(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022108828
(43)【公開日】2022-07-27
(54)【発明の名称】時計部品の取付構造
(51)【国際特許分類】
G04B 45/00 20060101AFI20220720BHJP
G04B 19/06 20060101ALI20220720BHJP
【FI】
G04B45/00 T
G04B19/06 R
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021003997
(22)【出願日】2021-01-14
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-02-25
(71)【出願人】
【識別番号】500198210
【氏名又は名称】セイコータイムクリエーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】上坂 明
(57)【要約】
【課題】製造時の作業性を簡素化するとともに、多様なデザインに対応することができる時計部品の取付構造を提供する。
【解決手段】時計部品の取付構造1は、弾性変形する保持部17が一体的に設けられたベース2と、装飾部品と、固定部品6と、を備える。装飾部品は、保持部17を変形させることによりベース2に着脱可能に取り付けられる。固定部品6は、ベース2に取り付けられ、保持部17の変形を不能にすることにより装飾部品をベース2に固定する。装飾部品は、ベース2の表側から取り付けられる。固定部品6は、ベース2の裏側に取り付けられ、裏側から保持部17を押さえる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性変形する保持部が一体的に設けられたベースと、
前記保持部を変形させることにより前記ベースに着脱可能に取り付けられる時計部品と、
前記ベースに取り付けられ、前記保持部の変形を不能にすることにより前記時計部品を前記ベースに固定する固定部品と、
を備える時計部品の取付構造。
【請求項2】
前記時計部品は、前記ベースの表側から取り付けられ、
前記固定部品は、前記ベースの裏側に取り付けられ、前記裏側から前記保持部を押さえる
請求項1に記載の時計部品の取付構造。
【請求項3】
前記保持部は、
前記ベースの本体部と接続される変形部と、
前記変形部を変形させることにより前記本体部に対して第一軸を回転中心として回転するとともに、前記時計部品のある方向へ延びる第一延在部と、
前記第一延在部と一体回転するとともに、前記ベースの前記裏側へ延びる第二延在部と、
を有し、
前記固定部品は、前記第二延在部を回転不能に押さえる
請求項2に記載の時計部品の取付構造。
【請求項4】
前記固定部品は、歯車であり、
前記歯車は、時計の文字板に対して前記ベースを回転させる
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の時計部品の取付構造。
【請求項5】
前記時計部品は、前記ベースの表側から取り付けられ、
前記保持部は、前記時計部品を前記表側から保持し、
前記固定部品は、前記ベースの前記表側に取り付けられ、前記表側から前記保持部を押さえる
請求項1に記載の時計部品の取付構造。
【請求項6】
前記固定部品は、化粧板である
請求項5に記載の時計部品の取付構造。
【請求項7】
前記時計部品は、装飾部品である
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の時計部品の取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時計部品の取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、文字板等のベース部材に宝石等の装飾部品(時計部品)が取り付けられた時計の構成が開示されている。これらの時計では、製造時における装飾部品の着脱性を向上するための技術が種々提案されている。
【0003】
例えば特許文献1には、時計の文字板に宝石(時計部品)を固定する時計部品の取付構造であって、文字板が互いに対向する上側板状部材と下側板状部材とからなる構成が開示されている。各板状部材はそれぞれ重なる位置に開口を有し、各開口の周縁部は、各板状部材の断面視で、他方の板状部材に対向する板状部材の面から反対側の面に向かって各開口部が狭くなるように傾斜している。特許文献1に記載の技術によれば、開口に宝石を収容した状態で各板状部材を互いに重ね合わせることで、2個の板状部材の間に宝石を収容して保持する台座部を形成できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術にあっては、文字板を2個の板状部材(上側板状部材及び下側板状部材)で挟み込んだ後、更に他の部品を用いて2個の板状部材同士を固定する必要がある。このため、製造時の作業性が煩雑になるおそれがある。
