(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022108835
(43)【公開日】2022-07-27
(54)【発明の名称】電気的接続装置および電気的接続装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
G01R 1/06 20060101AFI20220720BHJP
G01R 1/073 20060101ALI20220720BHJP
H01L 21/66 20060101ALI20220720BHJP
【FI】
G01R1/06 E
G01R1/073 E
H01L21/66 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021004004
(22)【出願日】2021-01-14
(71)【出願人】
【識別番号】000153018
【氏名又は名称】株式会社日本マイクロニクス
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100070024
【弁理士】
【氏名又は名称】松永 宣行
(72)【発明者】
【氏名】成田 聡
【テーマコード(参考)】
2G011
4M106
【Fターム(参考)】
2G011AA10
2G011AA15
2G011AB07
2G011AB08
2G011AC06
2G011AC14
2G011AE01
4M106AA01
4M106BA01
4M106DD03
4M106DD10
4M106DD18
(57)【要約】
【課題】ガイド板に形成したガイド孔にプローブを容易に挿入できる電気的接続装置および電気的接続装置の製造方法を提供する。
【解決手段】電気的接続装置は、プローブが貫通する第1ガイド孔を有する第1ガイド板と、プローブが貫通する第2ガイド孔を有する第2ガイド板と、第1ガイド板と第2ガイド板の間に配置され、プローブが貫通する導入ガイド孔を有する導入フィルムを備える。導入フィルムは、第1ガイド板、第2ガイド板およびプローブを溶解しない特定の溶剤によって溶解する材料からなる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プローブを保持する機能を有する電気的接続装置であって、
前記プローブが貫通する第1ガイド孔を有する第1ガイド板と、
前記プローブが貫通する第2ガイド孔を有する第2ガイド板と、
前記第1ガイド板と前記第2ガイド板の間に配置され、前記プローブが貫通する導入ガイド孔を有する導入フィルムと
を備え、
前記導入フィルムは、前記第1ガイド板、前記第2ガイド板および前記プローブを溶解しない特定の溶剤によって溶解する材料からなることを特徴とする電気的接続装置。
【請求項2】
前記第1ガイド孔、前記第2ガイド孔および前記導入ガイド孔の中心軸が一致するように前記第1ガイド板、前記第2ガイド板および前記導入フィルムが配置されていることを特徴とする請求項1に記載の電気的接続装置。
【請求項3】
前記第1ガイド孔に対する前記第2ガイド孔の相対的な位置を、前記プローブの延伸方向に垂直な方向に沿って移動自在に構成していることを特徴とする請求項1又は2に記載の電気的接続装置。
【請求項4】
前記第1ガイド板の外縁部と前記第2ガイド板の外縁部の間に配置した、前記特定の溶剤によって溶解しないスペーサを有し、
前記スペーサによって前記第1ガイド板と前記第2ガイド板の間に構成される中空領域に、前記導入フィルムが配置されている
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電気的接続装置。
【請求項5】
前記導入フィルムの外縁部が、前記スペーサを構成する複数の部分スペーサの相互間に挟まれていることを特徴とする請求項4に記載の電気的接続装置。
【請求項6】
前記第1ガイド板と前記第2ガイド板の間に複数の前記導入フィルムが相互に離間して配置されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の電気的接続装置。
【請求項7】
第1ガイド孔を有する第1ガイド板、第2ガイド孔を有する第2ガイド板、および、導入ガイド孔を有し前記第1ガイド板と前記第2ガイド板の間に配置された導入フィルムを備えるプローブヘッドを準備し、
