)について、標準偏差σを算出する。演算部82は、絶対値が、標準偏差σに係数nを乗じた値であるnσより大きい加速度であるそれぞれの時点の加速度を抽出し、抽出した加速度の絶対値の平均値を算出する。演算部82は、算出したnσより絶対値が大きい加速度の平均値を、振動のピーク値として規定する。係数nは、予め設定される。係数nは、2≦n≦3の範囲で設定される。係数nは、適宜変更可能である。係数nは、例えば管理コンピュータ100から無線通信を介して作業者によって設定されてもよい。
【0044】
演算部82は、振動センサ6の検出データを処理して、機器Bの振動の実効値(RMS:Root Mean Square Value)を算出できる。また、演算部82は、振動センサ6により検出された振動波形の全範囲を複数の周波数範囲に分割し、複数の周波数範囲のそれぞれについて実効値を算出してもよい。振動の実効値は、加速度の実効値でもよいし、速度の実効値でもよいし、変位の実効値でもよい。
【0045】
演算部82は、振動センサ6の検出データを処理して、機器Bの振動数を算出できる。また、演算部82は、振動センサ6の検出データを処理して、振動のオーバーオール値(Overall Value)を算出できる。
【0046】
演算部82は、規定したピーク値及び算出した実効値に基づいて、機器Bの波高率(CF:Crest Factor)を算出できる。波高率とは、ピーク値の実効値に対する比(ピーク値/実効値)をいう。例えば回転機器のモータのベアリングの状態を診断する際、波高率が大きい場合はベアリングに傷が付いて衝撃振動が発生した傾向を示し、波高率が小さい場合はベアリングが潤滑不良によりモータの負荷が大きくなった傾向を示す。
【0047】
通信制御部83は、無線通信機9が管理コンピュータ100と通信するように制御する。無線通信機9が管理コンピュータ100からピーク値を規定するための係数nを設定するための設定データを受信した場合、通信制御部83は、受信した設定データを演算部82へ出力する。
【0048】
また、通信制御部83は、検出データ取得部81により取得された振動センサ6の検出データが管理コンピュータ100に送信されるように、無線通信機9を制御する。無線通信機9は、検出データ取得部81により取得された振動センサ6の検出データを、管理コンピュータ100に送信する。
【0049】
また、演算部82により処理データが出力された場合、通信制御部83は、処理データが管理コンピュータ100に送信されるように、無線通信機9を制御する。無線通信機9は、演算部82により算出された処理データを、管理コンピュータ100に送信する。
【0050】
[解析方法]
図4は、本実施形態に係る解析方法を示すフローチャートである。本実施形態において、解析装置1が設置される機器Bは、回転機械の一種であるモータである。モータは、ポンプを作動させる。本実施形態における解析方法では、モータのベアリングの傷の有無を診断するために、振動のピーク値、実効値、オーバーオール値、及び波高率を処理データとして出力する。
【0051】
解析装置1では、例えば管理コンピュータ100から無線通信を介して設定された設定データに基づいて、演算部82により、ピーク値を規定するための係数nが設定される(ステップS1)。
【0052】
検出データ取得部81は、振動センサ6から演算部82が設定した測定時間及びサンプリング周波数(ODR)のサンプリング点数分の加速度データ、すなわち振動波形の生データを、検出データとして取得する(ステップS2)。
【0053】
図5は、本実施形態に係る解析方法において検出データの一例を示す図である。図5の縦軸は、振動センサ6により検出された加速度[m/s]を示し、横軸は、時間[msec]を示す。
【0054】
検出データ取得部81は、図4に示すステップS2において図5に示すような加速度の波形データを取得する。図5に示すように、取得された加速度の波形データでは、ピークの大きさ(最大値Ph及び最小値Pl)にばらつきがある。すなわち、取得された加速度の波形データをそのまま処理した場合、演算結果の誤差が大きくなる可能性がある。
【0055】
演算部82は、ステップS2で検出データ取得部81が取得した加速度データについて、標準偏差σを算出する(ステップS3)。
【0056】
図6は、図5のヒストグラムを示す図である。図6の縦軸は、サンプリング点数を示し、横軸は、加速度[m/s]を示す。図7は、本実施形態に係る解析方法においてピーク値を規定する方法を説明する説明図である。図7の縦軸は、振動センサ6により検出された加速度[m/s]を示し、横軸は、時間[msec]を示す。
【0057】
