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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022108796
(43)【公開日】2022-07-27
(54)【発明の名称】ダブルナット締結補助装置
(51)【国際特許分類】
   B25B 21/00 20060101AFI20220720BHJP
   B25B 13/00 20060101ALI20220720BHJP
【FI】
B25B21/00 H
B25B13/00 C
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021003935
(22)【出願日】2021-01-14
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】510132174
【氏名又は名称】石原 要藏
(74)【代理人】
【識別番号】100151208
【弁理士】
【氏名又は名称】植田 吉伸
(72)【発明者】
【氏名】石原 要藏
(57)【要約】      (修正有)
【課題】より効率良くダブルナットを締め付けることを可能とするダブルナット締結補助装置を提供することである。
【解決手段】ダブルナット締結補助装置10は、筒状の把持部12と、ソケット部6と、を備え、ソケット部6は、他方側連結部22は多角柱形状を有しており、一方側連結部20が把持部12から突出しつつ、他方側連結部22が把持部12内から脱落することなく把持部12内を往復移動できるとともに把持部12の孔部13内で空転可能な軸部材を有し、把持部12は、第1ナット部1又は第2ナット部3を通過させてワッシャ部2を係止可能な係止部14と、第1ナット部1又は第2ナット部3の螺子部4への螺合回転を規制する回転規制部16と、ソケット部6の空転を規制しつつ把持部12と連動してソケット部6を回転させるために他方側連結部22を嵌合可能な回転連動部18と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
螺子山が形成された棒状の螺子部と、
前記螺子部に螺合される第1ナット部と第2ナット部とを有するダブルナット部と、
前記第1ナット部と前記第2ナット部との間に設けられ前記第1ナット部及び前記第2ナット部の対角寸法よりも大きい直径を有するワッシャ部と、
を含むダブルナット機構を締め付けたり緩めたりする際に用いるダブルナット締結補助装置であって、
前記ワッシャ部が通過可能な空間領域を有する孔部を有し、軸方向に沿ったスリットが形成された筒状の把持部と、
一方側に前記第1ナット部及び前記第2ナット部を前記螺子部に螺合させるために回転駆動するインパクトレンチに連結可能な一方側連結部が設けられ、他方側に前記第1ナット部又は前記第2ナット部に連結可能な他方側連結部が設けられるソケット部と、
を備え、
前記ソケット部は、
円柱形状の前記一方側連結部の直径よりも大きい対角寸法を有する前記他方側連結部は多角柱形状を有しており、前記一方側連結部が前記把持部から突出しつつ、前記他方側連結部が前記把持部内から脱落することなく前記把持部内を往復移動できるとともに前記把持部の前記孔部内で空転可能な軸部材を有し、
前記把持部は、
前記孔部の下部に設けられ、前記第1ナット部又は前記第2ナット部を通過させて前記ワッシャ部を係止可能な係止部と、
前記係止部の下部に設けられ、前記第1ナット部又は前記第2ナット部の前記螺子部への螺合回転を規制する回転規制部と、
前記係止部と前記回転規制部との間に設けられ、前記ソケット部の空転を規制しつつ前記把持部と連動して前記ソケット部を回転させるために前記他方側連結部を嵌合可能な回転連動部と、
を有することを特徴とするダブルナット締結補助装置。
【請求項2】
請求項1に記載のダブルナット締結補助装置において、
前記第1ナット部及び前記第2ナット部は、六角ナットであり、
前記回転規制部は、前記六角ナットを嵌合させるための六角形の孔部を有し、
前記ソケット部の前記他方側連結部は、外形が六角形であり、
前記回転連動部は、前記他方側連結部の外形に沿った六角形の孔部を有することを特徴とするダブルナット締結補助装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のダブルナット締結補助装置において、
