(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022108720
(43)【公開日】2022-07-26
(54)【発明の名称】金属滴吐出三次元(3D)印刷物体プリンタ及び金属滴吐出3D物体プリンタの印刷を準備する方法
(51)【国際特許分類】
B22F 12/50 20210101AFI20220719BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20220719BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20220719BHJP
B22F 10/25 20210101ALI20220719BHJP
【FI】
B22F12/50
B33Y10/00
B33Y30/00
B22F10/25
【審査請求】未請求
【請求項の数】39
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021214100
(22)【出願日】2021-12-28
(31)【優先権主張番号】17/147,773
(32)【優先日】2021-01-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】596170170
【氏名又は名称】ゼロックス コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(72)【発明者】
【氏名】ジェイソン・エム.・ルフェーヴル
(72)【発明者】
【氏名】ジョセフ・シー.・シェフリン
(72)【発明者】
【氏名】ポール・ジェイ.・マッコンビル
(72)【発明者】
【氏名】ジョシュア・ヒルトン
【テーマコード(参考)】
4K018
【Fターム(参考)】
4K018AA14
(57)【要約】 (修正有)
【課題】金属滴吐出三次元(3D)印刷物体プリンタ及び金属滴吐出3D物体プリンタの印刷を準備する方法を提供する。
【解決手段】三次元(3D)金属物体製造装置には、プリンタが保守された後の始動手順に必要な時間を短縮するために、取り外し可能な容器104が装備されている。バルクワイヤ120が容器に挿入されて印刷動作が始まる前に、取り外し可能な容器に固体金属が充填され、その溶融温度まで加熱される。取り外し可能な容器内の固体金属の溶融は、プリンタの動作に好適な容量の溶融金属を生成するのに十分な長さのバルクワイヤの溶融にあまり時間を必要としない。取り外し可能な容器内の固体金属は、金属ペレット、金属粉末、又は固体金属インサートであり得る。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属滴吐出積層造形装置を動作させるための準備の方法であって、
取り外し可能な容器の収容部に固体金属を配置することと、
前記取り外し可能な容器を前記金属滴吐出積層造形装置に設置することと、
前記金属滴吐出積層造形装置内のヒータを、前記取り外し可能な容器内で前記固体金属を溶融させる温度まで作動させることと、を含む、方法。
【請求項2】
前記ヒータの前記作動によって生じる前記温度は、前記取り外し可能な容器の前記収容部内のアルミニウムを溶融させる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ヒータの前記作動によって生じる前記温度は、約800℃~約850℃の範囲である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
固体アルミニウムが前記収容部内に配置される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
粉末固体アルミニウムが前記収容部内に配置される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
ペレット化されたアルミニウムが前記収容部内に配置される、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記収容部内に嵌合するように構成された固体アルミニウム部材が、前記収容部内に配置され、前記固体アルミニウム部材は、第1の端部及び第2の端部を有し、前記方法は、
前記固体アルミニウム部材の前記第1の端部を前記取り外し可能な容器の第1のハウジングに挿入することと、
前記固体アルミニウム部材の前記第2の端部を前記取り外し可能な容器の第2のハウジングに挿入することと、
前記第1のハウジング及び前記第2のハウジングを一緒に固定して、前記収容部を有する前記取り外し可能な容器を形成することと、を更に含む、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
酸化物が前記固体アルミニウム部材上に形成されることを防止するように構成されたコンテナから、前記固体アルミニウム部材を除去することを更に含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
アルミニウムワイヤの供給部からアルミニウムワイヤの端部を延ばすことと、
前記固体アルミニウム部材が前記取り外し可能な容器の前記収容部内に配置された後、前記延ばしたアルミニウムワイヤの前記端部を前記第2のハウジングの開口部に通して挿入することと、を更に含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記取り外し可能な容器の前記設置は、
