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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022108678
(43)【公開日】2022-07-26
(54)【発明の名称】車両用ドア開閉装置
(51)【国際特許分類】
   E05F 15/643 20150101AFI20220719BHJP
   E05F 15/655 20150101ALI20220719BHJP
   E05F 11/48 20060101ALI20220719BHJP
   B60J 5/04 20060101ALI20220719BHJP
   B60J 5/06 20060101ALI20220719BHJP
【FI】
E05F15/643
E05F15/655
E05F11/48 A
B60J5/04 C
B60J5/06 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021003812
(22)【出願日】2021-01-13
(71)【出願人】
【識別番号】000148896
【氏名又は名称】三井金属アクト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸 直也
【テーマコード(参考)】
2E052
【Fターム(参考)】
2E052AA09
2E052CA06
2E052DA04
2E052DB04
2E052EA16
2E052EB01
2E052EC01
2E052KA16
(57)【要約】
【課題】装置の大型化を抑えて、より大きなスライドドアに対応すること。
【解決手段】クォータパネルQPの車外面Paに、車両本体Bの前後方向に沿って長手となるように取り付けられるガイドレール10Cと、車両本体Bに設けられたスライドドアRDに連結されるアーム部材11Cと、車両本体Bの前後方向に沿って長手となり、かつガイドレール10Cの上方に配置されるベルトガイド230と、モータモジュール20から与えられる動力によって往復移動する駆動ベルト130と、駆動ベルト130の一部に設けられ、連結ネジCBを螺合することによってアーム部材11Cに連結されるベルトブラケット234とを備える車両用ドア開閉装置であって、アーム部材11C及びベルトブラケット234には、それぞれガイドレール10Cの延在方向に対して交差する方向に延在し、相互に対向するように当接係合面16,235が設けられている。
【選択図】図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両本体を構成するボディパネルの車外面に、車両本体の前後方向に沿って長手となるように取り付けられるガイドレールと、
前記ガイドレールの長手に沿って走行可能に支持され、車両本体に設けられたスライドドアに連結されるアーム部材と、
車両本体を構成するボディパネルの車外面に、車両本体の前後方向に沿って長手となり、かつ前記ガイドレールに対して互いに上下に並設される状態で取り付けられる駆動ガイドと、
前記駆動ガイドの長手に沿って移動可能に配設され、駆動源から与えられる動力によって往復移動する移動体と、
前記移動体の一部に設けられ、連結部材によって前記アーム部材に連結される駆動ブラケットと
を備える車両用ドア開閉装置であって、
前記アーム部材及び前記駆動ブラケットには、それぞれ前記ガイドレールの延在方向に対して交差する方向に延在し、相互に対向するように当接係合面が設けられていることを特徴とする車両用ドア開閉装置。
【請求項2】
前記アーム部材は、上下方向に沿った第1軸の軸心回りに回転可能に配設した2つの第1ローラと、前記2つの第1ローラの相互間において水平方向に沿った第2軸の軸心回りに回転可能に配設した第2ローラとを備え、前記2つの第1ローラが車両本体の前後に並設されるとともに、前記第2軸の軸心が前記ガイドレールの長手に交差する方向に沿う状態でこれら第1ローラ及び第2ローラを介して前記ガイドレールを走行するものであり、
前記アーム部材には、前記第2ローラを支持する軸受部において車両本体の前方側及び後方側となる部分のそれぞれに前記当接係合面が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の車両用ドア開閉装置。
【請求項3】
前記駆動ブラケットには、前記第1ローラの軸受部に対してそれぞれ車両本体の車外側に位置する部分に当接する当接部が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の車両用ドア開閉装置。
【請求項4】
