(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022108886
(43)【公開日】2022-07-27
(54)【発明の名称】ベルトクリーナ
(51)【国際特許分類】
B65G 45/16 20060101AFI20220720BHJP
【FI】
B65G45/16 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021004092
(22)【出願日】2021-01-14
(71)【出願人】
【識別番号】592077512
【氏名又は名称】株式会社西日本メタル
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山下 智己
(72)【発明者】
【氏名】植木 剛
(72)【発明者】
【氏名】樋口 大輔
(72)【発明者】
【氏名】大濱 一郎
(57)【要約】
【課題】ベルトへの押圧力を容易に調整することが可能、かつ、ベルトの状態に応じて適切な押圧力を加えることのできるベルトクリーナを提供する。
【解決手段】ベルトコンベア100のベルト102幅方向に延びる軸部材2と、互いに独立して軸部材2へ取り付けられた複数のクリーナ部材3と、を備え、各クリーナ部材3は、軸部材2の外周に取り付けられ、軸部材2を中心に回動可能な回動部4と、回動部4からベルト102長手方向の一方側へ延びる歯部5と、回動部4からベルト102長手方向の他方側へ延びるアーム部6と、を有し、アーム部6は、長手方向の任意の位置に設置可能な錘8を備える
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベルトコンベアのベルト幅方向に延びる軸部材と、互いに独立して該軸部材へ取り付けられた複数のクリーナ部材と、を備え、
各前記クリーナ部材は、
前記軸部材の外周に取り付けられ、該軸部材を中心に回動可能な回動部と、
前記回動部からベルト長手方向の一方側へ延びる歯部と、
前記回動部からベルト長手方向の他方側へ延びるアーム部と、を有し、
前記アーム部は、長手方向の任意の位置に設置可能な錘を備えることを特徴とするベルトクリーナ。
【請求項2】
前記回動部は、前記歯部を備える歯部回動部と、前記アーム部を備えるアーム部回動部と、を有し、該歯部回動部および該アーム部回動部は、前記軸部材を中心として、該歯部と該アーム部とのなす角を任意に設定可能に連結されていることを特徴とする請求項1に記載のベルトクリーナ。
【請求項3】
前記アーム部の地面に対する傾斜角度は一定に保たれることを特徴とする請求項2に記載のベルトクリーナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルトコンベアのベルトクリーナに関する。
【背景技術】
【0002】
製鉄所、火力発電所、ごみ処理場などで使用されるベルトコンベアは、ベルトの外表面に搬送物由来の付着物が付着しやすい。ベルトに付着物が堆積すると、搬送効率の低下や、ベルトコンベアの故障を招くおそれがあるため、ベルトへの付着物の付着を防止するためにベルトクリーナが用いられている。
【0003】
従来のベルトクリーナには、例えば特許文献1に開示されるスクレーバー式ベルトクリーナのように、ベルトの幅方向に亘って延びるプレートに、ベルトの外表面に付着した付着物を掻き落とすための複数のクリーナチップを備えるものや、特許文献2に開示されるクリーナ装置のように、ベルト幅に対応した長さの溝に付着物を掻き落とすためのトタン板を備えるものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平3-162309号公報
【特許文献2】特開平10-109731号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
土砂やスラグ等の搬送物を搬送するベルトコンベアにおいては、搬送物が載せられるベルトの略中央部分に付着物が付着しやすく、ベルトの外表面またはクリーナの中央部分が両端部よりも摩耗しやすいという問題がある。
【0006】
特許文献1に開示されるベルトクリーナの構成では、クリーナが摩耗したベルトの幅方向に亘ってその外表面に追従することができず、ベルトの外表面とクリーナとの間に隙間が生じて付着物の取り残しが多くなることが懸念される。また、ベルトとクリーナとの接触が部分的であれば、偏り摩耗が発生し、クリーナおよびベルトの寿命を低下させるおそれがある。
【0007】