前記取り外し可能な容器の一部分を、電線のコイル内の円筒形開口部内に位置付けることを更に含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第2のハウジング内のノズルから溶融アルミニウム金属の液滴を吐出するように、前記電線のコイルに電流を選択的に接続することを更に含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記固体金属は粉末金属である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記固体金属はペレット化された金属である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記固体金属は、前記収容部内に嵌合するように構成された固体金属部材であり、前記固体金属部材は、第1の端部及び第2の端部を有し、前記方法は、
前記固体金属部材の前記第1の端部を前記取り外し可能な容器の第1のハウジングに挿入することと、
前記固体金属部材の前記第2の端部を前記取り外し可能な容器の第2のハウジングに挿入することと、
前記第1のハウジング及び第2のハウジングを一緒に固定して、前記収容部を有する前記取り外し可能な容器を形成することと、を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
酸化物が前記固体アルミニウム部材上に形成されることを防止するように構成されたコンテナから、前記固体金属部材を除去することを更に含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
バルク金属ワイヤの供給部からバルク金属ワイヤの端部を延ばすことと、
前記固体金属部材が前記取り外し可能な容器の前記収容部内に配置された後、前記延ばしたバルク金属ワイヤの前記端部を前記第2のハウジングの開口部に通して挿入することと、を更に含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記取り外し可能な容器の前記設置は、
前記取り外し可能な容器の一部分を、電線のコイル内の円筒形開口部内に位置付けることを更に含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記第2のハウジングのノズルから溶融金属の液滴を吐出するように、前記電線のコイルに電流を選択的に接続することを更に含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記固体金属部材は固体アルミニウム部材である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記ヒータの前記作動によって生じる前記温度は、前記固体アルミニウム部材が前記取り外し可能な容器の前記収容部内に配置された後、前記固体アルミニウム部材を溶融させるのに十分である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記ヒータの前記作動によって生じる前記温度は、約800℃~約850℃の範囲である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記第1のハウジング及び前記第2のハウジングを一緒に固定して前記取り外し可能な容器を形成する前に、前記第2のハウジングの前記ノズルから固体金属滴を除去することであって、前記ノズルにおける前記固体金属滴は、前記金属滴吐出積層造形装置の以前の動作によって前記ノズルに残されている、ことを更に含む、請求項14に記載の方法。
【請求項23】
前記ノズルから前記固体金属滴を除去する前に、前記第2のハウジングを、前記第2のハウジングの前記ノズルで前記固体金属滴を溶融させるのに十分な温度まで加熱することを更に含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記第2のハウジングに化学物質を適用して、前記第2のハウジングの前記ノズルから前記固体金属滴を除去することを更に含む、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記ノズルの前記固体金属滴を研磨部材と接触させて、前記第2のハウジングの前記ノズルから前記固体金属滴を除去することを更に含む、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
金属滴吐出装置であって、
取り外し可能な容器と、前記可動容器内の収容部とを有する吐出装置ヘッドと、
前記取り外し可能な容器が前記吐出装置ヘッド内にある間に、前記取り外し可能な容器の前記収容部内で固体金属を溶融させるのに十分な温度まで、前記取り外し可能な容器を加熱するように構成されたヒータと、
前記吐出装置ヘッドの反対側に位置付けられたプラットフォームと、
前記プラットフォーム及び前記吐出装置ヘッドのうちの少なくとも1つに動作可能に接続された少なくとも1つのアクチュエータであって、前記少なくとも1つのアクチュエータは、前記プラットフォーム及び前記吐出装置ヘッドのうちの前記少なくとも1つを互いに対して移動させるように構成されている、少なくとも1つのアクチュエータと、
前記ヒータ、前記吐出装置ヘッド、及び前記少なくとも1つのアクチュエータに動作可能に接続されたコントローラであって、前記コントローラは、
前記取り外し可能な容器の前記収容部内で固体金属を溶融させるように、前記ヒータを動作させ、
前記プラットフォームに向かって溶融金属の液滴を吐出するように、前記吐出装置ヘッドを動作させ、
前記吐出装置ヘッドが前記プラットフォームに向かって溶融金属滴を吐出している間、前記吐出装置ヘッド及び前記プラットフォームを互いに対して移動させるように、前記少なくとも1つのアクチュエータを動作させるように構成されている、コントローラと、を備える、金属滴吐出装置。
【請求項27】
前記ヒータは、前記ヒータと前記取り外し可能な容器との間に体積を形成するように構成されており、
