(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022108707
(43)【公開日】2022-07-26
(54)【発明の名称】水処理装置および水処理方法
(51)【国際特許分類】
C02F 1/44 20060101AFI20220719BHJP
B01D 61/00 20060101ALI20220719BHJP
B01D 61/02 20060101ALI20220719BHJP
B01D 61/04 20060101ALI20220719BHJP
B01D 61/58 20060101ALI20220719BHJP
C02F 1/52 20060101ALI20220719BHJP
C02F 1/04 20060101ALI20220719BHJP
【FI】
C02F1/44 E
B01D61/00 500
B01D61/02 500
B01D61/04
B01D61/58
C02F1/52 Z
C02F1/04 B
【審査請求】有
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021139894
(22)【出願日】2021-08-30
(31)【優先権主張番号】P 2021003270
(32)【優先日】2021-01-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004123
【氏名又は名称】JFEエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 祐也
(72)【発明者】
【氏名】辻 猛志
(72)【発明者】
【氏名】渕上 浩司
(72)【発明者】
【氏名】功刀 亮
(72)【発明者】
【氏名】大里 彩
(72)【発明者】
【氏名】江川 拓也
【テーマコード(参考)】
4D006
4D015
4D034
【Fターム(参考)】
4D006GA05
4D006GA06
4D006GA07
4D006GA14
4D006HA01
4D006HA21
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4D015FA02
4D015FA15
4D015FA17
4D015FA22
4D034AA01
4D034BA03
4D034BA05
4D034CA12
(57)【要約】
【課題】不純物を含む被処理水から水を抽出する場合に、スケールの発生を抑制しつつ水の回収率を向上すること。
【解決手段】被処理水から不純物の少なくとも一部を凝集させて除去する複数の凝集沈殿部と、溶媒として水を含む含水溶液から水を抽出可能な正浸透膜および逆浸透膜の少なくとも一方を有して被処理水から透過水を抽出するとともに、被処理水から透過水が抽出されて得られた濃縮水を排出する複数の水抽出部と、を備え、被処理水の流れ方向に沿って、第1凝集沈殿部の後段に第1水抽出部、第1水抽出部の後段に第2凝集沈殿部、および第2凝集沈殿部の後段に第2水抽出部が設けられている。第2水抽出部は、第1水抽出部が排出した濃縮水から透過水を抽出するとともに、第1水抽出部が排出した濃縮水をさらに濃縮した高濃縮水を排出する一方、第1凝集沈殿部および第2凝集沈殿部においてシリカの少なくとも一部を凝集して除去する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリカを含有した不純物を含む被処理水から水を抽出する水処理装置であって、
前記被処理水から前記不純物の少なくとも一部を凝集させて除去する複数の凝集沈殿部と、
溶媒として水を含む含水溶液から水を抽出可能な正浸透膜および逆浸透膜の少なくとも一方を有して前記被処理水から透過水を抽出するとともに、前記被処理水から前記透過水が抽出されて得られた濃縮水を排出する複数の水抽出部と、を備え、
前記被処理水の流れ方向に沿って、前記複数の凝集沈殿部のうちの一部である第1凝集沈殿部の後段に前記複数の水抽出部のうちの一部である第1水抽出部と、前記第1水抽出部の後段に前記複数の凝集沈殿部のうちの他部である第2凝集沈殿部と、前記第2凝集沈殿部の後段に前記複数の水抽出部のうちの他部である第2水抽出部とが設けられ、
前記第2水抽出部は、前記正浸透膜および前記逆浸透膜の少なくとも一方を有し、前記第1水抽出部が排出した濃縮水から透過水を抽出するとともに、前記第1水抽出部が排出した濃縮水をさらに濃縮した高濃縮水を排出し、
前記第1凝集沈殿部および前記第2凝集沈殿部において前記シリカの少なくとも一部を凝集して除去する
ことを特徴とする水処理装置。
【請求項2】
前記被処理水または前記濃縮水のろ過を行うろ過部が複数設けられ、
前記被処理水の流れ方向に沿って、
前記第1凝集沈殿部の後段かつ前記第1水抽出部の前段に、前記複数のろ過部の一部である第1ろ過部が設けられ、
前記第2凝集沈殿部の後段かつ前記第2水抽出部の前段に、前記複数のろ過部の他部である第2ろ過部が設けられている
ことを特徴とする請求項1記載の水処理装置。
【請求項3】
前記第1水抽出部が、低圧逆浸透膜を有する低圧逆浸透部からなるとともに、前記第2水抽出部が、高圧逆浸透膜を有する高圧逆浸透部または前記正浸透膜を有する正浸透部からなる
ことを特徴とする請求項1または2に記載の水処理装置。
【請求項4】
前記第2水抽出部の後段に、前記高濃縮水に対して蒸留処理および/または晶析処理を行って精製水を排出する蒸留晶析部が設けられている
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の水処理装置。
【請求項5】
前記不純物がカルシウムを含み、
前記被処理水の流れ方向に沿って、
前記第1凝集沈殿部の後段かつ前記第1水抽出部の前段と、前記第2凝集沈殿部の後段かつ前記第2水抽出部の前段との少なくとも一方に、前記カルシウムを除去可能なカルシウム除去部が設けられている
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の水処理装置。
【請求項6】
前記不純物がカルシウムを含み、
前記被処理水の流れ方向に沿った前記第1水抽出部の前段における前記被処理水にカルシウム分散剤を添加可能に構成されている
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の水処理装置。
【請求項7】
前記凝集沈殿部において前記シリカを凝集させる凝集剤が、前記凝集沈殿部に沈殿された凝集沈殿汚泥を含む
ことを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の水処理装置。
【請求項8】
前記不純物がマグネシウムを含む
ことを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の水処理装置。
【請求項9】
シリカを含有した不純物を含む被処理水から水を抽出する水処理方法であって、
前記被処理水に対して、前記不純物に含まれる前記シリカの少なくとも一部を凝集させて除去する第1凝集沈殿工程と、
前記第1凝集沈殿工程の後に、前記正浸透膜および前記逆浸透膜の少なくとも一方によって前記被処理水から透過水を抽出するとともに、前記被処理水から前記透過水を抽出して得られた前記濃縮水を排出する第1水抽出工程と、
前記第1水抽出工程の後に、前記濃縮水に対して前記不純物に含まれる前記シリカの少なくとも一部を凝集させて除去する第2凝集沈殿工程と、
前記第2凝集沈殿工程の後に、前記正浸透膜および前記逆浸透膜の少なくとも一方によって前記濃縮水から透過水を抽出するとともに、前記濃縮水をさらに濃縮した高濃縮水を排出する第2水抽出工程と、を含む
ことを特徴とする水処理方法。
【請求項10】
前記第1凝集沈殿工程および前記第2凝集沈殿工程において、前記被処理水のpHを、8以上12以下に調整する
ことを特徴とする請求項9に記載の水処理方法。
【請求項11】
前記第1凝集沈殿工程の後かつ前記第1水抽出工程の前に、前記被処理水をろ過する第1ろ過工程と、
前記第2凝集沈殿工程の後かつ前記第2水抽出工程の前に、前記濃縮水をろ過する第2ろ過工程と、を含む
ことを特徴とする請求項9または10に記載の水処理方法。
【請求項12】
前記第1水抽出工程が、低圧逆浸透膜によって前記透過水を抽出する低圧逆浸透工程を含むとともに、前記第2水抽出工程が、高圧逆浸透膜によって前記透過水を抽出する高圧逆浸透工程、または前記正浸透膜によって前記透過水を抽出する正浸透工程を含む
ことを特徴とする請求項9~11のいずれか1項に記載の水処理方法。
【請求項13】
前記第2水抽出工程の後に、前記高濃縮水に対して蒸留処理および/または晶析処理を行って精製水を排出する蒸留晶析工程を含む
ことを特徴とする請求項9~12のいずれか1項に記載の水処理方法。
【請求項14】
前記不純物がカルシウムを含み、
前記第1凝集沈殿工程の後かつ前記第1水抽出工程の前と、前記第2凝集沈殿工程の後かつ前記第2水抽出工程の前との少なくとも一方において、前記カルシウムを除去するカルシウム除去工程を含む
ことを特徴とする請求項9~13のいずれか1項に記載の水処理方法。
【請求項15】
前記不純物がカルシウムを含み、
前記第1水抽出工程の前に、前記被処理水にカルシウム分散剤を添加するカルシウム分散工程を含む
ことを特徴とする請求項9~14のいずれか1項に記載の水処理方法。
【請求項16】
前記凝集沈殿工程において前記シリカを凝集させる凝集剤が、前記凝集沈殿工程において凝集沈殿された凝集沈殿汚泥を含む
ことを特徴とする請求項9~15のいずれか1項に記載の水処理方法。
【請求項17】
前記不純物がマグネシウムを含む
ことを特徴とする請求項9~16のいずれか1項に記載の水処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理装置および水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、工場などからの排水量を減容させる技術が提案されている。具体的に、逆浸透膜(RO膜)などを用いて排水を濃縮して透過水を回収し、排水を減容化する方法などが提案されている。排水を減容する方法として、RO膜により濃縮された濃縮水をさらに蒸留または晶析させる方法によって、固形分以外の廃棄物を極力発生させないゼロ排水プロセス(ZLD:Zero Liquid Discharge)が知られている。
【0003】
ところで、RO膜などの膜を用いて水処理を行う過程における濃縮に伴って、膜の内部で溶解度を超えてしまうと、塩類が析出する、いわゆるスケーリングが生じ、膜の閉塞の原因になる。スケーリングは溶解度の低い塩類が原因であって、スケーリングが発生すると、膜の水透過性の低下や原水の供給側における圧力損失の上昇を引き起こし、水処理装置の運転の継続が困難になる。スケーリングを発生させる塩類は溶解度の低い成分である。
【0004】
非特許文献1には、凝集沈殿によってカルシウムをある程度除去した後に軟水器によってカルシウムを完全に除去し、さらにRO膜によって被処理水をアルカリ性にした環境で運転することによって、シリカのスケーリングを抑制する方法が開示されている。非特許文献1に記載の技術は、Ca系のスケールやシリカのスケールを抑制する水処理装置として用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2014/151295号明細書
【特許文献2】国際公開第2015/002309号
【特許文献3】特開2020-018992号公報
【特許文献4】特開2020-058963号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】"California Utility chooses HERO(TM)/Crystallizer for ZLD,Project Profile #35"、[online]、[令和2年6月9日検索]、インターネット<URL:https://www.aquatech.com/wp-content/uploads/35.Magnolia-HERO.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した特許文献1および非特許文献1に開示された従来技術による水処理方法においては、スケールの発生をある程度抑制することが可能になるが、特にZLDにおいては、従来に比して大幅に高い濃縮を実現して水の回収率の向上が望まれていた。この要請は、ZLD以外の濃縮排水が生じる排水プロセスにおいても同様に求められ、スケールの発生を抑制しつつ濃縮排水をさらに濃縮させて、被処理水から回収する水の回収率を向上させる技術が求められていた。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、その目的は、不純物を含む被処理水から水を抽出する場合に、スケールの発生を抑制しつつ水の回収率を向上できる水処理装置および水処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の一態様に係る水処理装置は、シリカを含有した不純物を含む被処理水から水を抽出する水処理装置であって、前記被処理水から前記不純物の少なくとも一部を凝集させて除去する複数の凝集沈殿部と、溶媒として水を含む含水溶液から水を抽出可能な正浸透膜および逆浸透膜の少なくとも一方を有して前記被処理水から透過水を抽出するとともに、前記被処理水から前記透過水が抽出されて得られた濃縮水を排出する複数の水抽出部と、を備え、前記被処理水の流れ方向に沿って、前記複数の凝集沈殿部のうちの一部である第1凝集沈殿部の後段に前記複数の水抽出部のうちの一部である第1水抽出部と、前記第1水抽出部の後段に前記複数の凝集沈殿部のうちの他部である第2凝集沈殿部と、前記第2凝集沈殿部の後段に前記複数の水抽出部のうちの他部である第2水抽出部とが設けられ、前記第2水抽出部は、前記正浸透膜および前記逆浸透膜の少なくとも一方を有し、前記第1水抽出部が排出した濃縮水から透過水を抽出するとともに、前記第1水抽出部が排出した濃縮水をさらに濃縮した高濃縮水を排出し、前記第1凝集沈殿部および前記第2凝集沈殿部において前記シリカの少なくとも一部を凝集して除去することを特徴とする。
【0010】
本発明の一態様に係る水処理装置は、上記の発明において、前記被処理水または前記濃縮水のろ過を行うろ過部が複数設けられ、前記被処理水の流れ方向に沿って、前記第1凝集沈殿部の後段かつ前記第1水抽出部の前段に、前記複数のろ過部の一部である第1ろ過部が設けられ、前記第2凝集沈殿部の後段かつ前記第2水抽出部の前段に、前記複数のろ過部の他部である第2ろ過部が設けられていることを特徴とする。
【0011】
本発明の一態様に係る水処理装置は、上記の発明において、前記第1水抽出部が、低圧逆浸透膜を有する低圧逆浸透部からなるとともに、前記第2水抽出部が、高圧逆浸透膜を有する高圧逆浸透部または前記正浸透膜を有する正浸透部からなることを特徴とする。
【0012】
本発明の一態様に係る水処理装置は、上記の発明において、前記第2水抽出部の後段に、前記高濃縮水に対して蒸留処理および/または晶析処理を行って精製水を排出する蒸留晶析部が設けられていることを特徴とする。
【0013】
本発明の一態様に係る水処理装置は、上記の発明において、前記不純物がカルシウムを含み、前記被処理水の流れ方向に沿って、前記第1凝集沈殿部の後段かつ前記第1水抽出部の前段と、前記第2凝集沈殿部の後段かつ前記第2水抽出部の前段との少なくとも一方に、前記カルシウムを除去可能なカルシウム除去部が設けられていることを特徴とする。
【0014】
本発明の一態様に係る水処理装置は、上記の発明において、前記不純物がカルシウムを含み、前記被処理水の流れ方向に沿った前記第1水抽出部の前段における前記被処理水にカルシウム分散剤を添加可能に構成されていることを特徴とする。
【0015】
本発明の一態様に係る水処理装置は、上記の発明において、前記凝集沈殿部において前記シリカを凝集させる凝集剤が、前記凝集沈殿部に沈殿された凝集沈殿汚泥を含むことを特徴とする。
【0016】
本発明の一態様に係る水処理装置は、上記の発明において、前記不純物がマグネシウムを含むことを特徴とする。
【0017】
本発明の一態様に係る水処理方法は、シリカを含有した不純物を含む被処理水から水を抽出する水処理方法であって、前記被処理水に対して、前記不純物に含まれる前記シリカの少なくとも一部を凝集させて除去する第1凝集沈殿工程と、前記第1凝集沈殿工程の後に、前記正浸透膜および前記逆浸透膜の少なくとも一方によって前記被処理水から透過水を抽出するとともに、前記被処理水から前記透過水を抽出して得られた前記濃縮水を排出する第1水抽出工程と、前記第1水抽出工程の後に、前記濃縮水に対して前記不純物に含まれる前記シリカの少なくとも一部を凝集させて除去する第2凝集沈殿工程と、前記第2凝集沈殿工程の後に、前記正浸透膜および前記逆浸透膜の少なくとも一方によって前記濃縮水から透過水を抽出するとともに、前記濃縮水をさらに濃縮した高濃縮水を排出する第2水抽出工程と、を含むことを特徴とする。
【0018】
本発明の一態様に係る水処理方法は、上記の発明において、前記第1凝集沈殿工程および前記第2凝集沈殿工程において、前記被処理水のpHを、8以上12以下に調整することを特徴とする。
【0019】
本発明の一態様に係る水処理方法は、上記の発明において、前記第1凝集沈殿工程の後かつ前記第1水抽出工程の前に、前記被処理水をろ過する第1ろ過工程と、前記第2凝集沈殿工程の後かつ前記第2水抽出工程の前に、前記濃縮水をろ過する第2ろ過工程と、を含むことを特徴とする。
【0020】
本発明の一態様に係る水処理方法は、上記の発明において、前記第1水抽出工程が、低圧逆浸透膜によって前記透過水を抽出する低圧逆浸透工程を含むとともに、前記第2水抽出工程が、高圧逆浸透膜によって前記透過水を抽出する高圧逆浸透工程、または前記正浸透膜によって前記透過水を抽出する正浸透工程を含むことを特徴とする。
【0021】
本発明の一態様に係る水処理方法は、上記の発明において、前記第2水抽出工程の後に、前記高濃縮水に対して蒸留処理および/または晶析処理を行って精製水を排出する蒸留晶析工程を含むことを特徴とする。
【0022】
本発明の一態様に係る水処理方法は、上記の発明において、 前記不純物がカルシウムを含み、前記第1凝集沈殿工程の後かつ前記第1水抽出工程の前と、前記第2凝集沈殿工程の後かつ前記第2水抽出工程の前との少なくとも一方において、前記カルシウムを除去するカルシウム除去工程を含むことを特徴とする。
【0023】
本発明の一態様に係る水処理方法は、上記の発明において、前記不純物がカルシウムを含み、前記第1水抽出工程の前に、前記被処理水にカルシウム分散剤を添加するカルシウム分散工程を含むことを特徴とする。
【0024】
本発明の一態様に係る水処理方法は、上記の発明において、前記凝集沈殿工程において前記シリカを凝集させる凝集剤が、前記凝集沈殿工程において凝集沈殿された凝集沈殿汚泥を含むことを特徴とする。
【0025】
本発明の一態様に係る水処理方法は、上記の発明において、前記不純物がマグネシウムを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係る水処理装置および水処理方法によれば、不純物を含む被処理水から水を抽出する場合に、スケールの発生を抑制しつつ水の回収率を向上することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施形態による水処理装置を模式的に示すブロック図である。
【
図2】
図2は、本発明の第1の実施形態の第1変形例による水処理装置を模式的に示すブロック図である。
【
図3】
図3は、比較例としての従来技術による水処理装置を模式的に示すブロック図である。
【
図4】
図4は、本発明の第2の実施形態による水処理装置を模式的に示すブロック図である。
【
図5】
図5は、本発明の第2の実施形態の第2変形例による水処理装置を模式的に示すブロック図である。
【
図6】
図6は、本発明の第3の実施形態による水処理装置を模式的に示すブロック図である。
【
図7】
図7は、本発明の第3の実施形態の第3変形例による水処理装置を模式的に示すブロック図である。
【
図8】
図8は、本発明の第4の実施形態による水処理装置を模式的に示すブロック図である。
【
図9】
図9は、本発明の第4の実施形態の第4変形例による水処理装置を模式的に示すブロック図である。
【
図10】
図10は、本発明の実施形態による凝集沈殿部およびろ過部の第1構成例を模式的に示すブロック図である。
【
図11】
図11は、本発明の実施形態による凝集沈殿部およびろ過部の第2構成例を模式的に示すブロック図である。
【
図12】
図12は、本発明の実施形態による凝集沈殿部およびろ過部の第3構成例を模式的に示すブロック図である。
【
図13】
図13は、本発明の実施形態による凝集沈殿部およびろ過部の第4構成例を模式的に示すブロック図である。
【
図14】
図14は、本発明の実施形態による正浸透装置の第1装置例を模式的に示すブロック図である。
【
図15】
図15は、本発明の実施形態による正浸透装置の第2装置例を模式的に示すブロック図である。
【
図16】
図16は、本発明の実施形態による正浸透装置の第3装置例を模式的に示すブロック図である。
【
図17】
図17は、本発明の実施形態による正浸透装置の第4装置例を模式的に示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の実施形態の全図においては、同一または対応する部分には同一の符号を付す。また、本発明は以下に説明する実施形態によって限定されるものではない。
【0029】
本発明は、被処理水としてブローダウン水、海水、河川水、工業排水などの含水溶液を処理して淡水を得る水処理において、カルシウム塩やシリカなどに起因するスケーリングを抑制しつつ、淡水の回収率を向上する技術に関する。
【0030】