図6に示すように、演算部82が加速度データを複数の加速度範囲に分割してそれぞれの加速度範囲毎のサンプリング点数を示すヒストグラムを生成すると、加速度のヒストグラムは、概ね正規分布となる。なお、図6に示す一例において、1つの加速度範囲は、概ね100[m/s]である。
【0058】
演算部82は、絶対値が、ステップS3で算出した標準偏差σのn倍であるnσより大きい加速度を抽出し、抽出した加速度の平均値を算出する(ステップS4)。演算部82は、抽出した全ての加速度の絶対値の平均値を算出する。演算部82は、算出したnσより絶対値が大きい加速度の平均値を、振動のピーク値として規定する(ステップS5)。
【0059】
例えば、n=2である場合、演算部82は、図6に示す正規分布のラインB+2σより外側の部分Pha+2σに含まれる加速度、及びラインB-2σより外側の部分Pla-2σに含まれる加速度の絶対値の平均値を算出する。これにより、演算部82は、図7に示す加速度の波形データにおいて、加速度の値がB+2σ以上である点の加速度と、加速度の値がB-2σ以下である点の加速度との絶対値の平均値を、振動のピーク値として規定する。
【0060】
例えば、n=2.5である場合、演算部82は、図6に示す正規分布のラインB+2.5σより外側の部分Pha+2.5σに含まれる加速度、及びラインB-2.5σより外側の部分Pla-2.5σに含まれる加速度の絶対値の平均値を算出する。これにより、演算部82は、図7に示す加速度の波形データにおいて、加速度の値がB+2.5σ以上である点の加速度と、加速度の値がB-2.5σ以下である点の加速度との絶対値の平均値を、振動のピーク値として規定する。
【0061】
例えば、n=3である場合、演算部82は、図6に示す正規分布のラインB+3σより外側の部分Pha+3σに含まれる加速度、及びラインB-3σより外側の部分Pla-3σに含まれる加速度の絶対値の平均値を算出する。これにより、演算部82は、図7に示す加速度の波形データにおいて、加速度の値がB+3σ以上である点の加速度と、加速度の値がB-3σ以下である点の加速度との絶対値の平均値を、振動のピーク値として規定する。
【0062】
演算部82は、振動センサ6の検出データを処理して、実効値を算出する。演算部82は、振動センサ6の検出データを処理して、オーバーオール値を算出する。演算部82は、ステップS5で規定したピーク値と、算出した実効値とに基づいて、波高率を算出する(ステップS6)。
【0063】
演算部82は、算出したピーク値、実効値、オーバーオール値、及び波高率を処理データとして、無線通信機9に送信させる。無線通信機9は、処理データを管理コンピュータ100に送信する(ステップS7)。
【0064】
管理コンピュータ100は、送信された処理データに基づいて、機器Bの状態を監視及び管理することができる。管理コンピュータ100は、送信された処理データに基づいて、機器Bの異常の有無を診断することができる。
【0065】
[効果]
以上説明したように、本実施形態によれば、振動センサ6が機器Bに設置される。振動センサ6の検出データは、マイクロコンピュータ8に出力される。マイクロコンピュータ8の演算部82は、振動センサ6の検出データの標準偏差σに基づいてピーク値を規定する。
【0066】
このように、実施形態の解析方法によって、ピーク値を定量的に抽出した範囲の平均値から規定することで、定量的にピーク値を算出でき、演算結果の誤差を小さくすることができる。したがって、電力の制限やマイクロコンピュータ8の能力により、検出データの振動波形の測定点数が少なかったり測定時間が短かったりして繰り返し測定にばらつきがある場合でも、安定した演算結果を出力でき、機器Bの状態監視の精度を向上させることができる。
【0067】
実施形態において、演算部82による演算で出力された処理データは、無線通信機9から管理コンピュータ100に送信される。そのため、管理コンピュータ100は、定量的に演算されたピーク値及びピーク値から算出される各値に基づいて、機器Bを適正に診断することができる。
【0068】
実施形態において、演算部82は、振動センサ6の検出データについて、絶対値が標準偏差σに係数nを乗じた値であるnσより大きい加速度の平均値を、ピーク値として規定する。演算部82は、係数nを変更可能である。すなわち、標準偏差σの係数n倍に基づいてピーク値を規定できるので、診断対象等によって、容易にピークの規定範囲を変更可能である。
【0069】
(第2実施形態)
第2実施形態について説明する。以下の説明において、上述の第1実施形態と同一又は同等の構成要素については同一の符号を付し、その説明を簡略又は省略する。
【0070】
[解析システム]
