(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022108668
(43)【公開日】2022-07-26
(54)【発明の名称】リクライニング装置
(51)【国際特許分類】
B60N 2/225 20060101AFI20220719BHJP
A47C 1/025 20060101ALI20220719BHJP
【FI】
B60N2/225
A47C1/025
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021003793
(22)【出願日】2021-01-13
(71)【出願人】
【識別番号】000143639
【氏名又は名称】株式会社今仙電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100129676
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼荒 新一
(72)【発明者】
【氏名】石原 慶隆
(72)【発明者】
【氏名】小川 信彦
(72)【発明者】
【氏名】平松 龍一
【テーマコード(参考)】
3B087
3B099
【Fターム(参考)】
3B087BD03
3B099AA05
3B099BA04
3B099CA18
3B099CA22
3B099CB05
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ブッシュが全周に渡って軸受することができるようにし、360°のいずれの方向からの外力であってもブッシュによって力を受けることで摺動を安定化させることができるリクライニング装置を提供する。
【解決手段】リクライニング装置100は、外歯歯車10と、内歯歯車20と、外歯歯車10又は内歯歯車20のいずれか一方を他方の歯車軸を中心に回転させるための回転シャフト30と、外歯歯車10の貫通孔12の内周と内歯歯車20の円筒ボス22の外周との間に配置され、第1ブッシュ41と第2ブッシュ42とに分割して形成されるブッシュ40と、を備え、第1ブッシュ41は、先端側が細くなるようにテーパーが形成された正面側ブッシュ41aと、背面側ブッシュ41bとが重ね合わされて形成されており、一方側端部は正面側ブッシュ41aが延出し、他方側端部は背面側ブッシュ41bが延出されるように付勢されてなることを特徴とする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッションを構成するシートクッションフレームに対してシートバックを構成するシートバックフレームを傾動可能に保持するシートのリクライニング装置であって、
前記シートクッションフレーム及び前記シートバックフレームの一方に対して直接又は間接的に取り付けられ、外周面に外歯が形成され、内周面に軸方向と同軸の貫通孔が形成された外歯歯車と、
前記シートクッションフレーム及び前記シートバックフレームの他方に対して直接又は間接的に取り付けられ、内周面に少なくとも外歯よりも1つ以上多く設けられた前記外歯と噛合可能な内歯を有し、かつ軸方向と同軸の円筒ボスが形成された内歯歯車と、
前記内歯歯車の前記円筒ボスに同軸かつ回転自在に嵌挿されるとともに、前記外歯歯車又は前記内歯歯車のいずれか一方を他方の歯車軸を中心に回転させる回転シャフトと、
前記外歯歯車の前記貫通孔の内周と前記内歯歯車の前記円筒ボスの外周との間に配置され、第1ブッシュと第2ブッシュとに分割して形成されるブッシュと、
前記ブッシュに設けられた弾性部材と、を備え、
前記第1ブッシュは、先端側が細くなるようにテーパーが形成された正面側ブッシュと、先端側が細くなるようにテーパーが形成された背面側ブッシュとが重ね合わされて形成されており、一方側端部は前記正面側ブッシュが延出し、他方側端部は前記背面側ブッシュが延出されるように、弾性部材によって付勢されており、
前記第2ブッシュは、前記第1ブッシュの一方側端部および他方側端部に隙間を開けて配置されており、前記回転シャフトの回転と同期するように前記回転シャフトと係合してなることを特徴とするリクライニング装置。
【請求項2】
シートクッションを構成するシートクッションフレームに対してシートバックを構成するシートバックフレームを傾動可能に保持するシートのリクライニング装置であって、