ところで、従来、装飾部品を文字板に取り付ける方法として、上述の装飾部品を挟み込む方法の他に、例えば文字板をプラスチック成型品とし、装飾部品を嵌め込んだ後にプラスチックの一部に熱を加えて変形させることにより、装飾部品を固定する方法がある。しかしながら、量産時においては、プラスチックを熱変形させるための専用の治具が必要であり、製造コストが高くなり易い。さらに、時計のデザイン毎に治具を製作し直すとコストがより高額になる。また、同一の治具で製造できるように時計のデザインを行うと、デザイン自由度が低下するおそれがあった。
【0006】
そこで、本発明は、製造時の作業性を簡素化するとともに、多様なデザインに対応することができる時計部品の取付構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の一つの形態の時計部品の取付構造は、弾性変形する保持部が一体的に設けられたベースと、前記保持部を変形させることにより前記ベースに着脱可能に取り付けられる時計部品と、前記ベースに取り付けられ、前記保持部の変形を不能にすることにより前記時計部品を前記ベースに固定する固定部品と、を備える。
【0008】
この構成によれば、ベースと一体的に設けられた保持部が弾性変形することにより、ベースに時計部品を取り付けることができる。ベースと保持部とは一体形成されているので、時計部品を取り付けるために複数の部品を用いる従来技術と比較して、部品点数を削減できる。また、ベースに対して保持部を弾性変形させるだけで容易に時計部品を取り付けることができるので、製造時の作業性を向上できる。ベースに時計部品を取り付けた後、ベースに固定部品を取り付けることにより、保持部の弾性変形が不能となる。これにより、例えば衝撃等により保持部が不意に弾性変形してしまうことを抑制できる。すなわち、一度ベースに取り付けられた時計部品が、ベースから不意に外れることを抑制できる。よって、簡素な構成により、確実に時計部品を固定することができる。さらに、熱溶着により固定する従来技術とは異なり、専用の治具を必要としない。このため、例えば時計部品の個数や位置等のデザイン上の制約を受けることなく、ベースの任意の位置に時計部品を取り付けることが可能となる。よって、時計のデザイン自由度を向上できる。
したがって、製造時の作業性を簡素化するとともに、多様なデザインに対応することができる時計部品の取付構造を提供できる。
【0009】
また、前記時計部品の取付構造において、前記時計部品は、前記ベースの表側から取り付けられ、前記固定部品は、前記ベースの裏側に取り付けられ、前記裏側から前記保持部を押さえる。
【0010】
この構成によれば、時計部品は、視認されるベースの表側に取り付けられる。一方、固定部品は、視認され難いベースの裏側に取り付けられて裏側から保持部を押さえる。保持部を固定するための固定部品を裏側に取り付けることにより、固定部品を表側に取り付ける場合と比較して、固定部品を外部から視認し難くできる。よって、固定部品が時計の外観に影響を与えることを抑制し、時計の意匠性を向上できる。また、固定部品をベースの裏側に配置することにより、ベースの表側のデザイン自由度を向上できる。
【0011】
また、前記時計部品の取付構造において、前記保持部は、前記ベースの本体部と接続される変形部と、前記変形部を変形させることにより前記本体部に対して第一軸を回転中心として回転するとともに、前記時計部品のある方向へ延びる第一延在部と、前記第一延在部と一体回転するとともに、前記ベースの前記裏側へ延びる第二延在部と、を有し、前記固定部品は、前記第二延在部を回転不能に押さえる。
【0012】
この構成によれば、第一延在部をベースの本体部に対して回転させることにより、時計部品の着脱を容易に行うことができる。第一延在部とは異なる方向に延びる第二延在部に固定部品が取り付けられることにより、第二延在部が回転不能となる。これにより、第二延在部と一体形成された第一延在部も回転不能となり、保持部の弾性変形が抑制される。よって、時計部品が不意にベースからは外れることを抑制できる。時計部品を押さえる部分(第一延在部)と固定部品が取り付けられる部分(第二延在部)とが異なるため、表側における時計の意匠性を損なうことなく確実に時計部品を固定できる。よって、意匠性と製造性を両立した時計部品の取付構造とすることができる。