図8は、本実施形態に係る解析システム200を模式的に示す図である。図8に示すように、解析システム200は、機器Bに設置される複数の解析装置1と、通信機210と、中継器220とを備える。機器Bは、産業施設に複数設けられる。上述のように、機器Bとして、ポンプを作動させるモータが例示される。機器Bは、地下に設置されてもよい。機器Bが作動することにより、機器Bは発熱する。機器Bは、解析装置1の熱源として機能する。
【0071】
通信機210は、中継器220を介して複数の解析装置1のそれぞれから送信された振動センサ6の検出データ及び演算部82が出力した処理データを受信して、管理コンピュータ100に送信する。通信機210は、例えば複数の解析装置1のそれぞれから送信された検出データ及び処理データを所定のフォーマットに処理した後、管理コンピュータ100に送信する。複数の解析装置1のそれぞれからの検出データ及び処理データは、通信機210により集約された後、管理コンピュータ100に送信される。通信機210と管理コンピュータ100とは、無線通信してもよいし有線通信してもよい。
【0072】
中継器220は、解析装置1と通信機210とを中継する。中継器220は、複数設けられる。中継器220と通信機210とは、無線通信する。
【0073】
管理コンピュータ100は、複数の解析装置1のそれぞれから送信された振動センサ6の検出データ及び演算部82が出力した処理データに基づいて、複数の機器Bの状態を監視及び管理することができる。管理コンピュータ100は、複数の解析装置1のそれぞれから送信された振動センサ6の検出データ及び演算部82が出力した処理データに基づいて、機器Bの異常の有無を診断することができる。
【0074】
複数の解析装置1は、独立して検出データ及び処理データを送信することができる。すなわち、解析装置1は、他の解析装置1の影響を受けることなく、検出データ及び処理データを送信することができる。
【0075】
例えば、機器B及び解析装置1が地下に存在し、通信機210及び管理コンピュータ100が地上に存在する場合、中継器220が設けられることにより、解析装置1から送信された検出データ及び処理データは、管理コンピュータ100に円滑に送信される。
【0076】
[効果]
以上説明したように、本実施形態では、解析システム200が、複数の機器Bのそれぞれに設置される複数の解析装置1と、複数の解析装置1のそれぞれから送信された処理データを受信して、管理コンピュータ100に送信する通信機210とを備える。そのため、管理コンピュータ100は、複数の機器Bの状態を監視及び管理したり、複数の機器Bの異常の有無を診断したりすることができる。
【0077】
[その他の実施形態]
なお、上述の実施形態において、管理コンピュータ100は、1つのコンピュータにより構成されてもよいし、複数のコンピュータにより構成されてもよい。
【0078】
上述の実施形態においては、1つのハウジング20に、熱電発電モジュール5、振動センサ6、マイクロコンピュータ8、及び無線通信機9が収容されることとした。熱電発電モジュール5が第1ハウジングに収容され、振動センサ6、マイクロコンピュータ8、及び無線通信機9が第2ハウジングに収容されてもよい。第1ハウジングと第2ハウジングとは別のハウジングである。蓄電部14は、第1ハウジングと第2ハウジングとの間に配置されてもよい。
【0079】
上述の実施形態において、演算部82の機能が管理コンピュータ100に設けられてもよい。振動センサ6の検出データが無線通信機9を介して管理コンピュータ100に送信され、管理コンピュータ100が処理データを出力してもよい。また、管理コンピュータ100の機能がマイクロコンピュータ8に設けられてもよい。例えば、演算部82が、異常の有無を診断してもよい。
【符号の説明】
【0080】
1…解析装置、2…受熱部、2A…受熱面、2B…内面、3…放熱部、3A…放熱面、3B…内面、4…周壁部、4B…内面、5…熱電発電モジュール、5N…n型熱電半導体素子、5P…p型熱電半導体素子、6…振動センサ、8…マイクロコンピュータ、9…無線通信機、10…伝熱部材、11…基板、11A…支持部材、11B…支持部材、12…内部空間、13A…シール部材、13B…シール部材、14…蓄電部、20…ハウジング、51…端面、51S…第1基板、52…端面、52S…第2基板、53…第1電極、54…第2電極、55…リード線、81…検出データ取得部、82…演算部、83…通信制御部、100…管理コンピュータ、200…解析システム、210…通信機、220…中継器、B…機器。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8