まず、本発明の理解を容易にするために、本発明者が行った鋭意検討について以下に説明する。上述したように、逆浸透(RO:Reverse Osmosis)膜などの膜を用いて水処理を行う過程における濃縮に伴って膜の内部で溶解度を超えてしまうと、スケーリングが生じ、膜の閉塞の原因になる。スケーリングが発生すると、膜の水透過性の低下や原水の供給側における圧力損失の上昇を引き起こし、水処理装置の運転の継続が困難になる。
【0031】
スケーリングを発生させる塩類は溶解度の低い成分である。具体的に、スケーリングを発生させる原因物質は、主として難溶性の塩であって、例えば、シリカ(SiO2、二酸化ケイ素)、炭酸カルシウム(CaCO3)、硫酸カルシウム(CaSO4)、水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)、硫酸バリウム(BaSO4)、およびフッ化カルシウム(CaF2)などが挙げられる。以下に、CaSO4およびシリカを例にスケーリングの抑制について説明する。
【0032】
まず、CaSO4は難溶性の塩であって、酸やアルカリに溶解しないことから、一度析出すると除去が困難である。そこで、膜を用いて濃縮する被処理水にCaSO4が含まれている場合、CaSO4を析出させない方法として、膜の前段に凝集沈殿部を設けたりカチオン交換樹脂を用いた軟水器を設置したりすることによって、カルシウム(Ca)を除去する方法や、膜の前段においてスケール分散剤などの薬剤を添加してCaSO4の生成を抑制する方法などが知られている。
【0033】
本発明者は種々検討を行い、シリカも難溶性の塩であることから、膜の前段に凝集沈殿部を設けてシリカを除去する方法を案出した。なお、本明細書において、シリカとは、二酸化ケイ素、またはSiO2によって構成される物質の総称である。ここで、シリカはアルカリ性においては溶解度が大幅に上昇する。そのため、水酸化ナトリウム(NaOH)などのpH調整剤を凝集沈殿部に添加して、被処理水をアルカリ性にすることによって、シリカからなるスケールの発生を抑制できるが、膜がアルカリに対して耐性を有する必要がある。また、シリカは酸性において溶解度の変化が微小であるものの、結晶化の速度が低下するため、pH調整剤として塩酸(HCl)や硫酸(H2SO4)などの酸を添加することによって、シリカからなるスケールの発生を抑制できる場合がある。また、シリカを除去するために、CaSO4の場合と同様に、膜の前段にスケール分散剤などの薬剤を添加する場合もある。
【0034】
また、本発明者はさらに検討を進め、RO膜などによる膜を用いて得られた濃縮水に対してさらに凝集沈殿処理を行うことにより、Caやシリカを除去した上で、正浸透装置や高圧逆浸透膜などによって濃縮水をさらに濃縮させる方法を案出した。以下に説明する実施形態は、以上の本発明者の鋭意検討に基づいて、案出されたものである。
【0035】
(第1の実施形態)
(水処理装置)
まず、本発明の第1の実施形態による水処理装置について説明する。以下に説明する第1の実施形態による水処理装置1は、例えば、冷却塔などから排出されたブローダウン水を被処理水として、再利用可能な再生水および廃棄物となる高濃縮塩水または固体の塩を得る装置である。
図1は、第1の実施形態による水処理装置1を模式的に示すブロック図である。
図1に示すように、第1の実施形態による水処理装置1は、第1凝集沈殿部10、第1ろ過部20、軟水器30、低圧逆浸透部40、第2凝集沈殿部50、第2ろ過部60、正浸透装置70、および蒸留晶析部80を備えて構成される。
【0036】
複数の凝集沈殿部の一部としての第1凝集沈殿部10は、シリカやカルシウムなどのスケール成分を含む被処理水に対して凝集剤を添加することにより、スケール成分をスラッジとして凝集沈殿させる処理部である。第1凝集沈殿部10においては、スケール成分として、CaCO3およびシリカを除去する。第1凝集沈殿部10には、例えばNaOHまたは水酸化カルシウム(Ca(OH)2)などのアルカリと、炭酸ナトリウム(Na2CO3)と、ポリ塩化アルミニウム(PAC:AlCl3)とを添加する。なお、ポリ塩化アルミニウムの代わりに、塩化アルミニウム(AlCl3)を用いても良い。
【0037】
ここで、第1凝集沈殿部10において、凝集沈殿を生じさせる反応槽(
図1中、図示せず)のpHは、8以上12以下の例えば10.5に調整することが好ましい。また、Na
2CO
3の濃度はCaに対して当量とし、PACの濃度はSiO
2に対して2倍当量とすることが好ましいが、必ずしも限定されない。
【0038】
第1凝集沈殿部10において例えば30分間以上静置された被処理水は、pHが4以上8以下の例えば6.5程度に調整された後、第1ろ過部20に供給される。被処理水のpHが6.5程度に調整されることにより、被処理水に含まれるPACに起因するアルミニウム(Al)が不溶性になる。
【0039】
複数のろ過部の一部としての第1ろ過部20は、例えば砂ろ過器などから構成される。第1ろ過部20は、精密ろ過膜(MF膜)や限外ろ過膜(UF膜)などの所定の膜を用いた膜ろ過装置から構成しても良い。第1ろ過部20においては、供給されたPACを含む被処理水が例えば30分間以上静置される。これにより、第1ろ過部20において、未反応のPACが除去される。PACが除去された被処理水は、軟水器30に供給される。上述した第1凝集沈殿部10およびろ過部20の詳細については、後述する。
【0040】
カルシウム除去部としての軟水器30は、被処理水に含まれるCaイオンやマグネシウム(Mg)イオンなどの陽イオンを、陽イオン交換樹脂(カチオン交換樹脂)によって、ナトリウム(Na)イオンに置換する装置である。被処理水において、HCO3やSO4などの濃度が高い状態であって、Caを含むスケール成分のスケールリスクが高い場合、第1凝集沈殿部10による凝集沈殿で低減されたCa濃度では不十分な場合がある。このような場合に、軟水器30を用いてCaを除去することが好ましい。
【0041】
第1の実施形態において軟水器30は、低圧逆浸透部40の前段に設けられているが、必ずしも限定されない。軟水器30は、第1凝集沈殿部10や第2凝集沈殿部50と、スケーリングが発生しやすい装置との間に設けることが好ましい。また、軟水器30を設けることによって、Mgを除去できるので、後段に設けられた低圧逆浸透部40などをアルカリ性の条件下で運転する場合に、Mg(OH)2のスケールリスクを効率良く低減することができる。
【0042】
ここで、軟水器30の再生には、塩化ナトリウム(NaCl)水溶液が用いられる。また、ゼロ排水プロセス(ZLD)の場合、再生廃液は、蒸留晶析部80において処理できる。また、RO膜をアルカリ性の条件下で使用する場合、Mg(OH)2のスケールリスクが高いが、軟水器30によってMgを除去できるので、低圧逆浸透膜や高圧逆浸透膜におけるスケールリスクを低減できる。さらに、軟水器30から微量のCaがリークして、CaCO3からなるスケールが生じる可能性がある場合には、軟水器30の後段に脱炭酸塔や脱炭酸膜(いずれも図示せず)を設置することによって、CaCO3からなるスケールの発生を抑制することが好ましい。
【0043】
複数の水抽出部の一部または第1水抽出部としての低圧逆浸透部40は、低圧逆浸透膜(低圧RO膜)を有して構成される。低圧RO膜としては、例えば商品名が「ESPA2-LD」、「ESPA2 MAX」、または「ESPA1」(いずれもHydranautics社製)や、商品名が「TMG20-400」、「TMG20-440C」、または「TLF-400DG」(いずれも東レ社製)などが用いられる。低圧逆浸透部40は、例えば4MPa程度の低圧力を作用させた逆浸透によって被処理水から不純物濃度が低下された透過水を得るとともに、不純物が濃縮された濃縮水を排出する。得られた透過水は再生水として回収される。一方、排出された濃縮水は第2凝集沈殿部50に供給される。
【0044】
複数の凝集沈殿部の他部としての第2凝集沈殿部50は、被処理水である濃縮水に含まれるスケール成分をスラッジとして凝集沈殿させる点については、第1凝集沈殿部10と同様である。第2凝集沈殿部50においては、スケール成分としてSiO2を除去する。そのため、第1凝集沈殿部10と異なり、第2凝集沈殿部50の被処理水としての濃縮水には、凝集剤としてPACが添加される。これにより、濃縮水に含まれるSiO2がスラッジとして凝集沈殿されて、除去される。
【0045】
第2凝集沈殿部50において例えば30分間以上静置された濃縮水は、pHが4以上8以下の例えば6.5程度に調整された後、第2ろ過部60に供給される。濃縮水のpHが6.5程度に調整されることにより、濃縮水に含まれるPACに起因するAlが不溶性になる。なお、濃縮水のpHを5程度に調整することも可能である。
【0046】
複数のろ過部の他部としての第2ろ過部60は、第1ろ過部20と同様に構成される。第2ろ過部60においては、供給された濃縮水を例えば30分間以上静置させることによって、未反応のPACが除去される。PACが除去された濃縮水は、第2ろ過部60から正浸透装置70に供給される。
【0047】
複数の水抽出部の他部または正浸透部としての正浸透装置70においては、例えば温度感応性吸水剤を用いた正浸透処理が実行され、濃縮水から透過水が得られるとともに、濃縮水がさらに濃縮されて高濃度濃縮水(以下、高濃縮水)とされる。換言すると、高濃縮水は濃縮水に対する濃縮水である。得られた透過水は再生水として、低圧逆浸透部40から排出される透過水に合流される。一方、高濃縮水は、蒸留晶析部80に供給される。
【0048】
なお、正浸透装置70に設けられる正浸透(FO:Forward Osmosis)膜(
図1中、図示せず)の材質が酢酸セルロースの場合、酢酸セルロースはアルカリに弱く、シリカの溶解度を上げることができるアルカリ性の条件下では、正浸透装置70の運転が困難になる。そのため、上述したように、正浸透装置70の前段の第2凝集沈殿部50によってシリカを除去することにより、正浸透装置70における被処理水を中性に調整できるので、酢酸セルロースからなるFO膜を用いた運転を維持できる。さらに、シリカのスケールを抑制するためには、正浸透装置70における原水側の出口のpHを5.5程度になるように調整することが望ましい。
【0049】
蒸留晶析部80においては、所定のエネルギー、具体的にはスチーム(蒸気)や、電力を供給することによって、高濃縮水に対して従来公知の蒸留処理や晶析処理などの精製処理を行う。蒸留晶析部80において精製された精製水は、低圧逆浸透部40から排出される透過水に合流されて再生水として回収される。精製水から分離された固形成分としての塩は、外部に廃棄される。これにより、固形分以外の廃棄物を極力発生させないゼロ排水プロセス(ZLD)を達成することができる。
【0050】
(第1実施例)
(水処理方法)
次に、以上のように構成された第1の実施形態による水処理装置1を用いた水処理方法の第1実施例について説明する。なお、第1実施例においては、冷却塔などから排出されたブローダウン水を被処理水とし、単位時間当たり、1000L(1000L/h)の被処理水から996L(996L/h)の再生水を得るとともに、4L(4L/h)分に相当する塩を排出する場合を例に説明する。
【0051】
まず、水処理装置1に導入される被処理水の流量および各成分は以下のようになる。
流量;1000L/h、TDS(総溶解固形分:Total Dissolved Solids):4022mg/L、Ca:266mg/L、SiO2:126mg/L
【0052】
(第1凝集沈殿工程)
被処理水が水処理装置1に導入されると第1凝集沈殿部10に供給されて、第1凝集沈殿工程が行われる。第1凝集沈殿部10の被処理水に添加されるpH調整剤は、例えばNaOHおよびCa(OH)2の少なくとも一方、すなわちアルカリである。なお、アルカリとしては、これらに限定されない。これにより、被処理水のpHは10.5程度に調整される。
【0053】
第1凝集沈殿部10の被処理水に添加される凝集剤は、例えばNa2CO3およびPACである。ここで添加するNa2CO3はCaに対して当量、PACはSiO2に対して2倍当量加えることが好ましいが限定されない。第1凝集沈殿部10においては、この状態で30分程度静置される。第1凝集沈殿部10においては、被処理水からスケール成分として、CaCO3およびシリカの少なくとも一部が凝集されて除去される。第1凝集沈殿部10から排出される被処理水の各成分は以下のようになる。
TDS:4005mg/L、Ca:50mg/L、SiO2:10mg/L
すなわち、第1凝集沈殿部10において、Caが(266-50=)216mg/L、SiO2が(126-10=)116mg/Lだけ、除去される。
【0054】
(第1ろ過工程)
第1凝集沈殿部10においてスケール成分が凝集沈殿されて得られた上澄み水は、被処理水として第1ろ過部20に供給されて、第1ろ過工程が行われる。第1ろ過部20においては、硫酸(H2SO4)またはHClなどの酸を添加することにより、pHが6.5程度に調整される。第1ろ過部20においては、被処理水が30分間以上静置されて、未反応のPACが除去される。
【0055】
(カルシウム除去工程)
第1ろ過部20においてPACが除去された被処理水は、軟水器30に供給されてカルシウム除去工程が行われる。軟水器30においては、例えば、カチオン交換樹脂などによって被処理水からCaが除去される。なお、カルシウム除去工程は、第1凝集沈殿工程や後述する第2凝集沈殿工程の後であって、カルシウム塩などのスケーリングが発生しやすい工程の前に行うことが好ましい。軟水器30から排出される被処理水の各成分は以下のようになる。
TDS:4030mg/L、Ca:0mg/L、SiO2:10mg/L
すなわち、軟水器30において、Caが略(50-0=)50mg/L(全量)除去される。
【0056】
(低圧逆浸透工程)
軟水器30においてCaが除去された被処理水は、低圧逆浸透部40に供給されて水抽出工程または第1水抽出工程としての低圧逆浸透工程が行われる。低圧逆浸透部40においては、TDSに依存する所定の圧力、ここでは例えば4.0MPaの圧力を作用させたRO膜によって被処理水から90%の再生水を回収する一方、10%の濃縮水が排出される。ここで、第1凝集沈殿部10においてシリカが除去されていることにより、低圧逆浸透部40による再生水の回収率を90%まで向上させることができる。
【0057】
第1実施例においては、低圧逆浸透部40から(1000L/h×90%=)900L/hの流量で被処理水が排出されて再生水として回収される。再生水の各成分は以下のようになる。
TDS:40mg/L、Ca:0mg/L、SiO2:1mg/L
すなわち、低圧逆浸透部40において、TDSが(40/4030≒)0.01倍、SiO2が(1/10≒)0.1倍まで低減される。
【0058】
また、低圧逆浸透部40から(1000L/h×10%=)100L/hの流量で濃縮水が排出される。濃縮水の各成分は以下のようになる。
TDS:39940mg/L、Ca:0mg/L、SiO2:91mg/L
すなわち、被処理水は低圧逆浸透部40において、TDSが(39940/4030≒)9.9倍、SiO2が(91/10=)9.1倍に濃縮される。
【0059】
(第2凝集沈殿工程)
低圧逆浸透部40において濃縮された濃縮水は、第2凝集沈殿部50に供給されて第2凝集沈殿工程が行われる。なお、第1実施例においては、軟水器30によって被処理水からCaが除去されているため、第2凝集沈殿部50の濃縮水に添加される凝集剤は、SiO2を凝集させる例えばPACである。ここで添加するPACはSiO2に対して2倍当量加えることが好ましい。第1凝集沈殿部10においては、この状態で30分程度静置される。第1凝集沈殿部10においては、被処理水からスケール成分として、シリカの少なくとも一部が凝集されて除去される。
【0060】
(第2ろ過工程)
第2凝集沈殿部50においてスケール成分としてシリカが凝集沈殿されて得られた濃縮水は、第2ろ過部60に供給されて、第2ろ過工程が行われる。第2ろ過部60においては、H2SO4またはHClなどの酸を添加することにより、pHが5~6.5程度に調整される。第2ろ過部60においては、濃縮水が30分間以上静置されて、未反応のPACが除去される。
第2ろ過部60から排出される濃縮水の各成分は以下のようになる。
TDS:40350mg/L、Ca:0mg/L、SiO2:10mg/L
すなわち、第2凝集沈殿部50および第2ろ過部60によって、SiO2が(91-10=)81mg/L除去される。
【0061】
(正浸透処理工程)
次に、第2ろ過部60から排出された濃縮水は、正浸透装置70に供給されて正浸透処理工程が行われる。正浸透装置70においては、濃縮水から再生水が得られるとともにさらに濃縮された高濃縮水が排出される。具体的に、正浸透装置70においては、FO膜によって濃縮水から(2/3≒)67%の再生水を回収する一方、(1/3≒)33%の高濃縮水が排出される。
【0062】
第1実施例においては、正浸透装置70から(100L/h×67%=)67L/hの流量で再生水として排出されて回収される。一方、正浸透装置70から(100L/h×33%=)33L/hの流量で高濃縮水が排出される。高濃縮水の各成分は以下のようになる。
TDS:121050mg/L、Ca:0mg/L、SiO2:30mg/L
すなわち、濃縮水は、正浸透装置70において、TDSが(1211050/40350=)3倍、SiO2が(30/10=)3倍に濃縮される。すなわち、第1実施例において、流量が1000L/hの被処理水は、流量が33L/hの高濃縮水として排出できることになる。一方、従来技術においては、流量が1000L/hの被処理水に対して、排出される濃縮水の流量が250L/hである。すなわち、第1実施例による水処理装置1によれば、従来に比して被処理水をさらに7.6倍程度濃縮して排出でき、再生水の回収率を大幅に向上できる。
【0063】
(蒸留晶析工程)
正浸透装置70において濃縮された高濃縮水は、蒸留晶析部80に供給されて蒸留晶析工程が行われる。蒸留晶析部80においては、スチームや電力が供給されて、例えば120℃程度の温度で高濃縮水に対して従来公知の蒸留処理や晶析処理などの精製処理が行われる。なお、精製処理は、蒸留処理や晶析処理に限定されるものではなく、蒸発固化技術であれば種々の処理を採用できる。蒸留晶析部80によって精製された精製水は再生水として回収される。精製水から分離された固形成分としての塩は、外部に廃棄される。第1実施例においては、流量が33L/hの高濃縮水から、4L/h分の固形成分が除去されて、流量が29L/hの精製水が再生水として回収される。
【0064】
以上の低圧逆浸透部40から得られる透過水に、正浸透装置70から得られる透過水および蒸留晶析部80から得られる精製水が供給されて回収される。これにより、第1の実施形態による水処理装置1によって、流量が1000L/hの被処理水から、流量が(900+67+29=)996L/hの再生水が回収されるとともに、4L/h分の固形成分が除去される。再生水の各成分は以下のようになる。
TDS:36mg/L、Ca:0mg/L、SiO2:1mg/L
【0065】
(第1変形例)
次に、上述した第1の実施形態による水処理装置の第1変形例について説明する。
図2は、第1の実施形態の第1変形例による水処理装置を模式的に示すブロック図である。
図2に示すように、第1変形例による水処理装置2は、水処理装置1の正浸透装置70の代わりに高圧逆浸透部90が設けられる。
【0066】
複数の水抽出部の他部または第2水抽出部としての高圧逆浸透部90は、高圧逆浸透膜(高圧RO膜)を有して構成される。高圧RO膜としては例えば、商品名が「SWC5-LD」または「SWC5 MAX」(いずれもHydranautics社製)や、商品名が「TM820M-440」、「TM820R-440」、または「TM820V-440」(いずれも東レ社製)などが用いられる。高圧逆浸透部90においては、例えば8MPa程度の高圧力を作用させた逆浸透によって濃縮水から不純物濃度が低下された透過水を排出するとともに、濃縮水がさらに濃縮された高濃縮水を排出する。排出された透過水は再生水として、低圧逆浸透部40から排出される透過水に合流される。一方、排出された高濃縮水は、蒸留晶析部80に供給される。その他の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0067】
また、高圧RO膜にポリアミド系素材を用いる場合、アルカリ性の条件下での運転が可能になる。そのため、第2凝集沈殿部50においてシリカの除去率が低い場合に、高圧逆浸透部90をアルカリ性の条件下で運転することにより、高圧RO膜へのスケーリングを抑制することができる。この場合、上述した正浸透装置70と同様に、透過水の排出側においてpHを5.5程度になるように調整できる。
【0068】
(第2実施例)
(水処理方法)
次に、以上のように構成された第1の変形例による水処理装置2を用いた水処理方法の第2実施例について説明する。なお、第2実施例における被処理水の条件については、第1実施例における被処理水と同様である。まず、第2実施例による水処理方法においては、第1凝集沈殿工程、第1ろ過工程、カルシウム除去工程、逆浸透工程、第2凝集沈殿工程、および第2ろ過工程については、第1実施例と同様である。
【0069】
(高圧逆浸透工程)
次に、第2ろ過工程に続いて、第2ろ過部60から排出された濃縮水は、高圧逆浸透部90に供給されて第2水抽出工程としての高圧逆浸透工程が行われる。高圧逆浸透部90においては、濃縮水から透過水が得られるとともにさらに濃縮された高濃縮水が排出される。具体的に、高圧逆浸透部90においては、高圧逆浸透膜(高圧RO膜)によって濃縮水から(1/2=)50%の再生水を回収される一方、(1/2=)50%の高濃縮水が排出される。
【0070】
第1実施例においては、高圧逆浸透部90から(100L/h×50%=)50L/hの流量で透過水が排出されて再生水として回収される。一方、高圧逆浸透部90から(100L/h×50%=)50L/hの流量で高濃縮水が排出される。高濃縮水の各成分は以下のようになる。
TDS:80700mg/L、Ca:0mg/L、SiO2:20mg/L
【0071】