【0013】
また、前記時計部品の取付構造において、前記固定部品は、歯車であり、前記歯車は、時計の文字板に対して前記ベースを回転させる。
【0014】
この構成によれば、時計の文字板に対してベースを回転させるための歯車を固定部品として使用できる。これにより、保持部の固定のためだけに別途部品を設ける場合と比較して、製造時の作業性を簡素化するとともに部品点数を削減できる。
【0015】
また、前記時計部品の取付構造において、前記時計部品は、前記ベースの表側から取り付けられ、前記保持部は、前記時計部品を前記表側から保持し、前記固定部品は、前記ベースの前記表側に取り付けられ、前記表側から前記保持部を押さえる。
【0016】
この構成によれば、時計部品をベースの表側から保持するための保持部を、固定部品により表側から押さえることができる。これにより、保持部の弾性変形が不能となり、保持部が不意に弾性変形してしまうことを抑制できる。よって、簡素な構成により、確実に時計部品をベースに固定することができる。
【0017】
また、前記時計部品の取付構造において、前記固定部品は、化粧板である。
【0018】
この構成によれば、時計の文字板の意匠面である化粧板を固定部品として使用できる。これにより、保持部の固定のためだけに別途部品を設ける場合と比較して、製造時の作業性を簡素化するとともに部品点数を削減できる。また、化粧板を固定部品とすることで、固定部品をベースの表側に配置した場合であっても、時計の意匠性を損なわない。よって、時計部品を容易に取り付け可能にしつつ、時計の意匠性が低下することを抑制できる。
【0019】
また、前記時計部品の取付構造において、前記時計部品は、装飾部品である。
【0020】
この構成によれば、特に外部から視認されやすい装飾部品を固定する場合において、好適な構成とすることができる。すなわち、装飾部品の固定に係る作業性を向上して製造コストを抑制しつつ、多様なデザインに対応することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、製造時の作業性を簡素化するとともに、多様なデザインに対応することができる時計部品の取付構造を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】第1実施形態に係る時計部品の取付構造を有する時計の正面図。
【
図2】第1実施形態に係る時計部品の取付構造の正面図。
【
図3】第1実施形態に係るベースを表側から見た正面図。
【
図4】第1実施形態に係るベースを裏側から見た背面図。
【
図6】第2実施形態に係る時計部品の取付構造において固定部品の図示を省略した正面図。
【
図7】第2実施形態に係る時計部品の取付構造の正面図。
【
図8】第3実施形態に係る時計部品の取付構造の斜視図。
【
図9】第3実施形態に係る時計部品の取付構造において化粧板の図示を省略した斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお以下の説明では、同一または類似の機能を有する構成に同一の符号を付す。そして、それら構成の重複する説明は省略する場合がある。
【0024】
(第1実施形態)
(時計)
図1は、第1実施形態に係る時計部品の取付構造1を有する時計10の正面図である。
時計10は、例えばからくり時計である。時計10は、装飾が施されて中央に開口が形成された正面板8と、正面板8の開口内に回転可能に配置された文字板11と、文字板11よりも正面側に配置され移動可能な複数(本実施形態では3個)のベース2と、時計10の中心軸線O回りを回転して時刻を示す指針9と、を備える。
図1では、文字板11及びベース2が初期位置にある状態を示している。
【0025】
文字板11は、中心軸線Oを中心とする円板状に形成されている。文字板11の正面には、時刻を示す数字が明示されている。本実施形態では、文字板11の正面には、数字の「2」「6」「10」が中心軸線O回りに等角度間隔に明示されている。文字板11の裏側には、指針9を駆動するムーブメントや、文字板11及びベース2を駆動するためのモータ等(いずれも不図示)が配置されている。
【0026】
図2は、第1実施形態に係る時計部品の取付構造1の正面図である。
ベース2は、時計部品の取付構造1の一部を構成している。すなわち、時計10は、時計部品の取付構造1を有する。
