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特開2022-108754トランスポンダ、信号処理装置、信号処理方法、及び信号処理プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022108754
(43)【公開日】2022-07-27
(54)【発明の名称】トランスポンダ、信号処理装置、信号処理方法、及び信号処理プログラム
(51)【国際特許分類】
   H04B 1/40 20150101AFI20220720BHJP
   G06F 11/30 20060101ALI20220720BHJP
   G06F 11/07 20060101ALI20220720BHJP
【FI】
H04B1/40
G06F11/30 158
G06F11/07 160
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021003846
(22)【出願日】2021-01-14
(71)【出願人】
【識別番号】301072650
【氏名又は名称】NECスペーステクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【弁理士】
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100149618
【弁理士】
【氏名又は名称】北嶋 啓至
(72)【発明者】
【氏名】椎野 竜哉
【テーマコード(参考)】
5B042
5K011
【Fターム(参考)】
5B042GA31
5B042JJ01
5B042JJ10
5B042JJ25
5B042KK02
5K011CA18
5K011KA13
5K011LA02
(57)【要約】
【課題】一般民生品のトランシーバICを使用して、シングルイベント耐性を有するトランスポンダを実現する。
【解決手段】受信信号を受信ベースバンド信号に変換する受信手段、及び送信ベースバンド信号を送信信号に変換する送信手段を含む、一般民生品のトランシーバ集積回路と、トランシーバ集積回路の送信又は受信におけるシングルイベント効果の発生を監視し、送信又は受信におけるシングルイベント効果の発生を検知した場合に、トランシーバ集積回路に電源電流を供給する電源をリセットする、シングルイベント効果に耐性を有する送受信監視手段とを含む。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信信号を受信ベースバンド信号に変換する受信手段、及び
送信ベースバンド信号を送信信号に変換する送信手段
を含む、一般民生品のトランシーバ集積回路と、
前記トランシーバ集積回路の送信又は受信におけるシングルイベント効果の発生を監視し、前記送信又は受信におけるシングルイベント効果の発生を検知した場合に、前記トランシーバ集積回路に電源電流を供給する電源をリセットする、シングルイベント効果に耐性を有する送受信監視手段と
を備えたトランスポンダ。
【請求項2】
前記送受信監視手段は、前記受信ベースバンド信号を入力して受信データとして復調し、復調した前記受信データにおけるフレーム同期を監視することによって、前記送信又は受信におけるシングルイベント効果の発生を監視する
請求項1に記載のトランスポンダ。
【請求項3】
前記トランシーバ集積回路は、モニタ受信信号をモニタ受信ベースバンド信号に変換する余剰な受信手段を更に備え、
前記トランスポンダは、前記余剰な受信手段に前記送信信号のパワーの一部を前記モニタ受信信号として戻すRFカップラを更に備え、
前記送受信監視手段は、送信データを変調して、前記トランシーバ集積回路に前記送信ベースバンド信号として出力し、前記モニタ受信ベースバンド信号を入力して、モニタ受信データとして復調し、前記送信データと前記モニタ受信データを比較することによって、前記送信又は受信におけるシングルイベント効果の発生を監視する
請求項1に記載のトランスポンダ。
【請求項4】
前記トランシーバ集積回路は、前記受信手段及び前記送信手段の制御に用いられるレジスタを更に備え、
前記トランスポンダは、前記トランシーバ集積回路のレジスタにおけるレジスタ値を記憶し、シングルイベント効果の発生を検知した場合に、記憶した前記レジスタ値を前記レジスタにリロードする、シングルイベント効果に耐性を有するレジスタ監視手段を更に備え、
前記送受信監視手段は、前記送信又は受信におけるシングルイベント効果の発生を検知した場合に、前記電源をリセットする前に、前記レジスタ監視手段に記憶された前記レジスタ値を前記レジスタにリロードさせることによって前記送信又は受信におけるシングルイベント効果からの回復を試みる
請求項1乃至3の何れか1項に記載のトランスポンダ。
【請求項5】
前記レジスタ監視手段は、前記レジスタにおけるシングルイベント効果の発生を監視し、前記レジスタにおけるシングルイベント効果の発生が検知された場合に、記憶した前記レジスタ値を前記レジスタにリロードする
請求項4に記載のトランスポンダ。
【請求項6】
前記トランスポンダは、前記電源電流を監視し、前記電源電流に不連続な変動が発生した場合に、前記電源をリセットする、シングルイベント効果に耐性を有する電源電流監視手段
を更に備えた請求項1乃至5の何れか1項に記載のトランスポンダ。
【請求項7】
前記電源電流監視手段は、前記電源電流を監視し、前記電源電流に過電流が発生した場合に、前記電源をリセットする
請求項6に記載のトランスポンダ。
【請求項8】
請求項1乃至3の何れか1項に記載のトランスポンダに含まれる前記送受信監視手段
を備えた信号処理装置。
【請求項9】
シングルイベント効果に耐性を有する信号処理装置によって、
一般民生品のトランシーバ集積回路の送信又は受信におけるシングルイベント効果の発生を監視し、前記送信又は受信におけるシングルイベント効果の発生を検知した場合に、前記トランシーバ集積回路に電源電流を供給する電源をリセットする