前記シートクッションフレーム及び前記シートバックフレームの一方に対して直接又は間接的に取り付けられ、外周面に外歯が形成され、軸方向と同軸の円筒ボスが形成された外歯歯車と、
前記シートクッションフレーム及び前記シートバックフレームの他方に対して直接又は間接的に取り付けられ、内周面に少なくとも外歯よりも1つ以上多く設けられた前記外歯と噛合可能な内歯を有し、かつ内周面に軸方向と同軸の貫通孔が形成された内歯歯車と、
前記外歯歯車の前記円筒ボスに同軸かつ回転自在に嵌挿されるとともに、前記内歯歯車又は前記外歯歯車のいずれか一方を他方の歯車軸を中心に回転させるための回転シャフトと、
前記内歯歯車の前記貫通孔の内周と前記外歯歯車の前記円筒ボスの外周との間に配置され、第1ブッシュと第2ブッシュとに分割して形成されるブッシュと、
前記ブッシュに設けられた弾性部材と、を備え、
前記第1ブッシュは、先端側が細くなるようにテーパーが形成された正面側ブッシュと、先端側が細くなるようにテーパーが形成された背面側ブッシュとが重ね合わされて形成されており、一方側端部は前記正面側ブッシュが延出し、他方側端部は前記背面側ブッシュが延出されるように、弾性部材によって付勢されており、
前記第2ブッシュは、前記第1ブッシュの一方側端部および他方側端部に隙間を開けて配置されており、前記回転シャフトの回転と同期するように前記回転シャフトと係合してなることを特徴とするリクライニング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リクライニング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本権利者は、シートクッションに対して、シートバックを傾動可能に保持するシートのリクライニング装置において、シートクッション及びシートバックのいずれか一方に固定される第1フレームと、シートクッション及びシートバックの他方に固定される第2フレームと、前記第1フレームに連結されて外周面に外歯が形成され、内周面に軸方向と同軸の外歯ボス部を備える外歯歯車と、前記第2フレームに連結されて外周面に前記外歯に噛合可能な内歯が形成され、内周面に軸方向と同軸の円筒ボス部を備える内歯歯車と、前記外歯歯車に同軸的かつ回転自在に嵌合すると共に、前記外歯歯車および前記内歯歯車のいずれか一方を他方の歯車軸を中心に公転させる回転軸と、を備え、前記円筒ボス部と前記外歯ボス部との間に介挿され、前記円筒ボス部側と前記外歯ボス部とに同時に接触して前記円筒ボス部と前記外歯ボス部との回転を規制すると共に、前記円筒ボス部側と前記外歯ボス部側との少なくとも一方を摺動させ、前記円筒ボス部と前記外歯ボス部との回転を許容する一対のくさび状カムと、前記一対のくさび状カムを前記円筒ボス部側と前記外歯ボス部側とに同時に接触させる方に付勢するバネ材と、前記回転軸の回転に伴い回転する円盤状部材であって、軸方向に延在し、前記一対のくさび状カムを前記円筒ボス部側と前記外歯ボス部側との少なくとも一方から非接触にする方向へ押す当接面にテーパーの設けられたカム押し翼を一対備える円盤状部材と、前記円盤状部材を前記一対のくさび状カム側に押し当て、前記テーパーの設けられた当接面を前記一対のくさび状カムへ当接させる板バネであって、付勢力は前記バネ材よりも弱く設定されている板バネと、を備えるものを提案している(特許文献1)。
【0003】
かかるリクライニング装置によれば、回転軸に連動する円盤状部材のカム押し翼によってくさび状カムを直接作動させるため、外歯歯車と、内歯歯車との間の回転抵抗が均一になり、外歯歯車と内歯歯車の回転をなめらかにすることができる、という効果を有する。
【0004】
かかるリクライニング装置は、ブッシュに対してくさび状カムしか当接していないため、車両シートのシートバックに大きな力が加わった場合に、リクライニング装置に加わる外力に対して、ブッシュとくさび状カムとの接触部でしか力を受けることができない、という問題点があった。そのため、加わる外力の方向に応じて一部に大きな力が加わったりし、例えば、力をギア歯で受けなければならない場合もあり、このように力をギア歯で受けている場合、差動歯車となっているリクライニング装置ではスムーズに摺動回転させることができない場合があるといった問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、こうした課題を鑑みてなされたものであり、くさび状カムをなくし、ブッシュが全周に渡って軸受することができるようにすることで、360°のいずれの方向から外力が加えられた場合であってもブッシュによって力を受けることができるようにして摺動を安定化させることができるリクライニング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の目的を達成するために、以下の手段を採った。