前記第1ガイド孔、前記導入ガイド孔および前記第2ガイド孔に連続的にプローブを貫通させ、
前記第1ガイド板、前記第2ガイド板および前記プローブを溶解しない特定の溶剤によって、前記導入フィルムを溶解する
ことを特徴とする電気的接続装置の製造方法。
【請求項8】
前記第1ガイド孔、前記第2ガイド孔および前記導入ガイド孔の中心軸が一致する状態で、前記第1ガイド孔、前記導入ガイド孔および前記第2ガイド孔に前記プローブを貫通させることを特徴とする請求項7に記載の電気的接続装置の製造方法。
【請求項9】
前記導入フィルムを溶解した後に、前記第1ガイド孔に対する前記第2ガイド孔の相対的な位置を、前記プローブの延伸方向に垂直な方向に沿って移動することを特徴とする請求項7又は8に記載の電気的接続装置の製造方法。
【請求項10】
前記プローブヘッドが、前記第1ガイド板と前記第2ガイド板の間に相互に離間して配置された複数の前記導入フィルムを備えることを特徴とする請求項7乃至9のいずれか1項に記載の電気的接続装置の製造方法。
【請求項11】
前記導入フィルムの材料が、ポリビニルアルコール、でんぷん、ゼラチンのいずれかであることを特徴とする請求項7乃至10のいずれか1項に記載の電気的接続装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被測定体の特性の測定に使用する電気的接続装置および電気的接続装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
集積回路などの被測定体をウェハから分離しない状態で測定するために、プローブを有する電気的接続装置が用いられている。電気的接続装置を用いる測定では、プローブの一方の端部を被測定体の信号端子に接触させ、プローブの他方の端部をプリント基板などに配置された電極端子(以下において「ランド」とも称する。)に接触させる。ランドは、ICテスタなどの測定装置と電気的に接続する。電気的接続装置を介して、被測定体と測定装置の間で電気信号が伝搬する。
【0003】
電気的接続装置がプローブを保持するために、プローブの軸方向に沿って複数のガイド板を配置したプローブヘッドが使用されている。それぞれのガイド板に形成した貫通孔(以下において「ガイド孔」と称する。)をプローブが貫通した状態で、プローブヘッドがプローブを保持する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ガイド板を有する電気的接続装置の製造では、相互に離間して重ねた複数のガイド板のガイド孔にプローブを連続的に挿入する。このとき、すべてのガイド板のガイド孔にプローブを挿入することが困難な場合があった。例えば、プローブの変形などに起因して、最初のガイド板のガイド孔を貫通させたプローブが、2枚目以降のガイド板に衝突する問題があった。
【0006】
上記問題点に鑑み、本発明は、ガイド板に形成したガイド孔にプローブを容易に挿入できる電気的接続装置および電気的接続装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る電気的接続装置は、プローブが貫通する第1ガイド孔を有する第1ガイド板と、プローブが貫通する第2ガイド孔を有する第2ガイド板と、第1ガイド板と第2ガイド板の間に配置され、プローブが貫通する導入ガイド孔を有する導入フィルムを備える。導入フィルムは、第1ガイド板、第2ガイド板およびプローブを溶解しない特定の溶剤によって溶解する材料からなる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ガイド板に形成したガイド孔にプローブを容易に挿入できる電気的接続装置および電気的接続装置の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態に係る電気的接続装置の構成を示す模式図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る電気的接続装置の製造方法を説明するための模式的な工程図である(その1)。
【
図3】本発明の実施形態に係る電気的接続装置の製造方法を説明するための模式的な工程図である(その2)。
【
図4】本発明の実施形態に係る電気的接続装置の製造方法を説明するための模式的な工程図である(その3)。
【