信号処理方法。
【請求項10】
シングルイベント効果に耐性を有する信号処理装置が備えるコンピュータに、
一般民生品のトランシーバ集積回路の送信又は受信におけるシングルイベント効果の発生を監視し、前記送信又は受信におけるシングルイベント効果の発生を検知した場合に、前記トランシーバ集積回路に電源電流を供給する電源をリセットする送受信監視処理
を実行させる信号処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般民生品を用いて放射線に対する耐性を有するトランスポンダを実現する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、一般民生品を活用して安価に高機能な衛星を製造するNewSpaceと呼ばれる試みが世界的に拡がりつつある。この試みは、宇宙利用の門戸を大企業以外に広げるだけでなく、多数の衛星によりLEO(Low Earth Orbit)コンステレーションを構成し、地球全球をカバーするサービスを展開するといった新たな形態のビジネスも可能にする。そのため、この試みは今後も拡大していくと見られている。又、衛星の利用の多様化、衛星の長寿命化、衛星の需要の流動化等に対応するために、トランスポンダを含めた電子機器の衛星軌道上での再構成(再プログラミング)が求められるようになってきている。
【0003】
地上通信においては、様々なRF(Radio Frequency)部品やディスクリート半導体部品を集積したトランシーバIC(Integrated Circuit)が一般的に使用されるようになってきている。トランシーバICは一般民生品であるが、携帯基地局や近距離無線等のインフラ用途に用いられるため、高い信頼性を有している。
【0004】
衛星やロケットに搭載される電子機器は、宇宙放射線に晒されることで様々な障害が発生する。放射線により発生する代表的な障害としては、重粒子線が半導体接合部に入射することで様々な障害を生じるシングルイベント効果(以下、単に「シングルイベント」とも称す)がよく知られている。このシングルイベント効果により電子回路に一時的あるいは恒久的な障害(ソフトエラー、ハードエラー(ラッチアップ)等)が発生するため、衛星やロケットに搭載される電子機器では専用の部品(宇宙搭載用部品)を用いた専用の設計がされることが多い。
【0005】
しかしながら、そのような宇宙搭載用の部品を使用することには次の2つの問題がある。
(1)宇宙搭載用部品は、一般民生部品と比較して約10乃至1000倍高価である、
(2)宇宙搭載用部品は、高信頼性及び耐放射線性が求められるという性質上、保守的な設計になりがちであり、同世代の一般民生部品と比較すると機能面や集積度で劣っている。
【0006】
上述した問題点により、衛星やロケットに搭載される電子機器は高額且つ大型になり、それに伴い衛星やロケットも高額且つ大型になるという課題がある。そのため、衛星やロケットを運用するためには大規模な資本を要し、宇宙利用のほとんどが大企業に限られてきた。
【0007】
又、ほとんどの宇宙搭載用部品は、再構成できるように設計されておらず、再構成の要求に対応できない。
【0008】
上述した問題は一般民生部品を宇宙搭載用の電子機器に利用することによって解決される。しかしながら、一般民生部品ではシングルイベント効果に対する耐性(シングルイベント耐性)が考慮されていないため、特に放射線に弱い部品や高い信頼性が要求される電子機器では一般民生部品が使用できない。特にトランスポンダのようなRF機器に使用される電子部品には放射線に弱い部品が多いので、低価格化及び高機能化の大きなハードルになっている。
【0009】
一般民生部品を用いてシングルイベント耐性を有する電子機器を実現する技術の一例が、特許文献1に開示されている。特許文献1のシングルイベント補償回路は、放射線環境下で使用される半導体装置におけるシングルイベントの発生を検出する、電源監視回路及び同期信号監視回路を含む。電源監視回路は、半導体装置に内蔵されるCPU等のICチップに供給される電源電圧を常時監視する。同期信号監視回路は、半導体装置に内蔵されるICチップから送出される同期信号を監視する。シングルイベント補償回路は、シングルイベント発生時に半導体装置への電源供給をオフ/オンする。上記構成の結果、特許文献1のシングルイベント補償回路は、シングルイベント発生時に半導体装置に搭載されるCPU等のICチップをリセットすることにより、シングルイベントにより喪失した半導体装置の機能を回復させる。
【0010】
一般民生部品を用いてシングルイベント耐性を有する電子機器を実現する技術の別の一例が、特許文献2に開示されている。特許文献2のマイクロコンピュータは、CPU、メモリ、その他の複数の構成機器を含む。マイクロコンピュータは、レジスタとMRAMと比較手段とを有する一以上のバックアップ機能付き記憶装置を含む。MRAMには、レジスタに書き込まれるデータと同一のデータが書き込まれる。比較手段は、レジスタ及びMRAMから定期的に出力されるデータを比較して比較結果を出力する。マイクロコンピュータは、比較手段が出力する比較結果が、レジスタ及びMRAMから出力されたデータが異なるものであったことを示す場合に、複数の構成機器のいずれか又は全部にエラーが生じたと推定して所定のエラー処理を行う。上記構成の結果、特許文献2のマイクロコンピュータは、構成機器に生じたエラーに対するエラー処理を行う。
【0011】