前記アーム部材は、前記ガイドレールから車両本体の車外側に向けて延在する外方板部を有し、前記外方板部の延在縁部にスライドドアとの連結部が構成されたものであり、
前記駆動ブラケットは、前記外方板部に重なるアームカバー部を有し、前記アームカバー部を介して前記外方板部に前記連結部材が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の車両用ドア開閉装置。
【請求項5】
前記駆動ブラケットは、前記移動体から上下方向に沿ってほぼ鉛直に延在するブラケット本体部を有し、前記ブラケット本体部よりも車両本体の車外側となる部分に前記連結部材が設けられ、かつ前記ブラケット本体部よりも車両本体の車内側となる部分において前記当接部が前記第1ローラの軸受部に当接されていることを特徴とする請求項3に記載の車両用ドア開閉装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両本体の前後方向に沿って移動可能に支持されたスライドドアを駆動するための車両用ドア開閉装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の車両用ドア開閉装置としては、スライドドアを支持するガイドレールと、駆動ベルト等の移動体が設けられる駆動ガイドと別体に構成することにより、車両本体への取付作業を容易化するものを既に提供している。すなわち、ガイドレールにアーム部材を走行可能に配設する一方、駆動ガイドの移動体に駆動ブラケットを設け、車両本体に対してガイドレール及び駆動ガイドをそれぞれ個別に取り付けた後、アーム部材と駆動ブラケットとの間に連結ネジ等の連結部材を設けることによって移動体の移動をスライドドアに伝達するように車両用ドア開閉装置を構成している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-100081号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両本体への乗降性を考慮した場合、乗降口を大きく確保することが好ましい。しかしながら、乗降口を大きく構成した場合には、これを開閉するスライドドアも大型化して重量も増えるため、アーム部材と駆動ブラケットとの間に加わる負荷も増大することになる。このため、アーム部材と駆動ブラケットとの間に設ける連結部材の数を増やす等の対応が必要となり、アーム部材や駆動ブラケットの大型化に起因して装置が大型化する懸念がある。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みて、装置の大型化を抑えて、より大きなスライドドアに対応することのできる車両用ドア開閉装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る車両用ドア開閉装置は、車両本体を構成するボディパネルの車外面に、車両本体の前後方向に沿って長手となるように取り付けられるガイドレールと、前記ガイドレールの長手に沿って走行可能に支持され、車両本体に設けられたスライドドアに連結されるアーム部材と、車両本体を構成するボディパネルの車外面に、車両本体の前後方向に沿って長手となり、かつ前記ガイドレールに対して互いに上下に並設される状態で取り付けられる駆動ガイドと、前記駆動ガイドの長手に沿って移動可能に配設され、駆動源から与えられる動力によって往復移動する移動体と、前記移動体の一部に設けられ、連結部材によって前記アーム部材に連結される駆動ブラケットとを備える車両用ドア開閉装置であって、前記アーム部材及び前記駆動ブラケットには、それぞれ前記ガイドレールの延在方向に対して交差する方向に延在し、相互に対向するように当接係合面が設けられていることを特徴とする。
【0007】
また本発明は、上述した車両用ドア開閉装置において、前記アーム部材は、上下方向に沿った第1軸の軸心回りに回転可能に配設した2つの第1ローラと、前記2つの第1ローラの相互間において水平方向に沿った第2軸の軸心回りに回転可能に配設した第2ローラとを備え、前記2つの第1ローラが車両本体の前後に並設されるとともに、前記第2軸の軸心が前記ガイドレールの長手に交差する方向に沿う状態でこれら第1ローラ及び第2ローラを介して前記ガイドレールを走行するものであり、前記アーム部材には、前記第2ローラを支持する軸受部において車両本体の前方側及び後方側となる部分のそれぞれに前記当接係合面が設けられていることを特徴とする。
【0008】
また本発明は、上述した車両用ドア開閉装置において、前記駆動ブラケットには、前記第1ローラの軸受部に対してそれぞれ車両本体の車外側に位置する部分に当接する当接部が設けられていることを特徴とする。
【0009】