図1に示すように、複数のベース2は、文字板11に対してそれぞれ相対回転可能に設けられている。各ベース2は、中心軸線O回りに等角度間隔に配置されている。第一のベース2aの表面には、第一の化粧板7aが取り付けられている。第一の化粧板7aには、数字の「11」「12」「1」が明示されている。第二のベース2bの表面には、第二の化粧板7bが取り付けられている。第二の化粧板7bには、数字の「3」「4」「5」が明示されている。第三のベース2cの表面には、第三の化粧板7cが取り付けられている。第三の化粧板7cには、数字の「7」「8」「9」が明示されている。
【0027】
初期状態において、複数のベース2は、文字板11に明示された数字を露出するように配置されている。初期状態において、正面から見て、文字板11に明示された数字、及び複数のベース2に明示された数字が中心軸線O回りに等角度間隔に並んでいる。初期状態において、文字板11及び複数のベース2は、全体として正面視で円形の状態で維持され、単一の文字板11として機能する。換言すれば、ベース2は、時計10の文字板11として機能する。
【0028】
図1の矢印Aで示すように、所定の時刻になると、文字板11は、中心軸線Oを中心として、正面板8に対して相対回転する。さらにこのとき、矢印Bで示すように、複数のベース2は、中心軸線O回りを公転しながら文字板11に対して自転する。所定時間が経過すると、文字板11及びベース2は初期位置に戻る。このように、時計10は、所定の時刻にからくり動作を実行する。なお、本実施形態においては、文字板11が正面版8に対して回転するように構成されているが、文字板11の回転範囲や動き等は特に限定されない。時計10は、文字板11が回転している間にスピーカから音楽が出力されるように形成されていてもよい。
【0029】
次に、時計10の要部の構成について詳細に説明する。
図2に示すように、時計部品の取付構造1は、上述のベース2と、装飾部品4(請求項の時計部品)と、固定部品6(
図4及び
図5参照)と、化粧板7と、を有する。時計部品の取付構造1は、宝石等の装飾部品4を時計10の文字板11(本実施形態ではベース2)に固定するための構造である。
【0030】
図3は、第1実施形態に係るベース2を表側から見た正面図である。
図4は、第1実施形態に係るベース2を裏側から見た背面図である。
図5は、
図2のV-V線に沿う断面図である。
図2及び
図3に示すように、ベース2は、時刻を示す数字が記載された(化粧板7が取り付けられた)本体部15と、本体部15から中心軸線O側に延びた柄部16と、収容部18と、保持部17と、を有する。ベース2は、本体部15、柄部16、収容部18及び保持部17を樹脂材料で一体的に成型することにより形成されている。
【0031】
図3に示すように、本体部15及び柄部16は、互いに同一平面上に位置する板状に形成されている。柄部16は、正面から見て、中心軸線Oを中心とする扇形状に形成されている。収容部18は、本体部15と柄部16との境界部分に設けられている。収容部18は、正面から見て、ベース2のほぼ中央部に設けられている。収容部18には、装飾部品4が収容される。具体的に、本体部15と柄部16との境界部分には、円形状に形成された開口と、開口の外周部から裏面側へ延びる支持壁29(
図5参照)と、により裏面に向かって窪む凹部が形成されている。この凹部が収容部18とされている。よって、収容部18には、ベース2の表面15a側から装飾部品4を収容することが可能である。
【0032】
保持部17は、本体部15と一体的に設けられている。保持部17は、本体部15に対して弾性変形可能に設けられている。具体的に、保持部17は、変形部22と、第一延在部24と、第二延在部26と、を有する。
変形部22は、ベース2を厚み方向に貫通する複数の孔32の間に設けられている。変形部22は、本体部15と同一平面上に設けられている。本実施形態において、孔32は2個設けられている。2個の孔32は、正面から見て、ベース2の上下方向に互いに離間するように設けられている。変形部22は、2個の孔32の間において、ベース2の左右方向に一対設けられている。一対の変形部22は、正面から見て、それぞれベース2の幅方向に沿う細長い直線状に形成されている。一対の変形部22は、上下方向において同じ位置に設けられている。つまり、一対の変形部22は、正面から見て、直線状の1本の軸(第一軸C)と同軸上に設けられている。第一軸Cは、ベース2の本体部15と同一平面上に設けられている。一対の変形部22のうち互いに対向する側(幅方向の内側)に位置する内端部は、詳しくは後述する第一延在部24に接続されている。換言すれば、一対の変形部22は、第一延在部24を介して連結されている。一対の変形部22のうち内端部と反対側の端部(外端部)は、ベース2の本体部15とそれぞれ接続されている。変形部22は、細長い直線状に形成されることにより、本体部15と比較して剛性が低くなっている。これにより、変形部22は、本体部15に対して、第一軸Cをねじり中心として捩れるように弾性変形する。