一般民生部品を用いてシングルイベント耐性を有する電子機器を実現する技術の更に別の一例が、特許文献3に開示されている。特許文献3の電子機器では、ラッチアップ耐性の低いIC1のみへの電力ライン中に、電源スイッチ8が介挿される。又、ラッチアップ耐性の低いIC1と他のIC2及びIC3との間に、IC間での信号の授受を可能とする第1状態及びIC間を電気的に絶縁する第2状態を選択的に取り得るゲート部9、10が介挿される。そして、電子機器は、電流検出用抵抗4及び過電流検出回路5によりIC1への過電流の発生を監視し、過電流が発生した場合にスイッチ制御部6が電源スイッチ8をオフすると共に、ゲート制御部11がゲート部9、10を第2状態とする。続いて、所定時間が経過したら、スイッチ制御部6が電源スイッチ8をオンに戻し、更に所定時間が経過したらゲート制御部11がゲート部9、10を第1状態に戻す。上記構成の結果、特許文献3の電子機器は、ラッチアップが生じた集積回路の再起動を、他のラッチアップが生じていない集積回路に影響を与えずに行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2006-350425号公報
【特許文献2】特開2011-237928号公報
【特許文献3】特開2001-103659号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
一般民生部品を用いてシングルイベント耐性を有するトランスポンダを実現する場合には、一般民生部品のトランシーバICが使用可能であることが望ましい。一般民生部品のトランシーバICでは、トランシーバICに内蔵される送受信部においてシングルイベント効果が発生する。しかしながら、特許文献1乃至3に記載の技術では、トランシーバICの送受信部におけるシングルイベント効果の発生に対する耐性を考慮していないという課題があった。
【0014】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたもので、一般民生品のトランシーバICを使用して、シングルイベント耐性を有するトランスポンダを実現することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の一態様において、トランスポンダは、受信信号を受信ベースバンド信号に変換する受信手段、及び送信ベースバンド信号を送信信号に変換する送信手段を含む、一般民生品のトランシーバ集積回路と、トランシーバ集積回路の送信又は受信におけるシングルイベント効果の発生を監視し、送信又は受信におけるシングルイベント効果の発生を検知した場合に、トランシーバ集積回路に電源電流を供給する電源をリセットする、シングルイベント効果に耐性を有する送受信監視手段とを含む。
【0016】
本発明の一態様において、信号処理装置は、受信信号を受信ベースバンド信号に変換する受信手段、及び送信ベースバンド信号を送信信号に変換する送信手段を含む、一般民生品のトランシーバ集積回路の送信又は受信におけるシングルイベント効果の発生を監視し、送信又は受信におけるシングルイベント効果の発生を検知した場合に、トランシーバ集積回路に電源電流を供給する電源をリセットする、シングルイベント効果に耐性を有する送受信監視手段を含む。
【0017】
本発明の一態様において、信号処理方法は、シングルイベント効果に耐性を有する信号処理装置によって、一般民生品のトランシーバ集積回路の送信又は受信におけるシングルイベント効果の発生を監視し、送信又は受信におけるシングルイベント効果の発生を検知した場合に、トランシーバ集積回路に電源電流を供給する電源をリセットする。
【0018】
本発明の一態様において、信号処理プログラムは、シングルイベント効果に耐性を有する信号処理装置が備えるコンピュータに、一般民生品のトランシーバ集積回路の送信又は受信におけるシングルイベント効果の発生を監視し、送信又は受信におけるシングルイベント効果の発生を検知した場合に、トランシーバ集積回路に電源電流を供給する電源をリセットする送受信監視処理を実行させる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、一般民生品のトランシーバICを使用して、シングルイベント耐性を有するトランスポンダを実現できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1実施形態におけるトランスポンダの構成の一例を示すブロック図である。
図2】本発明の第1実施形態におけるトランスポンダの変形例における構成の一例を示すブロック図である。
図3】本発明の第2実施形態におけるトランスポンダの構成の一例を示すブロック図である。
図4】本発明の第2実施形態における送信部におけるSEFI(Single Event Functional Interrupt)発生時の動作を示すフローチャートである。
図5】本発明の第2実施形態における受信部におけるSEFI発生時の動作を示すフローチャートである。
図6】本発明の第2実施形態におけるSEL(Single Event Latch-up)保護処理の動作を示すフローチャートである。
図7】本発明の第2実施形態におけるSEL保護処理の動作の一例(SEL発生とリセットの様子)を示すグラフである。
図8】本発明の第2実施形態におけるレジスタにおけるSEU(Single Event Upset)発生時の動作を示すフローチャートである。
図9】本発明の各実施形態における信号処理装置を実現可能なハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、すべての図面において、同等の構成要素には同じ符号を付し、適宜説明を省略する。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について説明する。
【0022】
本実施形態における構成について説明する。
【0023】
図1は、本発明の第1実施形態におけるトランスポンダの構成の一例を示すブロック図である。
【0024】
本実施形態におけるトランスポンダ100は、トランシーバ集積回路110と、信号処理部120(信号処理装置)とを含む。
