IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 南亞塑膠工業股▲分▼有限公司の特許一覧

特開2022-108705ベンゾオキサジン樹脂、その製造方法、及び樹脂組合物
<図面はありません>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022108705
(43)【公開日】2022-07-26
(54)【発明の名称】ベンゾオキサジン樹脂、その製造方法、及び樹脂組合物
(51)【国際特許分類】
   C08G 14/073 20060101AFI20220719BHJP
   C08L 61/32 20060101ALI20220719BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20220719BHJP
   C08L 35/00 20060101ALI20220719BHJP
   C08G 59/62 20060101ALI20220719BHJP
【FI】
C08G14/073
C08L61/32
C08L63/00 A
C08L35/00
C08G59/62
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021071865
(22)【出願日】2021-04-21
(31)【優先権主張番号】110101315
(32)【優先日】2021-01-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】501296612
【氏名又は名称】南亞塑膠工業股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】NAN YA PLASTICS CORPORATION
【住所又は居所原語表記】NO.201,TUNG HWA N.RD.,TAIPEI,TAIWAN
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】李 政中
(72)【発明者】
【氏名】▲呉▼ 振華
(72)【発明者】
【氏名】彭 郁翔
(72)【発明者】
【氏名】魏 ▲ウェイ▼廷
【テーマコード(参考)】
4J002
4J033
4J036
【Fターム(参考)】
4J002BH02W
4J002CC28X
4J002CD043
4J002FD130
4J002FD140
4J002FD150
4J002GQ01
4J033FA01
4J033FA04
4J033FA12
4J033HA02
4J033HA07
4J033HB03
4J036AB07
4J036DC17
4J036DC38
4J036EA07
4J036HA12
4J036JA08
4J036JA11
4J036KA01
(57)【要約】
【課題】ベンゾオキサジン樹脂、その製造方法、及び樹脂組合物を提供する。
【解決手段】本発明は、ベンゾオキサジン樹脂、その製造方法、及び樹脂組合物を開示する。ベンゾオキサジン樹脂は、フェノール類化合物、ホルムアルデヒド、及び1級アミン化合物を反応物とし、縮合重合反応によって得られる。なかでも、フェノール類化合物は、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂、及びビスフェノールAを含み、1級アミン化合物は、2,6-ジメチルアニリン、及びメタキシリレンジアミンを含む。樹脂組合物は、ベンゾオキサジン樹脂、エポキシ樹脂、及びビスマレイミド樹脂を含む。なかでも、ベンゾオキサジン樹脂、エポキシ樹脂、及びビスマレイミド樹脂の総重量を100重量部としたときに、ベンゾオキサジン樹脂の含量は、30~50重量部である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェノール類化合物、ホルムアルデヒド、及び1級アミン化合物を反応物とし、縮合重合反応によって得られるベンゾオキサジン樹脂であって、