【0033】
第一延在部24は、一対の変形部22の各内端部にそれぞれ接続されている。一対の変形部22が捩れ変形することにより、第一延在部24は、本体部15に対して第一軸Cを回転中心として回転する。なお、
図3及び
図4は、変形前の保持部17の状態を示している。第一延在部24は、変形前において、本体部15が延在する方向とほぼ平行に設けられている。変形前において、第一延在部24は、一対の変形部22と接続される基端部33から、柄部16側へ向かって延びている。柄部16側に位置する第一延在部24の先端部34は、収容部18の内部まで延びている。換言すれば、第一延在部24は、変形前において、収容部18に収容された装飾部品4のある方向へ向かって延びている。第一延在部24は、正面から見て、先端部34が収容部18の開口にわずかに掛かる長さに設定されている。第一延在部24の先端部34は、柄部16側へ向かうにつれて漸次幅が小さくなる先細り形状に形成されている。また、柄部16には、収容部18における第一延在部24と反対側から収容部18の内部へ向かって延びる係止爪35が一体形成されている。係止爪35は、正面から見て、収容部18の開口にわずかに掛かるように形成されている。
【0034】
図4に示すように、第二延在部26は、第一延在部24の基端部33に接続されている。第二延在部26は、第一延在部24の基端部33からベース2の裏面15b側へ向かって延びている。第二延在部26は、筒状に形成されている。第二延在部26は、本体部15に対して、第一軸Cを回転中心として第一延在部24と一体回転する。ここで、ベース2の本体部15には、本体部15からベース2の裏面15b側に向かって突出する筒状の突起部38が設けられている。本実施形態において、突起部38は、背面から見て、第一延在部24を挟んで左右に一対設けられている。一対の突起部38の軸方向(突出方向)と、第二延在部26の軸方向(突出方向)と、はほぼ平行となっている。
【0035】
装飾部品4は、収容部18に収容される。装飾部品4は、例えば宝石やクリスタル等である。装飾部品4は、保持部17を変形させることによりベース2に着脱可能に取り付けられる。
図5に示すように、装飾部品4は、保持部17が変形していない状態において、第一延在部24の先端部34及び係止爪35によって、収容部18内に係止されている。
【0036】
固定部品6は、ベース2の裏面15b側に取り付けられる。固定部品6は、ベース2の裏側から保持部17を押さえる。固定部品6は、保持部17の変形を不能にすることにより装飾部品4をベース2に固定する。具体的に、固定部品6は、第二延在部26を回転不能に押さえることにより、保持部17の変形を不能にする。本実施形態において、固定部品6は、時計10の文字板11に対してベース2を回転させるための歯車部品である。歯車(固定部品6)は、文字板11に設けられた他の歯車(不図示)と噛み合うとともに、他の歯車から回転動力が伝達されることにより、ベース2を回転させる機能を有する。
【0037】
図4に示すように、固定部品6は、外歯を有する歯車本体41と、複数(本実施形態では3個)のピン42と、を有する。複数のピン42は、歯車本体41からベース2側へ向かって突出している。複数のピン42は、ほぼ平行に設けられている。
図5に示すように、複数のピン42のうち第一のピン42は、第二延在部26に挿入されている。複数のピン42のうち残りの第二及び第三のピン42は、本体部15に設けられた2個の突起部38にそれぞれ挿入されている。複数のピン42が第二延在部26及び突起部38にそれぞれ挿入されることにより、第二延在部26と突起部38との平行状態が維持され、第二延在部26の回転が抑制される。複数のピン42の直径は、それらが挿入される第二延在部26及び突起部38の内径よりも大きい。ピン42が軽圧入されることにより、ベース2に固定部品6が取り付けられる。よって、固定部品6は、ピン42を第二延在部26及び突起部38に挿入するだけでベース2に取り付けられるとともに、保持部17の弾性変形を抑制している。
【0038】
図2に示すように、化粧板7は本体部15の表面15aに取り付けられている。化粧板7は、外部から視認される意匠面であり、上述したように時刻を示す数字や模様等が明示されている。化粧板7は、ベース2の本体部15及び保持部17の大部分を覆っている。化粧板7は、装飾部品4及び保持部17の先端部34を露出するようにベース2に取り付けられている。
【0039】