【0025】
トランシーバ集積回路110は、一般民生品のトランシーバICである。トランシーバ集積回路110は、受信部221と、送信部231とを含む。図1では、受信部221及び送信部231を、PLL(Phase Locked Loop)に接続されたアンプ及び乗算器によって模式的に表現している。尚、PLLは、乗算器に乗算すべき周波数信号を出力する。トランシーバ集積回路110は当業者に広く知られているから、詳細な説明を省略する。
【0026】
受信部221は、受信信号を入力して、受信ベースバンド信号に変換して出力する。
【0027】
送信部231は、送信ベースバンド信号を入力して、送信信号に変換して出力する。
【0028】
信号処理部120は、シングルイベント耐性を有する。信号処理部120は、シングルイベント耐性を有する、例えば、FPGA(Field Programmable Gate Array)又はASIC(Application Specific Integrated Circuit)等のICを用いて構成される。信号処理部120は、トランシーバ集積回路110の受信部221から受信ベースバンド信号を入力して受信データとして復調する。そして、信号処理部120は、復調した受信データ(DATA out)を外部に出力する。又、信号処理部120は、外部から入力した送信データ(DATA in)を変調して、トランシーバ集積回路110の送信部231へ送信ベースバンド信号として出力する。信号処理部120は、送受信監視部361を含む。
【0029】
送受信監視部361は、トランシーバ集積回路110の送信又は受信におけるシングルイベント効果の発生を監視する。そして、送受信監視部361は、送信又は受信におけるシングルイベント効果の発生を検知した場合に、トランシーバ集積回路110に電源電流を供給する電源をリセットする(電源電流を一旦オフにした後にオンにする)。
【0030】
送受信監視部361は、例えば、受信ベースバンド信号を入力して受信データとして復調する。そして、送受信監視部361は、復調した受信データにおけるフレーム同期を監視することによって、受信におけるシングルイベント効果の発生を監視する。即ち、送受信監視部361は、受信データにおけるフレーム同期が失われた場合に、受信におけるシングルイベント効果が発生したと判断する。送受信監視部361は、通常、復調した受信データを外部に出力する。送信におけるシングルイベント効果に対する処理の例については、後述する変形例1において説明する。
【0031】
以上説明したように、本実施形態におけるトランスポンダ100では、送受信監視部361が、送信又は受信におけるシングルイベント効果の発生を検知した場合に、一般民生品のトランシーバ集積回路110に電源電流を供給する電源をリセットする。その結果、トランシーバ集積回路110が再起動され、送信又は受信におけるシングルイベント効果の影響が除去される可能性が高い。そして、送受信監視部361は、シングルイベント耐性を有する信号処理部120に含まれる。従って、本実施形態におけるトランスポンダ100には、一般民生品のトランシーバICを使用して、シングルイベント耐性を有するトランスポンダを実現できるという効果がある。本実施形態では、送受信監視部361が復調した受信データにおけるフレーム同期を監視する場合には、更に、トランシーバ集積回路110の受信部221におけるシングルイベント効果の発生に対応できるという効果がある。
【0032】
本実施形態における変形例について説明する。
【0033】
図2は、本発明の第1実施形態におけるトランスポンダの変形例における構成の一例を示すブロック図である。尚、第1変形例では、主に、図2の送受信監視部(後述)について説明する。又、第2変形例及び第3変形例では、主に、図2のレジスタ監視部(後述)について説明する。又、第4変形例及び第5変形例では、主に、図2の電源電流監視部(後述)について説明する。
(第1変形例)
本実施形態における第1変形例について説明する。本変形例では、送信におけるシングルイベント効果に対する処理が行われる。
【0034】
本変形例におけるトランスポンダ102は、トランシーバ集積回路112と、信号処理部122と、RFカップラ152とを含む。
【0035】
トランシーバ集積回路112は、一般民生品のトランシーバICである。トランシーバ集積回路112は、受信部221、222と、送信部231とを含む。図2では、受信部221、222、及び送信部231を、PLLに接続されたアンプ及び乗算器によって模式的に表現している。尚、PLLは、乗算器に乗算すべき周波数信号を出力する。ここで、PLLは、受信部221によって受信された搬送波の周波数及び位相に、出力する周波数信号の周波数及び位相を同期させる。
【0036】
受信部222は、受信部221と同様な機能を有するが、受信信号の受信ベースバンド信号への変換に使用されていない余剰な受信部である。受信部222は、モニタ受信信号を入力して、モニタ受信ベースバンド信号に変換して出力する。
【0037】
RFカップラ152は、余剰な受信部222に送信信号のパワーの一部をモニタ受信信号として戻す。
【0038】
信号処理部122は、シングルイベント耐性を有する。信号処理部122は、シングルイベント耐性を有する、例えば、FPGA又はASIC等のICを用いて構成される。信号処理部122は、トランシーバ集積回路112の受信部221から受信ベースバンド信号を入力して受信データとして復調する。そして、信号処理部122は、復調した受信データ(DATA out)を外部に出力する。又、信号処理部122は、外部から入力した送信データ(DATA in)を変調して、トランシーバ集積回路112の送信部231へ送信ベースバンド信号として出力する。信号処理部122は、送受信監視部362を含む。
【0039】