前記フェノール類化合物が、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂、及びビスフェノールAを含み、
前記1級アミン化合物が、2,6-ジメチルアニリン、及びメタキシリレンジアミンを含む、ことを特徴とするベンゾオキサジン樹脂。
【請求項2】
下記構造式(I)で表される分子構造を有する、請求項1に記載のベンゾオキサジン樹脂。
【化1】
[式(I)中、x、y、及びzのそれぞれの平均値は、0以上5未満であり、x及びyの中の少なくとも一者は0ではなく、y及びzの中の少なくとも一者は0ではなく、Rは、
【化2】
であり、Rは、
【化3】
であり、nは0~5の整数を表す。]
【請求項3】
前記ジシクロペンタジエンフェノール樹脂におけるヒドロキシ基のモル数と、前記ビスフェノールAにおけるヒドロキシ基のモル数との比の値が、0.22~1.22である、請求項1に記載のベンゾオキサジン樹脂。
【請求項4】
前記2,6-ジメチルアニリンにおけるアミン基のモル数と、前記メタキシリレンジアミンにおけるアミン基のモル数との比の値が1~9である、請求項1に記載のベンゾオキサジン樹脂。
【請求項5】
前記ベンゾオキサジン樹脂の重量平均分子量が、750~2750g/molである、請求項1に記載のベンゾオキサジン樹脂。
【請求項6】
前記ジシクロペンタジエンフェノール樹脂におけるヒドロキシ基のモル数が、前記フェノール類化合物における総ヒドロキシ基モル数の18%~55%である、請求項1に記載のベンゾオキサジン樹脂。
【請求項7】
前記ビスフェノールAにおけるヒドロキシ基のモル数が、前記フェノール類化合物における総ヒドロキシ基モル数の45%~82%である、請求項1に記載のベンゾオキサジン樹脂。
【請求項8】
前記2,6-ジメチルアニリンのアミン基のモル数が、前記1級アミン化合物における総アミン基モル数の50%~90%である、請求項1に記載のベンゾオキサジン樹脂。
【請求項9】
前記メタキシリレンジアミンのアミン基のモル数が、前記1級アミン化合物における総アミン基モル数の10%~50%である、請求項1に記載のベンゾオキサジン樹脂。
【請求項10】
前記ベンゾオキサジン樹脂の1GHzにおける誘電率が2.6~3.2であり、前記ベンゾオキサジン樹脂の1GHzにおける誘電正接が0.015~0.021である、請求項1に記載のベンゾオキサジン樹脂。
【請求項11】
フェノール類化合物、ホルムアルデヒド、1級アミン化合物、及び溶媒を混合するステップと、
60~100℃の温度において縮合反応を行い、ベンゾオキサジン樹脂を得るステップと、
を含み、
前記フェノール類化合物が、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂、及びビスフェノールAを含み、
前記1級アミン化合物が、2,6-ジメチルアニリン、及びメタキシリレンジアミンを含む、ことを特徴とするベンゾオキサジン樹脂の製造方法。
【請求項12】
前記ベンゾオキサジン樹脂の重量平均分子量が、750~2750g/molである、請求項11に記載のベンゾオキサジン樹脂の製造方法。
【請求項13】
前記ジシクロペンタジエンフェノール樹脂のヒドロキシ基のモル数が、前記フェノール類化合物における総ヒドロキシ基モル数の18%~55%である、請求項11に記載のベンゾオキサジン樹脂の製造方法。
【請求項14】
前記ビスフェノールAのヒドロキシ基のモル数が、前記フェノール類化合物における総ヒドロキシ基モル数の45%~82%である、請求項11に記載のベンゾオキサジン樹脂の製造方法。
【請求項15】
前記2,6-ジメチルアニリンにおけるアミン基のモル数が、前記1級アミン化合物における総アミン基モル数の50%~90%である、請求項11に記載のベンゾオキサジン樹脂の製造方法。
【請求項16】
前記メタキシリレンジアミンにおけるアミン基のモル数が、前記1級アミン化合物における総アミン基モル数の10%~50%である、請求項11に記載のベンゾオキサジン樹脂の製造方法。
【請求項17】
請求項1~10のいずれかに記載のベンゾオキサジン樹脂、エポキシ樹脂、及びビスマレイミド樹脂を含む樹脂組合物であって、