すなわち、濃縮水は、高圧逆浸透部90によって、TDSが(80700/40350=)2倍、SiO2が(20/10=)2倍に濃縮される。これにより、第2実施例において、流量が1000L/hの被処理水から、流量が50L/hの高濃縮水が排出されることになる。一方、従来技術においては、流量が1000L/hの被処理水に対して、排出される濃縮水の流量が250L/hである。すなわち、第2実施例による水処理装置2によれば、従来に比して被処理水をさらに5倍程度濃縮して排出でき、再生水の回収率を大幅に向上できる。
【0072】
(蒸留晶析工程)
高圧逆浸透部90において濃縮された高濃縮水は、蒸留晶析部80に供給されて蒸留晶析工程が行われる。蒸留晶析部80においては、高濃縮水に対して、例えば120℃程度の温度で精製処理が行われ、精製された精製水は再生水として回収される。精製水から分離された固形成分としての塩は、外部に廃棄される。第2実施例においては、流量が50L/hの高濃縮水から、4L/h分の固形成分が除去されて、流量が46L/hの精製水が再生水として回収される。
【0073】
以上の低圧逆浸透部40から得られる透過水に、高圧逆浸透部90から得られる透過水および蒸留晶析部80から得られる精製水が供給されて回収される。これにより、第1変形例による水処理装置2によって、流量が1000L/hの被処理水から、流量が(900+50+46=)996L/hの再生水が回収されるとともに、4L/h分の固形成分が除去される。再生水の各成分は以下のようになる。
TDS:36mg/L、Ca:0mg/L、SiO2:1mg/L
【0074】
(従来技術による水処理装置)
次に、以上説明した水処理装置1,2による効果を説明するために、従来技術による水処理装置について説明する。
図3は、非特許文献1に記載された比較例としての従来技術による水処理装置を模式的に示すブロック図である。
【0075】
図3に示すように、従来技術による水処理装置100は、凝集沈殿部110、ろ過部120、軟水器130、低圧逆浸透部140、および蒸留晶析部180を有して構成される。凝集沈殿部110は、従来公知の凝集沈殿槽を有して構成される。ろ過部120は、従来公知の砂ろ過装置から構成される。軟水器130、低圧逆浸透部140、および蒸留晶析部180はそれぞれ、第1の実施形態による軟水器30、低圧逆浸透部40、および蒸留晶析部80と同様の構成を有する。
【0076】
(水処理方法)
(比較例)
次に、比較例として、従来技術による水処理装置100を用いた水処理方法について説明する。なお、比較例における被処理水の条件は、第1および第2実施例における被処理水と同様であり、水処理装置100に導入される被処理水の流量および各成分は以下のようになる。
流量;1000L/h、TDS:4022mg/L、Ca:266mg/L、SiO2:126mg/L
【0077】
(凝集沈殿工程)
被処理水が水処理装置100に導入されると凝集沈殿部110に供給されて、凝集沈殿工程が行われる。凝集沈殿部110の被処理水に添加されるpH調整剤は、NaOHおよびCa(OH)2の少なくとも一方である。これにより被処理水のpHは、10~10.5程度に調整される。また、凝集沈殿部110の被処理水には、Caを凝集沈殿させるNa2CO3であり、Na2CO3はCaに対して当量だけ加えられる。凝集沈殿部110においては、被処理水からCaCO3が凝集されて除去される。凝集沈殿部110から排出される被処理水の各成分は以下のようになる。
TDS:4027mg/L、Ca:50mg/L、SiO2:126mg/L
すなわち、凝集沈殿部110においては、第1実施例と同様に、Caが(266-50=)216mg/Lだけ、除去される。
【0078】
(ろ過工程)
凝集沈殿部110においてCaCO3が凝集沈殿されて得られた上澄み水は、被処理水としてろ過部120に供給されて、ろ過工程が行われる。
【0079】
(カルシウム除去工程)
ろ過部120から得られた被処理水は、軟水器130に供給されてカルシウム除去工程が行われる。軟水器130においては被処理水からCaが除去される。軟水器130から排出される被処理水の各成分は以下のようになる。
TDS:4134mg/L、Ca:0mg/L、SiO2:126mg/L
【0080】
(低圧逆浸透工程)
軟水器130においてCaが除去された被処理水は、低圧逆浸透部140に供給されて低圧逆浸透工程が行われる。低圧逆浸透部40においては、4.0MPa程度の圧力を作用させたRO膜によって被処理水から75%の再生水を回収する一方、25%の濃縮水が排出される。なお、本発明者の知見によれば、低圧逆浸透部140に供給される被処理水にはシリカが含有されていることにより、再生水の回収率は高々75%である。
【0081】
比較例においては、低圧逆浸透部140から(1000L/h×75%=)750L/hの流量で被処理水が排出されて再生水として回収される。再生水の各成分は以下のようになる。
TDS:40mg/L、Ca:0mg/L、SiO2:3mg/L
すなわち、低圧逆浸透部140において、TDSが(40/4134≒)0.01倍、SiO2が(3/126≒)0.02倍まで低減される。
【0082】
一方、低圧逆浸透部140から(1000L/h×25%=)250L/hの流量で濃縮水が排出される。濃縮水の各成分は以下のようになる。
TDS:16420mg/L、Ca:0mg/L、SiO2:495mg/L
すなわち、被処理水は低圧逆浸透部140において、TDSが(16420/4134≒)3.9倍、SiO2が(495/126≒)3.9倍に濃縮される。
【0083】
すなわち、従来技術による水処理装置100においては、凝集沈殿部110によってCaの一部を除去し、軟水器130によってCaを完全に除去している。その上で、水処理装置100においては、Caが除去された被処理水に対して、低圧逆浸透部140をpHが10~10.5程度のアルカリ性の条件下で運転させることによって、シリカのスケーリングを抑制している(非特許文献1参照、HEROプロセス)。しかしながら、本発明者の知見によれば、低圧逆浸透部140をpHが10~10.5程度のアルカリ性の条件下で運転させても、シリカ濃度の析出限界は高々400mg/L程度であって、低圧RO膜による濃縮倍率は、高々3~4倍程度である。
【0084】
(蒸留晶析工程)
低圧逆浸透部140によって得られた濃縮水は、蒸留晶析部180に供給されて蒸留晶析工程が行われる。蒸留晶析部180においては、スチームや電力が供給されて、120℃程度の温度で濃縮水に対して従来公知の蒸留処理や晶析処理などの精製処理が行われる。蒸留晶析部80によって精製された精製水は再生水として回収される。精製水から分離された固形成分としての塩は、外部に廃棄される。比較例においては、流量が250L/hの濃縮水から、4L/h分の固形成分が除去されて、流量が246L/hの精製水が再生水として回収される。
【0085】
以上により従来技術による水処理装置100においては、流量が1000L/hの被処理水から、流量が(750+246=)996L/hの再生水が回収されるとともに、4L/h分の固形成分が除去される。再生水の各成分は以下のようになる。
TDS:30mg/L、Ca:0mg/L、SiO2:2mg/L
【0086】
ここで、比較例で採用した水処理装置100における電力、蒸気、およびコストをそれぞれ基準「100」とした場合の、第1実施例および第2実施例でそれぞれ採用した水処理装置1,2における電力、蒸気、およびコストの比率を表1に示す。また、比較例、第1実施例、および第2実施例で採用した水処理装置100,1,2における、単位排水量あたりの電力の使用量および蒸気の使用量を表2に示す。
【0087】
【0088】
【0089】
表1および表2から、第1実施例および第2実施例で使用した水処理装置1,2における電力がそれぞれ、比較例に比して2.3倍および2.0倍であることが分かる。これは、水処理装置1,2においては、水処理装置100と比較して、正浸透装置70や高圧逆浸透部90が増加していることに起因している。一方、表1および表2から、水処理装置1,2においては、水処理装置100と比較して、使用される蒸気の使用量がそれぞれ、比較例に比して0.23倍および0.15倍と大幅に低減されていることが分かる。これは、水処理装置1,2においては、低圧逆浸透部40において、水処理装置100の低圧逆浸透部140よりも被処理水が高濃度に濃縮されていることに起因すると考えられる。
【0090】
蒸留処理や晶析処理は、蒸気や電力の消費量が大きい上に設備に要する費用も高コスト化しやすいため、蒸留晶析部80は小型化することが望ましい。また、蒸気の生成にはエネルギーを要することから、蒸気の使用量を大幅に低減することによって、水処理装置1,2の運転に要する総エネルギーを水処理装置100の運転に要する総エネルギーに比して大幅に低くできる。その結果、表1に示すように、第1の実施形態による水処理装置1,2によれば、設備や運転に要するコストを35~40%低減することが可能となる。
【0091】
すなわち、従来技術による水処理方法においては、スケールの発生をある程度抑制することが可能になるが、特にZLDにおいては、従来に比して大幅に高い濃縮を実現する必要があった。上述した従来技術(非特許文献1参照)においては、水処理装置の最終段に蒸留や晶析を行う処理部を設けることによって、ZLDを実現しているが、必要となるエネルギーが大きくなるという問題があった。この問題は、ZLD以外の濃縮排水が生じる排水プロセスにおいても同様に存在する問題であり、必要となるエネルギーの低減が求められていた。これに対し、第1の実施形態によれば、不純物を含む被処理水から水を抽出する場合に、スケールの発生を抑制しつつ必要となるエネルギーを低減できる水処理装置1,2および水処理方法を提供するができる。
【0092】
以上説明した第1の実施形態によれば、低圧逆浸透部40の前段の第1凝集沈殿部10において、Caに加えてシリカを除去していることにより、低圧逆浸透部40における低圧RO膜に生じるシリカの析出を抑制して、スケーリングの発生を抑制できる。これにより、低圧逆浸透部40における濃縮倍率を向上できる。
【0093】
また、第1の実施形態によれば、低圧逆浸透部40と正浸透装置70や高圧逆浸透部90との間に第2凝集沈殿部50を設け、被処理水が濃縮された濃縮水からシリカを除去していることにより、正浸透装置70や高圧逆浸透部90におけるスケーリングの発生を抑制でき、濃縮倍率をさらに向上できる。また、低圧逆浸透部40の前段に軟水器30を設け、第1凝集沈殿部10においてCaが一部除去された被処理水からさらにCaを除去していることにより、低圧逆浸透部40におけるCaに起因するスケーリングの発生を抑制できる。
【0094】
また、従来の水処理装置100においては、例えば流量が250L/hの濃縮水を蒸留処理や晶析処理する必要があったのに対し、第1の実施形態およびその第1変形例による水処理装置1,2においては、流量が33~50L/hの高濃縮水を蒸留処理や晶析処理すれば良いので、総エネルギーの低減およびコストの低減が可能になる。
【0095】
さらに、例えば特許文献2に記載の従来技術においては、2段階で凝集沈殿を行っているが、1段目においては分散剤を用いており、シリカを除去していないため、本発明に比して分散剤のコストが嵩む上、スケールの発生を抑制する能力が低く、高濃縮が困難であるという問題を有している。すなわち、特許文献2に記載の技術においては、シリカに起因したスケールの抑制のために分散剤を用いているが、分散剤は高コスト化しやすい問題点を有し、スケールの発生を抑制する効果が限定的であるという問題がある。
【0096】
特許文献3に記載の従来技術においては、凝集沈殿を1段階で行っており、アルカリを用いてスケールの生成を抑制した後に凝集沈殿によってシリカを除去している。すなわち、特許文献3には、シリカにより発生するスケールを抑制するためにアルカリを用いる技術が開示されている。しかしながら、高アルカリ性の環境下においては、RO膜やFO膜の劣化が促進されやすいことから、スケールの発生を抑制するためにアルカリを用いることはRO膜やFO膜にとっては好ましくない。また、後段に蒸発器が設けられている場合には、蒸発器において多量のシリカが固化する可能性が高く、蒸発缶にシリカが付着しやすくなって、蒸発器の負荷が高くなるという問題が生じる。
【0097】
特許文献4に記載の従来技術においては、凝集沈殿を1段階で行っており、凝集沈殿によってシリカを除去し、処理水をRO膜に通水した後にFO膜に通水させているため、FO膜におけるシリカスケールのリスクがあり,濃縮の向上には限界がある。これに対し、本発明においては、凝集沈殿をRO膜の前段とFO膜の前段との2段階で行い、いずれの凝集沈殿においてもシリカを除去していることにより、脱塩膜におけるスケールの発生を大幅に抑制でき、高濃縮を実現することが可能になる。
【0098】
さらに、濃縮を行っていく過程で濃縮水量が極端に少なくなる場合には、高圧RO膜やFO膜に最低濃縮水量を流すことが困難になる。濃縮流量を確保するために循環系を設けることがあるが、必要とするエネルギーが増加してしまうという問題が生じる。さらに、最低濃縮水量以下で運用しようとすると、飽和溶解度以下であっても、濃度分極の影響によってスケールの発生する可能性が高くなる。この点からも、上述した第1の実施形態による水処理装置1による2段階の凝集沈殿によってシリカを除去することが好ましい。
【0099】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態による水処理装置について説明する。
図4は、第2の実施形態による水処理装置を模式的に示すブロック図である。
図4に示すように、第2の実施形態による水処理装置3は、第1の実施形態による水処理装置1と異なり、軟水器30が設けられておらず、第1ろ過部20から排出された被処理水に対してカルシウム分散剤が添加される機構(図示せず)が設けられる。その他の構成は、第1の実施形態による水処理装置1と同様である。
【0100】
(水処理方法)
(第3実施例)
次に、以上のように構成された第2の実施形態による水処理装置3を用いた水処理方法の第3実施例について説明する。なお、第3実施例において水処理装置3に導入される被処理水については、第1,第2実施例における被処理水と同様である。また、第3実施例による水処理方法においては、第1凝集沈殿工程および第1ろ過工程については、第1実施例と同様である。
第1ろ過工程後の被処理水の各成分は第1実施例と同様に以下のようになる。
TDS:4005mg/L、Ca:50mg/L、SiO2:10mg/L
【0101】
(カルシウム分散工程)
第1ろ過部20においてPACが除去された被処理水に対して、カルシウム分散剤を添加することによって、CaSO4の生成を抑制するカルシウム分散工程が行われる。カルシウム分散剤の添加量は、分散剤の種類に依存するが、1mg/L以上100mg/L以下が好ましい。なお、カルシウム分散剤以外にも、第1ろ過部20において被処理水のpHを6.5から5.0に調整するH2SO4またはHClを添加する。なお、酸性溶液であれば、必ずしもこれらに限定されない。なお、カルシウム分散工程は、第1凝集沈殿工程の後であって、カルシウム塩などのスケーリングが発生しやすい工程の前に行うことが好ましい。
【0102】
(低圧逆浸透工程)
カルシウム分散剤の添加によってCaSO4の生成が抑制された被処理水は、低圧逆浸透部40に供給されて低圧逆浸透工程が行われる。低圧逆浸透部40においては、TDSに依存する所定の圧力、ここでは例えば4.0MPaの圧力を作用させた低圧RO膜によって被処理水から90%の再生水が回収される一方、10%の濃縮水が排出される。
【0103】
第3実施例においては、低圧逆浸透部40から(1000L/h×90%=)900L/hの流量で透過水が排出されて再生水として回収される。透過水の各成分は以下のようになる。
TDS:40mg/L、Ca:1mg/L未満、SiO2:1mg/L
すなわち、低圧逆浸透部40において、TDSが(40/4005≒)0.01倍、SiO2が(1/10≒)0.1倍まで低減される。
【0104】
また、低圧逆浸透部40から(1000L/h×10%=)100L/hの流量で濃縮水が排出される。濃縮水の各成分は以下のようになる。
TDS:40050mg/L、Ca:500mg/L、SiO2:100mg/L
すなわち、被処理水は低圧逆浸透部40において、TDSが(40050/4005=)10倍、Caが(500/50=)10倍、SiO2が(100/10=)10倍に濃縮される。
【0105】
(第2凝集沈殿工程)
低圧逆浸透部40において濃縮された濃縮水は、第2凝集沈殿部50に供給されて第2凝集沈殿工程が行われる。なお、第3実施例においては、被処理水にカルシウム分散剤が添加されてCaが残存していることから、第2凝集沈殿部50の濃縮水には、pH調整剤および凝集剤が添加される。添加されるpH調整剤は第1凝集沈殿部10に添加されたpH調整剤と同様に、NaOHまたはCa(OH)2であるが、必ずしも限定されない。添加される凝集剤は、Caおよびシリカを凝集させるために例えば、Na2CO3およびPACである。また、Na2CO3の濃度はCaに対して当量とし、PACの濃度はSiO2に対して2倍当量とすることが好ましいが、必ずしも限定されない。第2凝集沈殿部50においては、この状態で30分程度静置される。第2凝集沈殿部50においては、被処理水からスケール成分として、CaCO3およびシリカの一部が凝集されて除去される。
【0106】
(第2ろ過工程)
第2凝集沈殿部50においてスケール成分としてCaCO3およびシリカが凝集沈殿されて得られた濃縮水は、第2ろ過部60に供給されて、第2ろ過工程が行われる。第2ろ過部60においては、H2SO4またはHClなどの酸が添加されて、pHが5~6.5程度に調整される。第2ろ過部60においては、濃縮水が30分間以上静置されて、未反応のPACが除去される。
第2ろ過部60から排出される濃縮水の各成分は以下のようになる。
TDS:40000mg/L、Ca:50mg/L、SiO2:10mg/L
すなわち、第2凝集沈殿部50および第2ろ過部60によって、Caが(500-50=)450mg/L、SiO2が(100-10=)90mg/L除去される。
【0107】
(正浸透処理工程)
次に、第2ろ過部60から排出された濃縮水は、正浸透装置70に供給されて正浸透処理工程が行われ、濃縮水から再生水が得られるとともにさらに濃縮された高濃縮水が排出される。具体的に、正浸透装置70においては、FO膜によって濃縮水から(2/3≒)67%の再生水を回収する一方、(1/3≒)33%の高濃縮水が排出される。
【0108】
第3実施例においては、正浸透装置70から(100L/h×67%=)67L/hの流量で透過水が排出されて再生水として回収される。一方、正浸透装置70から(100L/h×33%=)33L/hの流量で高濃縮水が排出される。高濃縮水の各成分は以下のようになる。
TDS:120000mg/L、Ca:150mg/L、SiO2:30mg/L
すなわち、濃縮水は、正浸透装置70において、TDSが(120000/40000=)3倍、Caが(150/50=)3倍、SiO2が(30/10=)3倍に濃縮される。また、第3実施例において、流量が1000L/hの被処理水からは、流量が33L/hの高濃縮水が排出できることになるので、第3実施例において採用した水処理装置3によれば、従来技術に比して被処理水をさらに7.6倍程度濃縮して排出でき、再生水の回収率を大幅に向上できる。
【0109】
(蒸留晶析工程)
正浸透装置70において濃縮された高濃縮水は、第1実施例と同様に蒸留晶析部80に供給されて蒸留晶析工程が行われる。蒸留晶析部80によって精製された精製水は再生水として回収される。精製水から分離された固形成分としての塩は、外部に廃棄される。第3実施例においては、流量が33L/hの高濃縮水から、4L/h分の固形成分が除去されて、流量が29L/hの精製水が再生水として回収される。
【0110】
以上の低圧逆浸透部40から得られる透過水に、正浸透装置70から得られる透過水および蒸留晶析部80から得られる精製水が供給されて回収される。これにより、第3実施例においては、第2の実施形態による水処理装置3によって、流量が1000L/hの被処理水から、流量が(900+67+29=)996L/hの再生水が回収されるとともに、4L/h分の固形成分が除去される。再生水の各成分は以下のようになる。
TDS:36mg/L、Ca:1mg/L未満、SiO2:1mg/L
【0111】
(第2変形例)
次に、上述した第2の実施形態による水処理装置の第2変形例について説明する。
図5は、第2変形例による水処理装置を模式的に示すブロック図である。
図5に示すように、第2変形例による水処理装置4は、水処理装置3の正浸透装置70の代わりに第1変形例と同様の高圧逆浸透部90が設けられる。
【0112】
高圧逆浸透部90においては、例えば8MPa程度の高圧力を作用させた逆浸透によって濃縮水から不純物濃度が低下された透過水を排出するとともに、濃縮水がさらに濃縮された高濃縮水を排出する。排出された透過水は再生水として、低圧逆浸透部40から排出される透過水に合流される。一方、排出された高濃縮水は、蒸留晶析部80に供給される。その他の構成は、第2の実施形態と同様である。
【0113】
(水処理方法)
(第4実施例)
次に、以上のように構成された第2変形例による水処理装置4を用いた水処理方法の第4実施例について説明する。なお、第4実施例における被処理水は、第1~第3実施例における被処理水と同様である。まず、第4実施例による水処理方法においては、第1凝集沈殿工程、第1ろ過工程、カルシウム分散工程、低圧逆浸透工程、第2凝集沈殿工程、および第2ろ過工程については、第3実施例と同様である。
【0114】
(高圧逆浸透工程)
次に、第2ろ過工程に続いて、第2ろ過部60から排出された濃縮水は、高圧逆浸透部90に供給されて高圧逆浸透工程が行われる。高圧逆浸透部90においては、濃縮水から透過水が得られるとともにさらに濃縮された高濃縮水が排出される。
【0115】