送受信監視部362は、トランシーバ集積回路112の送信又は受信におけるシングルイベント効果の発生を監視する。そして、送受信監視部362は、送信又は受信におけるシングルイベント効果の発生を検知した場合に、トランシーバ集積回路112に電源電流を供給する電源をリセットする。
【0040】
送受信監視部362は、例えば、送信データを変調して、トランシーバ集積回路112の送信部231に送信ベースバンド信号として出力する。そして、送受信監視部362は、モニタ受信ベースバンド信号を入力して、モニタ受信データとして復調し、送信データとモニタ受信データを比較することによって、送信におけるシングルイベント効果の発生を監視する。即ち、送受信監視部362は、送信データとモニタ受信データが一致しない場合に、送信におけるシングルイベント効果が発生したと判断する。
【0041】
送受信監視部362は、更に、受信ベースバンド信号を入力して受信データとして復調してもよい。そして、送受信監視部362は、復調した受信データにおけるフレーム同期を監視することによって、受信におけるシングルイベント効果の発生を監視する。即ち、送受信監視部362は、受信データにおけるフレーム同期が失われた場合に、受信におけるシングルイベント効果が発生したと判断する。送受信監視部362は、通常、復調した受信データを外部に出力する。
【0042】
本変形例には、特に、トランシーバ集積回路112の送信部231におけるシングルイベント効果の発生に対応できるという効果がある。又、本変形例には、送受信監視部362が復調した受信データにおけるフレーム同期を監視する場合には、特に、トランシーバ集積回路112の受信部221におけるシングルイベント効果の発生に対応できるという効果がある。
(第2変形例)
本実施形態における第1変形例を基本とする第2変形例について説明する。
【0043】
本変形例におけるトランスポンダ102について、図2を再び参照して説明する。尚、図2では、トランシーバ集積回路112の全体を制御するマイクロプロセッサ(不図示)を、マイクロプロセッサ内部にあって演算や実行状態の保持に用いられるレジスタ210によって模式的に表現している。
【0044】
本変形例におけるトランスポンダ102は、第1変形例の構成に加えて、トランシーバ集積回路112がレジスタ210を更に含み、信号処理部122がレジスタ監視部363を更に含む。
【0045】
レジスタ210は、トランシーバ集積回路112の全体(受信部221、222、及び送信部231を含む)を制御するマイクロプロセッサ(不図示)内部にあって演算や実行状態の保持に用いられる。
レジスタ監視部363は、シングルイベント効果に耐性を有する。レジスタ監視部363は、トランシーバ集積回路112のレジスタ210におけるレジスタ値を記憶する。そして、レジスタ監視部363は、送受信におけるシングルイベント効果の発生を検知した送受信監視部362による指示に従って、記憶したレジスタ値をレジスタ210にリロードする。即ち、送受信監視部362は、送受信におけるシングルイベント効果の発生を検知した場合に、トランシーバ集積回路110に電源電流を供給する電源をリセットする前に、レジスタ値のリロードによるシングルイベント効果からの回復を試みる。
【0046】
送受信監視部362は、送信又は受信におけるシングルイベント効果の発生を検知した場合に、電源をリセットする前に、レジスタ監視部363に記憶されたレジスタ値をレジスタ210にリロードさせることによって送信又は受信におけるシングルイベント効果からの回復を試みる。
【0047】
本変形例には、上述した第1変形例における効果に加えて、電源をリセットせずに、レジスタ監視部363に記憶されたレジスタ値をレジスタ210にリロードさせることによって送信又は受信におけるシングルイベント効果から回復する可能性があるという効果がある。
【0048】
本変形例は、本実施形態と組み合わせて実施されてもよい。
(第3変形例)
本実施形態における第2変形例を基本とする第3変形例について説明する。
【0049】
本変形例におけるトランスポンダ102について、図2を再び参照して説明する。
【0050】
本変形例におけるトランスポンダ102では、第2変形例の構成に加えて、レジスタ監視部363がレジスタ210におけるシングルイベント効果の発生を監視する。即ち、本変形例では、送受信におけるシングルイベント効果の監視に加えて、レジスタ210におけるシングルイベント効果の発生も監視される。
【0051】
レジスタ監視部363は、レジスタ210のレジスタ値が、トランシーバ集積回路112のプロセッサによって書き換えられていないタイミングにおいて、記憶されたレジスタ値と異なる場合に、レジスタ210におけるシングルイベント効果が発生したものとみなす。そして、レジスタ監視部363は、レジスタ210におけるシングルイベント効果の発生を監視し、レジスタ210におけるシングルイベント効果の発生が検知された場合に、記憶したレジスタ値をレジスタ210にリロードする。
【0052】
本変形例には、上述した第2変形例における効果に加えて、トランシーバ集積回路112のレジスタ210におけるシングルイベント効果の発生に対応できるという効果がある。
【0053】
本変形例は、本実施形態、又は、第1変形例と組み合わせて実施されてもよい。
(第4変形例)
本実施形態における第4変形例について説明する。
【0054】
本変形例におけるトランスポンダ102について、図2を再び参照して説明する。
【0055】
本変形例におけるトランスポンダ102は、本実施形態の構成に加えて、信号処理部122が電源電流監視部364を更に含む。
【0056】
電源電流監視部364は、シングルイベント効果に耐性を有する。電源電流監視部364は、電源電流を監視し、電源電流に不連続な変動が発生した場合に、電源をリセットする。即ち、本変形例では、送受信におけるシングルイベント効果の監視に加えて、電源電流におけるシングルイベント効果の発生も監視される。