前記ベンゾオキサジン樹脂、前記エポキシ樹脂、及び前記ビスマレイミド樹脂の総重量を100重量部としたときに、前記ベンゾオキサジン樹脂の含量が30~50重量部である、ことを特徴とする樹脂組合物。
【請求項18】
前記ベンゾオキサジン樹脂、前記エポキシ樹脂、及び前記ビスマレイミド樹脂の総重量を100重量部としたときに、前記エポキシ樹脂の含量が5~15重量部であり、前記ビスマレイミド樹脂の含量が40~60重量部である、請求項17に記載の樹脂組合物。
【請求項19】
前記エポキシ樹脂が、フェノール型エポキシ樹脂である、請求項17に記載の樹脂組合物。
【請求項20】
前記エポキシ樹脂を合成するための反応物が、2、6-ジメチルフェノール、及びジシクロペンタジエンの中の少なくとも一種を含む、請求項17に記載の樹脂組合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベンゾオキサジン樹脂、その製造方法、及び樹脂組合物に関し、特に、良好な誘電特性及び耐熱性を有するベンゾオキサジン樹脂、その製造方法、及び樹脂組合物に関する。
【背景技術】
【0002】
科学技術の進歩に伴い、電子部品は、その軽量化、小型化が図られている。さらに、第5世代移動通信システム(5th generation mobile networks、5G)の到来により、業界において、信号伝送の高周波化、高速化、及び低遅延のニーズが高まってきた。そのため、かかる技術分野では、高ガラス転移温度(glass transition temperature、Tg)、低誘電率、低誘電正接、及び良好な耐熱性を有する基板材料の開発に注力しており、それによって、電子基板に対する、誘電特性(低誘電率、低誘電正接)、及び耐熱性のニーズを満足する。
【0003】
普段使われている基板材料、例えば、ポリフェニレンエーテル樹脂、ビスマレイミド樹脂、またはシアン酸エステル樹脂は、良好な誘電特性を有するが、その反応性が高く、反応速度が早いため、ゲル化点(gel point)の判断が困難であり、加工性が悪い。
【0004】
ベンゾオキサジン樹脂は、良好な加工性を有するが、誘電特性が不良なため、誘電正接への要求が高い(誘電正接が0.004未満)製品には適用できない。例えば、従来技術では、ジシクロペンタジエンの分子構造を含むベンゾオキサジン樹脂を開示しているが。しかし、このベンゾオキサジン樹脂で作製されたプリント基板はすべて、その誘電正接が0.008を超え、高周波プリント基板のニーズを満足できない。そのため、現在市販のベンゾオキサジン樹脂は、その改善が期待されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする技術的問題は、従来技術の不足に対し、ベンゾオキサジン樹脂、その製造方法、及び樹脂組合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の技術的問題を解決するために、本発明が採用する一つの技術的手段は、ベンゾオキサジン樹脂を提供することである。ベンゾオキサジン樹脂は、フェノール類化合物、ホルムアルデヒド、及び1級アミン化合物を反応物とし、縮合重合反応によって得られる。なかでも、フェノール類化合物は、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂、及びビスフェノールAを含み、1級アミン化合物は、2,6-ジメチルアニリン、及びメタキシリレンジアミンを含む。
【0007】
上記の技術的問題を解決するために、本発明が採用する別の技術的手段は、ベンゾオキサジン樹脂の製造方法を提供することである。ベンゾオキサジン樹脂の製造方法は、フェノール類化合物、ホルムアルデヒド、1級アミン化合物、及び溶媒を混合し、60~100℃の温度において縮合反応を行い、ベンゾオキサジン樹脂を得るステップを含み、なかでも、フェノール類化合物は、ジシクロペンタジエンフェノール、及びビスフェノールAを含み、1級アミン化合物は、2,6-ジメチルアニリン、及びメタキシリレンジアミンを含む。