【0008】
本発明のリクライニング装置は、
シートクッションを構成するシートクッションフレームに対してシートバックを構成するシートバックフレームを傾動可能に保持するシートのリクライニング装置であって、
前記シートクッションフレーム及び前記シートバックフレームの一方に対して直接又は間接的に取り付けられ、外周面に外歯が形成され、内周面に軸方向と同軸の貫通孔が形成された外歯歯車と、
前記シートクッションフレーム及び前記シートバックフレームの他方に対して直接又は間接的に取り付けられ、内周面に少なくとも外歯よりも1つ以上多く設けられた前記外歯と噛合可能な内歯を有し、かつ軸方向と同軸の円筒ボスが形成された内歯歯車と、
前記内歯歯車の前記円筒ボスに同軸かつ回転自在に嵌挿されるとともに、前記外歯歯車又は前記内歯歯車のいずれか一方を他方の歯車軸を中心に回転させるための回転シャフトと、
前記外歯歯車の貫通孔の内周と前記内歯歯車の前記円筒ボスの外周との間に配置され、第1ブッシュと第2ブッシュとに分割して形成されるブッシュと、
前記ブッシュに設けられた弾性部材と、を備え、
前記第1ブッシュは、先端側が細くなるようにテーパーが形成された正面側ブッシュと、先端側が細くなるようにテーパーが形成された背面側ブッシュとが重ね合わされて形成されており、一方側端部は正面側ブッシュが延出し、他方側端部は背面側ブッシュが延出されるように、弾性部材によって付勢されており、
前記第2ブッシュは、前記第1ブッシュの一方側端部および他方側端部に隙間を開けて配置されており、回転シャフトの回転と同期するように前記回転シャフトと係合してなることを特徴とする。
【0009】
かかる構成を採用することによって、ブッシュによってほぼ全周に渡って軸受することができる。そのため、360°のいずれの方向からの外力が加わった場合であってもブッシュによって力を受けることができるので、摺動を安定化させることができる。
【0010】
また、本発明にかかるリクライニング装置は、
シートクッションを構成するシートクッションフレームに対してシートバックを構成するシートバックフレームを傾動可能に保持するシートのリクライニング装置であって、
前記シートクッションフレーム及び前記シートバックフレームの一方に対して直接又は間接的に取り付けられ、外周面に外歯が形成され、軸方向と同軸の円筒ボスが形成された外歯歯車と、
前記シートクッションフレーム及び前記シートバックフレームの他方に対して直接又は間接的に取り付けられ、内周面に少なくとも外歯よりも1つ以上多く設けられた前記外歯と噛合可能な内歯を有し、かつ内周面に軸方向と同軸の貫通孔が形成された内歯歯車と、
前記外歯歯車の前記円筒ボスに同軸かつ回転自在に嵌挿されるとともに、前記内歯歯車又は前記外歯歯車のいずれか一方を他方の歯車軸を中心に回転させるための回転シャフトと、
前記内歯歯車の貫通孔の内周と前記外歯歯車の前記円筒ボスの外周との間に配置され、第1ブッシュと第2ブッシュとに分割して形成されるブッシュと、
前記ブッシュに設けられた弾性部材と、を備え、
前記第1ブッシュは、先端側が細くなるようにテーパーが形成された正面側ブッシュと、先端側が細くなるようにテーパーが形成された背面側ブッシュとが重ね合わされて形成されており、一方側端部は正面側ブッシュが延出し、他方側端部は背面側ブッシュが延出されるように、弾性部材によって付勢されており、
前記第2ブッシュは、前記第1ブッシュの一方側端部および他方側端部に隙間を開けて配置されており、回転シャフトの回転と同期するように前記回転シャフトと係合してなることを特徴とする。
【0011】
