(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022108765
(43)【公開日】2022-07-27
(54)【発明の名称】安全継手
(51)【国際特許分類】
F16L 37/32 20060101AFI20220720BHJP
【FI】
F16L37/32
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021003872
(22)【出願日】2021-01-14
(71)【出願人】
【識別番号】000151346
【氏名又は名称】株式会社タツノ
(74)【代理人】
【識別番号】110000431
【氏名又は名称】弁理士法人高橋特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹澤 正浩
【テーマコード(参考)】
3J106
【Fターム(参考)】
3J106BA01
3J106BB02
3J106BC09
3J106BC12
3J106BE24
3J106CA16
3J106GA02
3J106GA04
3J106GA23
3J106GB02
(57)【要約】
【課題】プラグ(ノズル側部材)がソケット(充填装置側部材)から抜け出す初期の段階で直ちに水素ガス流路を遮断して、アウトガスの放出を防止出来る安全継手の提供。
【解決手段】本発明の安全継手(100、100-1)は、プラグ内流路(1A)が形成され、ソケット(20)との接続時には遮断弁(5)が開放するプラグ(10)と、プラグ(10)との接続時には流路(1A)と連通するソケット内流路(21A)が形成されるソケット(20)から構成され、プラグ(10)がソケット(20)から離脱すると両流路(1A、21A)を遮断する管継手において、ソケットには流路(21A)と連通し、流路(21A)に直交する開口部(21C)が形成され、プラグとソケットの接続時には、開口部にプラグの突出部(3)が挿入され、プラグがソケットから外れる初期段階で流路(21A)を瞬時に閉鎖する流路遮断機構(30、31)を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に流路が形成され、充填装置側部材と接続されている状態では遮断弁が開放しているノズル側部材と、
ノズル側部材と接続している状態でノズル側部材の流路と連通している流路が形成されている筒状の充填装置側部材から構成され、
ノズル側部材が充填装置側部材から離脱するとノズル側部材及び充填装置側部材における流路を遮断する管継手において、
充填装置側部材には前記流路と連通し且つ前記流路に対して直交して延在する開口部が形成されており、
ノズル側部材と充填装置側部材が接続している場合には、充填装置側の開口部にノズル側部材の突出部が挿入されており、
ノズル側部材が充填装置側部材から外れる初期段階で充填装置側部材の流路を瞬時に閉鎖する充填装置側部材流路遮断機構を有することを特徴とする安全継手。
【請求項2】
充填装置側部材流路遮断機構は、充填装置側部材の流路には設けられた弁体と、当該弁体を付勢する充填装置側の弾性部材と、充填装置側部材の弁体を支持している支持部材を含み、
当該支持部材は、ノズル側部材と充填装置側部材が接続している場合には回転形状部材に載置され、ノズル側部材が充填装置側部材から外れる初期段階で充填装置側の弁体を支持しない状態に変動する請求項1の安全継手。
【請求項3】
回転形状部材には折り返し部が設けられており、
ノズル側部材が充填装置側部材から外れる初期段階で支持部材が充填装置側部材の弁体を支持しない状態に変動した後、回転形状部材の折り返し部は支持部材を包囲する位置に移動する請求項2の安全継手。
【請求項4】
充填装置側部材流路遮断機構は、充填装置側部材の開口部に摺動可能に挿入された栓部材を備え、
栓部材はノズル側部材の突出部に接続されており、
充填装置側部材の開口部にはシール材が配置されており、ノズル側部材の突出部の外周面及び栓部材の外周面と開口部の内周面との境界部から高圧気体が漏洩するのを防止する機能を有している請求項1の安全継手。
【請求項5】
ノズル側部材が充填装置側部材から外れる際に栓部材とノズル側部材の突出部との接続を解除する機構を備え、当該機構はノズル側部材の突出部に形成された溝と、栓部材に形成された開口部と、突出部の溝及び栓部材の開口部に嵌合したボールと、充填装置側部材の開口部における拡径部と、栓部材の端部のフランジ部と、充填装置側部材に設けられたストッパ部材の端面を含む請求項4の安全継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば燃料として用いられる水素ガス等の気体を充填するための充填装置に関する。より詳細には、本発明は当該充填装置で気体を充填している際には緊急事態が生じた時に、充填装置と気体充填用ノズルとを分離する管継手に関する。
【背景技術】
【0002】
図11で示す様に、水素充填施設に設けられた水素充填装置200の充填ホース201先端に設けた充填ノズル202と、車両A(例えば燃料電池車:FCV)の車両側充填口203とを接続して、車両Aに対して水素ガスを充填する。係る充填は、車両Aの水素タンク204の最高使用圧力に応じて制御しながら行われる。
ここで、例えば充填中に車両Aが発進する等により充填ホース201が引っ張られると、水素充填装置200や充填ノズル202、充填ホース201、その他の機器が破損して水素ガスが噴出してしまう。そこで、緊急離脱用の管継手300を水素充填装置200と充填ホース201の途中に設け、一定以上の引張荷重が掛かると緊急離脱用の管継手300を分離して、水素充填装置200や充填ノズル202、充填ホース201、その他の機器が破損する事態を防止している。
【0003】
その様な緊急離脱用の管継手の従来技術として、出願人は先に、内部に流路が形成された筒状のプラグ(充填ノズル側部材)と、当該プラグが挿入されると遮断弁が開いてプラグ内流路と連続するソケット内流路が形成された筒状のソケット(充填装置側部材)から構成され、ソケットからプラグが離脱すると遮断弁が閉じる緊急離脱用の管継手において、プラグ内流路の中心軸とソケット内流路の中心軸が同一直線状に配置されておらず、ソケットにプラグが挿入されている場合には、ソケット側弁棹の端部(弁体の反対側端部)はプラグ側ロッド収納ケースに当接し、ソケット側弁棹の他端側に設けられた弁体はソケット側の弾性体の弾性反撥力に抗してソケット側弁座から離隔した位置に保持され、プラグ側ロッド収納ケースに保持された係止部材はソケット本体側の開口部分の内壁面により半径方向外方の移動が抑制され、プラグ側弁棹が係止部材に当接してソケット側に移動せず、プラグ側弁棹に設けられた弁体はプラグ側の弾性体の弾性反撥力に抗してプラグ側弁座から離隔した位置に保持される管継手(緊急離脱用の管継手)を提案している(特許文献1参照)。