具体的に、高圧逆浸透部90においては、高圧逆浸透膜(高圧RO膜)によって濃縮水から(1/2=)50%の透過水が再生水として回収される一方、(1/2=)50%の高濃縮水が排出される。第4実施例においては、高圧逆浸透部90から(100L/h×50%=)50L/hの流量で透過水が排出されて再生水として回収される。一方、高圧逆浸透部90から(100L/h×50%=)50L/hの流量で高濃縮水が排出される。高濃縮水の各成分は以下のようになる。
TDS:80000mg/L、Ca:100mg/L、SiO2:20mg/L
【0116】
すなわち、濃縮水は、高圧逆浸透部90によって、TDSが(80000/40000=)2倍、Caが(100/50=)2倍、SiO2が(20/10=)2倍に濃縮される。これにより、第4実施例において、流量が1000L/hの被処理水から、流量が50L/hの高濃縮水が排出されることになる。一方、従来技術においては、流量が1000L/hの被処理水に対して、排出される濃縮水の流量が250L/hである。すなわち、第2実施例による水処理装置2によれば、従来に比して被処理水をさらに5倍程度濃縮して排出でき、再生水の回収率を大幅に向上できる。
【0117】
(蒸留晶析工程)
高圧逆浸透部90において濃縮された高濃縮水は、蒸留晶析部80に供給されて蒸留晶析工程が行われる。蒸留晶析部80においては、高濃縮水に対して、例えば120℃程度の温度で精製処理が行われ、精製された精製水は再生水として回収される。精製水から分離された固形成分としての塩は、外部に廃棄される。第2実施例においては、流量が50L/hの高濃縮水から、4L/h分の固形成分が除去されて、流量が46L/hの精製水が再生水として回収される。
【0118】
以上の低圧逆浸透部40から得られる透過水に、高圧逆浸透部90から得られる透過水および蒸留晶析部80から得られる精製水が供給されて回収される。これにより、第4実施例においては、第2変形例による水処理装置4によって、流量が1000L/hの被処理水から、流量が(900+50+46=)996L/hの再生水が回収されるとともに、4L/h分の固形成分が除去される。再生水の各成分は第2の実施形態と同様に、以下のようになる。
TDS:36mg/L、Ca:1mg/L未満、SiO2:1mg/L
【0119】
以上説明した第2の実施形態によれば、低圧逆浸透部40の前段の第1凝集沈殿部10において、Caに加えてシリカを除去し、低圧逆浸透部40と正浸透装置70や高圧逆浸透部90との間に第2凝集沈殿部50を設け、被処理水が濃縮された濃縮水からシリカを除去していることにより、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0120】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態による水処理装置について説明する。
図6は、第3の実施形態による水処理装置を模式的に示すブロック図である。
図3に示すように、第3の実施形態による水処理装置3は、第2の実施形態による水処理装置3と異なり、蒸留晶析部80が設けられておらず、正浸透装置から排出される高濃縮水は、濃縮排水として廃棄される。その他の構成は、第2の実施形態による水処理装置3と同様である。
【0121】
(第5実施例)
(水処理方法)
次に、以上のように構成された第3の実施形態による水処理装置5を用いた水処理方法の第5実施例について説明する。なお、第5実施例において水処理装置5に導入される被処理水については、第1~第4実施例における被処理水と同様である。また、第5実施例による水処理方法においては、第1凝集沈殿工程、第1ろ過工程、カルシウム分散工程、低圧逆浸透工程、第2凝集沈殿工程、第2ろ過工程、および正浸透処理工程については、第3実施例と同様である一方、蒸留晶析工程が行われない。
【0122】
第5実施例においては、正浸透処理工程において正浸透装置70から排出される被処理水の流量は33L/hであり、各成分は以下のようになる。
TDS:120000mg/L、Ca:150mg/L、SiO2:30mg/L
【0123】
第5実施例においては、正浸透装置70から(100L/h×67%=)67L/hの流量で透過水が排出されて再生水として回収される。一方、正浸透装置70から(100L/h×33%=)33L/hの流量で高濃縮水が排出される。高濃縮水の各成分は以下のようになる。
TDS:120000mg/L、Ca:150mg/L、SiO2:30mg/L
すなわち、濃縮水は、正浸透装置70において、TDSが(120000/40000=)3倍、Caが(150/50=)3倍、SiO2が(30/10=)3倍に濃縮される。また、第5実施例において、流量が1000L/hの被処理水からは、流量が33L/hの高濃縮水が排出できることになるので、第5実施例において採用した水処理装置5によれば、従来技術に比して被処理水をさらに7.6倍程度濃縮して排出でき、再生水の回収率を大幅に向上できる。
【0124】
また、第5実施例においては、正浸透装置70から排出された高濃縮水は廃棄され、低圧逆浸透部40から得られる透過水に、正浸透装置70から得られる透過水が供給されて回収される。これにより、第5実施例においては、第3の実施形態による水処理装置5によって、流量が1000L/hの被処理水から、流量が(900+67=)967L/hの再生水が回収されるとともに、33L/hの高濃縮水が廃棄される。再生水の各成分は以下のようになる。
TDS:37mg/L、Ca:1mg/L未満、SiO2:1mg/L
【0125】
(第3変形例)
次に、上述した第3の実施形態による水処理装置の第3変形例について説明する。
図7は、第3変形例による水処理装置を模式的に示すブロック図である。
図7に示すように、第3変形例による水処理装置6は、水処理装置3の正浸透装置70の代わりに第1,第2変形例と同様の高圧逆浸透部90が設けられる。高圧逆浸透部90においては、例えば8MPa程度の高圧力を作用させた逆浸透によって濃縮水から不純物濃度が低下された透過水を排出して再生水として回収されるとともに、濃縮水がさらに濃縮された高濃縮水は濃縮排水として廃棄される。その他の構成は、第3の実施形態と同様である。
【0126】
(水処理方法)
(第6実施例)
次に、以上のように構成された第3変形例による水処理装置6を用いた水処理方法の第6実施例について説明する。なお、第6実施例における被処理水は、第1~第5実施例における被処理水と同様である。まず、第6実施例による水処理方法においては、第1凝集沈殿工程、第1ろ過工程、カルシウム分散工程、低圧逆浸透工程、第2凝集沈殿工程、および第2ろ過工程については、第3の実施形態と同様である。また、第6実施例による水処理方法においては、高圧逆浸透工程については、第1,第2変形例と同様である。
【0127】
第6実施例においては、流量が1000L/hの被処理水から、流量が50L/hの高濃縮水が排出される。一方、従来技術においては、流量が1000L/hの被処理水に対して、排出される濃縮水の流量が250L/hである。すなわち、第6実施例による水処理装置6によれば、従来に比して被処理水を5倍程度濃縮して排出でき、再生水の回収率を大幅に向上できる。
【0128】
以上の低圧逆浸透部40から得られる透過水に、高圧逆浸透部90から得られる透過水が供給されて回収される。これにより、第6実施例においては、第3変形例による水処理装置6によって、流量が1000L/hの被処理水から、流量が(900+50=)950L/hの再生水が回収されるとともに、50L/hの濃縮排水が廃棄される。高圧逆浸透部90から回収される透過水の流量が、正浸透装置70から回収される透過水の流量より低いことにより、TDSは第3の実施形態に比して大きくなる。そのため、再生水の各成分は以下のようになる。
TDS:38mg/L、Ca:1mg/L未満、SiO2:1mg/L
【0129】
以上説明した第3の実施形態によれば、低圧逆浸透部40の前段に第1凝集沈殿部10を設け、低圧逆浸透部40と正浸透装置70や高圧逆浸透部90との間に第2凝集沈殿部50を設けていることにより、第1および第2の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0130】
(第4の実施形態)
次に、本発明の第4の実施形態による水処理装置について説明する。
図8は、第4の実施形態による水処理装置を模式的に示すブロック図である。
図8に示すように、第4の実施形態による水処理装置3は、第1の実施形態による水処理装置1と異なり、軟水器30が、低圧逆浸透部40の前段に設けられておらず、正浸透装置70の前段に設けられている。なお、第4の実施形態において軟水器30はさらに、第2ろ過部60の後段に設けられている。その他の構成は、第1の実施形態による水処理装置1と同様である。
【0131】
(水処理方法)
(第7実施例)
次に、以上のように構成された第4の実施形態による水処理装置7を用いた水処理方法の第7実施例について説明する。なお、第7実施例において水処理装置7に導入される被処理水については、第1~第6実施例における被処理水と同様である。また、第7実施例による水処理方法においては、第1凝集沈殿工程および第1ろ過工程については、第1実施例と同様である。
第1ろ過工程後の被処理水の各成分は第1実施例と同様に以下のようになる。
TDS:4005mg/L、Ca:50mg/L、SiO2:10mg/L
【0132】
(低圧逆浸透工程)
第1ろ過部20においてPACが除去された被処理水は、低圧逆浸透部40に供給されて低圧逆浸透工程が行われる。低圧逆浸透部40においては、TDSに依存する所定の圧力、例えば4.0MPaの圧力を作用させた低圧RO膜によって被処理水から90%の再生水が回収される一方、10%の濃縮水が排出される。ここで、第1凝集沈殿部10においてシリカが除去されていることにより、低圧逆浸透部40による再生水の回収率を90%まで向上させることができる。
【0133】
第7実施例においては、低圧逆浸透部40から(1000L/h×90%=)900L/hの流量で透過水が排出されて再生水として回収される。透過水の各成分は以下のようになる。
TDS:40mg/L、Ca:1mg/L未満、SiO2:1mg/L
すなわち、低圧逆浸透部40によって、TDSが(40/4005≒)0.01倍、Caが(1/50=)0.02倍、SiO2が(1/10≒)0.1倍まで低減される。
【0134】
また、低圧逆浸透部40から(1000L/h×10%=)100L/hの流量で濃縮水が排出される。濃縮水の各成分は以下のようになる。
TDS:40050mg/L、Ca:500mg/L、SiO2:100mg/L
すなわち、被処理水は低圧逆浸透部40において、TDSが(40050/4005=)10倍、Caが(500/50=)10倍、SiO2が(100/10=)10倍に濃縮される。
【0135】
(第2凝集沈殿工程)
低圧逆浸透部40において濃縮された濃縮水は、第2凝集沈殿部50に供給されて第2凝集沈殿工程が行われる。なお、第7実施例においては、被処理水にCaが残存していることから、第2凝集沈殿部50の濃縮水には、pH調整剤および凝集剤が添加される。添加されるpH調整剤は第1凝集沈殿部10に添加されたpH調整剤と同様に、例えばNaOHまたはCa(OH)2であるが、必ずしも限定されない。添加される凝集剤は、Caおよびシリカを凝集させるために、例えばNa2CO3およびPACである。Na2CO3の濃度はCaに対して当量とし、PACの濃度はSiO2に対して2倍当量とすることが好ましいが、必ずしも限定されない。第2凝集沈殿部50においては、この状態で30分程度静置される。第2凝集沈殿部50においては、被処理水からスケール成分として、CaCO3およびシリカの一部が凝集されて除去される。
【0136】
(第2ろ過工程)
第2凝集沈殿部50においてスケール成分としてCaCO3およびシリカが凝集沈殿されて得られた濃縮水は、第2ろ過部60に供給されて、第2ろ過工程が行われる。第2ろ過部60においては、H2SO4またはHClなどの酸が添加されて、pHが5~6.5程度に調整される。第2ろ過部60においては、濃縮水が30分間以上静置されて、未反応のPACが除去される。
第2ろ過部60から排出される濃縮水の各成分は以下のようになる。
TDS:40000mg/L、Ca:50mg/L、SiO2:10mg/L
すなわち、第2凝集沈殿部50および第2ろ過部60によって、Caが(500-50=)450mg/L、SiO2が(100-10=)90mg/L除去される。
【0137】
(カルシウム除去工程)
第2ろ過部60においてPACが除去された被処理水は、軟水器30に供給されてカルシウム除去工程が行われる。軟水器30においては、例えば、カチオン交換樹脂などによって被処理水からCaが除去される。軟水器30から排出される被処理水の各成分は以下のようになる。
TDS:40350mg/L、Ca:0mg/L、SiO2:10mg/L
すなわち、軟水器30において、Caが(50-0=)50mg/L(全量)除去される。
【0138】
(正浸透処理工程)
次に、軟水器30から排出された濃縮水は、正浸透装置70に供給されて正浸透処理工程が行われる。正浸透処理工程においては、濃縮水から再生水が得られるとともに、さらに濃縮された高濃縮水が排出される。
【0139】
具体的に、正浸透装置70においては、FO膜によって濃縮水から(2/3≒)67%の再生水が回収される一方、(1/3≒)33%の高濃縮水が排出される。第7実施例においては、正浸透装置70から(100L/h×67%=)67L/hの流量で透過水が排出されて再生水として回収される。一方、正浸透装置70から(100L/h×33%=)33L/hの流量で高濃縮水が排出される。高濃縮水の各成分は以下のようになる。
TDS:121050mg/L、Ca:0mg/L、SiO2:30mg/L
【0140】
すなわち、濃縮水は、正浸透装置70において、TDSが(12105/40000≒)約3倍、SiO2が(30/10=)3倍に濃縮される。また、第7実施例において、流量が1000L/hの被処理水からは、流量が33L/hの高濃縮水が排出できることになる。これにより、第7実施例において採用した水処理装置7によれば、第1実施例と同様に、従来技術に比して被処理水をさらに7.6倍程度濃縮して排出でき、再生水の回収率を大幅に向上できる。
【0141】
(蒸留晶析工程)
正浸透処理工程後の蒸留晶析工程は、第1実施例と同様である。すなわち、第7実施例においては、流量が33L/hの高濃縮水から、4L/h分の固形成分が除去されて、流量が29L/hの精製水が再生水として回収される。
【0142】
以上の低圧逆浸透部40から得られる透過水に、正浸透装置70から得られる透過水および蒸留晶析部80から得られる精製水が供給されて回収される。これにより、第7実施例においては、第4の実施形態による水処理装置7によって、流量が1000L/hの被処理水から、流量が(900+67+29=)996L/hの再生水が回収されるとともに、4L/h分の固形成分が除去される。再生水の各成分は以下のようになる。
TDS:36mg/L、Ca:1mg/L未満、SiO2:1mg/L
【0143】
(第4変形例)
次に、上述した第4の実施形態による水処理装置の第4変形例について説明する。
図9は、第4変形例による水処理装置を模式的に示すブロック図である。
図9に示すように、第4変形例による水処理装置8は、第4の実施形態による水処理装置7の正浸透装置70の代わりに第1変形例と同様の高圧逆浸透部90が設けられる。
【0144】
高圧逆浸透部90においては、濃縮水から不純物濃度が低下された透過水を排出するとともに、濃縮水がさらに濃縮された高濃縮水を排出する。排出された透過水は再生水として、低圧逆浸透部40から排出される透過水に合流される。一方、排出された高濃縮水は、蒸留晶析部80に供給される。その他の構成は、第4の実施形態と同様である。第4変形例においては、軟水器30を高圧逆浸透部90の前段に設けていることにより、高圧逆浸透部90をアルカリ性の条件下で運転する場合に、Mg(OH)2のスケールリスクを低減することができる。
【0145】
(水処理方法)
(第8実施例)
次に、以上のように構成された第4変形例による水処理装置8を用いた水処理方法の第8実施例について説明する。なお、第8実施例における被処理水は、第1~第7実施例における被処理水と同様である。まず、第8実施例による水処理方法においては、第1凝集沈殿工程、第1ろ過工程、低圧逆浸透工程、第2凝集沈殿工程、第2ろ過工程、およびカルシウム除去工程については、第7実施例と同様である。
【0146】
(高圧逆浸透工程)
次に、カルシウム除去工程に続いて、軟水器30から排出された濃縮水は、高圧逆浸透部90に供給されて高圧逆浸透工程が行われる。高圧逆浸透部90においては、濃縮水から透過水が得られるとともにさらに濃縮された高濃縮水が排出される。
【0147】
具体的に、高圧逆浸透部90においては、高圧RO膜によって濃縮水から(1/2=)50%の透過水が再生水として回収される一方、(1/2=)50%の高濃縮水が排出される。第8実施例においては、高圧逆浸透部90から(100L/h×50%=)50L/hの流量で透過水が排出されて再生水として回収され、(100L/h×50%=)50L/hの流量で高濃縮水が排出される。高濃縮水の各成分は以下のようになる。
TDS:80700mg/L、Ca:100mg/L、SiO2:20mg/L
【0148】
すなわち、濃縮水は、高圧逆浸透部90によって、TDSが(80700/40350=)2倍、SiO2が(20/10=)2倍に濃縮される。これにより、第8実施例において、流量が1000L/hの被処理水から、流量が50L/hの高濃縮水が排出されることになり、第8実施例で採用された水処理装置8によれば、従来に比して被処理水をさらに5倍程度濃縮して排出でき、再生水の生成効率を大幅に向上できる。
【0149】
(蒸留晶析工程)
高圧逆浸透部90において濃縮された高濃縮水は、蒸留晶析部80に供給されて蒸留晶析工程が行われる。蒸留晶析部80においては、高濃縮水に対して、例えば120℃程度の温度で精製処理が行われ、精製された精製水は再生水として回収される。精製水から分離された固形成分としての塩は、外部に廃棄される。第2実施例においては、流量が50L/hの高濃縮水から、4L/h分の固形成分が除去されて、流量が46L/hの精製水が再生水として回収される。
【0150】
以上の低圧逆浸透部40から得られる透過水に、高圧逆浸透部90から得られる透過水および蒸留晶析部80から得られる精製水が供給されて回収される。これにより、第8実施例においては、第2変形例による水処理装置4によって、流量が1000L/hの被処理水から、流量が(900+50+46=)996L/hの再生水が回収されるとともに、4L/h分の固形成分が除去される。再生水の各成分は第4の実施形態と同様に、以下のようになる。
TDS:36mg/L、Ca:1mg/L未満、SiO2:1mg/L
【0151】
以上説明した第4の実施形態によれば、低圧逆浸透部40の前段の第1凝集沈殿部10において、Caに加えてシリカを除去し、低圧逆浸透部40と正浸透装置70や高圧逆浸透部90との間に第2凝集沈殿部50を設け、被処理水が濃縮された濃縮水からシリカを除去していることにより、第1~第3の実施形態と同様の効果を得ることができる。さらに、正浸透装置70や高圧逆浸透部90の前段に軟水器30を設けていることにより、FO膜やRO膜に生じやすいCaのスケーリングを抑制できるので、水処理装置7,8による被処理水の濃縮率を、従来の水処理装置に比して向上できる。
【0152】
(凝集沈殿部およびろ過部)
次に、第1~第4の実施形態による水処理装置1~8に採用される凝集沈殿部およびろ過部の構成について説明する。なお、凝集沈殿部およびろ過部は、第1凝集沈殿部10および第1ろ過部20と、第2凝集沈殿部50および第2ろ過部60との少なくとも一方を示す。
【0153】
従来、特にシリカの原因物質であるケイ酸イオン(SiO4
4-)は水中において種々の形態をとることが知られており、塩を含有する水からの除去が極めて困難なスケーリングの原因物質の1つである。ケイ酸イオン(SiO4
4-)を除去するためには、主として樹脂や吸着剤を利用した除去方法と、薬剤投与による共沈または凝集沈殿による除去方法との2つの方法が検討されている。
【0154】
これらのうちの樹脂や吸着剤を利用したシリカの除去方法として、純水製造プロセスにおいてはイオン交換樹脂を利用したシリカの除去方法が知られている。ところが、高濃度のシリカ含有排水や、シリカ以外の陰イオンが多く存在する陰イオンリッチな高塩濃度の排水においては、イオン交換樹脂の再生頻度が増加することになるため、水処理が高コスト化するため好ましくない。また、イオン交換樹脂の交換容量の近傍においては、吸着していたシリカが溶出して、シリカ濃度が急激に上昇するという問題も生じる。この場合、不可逆的なシリカによるスケールが突然発生することになるため、半透膜を用いた水処理プロセスにおいて大きな問題になる。そこで、凝集剤を投与することによってシリカを除去する方法を採用すると、凝集剤の高コスト化が問題になることから、被処理水を処理する際の凝集剤の使用量の低減が求められていた。
【0155】
上述した問題を解決するために、以下に説明する凝集沈殿部およびろ過部(以下、まとめて凝集沈殿部と称する)の第1構成例、第2構成例、第3構成例、および第4構成例は、被処理水を処理する際に、添加する凝集剤の使用量を低減できる凝集沈殿部である。
【0156】
(凝集沈殿部)
(第1構成例)
まず、本発明の実施形態による水処理装置1~8の凝集沈殿部の第1構成例について説明する。
図10は、第1構成例による凝集沈殿部を模式的に示すブロック図である。
図10に示すように、第1構成例による凝集沈殿部10A,50Aは、受入槽11、反応槽12、pH調整槽13、ポンプ14、脱水機15、シリカ濃度計16,17、およびろ過部20,60を備える。
【0157】