【0008】
上記の技術的問題を解決するために、本発明が採用する他の技術的手段は、樹脂組合物を提供することである。樹脂組合物は、ベンゾオキサジン樹脂、エポキシ樹脂、及びビスマレイミド樹脂を含む。なかでも、ベンゾオキサジン樹脂、エポキシ樹脂、及びビスマレイミド樹脂の総重量を100重量部としたときに、ベンゾオキサジン樹脂の含量は30~50重量部である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一つの有利な効果として、本発明が提供するベンゾオキサジン樹脂、その製造方法、及び樹脂組合物は、「前記フェノール類化合物は、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂、及びビスフェノールAを含む」、及び「前記1級アミン化合物は、2,6-ジメチルアニリン、及びメタキシリレンジアミンを含む」といった技術的手段により、ベンゾオキサジン樹脂、その製造方法、及び樹脂組合物に良好な耐熱性及び誘電特性を付与することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の特徴及び技術内容がより一層分かるように、以下の本発明に関する詳細な説明と添付図面を参照されたい。しかし、提供される添付図面は参考と説明のために提供するものに過ぎず、本発明の請求の範囲を制限するためのものではない。
【0011】
以下、所定の具体的な実施態様によって本発明が開示する「ベンゾオキサジン樹脂、その製造方法、及び樹脂組合物」に係る実施形態を説明し、当業者は、本明細書に開示された内容に基づいて本発明の利点と効果を理解することができる。本発明は、他の異なる具体的な実施態様によって実行又は適用でき、本明細書における各細部についても、異なる観点と用途に基づいて、本発明の構想から逸脱しない限り、各種の修正と変更を行うことができる。以下の実施形態に基づいて本発明に係る技術内容を更に詳細に説明するが、開示される内容は本発明の保護範囲を制限するためのものではない。また、本明細書において使用される「または」という用語は、実際の状況に応じて、関連して挙げられる項目におけるいずれか1つ又は複数の組み合わせを含む可能性がある。
【0012】
本発明のベンゾオキサジン樹脂は、良好な誘電特性及び耐熱性を有するのみならず、低い吸水率及び良好な寸法安定性を有する。それによって、本発明のベンゾオキサジン樹脂は、ポリフェニレンエーテル樹脂、ビスマレイミド樹脂、及びシアン酸エステル樹脂を使用する際の、加工性が悪いという従来の問題を解決できるのみならず、高周波プリント基板に適用することもできる。
【0013】
[ベンゾオキサジン樹脂]
本発明のベンゾオキサジン樹脂は、フェノール類化合物、ホルムアルデヒド、及び1級アミン化合物を反応物とし、縮合重合反応(マンニッヒ反応)によって得られる。さらに、本発明のベンゾオキサジン樹脂の1GHzにおける誘電率は2.6~3.2であり、ベンゾオキサジン樹脂の1GHzにおける誘電正接は0.015~0.021である。
【0014】
本発明のベンゾオキサジン樹脂の製造方法は以下のようにして行われる。まず、フェノール類化合物、1級アミン化合物、及び溶媒を60~100℃の温度において混合し、原料混合物を形成する。
【0015】
原料混合物において、フェノール類化合物の総ヒドロキシ基モル数と、1級アミン化合物の総アミン基モル数とは、同一である、または実質的に同一である。溶媒は、トルエン(toluene)、メチルイソブチルケトン(methyl isobutyl ketone)、MIBK)、メチルエチルケトン(methyl ethyl ketone、MEK)、及びプロピレングリコールモノメチルエーテル(proprylene glycol monomethyl ether、PM)からなる群より選択される。しかし、本発明は以上に挙げた例に制限されるものではない。
【0016】