また本発明は、上述した車両用ドア開閉装置において、前記アーム部材は、前記ガイドレールから車両本体の車外側に向けて延在する外方板部を有し、前記外方板部の延在縁部にスライドドアとの連結部が構成されたものであり、前記駆動ブラケットは、前記外方板部に重なるアームカバー部を有し、前記アームカバー部を介して前記外方板部に前記連結部材が設けられていることを特徴とする。
【0010】
また本発明は、上述した車両用ドア開閉装置において、前記駆動ブラケットは、前記移動体から上下方向に沿ってほぼ鉛直に延在するブラケット本体部を有し、前記ブラケット本体部よりも車両本体の車外側となる部分に前記連結部材が設けられ、かつ前記ブラケット本体部よりも車両本体の車内側となる部分において前記当接部が前記第1ローラの軸受部に当接されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、アーム部材及び駆動ブラケットにそれぞれ当接係合面を設けるようにしているため、アーム部材と駆動ブラケットとの間に設ける連結部材の数を増やすことなく大きな負荷を受けることが可能となり、装置を大型化することなくより大きなスライドドアに対応することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の実施の形態であるドア開閉装置を適用した車両の左側面図である。
図2図2は、図1に示した車両の要部を一部破断して示す拡大斜視図である。
図3図3は、図1に示した車両の要部を示す斜視図である。
図4図4は、図1に示した車両に適用するドア開閉装置の斜視図である。
図5図5は、図1に示した車両に適用するドア開閉装置の分解斜視図である。
図6図6は、図4に示した車両用ドア開閉装置のガイドユニット及び駆動ブラケットを示すもので、(a)は斜視図、(b)は分解斜視図である。
図7図7は、図4に示した車両用ドア開閉装置のガイドユニットの要部及び駆動ブラケットを示すもので、(a)は車両前方側から見た斜視図、(b)は車両後方側から見た斜視図である。
図8図8は、図4に示した車両用ドア開閉装置に適用するアーム部材を示すもので、(a)は車内側から見た斜視図、(b)はガイドレールとともに車外側から見た斜視図である。
図9図9は、図4に示した車両用ドア開閉装置に適用する伝達モジュールの分解斜視図である。
図10図10は、図4に示した車両用ドア開閉装置の動力伝達系を示す分解斜視図である。
図11図11は、図9に示した伝達モジュールの駆動ブラケットに適用する第1ブラケット板を示すもので、(a)車外側から見た斜視図、(b)は車内側から見た斜視図である。
図12図12は、図9に示した伝達モジュールの駆動ブラケットに適用する第2ブラケット板を示すもので、(a)は車外側から見た斜視図、(b)は車内側から見た斜視図である。
図13図13は、図4に示した車両用ドア開閉装置の駆動ブラケットとアーム部材との連結状態を示すもので、(a)は車外側から図、(b)は車外側の第2ブラケット板を省略した(a)の要部拡大図である。
図14図14は、図4に示した車両用ドア開閉装置の駆動ブラケットとアーム部材との連結状態を示すもので、(a)は駆動ブラケットの当接部と第1ローラの軸受部との当接状態を車両後方側から見た断面図、(b)は当接係合面と連結部材の位置との関係を車両後方側から見た断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照しながら本発明に係る車両用ドア開閉装置の好適な実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の実施の形態であるドア開閉装置を適用した車両を示したものである。ここで例示する車両は、車両本体Bの左側面に設けられた後部座席への乗降口EをスライドドアRDによって開閉するように構成したものである。すなわち、図1に示す車両では、車両本体Bの左側面に、前方からフロントフェンダーFF、フロンドドアFD、スライドドアRD、クォータパネル(ボディパネル)QPが設けられており、スライドドアRDを車両本体Bの車外後方側へ移動させることにより、後部座席への乗降口Eが開放されるように構成してある。
【0014】
本実施の形態で例示する車両用ドア開閉装置は、車両本体Bに対してスライドドアRDを移動可能に支持するガイドユニットUG,LG,CGと、車両本体Bに対してスライドドアRDを移動させる駆動ユニット1とを備えて構成したものである。
【0015】