受入槽11は、例えば冷却塔(図示せず)などから排出される排水などの被処理水が流入される槽である。受入槽11におけるシリカ濃度(SiO2濃度)はシリカ濃度計51により計測される。シリカを含む被処理水は、受入槽11に貯留された後に反応槽12に供給される。反応槽12には、シリカを凝集沈殿させる例えばPAC、およびCaを凝集沈殿させる例えばNa2CO3などの凝集剤が添加される。これとともに反応槽12においては、pHが8以上12以下の例えば10.5程度に調整されて、被処理水からCaやシリカなどのスケール成分が除去される。なお、反応槽12は、並列して被処理水を流入可能な2槽や3槽などの複数の槽から構成して、処理水の流れを複数系列として構成することが可能である。
【0158】
反応槽12において得られた上澄み水は、pH調整槽13に供給されてpHが4以上8以下の例えば6.5程度に調整される。これにより、上澄み水のAlが不溶性になる。pH調整槽13におけるシリカ濃度は、シリカ濃度計52により計測される。pH調整槽13においてpHが調整された調整水であるAl含有水は、ろ過部20,60に供給される。ろ過部20,60は砂ろ過または所定の膜を有して構成される。ろ過部20,60においては、調整水からAlを除去するろ過処理が行われ、処理水が得られる。
【0159】
上述したように凝集沈殿部10A,50Aにおける反応槽12においては、Caおよびシリカを含むスケール成分が除去される。すなわち、例えば冷却塔などから排出された被処理水はCaおよびシリカを含む被処理水として受入槽11に一時的に貯留された後、反応槽12に供給される。反応槽12の初期状態としては、すでに複数回の凝集沈殿処理が行われた後における、凝集汚泥としてのスラッジSの一部が残留した状態とする。反応槽12のpHは、塩基性を示すpHに調整される。
【0160】
次に、反応槽12において、例えばスケール成分を除去するために、PACや例えばNa2CO3などの薬剤を注入しながら、攪拌部(図示せず)によって撹拌が実行される。第1構成例においては、攪拌されたスラッジSが凝集剤として機能して、被処理水に含有されたシリカと混合して、シリカの一部が沈殿する。なお、スケール成分としては、主としてSiO2を含むシリカ、および例えばCaCO3、CaSO4、およびCaF2などのCaの化合物が含まれる。
【0161】
スラッジが沈降した反応槽12から、ポンプ14によってスラッジSの一部を排出させて、脱水機15に供給する。スラッジSの排出量としては、初期状態におけるスラッジSの量に対して、増加したスラッジSの増加量分とすることが好ましい。排出されたスラッジSは、脱水機15によって脱水されて脱水ケーキとなって、廃棄または所定の用途に再利用される。
【0162】
次に、反応槽12において、pH調整手段としての薬剤注入装置(図示せず)によってpH調整剤を添加する一方、攪拌手段としての攪拌部(図示せず)によって攪拌を行う。これにより、スラッジSが再度攪拌されて懸濁状態となる。第1構成例においては、懸濁状態となったスラッジSが凝集剤として機能して、被処理水からシリカの一部がスラッジSに吸着され、沈殿することによって除去される。なお、上述した反応槽12において計測されたシリカ濃度に応じて、PACをさらに添加しても良い。スラッジSが沈殿した後、上澄み水は、後段のpH調整槽13に供給される。また、水処理は、流入・薬剤注入に復帰する。
【0163】
(凝集沈殿汚泥)
次に、凝集剤として機能する凝集沈殿汚泥であるスラッジSについて説明する。まず、反応槽12に流入される例えば冷却塔からの排水などの被処理水に含まれるシリカについて、本発明者が行った鋭意検討について説明する。
【0164】
すなわち、本発明者の知見によれば、シリカは、排水中で溶解性シリカと非溶解性のコロイド状シリカに分類される。本発明者の実験および実験に伴う鋭意検討によれば、溶解性シリカおよびコロイド状シリカに対して、アルミニウム塩の投与によって発生する凝集汚泥フロックは、次のような効果を示すと考えられる。
【0165】
まず、主としてケイ酸イオンを含む溶解性シリカは、pHが8以上12以下の塩基性条件下において負の電荷を帯びている。一般に、塩基性条件下における溶解性シリカは、重合して不溶性のシリカとなる反応速度が速いことが知られている。一方、アルミニウム塩を含んだ凝集汚泥フロックは、アルミニウムイオンに由来する正の電荷を帯びた部位が局在している。そこで、本発明者が、凝集沈殿汚泥を再使用する実験を行ったところ、凝集汚泥フロックは、アルミニウムイオンの価数およびモル数から導出されるイオン強度よりも、多くの溶解性シリカを捕捉していることが判明した。
【0166】
そこで、溶解性シリカの凝集汚泥フロックに対する反応機構は、次の通りに考えられる。すなわち、負に帯電した溶解性シリカは、凝集汚泥フロック中におけるアルミニウムイオンのような正に帯電した部分(吸着活性点)に静電気的に引き寄せられて吸着する。塩基性条件下においては、ケイ酸イオンの重合速度が大きいことから、溶解性シリカは、ケイ酸イオンが吸着したサイトの近傍に接近した他の溶解性シリカと重合して凝集汚泥フロックに吸着される。このため、吸着可能なシリカの量は、アルミニウムの価数から導き出される量より大きくなる。攪拌を行うことにより、溶解性シリカと凝集汚泥フロック中の吸着活性点との接触確率が増加することから、シリカの除去率が向上する。さらに、スラッジSの使用回数、すなわちサイクル回数を多くすることによって、未活用の吸着活性点を低減することが可能となる。
【0167】
また、コロイド状シリカは、溶解性シリカが互いに重合して数10nm~数l00nmの大きさになったものである。コロイド状の場合、粒子径が小さいため沈降性が極めて低い。また、塩基性条件下におけるコロイド状シリカは、一部が溶解して溶解性シリカと同様の形態になり、上述した反応機構と同様の反応が生じる。溶解しなかったコロイド状シリカにおいても、表面が負の電荷を帯びていることから、アルミニウムイオンの正の電荷に静電気的に引き寄せられ、凝集および重合して沈降性が向上する。これにより、被処理水からシリカが除去される。
【0168】
以上のようにして、被処理水に対してPACなどの凝集剤を添加することによって得られたスラッジSは、シリカ除去率は低下するものの、複数回再利用することが可能である。本発明者が反応槽12におけるpHに応じたシリカ除去率について実験を行ったところ、反応槽12内の被処理水のpHを8とした場合には、スラッジSのサイクル回数に伴って、シリカ除去率が47%程度から27%程度まで低減することが判明した。さらに、本発明者が反応槽12内の被処理水のpHを10.5とした場合には、シリカ除去率がスラッジSのサイクル回数に伴って、シリカ除去率が97%程度から70%程度まで低減することが判明した。すなわち、反応槽12内の被処理水のpHを8とした場合に比して、pHを10.5としてより塩基性を強くした場合には、シリカ除去率が2~2.6倍程度向上した。そのため、反応槽12内の被処理水に対するシリカの除去処理を行った場合に、被処理水のpH、およびPACを添加する場合にはPACの添加量を設定することによって、所望とするシリカ濃度を得ることが可能になる。
【0169】
以上説明したように凝集沈殿部の第1構成例によれば、シリカの除去の際に発生した凝集沈殿汚泥であるスラッジSを、改めてシリカの吸着核、すなわち凝集剤として使用しているので、シリカの除去に要するPACなどの薬剤の添加量を低減できる。さらに、スラッジSを凝集剤として使用していることにより、排出する汚泥の量を低減できるので、排出されたスラッジSの後処理に要するコストを低減することが可能になる。
【0170】
(第2構成例)
次に、凝集沈殿部の第2構成例について説明する。
図11は、第2構成例による凝集沈殿部を示すブロック図である。
図11に示すように、第2構成例による凝集沈殿部10B,50Bは、受入槽11、反応槽12,pH調整槽13、ポンプ14、脱水機15、シリカ濃度計16,17、汚泥貯留槽18、およびろ過部20,60を備える。受入槽11、反応槽12,pH調整槽13、ポンプ14、脱水機15、シリカ濃度計16,17、およびろ過部20,60については、第1構成例と同様である。汚泥貯留槽18は、ポンプ14を用いて、反応槽12から排出させたスラッジSを一時的に貯留した後に反応槽12に戻すための槽である。
【0171】
凝集沈殿部10B,50Bにおける反応槽12においては、シリカを含むスケール成分が除去される。すなわち、被処理水は、受入槽11に一時的に貯留された後に、反応槽12に供給される。反応槽12の初期状態としては、すでに複数回の凝集沈殿処理が行われた後における、凝集汚泥としてのスラッジSの一部が残留した状態とする。反応槽12のpHは、塩基性を示すpHに調整され、例えば8以上12以下の10.5に調整される。
【0172】
次に、反応槽12において、スケール成分である例えばCaの化合物などを除去するための例えばNa2CO3などの薬剤を注入しながら、攪拌部(図示せず)によって撹拌が実行される。ここで、第2構成例においては、汚泥貯留槽18に貯留されたスラッジSの一部を脱水機15に供給して脱水を行う一方、スラッジSの残部の少なくとも一部を反応槽12に供給する。これにより、反応槽12内で攪拌されたスラッジSは凝集剤として機能して、被処理水におけるシリカと混合して、シリカの一部が沈殿する。
【0173】
スラッジSが沈降した反応槽12から、ポンプ14によってスラッジSの少なくとも一部、好適には全部を汚泥貯留槽18に供給する。ここで、汚泥貯留槽18に貯留されたスラッジSのうちの脱水機15に供給されるスラッジSの量は、初期状態におけるスラッジSの量に対して増加した増加量分とすることが好ましい。
【0174】
次に、反応槽12において、pH調整剤を添加する一方、攪拌部(図示せず)によって攪拌を行う。これにより、スラッジSが再度攪拌されて懸濁状態となる。第2構成例においては、懸濁状態となったスラッジSが凝集剤として機能して、被処理水からシリカの一部がスラッジSに吸着され、沈殿することによって除去される。なお、上述したシリカ濃度計によって計測されたシリカ濃度に応じて、PACをさらに添加しても良い。PACを添加する場合、添加量はシリカ濃度の1当量以上2当量以下が好ましい。スラッジSが沈殿した後、上澄み水は、後段のpH調整槽13に供給される。その他の構成は、第1構成例と同様である。
【0175】
以上説明したように凝集沈殿部の第2構成例によれば、反応槽12における凝集沈殿処理によって得られた凝集沈殿汚泥であるスラッジSを、シリカの凝集剤として用いていることにより、第1構成例と同様の効果を得ることができる。さらに、反応槽12からスラッジSの少なくとも一部、好適には全部を排出させて汚泥貯留槽18に一時的に貯留していることにより、アルミニウム凝集剤とシリカ以外の夾雑物との反応を抑制することが可能になるので、使用する薬剤の量を低減でき、薬剤のコストが低減できる。
【0176】
(第3構成例)
次に、凝集沈殿部の第3構成例について説明する。
図12は、第3構成例による凝集沈殿部を示すブロック図である。
図12に示すように、第3構成例による凝集沈殿部10C,50Cは、受入槽11、薬注装置19が設けられた第1反応槽121、第2反応槽122、沈殿槽123、pH調整槽13、ポンプ14、脱水機15、シリカ濃度計16,17、およびろ過部20,60を備える。受入槽11、pH調整槽13、ポンプ14、脱水機15、シリカ濃度計16,17、およびろ過部20,60はそれぞれ、第1構成例と同様である。
【0177】
(反応工程)
反応部を構成する反応槽としての第1反応槽121においては、シリカを含む被処理水を塩基性とするように、pH調整部(図示せず)によってpHが調整され、例えば8以上12以下、好適には10.5程度に調整される。第1反応槽121においては、主としてシリカ以外のスケール成分として、Caの難溶性塩などを除去するために、例えばNa2CO3などの凝集剤が注入される。第1反応槽121においては、攪拌部121aによって撹拌が実行され、被処理水は懸濁状態となる。被処理水は、第1反応槽121の上部から越流させて第2反応槽122の下部に供給される。
【0178】
被処理水が第2反応槽122に供給されると、第2反応槽122には、凝集剤として、後段の沈殿槽123において採取された凝集沈殿汚泥であるスラッジSが添加される。他方、反応部を構成する反応槽としての第2反応槽122には、必要に応じて、第2反応槽122に設けられた凝集剤添加部(図示せず)によって、凝集剤として、例えばPACなどのアルミニウム塩が添加される。第2反応槽122に添加されるPACの添加量は、シリカ濃度計16,17により計測されたシリカ濃度の計測値に基づいて決定される。第2反応槽122においては、攪拌部122aによって撹拌が実行され、被処理水は懸濁状態となる。被処理水は、第2反応槽122から沈殿槽123に供給される。なお、後段のシリカ濃度計17により計測されたシリカ濃度が所定のシリカ濃度以下であれば、PACなどのアルミニウム塩を添加しなくても良い。
【0179】
(沈殿工程)
沈殿槽123においては、被処理水が静置されることより、攪拌されたスラッジSが凝集剤として機能し、被処理水に含有されたシリカと混合してシリカを含むスラッジSが沈殿する。すなわち、第2反応槽122において、懸濁状態となったスラッジSが凝集剤として機能して、被処理水からシリカの一部がスラッジSに吸着され、沈殿槽123において沈殿することによって除去される。なお、沈殿槽123において、pH調整部(図示せず)によって、被処理水のpHを、8以上12以下、好適には10.5程度に調整しても良い。
【0180】
(汚泥輸送工程)
沈殿槽123において沈殿したスラッジSの少なくとも一部は、汚泥輸送部としてのポンプ14によって引き抜かれる。ポンプ14によって引き抜くスラッジSの量は、沈殿槽123内におけるスラッジSの略全量としても良い。この場合、ポンプ14は、引き抜いたスラッジSの一部、例えばスラッジSの沈殿量の20%や、引き抜く周期の時間において沈殿した量の分を、例えばフィルタープレスなどの脱水機15に供給することができる。この場合、沈殿槽123に沈殿しているスラッジSの全沈殿量の80%分や、引き抜く周期の時間において沈殿した分と略同量の古いスラッジSを除いた残部が、第2反応槽122に投入される。
【0181】
また、ポンプ14は、沈殿槽123内におけるスラッジSの一部だけ引き抜くようにしても良い。この場合、ポンプ14によって引き抜かれたスラッジSにおいて、被処理水との接触が累計で所定回数以上、例えば5回以上となったスラッジSを脱水機15に供給することも可能である。また、ポンプ14は、沈殿槽123においては、略一定量のスラッジSが残留するように引き抜き量を調整することも可能である。ここで、一定量は、スラッジSを引き抜く1周期分の時間において増加するスラッジSの量の5倍程度とすることができる。これにより、スラッジSにおいて凝集剤としての機能を確保できる。
【0182】
引き抜かれたスラッジSの一部は、ポンプ14によって第2反応槽122に供給される。引き抜かれたスラッジSの残部は、脱水機15に供給されて脱水され、脱水ケーキとなって廃棄または所定の用途に再利用される。
【0183】
沈殿槽123の後段である被処理水の流出側で、pH調整槽13の前段である流入側に、シリカ濃度計17が設けられている。シリカ濃度計17によって、例えば6分~10分の間隔で継続して沈殿槽123の上澄み水のシリカ濃度が計測される。その後、シリカ濃度計16,17によって計測されたシリカ濃度に基づいたフィードバック制御によって、第2反応槽122におけるアルミニウム塩の添加量が決定される。具体的に、第2反応槽122にスラッジSが添加されて、懸濁状態のスラッジSが凝集剤として機能することにより、被処理水中のシリカが除去される。続いて、シリカ濃度計17によって計測されたシリカ濃度が、シリカ濃度計16によって計測されたシリカ濃度から所望とするシリカ濃度以下になるために必要なアルミニウム塩の量を、アルミニウム塩の添加量に決定する。アルミニウム塩としてPACを添加する場合、添加量は、計測されたシリカ濃度の1当量以上2当量以下が好ましい。これにより、従来に比して、アルミニウム塩の添加量を低減できる。
【0184】
なお、上述した凝集沈殿部10C,50Cにおいて、第1反応槽121、第2反応槽122、および沈殿槽123をそれぞれ複数設け、第1反応槽121、第2反応槽122、および沈殿槽123からなる水処理系列を複数並列させて、被処理水を処理可能な2系列や3系列などの複数系列から構成しても良い。
【0185】
また、上述した凝集沈殿部10C,50Cにおいて、被処理水の流れ方向に沿って第1反応槽121の上流側に、少なくとも1槽の他の反応槽を設けても良い。また、被処理水の流れ方向に沿った第1反応槽121と第2反応槽122の間に、さらに少なくとも1槽の他の反応槽を設けても良い。これらの場合、第2反応槽122を、反応部を構成する複数の反応槽のうちの、被処理水の流れ方向に沿った最下流の反応槽としても良い。また、被処理水の流れ方向に沿って第2反応槽122の下流側に、さらに少なくとも1槽の反応槽が設けられていても良い。この場合、第1反応槽121を、反応部を構成する複数の反応槽において、被処理水の流れ方向に沿った最上流の反応槽としても良い。さらに、これらの構成を組み合わせることも可能である。すなわち、反応部を3槽以上の複数の反応槽から構成し、これらの3槽以上の反応槽のうちの1つの反応槽を第1反応槽121とし、第1反応槽121より下流側の少なくとも1槽の反応槽のうちの1つの反応槽を第2反応槽122としても良い。
【0186】
また、第1反応槽121を複数の反応槽から構成しても良く、第2反応槽122を複数の反応槽から構成しても良い。同様に、沈殿部を構成する沈殿槽123を、被処理水が直列に輸送される複数の沈殿槽から構成しても良い。
【0187】
(アルミニウム除去工程)
沈殿槽123において得られた上澄み水は、pH調整槽13に供給されてpHが4以上8以下の例えば6.5程度に調整される。これにより、上澄み水のAlが不溶性になって除去される。pH調整槽13においてpHが調整された調整水であるAl含有水は、ろ過部20,60に供給される。なお、pH調整槽13においてpHが調整されたAl含有水の一部を第2反応槽122に戻すようにしても良い。
【0188】
ろ過部20,60においては、pH調整槽13から供給された調整水からAlを除去するろ過処理が行われる。これにより、処理水が得られる。
【0189】
上述したように、シリカの処理槽である第2反応槽122の前段に、シリカ以外の夾雑物を除去する第1反応槽121を設けていることにより、第2反応槽122において、アルミニウム塩がシリカ以外の物質によって消費されるのを抑制することが可能となる。
【0190】
以上説明したように凝集沈殿部の第3構成例によれば、沈殿槽123において沈殿した凝集沈殿汚泥であるスラッジSを、沈殿槽123の前段の反応槽、具体的には第2反応槽122に再度投入して被処理水からシリカを除去している。すなわち、第3構成例においては、沈殿槽123において凝集沈殿したスラッジSを、第2反応槽122に投入して、改めてシリカの吸着核、すなわち凝集剤として使用しているので、シリカの除去に要するPACなどの薬剤の添加量を低減できる。さらに、スラッジSを凝集剤として使用していることにより、排出するスラッジSの量を低減できるので、排出されたスラッジSの後処理に要するコストを低減することが可能となる。
【0191】
(第4構成例)
次に、第4構成例による凝集沈殿部について説明する。
図13は、第4構成例による凝集沈殿部を示すブロック図である。
図13に示すように、第4構成例による凝集沈殿部10D,50Dは、第3構成例と同様に、受入槽11、第1反応槽121、第2反応槽122、沈殿槽123,pH調整槽13、ポンプ14、脱水機15、シリカ濃度計16,17、薬注装置19、およびろ過部20,60を備える。
【0192】
第4構成例においては、沈殿槽123において、被処理水が静置されることより、攪拌されたスラッジSが凝集剤として機能し、被処理水に含有されたシリカと混合してシリカを含むスラッジSが沈殿する。沈殿したスラッジSの少なくとも一部は、ポンプ14によって引き抜かれる。引き抜くスラッジSの量は、沈殿槽123内におけるスラッジSの増加量分とすることが好ましいが限定されない。換言すると、沈殿槽123においては、略一定量のスラッジSが残留するように引き抜き量を調整することが好ましい。第4構成例においては、第3構成例と異なり、引き抜かれたスラッジSの一部は、ポンプ14によって第1反応槽121に供給される。これにより、第1反応槽121には、後段の沈殿槽123からスラッジSが輸送されて添加される。添加されたスラッジSによって第1反応槽121内のシリカの一部が除去される。
【0193】
一方、第1反応槽121においては、被処理水を塩基性とするようにpHが調整され、例えば8以上12以下、好適には10.5程度に調整される。また、第1反応槽121においては、主としてシリカ以外のスケール成分として、例えばCaの難溶性塩などを除去するために、例えばNa2CO3などのCaの凝集剤が注入される。第1反応槽121においては、攪拌部121aによって撹拌が実行され、被処理水は懸濁状態となる。これによって、第1反応槽121内においては、Caの凝集剤によってCaの難溶性塩などが除去されるとともに、スラッジSによってシリカの一部が除去される。
【0194】
懸濁状態の被処理水は、第1反応槽121の上部から越流させて第2反応槽122の下部に供給される。被処理水のシリカ濃度は、第1反応槽121の後段で第2反応槽122の前段に設けられたシリカ濃度計16により計測される。なお、第1反応槽121において被処理水のシリカ濃度を計測しても良い。
【0195】
第4構成例においては、第1反応槽121から流出された被処理水のシリカ濃度と、沈殿槽123から流出された被処理水のシリカ濃度とに基づいて、第2反応槽122内の被処理水に添加する、例えばPACなどのアルミニウム塩の添加量が決定される。すなわち、シリカ濃度計17によって、例えば6分~10分の間隔で継続して沈殿槽123の上澄み水のシリカ濃度が計測される。同様にして、シリカ濃度計16によって、例えば6分~10分の間隔で第1反応槽121から流出された被処理水のシリカ濃度が計測される。シリカ濃度計16,17によって計測されたシリカ濃度に基づいたフィードバック制御によって、第2反応槽122におけるアルミニウム塩の添加量が決定される。その他の構成は、第3構成例と同様である。