上述した管継手(特許文献1の管継手)は有用な技術である。
【0004】
しかし従来技術(特許文献1)に係る管継手100において、充填ホース201(
図11)に大きな引張力が作用した場合、プラグ10がソケット20から抜け出す初期の段階(抜け出し始めの段階)では、
図12で示す様に、ソケット20側の弁体25に接続したソケット側ロッド22が、プラグ側弁棹2或いは当該弁棹のカバー部材3に載置してしまう。その様な状態(
図12で示す状態)では、ソケット側弁体25はソケット20側のスプリング23の弾性反発力に抗してソケット側弁座21Eから離隔した位置となり、ソケット側遮断弁24は開放された状態である。そのため、プラグ10がソケット20から抜け出す初期段階(抜け出し始めの段階)では、ソケット20側の開口部21Cを介して、充填装置200(
図11)から供給された高圧の水素ガスが、いわゆる「アウトガス」として管継手100の外部に流出してしまう。
図12においては、アウトガスの流れは矢印OGで示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、ノズル側部材であるプラグが充填装置側部材であるソケットから抜け出す初期の段階で直ちに水素ガス流路を遮断して、アウトガスの放出を防止することが出来る安全継手の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の安全継手(100、100-1)は、
内部に流路(1A:プラグ内流路)が形成され、充填装置側部材(20:ソケット)と接続されている状態では遮断弁(5:プラグ側遮断弁)が開放している筒状のノズル側部材(10:プラグ)と、
ノズル側部材(10)と接続している状態でノズル側部材(10)の流路(1A:プラグ内流路)と連通している流路(21A:ソケット内流路)が形成されている筒状の充填装置側部材(20:ソケット)から構成され、
ノズル側部材(10)が充填装置側部材(20)から離脱するとノズル側部材(10)及び充填装置側部材(20)における流路(プラグ内流路1A及びソケット内流路21A)を遮断する(緊急離脱用の)管継手(100、100-1)において、
充填装置側部材(20)には前記流路(21A:ソケット内流路)と連通し且つ前記流路(21A)に対して直交して延在する開口部(21C)が形成されており、
ノズル側部材(10)と充填装置側部材(20)が接続している場合には、充填装置側の開口部(21C)にノズル側部材(10)の突出部(3)が挿入されており、
ノズル側部材(10)が充填装置側部材(20)から外れる初期段階で充填装置側部材(20)の流路(21A)を瞬時に閉鎖する充填装置側部材流路遮断機構(30、31)を有することを特徴としている。
【0008】
本発明において、充填装置側部材流路遮断機構(30)は、充填装置側部材(20)の流路(21A)に設けられた弁体(25:ソケット側弁体)と、当該弁体(25)を付勢する充填装置側の弾性部材(23:ソケット側スプリング)と、充填装置側部材(20)の弁体(25)を支持(載置)している支持部材(26:弁体支持部材)を含み、
当該支持部材(26)は、ノズル側部材(10)と充填装置側部材(20)が接続している場合には回転形状部材(11)に載置(支持)され、ノズル側部材(10)が充填装置側部材(20)から外れる初期段階で(ノズル側部材10が移動すると)充填装置側の弁体(25)を支持しない状態に変動することが好ましい。
【0009】
この場合、回転形状部材(11)には折り返し部(11R)が設けられており、
ノズル側部材(10)が充填装置側部材(20)から外れる初期段階で支持部材(26)が充填装置側部材(20)の弁体(25)を支持しない(載置しない)状態に変動した後、回転形状部材(11)の折り返し部(11R)は支持部材(26)を包囲する位置に移動するのが好ましい。
【0010】
また本発明において、充填装置側部材流路遮断機構(31)は、
充填装置側部材(20)の開口部(21C)に摺動可能に挿入された栓部材(27)を備え、
栓部材(27)はノズル側部材(10)の突出部(3)に接続されており、
充填装置側部材(20)の開口部(21C)にはシール材(S1、S2)が配置されており、ノズル側部材(10)の突出部(3)の外周面及び栓部材(27)の外周面と開口部(21C)の内周面との境界部から高圧気体が漏洩するのを防止する機能を有しているのが好ましい。
【0011】
この場合、ノズル側部材(10)が充填装置側部材(20)から外れる際に栓部材(27)とノズル側部材(10)の突出部(3)との接続を解除する機構を備え、当該機構はノズル側部材(10)の突出部(3)に形成された溝(3D)と、栓部材(27)に形成された開口部(27A)と、突出部(3)の溝(3D)及び栓部材(27)の開口部(27A)に嵌合したボール(28)と、充填装置側部材(20)の開口部(21C)における拡径部(21H)と、栓部材(27)の端部のフランジ部(27B)と、充填装置側部材(20)に設けられたストッパ部材(29)の端面(29A)を含むのが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
上述の構成を具備する本発明の安全継手(100)において、ノズル側部材(10)と充填装置側部材(20)が接続している場合には支持部材(26:弁体支持部材)は回転形状部材(11)に載置(支持)され、ノズル側部材(10)が充填装置側部材(20)から外れる初期段階で支持部材(26)はノズル側部材(10)の移動に伴い充填装置側の弁体(25)を支持しない状態に変動する様に構成すれば、ノズル側部材(10)が充填装置側部材(20)から外れる初期の段階で、支持部材(26)は、ノズル側部材(10)に連動して、弁体(25)を支持しない(載置しない)状態に変動する。弁体(25)が支持部材(26)に支持されなくなると、支持部材(26)は弁体(25)の移動を阻止しないので、充填装置側の弾性部材(23)により充填装置側の弁体(25)が押圧されて弁座(21E:ソケット側弁座)に座着する。そのため、ノズル側部材(10)が充填装置側部材(20)から外れる初期の段階で、充填装置側の遮断弁(24)が遮断し、アウトガスの発生が抑えられる。
また、本発明の安全継手(100-1)において、充填装置側部材(20)の開口部(21C)に摺動可能に挿入された栓部材(27)を備え、栓部材(27)はノズル側部材(10)の突出部(3)に接続されており、充填装置側部材(20)の開口部(21C)にはシール材(S1、S2)が配置されており、ノズル側部材(10)の突出部(3)の外周面及び栓部材(27)の外周面と開口部(21C)の内周面との境界部から高圧気体が漏洩するのを防止する機能を有していれば、ノズル側部材(10)が充填装置側部材(20)から外れる際に、ノズル側部材(10)の突出部(3)或いは栓部材(27)が充填装置側の流路(21A)を閉鎖する様に移動する。そして、シール材(S1、S2)が突出部(3)及び栓部材(27)の外周面と開口部(21C)の内周面との境界部をシールするので、充填装置側部材(20)の流路(21A)における高圧空気が開口部(21C)から漏出することが防止される。