ガイドユニットUG,LG,CGは、乗降口Eの上縁部に設けたアッパーガイドユニットUG、乗降口Eの下縁部に設けたロアガイドユニットLG、クォータパネルQPに設けたセンターガイドユニットCGを備えてスライドドアRDを移動可能に支持している。これらのガイドユニットUG,LG,CGは、図には明示していないが、車両本体Bの前後方向に沿って長手となるように設けたガイドレール10U,10L,10Cと、ガイドレール10U,10L,10Cの延在方向に沿って走行可能に配設したアーム部材11U,11L,11Cとを備え、アーム部材11U,11L,11Cを介してスライドドアRDに連結することにより、車両本体Bに対してスライドドアRDを移動可能に支持するものである。
【0016】
アッパーガイドユニットUG及びロアガイドユニットLGは、乗降口Eを閉じた場合にスライドドアRDによって覆われる位置にガイドレール10U,10Lが設けてある。これに対してセンターガイドユニットCGは、図1図3に示すように、スライドドアRDによって乗降口Eを閉じた場合に露出されるクォータパネルQPの車外面Paにガイドレール10Cが取り付けてあり、別体に取り付けたカバープレートCPによってガイドレール10Cが覆ってある。図からも明らかなように、センターガイドユニットCGを設ける位置は、クォータパネルQPにおいてタイヤハウスTHと燃料給油口FCとの間となる部分である。
【0017】
後述する駆動ユニット1は、このセンターガイドユニットCGに付設するように構成したものである。アッパーガイドユニットUG及びロアガイドユニットLGについては、従前から用いられているものを適用することができる。従って、以下においては、センターガイドユニットCG及び駆動ユニット1の構成について主に説明を行う。なお、以下の説明では便宜上、車両本体Bに搭載した状態の姿勢でそれぞれの構成要素の方向を特定することとする。
【0018】
図2図6に示すように、センターガイドユニットCGのガイドレール10Cは、車両本体Bの前後方向に沿ってほぼ直線状に延在する直線レール部10Caと、直線レール部10Caの前端部から前方に向けて漸次車内側となるように湾曲して延在した湾曲レール部10Cbとを有したもので、全長にわたってほぼ同一の断面形状を有するように構成してある。本実施の形態では、図2に示すように、主板部10a、底板部10b、上板部10c、外板部10dを一体に成形したガイドレール10Cを例示している。主板部10aは、上下方向に沿って延在するものである。底板部10b及び上板部10cは、主板部10aの上下両縁部からそれぞれ同一方向に向けて延在したものである。外板部10dは、上板部10cから主板部10aとほぼ平行となるように下方に向けて延在したものである。外板部10dと底板部10bとの間には、アーム部材11Cの通過を許容するスリットが確保してある。このガイドレール10Cは、直線レール部10Caが前後に沿ってほぼ水平となる状態で、主板部10aの外表面を介してクォータパネルQPの車外面Paに固定してある。
【0019】
アーム部材11Cは、図7図8に示すように、上下方向に沿って延在する主アーム板部(軸受部)11aと、主アーム板部11aの下端部から一方に向けてほぼ水平方向に沿って延在する外方板部11bと、主アーム板部11aの上端において両側となる部分から他方に向けてほぼ水平方向に沿って延在する2つの内方板部11cと、外方板部11bの延在縁部において一方の側面部分から下方に向けて延在した連結板部11dと、連結板部11dの下端から外方板部11bに対向するように延在した下方支持板部11eとを一体に成形した厚板状部材である。このアーム部材11Cには、内方板部11cの上面に円柱状を成すスラスト軸受部(軸受部)12が設けてあり、このスラスト軸受部12にそれぞれスラストローラ(第1ローラ)13が配設してあるとともに、主アーム板部11aにおいて内方板部11cの相互間となる部分にラジアルローラ(第2ローラ)14が配設してある。スラストローラ13は、上下方向に沿ったスラスト軸(第1軸)13aを中心として回転可能となるもので、スラスト軸受部12から上方に突出するように内方板部11cに設けてある。ラジアルローラ14は、水平方向に沿ったラジアル軸(第2軸)14aを中心として回転可能となるもので、主アーム板部11aの他方側から突出するように設けてある。
【0020】
上記の構成を有するアーム部材11Cは、2つのスラストローラ13をガイドレール10Cにおいて主板部10aと外板部10dとの間に配置し、かつラジアルローラ14を底板部10bの上面に当接させた状態でガイドレール10Cに配設してあり、スラストローラ13及びラジアルローラ14を適宜転動することにより、ガイドレール10Cの長手に沿って走行可能となる状態でガイドレール10Cに支持してある。ガイドレール10Cに支持された状態のアーム部材11Cは、主アーム板部11aがガイドレール10Cのスリットを通過して下方に向けて延在するとともに、外方板部11bが車外側に向けてほぼ水平に延在しており、外方板部11b及び下方支持板部11eの間に配設したドア連結ブラケット15を介してスライドドアRDに連結されることになる。