【0196】
以上説明したように凝集沈殿部の第4構成例によれば、第1反応槽121、第2反応槽122、および沈殿槽123における凝集沈殿処理によって得られた凝集沈殿汚泥であるスラッジSを、シリカの凝集剤として用いていることにより、第1~第3構成例と同様の効果を得ることができる。さらに、第4構成例によれば、第1反応槽121に凝集剤として機能するスラッジSを投入して、第1反応槽121の下流側においてシリカ濃度を計測していることにより、スラッジSに吸着するシリカの濃度をより正確に計測することができるので、第2反応槽122において添加するアルミニウム塩の添加量を最適化できる。また、受入槽11から第1反応槽121の下部に被処理水を注入し、第1反応槽121の上部から被処理水を越流させて第2反応槽122の下部に注入していることにより、スラッジSの侵入量を抑制できるので、新たに注入するPACなどのアルミニウム塩とスラッジSとの反応を抑制でき、第3構成例に比してシリカの除去率をさらに向上できる。
【0197】
上述した第1~第4構成例による凝集沈殿部およびろ過部については、第1凝集沈殿部10と第2凝集沈殿部50とを同様の構成としても良く、互いに異なる構成としても良い。
【0198】
上述した第1~第4構成例において凝集剤として用いる薬剤は、被処理水に添加することによって凝集沈殿を生じさせる凝集剤と、この凝集剤によって凝集沈殿されたシリカと、を含み、被処理水に凝集剤を添加して凝集沈殿した凝集沈殿汚泥からなる薬剤である。ここで、被処理水に添加することによって凝集沈殿を生じさせる凝集剤とは、アルミニウム塩、マグネシウム塩、鉄塩、およびポリマー系凝集剤から選ばれた少なくとも1種類の化合物から構成される。
【0199】
また、上述した第1~第4構成例において凝集剤として用いる薬剤は、被処理水に凝集剤を添加する工程と、被処理水に含まれるシリカを凝集沈殿させて凝集沈殿汚泥を生成する工程と、含む製造方法によって製造可能である。この際、被処理水のpHを8以上12以下に調整することが好ましい。
【0200】
(正浸透装置)
次に、第1~第4の実施形態による水処理装置1~8に採用される正浸透装置の構成について説明する。
【0201】
まず、従来の正浸透装置においては、水分離ドロー溶液を正浸透装置におけるドロー溶液として循環させて用いると、高温の再生ドロー溶液の冷却が不十分になるという問題があった。そこで、高温のドロー溶液を冷却するための冷却機構を設ける方法が考えられるが、冷却機構を新たに設けると水処理装置に要するエネルギーが増加してランニングコストが増加するという問題が生じる。そのため、正浸透装置において、配管構造を可能な限り簡素化しつつ、冷却や加熱に要する消費エネルギーを抑制して、エネルギーの収支を安定化できる技術が求められていた。以下に説明する正浸透装置の第1装置例、第2装置例、第3装置例、および第4装置例は、配管構造を簡素にしつつ、冷却や加熱に要する消費エネルギーを抑制して、エネルギーの収支を安定化できる正浸透装置である。
【0202】
(第1装置例による正浸透装置)
まず、本発明の実施形態による水処理装置1~8の正浸透装置70の第1装置例について説明する。
図14は、第1装置例による正浸透装置を模式的に示すブロック図である。
図14に示すように、第1装置例による正浸透装置71は、膜モジュール711、熱交換器712,713、加熱器714、分離槽715、および最終処理ユニット716を備えて構成される。
【0203】
膜モジュール711は、例えば円筒形または箱形の容器であって、内部に正浸透膜としての半透膜711aが設置されることによって、内部が半透膜711aによって2つの室に仕切られる。膜モジュール711の形態は、例えばスパイラルモジュール型、積層モジュール型、中空糸モジュール型などの種々の形態を挙げることができる。膜モジュール711としては、公知の半透膜装置を用いることができ、市販品を用いることもできる。
【0204】
膜モジュール711に設けられた半透膜711aは、水を選択的に透過できるものが好ましく、FO膜が用いられるが、RO膜を用いても良い。半透膜711aの分離層の材質は、特に限定されるものではなく、例えば、酢酸セルロース系、ポリアミド系、ポリエチレンイミン系、ポリスルホン系、またはポリベンゾイミダゾール系などの材質を挙げることができる。半透膜711aの構成は、分離層に用いられる材質を1種類(1層)のみから構成しても良く、分離層を物理的に支持して実質的に分離に寄与しない支持層を有する2層以上から構成しても良い。支持層としてはポリスルホン系、ポリケトン系、ポリエチレン系、ポリエチレンテレフタラート系、一般的な不織布などの材質を挙げることができる。なお、半透膜711aの形態についても限定されるものではなく、平膜、管状膜、または中空糸など種々の形態の膜を用いることができる。
【0205】
膜モジュール711の内部において半透膜711aによって仕切られた一方の室に、含水溶液を流すことができ、他方の室に吸水溶液であるドロー溶液を流すことができる。ドロー溶液の膜モジュール711への導入圧力は、0.1MPa以上0.5MPa以下、第1装置例においては例えば0.2MPaである。含水溶液は、例えば濃縮水、海水、かん水、汽水、工業排水、随伴水、もしくは下水、または必要に応じてこれらの水に対してろ過処理を施した、溶媒として水を含む含水溶液である。
【0206】
ドロー溶液としては、少なくとも1つの曇点を有する温度感応性吸水剤(ポリマー)を主体とする溶液が用いられる。温度感応性吸水剤とは、低温においては親水性で水に良く溶けて吸水量が多くなる一方、温度の上昇にしたがって吸水量が低下して、所定温度以上になると疎水性化し溶解度が低下する物質である。
【0207】
第1装置例においてポリマーは、少なくとも疎水部および親水部が含まれ、基本骨格にエチレンオキシド群とプロピレンオキシドおよびブチレンオキシドからなる少なくとも一方の群とを含む、ブロックまたはランダム共重合体が好ましい。基本骨格は例えば、グリセリン骨格や炭化水素骨格などが挙げられる。この一実施形態においてポリマーは、例えばエチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドの重合体を有する薬剤(GE1000-BBPP(A3)など)が用いられる。このようなポリマーにおいて、水溶性と水不溶性とが変化する温度は、曇点と呼ばれる。ドロー溶液の温度が曇点に達すると疎水性化した温度感応性吸水剤が凝集して白濁が生じる。温度感応性吸水剤は、各種界面活性剤、分散剤、または乳化剤などとして利用される。第1装置例において、ドロー溶液は、含水溶液から水を誘引する誘引物質として用いられる。膜モジュール711においては、含水溶液からドロー溶液に水が誘引されて、希釈されたドロー溶液(希釈ドロー溶液)が流出される。
【0208】
熱交換器712は、膜モジュール711に対して含水溶液の流れ方向に沿った上流側に設けられる。熱交換器712は、後述する分離槽715から流出される再利用されるドロー溶液(以下、再生ドロー溶液)の流れ方向に沿った下流側に設けられ、分離槽715から流出される再生ドロー溶液と外部から供給される含水溶液との間で熱交換を行う。熱交換器712に流入される含水溶液の流量は、膜モジュール711に供給される再生ドロー溶液の温度が所定温度になるように温度制御される。膜モジュール711に供給される再生ドロー溶液は、25℃以上50℃以下の、例えば40℃程度の所定温度に温度制御される。なお、再生ドロー溶液の温度を所望温度に維持しつつ、膜モジュール711に供給する含水溶液の流量を一定にする必要がある場合には、膜モジュール711と熱交換器712との間に、調整弁としてのブロー弁(図示せず)を設けることが望ましい。
【0209】
熱交換器713は、膜モジュール711に対して、希釈ドロー溶液の流れ方向に沿った下流側に設けられている。また、熱交換器713は、後述する分離槽715から流出される水リッチ溶液の流れ方向に沿った下流側に設けられ、膜モジュール711から流出された希釈ドロー溶液と、分離槽715によって得られた水リッチ溶液との間で、熱交換を行う。
【0210】
ドロー溶液の加熱手段としての加熱器714は、ドロー溶液の流れ方向に沿って分離槽715の上流側に設けられる。加熱器714は、膜モジュール711から流出して熱交換器713によって熱交換された希釈ドロー溶液を、曇点の温度以上に加熱する。加熱器714によって曇点の温度以上に加熱された希釈ドロー溶液は、ポリマーと水とに分相される。
【0211】
水分離手段としての分離槽715においては、加熱器714によって分相された希釈ドロー溶液が、水を主体とする水リッチ溶液とポリマーを主体として水リッチ溶液より含水率が低いドロー溶液とに分離される。水リッチ溶液より含水率が低いドロー溶液は、再生ドロー溶液として、熱交換器712を介して膜モジュール711に供給される。
【0212】
分離処理手段としての最終処理ユニット716は、例えばコアレッサー、活性炭吸着ユニット、UF膜ユニット、ナノろ過膜(NF膜)ユニット、またはRO膜ユニットから構成される。最終処理ユニット716は、分離槽715から流出した水リッチ溶液において、残存するポリマーを水リッチ溶液から分離させて、透過水としての淡水を生成する。最終処理ユニット716によって分離されたポリマーを含むポリマー溶液は、廃棄したり、加熱器714の少なくとも上流側において希釈ドロー溶液に導入したりしても良い。さらに、分離されたポリマー溶液の一部を廃棄し、残りのポリマー溶液をドロー溶液として、少なくとも加熱器714の上流側または熱交換器713の上流側における希釈ドロー溶液に導入することも可能である。ここで、ポリマー溶液を希釈ドロー溶液に導入する方法としては、希釈ドロー溶液が流れる配管に導入する方法のみならず、希釈ドロー溶液を一時的に貯留するタンク(図示せず)に導入する方法など、種々の方法を採用することが可能である。
【0213】
(正浸透処理工程)
次に、第1装置例による正浸透装置71を用いた正浸透処理工程について説明する。
【0214】
(流入側熱交換工程)
流入側熱交換手段としての熱交換器712においては、流入側熱交換工程が行われる。すなわち、外部から水処理装置1に供給される含水溶液は、まず、熱交換器712に供給される。一方、熱交換器712には、分離槽715から流出された再生ドロー溶液が供給される。第1装置例においては、熱交換器712によって、再生ドロー溶液を所定温度、具体的に例えば40℃程度の温度に調整する。後述するように、分離槽715には、加熱された希釈ドロー溶液が流入されるため、分離槽715から流出する再生ドロー溶液の温度は含水溶液よりも高温である。そこで、熱交換器712によって、再生ドロー溶液を降温させる。再生ドロー溶液を所定温度に降温させるために、熱交換器712に流入される含水溶液の流量が調整される。すなわち、熱交換器712において、再生ドロー溶液は含水溶液によって冷却される一方、含水溶液は再生ドロー溶液によって加熱される。なお、膜モジュール711と熱交換器712との間に調整弁としてのブロー弁(図示せず)を設けて、再生ドロー溶液の温度を所望温度に維持しつつ、膜モジュール711に供給する含水溶液の流量を一定に調整することも可能である。熱交換が行われて降温された再生ドロー溶液は膜モジュール711の他方の室に供給されるとともに、熱交換が行われて昇温された含水溶液は、膜モジュール711における一方の室に供給される。
【0215】
(正浸透工程)
正浸透手段としての膜モジュール711においては、第2水抽出工程としての正浸透工程が行われる。すなわち、膜モジュール711において、含水溶液と再生ドロー溶液とを半透膜711aを介して接触させることによって、浸透圧差により含水溶液中の水が半透膜711aを通過して再生ドロー溶液に移動する。含水溶液が供給される一方の室からは、水が移動して濃縮された濃縮含水溶液が流出する。再生ドロー溶液が供給される他方の室からは水が移動して希釈された希釈ドロー溶液が流出する。ここで、熱交換器712において、含水溶液と再生ドロー溶液との間で熱交換されていることにより、膜モジュール711の内部においては、互いに略同温度の含水溶液と再生ドロー溶液との間で、水が移動される。そのため、膜モジュール711から流出される希釈ドロー溶液の温度は、再生ドロー溶液の温度と略同程度の温度である。
【0216】
(加熱工程)
加熱手段としての加熱器714においては、加熱工程が行われる。すなわち、正浸透工程によって含水溶液から水が移動して希釈された希釈ドロー溶液を、後述する流出側熱交換工程において昇温した後に、加熱器714によってさらに曇点以上の温度まで加熱することにより、ポリマーの少なくとも一部を凝集させて、相分離させる。加熱工程における加熱温度は、加熱器714を制御することによって調整可能である。なお、加熱温度は、100℃以下が好ましく、第1装置例において加熱温度は、曇点以上100℃以下の例えば88℃である。
【0217】
(水分離工程)
分離槽715においては、水分離工程が行われる。すなわち、分離槽715において、希釈ドロー溶液は、水分を多く含有する水リッチ溶液と、ポリマーを高濃度に含む濃縮された再生ドロー溶液とに分離される。なお、分離槽715における圧力は大気圧である。水リッチ溶液と再生ドロー溶液との相分離は、曇点以上の液温で静置することによって行うことができる。第1装置例において液温は、曇点以上100℃以下の例えば88℃である。希釈ドロー溶液から分離されて濃縮されたドロー溶液は、再生ドロー溶液として膜モジュール711に供給される。再生ドロー溶液のドロー濃度は、例えば60~95%である。一方、希釈ドロー溶液から分離された水リッチ溶液は、熱交換器713を介して最終処理ユニット716に供給される。水リッチ溶液は例えば、水が99%、ドロー濃度が1%である。
【0218】
(流出側熱交換工程)
流出側熱交換手段としての熱交換器713においては、流出側熱交換工程が行われる。すなわち、膜モジュール711から流出した希釈ドロー溶液は、まず、熱交換器713に供給される。一方、熱交換器713には、分離槽715において得られた水リッチ溶液が供給される。第1装置例においては、熱交換器713によって、水リッチ溶液を所定温度、具体的に例えば45℃程度の温度に調整する。上述したように、分離槽715においては液温が曇点以上100℃以下で水分離工程が行われる。そのため、分離槽715から流出する水リッチ溶液は、熱交換器712において降温された後に膜モジュール711から流出する希釈ドロー溶液よりも高温である。一方、後段の最終処理ユニット716における処理温度は、例えば20℃以上50℃以下、好適には35℃以上45℃以下、第1装置例においては、例えば45℃である。そこで、熱交換器713において、水リッチ溶液を所定温度まで降温させる温度調整が行われる。すなわち、熱交換器713において、水リッチ溶液は希釈ドロー溶液によって冷却される一方、希釈ドロー溶液は水リッチ溶液によって加熱される。
【0219】
(最終処理工程)
最終処理ユニット716においては、分離処理工程としての最終処理工程が行われる。すなわち、分離槽715において分離された水リッチ溶液においては、ポリマーが残存している可能性がある。そこで、最終処理ユニット716において、水リッチ溶液から分離処理ドロー溶液となるポリマー溶液を分離することによって、淡水などの透過水が得られる。
【0220】
水リッチ溶液から分離された透過水は、含水溶液から得られた最終生成物として、外部の必要な用途に供給される。なお、最終処理ユニット716において、透過水と分離されたドロー溶液は、ドロー濃度が0.5~25%程度のポリマー溶液であり、外部に廃棄されるか、少なくとも加熱器714または熱交換器713の上流側における希釈ドロー溶液に導入される。また、透過水と分離されたポリマー溶液の一部を廃棄し、残りのポリマー溶液を少なくとも加熱器714の上流側または熱交換器713の上流側における希釈ドロー溶液に導入することも可能である。
【0221】
(第1装置実施例)
次に、以上のように構成された正浸透装置71の第1装置実施例について説明する。なお、第1装置実施例においては、正浸透装置71を用いて、流量が100L/hの含水溶液(濃縮水)から流量が67L/hの淡水(透過水)を生成する場合を例に説明する。
【0222】
第1装置実施例においては、正浸透装置71に外部から導入された濃縮水に対して熱交換器712によって熱交換を行い、40℃の温度の濃縮水を膜モジュール711に供給する。膜モジュール711によって濃縮された濃縮水は、33L/hの流量で膜モジュール711から排出される。すなわち、膜モジュール711において、67L/hの流量で水の移動が行われる。
【0223】
一方、熱交換器712において濃縮水によって熱交換された40℃の温度の再生ドロー溶液は、膜モジュール711に供給されて希釈され、希釈ドロー溶液として流出する。ここで、再生ドロー溶液の流量は100L/hである。膜モジュール711から流出される希釈ドロー溶液の温度は、40℃であり、流量は167L/hである。その後、希釈ドロー溶液は、熱交換器713において88℃の水リッチ溶液と熱交換されて加熱され、40℃から52℃の温度まで昇温された後、加熱器714に供給されてさらに加熱され、52℃から88℃の温度まで昇温される。希釈ドロー溶液は、分離槽715に供給されて、再生ドロー溶液と水リッチ溶液とに相分離される。
【0224】
再生ドロー溶液は、温度が88℃、流量が100L/hである。水リッチ溶液は、温度が88℃、流量が67L/hである。再生ドロー溶液は、熱交換器712に供給されて低温の含水溶液と熱交換されて、88℃から40℃まで降温される。
【0225】
水リッチ溶液は、熱交換器713に供給されて40℃の希釈ドロー溶液と熱交換されて、88℃から45℃まで降温された後に、最終処理ユニット716に供給される。最終処理ユニット716においては、67L/hの流量で透過水が得られる。なお、最終処理ユニット716において、透過水から分離されるドロー溶液については、少量であることから考慮していない。以上により、100L/hの流量の濃縮水から、67L/hの流量の透過水が得られる。
【0226】
以上説明したように第1装置例によれば、外部から流入する濃縮水などの含水溶液を用いて、膜モジュール711に供給する再生ドロー溶液を所望の温度に調整している。これにより、膜モジュール711において含水溶液およびドロー溶液の温度を近い温度にできるので、膜モジュール711における処理を安定させることができる。また、分離槽715から流出した高温の水リッチ溶液を用いて、膜モジュール711から流出した希釈ドロー溶液を昇温させた後に、加熱器714によって分離槽715に供給する希釈ドロー溶液を曇点以上100℃以下の温度に加熱している。これにより、加熱器714によって希釈ドロー溶液を加熱する際に昇温させる温度幅を小さくできるので、加熱器714による加熱に必要なエネルギーを低減でき、正浸透装置71において、加熱に消費するエネルギーを低減できる。さらに、希釈ドロー溶液を2つの流路に分岐させることなく、熱交換によって希釈ドロー溶液および再生ドロー溶液の温度調整を行っている。これにより、流路における流量のバランスを容易に調整できるので、配管構造を簡素にしつつ、冷却や加熱に要する消費エネルギーを抑制して、エネルギーの収支を安定化できる。
【0227】
(第2装置例)
(正浸透装置および正浸透処理工程)
まず、本発明の実施形態による水処理装置1~8の正浸透装置70の第2装置例について説明する。
図15は、第2装置例による正浸透装置を模式的に示すブロック図である。
図15に示すように、第2装置例による正浸透装置72は、内部に半透膜721aが設けられた膜モジュール721、熱交換器722,723,724、加熱器725、分離槽726、および最終処理ユニット727を備えて構成される。正浸透装置72における、膜モジュール721、半透膜721a、熱交換器722,723、加熱器725、分離槽726、および最終処理ユニット727はそれぞれ、第1装置例による正浸透装置71における、膜モジュール711、半透膜711a、熱交換器712,713、加熱器714、分離槽715、および最終処理ユニット716と同様である。
【0228】
第2装置例による正浸透装置72においては、第1装置例と異なり、希釈ドロー溶液の流れ方向に沿った熱交換器723の下流側で加熱器725の上流側、かつ再生ドロー溶液の流れ方向に沿った分離槽726の下流側で熱交換器722の上流側に、熱交換器724が設けられている。中間熱交換手段としての熱交換器724によって、中間熱交換工程が行われる。すなわち、第2装置例による正浸透処理工程においては、膜モジュール721から流出した希釈ドロー溶液は、熱交換器723において高温の水リッチ溶液との間で熱交換が行われて昇温された後に、さらに熱交換器724において水リッチ溶液と同程度の温度の再生ドロー溶液との間で熱交換が行われて昇温される。その後、加熱器725によって、希釈ドロー溶液は、曇点以上100℃以下の温度にまで加熱される。その他の構成は、第1装置例と同様である。
【0229】
(第2装置実施例)
第2装置実施例においては、正浸透装置72に外部から導入された濃縮水に対して熱交換器722によって熱交換を行い、40℃の温度の濃縮水を膜モジュール721に供給する。膜モジュール721によって濃縮された濃縮水は、33L/hの流量で膜モジュール721から排出される。すなわち、膜モジュール721において、67L/hの流量で水の移動が行われる。
【0230】
一方、熱交換器722において濃縮水によって熱交換された40℃の温度の再生ドロー溶液は、膜モジュール721に供給されて希釈され、希釈ドロー溶液として流出する。ここで、再生ドロー溶液の流量は100L/hである。膜モジュール721から流出される希釈ドロー溶液は、温度が40℃、流量が167L/hである。その後、希釈ドロー溶液は、熱交換器723によって加熱されて52℃の温度まで昇温された後、熱交換器724に供給される。
【0231】
