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  • 特開-圧力タンク及びシール部材 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022108775
(43)【公開日】2022-07-27
(54)【発明の名称】圧力タンク及びシール部材
(51)【国際特許分類】
   F16J 12/00 20060101AFI20220720BHJP
   F16J 15/10 20060101ALI20220720BHJP
【FI】
F16J12/00 D
F16J15/10 B
F16J15/10 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021003894
(22)【出願日】2021-01-14
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和2年11月12日に開催された2020年度(第70回)全国工作責任者大会にて、発表した。
(71)【出願人】
【識別番号】596054652
【氏名又は名称】ニッシンコーポレーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154014
【弁理士】
【氏名又は名称】正木 裕士
(74)【代理人】
【識別番号】100154520
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 祐子
(72)【発明者】
【氏名】中島 竜一
【テーマコード(参考)】
3J040
3J046
【Fターム(参考)】
3J040AA12
3J040BA03
3J040EA16
3J040EA39
3J040EA40
3J040EA41
3J040FA07
3J040HA03
3J040HA09
3J040HA15
3J046AA07
3J046BA01
3J046BC06
3J046BC15
3J046DA10
(57)【要約】      (修正有)
【課題】圧力タンクを密閉することができる圧力タンクを提供する。
【解決手段】圧力タンク本体2に設けられているフランジ部20と、圧力タンク本体2の上部を閉止する蓋部3と、フランジ部20と、蓋部3の間に設けられるシール部材5と、を有し、シール部材5は、扁平状の第1シール部材50と、第1シール部材50と一体的に形成されている円柱状の第2シール部材51と、で構成されてなる。また、フランジ部20及び蓋部3の内周面には、樹脂ライニングが施され、第2シール部材51の直径は、第1シール部材50の厚みよりも径大に形成されると共に、該第1シール部材50の厚みよりも径大の部分が、樹脂ライニングの厚み以下に形成されてなる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力タンク本体に設けられているフランジ部と、
前記圧力タンク本体の上部を閉止する蓋部と、
前記フランジ部と、前記蓋部の間に設けられるシール部材と、を有し、
前記シール部材は、
扁平状の第1シール部材と、
前記第1シール部材と一体的に形成されている円柱状の第2シール部材と、で構成されてなる圧力タンク。
【請求項2】
前記フランジ部及び前記蓋部の内周面には、樹脂ライニングが施され、
前記第2シール部材の径は、前記第1シール部材の厚みよりも径大に形成されると共に、該第1シール部材の厚みよりも径大の部分が、前記樹脂ライニングの厚み以下に形成されてなる請求項1に記載の圧力タンク。
【請求項3】
圧力タンクのフランジ部に設けられるシール部材であって、
前記シール部材は、
扁平状の第1シール部材と、
前記第1シール部材と一体的に形成されている円柱状の第2シール部材と、で構成されてなるシール部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力タンク及びシール部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の圧力タンクとして、特許文献1に記載の発明が知られている。この特許文献1に記載の発明は、上蓋と胴体部とをそれぞれのフランジ部にボルトを取り付けることで接続し、圧力タンクを密閉する構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-228078号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、フランジ部の径が大きくなればなるほど旋盤加工できないことから、このような径の大きいフランジ部を製作しようとすると溶接等を行わなければならない。そのため、フランジ部に溶接ひずみ等が発生する場合がある。この際、フランジ部間に全面パッキンを設けた場合、それぞれのフランジ部にボルトを取り付けたとしても、うまく接続できない可能性があり、もって、圧力タンクを密閉することができない可能性があるといった問題があった。また、圧力タンク内周面をライニングした際、ライニングの接着ボンド層の厚みムラ等により均一な接触になり難い可能性があることから、それぞれのフランジ部にボルトを取り付けたとしても、うまく接続できない可能性があり、もって、圧力タンクを密閉することができない可能性があるといった問題があった。