【0021】
駆動ユニット1は、ガイドレール10Cの上方部に配設されるもので、図2図5に示すように、モータモジュール20及び伝達モジュール30を備えている。
【0022】
モータモジュール20は、車両用ドア開閉装置の駆動源となるもので、図には明示していないが、例えばモジュールケース21の内部に電動モータ、減速歯車機構及び出力軸22を配設することによって構成してある。電動モータとしては、双方向に回転することができるものを適用している。出力軸22は、図9図10に示すように、オススプラインを有したもので、上下方向に沿って延在し、下端部がモジュールケース21の外部に突出するように設けてある。図には明示していないが、このモータモジュール20は、出力軸22を後述する伝達モジュール30の入力部ユニット330に連結した状態で、モジュールケース21を介してクォータパネルQPの車内面に取り付けられることになる。
【0023】
伝達モジュール30は、モータモジュール20の出力軸22とアーム部材11Cとの間に介在するもので、駆動ベルト(移動体)130、ベルトガイド(駆動ガイド)230及び入力部ユニット330を備えて構成してある。
【0024】
駆動ベルト130は、一方の表面に複数の噛合溝131が等間隔に設けられたタイミングベルトと称されるもので、噛合溝131を有する表面が内周側となるように無端の環状に構成してある。本実施の形態では、ガイドレール10Cの前後に沿った寸法に対して2倍よりも大きな長さを有する駆動ベルト130を適用している。
【0025】
ベルトガイド230は、ガイドレール10Cと同様、車両本体Bの前後方向に沿ってほぼ直線状に延在する直線ガイド部230aと、直線ガイド部230aの前端部から前方に向けて漸次車内側となるように湾曲して延在した湾曲ガイド部230bとを有したもので、ガイドレール10Cとほぼ同じ寸法となるように構成してある。このベルトガイド230には、前端部及び後端部にそれぞれ反転プーリ231,232が設けてあるとともに、直線ガイド部230a及び湾曲ガイド部230bの適宜箇所にガイドプーリ233が設けてある。これら反転プーリ231,232及びガイドプーリ233は、それぞれが上下方向に沿ったプーリ軸231a,232a,233aを中心として回転可能となるように配設したものである。上述の駆動ベルト130は、反転プーリ231,232の間に巻き掛けられるとともに、ガイドプーリ233によってガイドされることにより、後述する入力部ユニット330の駆動プーリ331を経由して、ベルトガイド230の形状に沿って双方向に循環移動することが可能である。
【0026】
図4図5に示すように、ベルトガイド230に巻き掛けた駆動ベルト130は、車外側を移動する経路においては外部に露出された状態となっており、その一部にベルトブラケット(駆動ブラケット)234を備えている。ベルトブラケット234は、アーム部材11Cと駆動ベルト130との間を連結するためのもので、駆動ベルト130から下方に向けて延在している。本実施の形態では、第1ブラケット板234Aと第2ブラケット板234Bとを備え、互いの間に駆動ベルト130を挟持するように構成したベルトブラケット234を例示している。図9に示すように、駆動ベルト130の内周側に配置される第1ブラケット板234Aには、駆動ベルト130の噛合溝131に噛み合うように複数の凹凸部234aが設けてある。これにより、ベルトブラケット234は、駆動ベルト130と一体に移動することが可能となる。
【0027】
入力部ユニット330は、ユニットケース332の内部に2つの導入プーリ333、駆動プーリ331を配設することによって構成したものである。ユニットケース332は、ベルトガイド230の直線ガイド部230aにおいてクォータパネルQPとの取付面となる部分から車内側に向けて突出するように形成してあり、ベルトガイド230をクォータパネルQPの車外面Paに当接させた場合に、クォータパネルQPに形成された図示せぬ四角形状の挿入開口部を通じて車内側に挿入されるものである。
【0028】
導入プーリ333は、上下に沿ったプーリ軸333aを中心として回転可能に配設したもので、ユニットケース332においてベルトガイド230に近接する部分に、互いに間隔を確保して前後に並設してある。2つの導入プーリ333の間には、車内側に配置された駆動ベルト130がユニットケース332の内部に迂回して導入されるように巻き掛けてある。
【0029】