図5】本発明の実施形態に係る電気的接続装置の製造方法を説明するための模式的な工程図である(その4)。
【
図6】オフセット配置を説明するための模式図である。
【
図7】比較例の電気的接続装置を示す模式図である。
【
図8】比較例の電気的接続装置の製造方法を説明する模式図である。
【
図9】本発明の実施形態に係る電気的接続装置を用いたプローブカードの例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各部の厚みの比率などは現実のものとは異なることに留意すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。以下に示す実施形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の実施形態は、構成部品の材質、形状、構造、配置などを下記のものに特定するものでない。
【0011】
図1は、本発明の実施形態に係る電気的接続装置1の構成を示す。電気的接続装置1は、プローブ10を保持する機能を有するプローブヘッド2を有する。プローブヘッド2は、第1ガイド板21、第2ガイド板22、および第3ガイド板23を備える。プローブヘッド2は、第2ガイド板22と第3ガイド板23が一体化した構成である。また、プローブヘッド2は、第1ガイド板21と第2ガイド板22の間に相互に離間して配置された、第1導入フィルム31および第2導入フィルム32を備える。
【0012】
図1に示すように、プローブヘッド2は、Z軸方向に沿って、第1ガイド板21、第1導入フィルム31、第2導入フィルム32、第2ガイド板22、および第3ガイド板23を順に配置した構成である。ここで、Z軸方向は、プローブヘッド2に保持されるプローブ10の軸方向である。Z軸方向に垂直な平面をXY平面とする。
【0013】
第1ガイド板21、第2ガイド板22、第3ガイド板23、第1導入フィルム31、および第2導入フィルム32は、プローブ10が貫通するガイド孔をそれぞれ有する。第1ガイド板21のガイド孔を第1ガイド孔210、第2ガイド板22のガイド孔を第2ガイド孔220、第3ガイド板23のガイド孔を第3ガイド孔230という。また、第1導入フィルム31のガイド孔を第1導入ガイド孔310、第2導入フィルム32のガイド孔を第2導入ガイド孔320という。
【0014】
以下において、第1ガイド板21~第3ガイド板23などのプローブヘッド2が有するガイド板を、「ガイド板20」とも称する。ガイド板20にそれぞれ形成されたガイド孔を、「ガイド孔200」とも称する。また、第1導入フィルム31および第2導入フィルム32などのプローブヘッド2が有する導入フィルムを、「導入フィルム30」とも称する。導入フィルム30にそれぞれ形成されたガイド孔を、「導入ガイド孔300」とも称する。
【0015】
図1に示すプローブヘッド2は、プローブ10が直線状であるように、プローブ10を保持している。つまり、ガイド板20のガイド孔200および導入フィルム30の導入ガイド孔300のそれぞれの中心軸が一致するように、ガイド板20および導入フィルム30が配置されている。
【0016】
プローブヘッド2は、第1ガイド板21の外縁領域と第2ガイド板22の外縁領域との間に配置したスペーサ40を有する。スペーサ40により、第1ガイド板21と第2ガイド板22の間に中空領域25が構成される。中空領域25に、第1導入フィルム31と第2導入フィルム32が配置されている。後述するように、被測定体の測定時には、プローブヘッド2は、プローブ10を中空領域25で湾曲した状態で保持する。
【0017】
図1に示すスペーサ40は、複数の部分スペーサをZ軸方向に沿って重ねた構成である。具体的には、スペーサ40は、第1スペーサ41、第2スペーサ42、第3スペーサ43の3つの部分スペーサを、Z軸方向に沿って第1ガイド板21と第2ガイド板22の間に重ねて配置した構成である。そして、導入フィルム30の外縁部が部分スペーサの相互間に挟まれている。すなわち、第1スペーサ41と第2スペーサ42の間に、第1導入フィルム31の外縁部が挟まれている。第2スペーサ42と第3スペーサ43の間に、第2導入フィルム32の外縁部が挟まれている。
【0018】
なお、
図1では、構成をわかりやすくするために、プローブヘッド2が3本のプローブ10を保持する例を示した。プローブヘッド2が保持するプローブ10の本数は、被測定体の信号端子の個数などに応じて任意に設定される。