【0005】
そこで本発明は、上記問題に鑑み、圧力タンクを密閉することができる圧力タンク及びシール部材を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記本発明の目的は、以下の手段によって達成される。なお、括弧内は、後述する実施形態の参照符号を付したものであるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0007】
請求項1の発明によれば、圧力タンク本体(2)に設けられているフランジ部(20)と、
前記圧力タンク本体(2)の上部を閉止する蓋部(3)と、
前記フランジ部(20)と、前記蓋部(3)の間に設けられるシール部材(5)と、を有し、
前記シール部材(5)は、
扁平状の第1シール部材(50)と、
前記第1シール部材(50)と一体的に形成されている円柱状の第2シール部材(51)と、で構成されてなることを特徴としている。
【0008】
また、請求項2の発明によれば、上記請求項1に記載の圧力タンク(1)において、 前記フランジ部(20)及び前記蓋部(3)の内周面には、樹脂ライニング(ライニングL1)が施され、
前記第2シール部材(51)の径(直径H2)は、前記第1シール部材(50)の厚み(H1)よりも径大に形成されると共に、該第1シール部材(50)の厚み(H1)よりも径大の部分(H2-H1)が、前記樹脂ライニング(ライニングL1)の厚み(H3)以下に形成されてなることを特徴としている。
【0009】
一方、請求項3の発明によれば、圧力タンク(1)のフランジ部(20,30)に設けられるシール部材(5)であって、
前記シール部材(5)は、
扁平状の第1シール部材(50)と、
前記第1シール部材(50)と一体的に形成されている円柱状の第2シール部材(51)と、で構成されてなることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
次に、本発明の効果について、図面の参照符号を付して説明する。なお、括弧内は、後述する実施形態の参照符号を付したものであるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0011】
請求項1,3の発明によれば、第1シール部材(50)と一体的に形成されている第2シール部材(51)が円柱状に形成されていることから、圧力タンク本体(2)に設けられているフランジ部(20)と、蓋部(3)との内周面に線接触することとなる。これにより、接触面積を削減することができ、もって、面圧を上げることができる。それゆえ、第2シール部材(51)にて、圧力タンク本体(2)に設けられているフランジ部(20)と、蓋部(3)との間がしっかりとシールされることとなるから、フランジ部(20)及び/又は蓋部(3)に溶接ひずみ等が発生、又は、ライニング(L1)の接着ボンド層の厚みムラ等が発生していたとしても、圧力タンク(1)を密閉することができる。
【0012】
しかして、本発明によれば、圧力タンクを密閉することができる。
【0013】
また、請求項2の発明によれば、第2シール部材(51)の径(直径H2)は、第1シール部材(50)の厚み(H1)よりも径大に形成されると共に、該第1シール部材(50)の厚み(H1)よりも径大の部分(H2-H1)が、樹脂ライニング(ライニングL1)の厚み(H3)以下に形成されている。これにより、第2シール部材(51)が、食い込み過ぎて圧力タンク本体(2)に設けられているフランジ部(20)及び/又は蓋部(3)に孔を空ける等の事態が発生しない程度に樹脂ライニング(ライニングL1)にしっかりと食い込むこととなる。それゆえ、第2シール部材(51)にて、圧力タンク本体(2)に設けられているフランジ部(20)と、蓋部(3)との間をよりしっかりとシールすることができることとなり、もって、圧力タンクをより密閉することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る圧力タンクの分解斜視図である。
図2】同実施形態に係る圧力タンク本体のフランジ部と、蓋部のフランジ部との間にシール部材を設け、ボルトで締結している状態を示す一部縦断面拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る圧力タンクの一実施形態を、図面を参照して具体的に説明する。なお、以下の説明において、上下左右の方向を示す場合は、図示正面から見た場合の上下左右をいうものとする。
【0016】