【0057】
本変形例には、上述した本実施形態における効果に加えて、シングルイベント効果の発生によって電源電流に不連続な変動が発生した場合に対応できるという効果がある。
【0058】
本変形例は、本実施形態、又は、上記第1変形例乃至第3変形例の何れかと組み合わせて実施されてもよい。
(第5変形例)
本実施形態における第4変形例を基本とする第5変形例について説明する。
【0059】
本変形例におけるトランスポンダ102について、図2を再び参照して説明する。
【0060】
本変形例における電源電流監視部364は、シングルイベント効果に耐性を有する。電源電流監視部364は、電源電流を監視し、電源電流に過電流が発生した場合に、電源をリセットする。
【0061】
本変形例には、上述した第4変形例における効果に加えて、シングルイベント効果の発生によって電源電流に過電流が発生した場合に対応できるという効果がある。
【0062】
本変形例は、本実施形態、又は、上記第1変形例乃至第3変形例の何れかと組み合わせて実施されてもよい。
(第2実施形態)
本発明の第1実施形態を基本とする、本発明の第2実施形態について説明する
本実施形態におけるトランスポンダは、シングルイベントの検出とシングルイベントからの復帰のための回路を含む。
【0063】
本実施形態における構成について説明する。
【0064】
図3は、本発明の第2実施形態におけるトランスポンダの構成の一例を示すブロック図である。本実施形態におけるトランスポンダ105は、衛星やロケット等に搭載可能である。トランスポンダ105は、トランシーバIC112と、信号処理部125と、電流センサ135と、ON/OFF回路145と、RFカップラ152と、周波数変換部165とを含む。
【0065】
トランシーバIC112は、一般民生品のトランシーバICである。トランシーバIC112は、高度に集積化されたICであり、多くのRF部品を代替することができる。トランシーバIC112は、レジスタ210と、受信部221、222と、送信部231とを含む。図3では、受信部221、222と、送信部231を、PLLに接続されたアンプ及び乗算器によって模式的に表現している。尚、PLLは、乗算器に乗算すべき周波数信号を出力する。ここで、PLLは、受信部221によって受信された搬送波の周波数及び位相に、出力する周波数信号の周波数及び位相を同期させる。又、図3では、トランシーバ集積回路112の全体(受信部221、222、及び送信部231を含む)を制御するマイクロプロセッサ(不図示)を、マイクロプロセッサ内部にあって演算や実行状態の保持に用いられるレジスタ210によって模式的に表現している。
【0066】
レジスタ210は、トランシーバIC112の全体を制御するマイクロプロセッサ(不図示)内部にあって、演算や実行状態の保持に用いられる。
【0067】
受信部221は、外部から周波数変換部165を経由して入力した受信信号をベースバンド信号に変換し、ベースバンド信号に変換された受信信号を復調部326へ出力する。
【0068】
信号処理部125は、シングルイベント耐性を有する、FPGA又はASIC等のICを用いて構成される。信号処理部125は、レジスタ監視部315と、復調部326、327と、変調部336と、比較部345と、フレーム同期部355と、制御部365とを含む。
【0069】
周波数変換部165は、受信したRF信号を搬送波周波数から中間周波数に変換して、トランシーバIC112の受信部221へ出力する。又、周波数変換部165は、送信すべきIF(Intermediate Frequency)信号を中間周波数から搬送波周波数に変換して、外部へ出力する。
【0070】
電流センサ135は、トランシーバIC112の電源電流をモニタする。電流センサ135は、SEL検出のために使用される。
【0071】
ON/OFF回路145は、トランシーバIC112の電源電流をオフした後にオンする。ON/OFF回路145は、SEFI及びSELからの回復のために使用される。
【0072】
RFカップラ152は、送信すべきIF信号の一部電力を分波し、トランシーバIC112の受信部222(余剰受信チャンネル)へ出力する。この出力は、送信部231におけるSEFIの検出のために利用される。即ち、信号処理部125は、送信データと、RFカップラ152によって折り返された送信データとが一致しなければ、送信部231においてSEFIが発生したものと判断する。
【0073】
復調部326は、受信部221から入力したベースバンド信号を復調し、復調した受信データをフレーム同期部355を経由して外部へ出力する。
【0074】
変調部336は、外部から入力した送信データを変調し、変調した送信データを送信部231へ出力する。
【0075】
送信部231は、変調部336から入力した変調した送信データを中間周波数に変換し、中間周波数に変換した送信信号を周波数変換部165へ出力する。
【0076】
フレーム同期部355は、受信部221におけるSEFIを検出するために、復調部326から受信データを入力し、フレーム同期が維持されているか否かを判定する。
【0077】
受信部222は、RFカップラ152によって折り返された送信信号をベースバンド信号に変換し、ベースバンド信号に変換された折り返された送信信号を復調部327へ出力する。受信部222は、外部から周波数変換部165を経由して入力した受信信号のベースバンド信号への変換に使用されていない余剰受信チャンネルである。
【0078】
復調部327は、受信部222から入力したベースバンド信号を復調し、復調した受信データを比較部345へ出力する。
【0079】
比較部345は、送信データと、復調部327から入力された復調された受信データを比較し、比較結果を制御部365へ出力する。
【0080】
制御部365は、トランスポンダ105全体の制御を行う。
【0081】