ガスの供給部が前記ヒータと前記取り外し可能な容器との間の前記体積に動作可能に接続されるため、前記ガスの供給部からのガスは、前記体積を通り、前記取り外し可能な容器内のノズルを経由して流れて、前記溶融金属の液滴が前記プラットフォームに向かって空中にある間、前記溶融金属の液滴を周囲空気から絶縁する、請求項26に記載の金属滴吐出装置。
【請求項28】
前記ヒータに隣接し、前記ヒータの外側にあるように構成された電線のコイルと、
電流源と、
前記電線のコイルと前記電流源との間に動作可能に接続されたスイッチと、
前記電線のコイルを前記電流源に選択的に接続して、前記取り外し可能な容器の前記ノズルから液滴を吐出するように、前記スイッチを動作させるように更に構成されている前記コントローラと、を更に備える、請求項27に記載の金属滴吐出装置。
【請求項29】
前記吐出装置ヘッドは、
チャンバを囲む少なくとも1つの壁であって、前記チャンバは、前記電線のコイル、前記ヒータ、及び前記取り外し可能な容器の周りに体積を形成するように構成されており、前記少なくとも1つの壁は、流体を受容するための第1のポートと、前記流体の出口となる第2のポートとを有する、少なくとも1つの壁と、
流体の供給部と、
前記流体の供給部と前記少なくとも1つの壁の前記第1のポートとの間に動作可能に接続されたポンプであって、前記ポンプは、流体が前記第2のポートを通って前記チャンバを出る前に、前記流体が前記チャンバを通って移動するように、前記流体を前記流体の供給部から前記第1のポートに移動させるように構成されている、ポンプと、
前記第2のポートに動作可能に接続された熱交換器であって、前記熱交換器は、前記ポンプが前記第1のポートに流体を移動させることに応答して前記チャンバから前記流体を受容し、前記熱交換器は、前記第2のポートを通過する前記流体から熱を除去するように構成されている、熱交換器と、を更に備える、請求項28に記載の金属滴吐出装置。
【請求項30】
前記熱交換器は、前記熱交換器によって前記熱が前記流体から除去された後に、前記流体を前記流体の供給部に戻すために、前記流体の供給部に動作可能に接続されている、請求項29に記載の金属滴吐出装置。
【請求項31】
前記取り外し可能な容器は、
第1のハウジングと、
第2のハウジングとを更に含み、前記第1のハウジング及び前記第2のハウジングは、前記取り外し可能な容器を選択的に形成するために、互いに分離し、固定するために構成されている、請求項30に記載の金属滴吐出装置。
【請求項32】
前記第1のハウジングは、
前記第2のハウジングと一緒に固定されて前記取り外し可能な容器を形成するように構成されている前記第1のハウジングの端部の反対側にある前記第1のハウジングの端部の第1の開口部であって、前記第1の開口部は、バルク金属ワイヤの供給部からバルク金属ワイヤを受容し、前記バルク金属ワイヤを前記取り外し可能な容器の前記収容部内へと方向付けるように構成されている、第1の開口部を更に含む、請求項31に記載の金属滴吐出装置。
【請求項33】
前記第2のハウジングは、前記第1のハウジングに固定されるように構成されている前記第2のハウジングの別の端部の反対側にある前記第2のハウジングの端部にノズルを含む、請求項32に記載の金属滴吐出装置。
【請求項34】
前記取り外し可能な容器内の前記収容部は、前記第1のハウジング内においては細長く、丸みを帯びており、前記第2のハウジング内においては球根形状である、請求項33に記載の金属滴吐出装置。
【請求項35】
前記第2のハウジング内の前記収容部の前記球根形状部分は、前記第1のハウジング内の前記収容部の前記細長く、丸みを帯びた形状部分よりも長さが短い、請求項34に記載の金属滴吐出装置。
【請求項36】
前記第2のハウジング内の前記収容部の前記球根形状部分の最も狭い部分が、前記第2のハウジング内の前記ノズルに隣接している、請求項35に記載の金属滴吐出装置。
【請求項37】
前記第1のハウジング及び前記第2のハウジングは、高温セラミック材料で形成されている、請求項36に記載の金属滴吐出装置。
【請求項38】
前記第1のハウジングは、第1の高温セラミック材料で形成され、前記第2のハウジングは、前記第1の高温材料とは異なる第2の高温セラミック材料で形成されている、請求項37に記載の金属滴吐出装置。
【請求項39】
前記第1の高温セラミック材料は窒化ホウ素であり、前記第2の高温セラミック材料はグラファイトである、請求項38に記載の金属滴吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本開示は、2021年1月13日に出願された「A Removable Vessel And Metal Insert For Preparing A Metal Drop Ejecting Three-Dimensional(3D)Object Printer For Printing」と題する米国特許出願第17/147810号を相互参照しており、その全体が本同時継続出願に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本開示は、溶融金属滴を吐出して物体を形成する三次元(3D)物体プリンタに関し、より具体的には、物体印刷動作のためのそのようなプリンタの準備に関する。
【背景技術】
【0003】
積層造形(additive manufacturing)としても知られる三次元印刷は、事実上あらゆる形状のデジタルモデルから三次元の固体物体を作製するプロセスである。多くの三次元印刷技術は、積層造形デバイスが、前に堆積された層の上に部品の連続層を形成する加法プロセスを使用する。これらの技術のいくつかは、フォトポリマー又はエラストマーなどの紫外線硬化材料を排出する吐出装置を使用する。プリンタは、典型的には、様々な形状及び構造を有する三次元被印刷物体を形成する可塑性材料の連続層を形成するように、1つ以上の押出し機を動作させる。三次元被印刷物体の各層が形成された後、可塑性材料は、紫外線硬化され、固まり、その層を三次元被印刷物体の下地層に接着する。この積層造形方法は、ほとんどが切断又はドリル加工などの減法プロセスによる加工物からの材料の除去に依存する従来の物体形成技術と区別可能である。