【0019】
導入フィルム30は、プローブヘッド2の導入フィルム30を除いた他の構成物およびプローブ10を溶解しない特定の溶剤によって溶解する材料からなる。つまり、第1導入フィルム31および第2導入フィルム32は、プローブヘッド2のガイド板20やスペーサ40、およびプローブ10を溶解しない特定の溶剤によって溶解する。
【0020】
例えば、導入フィルム30の材料は、ポリビニルアルコール、でんぷん、ゼラチンのいずれかであってもよい。そして、導入フィルム30を除いたプローブヘッド2の構成物、すなわちガイド板20およびスペーサ40の材料に、例えばセラミックを使用する。また、プローブ10の材料に、パラジウム(Pd)やニッケル(Ni)を使用する。この場合、ガイド板20やスペーサ40およびプローブ10を溶解せず、導入フィルム30を溶解する特定の溶剤として、水を使用してもよい。
【0021】
以下に、
図2~
図5を参照して、実施形態に係る電気的接続装置1の製造方法を説明する。なお、以下では、説明をわかりやすくするため、スペーサ40の図示を省略し、プローブ10は1本のみ示している。実際には、被測定体の測定に合わせて必要な本数のプローブ10を使用する。
【0022】
まず、ガイド孔200を有するガイド板20と導入ガイド孔300を有する導入フィルム30とを備えたプローブヘッド2を準備する。例えば、
図2に示す、第1ガイド板21~第3ガイド板23と、第1導入フィルム31および第2導入フィルム32を有するプローブヘッド2を準備する。
【0023】
そして、プローブヘッド2のガイド板20のガイド孔200および導入フィルム30の導入ガイド孔300にプローブ10を貫通させる。例えば、
図3に矢印で示すように、第1ガイド孔210、第1導入ガイド孔310、第2導入ガイド孔320、第2ガイド孔220、および第3ガイド孔230の順に、連続的にプローブを貫通させる。このとき、ガイド孔200と導入ガイド孔300の中心軸が一致する状態で、ガイド孔200および導入ガイド孔300にプローブ10を貫通させる。
【0024】
次いで、ガイド板20、スペーサ40およびプローブ10を溶解しない特定の溶剤によって、導入フィルム30を溶解する。例えば、
図4に示すように、プローブヘッド2の導入フィルム30以外の構成物およびプローブ10を溶解せず、導入フィルム30を溶解する溶液500を入れた容器50を準備する。そして、溶液500に、プローブ10を保持するプローブヘッド2を浸す。これにより、プローブヘッド2の導入フィルム30を溶解する。
【0025】
なお、導入フィルム30を溶解すると、部分スペーサの相互間に、導入フィルム30の膜厚分の隙間が生じる。この隙間は、第1ガイド板21と第2ガイド板22をZ軸方向に押し合わせることによって塞いでもよい。例えば、プローブヘッド2は、第1ガイド板21から第3ガイド板23までを、スペーサ40や導入フィルム30を貫通するネジにより接合する構成であってもよい。このネジを締めることにより、スペーサ40の部分スペーサの相互間に生じた隙間が塞がれる。
【0026】
導入フィルム30を溶解した後に、第1ガイド孔210に対する第2ガイド孔220の相対的な位置を、プローブ10の延伸方向に垂直な方向に沿って移動する。このとき、第2ガイド孔220と第3ガイド孔230の相対的な位置は変化させる必要はない。例えば、
図5に矢印Mで示すように、第1ガイド板21に対して、第2ガイド板22および第3ガイド板23を平行移動する。
【0027】
ガイド板20の一部を平行移動することにより、同一のプローブ10が貫通するガイド孔200の位置は、ガイド板20の主面の面法線方向から見て、ガイド板20の主面と平行な方向に移動する。つまり、第1ガイド孔210に対して、第2ガイド孔220および第3ガイド孔230が平行にずれている。このようにガイド孔200の位置をずらした配置を、以下において「オフセット配置」という。
【0028】
オフセット配置により、第1ガイド板21と第2ガイド板22の間の中空領域25において、プローブ10は弾性変形によって湾曲する。オフセット配置を実現するように、プローブヘッド2は、第1ガイド孔210に対する第2ガイド孔220の相対的な位置を、プローブ10の延伸方向に垂直な方向に沿って移動自在に構成されている。