駆動プーリ331は、円板状を成すプーリ部331aと、プーリ部331aの回転中心となる支持軸部331bとを一体に成形したもので、支持軸部331bが上下に沿った状態でユニットケース332の内部において導入プーリ333よりも車内側となる部分に回転可能に配設してある。駆動プーリ331には、プーリ部331aの外周面に噛合歯331cが設けてあるとともに、支持軸部331bの上端中心部にメススプライン331dが設けてある。駆動プーリ331の噛合歯331cは、駆動ベルト130の噛合溝131に噛み合うように構成したものである。メススプライン331dは、モータモジュール20の出力軸22に嵌合するように構成したものである。図5図10からも明らかなように、この入力部ユニット330では、支持軸部331bの上端面がユニットケース332の上面に設けた開口332aを介して外部に露出しており、ユニットケース332の外部からメススプライン331dに対して出力軸22を嵌合することが可能である。上記の構成を有する駆動プーリ331には、噛合歯331cに噛合溝131が噛み合った状態で、その外周面に駆動ベルト130が巻き掛けてある。
【0030】
なお、図中の符号334は、駆動プーリ331の周囲において支持軸部331bと導入プーリ333との間となる部分に上下に延在する円柱状のガイドピン334である。このガイドピン334の周面には、駆動プーリ331の周面に巻き掛けた駆動ベルト130の外周側となる表面に当接している。
【0031】
上述したユニットケース332には、クォータパネルQPに取り付けるための取付板部335が設けてある。取付板部335は、クォータパネルQPの挿入開口部よりも大きな略四角形状を成すもので、ユニットケース332の上面、両側側面及び下面からそれぞれ突出し、ユニットケース332を挿入開口部に挿入した場合に、その全面がクォータパネルQPの車外面Paに沿って延在するように構成してある。取付板部335において車内側に位置する表面には、ほぼ全面となる部分にシール部材338が装着してある。
【0032】
上記のように構成した車両用ドア開閉装置は、車両本体Bに取り付ける場合、モータモジュール20、伝達モジュール30、センターガイドユニットCGを互いに独立して取り扱うことができる状態にある。つまり、モータモジュール20と伝達モジュール30との間においては、駆動プーリ331のメススプライン331dから出力軸22を抜き去った状態となっている。伝達モジュール30とセンターガイドユニットCGとの間においては、ベルトブラケット234とアーム部材11Cとの間の連結状態が解除された状態となっている。
【0033】
この状態から、例えばまず、クォータパネルQPにガイドレール10Cを取り付けた後、クォータパネルQPに伝達モジュール30、モータモジュール20を順次取り付け、伝達モジュール30、モータモジュール20の間を互いに連結すれば、車両用ドア開閉装置によってスライドドアRDの駆動が可能となる。
【0034】
具体的には、伝達モジュール30のメススプライン331dにモータモジュール20の出力軸22を挿入し、モータモジュール20の駆動によって駆動ベルト130の移動が可能となる状態でクォータパネルQPにモータモジュール20及び伝達モジュール30の取り付けを行う。
【0035】
伝達モジュール30をクォータパネルQPに取り付けた後においては、駆動ベルト130のベルトブラケット234をアーム部材11Cに重ね合わせた状態で、ベルトブラケット234を介してアーム部材11Cに連結ネジ(連結部材)CBを螺合することにより伝達モジュール30とセンターガイドユニットCGとの間を連結すれば良い。
【0036】
この状態においては、モータモジュール20を駆動すると、ベルトガイド230に対して駆動ベルト130が適宜方向に移動し、これに伴ってベルトブラケット234がベルトガイド230に対して移動することになる。これにより、駆動ベルト130の移動がベルトブラケット234を介してアーム部材11Cに伝達されることになり、アーム部材11Cに連結したスライドドアRDを車両本体Bに対して前後方向に移動させることが可能となる。
【0037】
ここで、車両本体Bの乗降口Eを大きく確保する等の理由により、スライドドアRDを大型化した場合には、スライドドアRDに連結されるアーム部材11Cと、ベルトガイド230のベルトブラケット234との連結強度を向上させる必要がある。上述した構成の車両用ドア開閉装置においては、連結ネジCBの数を増やすことでこれに対応することが可能となる。しかしながら、多数の連結ネジCBを螺合するには、アーム部材11C及びベルトブラケット234の双方に連結ネジCBを螺合するためのスペースを確保する必要があり、車両用ドア開閉装置が大型化するという問題を招来する。
【0038】