【0004】
最近、1つ以上の吐出装置から、溶解した金属の液滴を吐出して3D物体を形成するいくつかの3D物体プリンタが開発されている。これらのプリンタは、ワイヤのロール、又はペレットなどの固体金属源を有し、固体金属源は、固体金属が溶融される加熱チャンバの中に送り込まれ、溶融金属は、吐出装置のチャンバの中に流入する。チャンバは、非絶縁電線が巻き付けられる非導電性材料で作製されている。電流が導体を通過することにより、電磁場を生成し、その電磁場により、チャンバのノズルにおいて溶解した金属の三日月形状がチャンバ内の溶解した金属から分離し、ノズルから推進する。吐出装置のノズルの反対側にあるプラットフォームは、コントローラ動作するアクチュエータによって、プラットフォームの平面に平行なX-Y平面内で移動されて、吐出された金属滴がプラットフォーム上に物体の金属層を形成し、別のアクチュエータは、コントローラによって動作されて、吐出装置又はプラットフォームの位置を垂直方向又はZ方向に変化させる、吐出装置と、形成される金属物体の最上層との間の距離を一定に維持する。このタイプの金属滴吐出プリンタは、磁気流体力学(MHD)プリンタとしても知られている。
【0005】
MHDプリンタに使用される吐出装置は、プリンタの動作状態を維持するために周期的な交換を必要とする内部構成要素を含む。いくつかの構成要素は、およそ8時間毎に交換を必要とする。構成要素が交換された後、プリンタは、再び物体製造に使用可能になる前に、始動プロセスを経る必要がある。この始動プロセスの一部分は、吐出装置への溶融金属の充填である。上述のワイヤ供給MHDプリンタでは、プロセスのこの部分は、十分なワイヤを吐出装置の加熱部分に供給し、溶融させる必要があるため、時間がかかる。いくつかのMHDプリンタでは、吐出装置に充填するのに十分なワイヤを溶融させるために、10分以上必要とされる場合がある。始動プロセスの他の態様は、実行するために約20分を必要とする。このようにして、全体的な始動プロセスには、30分以上かかる場合があり、その1/3の時間が吐出装置への溶融金属の補充によって消費される。
【0006】
吐出装置に充填するためのワイヤの溶融に必要な時間は、ワイヤが吐出装置の加熱チャンバに供給される速度を単純に増加させることでは短縮することはできない。供給速度を増加させると、ワイヤはチャンバ内に存在する溶融金属のレベルより上の壁にぶつかるため、ワイヤの先端が加熱チャンバの壁に衝突する。吐出装置は、典型的には、高温セラミック材料で作製され、これは、固体ワイヤ先端部の衝突に敏感であり、この接触によって損傷する場合がある。加熱チャンバを損傷させずに、始動時にMHDプリンタの吐出装置に充填するのにかかる時間を短縮することができることが有益であろう。
【発明の概要】
【0007】
3D金属物体プリンタを動作させる新しい方法は、加熱チャンバを損傷させることなく、MHDプリンタの吐出装置の充填に必要な時間を短縮する。この方法は、固体金属を取り外し可能な容器の収容部に配置することと、取り外し可能な容器を金属滴吐出積層造形装置に設置することと、金属滴吐出積層造形装置内のヒータを、取り外し可能な容器内で固体金属を溶融させる温度に合わせて作動させることと、を含む。
【0008】
新しい3D金属物体プリンタは、加熱チャンバを損傷させることなく、MHDプリンタの吐出装置の充填に必要な時間を短縮する。3D金属物体プリンタは、取り外し可能な容器と、その可動容器内に収容部とを有する吐出装置ヘッドと、取り外し可能な容器が取り外し可能な容器の収容部内で固体金属を溶融させるのに十分な温度まで加熱された吐出装置内にある間、取り外し可能な容器を加熱するように構成されたヒータと、吐出装置ヘッドと反対側に位置付けられたプラットフォームと、プラットフォーム及び吐出装置ヘッドのうちの少なくとも1つに動作可能に接続された少なくとも1つのアクチュエータであって、少なくとも1つのアクチュエータは、プラットフォーム及び吐出装置ヘッドのうちの少なくとも1つを互いに対して移動させるように構成されている、少なくとも1つのアクチュエータと、ヒータ、吐出装置ヘッド、及び少なくとも1つのアクチュエータに動作可能に接続されたコントローラと、を含む。コントローラは、取り外し可能な容器の収容部内の固体金属を溶融させるようにヒータを動作させ、溶融金属の液滴をプラットフォームに向けて吐出するように吐出装置ヘッドを動作させ、吐出装置ヘッドが溶融金属滴をプラットフォームに向けて吐出している間、吐出装置ヘッド及びプラットフォームを互いに対して移動させるように少なくとも1つのアクチュエータを動作させるように構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
3D金属物体プリンタを動作させる方法と、金属インサートを受容するために構成された新しい取り外し可能な容器を有し、加熱チャンバを損傷させることなく、MHDプリンタの吐出装置に充填するのに必要な時間を短縮する、新しい3D金属物体プリンタとの前述の態様及び他の特徴は、添付の図面に関連して、以下の説明において明らかにされる。
【0010】
【
図1】加熱チャンバを損傷させることなく、MHDプリンタの吐出装置に充填するのに必要な時間を短縮する、新しい3D金属物体プリンタを示す。
【0011】
【
図2A】
図1の3D金属物体プリンタで使用される2のパーツからなる取り外し可能な容器の側面図であり、加熱チャンバに損傷を与えることなく、MHDプリンタの吐出装置に充填するのに必要な時間を短縮するために、取り外し可能な容器に使用される金属インサートが示されている。