【0029】
プローブヘッド2に保持されたプローブ10の先端部が被測定体と接触すると、
図6に矢印で示すように、プローブ10の軸方向に沿った応力Pがプローブ10に加わる。このとき、オフセット配置の構造のプローブヘッド2では、中空領域25においてプローブ10が座屈する。すなわち、第1ガイド板21と第2ガイド板22の間で、撓み変形によりプローブ10が更に大きく湾曲する。これにより、プローブ10と被測定体を安定した圧力で接触させることができる。
【0030】
なお、導入フィルム30をプローブヘッド2から除去しない比較例の場合、プローブ10が座屈する空間が狭い。このため、例えば
図7に示すように、応力Pが加えられたプローブ10が所定の形状に座屈しない。その結果、プローブ10と被測定体を所定の圧力で安定して接触させることができない。また、プローブヘッド2に導入フィルム30を残していると、導入フィルム30の間でプローブ10が大きく湾曲する。その結果、応力Pが除かれた後もプローブ10が変形したまま、元の直線状の形状に戻らない現象が生じる場合がある。プローブ10が変形していると、プローブ10と被測定体が所定の圧力で接触しないために正確な測定ができない。また、プローブ10が湾曲していると、プローブヘッド2でプローブ10を交換する際に、プローブヘッド2からプローブ10を引き抜くことが困難である。また、プローブヘッド2に配置されたプローブ10が湾曲していると、プローブヘッド2に新たに挿入するプローブ10と湾曲したプローブ10が接触し、プローブ10の交換が困難である。
【0031】
一方、プローブヘッドに導入フィルム30がない状態では、同一のプローブ10が貫通するガイド孔200の間隔が広い。このため、製造誤差によるプローブ10の曲がりやガイド孔200の位置精度により、すべてのガイド板20のガイド孔200にプローブ10を連続的に挿入することが困難な場合がある。例えば、
図8に示す比較例の電気的接続装置の製造方法のように、第1ガイド板21のガイド孔を貫通させたプローブ10の先端が、第2ガイド板22の表面に衝突する。このように、導入フィルム30のないプローブヘッドでは、プローブ10がすべてのガイド板を貫通できない問題が生じる。
【0032】
例えば、全長が3mm、外径が60μmのプローブ10の場合、ガイド孔200の内径は65μm程度である。また、ガイド孔200とガイド孔200の間隔は15μm程度である。このため、プローブ10がわずかでも湾曲していると、プローブヘッドにプローブ10を挿入する工程で、プローブ10の先端がガイド板20に衝突するおそれがある。一方、ガイド孔200の内径を広げることにより、プローブ10とガイド板20の衝突の可能性を低減することができる。しかし、ガイド孔200の内径を広げると、ガイド孔200の内部でプローブ10の位置ぶれが生じる。その結果、プローブ10と被測定体との位置合わせ精度が低下する。
【0033】
これに対し、電気的接続装置1では、導入フィルム30の導入ガイド孔300によってプローブ10の位置を矯正しながら、プローブ10をガイド板20のガイド孔200を通過させる。このため、電気的接続装置1によれば、プローブ10の外径とガイド孔200の内径の差を広げることなく、プローブ10をすべてのガイド板20のガイド孔200を貫通させることができる。
【0034】
上記のように、実施形態に係る電気的接続装置1では、ガイド板20の間隔が広い中空領域25に導入フィルム30が配置されている。このため、プローブ10が貫通するガイド孔のプローブ10の軸方向に沿った間隔を狭くできる。その結果、電気的接続装置1によれば、ガイド板20に形成したガイド孔200にプローブ10を容易に挿入できる。
【0035】
図1では、プローブヘッド2が第1ガイド板21~第3ガイド板23を有する場合を例示した。しかし、プローブヘッド2のガイド板の枚数は3枚に限定されない。例えば、プローブヘッド2の有するガイド板が、第1ガイド板21と第2ガイド板22の2枚であってもよい。或いは、プローブヘッド2が4枚以上のガイド板を有してもよい。
【0036】
なお、プローブヘッド2が第1導入フィルム31と第2導入フィルム32を有する場合を例示したが、プローブヘッド2の導入フィルム30の枚数は2枚に限定されない。例えば、プローブヘッド2の導入フィルム30の枚数が3枚以上であってもよい。また、第1ガイド板21と第2ガイド板22の間に相互に離間して複数の導入フィルム30を配置する例を示したが、プローブヘッド2の導入フィルム30の枚数が1枚であってもよい。