かかるリクライニング装置の構成であっても同様に、ブッシュによってほぼ全周に渡って軸受することができる。そのため、360°のいずれの方向からの外力が加わった場合であってもブッシュによって力を受けることができるので、摺動を安定化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、第1実施形態にかかるリクライニング装置100が取り付けられる車両用シート200の模式図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態にかかるリクライニング装置100の内部構造を示す正面図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態にかかるリクライニング装置100の分解斜視図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態にかかる
図2のA-A断面図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態にかかるブッシュ40を説明する模式図である。
【
図6】
図6は、第2実施形態にかかるリクライニング装置100の内部構造を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態にかかるリクライニング装置100を、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、車両用シート200の模式図であり、
図2は、リクライニング装置100の内部構造を示す正面図であり、
図3は、リクライニング装置100の分解斜視図であり、
図4は
図2のA-A断面図である。なお、以下に説明する実施形態及び図面は、本発明の実施形態の一部を例示するものであり、これらの構成に限定する目的に使用されるものではない。なお、各図において対応する構成要素には同一又は類似の符号が付されている。
【0014】
(第1実施形態)
第1実施形態にかかるリクライニング装置100は、
図1に示すように、車両用シート200のシートクッション210と、このシートクッション210に対して、傾動可能に取り付けられるシートバック220の傾動の中心位置に取り付けられ、シートバック220に傾動機能を与える装置である。具体的には、シートクッション210の内部に配置されるシートクッションフレームと、シートバック220の内部に配置されるシートバックフレームとの間に直接又は他の取付用プレート230(以下「取付用プレート等」という。)を介して間接的に取り付けられて使用される。
【0015】
本発明にかかるリクライニング装置100は、主として、
図2及び
図3に示すように、外歯歯車10、内歯歯車20、回転シャフト30、ブッシュ40、弾性体としてスプリング60、スプリングカバー70及びプレートカバー80を備えている。なお、
図2では、内部構造を見やすくするため、スプリングカバー70及びプレートカバー80は省略されている。
【0016】
外歯歯車10は、
図3に示すように、円板状に形成されており、外周面には外歯11が形成され、中央には円筒状の貫通孔12が形成されている。外歯歯車10には、外側面10bに突出部13が設けられており、取付用プレート等230に設けられた嵌合孔と嵌合した状態で溶接等によって取り付けられる。
【0017】
内歯歯車20は、外歯歯車10よりも大きな直径を有する円板状に形成されており、外歯歯車10を内側に装着可能となるように円筒状の凹部が形成され、この凹部の内周面に内歯21が形成されている。内歯21は、外歯歯車10の外歯11の歯数よりも少なくとも1つ以上多く形成されており、外歯歯車10と内歯歯車20は、
図2に示すように、それぞれ外歯歯車10の中心C
1と内歯歯車20の中心C
2が偏心(β)するように内歯21と外歯11に対して噛合している。従って、外歯歯車10と内歯歯車20は差動歯車を形成し、内歯歯車20が外歯11の周りを1周すると、内歯21と外歯11の歯の差分だけ回転が進むことになる。すなわち、例えば、歯が1つだけ異なる場合、外歯歯車10が内歯歯車20の周囲を1周すると歯1つ分回転することになる。内歯歯車20の中心には、円筒ボス22が設けられている。
図3に示すように、この内歯歯車20の外側面にも突出部23が設けられており、取付用プレート等230に設けられた嵌合孔と嵌合した状態で溶接等によって取り付けられる。
【0018】
回転シャフト30は、内歯歯車20の円筒ボス22に対して同軸上で回転自在に嵌挿されている。回転シャフト30は、シートバック220の傾動を調整する際に回転駆動されるものであり、傾動用モータの回転力を受けるために内筒面には、セレーション31が設けられている。さらに、回転シャフト30は、後述するブッシュ40の第2ブッシュ42に設けられる突起部42cと嵌合する嵌合凹部32を有している。嵌合凹部32は、突起部42cを両側から挟み込むようにして取り付けられ、時計周り、反時計周りのいずれの方向に回転シャフト30を回転させても、第2ブッシュ42は回転シャフト30と同様に回転する。