【0013】
ここで、水素ガスが円環状空間(21F)内に溜まることにより、ノズル側部材(10)が充填装置側部材(20)から外れる際に、他の部材・部品と結合されておらず、自由に動ける状態(いわゆるフリーな状態)になる部品が存在すると、ノズル側部材(10)が抜けるのと共に、自由に動ける状態の部品はノズル側部材(10)が抜けるのと反対側に押圧され、ノズル側部材(10)或いは充填装置側部材(20)に干渉する(いわゆる「噛んでしまう」状態になる)恐れがある。或いは、自由に動ける状態の部品も充填装置側部材(20)から外れて、水素充填ステーションの何れかに紛れ込んでしまい、紛失してしまう。
この様に、他の部材と噛んでしまった部品や、紛失した部品は再利用することが出来ない。そのため、ノズル側部材(10)が充填装置側部材(20)から外れる度毎に新品を使用しなければならず、新品を用意するためのコストが嵩んでしまう。
【0014】
それに対して本発明の安全継手(100)において、前記回転形状部材(11)には折り返し部(11R)が設けられており、ノズル側部材(10)が充填装置側部材(20)から外れる初期段階で支持部材(26:弁体支持部材)が充填装置側部材(20)の弁体(25)を支持しない(載置しない)状態に変動した後、回転形状部材(11)の折り返し部(11R)は支持部材(26)を包囲する位置に移動すれば、回転形状部材(11)の折り返し部(11R)に包囲された支持部材(26)は他の部品と干渉することはなく、紛失することも防止される。そのため、支持部材(26)やその他の部品を再利用することが出来る。
また本発明の安全継手(100-1)において、ノズル側部材(10)が充填装置側部材(20)から外れる際に栓部材(27)とノズル側部材(10)の突出部(3)との接続を解除する機構を備えていれば、ノズル側部材(10)が充填装置側部材(20)から外れても、前記栓部材(27)は充填装置側部材(20)の開口部(21C)から脱落することは無く、そのため、紛失してしまう部材は存在しない。また、ノズル側部材(10)が充填装置側部材(20)から外れる際に、ノズル側部材(10)以外には、栓部材(27)が充填装置側部材(20)の開口部(21C)を摺動するのみで、その他の部品がノズル側部材(10)や栓部材(27)と干渉してしまうことは無い(いわゆる「噛んでしまう」ことはない)。従って、ノズル側部材(10)が充填装置側部材(20)から外れても、全ての部品を再利用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る安全継手において、プラグがソケットに接続している状態を示す説明断面図である。
【
図2】
図1における弁体支持部材、回転形状部材の説明拡大図である。
【
図3】
図1の安全継手において、プラグがソケットから外れた初期の段階で、プラグ及びソケットの遮断弁が閉鎖した状態を示す説明断面図である。
【
図4】
図3の状態から、さらにプラグがソケットから外れた状態を示す説明断面図である。
【
図5】第1実施形態において、プラグがソケットから完全に外れた状態を示す説明断面図である。
【
図6】
図4、
図5の状態において、弁体支持部材の基部を回転体形状部材の折り返し部が包囲して保持した状態を示す説明斜視図である。
【
図7】第1実施形態の変形例を示す説明断面図である。
【
図8】本発明の第2実施形態に係る安全継手において、プラグがソケットに接続している状態を示す説明断面図である。
【
図9】
図8の安全継手において、プラグがソケットから外れて、プラグ及びソケットの遮断弁が閉鎖した状態を示す説明断面図である。
【
図10】本発明の第2実施形態に係る安全継手において、プラグがソケットから完全に外れた状態を示す説明断面図である。
【
図11】水素充填施設の概要を示すブロック図である。
【
図12】従来技術に係る安全継手において、プラグがソケットから抜き出る初期の段階を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図示の実施形態において、
図12で示すのと同様な部材には、
図12と同様な符号を付している。
図示の実施形態において、全体符号100で示す第1実施形態に係る安全継手と、符号100-1で示す第2実施形態に係る示す安全継手は、それぞれ、充填装置側部材であるソケット20と、ノズル側部材であるプラグ10とを有しており、プラグ10が、ソケット20から抜け出す初期の段階で、ソケット20内の流路21Aが遮断させるように構成されている。
【0017】
最初に
図1~
図6を参照して、第1実施形態の安全継手100を説明する。
第1実施形態でプラグ10(ノズル側部材)とソケット20(充填装置側部材)が接続した状態が示されている
図1において、全体が筒状のプラグ10は、プラグ本体1とソケット20側に突出するプラグ側突出部材3を有している。
図1で示す様に、プラグ10とソケット20が接続されている状態では、プラグ側突出部材3は、ソケット本体21に形成された開口部21Cに挿入されている。
プラグ本体1の車両側(
図1で右側、ソケット20側から離隔した側)端部の中央部(
図1ではプラグ本体1の右端における上下方向中央部)には、充填ホース(図示しない)に接続される水素ガス供給口1Bが設けられている。
【0018】
プラグ側突出部材3の半径方向中央部にはプラグ内流路1Aが形成されており、プラグ内流路1Aはプラグ10の軸方向(
図1では左右方向)に延在している。
プラグ内流路1Aにはプラグ側弁体収容部1Cが設けられており、プラグ側弁体収容部1Cはプラグ内流路1Aにおける拡径された領域である。プラグ内流路1Aは、プラグ側突出部材3内の流路(プラグ側突出部材3の内部空間3B)から、プラグ側弁体収容部1C内の流路を介して、水素ガス供給口1Bに延在している。換言すれば、プラグ内流路1Aは、プラグ側突出部材3の内部空間3B、プラグ側弁体収容部1C内の流路を含む。
また、プラグ側突出部材3には孔部3Aが形成されている。プラグ内流路1Aは、孔部3A、回転形状部材11の孔部11B(
図2参照)、ソケット本体21の開口部21Cにおける円環状空間21F、支持部材26(弁体支持部材)の孔部26Cを介して、後述するソケット内流路21Aは連通している。ここで、円環状空間21Fは開口部21Cの拡径部である。
【0019】
プラグ内流路1Aにはプラグ側ロッド2が収容されている。プラグ側ロッド2のソケット20から離隔した側(
図1で右側)の先端には、プラグ側弁体6が設けられている。プラグ側弁体6は、弁体収容部1Cに収容されている。
弁体収容部1C内において、プラグ側弁体6の車両側(ソケット20から離隔した側:
図1で右側)にはプラグ側スプリング4(弾性材)が配置されており、プラグ側スプリング4はプラグ側弁体6をソケット20側(
図1で左側)に付勢している。
プラグ側弁体6と弁座1Fによりプラグ側遮断弁5が構成されており、弁座1Fは弁体収容部1Cの段部により構成されている。そしてプラグ側遮断弁5は、プラグ内流路1Aを遮断し或いは開放する機能を有している。
図1に示すプラグ10とソケット20が接続された状態では、プラグ側遮断弁5は開放され、プラグ内流路1Aはソケット内流路21Aと連通している。
【0020】
図1において、プラグ側突出部材3のソケット20側(
図1で左側)の先端近傍に係止用ボール用7を嵌合するための開口部が形成されており、
図1で示す状態では当該開口部内に係止用ボール7が保持されている。後述する様にプラグ10とソケット20の接続が解除された場合に、係止用ボール7は前記開口部から外れて、円環状空間21Fに収容される。
プラグ側弁体6に接続しているプラグ側ロッド2はソケット側(
図1で左側)に延在しており、その先端には平板部材2Aが設けられている。プラグ10とソケット20が接続されている状態(
図1の状態)では、係止用ボール7におけるプラグ側突出部材3の内部空間3Bへ突出した部分に平板部材2Aが当接するため、プラグ側ロッド2は、プラグ側スプリング4の弾性反発力に抗して、
図1で示す位置よりもソケット側(
図1では左側)に移動することは出来ない。そして
図1で示す状態では、係止用ボール7は円環状空間21F内には位置していない。
図1で示す状態では、平板部材2A及びプラグ側ロッド2が
図1で示す位置よりもソケット側(
図1では左側)に移動することは出来ないため、プラグ側弁体6はプラグ用弁座1Fから離隔した状態で保持され、プラグ10側の遮断弁5は開放状態に保持される。
なお、
図1において、符号SSはシール材(例えばOリング)を示す。
【0021】
図1において、全体が筒状のソケット20のソケット本体21の図示しない水素充填装置側(
図1で上方側)端部には、水素充填装置から供給される水素ガスを導入する水素ガス導入口21Bが設けられている。水素ガス導入口21Bにはプラグ36が係合している。
ソケット本体21には、開口部21Cに対して直交する方向(
図1の上下方向)に延在するソケット内流路21Aが形成されている。ソケット内流路21Aには拡径された領域が形成されており、当該拡径された領域は、ソケット側弁体25を収容するソケット側弁体収容部21Dを構成している。ソケット側弁体収容部21Dの開口部21C側(
図1の下方)には支持部材収容部21G(ソケット内流路21Aの一部)が形成される。
【0022】
図1において、ソケット20は、ソケット側弁体25、ソケット側弁体25の充填装置側(
図1で上方)に設けられたソケット側スプリング23、弁体支持部材26を有しており、ソケット側弁体25、ソケット側スプリング23、弁体支持部材26は、ソケット本体21の内部空間である弁体収容部21D、弁体支持部材収容部21Gに収容されている。ソケット側スプリング23はソケット側弁体25を開口部21C側(
図1で下側)に付勢している。
ソケット側弁体25と弁座21Eによりソケット側遮断弁24が構成されており、弁座21Eは弁体収容部21Dの段部により構成されている。そしてソケット側遮断弁24は、ソケット内流路21Aを遮断し或いは開放する機能を有している。
図1に示す様にプラグ10とソケット20が接続されている状態では、ソケット側遮断弁24は開放されている。その際、ソケット内流路21Aは、水素ガス導入口21Bからソケット側弁体収容部21Dを介して、
図2で示す様に、支持部材収容部21G、弁体支持部材26の孔部26C、円環状空間21F、回転形状部材11の孔部11Bを介して、ソケット本体21の開口部21C(貫通孔)に連通しており、さらに、プラグ側突出部材3に形成された孔部3A及び内部空間3Bを介して、プラグ内流路1Aと連通している。
【0023】
図1、
図2において、支持部材26(弁体支持部材)は、ソケット側弁体25とは別体に構成され、ロッド部26Aと円板状の基部26Bを有している。
図1、
図2で示す様にプラグ10とソケット20が接続されている場合、弁体支持部材26のロッド部26Aの上端(
図1で)は弁体25を支持して弁体25を弁座21Eよりも離隔せしめ、以て、ソケット側遮断弁24を開放状態に維持する。一方、プラグ10がソケット20から外れている場合(
図3~
図5)には、弁体支持部材26のロッド部26Aの上端(
図1で)は弁体25を支持せず、弁体25はソケット側スプリング23の弾性反発力により弁座21Eに座着して、ソケット側遮断弁24を遮断状態する。
弁体支持部材26の基部26Bは、支持部材収容部21Gの中空断面に嵌合するが摺動可能な外径及び寸法に設定されており、基部26Bにはガス流路として孔部26Cが形成されている。そのため、
図1で示す状態において、水素ガスは孔部26Cを介して、ソケット内流路21Aからプラグ側突出部材3の内部空間3Bに流れ、以て、ソケット20の水素ガス導入口21Bからプラグ10の水素ガス供給口1Bに至る水素ガス流路が構成される。
【0024】
図示の第1実施形態に係る安全継手100はソケット側流路遮断機構30(充填装置側部材流路遮断機構)を有しており、ソケット側流路遮断機構30は、プラグ10がソケット20から外れる初期段階(
図3参照)でソケット内流路21Aを瞬時に閉鎖する機能を有している。
ソケット側流路遮断機構30は、ソケット内流路21Aに設けられたソケット側弁体25と、当該弁体25を付勢するソケット側スプリング23(弾性部材)と、ソケット側弁体25を支持(載置)している弁体支持部材26と、円環状空間21F内に配置される後述する回転形状部材11を含んでいる。回転形状部材11には折り返し部11R(
図2)が設けられている。
プラグ10とソケット20が接続している場合には、弁体支持部材26の基部26Bは回転形状部材11の折り返し部11Rに載置(支持)されている。一方、プラグ10がソケット20から外れて移動する(ソケット20から外れる)初期段階で、
図3に示す様に、基部26Bは回転形状部材11の折り返し部11Rに載置(支持)されない状態となるため、弁体支持部材26はプラグ側(
図1で下側)に移動(落下)して、ソケット側弁体25を支持しない状態となる。
【0025】
図1、
図2で示す様に、回転形状部材11は折り返し部11Rと本体部11A(
図2)を有しており、プラグ側突出部材3の外周面と相補形状となった回転体形状に形成されている。本体部11Aのプラグ10と離隔する側(
図1、
図2の左側)には、
図2で示す様に、回転形状部材係止用ボール8が嵌入される貫通孔11Hが形成されており、また、本体部11Aには流路を構成する孔部11Bが形成されている。