【0012】
【
図2B】インサートの一端が、
図2Aに示された取り外し可能な容器の上部ハウジングに設置された後の金属インサートを示す側面図である。
【0013】
【
図2C】組み立てられた取り外し可能な容器の側面図であり、設置された金属インサートが示されている。
【0014】
【
図2D】組み立てられた取り外し可能な容器の端面図であり、設置された金属インサートが示されている。
【0015】
【
図2E】
図1のプリンタと共に使用するための単一部品からなる取り外し可能な容器の代替の実施形態の断面図である。
【0016】
【
図3】
図2A~
図2Dに示された取り外し可能な容器の2部品からなる実施形態と共に使用するための金属インサートの側面図である。
【0017】
【
図4】
図1の3D金属物体プリンタの取り外し可能な容器及び金属インサートを使用して、3D金属物体プリンタの始動プロセス中に、取り外し可能な容器に溶融金属を充填するプロセスのフロー図である。
【0018】
【
図5】
図2Aの取り外し可能な容器を再調整するプロセスのフロー図である。
【0019】
【
図6A】
図5のプロセスで使用され得る熱式再調整ステーションの図である。
【0020】
【
図6B】
図5のプロセスで使用され得る化学式再調整ステーションの図である。
【0021】
【
図6C】
図5のプロセスで使用され得る研磨式再調整ステーションの図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本明細書に開示された3D金属物体プリンタ及びその動作のための環境、並びにプリンタ及びその動作の詳細の一般的な理解のために、図面を参照する。図面では、同様の参照番号は同様の要素を表す。
【0023】
図1は、吐出装置ヘッドの加熱チャンバを損傷させることなく、MHDプリンタの吐出装置に充填するのに必要な時間を短縮する、新しい3D金属物体プリンタ100の実施形態を示す。
図1のプリンタでは、溶融バルク金属の液滴は、単一のノズル108を有する取り外し可能な容器104から吐出され、ノズルからの液滴が、プラットフォーム112上に物体の層のためのスワスを形成する。本文書で使用されるとき、「取り外し可能な容器」という用語は、液体又は固体物質を保持するように構成された収容部を有する中空コンテナを意味し、コンテナは全体として、3D金属物体プリンタにおける設置及び取り外し可能に構成されている。本文書で使用されるとき、「バルク金属」という用語は、一般に利用可能な標準規格のワイヤ、又はマクロサイズの比率のペレットなどの、集合形態で入手可能な導電性金属を意味する。金属ワイヤ120などのバルク金属源116は、吐出装置ヘッド140内の上部ハウジング122を通って延在するワイヤガイド124に供給され、取り外し可能な容器104内で溶融されて、吐出装置ヘッド140のベースプレート114内のオリフィス110を通ってノズル108から吐出される溶融金属を提供する。本文書で使用されるとき、「ノズル」という用語は、取り外し可能な容器内の収容部からの溶融金属滴の圧出のために構成された取り外し可能な容器内のオリフィスを意味する。本文書で使用されるとき、「吐出装置ヘッド」という用語は、金属物体の製造のための溶融金属滴の溶融、吐出、及び吐出の調整を行う3D金属物体プリンタのハウジング及び構成要素を意味する。取り外し可能な容器104内の溶融金属の体積のレベルは、取り外し可能な容器の上方レベル118に維持される。取り外し可能な容器104がヒータ160内へと摺動し、ヒータの内径が取り外し可能な容器に接触し、取り外し可能な容器の収容部内の固体金属を、固体金属を溶融させるのに十分な温度まで加熱することが可能になる。本文書で使用されるとき、「固体金属」という用語は、元素の周期表で定義されている金属、又は液体若しくは気体ではなく固体の形態でこれらの金属によって形成される合金を意味する。ヒータは、取り外し可能な容器から分離されて、ヒータと取り外し可能な容器104との間に体積を形成する。不活性ガス供給部128は、ガス供給管132を通して吐出装置ヘッドにアルゴンなどの不活性ガスの圧力調整された供給源を提供する。ガスは、ヒータと取り外し可能な容器との間の体積を通って流れ、ノズル108の周りの吐出装置ヘッド及びベースプレート114内のオリフィス110から出ていく。ノズルに近接するこの不活性ガスの流れは、溶融金属の吐出された液滴をベースプレート114の周囲空気から絶縁して、吐出された液滴の飛行中に金属酸化物が形成されるのを防止する。
【0024】
吐出装置ヘッド140は、プラットフォーム112に対する吐出装置ヘッドの垂直移動に対応するように、z軸軌道内に移動可能に装着される。1つ以上のアクチュエータ144は、吐出装置ヘッドをZ軸に沿って移動させるために吐出装置ヘッド140に動作可能に接続され、プラットフォームを吐出装置ヘッド140の下のX-Y平面内で移動させるために、プラットフォーム112に動作可能に接続される。アクチュエータ144は、吐出装置ヘッド140のベースプレート114内のオリフィス110とプラットフォーム112上の物体の最上面との間の適切な距離を維持するように、コントローラ148によって動作される。
【0025】
溶融金属の液滴がプラットフォーム112に向かって吐出されるときに、X-Y平面内でプラットフォーム112を移動させることにより、形成される物体上に溶融金属滴のスワスが形成される。コントローラ148はまた、アクチュエータ144を動作させ、吐出装置ヘッド140と、基材上に最も近時に形成された層との間の垂直距離を調節して、物体上の他の構造の形成を容易にする。溶融金属3D物体プリンタ100は、垂直方向に動作されるものとして
図1に図示してあるが、他の代替的な配向を使用してもよい。また、