【0019】
ブッシュ40は、内歯歯車20の円筒ボス22の外周面22aと、外歯歯車10の貫通孔12との間に配置されており、円環状又はリング状の部材を第1ブッシュ41と第2ブッシュ42の2つに分割したような形態をなしている。
【0020】
第1ブッシュ41は、
図5Aの分解斜視図に示すように、正面側ブッシュ41aと背面側ブッシュ41bとがそれぞれスライド可能に重ね合わされている。正面側ブッシュ41a及び背面側ブッシュ41bは、それぞれ両端側の幅w1が中央の幅w2に対して細くなるようにテーパーが設けられている。なお、
図5Bにおいては、テーパーが設けられていることをわかりやすくするために、端部が極端に狭くなるように図示されているが、実際には、もっと緩やかであってもよい。正面側ブッシュ41aの一方側端部41iが、背面側ブッシュ41bの一方側端部41jに対して延出して形成され、背面側ブッシュ41bの他方側端部41kが、正面側ブッシュ41aの他方側端部41mに対して延出して形成されている。さらに、正面側ブッシュ41aには、後述する弾性部材としてのスプリング60の端部62aが固定されるスプリング用固定孔41fと、スプリング60の他方側の端部62bがスライド自在に挿入されるスプリング用長孔41gが形成されている。背面側ブッシュ41bには、スプリング60の他方側の端部62bが固定されるスプリング用固定孔41hが前述したスプリング用長孔41gに相当する位置に設けられている。こうして作製された第1ブッシュ41は、スプリング60によって、
図5Bに示すように、正面側ブッシュ41aは、矢印d1に示すように、反時計回りに付勢されており、背面側ブッシュ41bは、矢印d2に示すように、時計回りに付勢されている。なお、正面側ブッシュ41aと背面側ブッシュ41bの延出されている端部を反対にして、背面側ブッシュ41bの一方側端部41jが、正面側ブッシュ41aの一方側端部41iに対して延出して形成され、正面側ブッシュ41aの他方側端部41mが背面側ブッシュ41bの他方側端部41kに対して延出して形成され、正面側ブッシュ41aは、時計回りに付勢されており、背面側ブッシュ41bは、反時計回りに付勢されているようにしてもよい。
【0021】
第2ブッシュ42は、
図5に示すように第1ブッシュ41の外周面41cと第2ブッシュ42の外周面42aは、外歯歯車10の貫通孔12の内周面とほぼ同様の外周面で形成される。第1ブッシュ41の内周面41dと第2ブッシュ42の内周面42bは、内歯歯車20の円筒ボス22の外周面22a側に配置される。第2ブッシュ42の内周面42bの中心C
3と第2ブッシュ42の外周面42aの中心C
4がずれて偏心(γ)しており、第1ブッシュ41及び第2ブッシュ42で、一部分断されているものの、全体として、偏心したリング状に形成される。分断部分の隙間は、好ましくは、中心からの角度θが6°以下となる幅に作製することが好ましい。第2ブッシュ42には、前述した嵌合凹部32と嵌合する突起部42cが側面に設けられている。突起部42cの数や位置は特に限定するものではない。これによって、回転シャフト30の回転と同期するように第2ブッシュ42は回転することになる。
【0022】
スプリング60は、
図3に示すように、環状部61と、この環状部61から90°折れるように立ち上がった端部62a、62bとを有し、この端部62a、62bは、前述したスプリング用固定孔41fと、スプリング用固定孔41hに先端が固定され、正面側ブッシュ41aを矢印d1に示すように反時計回りに、背面側ブッシュ41bを矢印d2に示すように時計回りに付勢している。なお、スプリング60は、ゴム等の他の弾性体であってもよい。
【0023】
スプリングカバー70は、
図4に示すように、スプリング60が外れることがないように、保持するためのカバーであり、スプリング60を保持できる形態であれば、特に限定するものではない。
【0024】
プレートカバー80は、円環状に形成された金属板で形成されており、内歯歯車20の外周側の端部に溶接等で固定され、外歯歯車10の軸方向への移動を規制する機能を有する。
【0025】