特許文献2に開示されるクリーナ装置も同様に、一枚のトタン板でベルトの付着物を掻き取るため、ベルトの摩耗状態に応じてトタン板を調整することはできない。このクリーナ装置では、ウエイトによってトタン板のベルトへの押圧力を設定可能であるが、このような構成では押圧力の調整が困難となる場合がある。例えば、ベルトの傾斜角度が変わった場合には、ベルトに対するクリーナの押圧力が大きく変化するため、クリーナの押圧力を調整しなければならないが、ウエイトのみによる調整では押圧力の調整に限界があり、様々な傾斜角度のベルトコンベアへ適用させるのは困難である。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ベルトへの押圧力を容易に調整することが可能、かつ、ベルトの状態に応じて適切な押圧力を加えることのできるベルトクリーナを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するために、本発明では、軸部材へ互いに独立する複数のクリーナ部材を備え、そのクリーナ部材それぞれが錘を有するものとした。
【0010】
具体的には、第1の発明では、ベルトコンベアのベルト幅方向に延びる軸部材と、互いに独立して該軸部材へ取り付けられた複数のクリーナ部材と、を備え、各前記クリーナ部材は、前記軸部材の外周に取り付けられ、該軸部材を中心に回動可能な回動部と、前記回動部からベルト長手方向の一方側へ延びる歯部と、前記回動部からベルト長手方向の他方側へ延びるアーム部と、を有し、前記アーム部は、長手方向の任意の位置に設置可能な錘を備えることを特徴とする。
【0011】
第1の発明によると、ベルトの付着物を掻き取るための歯部が、ベルト幅方向に複数互いに独立した状態で取り付けられており、各歯部のベルトへの押圧力は、それぞれの錘の位置調整によって個別に調整することができるため、ベルトの反りや撓み、摩耗などの状態に応じて、各歯部の押圧力を適切に調節してベルトへ追従させ、偏摩耗等の短寿命化を防ぐことができる。また、軸部材を支点とする梃子の原理によって、アーム部における錘(力点)の位置を移動させることで、歯部(作用点)の押圧力を容易に調整することが可能である。
【0012】
第2の発明では、第1の発明において、前記回動部は、前記歯部を備える歯部回動部と、前記アーム部を備えるアーム部回動部と、を有し、該歯部回動部および該アーム部回動部は、前記軸部材を中心として、該歯部と該アーム部とのなす角を任意に設定可能に連結されていることを特徴とする。
【0013】
第2の発明によると、歯部とアーム部とのなす角を任意に設定して連結させることで、ベルトの傾斜角度に応じてクリーナ部材(特に歯部)の傾斜角度を変化させることが可能となる。錘による調整に加え、この傾斜角度の調整によって、歯部のベルトへの押圧力の調整代を大きくすることができるため、様々な傾斜角度のベルトへ容易に適用させることが可能となり、汎用性が高まる。
【0014】
第3の発明では、第2の発明において、アーム部の地面に対する傾斜角度は一定に保たれることを特徴とする。
【0015】
ベルトの傾斜角度に対応してクリーナ部材(特に歯部)の傾斜角度を変化させる際に、アーム部を含めたクリーナ部材全体の傾斜角度を変化させると、錘の荷重による押圧力が変化してしまうため、押圧力を調整する作業に手間がかかるが、第3の発明によれば、歯部だけを角度調整して押圧力を調整することもできるため、作業性に優れる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明によると、ベルトへの押圧力を容易に調整することが可能、かつ、ベルトの状態に応じて適切な押圧力を加えることのできるベルトクリーナを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本実施形態に係るベルトクリーナの使用状態を示す模式図である。
【
図2】本実施形態に係るベルトクリーナの概略斜視図である。
【
図3】本実施形態に係るベルトクリーナの概略側面図である。
【
図5】本実施形態に係るクリーナ部材の分解図である。
【
図6】本実施形態に係るベルトクリーナの平面図である。
【
図7】ベルトクリーナの角度調整を説明するための概略側面図である。
【
図8】ベルトクリーナの角度調整を説明するための概略側面図である。
【
図9】ベルトクリーナの角度調整を説明するための概略側面図である。
【
図10】ベルトクリーナの角度調整を説明するための概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の好ましい実施形態の説明は、例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0019】
ベルトクリーナ1は、例えば土砂や石灰、スラグ等の搬送物を搬送するベルトコンベア100に取り付けられるものである。