図1に示す実施形態は、X-Y平面で移動するプラットフォームを有し、吐出装置ヘッドはZ軸に沿って移動するが、他の配置も可能である。例えば、アクチュエータ144は、吐出装置ヘッド140をX-Y平面内で、Z軸に沿って移動させるように構成されることも、又はX-Y平面及びZ軸の両方でプラットフォーム112を移動させるように構成されることもできる。
【0026】
コントローラ148は、プログラムされた命令を実行する1つ以上の汎用又は専用のプログラマブルプロセッサを用いて実装され得る。プログラムされた機能を実施するために必要とされる命令及びデータは、プロセッサ又はコントローラに関連付けられたメモリ内に記憶され得る。プロセッサ、それらのメモリ、及びインターフェース回路は、先に説明し、並びに以下に説明される操作を実施するようにコントローラを構成する。これらの構成要素は、プリント回路カード上に提供されてもよいか、又は特定用途向け集積回路(application specific integrated circuit、ASIC)内の回路として提供されてもよい。回路の各々は、別個のプロセッサで実装され得るか、又は複数の回路は、同じプロセッサ上に実装され得る。代替的に、回路は、超大規模集積回路(very large scale integrated、VLSI)内で提供される個別の構成要素又は回路で実装することができる。また、本明細書に記載される回路は、プロセッサ、ASIC、個別の構成要素、又はVLSI回路の組み合わせで実装することができる。金属物体の形成中、製造される構造の画像データが、プラットフォーム112上に物体を形成するようにプリンタ100の構成要素を動作させる信号を処理及び生成するために、走査システム又はオンライン若しくはワークステーション接続のいずれかから、コントローラ148のプロセッサ(単数又は複数)に送信される。
【0027】
これらの構成要素の中には、スイッチ152がある。1つのスイッチ152は、供給源156からヒータ160に電力を提供するように選択的に動作され得、別のスイッチ152は、ノズル108から液滴を吐出する電場を生成するために別の電源156からコイル164に電力を提供するように動作され得る。ヒータ160は高温で大量の熱を生成するため、コイル164は、吐出装置ヘッド140の1つ(円形)又は2つ以上の壁(直線形状)によって形成されたチャンバ168内に位置付けられる。本文書で使用されるとき、「チャンバ」という用語は、ヒータ、コイル、及び3D金属物体プリンタの取り外し可能な容器が位置する1つ以上の壁内に収容された体積を意味する。取り外し可能な容器104及びヒータ160は、このチャンバ内に位置する。チャンバは、ポンプ176を介して流体源172に流体的に接続され、また熱交換器180に流体的に接続される。本文書で使用される場合、「流体源」という用語は、熱を吸収するのに有用な特性を有する液体のコンテナを指す。熱交換器180は、流体源172への戻りを介して接続される。供給源172からの流体は、チャンバを通って流れて、コイル164から熱を吸収し、流体は、交換器180を通して吸収された熱を搬送し、熱は、既知の方法によって除去される。冷却された流体は、適切な動作範囲内のコイルの温度を維持する際に更に使用するために、流体源172に戻される。
【0028】
3D金属物体プリンタ100のコントローラ148は、金属物体製造のためにプリンタを制御するために、外部供給源からのデータを必要とする。一般に、形成される物体の三次元モデル又は他のデジタルデータモデルは、コントローラ148に動作可能に接続されたメモリ内に記憶され、コントローラは、サーバなどを介して、デジタルデータモデルが記憶されている遠隔データベースにアクセスし得るか、又はデジタルデータモデルが記憶されているコンピュータ可読媒体が、コントローラ148に選択的に連結されてアクセス可能になり得る。この三次元モデル又は他のデジタルデータモデルは、コントローラと共に実装されるスライサによって処理され、既知の方法でコントローラ148が実行するマシン対応命令を生成して、プリンタ100の構成要素を動作させ、そのモデルに対応する金属物体を形成する。マシン対応命令の生成には、デバイスのCADモデルがSTLデータモデル、又は他の多角形メッシュ若しくは他の中間表現に変換されるときなどの中間モデルの作製が含まれ得、次いで、この中間モデルが処理されて、プリンタによってデバイスを製造するためのgコードなどのマシン命令が生成され得る。この文書で使用されるとき、「マシン対応命令」という用語は、コンピュータ、マイクロプロセッサ、又はコントローラにより実行され、3D金属物体積層造形システムの構成要素を動作させて、プラットフォーム112上に金属物体を形成するコンピュータ言語コマンドを意味する。コントローラ148は、マシン対応命令を実行して、ノズル108から溶融金属滴の吐出、プラットフォーム112の位置決め、並びにオリフィス110とプラットフォーム112上の物体の最上層との間の距離の維持を制御する。
【0029】
図2Aは、プリンタ100の取り外し可能な容器104の側面図である。取り外し可能な容器104のこの実施形態は、上部ハウジング204及び下部ハウジング208を含む2部品からなる構造である。本文書で使用されるとき、「ハウジング」という用語は、その内部に収容部の一部分を有し、かつ取り外し可能な容器を形成するために別の構造に固定されるように構成されている構造を意味する。下部ハウジング208は、ノズル108(