前記回転規制部の前記孔部は、前記六角ナットを嵌合させた状態から前記把持部の径方向に前記六角ナットを移動させることにより前記六角ナットを前記把持部から取り外すための切り欠き部を有することを特徴とするダブルナット締結補助装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のダブルナット締結補助装置において、
前記把持部において、前記回転連動部が設けられる側と反対側に設けられ、前記回転連動部とは別の前記回転連動部が設けられることを特徴とするダブルナット締結補助装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダブルナット締結補助装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建設現場などにおいて、振動に対する戻り止めとしてダブルナットが用いられている。ダブルナットを締め付ける手順の一例として、下ナットを締め付けた後に、上ナットを締め付け、その後、上ナットを固定して下ナットを逆方向に回転させることがある。この際、メガネレンチなどで上ナットを固定しつつ、下ナットをインパクトレンチなどで回転させる必要がある。
【0003】
一人の作業者が締め付け作業をする際には、棒状に長く伸びたメガネレンチなどを片手で操作しながら、もう一方の手でインパクトレンチなどの電動工具を操作する必要があるため、効率良く締め付け作業を行うことができないという課題がある。
【0004】
本発明に関連する技術として、例えば、特許文献1には、螺子山が形成された棒状の螺子部と、前記螺子部に螺合される第1ナット部と第2ナット部とを有するダブルナット部と、前記第1ナット部と前記第2ナット部との間に設けられ前記第1ナット部及び前記第2ナット部の対角寸法よりも大きい直径を有するワッシャ部と、を含むダブルナット機構を締結する際に用いるダブルナット締結補助装置であって、前記ワッシャ部が通過可能な孔部を有する筒状の把持部と、前記孔部の下部に設けられ、前記第1ナット部又は前記第2ナット部を通過させて前記ワッシャ部を係止可能な係止部と、前記係止部の下部に設けられ、前記第1ナット部又は前記第2ナット部の前記螺子部への螺合回転を規制する回転規制部と、を備えることを特徴とするダブルナット締結補助装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6697152号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1には、インパクトレンチに連結可能なソケットと、このソケットとは独立したダブルナット締結補助装置とを用いてダブルナットを締め付ける構成が開示されている。
【0007】
しかしながら、ソケットと筒状の把持部といった独立した2つの部材を組み合わせて締め付けを行っているため、ソケットを把持部に対して装着したり取り外したりして締め付ける必要がある。また、ソケットの形状などによっては把持部に装着できないことがある。したがって、より効率良くダブルナットを締め付けることが望ましい。
【0008】
本発明の目的は、より効率良くダブルナットを締め付けることを可能とするダブルナット締結補助装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るダブルナット締結補助装置は、螺子山が形成された棒状の螺子部と、前記螺子部に螺合される第1ナット部と第2ナット部とを有するダブルナット部と、前記第1ナット部と前記第2ナット部との間に設けられ前記第1ナット部及び前記第2ナット部の対角寸法よりも大きい直径を有するワッシャ部と、を含むダブルナット機構を締め付けたり緩めたりする際に用いるダブルナット締結補助装置であって、前記ワッシャ部が通過可能な空間領域を有する孔部を有し、軸方向に沿ったスリットが形成された筒状の把持部と、一方側に前記第1ナット部及び前記第2ナット部を前記螺子部に螺合させるために回転駆動するインパクトレンチに連結可能な一方側連結部が設けられ、他方側に前記第1ナット部又は前記第2ナット部に連結可能な他方側連結部が設けられるソケット部と、を備え、前記ソケット部は