希釈ドロー溶液は、熱交換器724によって88℃の再生ドロー溶液と熱交換されて加熱され、52℃から71℃の温度まで昇温された後、加熱器725に供給されてさらに加熱され、71℃から88℃の温度まで昇温される。希釈ドロー溶液は、分離槽726に供給されて、再生ドロー溶液と水リッチ溶液とに相分離される。
【0232】
再生ドロー溶液は、温度が88℃、流量が100L/hである。水リッチ溶液は、温度が88℃、流量が67L/hである。再生ドロー溶液は、熱交換器724により88℃から63.5℃まで降温された後、熱交換器722により63.5℃から40℃まで降温される。
【0233】
水リッチ溶液は、熱交換器723によって88℃から45℃まで降温された後に、最終処理ユニット727に供給される。最終処理ユニット727においては、67L/hの流量で透過水が得られる。なお、最終処理ユニット727において、透過水から分離されるドロー溶液については、少量であることから考慮していない。以上により、100L/hの流量の濃縮水から、67L/hの流量の透過水が得られる。
【0234】
以上説明した第2装置例によれば、熱交換器722,723によって熱交換を行っていることにより、第1装置例と同様の効果を得ることができる。また、熱交換器724によって、膜モジュール721に供給するための再生ドロー溶液の温度を降温させつつ、分離槽726に供給するための希釈ドロー溶液の温度を昇温させていることにより、加熱器725によって希釈ドロー溶液を加熱する際に昇温させる温度幅をさらに小さくできる。したがって、加熱器725による加熱に必要なエネルギーをさらに低減でき、正浸透装置72において、加熱に消費するエネルギーをより一層低減できる。
【0235】
(第3装置例)
(正浸透装置および正浸透処理工程)
次に、本発明の第3装置例について説明する。
図15は、第3装置例による正浸透装置73を示す。
図15に示すように、第3装置例による正浸透装置73は、内部に半透膜731aが設けられた膜モジュール731、熱交換器732,733,734、加熱器735、分離槽736、および最終処理ユニット737を備えて構成される。正浸透装置73における、膜モジュール731、半透膜731a、熱交換器732,733、加熱器735、分離槽736、および最終処理ユニット737はそれぞれ、第1装置例による正浸透装置71における、膜モジュール711、半透膜711a、熱交換器712,713、加熱器714、分離槽715、および最終処理ユニット716と同様である。
【0236】
第3装置例による正浸透装置73においては、第1装置例と異なり、希釈ドロー溶液の流れ方向に沿った膜モジュール731の下流側で熱交換器733の上流側、かつ再生ドロー溶液の流れ方向に沿った分離槽736の下流側で熱交換器732の上流側に、熱交換器734が設けられている。前段熱交換手段としての熱交換器734によって、前段熱交換工程が行われる。すなわち、第3装置例による正浸透処理工程においては、膜モジュール731から流出した希釈ドロー溶液は、まず、熱交換器734において分離槽736から供給された高温の再生ドロー溶液との間で熱交換が行われて昇温される。続けて、さらに熱交換器733において分離槽736から供給された高温の水リッチ溶液との間で熱交換が行われて昇温される。その後、加熱器735によって、希釈ドロー溶液は、曇点以上100℃以下の温度にまで加熱される。その他の構成は、第1装置例と同様である。
【0237】
(第3装置実施例)
第3装置実施例においては、正浸透装置73に外部から導入された濃縮水に対して熱交換器732によって熱交換を行い、40℃の温度の濃縮水を膜モジュール731に供給する。膜モジュール731によって濃縮された濃縮水は、33L/hの流量で膜モジュール731から排出される。すなわち、膜モジュール731において、67L/hの流量で水の移動が行われる。
【0238】
一方、熱交換器732において濃縮水によって熱交換された40℃の温度の再生ドロー溶液は、膜モジュール731に供給されて希釈され、希釈ドロー溶液として流出する。ここで、再生ドロー溶液の流量は100L/hである。膜モジュール731から流出される希釈ドロー溶液は、温度が40℃、流量が167L/hである。
【0239】
その後、希釈ドロー溶液は、熱交換器734において分離槽736から供給された88℃の再生ドロー溶液と熱交換を行って加熱されて52℃の温度まで昇温された後、熱交換器733に供給される。希釈ドロー溶液は、熱交換器733において分離槽736から供給された88℃の水リッチ溶液と熱交換されて61℃の温度まで昇温された後、加熱器735に供給されてさらに加熱され、61℃から88℃の温度まで昇温される。希釈ドロー溶液は、分離槽736に供給されて、再生ドロー溶液と水リッチ溶液とに相分離される。
【0240】
再生ドロー溶液は、温度が88℃、流量が100L/hである。水リッチ溶液は、温度が88℃、流量が67L/hである。再生ドロー溶液は、熱交換器734により88℃から72.4℃まで降温された後、熱交換器732により72.4℃から40℃まで降温される。
【0241】
水リッチ溶液は、熱交換器733によって88℃から57℃まで降温された後に、最終処理ユニット737に供給される。なお、最終処理ユニット737として膜処理装置を用いる場合などのように、最終処理ユニット737における耐熱性が低い場合には、熱交換器733と最終処理ユニット737との間に、さらに冷却手段(図示せず)を設置することによって、水リッチ溶液を所定の温度まで冷却しても良い。
【0242】
最終処理ユニット737においては、67L/hの流量で透過水が得られる。なお、最終処理ユニット737において、透過水から分離されるドロー溶液については、少量であることから考慮していない。以上により、100L/hの流量の濃縮水から、67L/hの流量の透過水が得られる。
【0243】
以上説明したように第3装置例によれば、熱交換器732,733によって熱交換を行っていることにより、第1装置例と同様の効果を得ることができる。また、熱交換器734によって、膜モジュール731に供給するための再生ドロー溶液の温度を降温させつつ、希釈ドロー溶液の温度を昇温させていることにより、第2装置例と同様の効果を得ることができる。
【0244】
(第4装置例)
(正浸透装置および正浸透処理工程)
次に、本発明の第4装置例による正浸透装置について説明する。
図17は、第4装置例による正浸透装置74を模式的に示すブロック図である。
図17に示すように、第4装置例による正浸透装置74は、半透膜741aを有する膜モジュール741、熱交換器742a,742b,742c、前処理ユニット743、加熱器744、分離槽745、最終処理ユニット746、温度計747a,747b、流量計748、調節弁749a,749b、および制御部750を備えて構成される。正浸透装置74における、膜モジュール741、半透膜741a、熱交換器742a,742b,742c、加熱器744、分離槽745、および最終処理ユニット746はそれぞれ、第2装置例による正浸透装置72における、膜モジュール721、半透膜721a、熱交換器722,723,724、加熱器725、分離槽726、および最終処理ユニット727と同様である。
【0245】
前処理手段としての前処理ユニット743は、含水溶液の流れ方向に沿って、膜モジュール741の上流側に設けられる。前処理ユニット743は、外部から供給される含水溶液を膜モジュール741に導入する前に、含水溶液に含まれる濁質などの不純物を除去する処理を行う。前処理ユニット743としては、砂ろ過や、MF膜またはUF膜などの前処理膜など、従来公知の前処理装置を採用することができる。
【0246】
熱交換器742aは、膜モジュール741に対して含水溶液の流れ方向に沿った上流側、かつ分離槽745から流出されて再利用される再生ドロー溶液の流れ方向に沿った分離槽745の下流側に設けられる。熱交換器742aは、分離槽745から流出される再生ドロー溶液と外部から供給される含水溶液との間で熱交換を行う。
【0247】
含水溶液温度計測手段としての温度計747aは、膜モジュール741に対して含水溶液の流れ方向に沿った少なくとも上流側、第4装置例においては、前処理ユニット743の上流側かつ熱交換器742aの下流側に設けられる。温度計747aは、熱交換器742aによって熱交換された含水溶液の温度を計測し、温度の計測値を制御部750に供給する。
【0248】
ドロー溶液温度計測手段としての温度計747bは、膜モジュール741に対して、再生ドロー溶液の流れ方向に沿った少なくとも上流側、かつ再生ドロー溶液の流れ方向に沿った熱交換器742aの下流側に設けられる。温度計747bは、熱交換器742aによって熱交換された再生ドロー溶液の温度を計測し、温度の計測値を制御部750に供給する。
【0249】
流量計測手段としての流量計748は、膜モジュール741に対して含水溶液の流れ方向に沿った少なくとも上流側に設けられる。流量計748は、膜モジュール741に流入する含水溶液の流量を計測し、流量の計測値を制御部750に供給する。
【0250】
調節弁749aは、膜モジュール741に対して含水溶液の流れ方向に沿った少なくとも上流側、第4装置例においては、前処理ユニット743の上流側かつ熱交換器742aの下流側に設けられる。調節弁749aは、前処理ユニット743に流入する含水溶液の流量、ひいては膜モジュール741に流入する含水溶液の流量を調整するための正浸透流量調節手段である。調節弁749aは、流量計748による含水溶液の流量の計測値や、温度計747a,747bによる温度の計測値に基づいて、制御部750によって開度が制御される。具体的に、前処理ユニット743に流入する含水溶液の流量が一定になって、膜モジュール741に流入する含水溶液の流量が一定になるように、制御部750によって調節弁749aの開度が調整される。
【0251】
熱交換流量調節手段としての調節弁749bは、バイパス手段としてのバイパス配管に設けられている。バイパス配管は、希釈ドロー溶液の流れ方向に沿って熱交換器742cの上流側から下流側に連通させて、希釈ドロー溶液を通過可能に構成されている。これにより、調節弁749bの開度を調整することによって、中間熱交換手段としての熱交換器742cを通過する希釈ドロー溶液の流量を調節可能に構成される。
【0252】
すなわち、調節弁749bの開度が0であって、全閉の場合、膜モジュール741から流出した希釈ドロー溶液は全量、熱交換器742cを通過する。一方、調節弁749bの開度が最大であって全開の場合、膜モジュール741から流出した希釈ドロー溶液は、バイパス配管に流れ得る量だけ調節弁749bを通過する。この場合、熱交換器742cを通過する希釈ドロー溶液の流量は最小になる。このように、調節弁749bの開度に応じて、熱交換器742cにおいて熱交換される希釈ドロー溶液の流量を調整可能に構成される。これにより、調節弁749bの開度に応じて、分離槽745から流出した再生ドロー溶液の温度を調整することができる。
【0253】
再生ドロー溶液の温度の調整は、温度計747bにより計測される温度が略一定、具体的に例えば40℃程度になるように行うことが望ましい。このように、膜モジュール741に供給される再生ドロー溶液の温度を所定温度で略一定に維持するように、調節弁749bの開度を制御することによって,正浸透装置74の全体において、熱交換効率を向上でき、調節弁749aを通じて行われる含水溶液の廃棄量を削減できるので、ブローダウン水の送水に要するエネルギーを低減できる。
【0254】
制御手段としての制御部750は、シーケンサーと呼ばれる機器を用いることができる。物理的には、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)およびインターフェースなどを含む周知のマイクロコンピュータを主体とする電子回路である。制御部750は、RAMに入力されたデータおよびあらかじめROMなどに記憶されているデータを使用して演算を行い、その演算結果を指令信号として出力する。制御部750は、ROMに保持されるプログラムをRAMにロードしてCPUで実行することで、CPUの制御に基づいて正浸透装置74の各種装置を動作させるとともに、記録部としてのRAMやROMにおけるデータの読み出しおよびRAMへの書き込みを行う。制御部750は、温度計747a,747bおよび流量計748から計測値のデータが入力されるとともに、調節弁749a,749bの開度を制御する。
【0255】
次に、第4装置例による正浸透装置74を用いた正浸透処理工程について説明する。第4装置例による正浸透処理工程において、正浸透工程、加熱工程、水分離工程、流出側熱交換工程、および最終処理工程は、第1装置実施例と同様である。
【0256】
(前処理工程)
前処理手段としての前処理ユニット743においては、前処理工程が行われる。すなわち、前処理ユニット743においては、外部から供給される含水溶液に対して、含水溶液に含まれる濁質などの不純物を除去する処理が行われる。前処理工程が行われた含水溶液は、膜モジュール741に供給される。
【0257】
(流入側熱交換工程)
第4装置例においては、流入側熱交換手段としての熱交換器742a、調節弁749b、および制御部750によって、流入側熱交換工程が行われる。すなわち、外部から正浸透装置74に供給される含水溶液は、まず、熱交換器742aに供給される。一方、熱交換器742aには、分離槽745から流出されて熱交換器742cを通過した再生ドロー溶液が供給される。第4装置例においては、熱交換器742aによって、再生ドロー溶液および含水溶液の温度が所定温度、例えば40℃程度に調整される。ここで、第4装置例における、含水溶液および再生ドロー溶液の温度を所定温度に調整する流入側熱交換工程について説明する。
【0258】
まず、温度計747bによって、再生ドロー溶液の流れ方向に沿った熱交換器742aの下流側での温度を計測する。計測された温度の計測値は、制御部750に供給される。一方、温度計747aによって、含水溶液の流れ方向に沿った熱交換器742aの下流側での温度を計測する。計測された温度の計測値は、制御部750に供給される。制御部750は、温度計747a,747bから供給された計測値と、あらかじめ設定された膜モジュール741に供給する際の所定温度とを比較した結果に基づいて、中間熱交換工程を行う希釈ドロー溶液の流量を調節する熱交換流量調節工程を行う。
【0259】
(熱交換流量調節工程および中間熱交換工程)
熱交換器742cにおいては、希釈ドロー溶液と再生ドロー溶液との間で熱交換が行われる中間熱交換工程が行われる。制御部750は、温度計747a,747bから制御部750に供給される温度の計測値に基づいて、調節弁749bを調整する熱交換流量調整工程を行う。制御部750は、必要に応じて、温度計747a,747bから制御部750に供給される温度の計測値に基づいて調節弁749aを調節する。
【0260】
すなわち、制御部750は、温度計747a,747bにより計測される温度が、それぞれ略一定に維持されるように、調節弁749a,749bの開度をそれぞれ制御する。また、調節弁749a,749bの開度は、制御部750によって独立に制御される。以下に、温度計747a,747bが計測する温度を、それぞれ略一定に維持するように、調節弁749a,749bの開度をそれぞれ制御する制御方法の一例について説明する。なお、調節弁749a,749bの制御方法は以下の方法に限定されるものではない。
【0261】
まず、温度計747aによる計測値が所定温度より高い場合、制御部750は、熱交換器742aを通過する再生ドロー溶液の温度を低下させる制御を行う。この場合、制御部750は、調節弁749bの開度を小さくすることによって、バイパス配管を流れる希釈ドロー溶液の流量を低減させる。これに伴って、熱交換器742cを流れる希釈ドロー溶液の流量が増加して、熱交換器742cにおいて再生ドロー溶液から希釈ドロー溶液に移動する熱量が増加する。これにより、熱交換器742aを通過する再生ドロー溶液の温度は、調節弁749bの開度を小さくする前に比して低下して、含水溶液の温度の上昇も抑制される。
【0262】
反対に、温度計747aによる計測値が所定温度より低い場合、制御部750は、熱交換器742aを通過する再生ドロー溶液の温度を上昇させる制御を行う。すなわち、制御部750は、調節弁749bの開度を大きくすることによって、バイパス配管を流れる希釈ドロー溶液の流量を増加させる。これに伴って、熱交換器742cを流れる希釈ドロー溶液の流量が低減して、熱交換器742cにおいて再生ドロー溶液から希釈ドロー溶液に移動する熱量が低減する。これにより、熱交換器742aを通過する再生ドロー溶液の温度は、調節弁749bの開度を小さくする前に比して上昇して、含水溶液の温度も上昇される。
【0263】
また、具体的に、調節弁749bが全閉の場合や比較的絞られている場合、熱交換器742aには、調節弁749bが全開の場合に比して低い温度の再生ドロー溶液が供給される。この際、再生ドロー溶液の温度を低下させるために熱交換器742aに供給される含水溶液は比較的少なくて良いため、前処理ユニット743や膜モジュール741に供給される含水溶液を一定にするための調節弁749aからの廃棄量は低減される。
【0264】
一方、調節弁749bが全開の場合や比較的開けられている場合、熱交換器742aに供給される再生ドロー溶液の温度は、調節弁749bが全閉の場合に比して高くなる。この際、再生ドロー溶液を冷却するとともに、温度計747aにより計測される含水溶液の温度を所定温度に維持するために、熱交換器742aに供給される含水溶液を多くする必要があるため、調節弁749aからの廃棄量は増加する。
【0265】
以上の制御原理に基づいて、温度計747bにより計測される温度を所定温度の例えば40℃に維持するように、調節弁749bの開度を調節するとともに、温度計747aの温度を所定温度の例えば40℃に維持するように、調節弁749bの開度を調節する。ここで、調節弁749bの開度の調整のみで温度計747a,747bの計測値をいずれも一定に維持することが困難な場合には、さらに調節弁749aの開度を調整することによって、温度計747a,747bの計測値をともに一定になるように調整する。
【0266】
以上のようにして、制御部750は、温度計747a,747bの計測値に基づいて調節弁749a,749bの開度を制御することによって、含水溶液の温度と再生ドロー溶液の温度とが互いに略同じ温度で所定温度になるように制御する。熱交換器742aにおいて熱交換が行われて降温された再生ドロー溶液は膜モジュール741の他方の室に供給されるとともに、熱交換が行われて昇温された含水溶液は、前処理ユニット743に供給されて、濁質が除去される。前処理ユニット743から流出した含水溶液は、流量計748を通過して膜モジュール741における一方の室に供給される。膜モジュール741に供給される前の含水溶液が昇温されていることにより、膜モジュール741の透過水量(m/日)を向上させることができる。また、膜モジュール741に供給される含水溶液の温度を一定に維持することによって、膜モジュール741における透過水量を安定化させることができる。
【0267】
(正浸透流量調節工程)
第4装置例においては、さらに、流量計748、調節弁749a、および制御部750によって、膜モジュール741に流入する含水溶液の流量を調節する正浸透流量調節工程が行われる。
【0268】
すなわち、外部から正浸透装置74に供給される含水溶液は、熱交換器742aを介し、前処理ユニット743によって濁質が除去された後、膜モジュール741に供給される。流量計748は、含水溶液の流れ方向に沿って膜モジュール741の上流側の流量を計測して、計測値を制御部750に供給する。
【0269】
制御部750は、流量計748から供給された計測値と、あらかじめ設定された膜モジュール741に供給する際の所定流量とを比較する。計測値が所定流量より大きい場合、制御部750は、膜モジュール741に流入する含水溶液の流量を低減する制御を行う。
【0270】
すなわち、制御部750は、調節弁749aの開度を大きくすることによって、前処理ユニット743の上流側において、外部に廃棄する含水溶液の流量を増加させる。これにより、前処理ユニット743に供給される含水溶液の流量が減少して、膜モジュール741に供給される含水溶液の流量が低減される。反対に、計測値が所定流量より小さい場合、制御部750は、膜モジュール741に流入する含水溶液の流量を増加させる制御を行う。すなわち、制御部750は、調節弁749aの開度を小さくすることによって、前処理ユニット743の上流側において、外部に廃棄する含水溶液の流量を減少させる。これにより、前処理ユニット743に供給される含水溶液の流量が増加して、膜モジュール741に供給される含水溶液の流量が増加される。したがって、膜モジュール741に流入する含水溶液の流量を略一定の所定流量に維持することができる。
【0271】
(第4装置実施例)
次に、以上のように構成された正浸透装置74の第4装置実施例について説明する。なお、第4実施例においては、正浸透装置74を用いて、100L/hの流量のブローダウン水から67L/hの透過水を生成する場合を例に説明する。
【0272】
第4実施例においては、正浸透装置74に外部から導入されたブローダウン水に対して熱交換器742aによって熱交換が行われる。ブローダウン水は、熱交換器742aによって、40℃の温度に昇温されて前処理ユニット743および膜モジュール741に供給される。
【0273】
ここで、含水溶液の流れ方向に沿った前処理ユニット743の上流側、かつ熱交換器742aの下流側の温度に応じて、調節弁749bの開度が制御され、熱交換器742cに通過する希釈ドロー溶液の流量が制御される。これにより、熱交換器742cにおいて再生ドロー溶液から希釈ドロー溶液に移動する熱量が制御されて、熱交換器742aを通過する再生ドロー溶液の温度が制御され、再生ドロー溶液からブローダウン水に移動する熱量が制御される。膜モジュール741によって濃縮されたブローダウン水は、33L/hの流量で膜モジュール741から排出される。すなわち、膜モジュール741において、67L/hの流量で水の移動が行われる。