図1に示される)を含む。上部ハウジング204は、下部ハウジング208よりも長く、下部ハウジング208の外周に等しい外周を有するカラー228を含む。下部ハウジング208内のノズルの反対側にある下部ハウジング208の開口部は、開口部から延在し、カラー228の内周の円周よりも小さい円周を有するフランジを有する。カラー228は、下部ハウジング208に固定された上部ハウジング204の端部から、下部ハウジングのフランジが下部ハウジングから延在する距離に対応する距離だけ陥凹している内側ステップを有する。したがって、下部ハウジングのフランジは、カラー228の内周内に嵌合するように上部ハウジング204の内側ステップに接触するまで、カラー228内を摺動する。上部ハウジング204及び下部ハウジング208が組み立てられると、それらは、金属インサート212に対応する形状を有する収容部を形成する。金属インサート212は、細長く丸みを帯びた茎状部216と、ノズル108内に嵌合する尖端部で終端する球根状部分220とを有する固体金属片である。本文書で使用されるとき、「細長い」という用語は、その幅よりも長い構造を意味し、「丸みを帯びた」という用語は、少なくとも部分的に円筒形状を有する構造を意味する。本文書で使用されるとき、「球根状」という用語は、その長手方向軸の少なくとも一部分に沿って円錐形状を有する構造を意味する。上部ハウジング204はまた、誘導フランジ224と共に形成される。このフランジは、吐出装置ヘッド140内の溝内に嵌合して、取り外し可能な容器104をプリンタ100内で正しく配向させ、容器が吐出装置ヘッド140内に設置された後に容器をその正しい配向に保持する。
【0030】
上部ハウジング204は窒化ホウ素で形成され、下部ハウジング208はグラファイトで形成される。これらの材料の両方は高温セラミックである。一実施形態では、上部及び下部ハウジングは、8時間以上の期間にわたって約800℃~約850℃の範囲の温度に加熱される。取り外し可能な容器104内の収容部は、金属インサート上の酸化物の形成を減衰させるのに役立つ適切な抗酸化性難燃剤材料でコーティングされ得る。本文書で使用されるとき、「抗酸化性難燃剤」という用語は、取り外し可能な容器の収容部に配置される金属の種類における金属酸化物の形成を低減させる任意の材料を意味する。上部ハウジングを形成する窒化ホウ素は導電性ではないため、ノズル108及びオリフィス110を通して収容部から溶融金属滴を吐出するために使用される電場の生成を妨げない。組み立てられた取り外し可能な容器の全体的な寸法は55mmであり、上部ハウジングの長さは40mmであり、下部ハウジングの長さは15mmである。カラー228における上部ハウジングの円周は約50mm、直径約16mmであり、下部ハウジングの最も広い部分の円周は約50mm、直径約16mmである。
【0031】
プリンタ100の吐出装置ヘッド140に設置する前に、金属インサート212は、取り外し可能な容器104に装填される。これは、インサート212の茎状部216を上部ハウジング204(
図2B)の収容部の部分に押し込むか、又は球根状部分220の尖端部を下部ハウジングに押し込むことによって行われる。時には「スーパーグルー」としてより一般的に知られているシアノアクリレート接着剤のいくつかのスポットが、下部ハウジング208の内側ステップ又はカラー228の内周のいずれかに適用され、次いで、下部ハウジング208の内側ステップがカラー228の内周内で摺動されて、
図2Cに示されるように、下部ハウジング及び上部ハウジングが一緒に固定される。この接着剤は、プリンタの動作中にヒータ160から加えられる熱によって除去されるため、プリンタのメンテナンスのために2つのハウジングを分離することができる。
図2Dに示すように、茎状部216は、上部ハウジングの開口部から見える。この開口部は、金属インサート212が取り外し可能な容器104内で溶融した後にワイヤ120を受容するために、ワイヤガイド124の反対側にある。不活性ガス源128は、上部ハウジングに連結されて、取り外し可能な容器内の収容部に不活性ガス(insert gas)を供給するため、取り外し可能な容器内の環境は、容器の収容部内の溶融金属を酸化させない。熱電対(図示せず)が開口部232内に配置されて、取り外し可能な容器内の熱を示す信号を提供するため、コントローラは、ヒータ160の動作を調整し得る。
【0032】
図2Eは、取り外し可能な容器の代替的な実施形態の断面図である。この容器104は、一体構造である。すなわち、容器は、一方の端部にノズルを有し、他方に開放端部を有する単一のハウジングを有する。この実施形態に充填するために、金属インサート216は、ペレット化された固体金属又は固体金属粉末から構成され、ワイヤを受容する開口部を通して注がれる。同様に、
図2A~
図2Dに示される取り外し可能な容器104の実施形態は、最初に組み立てられ、次いで、ペレット化された固体金属又は固体金属粉末が、上部ハウジングの開口部を通して注がれて、容器に充填され得る。ガイドフランジ224は、設置中に取り外し可能な容器を配向し、プリンタ内でその配向を維持するために、吐出装置ヘッド140内の装着溝内で摺動する。
【0033】
図2A~
図2Dに関して上述された取り外し可能な容器の説明に記載されるように、金属インサート212は、細長く丸みを帯びた茎状部216と、ノズル108内に嵌合する尖端部で終端する球根状部分220と、を有する固体金属片である。金属インサートは、製造された後、
図3に示すようにコンテナ222内に保管される。コンテナ222は、真空部230に接続された自己封止孔を有する蓋226で封止されているため、輸送前に空気はコンテナから除去され得る。空気の除去は、固体金属上の酸化物の形成を妨げるのに役立つ。真空部をコンテナ22の内部に接続する導管が取り外されると、自己封止孔が閉じて、コンテナ内の真空が保持される。金属インサート212は、上部及び下部ハウジングによって形成された収容部内へと容易に摺動するような寸法になっている。したがって、上述の実施形態の場合、球根状部分220との接合部から茎状部の端部までの茎状部216の長さは32mmであり、茎状部の円周は、8.5mmであり、その端部に向かってわずかに狭くなるため、茎状部は、上部ハウジング内の収容部の水平断面積に容易に嵌合する。茎状部216との接合部の近くの球根状部分の円周は約37.7mm、直径は約12mmであり、茎状部との接合部から尖端部までの球根状部分の長さは19mmである。いくつかの実施形態では、金属インサートは、石蝋など、酸化を妨げるための様々なコーティング剤でコーティングされる。金属インサートは、バルクアルミニウム、又は金属滴吐出プリンタで使用され得る他の既知の金属などの固体金属で作製される。