次いで、原料混合物にホルムアルデヒドを添加し、60~100℃の温度において縮合重合(condensation polymerization)反応を1~10時間行うことで、本発明のベンゾオキサジン樹脂を得る。
【0017】
ホルムアルデヒドの添加モル数は、フェノール類化合物の総ヒドロキシ基モル数(または1級アミン化合物の総アミン基モル数)の2~2.3倍である。ホルムアルデヒドは、濃度が30~40重量%のホルムアルデヒド溶液、またはポリホルムアルデヒドであってもよい。しかし、ホルムアルデヒドを添加する方法はこれに制限されるものではない。
【0018】
一部の実施形態において、ホルムアルデヒドを添加した後、原料混合物は、70~90℃の温度において1~5時間反応させることで、本発明のベンゾオキサジン樹脂を得る。
【0019】
本発明のベンゾオキサジン樹脂は、ゲル浸透クロマトグラフィー(gel permeation chromatograph、GPC)によって測定した重量平均分子量は、750~2750g/molである。ゲル浸透クロマトグラフィーは、標準試料のポリスチレンにて較正を行い、流量は1.0ml/minに設定し、テトラヒドロフランを移動相とする。また、ベンゾオキサジン樹脂は、ゲル浸透クロマトグラフィーによって測定した最小分子比率は20%~40%である。「最小分子比率」とは、クロマトグラムにおいて、最後に出現するピークが占める面積の百分率を指す。
【0020】
ベンゾオキサジン樹脂の重量平均分子量が2750g/mol以上である場合、ベンゾオキサジン樹脂は、他の樹脂と混合して、樹脂組合物を形成しにくく、実施が困難となる。ベンゾオキサジン樹脂の重量平均分子量が750g/mol以下である場合、ベンゾオキサジン樹脂は、そのガラス転移温度が低くなり、耐熱性が悪くなる。
【0021】
好ましい一実施形態において、ベンゾオキサジン樹脂の重量平均分子量は、1000~2500g/molであり、さらに好ましくは、ベンゾオキサジン樹脂の重量平均分子量は、1500~2400g/molである。
【0022】
前述したフェノール類化合物は、少なくとも、二種類のフェノール類化合物を含み、かつフェノール類化合物は、一つ、または複数のヒドロキシ基を有してもよい。好ましくは、フェノール類化合物は、一つ、または二つのヒドロキシ基を有する、または、フェノール類化合物におけるヒドロキシ基の平均個数は、1~2である。
【0023】
本発明において、フェノール類化合物は、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂(dicyclopentadiene phenol resin、DCPD phenol resin)、及びビスフェノールA(bisphenol A、BPA)を含む。フェノール類化合物において、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂のヒドロキシ基モル数は、フェノール類化合物の総ヒドロキシ基モル数の18%~55%であり、ビスフェノールAのヒドロキシ基モル数は、フェノール類化合物の総ヒドロキシ基モル数の45%~82%である。
【0024】
また、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂、及びビスフェノールAの添加量は、特性のニーズに応じて調整でき、好ましい一実施形態において、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂におけるヒドロキシ基のモル数と、ビスフェノールAにおけるヒドロキシ基のモル数との比の値は0.22~1.22である。
【0025】
前述した1級アミン化合物は、少なくとも、二種類のアミン類化合物を含み、かつ1級アミン化合物は、一つ、または複数のアミン基を有してもよい。好ましくは、1級アミン化合物は、一つ、または二つのアミン基を有する。
【0026】
本発明において、1級アミン化合物は、2,6-ジメチルアニリン、及びメタキシリレンジアミンを含む。1級アミン化合物において、2,6-ジメチルアニリンのアミン基モル数は、1級アミン化合物の総アミン基モル数の50%~90%であり、メタキシリレンジアミンのアミン基モル数は、1級アミン化合物の総アミン基モル数の10%~50%である。