次に、上述のベース2に装飾部品4を固定する際の作業工程について説明する。作業を開始する前の状態において、固定部品6は未だベース2に取り付けられていない。
始めに、装飾部品4をベース2に取り付ける。装飾部品4を取り付ける際には、まず、作業者が指等でベース2の第二延在部26を
図4の矢印Dの方向に傾ける。第二延在部26を傾けると、変形部22が捩れるように弾性変形する。これに伴って、第一延在部24の先端部34は、装飾部品4を指向する向きから、表側(
図3の紙面手前側)へ向くように、第一延在部24が第一軸C回りに回転する。第一延在部24が回転することにより、収容部18の開口が開放される。作業者は、第二延在部26を傾けた状態に維持しながら、すなわち収容部18を開放した状態に維持しながら、ベース2の表側から収容部18に装飾部品4を収容する。次に、作業者は、第二延在部26から指を離して、保持部17の変形状態を解除する。これにより、再び第一延在部24の先端部34が開口の一部を塞ぐ。よって、収容部18に収容された装飾部品4は、第一延在部24の先端部34及び係止爪35によって係止され、ベース2に取り付けられる。
【0040】
次に、取り付けられた装飾部品4が外れないように、装飾部品4をベース2に固定する。作業者は、収容部18に装飾部品4が収容された後、ベース2の裏側から固定部品6を装着する。具体的に、複数のピン42を対応する第二延在部26及び突起部38にそれぞれ軽圧入することにより、固定部品6をベース2に装着する。固定部品6が装着されることにより、第二延在部26の回転及び保持部17の変形が抑制される。これにより、装飾部品4がベース2から離脱することが抑制され、装飾部品4がベース2に固定される。
【0041】
(作用、効果)
次に、上述の時計部品の取付構造1の作用、効果について説明する。
本実施形態の時計部品の取付構造1によれば、時計部品の取付構造1は、弾性変形する保持部17が一体的に設けられるベース2と、時計部品(装飾部品4)と、固定部品6と、を備える。装飾部品4は、保持部17を変形させることによりベース2に着脱可能に取り付けられる。固定部品6は、ベース2に取り付けられ、保持部17の変形を不能にすることにより装飾部品4をベース2に固定する。ベース2と一体的に設けられた保持部17が弾性変形することにより、ベース2に装飾部品4を取り付けることができる。ベース2と保持部17とは一体形成されているので、装飾部品4を取り付けるために複数の部品を用いる従来技術と比較して、部品点数を削減できる。また、ベース2に対して保持部17を弾性変形させるだけで容易に装飾部品4を取り付けることができるので、製造時の作業性を向上できる。ベース2に装飾部品4を取り付けた後、ベース2に固定部品6を取り付けることにより、保持部17の弾性変形が不能となる。これにより、例えば衝撃等により保持部17が不意に弾性変形してしまうことを抑制できる。すなわち、一度ベース2に取り付けられた装飾部品4が、ベース2から不意に外れることを抑制できる。よって、簡素な構成により、確実に装飾部品4を固定することができる。さらに、熱溶着により固定する従来技術とは異なり、専用の治具を必要としない。このため、例えば装飾部品4の個数や位置等のデザイン上の制約を受けることなく、ベース2の任意の位置に装飾部品4を取り付けることが可能となる。よって、時計10のデザイン自由度を向上できる。
したがって、製造時の作業性を簡素化するとともに、多様なデザインに対応することができる時計部品の取付構造1を提供できる。
【0042】
装飾部品4は、視認されるベース2の表側に取り付けられる。一方、固定部品6は、視認され難いベース2の裏側に取り付けられて裏側から保持部17を押さえる。保持部17を固定するための固定部品6を裏側に取り付けることにより、固定部品6を表側に取り付ける場合と比較して、固定部品6を外部から視認し難くできる。よって、固定部品6が時計10の外観に影響を与えることを抑制し、時計10の意匠性を向上できる。また、固定部品6をベース2の裏側に配置することにより、ベース2の表側のデザイン自由度を向上できる。
【0043】