図1に示すように、圧力タンク1は、例えば、リン酸等の液体を冷却する熱交換器として使用されるものであって、圧力タンク本体2と、蓋部3と、熱交換部4と、シール部材5と、で主に構成されている。以下、各構成について詳しく説明することとする。
【0017】
<圧力タンク本体の説明>
圧力タンク本体2は、SUS304の如きステンレス鋼製等で形成され、図1に示すように、上面2aが開放され、下面2bが閉止されている内部に空洞を有する円筒状に形成されている。そして、この上面2aには周方向に円形状のフランジ部20が一体的に突出して設けられている。なお、このフランジ部20には、所定間隔置きに、円形状のボルト挿通孔20aが、上下方向に貫通して設けられている。
【0018】
一方、図1に示すように、圧力タンク本体2の外周面2c右側には、冷却対象であるリン酸等の液体を圧力タンク本体2内に流入させる入口ヘッダ21が設けられている。そして、圧力タンク本体2の下面2bには、冷却された液体を圧力タンク本体2外に排出させる出口ヘッダ22が設けられている。なお、図2に示すように、圧力タンク本体2の内周面2d(フランジ部20の内周面も含む)には、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)の如き熱可塑性フッ素樹脂にて厚みH3(例えば、2~3mm)程度のライニングL1が施されている。
【0019】
<蓋部の説明>
蓋部3は、圧力タンク本体2の上面2aを閉止することができるもので、SUS304の如きステンレス鋼製等で形成され、図1に示すように、厚板円形状に形成されている。この蓋部3の上面3aには、周方向に円形状のフランジ部30が一体的に突出して設けられている。なお、このフランジ部30には、所定間隔置きに、円形状のボルト挿通孔30aが、上下方向に貫通して設けられている。
【0020】
一方、図1に示すように、蓋部3の上面3a左側には、冷却水等の熱媒体を、熱交換部4内に流入させる一対の入口ヘッダ31が設けられており、蓋部3の上面3a右側には、熱交換部4内に流入させた冷却水等の熱媒体を外部に排出する出口ヘッダ32が設けられている。なお、蓋部3の上面3a中央部には、エアー抜き33が設けられている。また、図2に示すように、蓋部3の内周面3c(フランジ部30の内周面も含む)には、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)の如き熱可塑性フッ素樹脂にて厚みH3(例えば、2~3mm)程度のライニングL1が施されている。
【0021】
<熱交換部の説明>
熱交換部4は、図1に示すように、PFA(パーフルオロアルコキシエチレン)の如き熱可塑性フッ素樹脂等で管状に形成されている多数本の伝熱チューブ40と、多数本の伝熱チューブ40が取り付けられている略縦長矩形状からなる取付板41と、その取付板41に取り付けられている逆T字状の吊具42と、で構成されている。そして、この吊具42は、図1に示すように、蓋部3の下面3bに取り付け固定されている。これにより、圧力タンク本体2の上面2aを蓋部3にて閉止した際、熱交換部4は、圧力タンク本体2内に収納されることとなる。なお、蓋部3の入口ヘッダ31及び出口ヘッダ32内には、各伝熱チューブ40の両端が各々連通接続されている。
【0022】
<シール部材の説明>
シール部材5は、図2に示すように、圧力タンク本体2のフランジ部20と、蓋部3のフランジ部30との間に設けられ、内容物の漏れを防止するシールの役割を担うものである。より詳しく説明すると、このようなシール部材5は、図1及び図2に示すように、扁平状に形成されたリング状の第1シール部材50と、円柱状に形成された管状の第2シール部材51と、で構成されている。この第1シール部材50は、例えば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)の如き熱可塑性フッ素樹脂等にて形成され、図2に示すように、厚みH1(例えば、2mm)程度に形成されており、バックアップリングとしての役割を担うものである。そして、このように形成された第1シール部材50は、図1に示すように、周方向に沿って、所定間隔置きに、円形状のボルト挿通孔50aが、図2に示すように、上下方向に貫通して設けられている。
【0023】
一方、第2シール部材51は、例えば、PFA(パーフルオロアルコキシエチレン)の如き熱可塑性フッ素樹脂等にて形成され、図2に示すように、直径H2(例えば、3mm)程度に形成され、厚みH1よりも径大に形成されている。さらに、直径H2は、厚みH1よりも径大の部分(H2-H1)が、厚みH3以下となるように形成されている。しかして、このように形成された第2シール部材51は、ガスケットとしての役割を担うものであり、図1及び図2に示すように、第1シール部材50の左端面50bに溶接等によって複数の第2シール部材51が固着されている。これにより、第1シール部材50と第2シール部材51とは、一体的に形成されることとなる。なお、複数の第2シール部材51は、図1及び図2に示すように、並設され、互いに溶接等によって固着されている。