、円柱形状の前記一方側連結部の直径よりも大きい対角寸法を有する前記他方側連結部は多角柱形状を有しており、前記一方側連結部が前記把持部から突出しつつ、前記他方側連結部が前記把持部内から脱落することなく前記把持部内を往復移動できるとともに前記把持部の前記孔部内で空転可能な軸部材を有し、前記把持部は、前記孔部の下部に設けられ、前記第1ナット部又は前記第2ナット部を通過させて前記ワッシャ部を係止可能な係止部と、前記係止部の下部に設けられ、前記第1ナット部又は前記第2ナット部の前記螺子部への螺合回転を規制する回転規制部と、前記係止部と前記回転規制部との間に設けられ、前記ソケット部の空転を規制しつつ前記把持部と連動して前記ソケット部を回転させるために前記他方側連結部を嵌合可能な回転連動部と、を有することを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係るダブルナット締結補助装置において、前記第1ナット部及び前記第2ナット部は、六角ナットであり、前記回転規制部は、前記六角ナットを嵌合させるための六角形の孔部を有し、前記ソケット部の前記他方側連結部は、外形が六角形であり、前記回転連動部は、前記他方側連結部の外形に沿った六角形の孔部を有することが好ましい。
【0011】
また、本発明に係るダブルナット締結補助装置において、前記回転規制部の前記孔部は、前記六角ナットを嵌合させた状態から前記把持部の径方向に前記六角ナットを移動させることにより前記六角ナットを前記把持部から取り外すための切り欠き部を有することが好ましい。
【0012】
また、本発明に係るダブルナット締結補助装置において、前記把持部において、前記回転連動部が設けられる側と反対側に設けられ、前記回転連動部とは別の前記回転連動部が設けられることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、より効率良くダブルナットを締め付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る実施形態のダブルナット締結補助装置を示す図である。
図2】本発明に係る実施形態のダブルナット締結補助装置の把持部の正面図、底面図及び断面図である
図3】本発明に係る実施形態のダブルナット締結補助装置のソケット部の正面図、平面図、底面図及び断面図である。
図4図1に示されるダブルナット締結補助装置の試作品を示す図である。
図5】本発明に係る実施形態のダブルナット締結補助装置の試作品において、ソケット部を回転連動部に嵌合させている様子を示す図である。
図6】本発明に係る実施形態のダブルナット締結補助装置の試作品において、ソケット部を回転連動部に嵌合させてナットを螺合させる様子を示す図である。
図7】本発明に係る実施形態のダブルナット締結補助装置の試作品において、ソケット部を別の回転連動部に嵌合させてナットを螺合させる様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明に係る実施の形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。以下では、全ての図面において同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、本文中の説明においては、必要に応じそれ以前に述べた符号を用いるものとする。
【0016】
図1は、本発明に係る実施形態のダブルナット締結補助装置10を示す図である。図1(a)は、ダブルナット締結補助装置10の斜視図であり、ダブルナット締結補助装置10の把持部12にダブルナット機構5を係止している様子を示す断面図である。
【0017】
図2は、本発明に係る実施形態のダブルナット締結補助装置10の把持部12の正面図、底面図及び断面図である。図2(a)は、ダブルナット締結補助装置10の把持部12の正面図であり、図2(b)は、A-A線断面図である。
【0018】
図2(c)は、ダブルナット締結補助装置10の把持部12の底面図であり、図2(d)は、B-B線断面図であり、図2(e)は、C-C線断面図である。
【0019】
図3は、本発明に係る実施形態のダブルナット締結補助装置10のソケット部6の正面図、平面図、底面図及び断面図である。図3(a)は、ダブルナット締結補助装置10のソケット部6の正面図であり、図3(b)は、D-D線断面図である。