回転形状部材係止用ボール8は、プラグ側突出部材3の円周方向に間隔をあけて複数個(例えば2個)設けられており、回転形状部材係止用ボール8は、プラグ側突出部材3に形成された貫通孔3Eに嵌入しており、回転形状部材係止用ボール8の一部は、回転形状部材11の貫通孔11Hに嵌入している。
【0026】
プラグ側弁体6からソケット側(
図1で左側)に延在しているプラグ側ロッド2の所定位置には平板部材であるボール支持部材2Bが設けられている。当該所定位置は、プラグ10とソケット20が接続された状態(
図1、
図2)における回転形状部材係止用ボール8のロッド延在方向位置における位置である。回転形状部材係止用ボール8は、その半径方向内側の部分がボール支持部材2Bに当接することにより、プラグ10とソケット20が接続された状態(
図1、
図2)では半径方向内方に移動しない。
プラグ10とソケット20が接続された状態で、ボール支持部材2Bが回転形状部材係止用ボール8を半径方向内方に移動しない様に支持しているため、回転形状部材11は回転形状部材係止用ボール8、貫通孔11Hを介して、プラグ側突出部材3と一体になっている。
プラグ10とソケット20が接続している状態(
図1、
図2)では、回転形状部材11の折り返し部11Rに載置(支持)されている弁体支持部材26のロッド部26Aによってソケット側弁体25は支持されており、ソケット側スプリング23の弾性反発力に抗してソケット側弁体25はソケット側弁座21Eから離隔した位置に保持され、ソケット側遮断弁24は開放した状態に保持される。
【0027】
図1において、例えば水素充填中の燃料電池自動車(FCV:図示せず)が急発信して、充填ホース(図示せず)に大きな張力が作用すると、プラグ10がソケット20から抜け出し、矢印Q方向に移動する。
プラグが矢印Q方向に移動すると、係止用ボール7も矢印Q方向(
図1では右側)に移動して、円環状空間21Fの位置に来る。係止用ボール7が円環状空間21Fに到達すると、平板部材2Aを介してプラグ側スプリング4の弾性反発力が作用している係止用ボール7は、半径方向外側に移動して円環状空間21F内に進入する。
係止用ボール7が円環状空間21F内に進入すると、係止用ボール7はプラグ側ロッド2の平板部材2Aと当接しなくなるので、プラグ側ロッド2の端部の平板部材2Aは係止用ボール7により矢印R側(
図1の左側)の移動が制限されなくなる。そのため、プラグ側スプリング4の弾性反発力によって、
図3で示す様に、プラグ側弁体6、プラグ側ロッド2は矢印R側に移動し、プラグ側弁体6がプラグ側弁座1Fに座着し、プラグの遮断弁5が閉鎖される(プラグ内流路1Aが遮断される)。そしてプラグ10側に存在する高圧の水素はプラグ側弁体6よりソケット20側(矢印R側)には流出出来なくなる。
【0028】
上述した様に、
図1、
図2で示す状態では、回転形状部材係止用ボール8は回転形状部材11の貫通孔11Hに嵌入しており、且つ、プラグ側突出部3の貫通孔3Eに嵌入しているので、プラグ10がソケット20から外れて矢印Q方向に移動すると、プラグ側突出部材3と共に回転形状部材11も矢印Q方向に移動する。
回転形状部材11が矢印Q方向に移動すると、弁体支持部材26は回転形状部材11に載置されなくなり、支持されていない状態になる。そのため、
図3で示す様に、ソケット側スプリング23の弾性反発力によりソケット側弁体25及び弁体支持部材26は開口部21C側(
図1~
図3では下方)に移動(落下)し、ソケット側弁体25はソケット側弁座21Eに座着して、ソケット側遮断弁24が閉鎖され、ソケット内流路21Aが遮断される。
換言すれば、ソケット20からプラグ10が外れる初期の段階で、回転形状部材11が矢印Q方向に移動して、弁体支持部材26は回転形状部材11に載置されていない状態になり、ソケット側スプリング23の弾性反発力により、瞬時にソケット側弁体25がソケット側弁座21Eに座着して、ソケット側遮断弁24が閉鎖される。そのため、従来技術(
図12)とは異なり、アウトガスは殆ど発生しない。
【0029】
また、ソケット20からプラグ10が外れる初期の段階で、係止用ボール7が円環状空間21Fに到達すると、プラグ側ロッド2端部の平板部材2Aが係止用ボール7による矢印R側(
図1~
図3の左側)への移動制限が解除され、プラグ側スプリング4の弾性反発力により、瞬時にプラグ側弁体6はプラグ側弁座1Fに座着し、プラグ側遮断弁5が閉鎖される。そのため、プラグ10側に存在する高圧の水素は弁体6より矢印Q方向(ソケット側)に流出することはない。
すなわち、第1実施形態に係る安全継手100において、プラグ10とソケット20の接続が解除されると、
図3に示す初期の段階であっても、プラグ側遮断弁5及びソケット側遮断弁24は瞬時に閉鎖され、プラグ内流路1A及びソケット内流路21Aが共に遮断される。そのため、水素ガスがプラグ10側から流出することが防止され、ソケット20側から流出することも防止される。
【0030】
図3で示す様に、ソケット側スプリング23の弾性反発力により弁体支持部材26がソケット本体21の開口部21C側(
図1で下側)に移動した際に、弁体支持部材26は、回転形状部材11における貫通口11H(
図2)が形成された部分に着地する。
図3で示す状態から、プラグ10がさらにソケット20から外れ(矢印Q方向に移動して)、
図4で示す状態になると、円環状空間21F及び開口部21Cに溜まった水素ガスは矢印R方向(
図4の左方向)に流出する。当該流出する水素ガスに連行されて回転形状部材11も矢印R方向に移動するが、回転形状部材11の本体部11Aが円環状空間21Fの矢印R方向側内壁と当接し、且つ、弁体支持部材26のロッド部26Aはソケット内流路21A内に延在しているため、弁体支持部材26は
図3で示す位置(ソケット内流路21A内の位置)に保持される。
その結果、
図4で示す様に、回転形状部材11の折り返し部11R(
図2)及び本体部11A(
図2)により、弁体支持部材26の基部26Bが包囲される。
【0031】
弁体支持部材26の基部26Bが回転形状部材11(の折り返し部11R及び本体部11A)により包囲された状態は、
図6において立体的に示されている。
図6では、説明のため弁体支持部材26(ロッド部26A、基部26B)以外のソケット20側の部材の図示を省略している。
ソケット支持部材5が回転形状部材11の折り返し部11R及び本体部11Aにより包囲される結果、プラグ側突出部材3が矢印Q方向に移動しても、
図4で示す様に、回転形状部材11により包囲された弁体支持部材26はソケット内流路21A直下の位置に保持され、開口部21Cから安全継手100の外部に出てしまうことはなく、プラグ10に連行されてしまうことも無い。
図5で示す様にプラグ10がソケット20から完全に外れても、同様である。
【0032】