【0024】
かくして、このように構成されるシール部材5は、図2に示すように、圧力タンク本体2のフランジ部20と、蓋部3のフランジ部30との間に設けられることとなる。そして、フランジ部20のボルト挿通孔20a、及び、フランジ部30のボルト挿通孔30a、並びに、第1シール部材50のボルト挿通孔50a内にボルトBが挿通され、ボルトBの先端部BaにナットNが螺合されることにより、圧力タンク本体2の上面2a(図1参照)が蓋部3にて閉止されることとなる。これにより、圧力タンク1は、密閉されることとなる。
【0025】
ところで、この際、シール部材5を、扁平状に形成されたリング状の第1シール部材50のみで全て形成した場合、シール部材5が圧力タンク本体2のフランジ部20と、蓋部3のフランジ部30との内周面全面に亘って接触することとなる。これにより、接触面積が大きすぎて、面圧が下がることとなり、もって、圧力タンク本体2のフランジ部20と、蓋部3のフランジ部30との間のシール効果が弱まり、フランジ部20及び/又はフランジ部30に溶接ひずみ等が発生、或いは、ライニングL1の接着ボンド層の厚みムラ等が発生している場合、フランジ部20のボルト挿通孔20a、及び、フランジ部30のボルト挿通孔30a、並びに、第1シール部材50のボルト挿通孔50a内にボルトBを挿通し、ボルトBの先端部BaにナットNを螺合したとしても、僅かな隙間が形成されるなど、圧力タンク1を密閉することができない可能性があるといった問題があった。
【0026】
そこで、本実施形態においては、シール部材5として、第1シール部材50とは別に第2シール部材51を設け、第2シール部材51を円柱状に形成することにより、圧力タンク本体2のフランジ部20と、蓋部3のフランジ部30との内周面に線接触するようにしている。これにより、接触面積を削減することができ、もって、面圧を上げることができる。それゆえ、第2シール部材51にて、圧力タンク本体2のフランジ部20と、蓋部3のフランジ部30との間がしっかりとシールされることとなるから、フランジ部20及び/又はフランジ部30に溶接ひずみ等が発生していたとしても、圧力タンク1を密閉することができる。
【0027】
また、第1シール部材50を設けていることにより、フランジ部20のボルト挿通孔20a、及び、フランジ部30のボルト挿通孔30a、並びに、第1シール部材50のボルト挿通孔50a内にボルトBを挿通し、ボルトBの先端部BaにナットNを螺合する際、第1シール部材50がバックアップリングの役割を果たし、もって、フランジ部20及び/又はフランジ部30に曲げモーメントが掛からないようにすることができる。これにより、圧力タンク1の密閉性を保持することができる。
【0028】
さらには、第2シール部材51の直径H2は、第1シール部材50の厚みH1よりも径大に形成され、厚みH1よりも径大の部分(H2-H1)が、厚みH3以下となるように形成されている。これにより、第2シール部材51が、食い込み過ぎてフランジ部20及び/又はフランジ部30に孔を空ける等の事態が発生しない程度にライニングL1にしっかりと食い込むこととなり、もって、第2シール部材51にて、圧力タンク本体2のフランジ部20と、蓋部3のフランジ部30との間をよりしっかりとシールすることができる。それゆえ、圧力タンク1をより密閉することができる。
【0029】
しかして、以上説明した本実施形態によれば、圧力タンクを密閉することができる。
【0030】
なお、本実施形態において示した形状等はあくまで一例であり、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。例えば、本実施形態においては、圧力タンク1として、リン酸等の液体を冷却する熱交換器として使用する例を示したが、それに限らず、どのような圧力タンクにも適用可能である。
【0031】
また、本実施形態においては、第2シール部材51を複数設ける例を示したが、それに限らず、単数で良ければ単数でも良い。
【0032】
また、本実施形態においては、第1シール部材50をリング状に形成する例を示したが、それに限らず、第2シール部材51がシールとしての役割を果たすことから、第1シール部材50を複数に分割した(間欠した)形状にしても良い。
【0033】
また、本実施形態においては、蓋部3にフランジ部30を設ける例を示したが、それに限らず、フランジ部30を設けていない平板状の蓋部にも適用可能である。
【符号の説明】
【0034】
1 圧力タンク
2 圧力タンク本体
20 フランジ部
3 蓋部
30 フランジ部
5 シール部材
50 第1シール部材
51 第2シール部材
L1 ライニング(樹脂ライニング)
H1 (第1シール部材の)厚み
H2 直径(径)
H3 (ライニングの)厚み


図1
図2