【0020】
図3(c)は、ダブルナット締結補助装置10のソケット部6の平面図であり、図3(d)は、ダブルナット締結補助装置10のソケット部6の底面図である。
【0021】
図4は、図1に示されるダブルナット締結補助装置10の試作品を示す図である。図5は、本発明に係る実施形態のダブルナット締結補助装置10の試作品において、ソケット部6を回転連動部18に嵌合させている様子を示す図である。
【0022】
図6は、本発明に係る実施形態のダブルナット締結補助装置10の試作品において、ソケット部6を回転連動部18に嵌合させてナットを螺合させる様子を示す図である。図7は、本発明に係る実施形態のダブルナット締結補助装置10の試作品において、ソケット部6を回転連動部19に嵌合させてナットを螺合させる様子を示す図である。
【0023】
ダブルナット機構5は、螺子部4と、第1ナット部1と第2ナット部3とを有するダブルナット部と、ワッシャ部2とを備えている。
【0024】
螺子部4は、螺子山(螺子溝)が形成された棒状の金属製部材であり、第1ナット部1と第2ナット部3が螺合される棒部材である。
【0025】
ダブルナット部は、螺子部4に螺合される第1ナット部1と第2ナット部3とを有する。第1ナット部1及び第2ナット部3は、六角形状の外形を有する金属製のナットである。
【0026】
ワッシャ部2は、第1ナット部1と第2ナット部3との間に設けられ、第1ナット部1及び第2ナット部3の対角寸法よりも大きい直径を有する円状の金属製の板部材である。
【0027】
ここでは、第1ナット部1又は第2ナット部3は、電動インパクトレンチ(不図示)で自動的に螺合するものとして説明するが、もちろん、手動で螺合させてもよい。
【0028】
電動インパクトレンチは、電気や圧縮空気を動力源として内蔵されたモータを回転させ、内蔵されたハンマーを回転させる。ハンマーはダブルナット締結補助装置10のソケット部6が接続された軸に、回転方向に打撃(インパクト)を与える。
【0029】
この打撃により先端に取り付けられたソケット部6などが回転し、第1ナット部1又は第2ナット部3を回すことができ、ソケット部6が接続された軸は常にインパクトを受けながら回転しているため、大きなトルクをかけることができる。
【0030】
ダブルナット締結補助装置10は、ダブルナット機構5を緩めたり締め付けたりする際に用いる金属製の装置である。ダブルナット締結補助装置10は、ソケット部6と、把持部12と、係止部14と、回転規制部16と、回転連動部18とを備えている。
【0031】
ソケット部6は、電動インパクトレンチに装着して、第1ナット部1又は第2ナット部3を回転させるための金属製の略円筒部材である。
【0032】
ソケット部6は、一方側に第1ナット部1及び第2ナット部3を螺子部4に螺合させるために回転駆動するインパクトレンチに連結可能な一方側連結部20が設けられ、他方側に第1ナット部1又は前記第2ナット部3に連結可能な他方側連結部22が設けられている。
【0033】
ソケット部6は、図3(d)に示されるように、底面側に位置する他方側連結部22には、第1ナット部1又は第2ナット部3を嵌合させるための六角形状の孔部22aを有している。また、天井面側に位置する一方側連結部20には、電動インパクトレンチに連結するための四角形状の孔部20aを有する。
【0034】
ソケット部6は、円柱形状の一方側連結部20の直径よりも大きい対角寸法を有する他方側連結部22は多角柱形状を有しており、一方側連結部20が把持部12から突出しつつ、他方側連結部22が把持部12内から脱落することなく把持部12内を往復移動できるとともに把持部12の孔部13内で空転可能な軸部材を有している。
【0035】
ここでは、他方側連結部22は、図3(a)及び図3(d)に示されるように、六角形の外形を有しているものとして説明する。
【0036】
把持部12は、ワッシャ部2が通過可能な空間領域を有する孔部13を有する筒状部材である。把持部12の側面には、軸方向に沿ったスリット15が形成されている。このため、図2(d)に示されるように、把持部12の平面視は、略C字形状(図2(d)ではCの切り欠き部分が反対に位置している)を有している。
【0037】