図1に示すように、ベルトコンベア100はプーリ101と、プーリ101の外周に巻回されたベルト102を備える。プーリ101の外周を周回運動するベルト102は、上方に位置し搬送物を載せて搬送する方向へ移動する直線状の往路部分102aと、プーリ101に沿って湾曲する湾曲部分102bと、下方に位置し再び搬送物を載せるために戻る方向へ移動する直線状の復路部分102cとを有する。
【0020】
本実施形態のベルトクリーナ1は、ベルト102の湾曲部分102bまたは復路部分102cにおいて設置され、ベルト102の外表面の付着物を掻き取り除去することができる。
【0021】
図2に示すように、本実施形態のベルトクリーナ1は、ベルトコンベア100のベルト102の幅方向に延びる軸部材2と、互いに独立して軸部材2へ取り付けられた複数のクリーナ部材3と、を備える。軸部材2は、両端部がベルトコンベア100のフレーム(図示省略)にそれぞれ固定されている。
【0022】
クリーナ部材3は、ベルト102の幅方向に複数配置され、各クリーナ部材3は、軸部材2を中心に回動可能な回動部4を有する。回動部4は、軸部材2よりも大きな内径を有する円筒形状であり、軸部材2の外周に取り付けられている。
【0023】
回動部4からベルト102長手方向の一方側へ、歯部5が延びている。歯部5は、ベルト102の外表面の付着物を掻き取ることができれば、数、形状、材質等は限定されない。
【0024】
回動部4からベルト102長手方向の他方側へ、アーム部6が延びている。アーム部6は、例えば円筒状のパイプ材である。アーム部6は、長手方向に間隔をあけて複数の係止部7を有する。
【0025】
係止部7はアーム部6から上方へ向かって突出しており、いずれかの係止部7に錘8を係止させることにより、アーム部6の長手方向の任意の位置に錘8を設置することが可能である。係止部7の数や形状はこれに限定されることはなく、錘8を係止可能であればどのようなものであってもよい。また、係止部7に係止される錘8の形状も限定されるものではない。
【0026】
回動部4を軸部材2周りに回動させると、歯部5およびアーム部6も回動部4に連動して回動させることが可能であり、クリーナ部材3において、回動部4を支点、アーム部6の錘8を力点、歯部5を作用点として、梃子の原理を利用することができる。
【0027】
本実施形態のベルトクリーナ1によれば、錘8の係止位置とクリーナ部材3の傾斜角度をクリーナ部材3毎に調整することが可能となるため、ベルト102に対する歯部5の押圧力を、ベルト102の反りや撓み、摩耗などの状態に応じて適切に調節して各歯部5をベルト102へ追従させ、偏摩耗等の短寿命化を防ぎつつ、適切に付着物を除去することができる。
【0028】
次に、
図3から
図5に基づいて、回動部4の構成を詳細に説明する。本実施形態のベルトクリーナ1において、回動部4は、歯部5を備える歯部回動部41と、アーム部6を備えるアーム部回動部42と、角度調整部材9を有する。
【0029】
歯部回動部41は、歯部5の基端部におけるベルト102の幅方向両端にそれぞれ円筒状に形成されている。2つの歯部回動部41のうち一方には、側面視扇形の板状の歯部側プレート91が設けてある。歯部側プレート91は角度調整部材9の部品である。歯部側プレート91は、歯部回動部41の回動とともに軸部材2を中心に回動する。歯部側プレート91には、歯部側プレート91を貫通するスロット9aが形成されている。このスロット9aは、回動部4と同心円上に位置する円弧状に形成されている。
【0030】
歯部5は先端部に掻取り部5aを備え、掻取り部5aは、ベルト102に対向する面が側面視して円弧状に凹むように湾曲し、ベルト102へ当接する先端部へ向かうにつれて先細る形状である。なお、掻取り部5aを着脱可能なものとすれば、搬送物の性質に合わせて形状の異なる掻取り部への交換や、摩耗した際に新しい掻取り部への交換が可能となる。
【0031】
アーム部回動部42は円筒状であり、アーム部回動部42からアーム部6が延びている。アーム部回動部42は、2つの歯部回動部41,41の間に配置されている。アーム部回動部42には、歯部側プレート91に当接するアーム部側プレート92が設けてある。アーム部側プレート92もまた角度調整部材9の部品であり、アーム部側プレート92と歯部側プレート91は略同じ形状に形成されている。アーム部側プレート92は、アーム部回動部42の回動とともに軸部材2を中心に回動する。アーム部側プレート92には、歯部側プレート91の反対側面に、ナット10bが溶接固定されている。ナット10bは、孔がスロット9aの位置に対応するように取り付けられている。
【0032】