レジスタ監視部315は、トランシーバIC112のレジスタ210におけるSEUの検出とSEUからの復帰のために、常時、レジスタ210のレジスタ値を監視する。レジスタ監視部315は、レジスタ210のレジスタ値を保存すると共に、レジスタ210におけるSEUが発生すると即座に保存したレジスタ値をレジスタ210にリロードする。
【0082】
本実施形態における動作について説明する。
【0083】
トランスポンダ105のトランスポンダとしての機能は、一般的なトランスポンダと同様であるので、概要について説明する。まず、受信時の動作について説明する。
【0084】
周波数変換部165は、受信したRF信号をIF信号に変換し、IF信号をトランシーバIC112へ出力する。
【0085】
トランシーバIC112は、入力したIF信号をベースバンド信号に変換し、ベースバンド信号を信号処理部125へ出力する。
【0086】
信号処理部125は、入力したベースバンド信号を復調し、受信データを外部へ出力する。
【0087】
次に、送信時の動作について説明する。
【0088】
信号処理部125は、入力された送信データをベースバンド信号に変調し、ベースバンド信号をトランシーバIC112へ出力する。
【0089】
トランシーバIC112は、入力したベースバンド信号をIF信号に変換して、IF信号を周波数変換部165へ出力する。
【0090】
周波数変換部165は、IF信号をRF信号に変換し、RF信号を外部へ出力する。
【0091】
耐シングルイベント機能は、以下のように動作する。尚、シングルイベントの種類により動作が異なるため、シングルイベントの種類毎に動作を説明する。
【0092】
●SEFI:
トランスポンダ105は、送信部231におけるSEFIに対して以下のように動作する。
【0093】
まず、トランシーバIC112の余剰受信チャンネルである受信部222は、送信データが変調されてRFカップラ152で折り返されたIF信号を受信する。そして、受信部222は、受信したIF信号をベースバンド信号に変換し、ベースバンド信号を復調部327へ出力する。復調部327は、受信したベースバンド信号を復調し、復調された受信データを比較部345へ出力する。比較部345は、送信データと受信データを比較し、比較結果を制御部365へ出力する。
【0094】
図4は、本発明の第2実施形態における送信部におけるSEFI発生時の動作(リセット動作)を示すフローチャートである。
【0095】
制御部365は、受信データと送信データが一致するか否かを判断する(ステップS510)。
【0096】
トランシーバIC112の送信部231が正常に動作していれば、受信データと送信データは一致し(ステップS520のYes)、制御部365は、ステップS510の処理へ戻る。
【0097】
一方、送信部231においてSEFIが発生すれば、受信データと送信データは一致しない(ステップS520のNo)。受信データと送信データが一致しない場合(ステップS520のNo)には、制御部365は、SEFIが発生したと判断し、リセット動作を行う。
【0098】
リセット動作では、まず、トランシーバIC112を制御しているレジスタ210をリフレッシュする(ステップS530)。
【0099】
次に、制御部365は、受信データと送信データが一致するか否かを再度判断する(ステップS540)。
【0100】
それでもデータ比較結果が一致しない場合(ステップS550のNo)には、制御部365は、ON/OFF回路145によって、トランシーバIC112の電源をオフした後にオンしてリセットする(ステップS560)。
【0101】
制御部365は、ステップS510の処理へ戻る。
【0102】
トランスポンダ105は、受信部222におけるSEFIに対して以下のように動作する。
【0103】
図5は、本発明の第2実施形態における受信部におけるSEFI発生時の動作(リセット動作)を示すフローチャートである。
【0104】
制御部365は、フレーム同期ができているか否かを判断する(ステップS610)
トランシーバIC112の受信部221が正常に動作していれば、フレーム同期が確認でき(ステップS620のYes)、制御部365は、ステップS610の処理へ戻る。
【0105】
制御部365は、受信部221に変調されたRF信号が入力されているにもかかわらず、フレーム同期部355がフレーム同期を確認できない場合(ステップS620のNo)に、SEFIが発生したと判断し、リセット動作を行う。
【0106】
リセット動作では、まず、トランシーバIC112を制御しているレジスタ210をリフレッシュする(ステップS630)。
【0107】
次に、制御部365は、フレーム同期ができているか否かを再度判断する(ステップS640)。
【0108】
それでもフレーム同期が復帰しない場合(ステップS650のNo)には、制御部365は、ON/OFF回路145によって、トランシーバIC112の電源をオフした後にオンしてリセットする(ステップS660)。
【0109】
制御部365は、ステップS610の処理へ戻る。
【0110】
●SEL:
図6は、本発明の第2実施形態におけるSEL保護処理の動作を示すフローチャートである。
【0111】
制御部365は、電流センサ135によって、トランシーバIC112の電源電流をモニタする(ステップS710)。
【0112】
次に、制御部365は、電源電流の異常(電源電流に過電流が流れたか、又は電源電流に不連続な変動があったか)の有無を判断する(ステップS720)。
【0113】
電源電流の異常が発生していない場合(ステップS720のNo)、制御部365は、ステップS710の処理へ戻る。
【0114】
電源電流の異常が発生した場合(ステップS720のYes)、制御部365は、ON/OFF回路145によって、トランシーバIC112の電源をオフした後にオンして電源をリセットし(ステップS730)、ステップS710の処理へ戻る。