把持部12の孔部13は、第1ナット部1及び第2ナット部3を螺子部4に螺合させることが可能な電動インパクトレンチに連結可能なソケット部6の他方側連結部22よりも若干広い径を有する円柱形状を有し、ソケット部6を収納可能な構造を有する。
【0038】
係止部14は、孔部13の下部に設けられ、第1ナット部1又は第2ナット部3を通過させてワッシャ部2を係止可能な部位である。また、係止部14の厚み(把持部12の底面から係止部14の上面までの距離)は、第1ナット部1及び第2ナット部3の厚み(高さ)よりも若干大きくなるように設定されている。係止部14は、回転規制部16及び回転連動部18の天井面によって構成されており、詳細な説明は後述する。
【0039】
回転規制部16は、係止部14の下部に設けられ、第1ナット部1又は第2ナット部3の螺子部4への螺合回転を規制する。
【0040】
回転規制部16は、第1ナット部1及び第2ナット部3の六角ナットを嵌合させるための六角形の孔部16aを有する。また、回転規制部16の厚み(把持部12の底面から回転規制部16の上面までの距離)は、第1ナット部1及び第2ナット部3の厚み(高さ)よりも短く設定されている。
【0041】
なぜなら、第1ナット部1及び第2ナット部3のみで構成されるダブルナットを締め付ける場合を考えたときに、例えば、第2ナット部3を回転規制部16で回転規制する場合に、回転規制部16の厚みよりも第2ナット部3の厚みが薄い場合には、他方側連結部22の回転により第1ナット部1を締め付けたとしても第2ナット部3が回転規制部16に埋もれてしまい、第1ナット部1と第2ナット部3とが接触せずダブルナットとしての役割を果たせなくなるからである。
【0042】
回転規制部16の六角の凹凸形状は、第1ナット部1及び第2ナット部3の外形である六角形と一致しているため、第1ナット部1又は第2ナット部3と嵌合させることで回転方向の動きをしっかりと規制することができる。
【0043】
回転規制部16の孔部16aは、六角ナットを嵌合させた状態から把持部12の径方向に六角ナットを移動させることにより六角ナットを把持部12から取り外すための切り欠き部23を有している。これにより、例えば、図1(b)に示されるように、把持部12に係止されたダブルナット機構5を径方向に移動させることで把持部12から取り外すことが出来る。
【0044】
図2(e)に示されるように、回転規制部16の六角の凹凸形状は、孔部13の外径よりも内径側に形成されており、凹凸を形成する壁部が突設されている。当該壁部の天井面がワッシャ部2を係止可能な部位である係止部14として機能する。
【0045】
回転連動部18は、係止部14と回転規制部16との間に設けられ、ソケット部6の空転を規制しつつ把持部12と連動してソケット部6を回転させるために他方側連結部22を嵌合可能な孔部18aである。この孔部18aは、六角形の外形を有する他方側連結部22が嵌合するように六角形状を有している。
【0046】
なお、回転連動部18の六角の凹凸形状は、回転規制部16の対角寸法よりも大きい寸法を有しているが、孔部13の外形よりも内径側に形成されているため、上述したように壁部の天井面が係止部14として機能する。
【0047】
上記のように、ソケット部6を回転連動部18側に押し付けて他方側連結部22を回転連動部18に嵌合して、他方側連結部22の先端側端部22Tが回転規制部16の天井壁に係止された状態となるため、ソケット部6が把持部12の底面側から抜け落ちることがない。
【0048】
また、把持部12の天井面側には、ソケット部6の円柱形状の一方側連結部20が挿通される貫通孔21aを有する蓋部材21が設けられている。また、蓋部材21の内壁には、ソケット部6を蓋部材21側に引いた際に他方側連結部22の基端側端部22Bが嵌合するための回転連動部19が形成されている。
【0049】
続いて、上記構成のダブルナット締結補助装置10の作用について説明する。図1(b)に示されるダブルナット機構5において、ダブルナット部を締め付ける又は緩める際にダブルナット締結補助装置10を準備する。
【0050】
具体的には、図1(b)に示されるように、ユーザの手8で、ダブルナット締結補助装置10の把持部12を握り、ダブルナット機構5の螺子部4を把持部12の孔部13に通過させて、第2ナット部3を回転規制部16の六角の凹凸形状に嵌合させる。