保持部17は、変形部22と、第一延在部24と、第二延在部26と、を有する。変形部22は、ベース2の本体部15と接続される。第一延在部24は、変形部22を変形させることにより本体部15に対して回転するとともに、装飾部品4のある方向へ延びる。第二延在部26は、第一延在部24と一体回転するとともに、ベース2の裏側へ延びる。固定部品6は、第二延在部26を回転不能に押さえる。これにより、第一延在部24をベース2の本体部15に対して回転させることにより、装飾部品4の着脱を容易に行うことができる。第一延在部24とは異なる方向に延びる第二延在部26に固定部品6が取り付けられることにより、第二延在部26が回転不能となる。これにより、第二延在部26と一体形成された第一延在部24も回転不能となり、保持部17の弾性変形が抑制される。よって、装飾部品4が不意にベース2からは外れることを抑制できる。装飾部品4を押さえる部分(第一延在部24)と固定部品6が取り付けられる部分(第二延在部26)とが異なるため、表側における時計10の意匠性を損なうことなく確実に装飾部品4を固定できる。よって、意匠性と製造性を両立した時計部品の取付構造1とすることができる。
【0044】
固定部品6は、文字板11に対してベース2を回転させるための歯車である。このため、時計10の文字板11に対してベース2を回転させるための歯車を固定部品6として使用できる。これにより、保持部17の固定のためだけに別途部品を設ける場合と比較して、製造時の作業性を簡素化するとともに部品点数を削減できる。
【0045】
時計部品は、装飾部品4である。これにより、特に外部から視認されやすい装飾部品4を固定する場合において、好適な構成とすることができる。すなわち、装飾部品4の固定に係る作業性を向上して製造コストを抑制しつつ、多様なデザインに対応することができる。
【0046】
(第2実施形態)
次に、本発明に係る第2実施形態について説明する。
図6は、第2実施形態に係る時計部品の取付構造201において固定部品206の図示を省略した正面図である。
図7は、第2実施形態に係る時計部品の取付構造201の正面図である。第2実施形態では、化粧板が固定部品206として機能する点で上述した第1実施形態と相違している。
【0047】
図6に示すように、第2実施形態における時計部品の取付構造201は、ベース202と、2個の装飾部品4と、固定部品206(
図7参照)と、を有する。ベース202には、収容部18が2個設けられている。各収容部18には、装飾部品4がそれぞれ収容されている。
【0048】
ベース202の保持部217は、一対の変形部222と、第一延在部225と、を有する。変形部222は、正面から見て、本体部15に対して十分に細い曲線上に形成されている。第2実施形態において、変形部222は、正面から見て円弧状に形成されている。変形部222の一方の端部は、本体部15と接続されている。変形部222の他方の端部は、第一延在部225と接続されている。変形前において、第一延在部225は、変形部222と接続される基端部33から、収容部18に収容された装飾部品4のある方向へ向かって延びている。変形部222が装飾部品4から離間する方向に撓むように弾性変形することにより、第一延在部225が変形する。具体的に、第一延在部225は、本体部15と平行に延びて装飾部品4を係止する状態から、
図6の矢印Eで示すように、装飾部品4から離間する方向に弾性変形し、又は、更にベース202の厚み方向に撓んで、ベース202の表側から収容部18に装飾部品4を収容できる程度まで変形する。第一延在部225が変形することにより、装飾部品4がベース202の表側から取り付けられる。第一延在部225の変形状態を解除することにより、保持部217は、装飾部品4を表側から保持する。
【0049】
図7に示すように、固定部品206は、ベース202の表側に取り付けられている。本実施形態において、固定部品206は、化粧板である。固定部品206は、保持部217の第一延在部225を表側から覆うことにより、表側から保持部217を押さえる。これにより、固定部品206は、保持部217(第一延在部225)の弾性変形を抑制し、装飾部品4が収容部18から離脱することを抑制している。
【0050】
第2実施形態の時計部品の取付構造201によれば、装飾部品4をベース202の表側から保持するための保持部217を、固定部品206により表側から押さえることができる。これにより、保持部217の弾性変形が不能となり、保持部217が不意に弾性変形してしまうことを抑制できる。よって、簡素な構成により、確実に装飾部品4をベース202に固定することができる。
【0051】
固定部品206は化粧板である。このため、時計10の文字板11の意匠面である化粧板を固定部品206として使用できる。これにより、保持部217の固定のためだけに別途部品を設ける場合と比較して、製造時の作業性を簡素化するとともに部品点数を削減できる。また、化粧板を固定部品206とすることで、固定部品206をベース202の表側に配置した場合であっても、時計10の意匠性を損なわない。よって、装飾部品4を容易に取り付け可能にしつつ、時計10の意匠性が低下することを抑制できる。
【0052】