【0115】
図7は、本発明の第2実施形態におけるSEL保護回路の動作の一例(SEL発生とリセットの様子)を示すグラフである。図7において、横軸は時間を示し、縦軸は電源電流の大きさを示す。ここで、時刻t1において電源電流の異常が発生し、時刻t2において電源のリセットを行っている。又、時刻t3において電源電流の異常が発生し、時刻t4において電源のリセットを行っている。
【0116】
●SEU:
図8は、本発明の第2実施形態におけるレジスタにおけるSEU発生時の動作を示すフローチャートである。
【0117】
制御部365は、レジスタ監視部315によって、常時、トランシーバIC112のレジスタ210におけるエラー(SEU)発生を監視する(ステップS810)。尚、レジスタ監視部315は、レジスタ210に入力されたレジスタ値を保存する。
【0118】
レジスタ210でエラーが発生していない(レジスタ210のレジスタ値が保存されたレジスタ値と一致する)と(ステップS820のNo)、制御部365は、ステップS810の処理へ戻る。
【0119】
レジスタ210でエラーが発生する(レジスタ210のレジスタ値が保存されたレジスタ値と一致しない)と(ステップS820のYes)、制御部365は、レジスタ監視部315によって、即座に保存されたレジスタ値をレジスタ210にリロードし(ステップS830)、ステップS841の処理へ戻る。
【0120】
制御部365は、上述したシングルイベントの種類毎の処理を並行して行うことによって、シングルイベントにより障害(SEFI、SEL、及びSEU)が発生しても瞬時に復帰し、トランシーバIC112にダメージを与えず、且つトランスポンダ105の動作停止を最小限に抑える。
【0121】
以上説明したように、本実施形態におけるトランスポンダ105では、ほとんどのRF部品をシングルイベント耐性のない一般民生品のトランシーバIC112で代替することができるという効果がある。
【0122】
又、本実施形態におけるトランスポンダ105では、トランシーバIC112がレジスタ書き換えによりほとんどの変調方式及び復調方式に対応できるいわゆるSDR(Software Defined Radio)である場合には、トランシーバIC112の再プログラム(変調方式の変更やビットレートの変更等)にも対応できるという効果がある。
【0123】
図9は、本発明の各実施形態における信号処理部を実現可能なハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【0124】
信号処理部901は、記憶装置902と、ソフトウェア処理部903と、I/O(Input/Output)装置908と、ハードウェア処理部909とを備え、これらが内部バス906によって接続されている。記憶装置902は、信号処理部901のソフトウェア処理部903の動作プログラムを格納する。ソフトウェア処理部903は、信号処理部901の全体を制御し、記憶装置902に格納された動作プログラムを実行し、I/O装置908によって信号処理部901のプログラムの実行やデータの送受信を行なう。ハードウェア処理部909は、ソフトウェア処理部903で行わない処理を行う。尚、上記の信号処理部901の内部構成は一例である。
【0125】
上述した本発明の各実施形態における信号処理部901は、専用の装置によって実現してもよいが、I/O装置908が外部との通信を実行するハードウェアの動作以外は、コンピュータ(FPGA(Field-Programmable Gate Array)やプロセッサ等)によっても実現可能である。この場合、係るコンピュータは、記憶装置902に格納されたソフトウェア・プログラムをソフトウェア処理部903に読み出し、読み出したソフトウェア・プログラムをソフトウェア処理部903において実行する。上述した各実施形態の場合、係るソフトウェア・プログラムには、上述したところの、図1、2、3に示した、信号処理部120、122、125の各部の機能を実現可能な記述がなされていればよい。但し、これらの各部には、適宜ハードウェアを含むことも想定される。そして、このような場合、係るソフトウェア・プログラム(コンピュータ・プログラム)は、本発明を構成すると捉えることができる。更に、係るソフトウェア・プログラムを格納した、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体も、本発明を構成すると捉えることができる。
【0126】
以上、本発明を、上述した各実施形態およびその変形例によって例示的に説明した。しかしながら、本発明の技術的範囲は、上述した各実施形態およびその変形例に記載した範囲に限定されない。当業者には、係る実施形態に対して多様な変更又は改良を加えることが可能であることは明らかである。そのような場合、係る変更又は改良を加えた新たな実施形態も、本発明の技術的範囲に含まれ得る。そしてこのことは、特許請求の範囲に記載した事項から明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0127】
本発明は、人工衛星、ロケット等に搭載されるか、又は、宇宙、原子力関連施設、高放射線領域等に設置されるトランスポンダに利用できる。又、本発明は、移動体に搭載されるトランスポンダ、又は、微細化したプロセスにて製造された半導体デバイスを含むトランスポンダに利用できる。
【符号の説明】
【0128】
100、102、105 トランスポンダ
110、112 トランシーバ集積回路
120、122、125 信号処理部
152 RFカップラ
210 レジスタ
221、222 受信部
231 送信部
361、362 送受信監視部
363 レジスタ監視部
364 電源電流監視部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9