上述した様に、回転形状部材11により包囲された弁体支持部材26はソケット内流路26直下の位置に保持され、それよりも矢印Q方向(プラグ10が抜ける方向)或いは矢印R方向(プラグ10が抜けるのとは反対の方向)には移動しない。そのため、プラグ10がソケット20から外れる際に、回転形状部材11及び弁体支持部材26が他の部材と干渉し或いは所謂「噛んだ」状態になることが防止される。また、プラグ10がソケット20から完全に外れた際に、回転形状部材11及び弁体支持部材26が安全継手100外に移動して紛失することも防止される。
そのため、回転形状部材11及び弁体支持部材26の再利用が可能となる。
【0033】
図1~
図6の第1実施形態に係る安全継手100によれば、プラグ10がソケット20から外れる初期段階でソケット内流路21Aを瞬時に閉鎖するソケット側流路遮断機構30を設け、ソケット側流路遮断機構30はソケット内流路21Aに設けられたソケット側弁体25、当該弁体25を付勢するソケット側スプリング23、ソケット側弁体25を支持(載置)している弁体支持部材26及び回転形状部材11を含んでいる。
弁体支持部材26は、プラグ10とソケット20が接続している場合には回転形状部材11に載置(支持)され、ソケット側弁体25を支持する一方、プラグ10がソケット20から外れる初期段階で、プラグ10の移動に伴いソケット側弁体25を支持しない状態に変動するので、プラグ10がソケット20から外れる初期段階で、プラグ10と共に回転形状部材11が移動すると、回転形状部材11の折り返し部11Rは弁体支持部材26を支持(載置)しなくなり、弁体支持部材26がソケット側弁体25を支持しない状態となる。
そのため、プラグ10がソケット20から外れる初期の段階で、弁体支持部材26はソケット側弁体25を支持しない(載置しない)状態に変動し、弁体支持部材26に支持されないソケット側弁体25はソケット側スプリング23により押圧されてソケット側弁座21Eに座着して、ソケット側遮断弁24が遮断し、アウトガスの発生が抑えられる。
【0034】
また、第1実施形態の安全継手100において、回転形状部材11には折り返し部11Rが設けられており、プラグ10がソケット20から外れる初期段階で弁体支持部材26がソケット側弁体25を支持しない(載置しない)状態に変動した後、円環状空間21F及び開口部21Cに溜まった水素ガスが矢印R方向(
図4の左方向)に抜け出す際に連行されて、回転形状部材11の折り返し部11Rは弁体支持部材26を包囲する位置に移動する。
そのため、回転形状部材11(の折り返し部11R)に包囲された弁体支持部材26及び回転形状部材11は他の部品と干渉することはなく、紛失することも防止される。したがって、弁体支持部材26及び回転形状部材11、その他の部品を再利用することが出来る。
【0035】
図7を参照して、
図1~
図6の第1実施形態の変形例を説明する。
図7の変形例では、ソケット本体21の開口部21C(貫通孔)のプラグ10と離隔した側(
図7では左側)にサイレンサ40(消音装置)を設け、プラグ10がソケット20から抜けるときの騒音を低減している。
図7の変形例におけるその他の構成及び作用効果は、
図1~
図6の第1実施形態と同様である。
【0036】
次に
図8~
図10を参照して、本発明の第2実施形態を説明する。第2実施形態を説明するに際して、第1実施形態と共通する部材(プラグ、ソケット、弁体、遮断弁、プラグ内流路、ソケット内流路等)には同一の符号を付して、複雑化を回避している。
以下の説明では、第2実施形態が第1実施形態と相違する部分を主として説明して、第1実施形態と同様な構成及び作用効果については簡略化して説明する。
全体を符号100-1で示す第2実施形態に係る安全継手は、
図8において、プラグ10(ノズル側部材)とソケット20(充填装置側部材)が連結している状態で示されている。全体が筒状のプラグ10は、プラグ本体1とソケット20側に突出するプラグ側突出部材3を有しており、プラグ側突出部材3のソケット20側(
図8で左側)先端にはロッド状部分3Cが設けられ、ロッド状部分3Cの先端(
図8で左側端部)近傍には栓部材係止用ボール28が嵌合する溝3Dが形成されている。
【0037】
図8で示す様にプラグ10とソケット20が接続されている状態では、プラグ側突出部材3は、ソケット本体21に形成された開口部21Cに挿入されている。プラグ本体1の車両側(
図8では右側:ソケット20側から離隔した側)端部には、充填ホース(図示せず)に接続される水素ガス供給口1Bが設けられている。
プラグ本体1及びプラグ側突出部材3の半径方向中央部(
図8では上下方向中央部)には、プラグ10の軸方向(
図8では左右方向)に延在するプラグ内流路1Aが形成されている。プラグ内流路1Aは、プラグ側突出部材3内の流路(プラグ側突出部材3の内部空間3B)から、プラグ側弁体収容部1C内の流路を介して、水素ガス供給口1Bに延在している。
また、プラグ側突出部材3には孔部3Aが形成されており、孔部3A、開口部21Cの拡径部である円環状空間21Fを介して、プラグ内流路1Aとソケット内流路21Aは連通している。
【0038】
プラグ内流路1Aにはプラグ側ロッド2が収容されており、プラグ側ロッド2のソケット20から離隔した側(
図8で右側)の先端にはプラグ側弁体6が設けられている。
弁体収容部1C内において、プラグ側弁体6の車両側(ソケット20から離隔した側:
図8で右側)にはプラグ側スプリング4(弾性材)が配置されており、プラグ側スプリング4はプラグ側弁体6をソケット20側(
図8で左側)に付勢している。プラグ側弁体6と弁座1Fによりプラグ側遮断弁5が構成されている。プラグ側遮断弁5は、プラグ内流路1Aを遮断し或いは開放する機能を有している。
図8に示すプラグ10とソケット20が接続された状態では、プラグ側遮断弁5は開放され、プラグ内流路1Aはソケット内流路21Aと連通している。
【0039】
プラグ10とソケット20が接続している場合にプラグ側遮断弁5が開放され、プラグ10がソケット20から外れ始めると瞬時にプラグ側遮断弁5が閉鎖するメカニズムについては、
図8~
図10の第2実施形態と
図1~
図6の第1実施形態は同様である。
すなわち、プラグ10とソケット20が接続している場合にはプラグ側突出部材3のソケット20側(
図8で左側)に形成された開口部に係止用ボール7が保持されている。プラグ10とソケット20の接続が解除され始めると、係止用ボール7はソケット本体21の開口部21Cの拡径部で構成された円環状空間21Fに収容される。プラグ側ロッド2の先端には平板部材2Aが設けられており、プラグ10とソケット20が接続されている状態では、平板部材2Aは係止用ボール7におけるプラグ側突出部材3の内部空間3Bへ突出した部分に当接している。そのため、プラグ側ロッド2は、プラグ側スプリング4の弾性反発力に抗して、矢印R側(ソケット20側:
図8では左側)に移動せず、プラグ側弁体6はプラグ用弁座1Fから離隔した状態で保持され、プラグ10側遮断弁5は開放状態となる。
図8~
図10において、符号S1、S2、S3はシール材(例えばO-リング)である。