こうして作製されたリクライニング装置100は、以下のようにして作動する。回転シャフト30に力を加えず、回転させていない状態では、正面側ブッシュ41aと背面側ブッシュ41bがスプリングによって付勢されているので、第1ブッシュ41と内歯歯車20の円筒ボス22の外周面22a又は、第1ブッシュ41の外周面41cと外歯歯車10の貫通孔12の内周面を押圧しており、内歯歯車20と外歯歯車10の相対運動はロックされており、シートバック220はロック状態にある。
【0026】
このロック状態から、回転シャフト30を例えば
図2において、反時計方向に回転させると、回転シャフト30と係合している第2ブッシュ42も同様に反時計回りに回転する。この回転により、第2ブッシュ42の他方側端部42dは、背面側ブッシュ41bの他方側端部41kを押圧することになる。この背面側ブッシュ41bの回転により、第1ブッシュ41と内歯歯車20の円筒ボス22の外周面22a又は、第1ブッシュ41の外周面41cと外歯歯車10の貫通孔12の内周面の押圧が外れ、それぞれの間に隙間が発生する。これにより、回転シャフト30、ブッシュ40は、内歯歯車20に対して、反時計方向に回転し、外歯歯車10が内歯歯車20に対して回転可能になる。これに伴い、スプリング60の付勢力によってこの隙間を埋めるように、反時計周りに回転する。こうして、回転シャフト30、ブッシュ40とともに外歯歯車10は、摺動するように反時計周りに回転することになる。こうして、外歯歯車10、内歯歯車20及び回転シャフト30は、差動歯車機構を構成することになる。なお、時計方向の回転は、第2ブッシュ42の一方側端部42eが正面側ブッシュ41aの一方側端部41iを押圧することによって正面側ブッシュ41aが時計回りに回転し、により、第1ブッシュ41と内歯歯車20の円筒ボス22の外周面22a又は、第1ブッシュ41の外周面41cと外歯歯車10の貫通孔12の内周面を押圧が外れ、それぞれの間に隙間が発生する。これにより、回転シャフト30、ブッシュ40は、内歯歯車20に対して、反時計方向に回転し、外歯歯車10が内歯歯車20に対して回転可能になる。
【0027】
こうして作製されたリクライニング装置100は、ブッシュ40が一部の分断部を除き、リング状に形成されているため、内歯歯車20又は外歯歯車10に外力が加わった時、外力方向又は反力方向に内歯歯車20又は外歯歯車10を動かそうとするが、動こうとした方向に対して、内歯歯車20の円筒ボス22の外周面22aと、外歯歯車10の貫通孔12に対して、垂直方向にブッシュが挟まり、分力成分を極小に抑えて軸受けとなることができるため、摺動が安定化し、スムーズな回転を確保することができる。
【0028】
また、構成にカムが不要であるため、コスト削減に資するリクライニング装置を提供することができる。
【0029】
(第2実施形態)
第2実施形態にかかるリクライニング装置100が
図6に示されている。第2実施形態にかかるリクライニング装置100は、第1実施形態にかかるリクライニング装置100に対して、外歯歯車10の中心に円筒ボス14が設けられており、内歯歯車20の中心に貫通孔25が設けられている点が異なる。また、回転シャフト30、ブッシュ40及びスプリング60が軸方向へ移動するのを防止するスプリングカバー70が内歯歯車20の外側面側に設けられており、このスプリングカバー70に取付用プレート等230の嵌合孔と嵌合する突出部71が設けられている点が異なる。一方、プレートカバー80は、円環状に形成された金属板で形成されており、外歯歯車10の外側面側に配置され、内歯歯車20の外周側の端部に溶接等で固定され、外歯歯車10の軸方向への移動を規制している。
【0030】
回転シャフト30、ブッシュ40及びスプリング60は、第1実施形態に対称となるように作製されている。ブッシュ40は、外歯歯車10の円筒ボス14の外周面14aと、内歯歯車20の貫通孔25との間に、配置される。ブッシュ40は、第1実施形態に対して、対称に作製されている点以外は同様である。回転シャフト30は、円筒ボス14の中心軸と同軸で回転するように円筒ボス14内に配置されており、第1実施形態と同様に、第2ブッシュ42に設けられる突起部42cを嵌合凹部32で両側から挟み込むようにして取り付け、時計周り、反時計周りのいずれに回転シャフト30を回転させても、第2ブッシュ42が回転シャフト30と同様に回転するようにされている。スプリング60は、環状部61と、この環状部61から90°折れるように立ち上がった端部62a、62bとを有し、この端部62a、62bは、第1ブッシュ41に設けられた図示しないスプリング用固定孔と、スプリング用固定孔に先端が固定され、背面側ブッシュ41bを矢印d3に示す方向に付勢し、正面側ブッシュ41aを反対方向に付勢している。
