(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022108921
(43)【公開日】2022-07-27
(54)【発明の名称】工作機械、工作機械の制御方法、および工作機械の制御プログラム
(51)【国際特許分類】
B23Q 17/00 20060101AFI20220720BHJP
B23Q 11/00 20060101ALI20220720BHJP
B23Q 3/157 20060101ALI20220720BHJP
【FI】
B23Q17/00 A
B23Q11/00 S
B23Q3/157 F
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021004152
(22)【出願日】2021-01-14
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000146847
【氏名又は名称】DMG森精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 幸佑
(72)【発明者】
【氏名】北出 雄平
【テーマコード(参考)】
3C002
3C029
【Fターム(参考)】
3C002AA04
3C002BB01
3C002GG02
3C002HH06
3C002KK01
3C002LL01
3C029EE01
(57)【要約】
【課題】工作機械に備えられる搬送機構においてチェーンが緩んでいることを検知するための技術を提供する。
【解決手段】工作機械は、チェーン駆動の搬送機構と、搬送機構を駆動するためのモータと、モータにかかる負荷を検知するための検知部と、工作機械を制御するための制御部とを備える。制御部は、モータの回転を反転する処理と、反転する処理を開始した第1タイミングを記憶する処理と、第1タイミングの後において負荷が所定値を超えた第2タイミングを特定する処理と、第1タイミングから第2タイミングまでの時間が所定時間を超えている場合に、予め定められた異常対処処理を実施する処理とを実行する。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械であって、
チェーン駆動の搬送機構と、
前記搬送機構を駆動するためのモータと、
前記モータにかかる負荷を検知するための検知部と、
前記工作機械を制御するための制御部とを備え、
前記制御部は、
前記モータの回転を反転する処理と、
前記反転する処理を開始した第1タイミングを記憶する処理と、
前記第1タイミングの後において前記負荷が所定値を超えた第2タイミングを特定する処理と、
前記第1タイミングから前記第2タイミングまでの時間が所定時間を超えている場合に、予め定められた異常対処処理を実施する処理とを実行する、工作機械。
【請求項2】
前記搬送機構は、前記工作機械がワークを加工することによって発生した切り屑を搬送するためのコンベアを含む、請求項1に記載の工作機械。
【請求項3】
前記予め定められた異常対処処理は、前記コンベアのチェーンが緩んでいることを示す警告を出力する処理を含む、請求項2に記載の工作機械。
【請求項4】
前記搬送機構は、複数の工具を保持することが可能なマガジンを含む、請求項1に記載の工作機械。
【請求項5】
前記予め定められた異常対処処理は、
前記マガジンのチェーンが緩んでいることを示す警告を出力する処理と、
前記マガジンの駆動を禁止する処理との少なくとも一方を含む、請求項4に記載の工作機械。
【請求項6】
前記制御部は、予め定められたタイミングにおいて、前記反転する処理と、前記記憶する処理と、前記特定する処理と、前記実施する処理とを実行し、
前記予め定められたタイミングは、前記工作機械においてワークの加工が行われていない一のタイミングと、前記搬送機構の起動後の一のタイミングとの少なくとも一方を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の工作機械。
【請求項7】
工作機械の制御方法であって、
前記工作機械は、
チェーン駆動の搬送機構と、
前記搬送機構を駆動するためのモータと、
前記モータにかかる負荷を検知するための検知部とを備え、
前記制御方法は、
前記モータの回転を反転するステップと、
前記反転するステップを開始した第1タイミングを記憶するステップと、
前記第1タイミングの後において前記負荷が所定値を超えた第2タイミングを特定するステップと、
前記第1タイミングから前記第2タイミングまでの時間が所定時間を超えている場合に、予め定められた異常対処処理を実行するステップとを備える、制御方法。
【請求項8】
工作機械の制御プログラムであって、
前記工作機械は、
チェーン駆動の搬送機構と、
前記搬送機構を駆動するためのモータと、
前記モータにかかる負荷を検知するための検知部とを備え、
前記制御プログラムは、前記工作機械に、
前記モータの回転を反転するステップと、
前記反転するステップを開始した第1タイミングを記憶するステップと、
前記第1タイミングの後において前記負荷が所定値を超えた第2タイミングを特定するステップと、