【0040】
図8において、全体が筒状のソケット20のソケット本体21には、プラグ側突出部材3と直交する方向(
図8で上下方向:開口部21Cに対して直交する方向)にソケット内流路21Aが形成されており、ソケット内流路21Aは、図示しない水素充填装置側(
図8で上方側)端部の水素ガス導入口21Bから開口部21Cまで連通している。
第2実施形態では、第1実施形態と異なり、ソケット内流路21Aにソケット側スプリング、ソケット側弁体、ソケット側遮断弁は設けられていない。
図8に示す様に、プラグ10とソケット20が接続されている状態では、ソケット内流路21Aは、開口部21Cの拡径部で構成された円環状空間21F、プラグ側突出部材3に形成された孔部3Aを介して、プラグ内流路1Aと連通している。
【0041】
図8において、ソケット20(ソケット本体21)の開口部21C内に摺動可能に栓部材27が挿入されている。円筒状の栓部材27において、プラグ10とソケット20が接続された状態(
図8の状態)では、プラグ側突出部材3のロッド状部分3Cに形成された溝3Dに対峙する位置に、栓部材27の開口部27Aが位置する様に設定されている。
そして、ロッド状部分3Cの溝3Dと栓部材27の開口部27Aには栓部材係止用ボール28が嵌合しており、栓部材係止用ボール28を介してプラグ側突出部材3のロッド状部分3Cと栓部材27は接続されて、一体に移動する。そのため、プラグ10がソケット20から外れて矢印Q方向に移動すると、栓部材27も同時に矢印Q方向に移動する。
栓部材27におけるプラグ10から離隔する側(
図8の左側)の端部にはフランジ部27Bが形成される。なお、栓部材係止用ボール28は複数個(例えば2個)設けられている。
また、ソケット本体21の開口部21Cにおいて、円環状空間21Fよりもプラグ10側から離隔した領域に拡径部21Hが形成されている。後述する様に、栓部材27がプラグ10と同時に矢印Q方向に移動してプラグ10とソケット20の接続が解除される際には、拡径部21H内に栓部材係止用ボール28が収容される様に設定されている。
【0042】
図8において、ソケット本体21の矢印R側の側面には筒状のストッパ部材29が取り付けられており、ストッパ部材29の中空部には、栓部材27が軸方向(
図8で左右方向)に摺動可能に挿入されている。
ストッパ部材29におけるソケット本体21から離隔する側(矢印R側)の端面29Aは、プラグ10とソケット20の接続が解除され栓部材27が矢印Q方向に移動して所定位置に達した時に、栓部材27のフランジ部27Bが当接して線部材27の矢印Q方向の移動を停止させるストッパとしての機能を有している。
ソケット本体21の開口部21Cには、ソケット内流路21Aに対する矢印R側及び矢印Q側の各々の領域に、シール材S1、S2(例えばO-リング)が配置されている。シール材S1、S2は、プラグ10とソケット20の接続時(
図8)において、プラグ側突出部材3の外周面と開口部21Cの内周面の境界部から高圧気体(水素ガス等)が漏洩するのを防止する機能を有している。また、プラグ10とソケット20の接続解除時(
図9、
図10)において、栓部材27の外周面と開口部21Cの内周面との境界部から高圧気体(水素ガス等)が漏洩するのを防止する機能を有している。
さらに、栓部材27の内周面にはシール材S3が配置されており、シール材S3はプラグ側突出部材3のロッド状部分3Cの外周面と栓部材27の内周面の境界部をシールしている。
【0043】
第2実施形態に係る安全継手100-1は、プラグ10がソケット20から外れる初期段階でソケット内流路21Aを瞬時に閉鎖するソケット側流路遮断機構31(充填装置側部材流路遮断機構)を有しており、ソケット側流路遮断機構31は、栓部材27、ソケット本体21の開口部21Cに配置されたシール材S1、S2、ストッパ部材29を含んでいる。
また、安全継手100-1は、プラグ10がソケット20から外れる際に栓部材27とプラグ側突出部材3との接続を解除する機構を備えており、当該機構は、プラグ側突出部材3のロッド状部分3Cに形成された溝3D、栓部材27に形成された開口部27A、溝3D及び開口部27Aに嵌合した栓部材係止用ボール28、ソケット20の開口部21Cにおける拡径部21H、栓部材27の端部のフランジ部27B、ソケット本体21に設けられたストッパ部材29の端面29Aを含んでいる。
【0044】
図8において、例えば水素充填中の燃料電池自動車(FCV:図示せず)が急発信して、充填ホース(図示せず)に大きな張力が作用すると、プラグ10がソケット20から抜け出そうとして、プラグ10は矢印Q方向に移動する。
プラグ10が矢印Q方向に移動すると、係止用ボール7も矢印Q方向に移動して、円環状空間21Fに到達する。係止用ボール7が円環状空間21Fの位置に到達すると、係止用ボール7は半径方向外側に移動可能になり、円環状空間21F内に進入する。
係止用ボール7が円環状空間21F内に進入すると、プラグ側ロッド2端部の平板部材2Aが係止用ボール7と当接しなくなり、平板部材2Aが係止用ボール7よりも矢印R方向(
図8では左側)に移動することが妨げられなくなる。その結果、プラグ側スプリング4の弾性反発力によりプラグ側弁体6は矢印R方向に移動して、瞬時にプラグ側弁座1Fに座着し、プラグ遮断弁5は閉鎖され、プラグ内流路1Aが遮断される。プラグ遮断弁5が閉鎖されるため、プラグ10側に存在する高圧の水素はソケット20側には流出しない。
【0045】
上述した様に、プラグ側突出部材3のロッド状部分3Cの溝3Dと栓部材27の開口部27Aに栓部材係止用ボール28が嵌合しているので、栓部材係止用ボール28を介して当該ロッド状部分3C(プラグ側突出部材3)と栓部材27は接続され、一体に移動する。そのため、プラグ10がソケット20から外れる際に矢印Q方向に移動すると、栓部材27も同時に矢印Q方向に移動する。栓部材27が矢印Q方向に移動した結果、
図9で示す様に、栓部材27がソケット側流路21A及び円環状空間21Fを閉鎖する。ここで、栓部材27とソケット本体21の開口部21Cとの境界はシール材S1、S2(例えばO-リング)でシールされるので、ソケット側流路21A内に遮断弁がなくても、ソケット側流路21A内の水素はソケット本体21の開口部21Cを介して安全継手100-1の外部に流出することが防止される。
【0046】
図8で示す状態からプラグ10がソケット20から外れて矢印Q方向に移動し、
図9で示す状態になると、栓部材係止用ボール28は開口部21Cにおける拡径部21Hに到達する。プラグ10が矢印Q方向に移動する動きは、プラグ側突出部材3のロッド状部分3Cの溝3D(
図8参照)の傾斜部分により、栓部材係止用ボール28を半径方向外方に押圧する動きに変換される。そのため、栓部材係止用ボール28は溝3Dから外れて拡径部21H内(半径方向外方)に移動する。