【0037】
例えば、中空領域25のZ軸方向の距離が長い場合には、導入フィルム30の枚数を多くする。これにより、中空領域25の全域にわたってプローブ10の位置を矯正することができる。一方、中空領域25のZ軸方向の距離が短い場合には、導入フィルム30の枚数を少なくしてもよい。導入フィルム30の枚数を少なくすることにより、電気的接続装置1の製造コストを抑制できる。全長が3mm、外径が60μmのプローブ10の場合、ガイド板20および導入フィルム30の間隔は、例えば1mm程度としてもよい。
【0038】
なお、上記では、導入フィルム30をプローブヘッド2からすべて除去する場合について説明したが、すべての導入フィルム30をプローブヘッド2から除去しない製造方法もあり得る。例えば、中空領域25においてプローブ10が所定の形状に座屈できる空間を確保できるように、複数の導入フィルム30のうちの一部の導入フィルム30をプローブヘッド2から除去するようにしてもよい。その場合、除去する導入フィルム30のみを溶剤に浸してもよい。或いは、除去する導入フィルム30のみに特定の溶剤によって溶解する材料を使用し、プローブヘッド2に残す導入フィルム30には特定の溶剤によって溶解しない材料を使用してもよい。
【0039】
図9に、上記に説明した製造方法により製造した電気的接続装置1を有するプローブカード3の構成例を示す。プローブカード3は、被測定体100の電気的特性の測定に使用される。
図9に示したプローブカード3は垂直動作式プローブカードであり、例えば被測定体100を搭載したステージ70が上昇して、プローブ10の先端部が被測定体100と接触する。
図9は、プローブ10が被測定体100に接触していない状態を示している。
【0040】
プローブカード3は、プローブ10を保持するプローブヘッド2と配線基板60を備える。プローブ10は、第1ガイド板21と第2ガイド板22の間にスペーサ40によって形成される中空領域25において湾曲した状態である。プローブヘッド2の第1ガイド板21の上面に露出するプローブ10の基端部が、プローブヘッド2に対向する配線基板60の下面に配置された電極端子(ランド61)と接続する。ランド61は、ICテスタなどの測定装置(図示略)と電気的に接続する。
【0041】
被測定体100の測定時に、プローブヘッド2の第3ガイド板23の下面に露出したプローブ10の先端部が、被測定体100の測定用パッド(図示略)と接触する。そして、プローブ10および配線基板60を介して、被測定体100と測定装置との間で電気信号が伝搬する。例えば、プローブ10を介して、測定装置によって被測定体100に所定の電圧や電流が印加される。そして、被測定体100から出力される電気信号がプローブ10を介して測定装置に送られ、被測定体100の特性が測定される。被測定体100の電気的特性を測定した後、被測定体100を搭載したステージ70が下降することにより、プローブ10と被測定体100は非接触状態になる。
【0042】
(その他の実施形態)
上記のように本発明は実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0043】
例えば、上記では導入フィルム30の外縁部を部分スペーサで挟む例を示したが、他の方法によって導入フィルム30を中空領域25に配置してもよい。例えば、スペーサ40の中空領域25に面する壁面に導入フィルム30の端部を接合してもよい。
【0044】
また、上記では、プローブ10の断面形状や、ガイド孔200および導入ガイド孔300の形状が丸形状である場合について説明したが、これらの形状は丸形状に限られない。例えば、プローブ10の断面形状やガイド孔200および導入ガイド孔300の形状が、四角形であってもよい。
【0045】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施形態などを含む。
【符号の説明】
【0046】
1…電気的接続装置
2…プローブヘッド
3…プローブカード
10…プローブ
21…第1ガイド板
22…第2ガイド板
23…第3ガイド板
25…中空領域
31…第1導入フィルム
32…第2導入フィルム
40…スペーサ
100…被測定体