歯部回動部41およびアーム部回動部42の円筒内部へ軸部材2が挿通されると、歯部側プレート91とアーム部側プレート92が重ね合わせられ、角度調整部材9を形成する。スロット9aへ歯部側プレート91側から、ボルト10aを挿通させ、ナット10bへ螺合させることで、歯部回動部41およびアーム部回動部42は、軸部材2を中心として、歯部5とアーム部6とのなす角を任意に設定可能に連結される。詳細には、軸部材2を中心として、歯部回動部41およびアーム部回動部42を回動させることで、歯部側プレート91とアーム部側プレート92を周方向にずらして重ね合わせ、ボルト10aの位置をスロット9aに沿って周方向に移動させて固定することで、歯部5とアーム部6とのなす角を調整して連結することができる。
【0033】
図6に示すように、角度調整部材9は、複数のクリーナ部材3全てに備える。
【0034】
(ベルトクリーナ調整方法)
次に、ベルトクリーナ1の調整方法について
図7から
図10に基づいて説明する。
図7に示すように、ベルトクリーナ1は、ベルト102が地面に対して例えばθ
1=15°傾斜した状態102Aと、地面に対して略平行な状態102Bのいずれの状態においても、アーム部6の地面に対する傾斜角度θ
2は一定に保たれる。アーム部6の地面に対する傾斜角度θ
2を一定に保った状態、かつ、錘8の位置を保った状態で、角度調整部材9を用い、歯部5とアーム部6とのなす角を調整することでベルトの傾斜状態102A,102Bに応じて掻取り部5aのベルト102A,102Bへの押圧力を調整できるので、調整が容易である。
【0035】
調整手順としては、最初に、クリーナ部材3を仮設置した状態で、ベルトコンベア100を稼働させ、ベルト102の清掃状態を見ながら、各クリーナ部材3について、錘8の位置を設定する。より大きな荷重をかけることのできる回動部4に遠い係止部7から、回動部4に近い係止部7へ錘8を順に係止させ、歯部5がベルト102上で跳ねない程度の押圧力がかけられる位置に錘8を設定する。
【0036】
図8に示すように、ベルト102の傾斜角度が変わった場合は、歯部5とアーム部6とのなす角を調整する。ベルト102が地面に対してθ
1=15°傾斜した状態102Aから地面に対して略平行な状態102Bへ傾斜角度が変わっても、錘8の位置や、アーム部6の地面に対する傾斜角度θ
2の設定を変更することなく、クリーナ部材3が適切な押圧力でベルト102A,102Bを押圧できるように設定することができる。
【0037】
まず、角度調整部材9を有するクリーナ部材3のうち1つについて、ベルト102へ掻取り部5aを押し付けた状態で、アーム部6の地面に対する傾斜角度を測定する。そして、さらに他のクリーナ部材3を設置する場合は、その角度に合わせて、アーム部6の傾斜角度を設定する。
【0038】
図9および
図10は、同じ重量の錘8が同じ位置の係止部7に係止された状態である。
図9と
図10とでは、地面に対するベルト102の傾きが異なり、歯部5とアーム部6とのなす角は同じである。ベルト102A,102Bに対する歯部5の押圧力F1,F2は、F=W・L/R(式1)により求めることができる。ここで、Wは錘8の重量、Rは回動部4の中心から歯部5の先端部までの距離、Lは錘8の重心から垂下させた直線と回動部4の中心から垂下させた直線との距離であって、
図9および
図10においてそれぞれL1,L2で示された距離である。
図9および
図10とで比較すると、その距離はL1<L2であり、押圧力はF1<F2となる。つまり、歯部5とアーム部6とのなす角を調整しない場合は、ベルト102の傾斜角度によって、歯部5のベルト102への押圧力が変化してしまうため、錘8の位置を再設定しなければならい。
【0039】
本実施形態のベルトクリーナ1によれば、第1実施形態と同様の作用効果が得られるだけでなく、さらに、歯部5とアーム部6とのなす角を任意に設定して連結させることで、ベルト102の傾斜角度に応じて歯部5の傾斜角度を変化させることが可能となる。錘8による調整に加え、この傾斜角度の調整によって、歯部5のベルト102への押圧力の調整代を大きくすることができるため、様々な傾斜角度のベルトへ容易に適用させることが可能となり、汎用性が高まる。また、アーム部6の傾斜角度を保ち、歯部5だけを角度調整して押圧力を調整できるため、錘8の位置を動かすことなく押圧力を変化させることも可能となり、作業性に優れる。
【符号の説明】
【0040】
1 ベルトクリーナ
2 軸部材
3 クリーナ部材
4 回動部
5 歯部
6 アーム部
7 係止部
8 錘
9 角度調整部材
41 歯部回動部
42 アーム部回動部
100 ベルトコンベア
101 プーリ
102 ベルト