栓部材係止用ボール28が溝3Dから外れることにより、プラグ側突出部材3先端のロッド状部分3Cと栓部材7とは接続されていない状態(接続が解除された状態)となり、ロッド状部分3C及びプラグ側突出部材3は栓部材7とは相対的に移動して、プラグ10とソケット20の接続が解除され、
図10で示す状態になる。
【0047】
プラグ10とソケット20の接続が解除される際に、栓部材27の端部のフランジ部27Bがソケット本体21の側面に取り付けられたストッパ部材29の端面29Aと当接すると(
図9参照)、栓部材27はそれ以上矢印Q側に移動しない。
上述した通り、栓部材係止用ボール28が開口部21Cの拡径部21Hに到達すると、ロッド状部分3Cと栓部材27との接続が解除され、プラグ側突出部材3及びロッド状部分3Cは栓部材27に対して相対的に移動する。その結果、
図10で示す様に、プラグ10(プラグ側突出部材3、ロッド状部分3Cを含む)がソケット20から外れ、栓部材27はソケット本体21の開口部21C内に残存する。
ここで、栓部材27において、開口部27Aからプラグ10側の端面(矢印Q側端面)までの距離は、栓部材27の端部のフランジ部27Bがストッパ部材29の端面29Aと当接した時に、栓部材27のプラグ10側の端面(矢印Q側端面)がシール材S2よりも矢印Q側の領域に位置する様に設定されている。
【0048】
ソケット本体21の開口部21Cにシール材S1、S2を配置しているため、
図10で示す様に、プラグ10がソケット20から完全に外れた状態においても、ソケット内流路21Aは栓部材27により閉鎖され、シール材S2により、ソケット内流路21A内の高圧の水素ガスは、栓部材27の外周面とソケット本体21の開口部21Cの内周面との境界部から矢印Q方向に漏洩することが防止される。また、シール材S1により、ソケット内流路21A内の高圧の水素ガスは、栓部材27の外周面とソケット本体21の開口部21Cの内周面との境界部から矢印R方向に漏洩することが防止される。
ここで、ソケット内流路21Aが栓部材27により閉鎖される動作は、プラグ10とソケット20の接続解除の初期の段階で瞬時に行われ、アウトガスを抑えることが出来る。すなわち、
図10に示すプラグ10とソケット20が完全に外れた状態と、
図9に示すプラグ側突出部材3がソケット本体21の開口部21Cに残存している状態の何れにおいても、ソケット内流路21Aは閉鎖され、アウトガスが抑制される。
換言すれば、第2実施形態に係る安全継手100-1によれば、
図9に示すプラグ10がソケット20から外れる初期の段階であっても、プラグ側遮断弁5によりプラグ内流路1Aが遮断され、栓部材27によりソケット内流路21Aが遮断されるので、水素ガスが安全継手100-1の外部に流出することが防止される。
【0049】
ここで、プラグ10がストッパ20から分離する際に、プラグ10が矢印Q方向に移動することを阻害し或いは干渉する(所謂「噛んだ」状態になる)部材は存在しない。また、プラグ10がソケット20から外れた状態(
図10)において、プラグ10及びソケット20における全ての部材が他の部材と係合しており、単独で遊離した状態(フリー状態)の部材は存在せず、そのため、プラグ10及びソケット20から外れて紛失してしまう部材はない。
従って、安全継手100-1の全ての部材が再利用可能である。
【0050】
図8~
図10に示す本発明の第2実施形態の安全継手100-1によれば、プラグ10がソケット20から外れる初期段階でソケット内流路21Aを瞬時に閉鎖するソケット側流路遮断機構31を設け、ソケット側流路遮断機構31はプラグ側突出部材3に接続された栓部材27、ソケット本体21の開口部21Cに配置されたシール材S1、S2、ストッパ部材29を含み、シール材S1、S2は、プラグ10とソケット20の接続時(
図8)においては、プラグ側突出部材3の外周面と開口部21Cの内周面の境界部から高圧気体(水素ガス等)が漏洩するのを防止し、プラグ10とソケット20の接続解除時(
図9、
図10)においては、栓部材27の外周面と開口部21Cの内周面との境界部から高圧気体(水素ガス等)が漏洩するのを防止している。
そのため、プラグ10がソケット20から外れる初期段階(
図9)ではプラグ10のプラグ側突出部材3がソケット内流路21Aを閉鎖する様に位置しており、プラグ10がソケット20から完全に外れた状態(
図10)では栓部材27がソケット内流路21Aを閉鎖する。そして、シール材S1、S2がプラグ側突出部材3及び栓部材27の外周面とソケット本体21の開口部21Cの内周面との境界部をシールするので、ソケット内流路21Aにおける高圧ガスが当該開口部21Cから漏出することが防止される。
そのため、ソケット内流路21Aの閉鎖はプラグ10とソケット20の接続解除の初期段階で行われ、従来技術の様なアウトガスの発生が抑えられる。
【0051】
また、プラグ10がソケット20から外れても、栓部材27はソケット本体21の開口部21Cから脱落することは無く、そのため、紛失してしまう恐れがない。そしてプラグ10がソケット20から外れる際に、栓部材27がソケット本体21の開口部21Cを摺動するのみで、その他の部材がプラグ10や栓部材27と干渉することは無い(所謂「噛んでしまう」ことはない)。
そのため、プラグ10がソケット20から外れても、全ての部材を再利用することが可能である。
図8~
図10の第2実施形態におけるその他の構成及び作用効果は、
図1~
図7の第1実施形態と同様である。
【0052】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記述ではないことを付記する。
【符号の説明】
【0053】
1・・・プラグ本体
1A・・・プラグ内流路(ノズル側部材の流路)
2・・・プラグ側ロッド(ノズル側部材のロッド)
3・・・プラグ側突出部材(ノズル側部材の突出部)
3C・・・ロッド状部分
3D・・・溝
4・・・プラグ側スプリング(ノズル側部材の弾性部材)
5・・・プラグ側遮断弁(ノズル側部材の遮断弁)
6・・・プラグ側弁体(ノズル側部材の弁体)
10・・・プラグ(ノズル側部材)
11・・・回転形状部材
11A・・・本体部
11R・・・折り返し部
20・・・ソケット(充填装置側部材)
21・・・ソケット本体
21A・・・ソケット内流路(充填装置側部材の流路)
21C・・・開口部
21F・・・円環状空間
21H・・・拡径部
23・・・ソケット側スプリング(充填装置側の弾性部材)
24・・・ソケット側遮断弁(充填装置側部材の遮断弁)
25・・・ソケット側弁体弁体(充填装置側部材の弁体)
26・・・支持部材(弁体支持部材)
27・・・栓部材
27A・・・栓部材の開口部
27B・・・栓部材のフランジ部
28・・・栓部材係止用ボール
29・・・ストッパ部材
29A・・・ストッパ部材の端面
30、31・・・ソケット側流路遮断機構(充填装置側部材流路遮断機構)
100、100-1・・・安全継手
S1、S2・・・シール材