そこで、上述の車両用ドア開閉装置では、アーム部材11C及びベルトブラケット234のそれぞれにガイドレール10Cの延在方向に対して交差する方向に延在する当接係合面16,235を形成し、当接係合面16,235を相互に当接させることで上述の問題を解決するようにしている。
【0039】
すなわち、図8図11図12図13に示すように、アーム部材11Cには、ラジアルローラ14の軸受部分となる主アーム板部11aにおいてラジアル軸14aの両側となる部分に当接係合面16が形成してある。当接係合面16は、ベルトガイド230の延在方向に対して交差し、かつ上方に向けて漸次相互間距離が減少するように構成してある。連結ネジCBが螺合されるネジ孔11fは、アーム部材11Cの外方板部11bに上下方向に沿って2つ設けてある。
【0040】
一方、ベルトブラケット234には、駆動ベルト130の内周側に配置される第1ブラケット板234Aに当接係合面235を形成する一方、駆動ベルト130の外周側に配置される第2ブラケット板234Bに連結ネジCBが挿通されるネジ挿通孔234bを形成するようにしている。
【0041】
より具体的に説明すると、第1ブラケット板234Aは、駆動ベルト130から下方に延在する第1ブラケット本体部(ブラケット本体)234Aaと、第1ブラケット本体部234Aaの下端から車内側に向けてほぼ水平に延在する2つの当接板部(当接部)234Abとを有して構成してある。第2ブラケット板234Bは、駆動ベルト130から下方に延在する第2ブラケット本体部(ブラケット本体)234Baと、第2ブラケット本体部234Baの下端から車内側に向けてほぼ水平に延在するアームカバー板部(アームカバー部)234Bbとを有して構成してある。第1ブラケット本体部234Aa及び第2ブラケット本体部234Baは、個々の上端部に狭幅の挟持部234Ac,234Bcを有しており、挟持部234Ac,234Bcの間に駆動ベルト130を介在させた状態で相互間をネジ部材236によって連結することにより、駆動ベルト130と一体に移動することが可能である。上述した第1ブラケット板234Aの凹凸部234aは、挟持部234Acに設けてある。
【0042】
第1ブラケット板234Aの当接板部234Abは、アーム部材11Cに重ね合わせた場合に、それぞれが内方板部11cの上面に当接するとともに、車内側に位置する端面237がスラスト軸受部12において車外側に位置する周面に当接するように構成したものである。それぞれの当接板部234Abには、互いに対向する部分に当接係合面235が形成してある。当接係合面235は、当接板部234Abを内方板部11cの上面に当接した場合にアーム部材11Cに設けた当接係合面16に当接するように構成してある。ネジ挿通孔234bは、第2ブラケット板234Bのアームカバー板部234Bbにおいてアーム部材11Cのネジ孔11fに対応する部分に形成してある。
【0043】
上記のように構成した車両用ドア開閉装置によれば、ベルトブラケット234のネジ挿通孔234bを介してアーム部材11Cのネジ孔11fに連結ネジCBを螺合することにより、伝達モジュール30とセンターガイドユニットCGとの間が連結されるとともに、ベルトブラケット234の当接係合面235とアーム部材11Cの当接係合面16とが互いに当接した状態となる。従って、上述したように当接係合面16,235は、ベルトガイド230の延在方向に対して交差する方向に延在したものである。換言すれば、スライドドアRDの移動方向に対して交差するように設けた当接係合面16,235を介してベルトブラケット234とアーム部材11Cとが互いに当接した状態となっている。従って、連結ネジCBの数を増やすことなく大きな負荷を受けることが可能となり、装置を大型化することなくより大きなスライドドアRDに対応することができるようになる。しかも、当接係合面16,235は、互いに対称となる位置に2組設けてあるため、スライドドアRDを開く場合及びスライドドアRDを閉じる場合の両方において機能することになる。さらに、ベルトブラケット234は、当接板部234Abの端面237を介してスラストローラ13のスラスト軸受部12に当接しているとともに、内方板部11cの上面に当接しているため、駆動ベルト130を介してスライドドアRDを移動させる際に車内外方向に倒れる事態が抑えられることになり、スライドドアRDの開閉移動がスムースになる等の利点がある。特に、上述した車両用ドア開閉装置では、図14(a)及び図14(b)に示すように、駆動ベルト130から下方に延在する第1ブラケット本体部234Aa及び第2ブラケット本体部234Baに対して車内側に当接係合面16,235が設けてあり、車外側に連結ネジCBが螺合してあるため、ベルトブラケット234が倒れる事態をより確実に抑えることが可能となる。