【0027】
また、2,6-ジメチルアニリン、及びメタキシリレンジアミンの添加量は、特性のニーズに応じて調整できる。好ましい一実施形態において、2,6-ジメチルアニリンの添加量は、メタキシリレンジアミンの添加量以上であり、具体的には、2,6-ジメチルアニリンのアミン基と、メタキシリレンジアミンのアミン基とのモル数の比の値は1~9である。
【0028】
上述した製造方法に基づいて、本発明のベンゾオキサジン樹脂は、下記式(I)で表すことができる。
【化1】
【0029】
式(I)中、xの平均値は0以上5未満であり、yの平均値は0以上5未満であり、zの平均値は0以上5未満である。また、x及びyの中の少なくとも一者は0ではなく、かつy及びzの中の少なくとも一者は0ではない。好ましい一実施形態において、x、y及びzは、すべて0を上回る。
【0030】
式(I)中、Rは、
【化2】
であり、Rは、
【化3】
であり、nは0~5の整数を表す。
【0031】
式(I)の構造から分かるように、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂は、低極性の分子構造を有するため、ベンゾオキサジン樹脂の誘電率、及び誘電正接を低減することができる。また、2,6-ジメチルアニリンは、高対称性、小双極子モーメントの分子構造を有するため、ベンゾオキサジン樹脂の誘電率、及び誘電正接をさらに低減することができる。それによって、本発明のベンゾオキサジン樹脂は、高周波プリント基板に対する市場のニーズを満足することができる。
【0032】
本発明をよりよく理解するために、以下の合成例1及び合成例2を参照されたい。
【実施例0033】
[合成例1]
温度調節器、マントルヒーター、電動撹拌機、及び冷却管をセットした1リットル容量のガラス製四つ口フラスコ反応器に76.5g(0.45molのヒドロキシ基を含む)のジシクロペンタジエンフェノール樹脂、63g(0.55molのヒドロキシ基を含む)のビスフェノールA、31.6g(0.45molのアミン基を含む)のメタキシリレンジアミン、66g(0.55molのアミン基を含む)の2,6-ジメチルアニリン、及び460gのトルエン(溶媒)を添加し、かつ四つ口フラスコ反応器を60~100℃に昇温することによって、反応物を溶解させる。
【0034】
次いで、四つ口フラスコ反応器に67g(2.1mol)のポリホルムアルデヒドを添加し、60~100℃の温度において縮合重合反応を1~5時間行う。反応終了後、60~100℃の均熱温度に4~10時間維持し、その後、105~115℃に昇温し、それによって、反応で生成した水、及び一部の溶媒を取り除き、固形分が64~66wt%のベンゾオキサジン樹脂を得た。
【0035】
ゲル浸透クロマトグラフィーによって測定した結果、ベンゾオキサジン樹脂の重量平均分子量は1724g/molであり、最小分子比率は27%である。ベンゾオキサジン樹脂の1GHzにおける誘電率は2.9であり、ベンゾオキサジン樹脂の1GHzにおける誘電正接は0.0195である。
【0036】
[合成例2]
温度調節器、マントルヒーター、電動撹拌機、及び冷却管をセットした1リットル容量のガラス製四つ口フラスコ反応器に31g(0.18molのヒドロキシ基を含む)のジシクロペンタジエンフェノール樹脂、93.5g(0.82molのヒドロキシ基を含む)のビスフェノールA、31.6g(0.45molのアミン基を含む)のメタキシリレンジアミン、66g(0.55molのアミン基を含む)の2,6-ジメチルアニリン、及び460gのトルエン(溶媒)を添加し、かつ四つ口フラスコ反応器を60~100℃に昇温することによって、反応物を溶解させる。
【0037】
次いで、四つ口フラスコ反応器に67.3g(2.1mol)のポリホルムアルデヒドを添加し、60~100℃の温度において縮合重合反応を1~5時間行う。反応終了後、60~100℃の均熱温度に4~10時間維持し、その後、105~115℃に昇温し、それによって、反応で生成した水、及び一部の溶媒を取り除き、固形分が64~66wt%のベンゾオキサジン樹脂を得た。