(第3実施形態)
次に、本発明に係る第3実施形態について説明する。
図8は、第3実施形態に係る時計部品の取付構造301の斜視図である。
図9は、第2実施形態に係る時計部品の取付構造301において化粧板307の図示を省略した斜視図である。
図10は、
図8のX-X線に沿う断面図である。第3実施形態では、保持部317の構成が上述した第1実施形態と相違している。
【0053】
図8及び
図9に示すように、第3実施形態における時計部品の取付構造301は、ベース302と、2個の装飾部品4と、固定部品と、化粧板307と、を有する。ベース302には、収容部18が2個設けられている。各収容部18には、装飾部品4がそれぞれ収容されている。
【0054】
ベース302の保持部317は、一対の変形部322と、第一延在部324と、第二延在部326と、を有する。変形部322及び第二延在部326の構成は、第1実施形態における変形部22及び第二延在部26の構成と同等であるため、以下では説明を省略する。変形前において、第一延在部324は、一対の変形部322と接続される基端部33から柄部16側へ向かって延びる胴部351と、胴部351の柄部16側の端部から左右両側に延びる腕部352と、により正面視T字状に形成されている。腕部352の左右両端部は、各収容部18に収容された装飾部品4のある方向へ向かってそれぞれ延びている。すなわち、腕部352の左右両端部が、第一延在部324の先端部34となっている。
図10に示すように、第一延在部324の各先端部34は、表側から各装飾部品4を覆うことにより、装飾部品4を収容部18内に係止している。また、本体部15には、収容部18における第一延在部324の先端部34と対向する位置に、収容部18の内部へ向かって延びる係止爪335が一体形成されている。
【0055】
固定部品の構成は、第1実施形態における固定部品6の構成と同等である。すなわち、固定部品は、ベース2の裏側から第二延在部326及び突起部38(
図4参照)にピン42(
図4参照)を挿入することにより、第二延在部326(すなわち保持部317)の変形を抑制している。また、化粧板307は、本体部15の表面15aに取り付けられ、第一延在部324の先端部34を除く保持部317の全体を覆っている。
【0056】
第3実施形態の時計部品の取付構造301によれば、1個のベース302に対して複数の装飾部品4を取り付ける場合であっても、第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。また、保持部317を複数設けることなく複数の装飾部品4を固定できるので、ベース302の構成を簡素化できるとともに、装飾部品4を取り付ける際の作業性の低下を抑制できる。
【0057】
なお、本発明の技術範囲は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上述の各実施形態では、宝石等の装飾部品4を時計部品とする場合を例に説明したが、これに限られない。時計部品は、時計10に設けられる部品であればよく、装飾部品4に限定されない。
【0058】
からくり時計以外の時計に上述の時計部品の取付構造1,201,301を適用してもよい。
第1実施形態において、固定部品6は歯車部品としたが、これに限られない。ベース2の裏側から保持部17の回転を抑制する構成であればよく、固定部品6の形状は歯車でなくてもよい。但し、より部品点数を削減しつつ作業の工程数を減少できる点において、からくり時計10を作動させるための歯車を固定部品6として兼用した本実施形態の構成は優位性がある。
【0059】
固定部品6のピン42を筒状の第二延在部26に挿入することにより第二延在部26の変形を抑制する構成としたが、これに限られない。例えば、第二延在部26に対して第二延在部26の回転(傾き)方向に設けられ、第二延在部26の回転を阻害する壁部等を設ける構成としてもよい。
【0060】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上述した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上述した実施形態を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0061】
1,201,301 時計部品の取付構造
2,202,302 ベース
4 装飾部品(時計部品)
6,206,306 固定部品
10 時計
11 文字板
15 本体部
17,217,317 保持部
22,222,322 変形部
24,225,324 第一延在部
26 第二延在部
C 第一軸