【0031】
こうして作製されたリクライニング装置100は、以下のようにして作動する。回転シャフト30に力を加えず、回転させていない状態では、正面側ブッシュ41aと背面側ブッシュ41bがスプリング60によって付勢されているので、第1ブッシュ41の内周面41dと外歯歯車10の円筒ボス14の外周面14a又は、第1ブッシュ41の外周面41cと内歯歯車20の貫通孔25の内周面を押圧しており、内歯歯車20と外歯歯車10の相対運動はロックされ、シートバック220はロック状態にある。
【0032】
このロック状態から、回転シャフト30を、反時計方向に回転させると、回転シャフト30と係合している第2ブッシュ42も同様に反時計回りに回転する。この回転により、第2ブッシュ42の他方側端部42dは、背面側ブッシュ41bの他方側端部41kを押圧することになる。この背面側ブッシュ41bの回転により、第1ブッシュ41の内周面41dと外歯歯車10の円筒ボス14の外周面14a又は、第1ブッシュ41の外周面41cと内歯歯車20の貫通孔25の内周面25aの押圧が外れ、それぞれの間に隙間が発生する。これにより、回転シャフト30、ブッシュ40は、内歯歯車20に対して、反時計方向に回転し、外歯歯車10が内歯歯車20に対して回転可能になる。これに伴い、スプリング60の付勢力によってこの隙間を埋めるように、反時計周りに回転する。こうして、回転シャフト30、ブッシュ40とともに外歯歯車10は、摺動するように反時計周りに回転することになる。こうして、外歯歯車10、内歯歯車20及び回転シャフト30は、差動歯車機構を構成することになる。なお、時計方向の回転も第1実施形態と同様に、第2ブッシュ42の一方側端部42eが正面側ブッシュ41aの一方側端部41iを押圧することによって同様に外歯歯車10が内歯歯車20に対して回転可能になる。
【0033】
こうして作製されたリクライニング装置100は、ブッシュ40が一部の分断部を除き、リング状に形成されているため、内歯歯車20又は外歯歯車10に外力が加わった時、外力方向又は反力方向に内歯歯車20又は外歯歯車10を動かそうとするが、動こうとした方向に対して、外歯歯車10の円筒ボス14の外周面14aと、内歯歯車20の貫通孔25に対して、垂直方向にブッシュが挟まり、分力成分を極小に抑えて軸受けとなることができるため、摺動が安定化し、スムーズな回転を確保することができる。
【0034】
また、構成にカムが不要であるため、コスト削減に資するリクライニング装置を提供することができる。
【0035】
また、前述した第1実施形態から第2実施形態においては、ブッシュ40に突起部42cを設け、回転シャフト30に嵌合凹部32を設けるものとしたが、ブッシュ40に嵌合凹部32を設け、回転シャフト30に突起部42cを設けても良い。
【0036】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施しうる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
上述した実施の形態で示すように、主として、車両用シートのリクライニング装置として産業上利用可能である。
【符号の説明】
【0038】
10…外歯歯車、10b…外側面、11…外歯、12…貫通孔、13…突出部、14…円筒ボス、14a…外周面、20…内歯歯車、21…内歯、22…円筒ボス、22a…外周面、23…突出部、25…貫通孔、25a…内周面、30…回転シャフト、31…セレーション、32…嵌合凹部、40…ブッシュ、41…第1ブッシュ、41a…正面側ブッシュ、41b…背面側ブッシュ、41c…外周面、41d…内周面、41f…スプリング用固定孔、41g…スプリング用長孔、41h…スプリング用固定孔、41i…一方側端部、41j…一方側端部、41k…他方側端部、42…第2ブッシュ、42a…外周面、42b…内周面、42c…突起部、42d…他方側端部、42e…一方側端部、60…スプリング、60b…端部、61…環状部、62a…端部、62b…端部、70…スプリングカバー、71…突出部、80…プレートカバー、100…リクライニング装置、200…車両用シート、210…シートクッション、220…シートバック、230…取付用プレート