【0038】
ゲル浸透クロマトグラフィーによって測定した結果、ベンゾオキサジン樹脂の重量平均分子量は2344g/molであり、最小分子比率は21.9%である。ベンゾオキサジン樹脂の1GHzにおける誘電率は2.7であり、ベンゾオキサジン樹脂の1GHzにおける誘電正接は0.0153である。
【0039】
[樹脂組合物]
本発明のベンゾオキサジン樹脂は、良好な誘電特性及び耐熱性を有するため、高周波基板を作製するための樹脂組合物に添加することができる。また、本発明のベンゾオキサジン樹脂は、樹脂組合物において、高い添加量を有することができる。
【0040】
本発明において、樹脂組合物の総重量を100重量部としたときに、ベンゾオキサジン樹脂の含量は25重量部以上に達することができ、好ましくは、ベンゾオキサジン樹脂の含量は、30重量部以上に達することができ、さらに好ましくは、ベンゾオキサジン樹脂の含量は、35重量部以上に達することができる。
【0041】
本発明の樹脂組合物は、ベンゾオキサジン樹脂、エポキシ樹脂、及びビスマレイミド樹脂を含む。樹脂組合物の総重量を100重量部としたときに、ベンゾオキサジン樹脂の含量は、30~50重量部であり、エポキシ樹脂の含量は、5~15重量部であり、ビスマレイミド樹脂の含量は、40~60重量部である。
【0042】
エポキシ樹脂は、一種、または一種以上のエポキシ樹脂を含んでもよい。好ましい一実施形態において、エポキシ樹脂は、フェノール型エポキシ樹脂であり、かつエポキシ樹脂は、二種類のフェノール型エポキシ樹脂、例えば、ジシクロペンタジエン-ジメチルフェノールエポキシ樹脂、またはジメチルフェノール樹脂を含む。換言すれば、エポキシ樹脂を合成する反応物は、2、6-ジメチルフェノール、及びジシクロペンタジエンの中の少なくとも一種を含む。しかし、本発明はこれに制限されるものではない。一部の実施形態において、エポキシ樹脂の重量平均分子量は、500~3000g/molである。
【0043】
ビスマレイミド樹脂は、一種、または一種以上のビスマレイミド樹脂を含んでもよく、具体例として、フェニルメタンビスマレイミド樹脂が挙げられる。しかし、本発明はこれに制限されるものではない。一部の実施形態において、ビスマレイミド樹脂の重量平均分子量は、350~750g/molである。
【0044】
上述のベンゾオキサジン樹脂、エポキシ樹脂及びビスマレイミド樹脂に加え、樹脂組合物は、選択的に、硬化剤、難燃剤、充填剤、カップリング剤、及び促進剤をさらに含んでもよい。例えば、硬化剤は、リン含有フェノール樹脂硬化剤、またはフェノール樹脂硬化剤であってもよい。難燃剤は、リン系難燃剤であってもよい。充填剤は、二酸化ケイ素であってもよい。カップリング剤は、シランカップリング剤であってもよい。促進剤は、2-メチルイミダゾールであってもよい。しかし、本発明はこれに制限されるものではない。
【0045】
本発明をよりよく理解するために、本発明は、実施例1、2、及び比較例1、2の樹脂組合物を調製し、かかる樹脂組合物を、銅箔基板を作製する材料とした。実施例1、2及び比較例1、2の差異としては、実施例1、2の組成物は本発明のベンゾオキサジン樹脂を含むが、比較例1、2の組成物は市販の他のベンゾオキサジン樹脂(4,4’-メチレンジアニリン型ベンゾオキサジン樹脂、またはジシクロペンタジエンフェノール型ベンゾオキサジン樹脂)を含む。また、実施例1の組成物は、合成例1のベンゾオキサジン樹脂を含み、実施例2の組成物は、合成例2のベンゾオキサジン樹脂を含む。実施例1、2、及び比較例1、2の樹脂組合物の成分比率を表1に示す。特に指定しない限り、表1における各成分の單位は重量部である。
【0046】