【0051】
このとき、ワッシャ部2が係止部14に係合され、第2ナット部3は、回転規制部16と嵌合するため、第2ナット部3の回転が規制される。しかしながら、第1ナット部1は、第1ナット部1の対角寸法よりも大きい直径の孔部13に収容されているため、第1ナット部1は回転可能なフリーな状態となっている。
【0052】
その後、ソケット部6を把持部12の底面側(回転規制部16側)に押し付けて、図1(a)に示されるように、ソケット部6の他方側連結部22の六角形状の孔部22aを第1ナット部1に嵌合させる。ダブルナット締結補助装置10の試作品の例で見れば、図4に示された状態となる。
【0053】
このとき、ソケット部6の一方側連結部20の天井面部は、把持部12から突出した状態となっている。次に、電動インパクトレンチとソケット部6の天井面部の孔部20aとを接続させて、電動インパクトレンチを作動させる。この際、ソケット部6は孔部13内を回転可能な状態となっている。
【0054】
電動インパクトレンチの作動により、ソケット部6が回転すると、ソケット部6の底面部に嵌合する第1ナット部1が回転する。このとき、第2ナット部3は、回転規制部16により回転が規制されているので、第1ナット部1と第2ナット部3とを有するダブルナット部をしっかりと締め付けることが出来る。
【0055】
従来、ダブルナットを締め付ける際に、一人の作業者が締め付け作業をするために、棒状に長く伸びたメガネレンチなどを片手で操作しながら、もう一方でインパクトレンチなどの電動工具を操作する必要があるため、効率良く締め付け作業を行えないという課題があった。また、一人で難しい場合は、二人の作業者で締め付けを行う必要があった。
【0056】
しかしながら、ダブルナット締結補助装置10によれば、一人の作業者(ユーザ)が一方の手8で把持部12を持ちながら、他方の手で電動インパクトレンチを操作するだけで締め付けることができる。これにより、効率良く締め付けることができるという顕著な効果を奏する。
【0057】
また、ダブルナット締結補助装置10によれば、把持部12とソケット部6とが一体となっているため、ソケット部6を把持部12に取り付けたり取り外したりする必要がない。これにより、より効率良くダブルナット部を締め付けたり緩めたりすることができるという顕著な効果を奏する。
【0058】
さらに、上記のように、第2ナット部3の動きを規制しながら第1ナット部1を回転させるような場合ではなく、例えば、第1ナット部1又は第2ナット部3のいずれかの六角ナットのみを回転させる場合においては、ソケット部6を押し付けて他方側連結部22を回転連動部18に嵌合させる。ダブルナット締結補助装置10の試作品の例で言えば、図5に示された状態が他方側連結部22が回転規制部16に嵌合された状態である。
【0059】
そして、他方側連結部22の六角孔部又は回転規制部16に第1ナット部1又は第2ナット部3のいずれかを連結して電動インパクトレンチを操作することで他方側連結部22及び回転規制部16が連動して回転するため、第1ナット部1又は第2ナット部3を回転させて螺子部4に螺合させることができる。
【0060】
ダブルナット締結補助装置10の試作品の例で言えば、図6に示される状態である。ここで、回転規制部16の厚み(把持部12の底面から回転規制部16の上面までの距離)は、第1ナット部1及び第2ナット部3の厚み(高さ)よりも短く設定されている。この状態で回転規制部16のみによって第1ナット部1又は第2ナット部3を回転させようとすると回転規制部16の厚みが薄いことからナットの側面全てを保持できていないためトルクが小さくなる。これに対し、他方側連結部22を回転連動部18に嵌合させることで、ナットの側面の全てを保持させた状態となり、大きなトルクで回転させることができるため、効率良く締め付けることができるという利点がある。
【0061】
また、螺子部4に対する第1ナット部1又は第2ナット部3の取り付け位置によってソケット部6を把持部12の天井面側に引いて回転連動部19の孔部19aに嵌合させる。この状態で、第1ナット部1又は第2ナット部3を他方側連結部22の六角形の孔部22aに嵌合させて電動インパクトレンチを操作することで、第1ナット部1又は第2ナット部3を回転させて螺子部4に螺合させることが出来る。ダブルナット締結補助装置10の試作品の例で言えば、図7に示された状態であり、ソケット部6を把持部12の天井面側に引いて回転連動部19の孔部19aに嵌合させることにより、図7のように螺子部4の突出量が大きく、離れた場所でナット部を回転させるような状況の場合であってもナットを締め付けることができるという利点がある。