【0274】
一方、再生ドロー溶液は、熱交換器742aにおけるブローダウン水との熱交換によって温度調整が行われ、40℃の温度に降温される。再生ドロー溶液は、膜モジュール741に供給されて希釈され、希釈ドロー溶液として流出する。ここで、再生ドロー溶液の流量は100L/hである。膜モジュール741から流出される希釈ドロー溶液は、温度が40℃であり、流量が167L/hである。その後、希釈ドロー溶液は、熱交換器742bにおいて温度が88℃の水リッチ溶液と熱交換されて加熱され、40℃から52℃の温度まで昇温される。
【0275】
続いて、希釈ドロー溶液は、熱交換器742cに供給されて熱交換が行われる。熱交換器742cにおいて希釈ドロー溶液は、含水溶液の流れ方向に沿った膜モジュール741の上流側の温度に応じて制御される調節弁749bの開度に対応して温度が制御され、52℃から52℃以上71℃以下の温度に昇温される。その後、加熱器744に供給されてさらに加熱され、88℃の温度まで昇温される。
【0276】
希釈ドロー溶液は、分離槽745に供給されて、再生ドロー溶液と水リッチ溶液とに相分離される。分離槽745から流出される再生ドロー溶液は、温度が88℃、流量が1000L/hである。再生ドロー溶液は、熱交換器742cに供給されて低温の希釈ドロー溶液と熱交換される。熱交換器742cにおける熱交換は、調節弁749bの開度に応じて温度が制御され、88℃から65℃以上88℃未満の温度に降温される。
【0277】
分離槽745から流出される水リッチ溶液は、温度が88℃、流量が67L/hである。水リッチ溶液は、熱交換器742bに供給されて40℃の希釈ドロー溶液と熱交換されて、88℃から45℃まで降温された後に、最終処理ユニット746に供給される。最終処理ユニット746においては、67L/hの流量で透過水が得られる。なお、最終処理ユニット746において、透過水から分離されるドロー溶液については、少量であることから考慮していない。以上により、100L/hの流量のブローダウン水から、67L/hの流量の透過水が得られる。
【0278】
以上説明したように第4装置例によれば、熱交換器742cにおける希釈ドロー溶液の流れ方向に沿った上流側と下流側とをバイパスするバイパス配管の流量を調整する調節弁749bを設け、膜モジュール741に流入する含水溶液の温度に応じて、調節弁749bの開度を制御することによって、含水溶液と再生ドロー溶液との熱交換を制御していることにより、膜モジュール741に供給する含水溶液および再生ドロー溶液を所望の温度に調整している。これにより、膜モジュール741において含水溶液およびドロー溶液の温度を極めて近い温度にできるので、膜モジュール741における処理効率を安定化できる。
【0279】
第4装置例によれば、含水溶液の流れ方向に沿った少なくとも膜モジュール741の上流側に調節弁749aを設け、膜モジュール741の上流側の流量に応じて調節弁749aの開度を調節していることにより、膜モジュール741に供給される含水溶液を所定流量に維持することができる。これにより、膜モジュール741における処理効率をより一層安定化することができる。
【0280】
なお、正浸透装置74において、熱交換器742bを設けない構成も可能である。すなわち、正浸透装置74において、希釈ドロー溶液と水リッチ溶液との間で熱交換を行わない構成も可能である。また、正浸透装置74において、正浸透装置74において、前処理ユニット743を設けない構成や、前処理ユニット743および熱交換器742bをいずれも設けない構成も可能である。この場合、正浸透装置74に導入される前段階において、含水溶液に対して濁質などを除去する前処理が実行される。
【0281】
以上、本発明の実施形態について具体的に説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。例えば、上述の実施形態において挙げた数値はあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる数値を用いても良く、本実施形態による本発明の開示の一部をなす記述および図面により本発明は限定されることはない。
【0282】
例えば、上述した実施形態においては、シリカの凝集剤として、PACを用いているが、PAC以外の凝集剤を用いることも可能であり、反応槽に沈殿したスラッジSを凝集剤として使用することが可能である。具体的に、PAC以外にも、例えば水酸化アルミニウム(Al(OH)3)、硫酸アルミニウム(Al2(SO4)3)などのアルミニウム塩、例えばMg(OH)2、塩化マグネシウム(MgCl2)などのマグネシウム塩、例えば塩化第二鉄(FeCl3)、硫酸第二鉄(Fe2(SO4)3)、ポリシリカ鉄(PSI)などの鉄塩、ならびに例えばポリアクリルアミド系などポリマー系凝集剤から選ばれた少なくとも1種類の凝集剤、または上述した凝集剤を2つ以上組み合わせた凝集剤においても、上述と同様の反応機構を経ることによって、PACの場合と同様の効果を得ることが可能である。
【0283】
上述した第1~第4の実施形態および第1~第4変形例による水処理装置1~8は適宜組み合わせることができる。例えば、第1の実施形態による第1凝集沈殿部10の後段の軟水器30と、第4の実施形態による第2凝集沈殿部50の後段の軟水器30とをともに設けることも可能である。
【符号の説明】
【0284】
1,2,3,4,5,6,7,8 水処理装置
10 第1凝集沈殿部
10A,10B,10C,10D,50A,50B,50C,50D 凝集沈殿部
11 受入槽
12 反応槽
13 pH調整槽
14 ポンプ
15 脱水機
16,17,51,52 シリカ濃度計
18 汚泥貯留槽
19 薬注装置
20 第1ろ過部
30 軟水器
40 低圧逆浸透部
50 第2凝集沈殿部
60 第2ろ過部
70,71,72,73,74 正浸透装置
80 蒸留晶析部
90 高圧逆浸透部
121 第1反応槽
121a,122a 攪拌部
122 第2反応槽
123 沈殿槽
711,721,731,741 膜モジュール
711a,721a,731a,741a 半透膜
712,713,722,723,724,732,733,734,742a,742b,742c 熱交換器
714,725,735,744 加熱器
715,726,736,745 分離槽
716,727,737,746 最終処理ユニット
743 前処理ユニット
747a,747b 温度計
748 流量計
749a,749b 調節弁
750 制御部
S スラッジ
【手続補正書】
【提出日】2022-01-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリカを含有した不純物を含む被処理水から水を抽出する水処理装置であって、
前記被処理水から前記不純物の少なくとも一部を凝集させて除去する複数の凝集沈殿部と、
溶媒として水を含む含水溶液から水を抽出可能な正浸透膜および逆浸透膜の少なくとも一方を有して前記被処理水から透過水を抽出するとともに、前記被処理水から前記透過水が抽出されて得られた濃縮水を排出する複数の水抽出部と、を備え、
前記被処理水の流れ方向に沿って、前記複数の凝集沈殿部のうちの一部である第1凝集沈殿部の後段に前記複数の水抽出部のうちの一部である第1水抽出部と、前記第1水抽出部の後段に前記複数の凝集沈殿部のうちの他部である第2凝集沈殿部と、前記第2凝集沈殿部の後段に前記複数の水抽出部のうちの他部である第2水抽出部とが設けられ、
前記第1凝集沈殿部は、前記被処理水から前記シリカの一部を除去した後、前記被処理水を前記第1水抽出部に供給し、
前記第1水抽出部は、前記シリカの一部が除去された前記被処理水から前記透過水を抽出するとともに前記濃縮水を排出して、前記濃縮水を前記第2凝集沈殿部に供給し、
前記第2凝集沈殿部は、前記濃縮水から前記シリカの残部を除去した後、前記濃縮水を前記第2水抽出部に供給し、
前記第2水抽出部は、前記正浸透膜および前記逆浸透膜の少なくとも一方を有し、前記第2凝集沈殿部から供給された前記濃縮水から透過水を抽出するとともに、前記濃縮水をさらに濃縮した高濃縮水を排出する
ことを特徴とする水処理装置。
【請求項2】
前記被処理水または前記濃縮水のろ過を行うろ過部が複数設けられ、
前記被処理水の流れ方向に沿って、
前記第1凝集沈殿部の後段かつ前記第1水抽出部の前段に、前記複数のろ過部の一部である第1ろ過部が設けられ、
前記第2凝集沈殿部の後段かつ前記第2水抽出部の前段に、前記複数のろ過部の他部である第2ろ過部が設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の水処理装置。
【請求項3】
前記第1ろ過部に供給される前記被処理水、および前記第2ろ過部に供給される前記濃縮水のpHを、4以上8以下に調整可能に構成されている
ことを特徴とする請求項2に記載の水処理装置。
【請求項4】
前記第1水抽出部が、低圧逆浸透膜を有する低圧逆浸透部からなるとともに、前記第2水抽出部が、高圧逆浸透膜を有する高圧逆浸透部または前記正浸透膜を有する正浸透部からなる
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の水処理装置。
【請求項5】
前記第2水抽出部の後段に、前記高濃縮水に対して蒸留処理および晶析処理の少なくとも一方の処理を行って精製水を排出する蒸留晶析部が設けられている
ことを特徴とする請求項1~4いずれか1項に記載の水処理装置。
【請求項6】
前記不純物がカルシウムを含み、
前記被処理水の流れ方向に沿って、
前記第1凝集沈殿部の後段かつ前記第1水抽出部の前段と、前記第2凝集沈殿部の後段かつ前記第2水抽出部の前段との少なくとも一方に、前記カルシウムを除去可能なカルシウム除去部が設けられている
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の水処理装置。
【請求項7】
前記不純物がカルシウムを含み、
前記被処理水の流れ方向に沿った前記第1水抽出部の前段における前記被処理水にカルシウム分散剤を添加可能に構成されている
ことを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の水処理装置。
【請求項8】
前記凝集沈殿部において前記シリカを凝集させる凝集剤が、ポリ塩化アルミニウムまたは塩化アルミニウムと、前記被処理水にポリ塩化アルミニウムまたは塩化アルミニウムが添加されて前記凝集沈殿部に沈殿された凝集沈殿汚泥と、を含む
ことを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の水処理装置。
【請求項9】
前記不純物がマグネシウムを含む
ことを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載の水処理装置。
【請求項10】
シリカを含有した不純物を含む被処理水から水を抽出する水処理方法であって、
前記被処理水に対して、前記不純物に含まれる前記シリカの一部を凝集させて除去する第1凝集沈殿工程と、
前記第1凝集沈殿工程の後に、正浸透膜および逆浸透膜の少なくとも一方によって前記被処理水から透過水を抽出するとともに、前記被処理水から前記透過水を抽出して得られた濃縮水を排出する第1水抽出工程と、
前記第1水抽出工程の後に、前記濃縮水に対して前記不純物に含まれる前記シリカの残部を凝集させて除去する第2凝集沈殿工程と、
前記第2凝集沈殿工程の後に、正浸透膜および逆浸透膜の少なくとも一方によって前記濃縮水から透過水を抽出するとともに、前記濃縮水をさらに濃縮した高濃縮水を排出する第2水抽出工程と、を含む
ことを特徴とする水処理方法。
【請求項11】
前記第1凝集沈殿工程および前記第2凝集沈殿工程において、前記被処理水のpHを、8以上12以下に調整する
ことを特徴とする請求項10に記載の水処理方法。
【請求項12】
前記第1凝集沈殿工程の後かつ前記第1水抽出工程の前に、前記被処理水をろ過する第1ろ過工程と、
前記第2凝集沈殿工程の後かつ前記第2水抽出工程の前に、前記濃縮水をろ過する第2ろ過工程と、を含む
ことを特徴とする請求項10または11に記載の水処理方法。
【請求項13】
前記第1ろ過工程における前記被処理水のpHを4以上8以下に調整し、
前記第2ろ過工程における前記濃縮水のpHを4以上8以下に調整する
ことを特徴とする請求項12に記載の水処理方法。
【請求項14】
前記第1水抽出工程が、低圧逆浸透膜によって前記透過水を抽出する低圧逆浸透工程を含むとともに、前記第2水抽出工程が、高圧逆浸透膜によって前記透過水を抽出する高圧逆浸透工程、または前記正浸透膜によって前記透過水を抽出する正浸透工程を含む
ことを特徴とする請求項10~13のいずれか1項に記載の水処理方法。
【請求項15】
前記第2水抽出工程の後に、前記高濃縮水に対して蒸留処理および晶析処理の少なくとも一方を行って精製水を排出する蒸留晶析工程を含む
ことを特徴とする請求項10~14のいずれか1項に記載の水処理方法。
【請求項16】
前記不純物がカルシウムを含み、
前記第1凝集沈殿工程の後かつ前記第1水抽出工程の前と、前記第2凝集沈殿工程の後かつ前記第2水抽出工程の前との少なくとも一方において、前記カルシウムを除去するカルシウム除去工程を含む
ことを特徴とする請求項10~15のいずれか1項に記載の水処理方法。
【請求項17】
前記不純物がカルシウムを含み、
前記第1水抽出工程の前に、前記被処理水にカルシウム分散剤を添加するカルシウム分散工程を含む
ことを特徴とする請求項10~16のいずれか1項に記載の水処理方法。
【請求項18】
前記第1凝集沈殿工程および前記第2凝集沈殿工程において前記シリカを凝集させる凝集剤が、ポリ塩化アルミニウムまたは塩化アルミニウムと、前記被処理水にポリ塩化アルミニウムまたは塩化アルミニウムが添加されて前記第1凝集沈殿工程および前記第2凝集沈殿工程の少なくとも一方において凝集沈殿された凝集沈殿汚泥と、を含む
ことを特徴とする請求項10~17のいずれか1項に記載の水処理方法。
【請求項19】
前記不純物がマグネシウムを含む
ことを特徴とする請求項10~18のいずれか1項に記載の水処理方法。
【手続補正書】
【提出日】2022-06-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリカを含有した不純物を含む被処理水から水を抽出する水処理装置であって、
前記被処理水から前記不純物の少なくとも一部を凝集させて除去する複数の凝集沈殿部と、
溶媒として水を含む含水溶液から水を抽出可能な正浸透膜および逆浸透膜の少なくとも一方を有して前記被処理水から透過水を抽出するとともに、前記被処理水から前記透過水が抽出されて得られた濃縮水を排出する複数の水抽出部と、を備え、
前記被処理水の流れ方向に沿って、前記複数の凝集沈殿部のうちの一部である第1凝集沈殿部の後段に前記複数の水抽出部のうちの一部である第1水抽出部と、前記第1水抽出部の後段に前記複数の凝集沈殿部のうちの他部である第2凝集沈殿部と、前記第2凝集沈殿部の後段に前記複数の水抽出部のうちの他部である第2水抽出部とが設けられ、
前記第1凝集沈殿部は、pHが8以上12以下に調整された前記被処理水から前記シリカの一部を除去した後、前記被処理水を前記第1水抽出部に供給し、
前記第1水抽出部は、前記シリカの一部が除去された前記被処理水から前記透過水を抽出するとともに前記濃縮水を排出して、前記濃縮水を前記第2凝集沈殿部に供給し、
前記第2凝集沈殿部は、pHが8以上12以下に調整された前記濃縮水から前記シリカの残部を除去した後、前記濃縮水を前記第2水抽出部に供給し、
前記第2水抽出部は、前記正浸透膜および前記逆浸透膜の少なくとも一方を有し、前記第2凝集沈殿部から供給された前記濃縮水から透過水を抽出するとともに、前記濃縮水をさらに濃縮した高濃縮水を排出する
ことを特徴とする水処理装置。
【請求項2】
前記被処理水または前記濃縮水のろ過を行うろ過部が複数設けられ、
前記被処理水の流れ方向に沿って、
前記第1凝集沈殿部の後段かつ前記第1水抽出部の前段に、前記複数のろ過部の一部である第1ろ過部が設けられ、
前記第2凝集沈殿部の後段かつ前記第2水抽出部の前段に、前記複数のろ過部の他部である第2ろ過部が設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の水処理装置。
【請求項3】
前記第1ろ過部に供給される前記被処理水、および前記第2ろ過部に供給される前記濃縮水のpHを、4以上8以下に調整可能に構成されている
ことを特徴とする請求項2に記載の水処理装置。
【請求項4】
前記第1水抽出部が、低圧逆浸透膜を有する低圧逆浸透部からなるとともに、前記第2水抽出部が、高圧逆浸透膜を有する高圧逆浸透部または前記正浸透膜を有する正浸透部からなる
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の水処理装置。
【請求項5】
前記第2水抽出部の後段に、前記高濃縮水に対して蒸留処理および晶析処理の少なくとも一方の処理を行って精製水を排出する蒸留晶析部が設けられている
ことを特徴とする請求項1~4いずれか1項に記載の水処理装置。
【請求項6】
前記不純物がカルシウムを含み、
前記被処理水の流れ方向に沿って、
前記第1凝集沈殿部の後段かつ前記第1水抽出部の前段と、前記第2凝集沈殿部の後段かつ前記第2水抽出部の前段との少なくとも一方に、前記カルシウムを除去可能なカルシウム除去部が設けられている
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の水処理装置。
【請求項7】
前記不純物がカルシウムを含み、
前記被処理水の流れ方向に沿った前記第1水抽出部の前段における前記被処理水にカルシウム分散剤を添加可能に構成されている
ことを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の水処理装置。
【請求項8】
前記凝集沈殿部において前記シリカを凝集させる凝集剤が、ポリ塩化アルミニウムまたは塩化アルミニウムと、前記被処理水にポリ塩化アルミニウムまたは塩化アルミニウムが添加されて前記凝集沈殿部に沈殿された凝集沈殿汚泥と、を含み、
前記凝集沈殿汚泥を前記凝集沈殿部から引き抜いて再生処理を行うことなく前記凝集沈殿部に添加する
ことを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の水処理装置。
【請求項9】
前記不純物がマグネシウムを含む
ことを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載の水処理装置。
【請求項10】
シリカを含有した不純物を含む被処理水から水を抽出する水処理方法であって、
前記被処理水に対して、pHを8以上12以下に調整し、前記不純物に含まれる前記シリカの一部を凝集させて除去する第1凝集沈殿工程と、
前記第1凝集沈殿工程の後に、正浸透膜および逆浸透膜の少なくとも一方によって前記被処理水から透過水を抽出するとともに、前記被処理水から前記透過水を抽出して得られた濃縮水を排出する第1水抽出工程と、
前記第1水抽出工程の後に、前記濃縮水に対して前記不純物に含まれる前記シリカの残部を凝集させて除去する第2凝集沈殿工程と、
前記第2凝集沈殿工程の後に、正浸透膜および逆浸透膜の少なくとも一方によって前記濃縮水から透過水を抽出するとともに、前記濃縮水をさらに濃縮した高濃縮水を排出する第2水抽出工程と、を含む
ことを特徴とする水処理方法。
【請求項11】
前記第2凝集沈殿工程において、前記濃縮水のpHを、8以上12以下に調整する
ことを特徴とする請求項10に記載の水処理方法。
【請求項12】
前記第1凝集沈殿工程の後かつ前記第1水抽出工程の前に、前記被処理水をろ過する第1ろ過工程と、
前記第2凝集沈殿工程の後かつ前記第2水抽出工程の前に、前記濃縮水をろ過する第2ろ過工程と、を含む
ことを特徴とする請求項10または11に記載の水処理方法。
【請求項13】
前記第1ろ過工程における前記被処理水のpHを4以上8以下に調整し、
前記第2ろ過工程における前記濃縮水のpHを4以上8以下に調整する
ことを特徴とする請求項12に記載の水処理方法。
【請求項14】
前記第1水抽出工程が、低圧逆浸透膜によって前記透過水を抽出する低圧逆浸透工程を含むとともに、前記第2水抽出工程が、高圧逆浸透膜によって前記透過水を抽出する高圧逆浸透工程、または前記正浸透膜によって前記透過水を抽出する正浸透工程を含む
ことを特徴とする請求項10~13のいずれか1項に記載の水処理方法。
【請求項15】
前記第2水抽出工程の後に、前記高濃縮水に対して蒸留処理および晶析処理の少なくとも一方を行って精製水を排出する蒸留晶析工程を含む
ことを特徴とする請求項10~14のいずれか1項に記載の水処理方法。
【請求項16】
前記不純物がカルシウムを含み、
前記第1凝集沈殿工程の後かつ前記第1水抽出工程の前と、前記第2凝集沈殿工程の後かつ前記第2水抽出工程の前との少なくとも一方において、前記カルシウムを除去するカルシウム除去工程を含む
ことを特徴とする請求項10~15のいずれか1項に記載の水処理方法。
【請求項17】
前記不純物がカルシウムを含み、
前記第1水抽出工程の前に、前記被処理水にカルシウム分散剤を添加するカルシウム分散工程を含む
ことを特徴とする請求項10~16のいずれか1項に記載の水処理方法。
【請求項18】
前記第1凝集沈殿工程および前記第2凝集沈殿工程において前記シリカを凝集させる凝集剤が、ポリ塩化アルミニウムまたは塩化アルミニウムと、前記被処理水にポリ塩化アルミニウムまたは塩化アルミニウムが添加されて前記第1凝集沈殿工程および前記第2凝集沈殿工程の少なくとも一方において凝集沈殿された凝集沈殿汚泥と、を含み、
前記凝集沈殿汚泥を前記第1凝集沈殿工程および前記第2凝集沈殿工程の少なくとも一方を行う凝集沈殿部から引き抜いて再生処理を行うことなく前記凝集沈殿部に添加する
ことを特徴とする請求項10~17のいずれか1項に記載の水処理方法。
【請求項19】
前記不純物がマグネシウムを含む
ことを特徴とする請求項10~18のいずれか1項に記載の水処理方法。