【0044】
なお、上述した実施の形態では、車両本体Bの左側面に設けられた後部座席への乗降口Eを開閉するスライドドアRDを対象とした車両用ドア開閉装置を例示しているが、必ずしもこれに限定されず、例えば、車両本体の右側面に設けられたスライドドアを対象として構成することも可能である。また、移動体として駆動ベルト130を例示しているが、必ずしもこれに限定されず、ケーブルやチェーン等の索状体を用いたり、ロッドを用いることも可能である。さらに、連結部材として連結ネジCBを例示しているが、リベットやクリップ等のその他の連結部材を用いても良い。
【0045】
また、上述した実施の形態では、アーム部材の車両内外方向への投影面積内に当接係合面を設けるようにしているため、装置の大型化をより抑えることが可能となるが、本発明はこれに限定されない。アーム部材の外部に突出する位置に当接係合面を設けるようにしても良い。
【0046】
さらに、上述した実施の形態では、ガイドレールの上方に伝達モジュールを設けた車両用ドア開閉装置を例示しているが、伝達モジュールの上方にガイドレールを設けるように構成することも可能である。
【0047】
またさらに、上述した実施の形態では、アーム部材11Cの当接係合面16として、上方に向けて漸次相互間距離が減少するように構成したものを例示しているため、主アーム板部11aを当接板部234Abの間に挿入する際の作業を容易に実施することが可能である。しかしながら、本発明は必ずしもこれに限定されない。例えば、アーム部材11Cの当接係合面16を上下方向に沿って互いに平行に設け、ベルトブラケット234の当接係合面235の相互間隔がアーム部材11Cに設けた当接係合面16の相互間隔よりも大きくなるように構成することにより、当接板部234Abの相互間に主アーム板部11aを挿入した際に当接係合面16と当接係合面235との間に隙間を設けるようにしても良い。このように当接係合面16と当接係合面235との間に隙間を設けた場合には、挟み込み等の過負荷がスライドドアRDに掛かってもアーム部材11Cによってベルトブラケット234がベルトガイド230に対して移動すると、当接係合面16と当接係合面235とが互いに当接することにより、ベルトブラケット234によって大きな負荷を受けることが可能となる。
【0048】
すなわち、例えば駆動ベルト130が車両本体Bの前方に向けて移動を開始すると、駆動ベルト130に連結されたベルトブラケット234の上端部が前方に移動する一方で、挟み込み等の過負荷がスライドドアRDに掛かった場合、アーム部材11Cに連結されたベルトブラケット234の下端部がその位置を維持しようとするため、アーム部材11Cに対してベルトブラケット234が前傾状態となるようにわずかに変形する。これにより、主アーム板部11aよりも車両本体Bの後方側に設けた当接板部234Abの当接係合面235が主アーム板部11aの当接係合面16に当接した状態となり、連結ネジCBとともに、これら互いに当接する当接係合面16,235を介してベルトブラケット234とアーム部材11Cとが連結された状態となり、連結ネジCBの数を増やすことなく大きな負荷を受けることが可能となる。駆動ベルト130が車両本体Bの後方に向けて移動したときに、障害物に接触する等の過負荷がスライドドアRDに掛かった場合には、主アーム板部11aよりも車両本体Bの前方側に設けた当接板部234Abの当接係合面235が主アーム板部11aの当接係合面16に当接した状態となり、連結ネジCBとともにこれら当接係合面16,235を介してベルトブラケット234とアーム部材11Cとが連結された状態となる。なお、アーム部材11Cの当接係合面16を上下方向に沿って互いに平行に設けた場合にも、その相互間隔がベルトブラケット234に設けた当接係合面235の相互間隔よりも小さいため、実施の形態と同様に、主アーム板部11aを当接板部234Abの間に挿入する際の作業を容易に実施することが可能である。
【符号の説明】
【0049】
10C ガイドレール
11C アーム部材
11b 外方板部
12 スラスト軸受部
13 スラストローラ
13a スラスト軸
14 ラジアルローラ
14a ラジアル軸
16 当接係合面
20 モータモジュール
130 駆動ベルト
230 ベルトガイド
234 ベルトブラケット
234A 第1ブラケット板
234Aa 第1ブラケット本体部
234Ab 当接板部
234B 第2ブラケット板
234Ba 第2ブラケット本体部
234Bb アームカバー部
235 当接係合面
CB 連結ネジ
Pa 車外面
図1
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