銅箔基板の製造方法は、以下のようにして行われる。まず、ガラスクロスに樹脂組合物を含浸させ、乾燥処理を行うことで、半硬化状態のプリプレグ(prepreg)を得る。プリプレグの溶融粘度は、4000poise~12000poiseである。次いで、4枚の積み重ったプリプレグの上下に2枚の35μmの銅箔を重ね合わせ、段階的昇温の熱プレス工程によって銅箔基板を作製する。熱プレス工程では、まず、85℃に昇温し、7kg/cmの圧力で0.5時間熱プレスを行う。次いで、195℃に昇温し、25kg/cmの圧力で2時間熱プレスを行うことで、銅箔基板を得ることができる。銅箔基板を得た後、銅箔基板のガラス転移温度、耐熱性、吸水率、誘電率、及び誘電正接を測定し、測定結果を表1に示す。
【0047】
表1における銅箔基板特性を評価する方法を以下に示す:
(1)ガラス転移温度:示差走査熱量計(differential scanning calorimeter、DSC)を用いて、20℃/分の昇温速度で、銅箔基板のガラス転移温度を測定した。
(2)耐熱性:銅箔基板を一辺6.35mmの正方形にカットして試験片とし、105℃の温度で2時間加熱してから、熱機械分析装置に入れ、10℃/分の昇温速度で288℃に昇温し、288℃の温度に維持して、試験片の層間分離時間を測定した。
(3)吸水率:銅箔基板を一辺5cmの正方形にカットして試験片とし、105℃の温度で2時間加熱して、試験片の初期重量を秤量する。次いで、試験片を圧力鍋(120℃、2気圧)に2時間放置して、試験片の重量を秤量する。試験片の吸水率は、試験片を圧力鍋に放置前後の重量差を試験片の初期重量で割った数値となる。
(4)誘電率(3GHz):銅箔基板を一辺5cmの正方形にカットして試験片とし、105℃の温度で2時間加熱して、まず、厚さ測定器で試験片の厚さを測定し、次いで、インピーダンスアナライザ(Agilent E4991A)で試験片における3箇所の誘電率を測定し、その平均値を算出した。
(5)誘電正接(3GHz):銅箔基板を一辺5cmの正方形にカットして試験片とし、105℃の温度で2時間加熱して、まず、厚さ測定器で試験片の厚さを測定し、次いで、インピーダンスアナライザ(Agilent E4991A)で試験片における3箇所の誘電正接を測定し、その平均値を算出した。
【0048】
【表1】
【0049】
表1の結果から分かるように、本発明のベンゾオキサジン樹脂は、銅箔基板の材料とすることができ、それによって、良好な耐熱性、低吸水率、低誘電率、及び低誘電正接の特性を有することができる。また、市販のベンゾオキサジン樹脂(4,4’-メチレンジアニリン型ベンゾオキサジン樹脂、またはジシクロペンタジエンフェノール型ベンゾオキサジン樹脂)と比較して、低い誘電正接を有する。
【0050】
具体的に言えば、銅箔基板のガラス転移温度は、210℃以上であり、好ましくは、銅箔基板のガラス転移温度は、215℃以上であり、そのため、本発明の銅箔基板は、良好な耐熱性を有する。銅箔基板の吸水率は、0.50以下であり、好ましくは、銅箔基板の吸水率は、0.48以下である。銅箔基板の誘電率は、4以下であり、好ましくは、銅箔基板の誘電率は、3.95以下であり、また、銅箔基板の誘電正接は、0.005以下であり、好ましくは、銅箔基板の誘電正接は、0.0045以下であり、さらに好ましくは、銅箔基板の誘電正接は、0.0043以下であり、そのため、本発明の銅箔基板は、良好な誘電特性を有する。
【0051】
[実施形態による有利な效果]
本発明の一つの有利な効果として、本発明が提供するベンゾオキサジン樹脂、その製造方法、及び樹脂組合物は、「前記フェノール類化合物は、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂、及びビスフェノールAを含む」、及び「前記1級アミン化合物は、2,6-ジメチルアニリン、及びメタキシリレンジアミンを含む」といった技術的手段により、ベンゾオキサジン樹脂、その製造方法、及び樹脂組合物に良好な耐熱性及び誘電特性を付与することができる。
【0052】
以上に開示される内容は、好ましい本発明の実施形態に過ぎず、発明の範囲を限定することを意図していない。そのため、本発明の明細書及び図面でなされた均等の技術の変形は、全て本発明の請求の範囲に含まれるものである。