【0062】
なお、ダブルナット締結補助装置10は、把持部12にスリット15が形成されているため、ダブルナット機構5とソケット6を装着する際に視認することができ、効率良く装着することができるが、スリット15は必須の構成ではなく、スリット15が無くても上記のように効率良く締め付けを行えるという効果を発揮する。
【符号の説明】
【0063】
1 第1ナット部、2 ワッシャ部、3 第2ナット部、4 螺子部、5 ダブルナット機構、6 ソケット部、8 手、10ダブルナット締結補助装置、12 把持部、13 孔部、14 係止部、15 スリット、16 回転規制部、16a 孔部、18 回転連動部、18a 孔部、19 回転連動部、19a 孔部、20 一方側連結部、20a 孔部、21 蓋部材、21a 貫通孔、22 他方側連結部、22B 基端側端部、22T 先端側端部、22a 孔部、23切り欠き部。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2021-04-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
螺子山が形成された棒状の螺子部と、
前記螺子部に螺合される第1ナット部と第2ナット部とを有するダブルナット部と、
前記第1ナット部と前記第2ナット部との間に設けられ前記第1ナット部及び前記第2ナット部の対角寸法よりも大きい直径を有するワッシャ部と、
を含むダブルナット機構を締め付けたり緩めたりする際に用いるダブルナット締結補助装置であって、
前記ワッシャ部が通過可能な空間領域を有する孔部を有し、軸方向に沿ったスリットが形成された筒状の把持部と、
一方側に前記第1ナット部及び前記第2ナット部を前記螺子部に螺合させるために回転駆動するインパクトレンチに連結可能な一方側連結部が設けられ、他方側に前記第1ナット部又は前記第2ナット部に連結可能な他方側連結部が設けられるソケット部と、
を備え、
前記ソケット部は、
円柱形状の前記一方側連結部の直径よりも大きい対角寸法を有する前記他方側連結部は多角柱形状を有しており、前記一方側連結部が前記把持部から突出しつつ、前記他方側連結部が前記把持部内から脱落することなく前記把持部内を往復移動できるとともに前記把持部の前記孔部内で空転可能な軸部材を有し、
前記把持部は、
前記孔部の下部に設けられ、前記第1ナット部又は前記第2ナット部を通過させて前記ワッシャ部を係止可能な係止部と、
前記係止部の下部に設けられ、前記第1ナット部又は前記第2ナット部の前記螺子部への螺合回転を規制する回転規制部と、
前記係止部と前記回転規制部との間に設けられ、前記ソケット部の空転を規制しつつ前記把持部と連動して前記ソケット部を回転させるために前記他方側連結部を嵌合可能な回転連動部と、
を有することを特徴とするダブルナット締結補助装置。
【請求項2】
請求項1に記載のダブルナット締結補助装置において、
前記第1ナット部及び前記第2ナット部は、六角ナットであり、
前記回転規制部は、前記六角ナットを嵌合させるための六角形の孔部を有し、
前記ソケット部の前記他方側連結部は、外形が六角形であり、
前記回転連動部は、前記他方側連結部の外形に沿った六角形の孔部を有することを特徴とするダブルナット締結補助装置。
【請求項3】
請求項2に記載のダブルナット締結補助装置において、
前記回転規制部の前記孔部は、前記六角ナットを嵌合させた状態から前記把持部の径方向に前記六角ナットを移動させることにより前記六角ナットを前記把持部から取り外すための切り欠き部を有することを特徴とするダブルナット締結補助装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のダブルナット締結補助装置において、
前記把持部において、前記回転連動部が設けられる側と反対側に設けられ、前記回転連動部とは別の前記回転連動部が設けられることを特徴とするダブルナット締結補助装置。