【0034】
印刷操作のために取り外し可能な容器を準備するのに必要な時間を短縮するように、材料堆積式3D物体プリンタを動作させるためのプロセスを
図4に示す。プロセスの説明において、プロセスがいくつかのタスク又は機能を実施しているという記述は、コントローラ又は汎用プロセッサが、データを動作させるために、又はプリンタ内の1つ以上の構成要素を操作してタスク若しくは機能を実施するために、コントローラ又はプロセッサに動作可能に接続された非一時的コンピュータ可読記憶媒体に記憶されたプログラム命令を実行することを指す。上述したコントローラ148は、そのようなコントローラ又はプロセッサとすることができる。代替的に、コントローラは、2つ以上のプロセッサ並びに関連する回路及び構成要素と共に実装され得、これらは各々、本明細書に記載される1つ以上のタスク又は機能を形成するように構成される。追加的に、方法の工程は、図に示される順序又は処理が記載される順序にかかわらず、任意の実行可能な時系列順序で実施され得る。
【0035】
図4は、
図1の3D金属物体プリンタで取り外し可能な容器及び金属インサートを使用して、3D金属物体プリンタの始動プロセス中に、取り外し可能な容器に溶融金属を充填するプロセス400のフロー図である。このプロセスは、オフラインにされ、冷却可能になった3D金属物体プリンタから、取り外し可能な容器104が取り外されることから始まる(ブロック404)。取り外し可能な容器に固体金属が充填される。取り外し可能な容器が単一部品構造の実施形態であるとき(ブロック408)、容器は、バルクワイヤが後に挿入される容器の端部の開口部を通して固体金属ペレット又は固体金属粉末を注ぐことによって充填される(ブロック412)。取り外し可能な容器の2部品からなる実施形態では、容器はその2つの部分に分離され(ブロック416)、金属インサートが、酸化物の形成を妨げるそのコンテナから取り外される(ブロック420)。金属インサートの細長く、丸みを帯びた端部が容器の上部ハウジングに配置され(ブロック424)、次いで、球根状の端部が下部ハウジングに挿入される(ブロック428)。次いで、上部及び下部ハウジングは、互いに固定される(ブロック432)。あるいは、2部品からなる実施形態には、ハウジングが互いに固定されたままである場合、金属粉末又は金属ペレットが充填され得る。取り外し可能な容器に固体金属が充填されると、取り外し可能な容器は、3D金属物体プリンタ内のヒータ内に設置され(ブロック436)、プリンタが閉じられる(ブロック440)。ヒータが取り外し可能な容器が固体金属を溶融させる温度になるように作動されて、容器に溶融金属が充填され(ブロック444)、バルク金属ワイヤがワイヤガイドに挿入されて、ワイヤ供給部からのワイヤの端部が取り外し可能な容器内の溶融金属内に位置付けられ得る(ブロック448)。次いで、プリンタは、金属オブジェクトを製造するための動作を再開し得る(ブロック452)。
【0036】
時々、容器がプリンタから取り外されるときに、容器を再調整する必要がある。本文書で使用されるとき、2部品からなる取り外し可能な容器を再調整することは、下部ハウジングが交換され、上部ハウジングが洗浄溶媒で拭き取られて、上部ハウジング内のチャンバから硬化アルミニウムが除去されることを意味する。単一部品からなる取り外し可能な容器を再調整する方法を
図5に示す。プロセス500は、容器又は少なくとも下部ハウジングが、
図6A、
図6B、又は
図6Cに示される再調整ステーションのうちの1つの中に配置されることから始まる(ブロック504)。次いで、調整ステーションが、ノズルの外面から固化した金属滴を除去するように動作される(ブロック508)。除去が完了すると、容器が取り外され(ブロック512)、前述のように固体金属が充填され(ブロック516)、次いで、金属インサート上の酸化物形成を妨げる、コンテナ222などのコンテナ内に保管される(ブロック520)。
【0037】
図6Aに示される調整ステーション604は、取り外し可能な容器のノズルを熱処理して、固体金属滴を除去する。このステーションでは、ヒータ608が作動されて、ノズル610の外部を、固体金属滴を溶融させるのに十分な温度まで加熱する。液滴が溶融した後、アクチュエータ612が作動されて、溶融金属滴を鋳造する遠心力が生じる速度で、容器が固定されているプラットフォーム614を回転させる。
図6Bに示される調整ステーション620は、取り外し可能な容器のノズルを化学的に処理して、固体金属滴を除去する。このステーションでは、噴霧器624などのアプリケータが、ノズルの外面に1種以上の化学物質を適用して、ノズルからの固体金属滴をエッチングするか、ないしは別の方法で侵食する。
図6Cに示される調整ステーション630は、取り外し可能な容器のノズルを機械的に処理して、固体金属滴を除去する。このステーションでは、アクチュエータ634を操作して、スピン研磨ホイール638などの研磨工具をノズルの外面に押し付けて、ノズルからの固体金属滴を粉砕するか、ないしは別の方法で研磨する。
【0038】
上記に開示された及び他の特徴及び機能の変形、又はそれらの代替が、望ましくは、多くの他の異なるシステム、アプリケーション、又は方法に組み合わされ得ることが理解されるであろう。以下の特許請求の範囲によって包含されることも意図される、様々な現在予見又は予期されていない代替、修正、変形、又は改善が、その後、当業者によって行われ得る。