前記第1タイミングから前記第2タイミングまでの時間が所定時間を超えている場合に、予め定められた異常対処処理を実行するステップとを実行させる、制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、工作機械に備えられる搬送機構の異常を検知するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械は、チェーン駆動の様々な搬送機構を有している。チェーン駆動の搬送機構の一例として、チップコンベアがある。チップコンベアは、加工中に発生したワークの切り屑を工作機械外に排出するための搬送機構である。特開2012-56028号公報(特許文献1)は、チップコンベアを備えた工作機械を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
搬送機構のチェーンは、使用するにつれて伸びていく。このようなチェーンの緩みを異常として検知することが望まれている。特許文献1に示される工作機械は、搬送機構のチェーンの緩みを検知するものではない。
【0005】
本開示は上述のような問題点を解決するためになされたものであって、ある局面における目的は、工作機械に備えられる搬送機構においてチェーンが緩んでいることを検知するための技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一例では、工作機械は、チェーン駆動の搬送機構と、上記搬送機構を駆動するためのモータと、上記モータにかかる負荷を検知するための検知部と、上記工作機械を制御するための制御部とを備える。上記制御部は、上記モータの回転を反転する処理と、上記反転する処理を開始した第1タイミングを記憶する処理と、上記第1タイミングの後において上記負荷が所定値を超えた第2タイミングを特定する処理と、上記第1タイミングから上記第2タイミングまでの時間が所定時間を超えている場合に、予め定められた異常対処処理を実施する処理とを実行する。
【0007】
本開示の一例では、上記搬送機構は、上記工作機械がワークを加工することによって発生した切り屑を搬送するためのコンベアを含む。
【0008】
本開示の一例では、上記予め定められた異常対処処理は、上記コンベアのチェーンが緩んでいることを示す警告を出力する処理を含む。
【0009】
本開示の一例では、上記搬送機構は、複数の工具を保持することが可能なマガジンを含む。
【0010】
本開示の一例では、上記予め定められた異常対処処理は、上記マガジンのチェーンが緩んでいることを示す警告を出力する処理と、上記マガジンの駆動を禁止する処理との少なくとも一方を含む。
【0011】
本開示の一例では、上記制御部は、予め定められたタイミングにおいて、上記反転する処理と、上記記憶する処理と、上記特定する処理と、上記実施する処理とを実行する。上記予め定められたタイミングは、上記工作機械においてワークの加工が行われていない一のタイミングと、上記搬送機構の起動後の一のタイミングとの少なくとも一方を含む。
【0012】
本開示の他の例では、工作機械の制御方法が提供される。上記工作機械は、チェーン駆動の搬送機構と、上記搬送機構を駆動するためのモータと、上記モータにかかる負荷を検知するための検知部とを備える。上記制御方法は、上記モータの回転を反転するステップと、上記反転するステップを開始した第1タイミングを記憶するステップと、上記第1タイミングの後において上記負荷が所定値を超えた第2タイミングを特定するステップと、上記第1タイミングから上記第2タイミングまでの時間が所定時間を超えている場合に、予め定められた異常対処処理を実行するステップとを備える。
【0013】
本開示の他の例では、工作機械の制御プログラムが提供される。上記工作機械は、チェーン駆動の搬送機構と、上記搬送機構を駆動するためのモータと、上記モータにかかる負荷を検知するための検知部とを備える。上記制御プログラムは、上記工作機械に、上記モータの回転を反転するステップと、上記反転するステップを開始した第1タイミングを記憶するステップと、上記第1タイミングの後において上記負荷が所定値を超えた第2タイミングを特定するステップと、上記第1タイミングから上記第2タイミングまでの時間が所定時間を超えている場合に、予め定められた異常対処処理を実行するステップとを実行させる。
【0014】
本発明の上記および他の目的、特徴、局面および利点は、添付の図面と関連して理解される本発明に関する次の詳細な説明から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】工作機械における駆動機構の構成例を示す図である。
【
図7】チェーン緩みが発生していない場合におけるモータ負荷の推移を示す図である。
【
図8】チェーン緩みが発生している場合におけるモータ負荷の推移を示す図である。
【
図10】制御部のハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図11】工作機械が実行する処理の一部を表わすフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ、本発明に従う各実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品および構成要素には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、これらについての詳細な説明は繰り返さない。なお、以下で説明される各実施の形態および各変形例は、適宜選択的に組み合わされてもよい。
【0017】
<A.工作機械100の構成>
まず、
図1を参照して、工作機械100の構成について説明する。
図1は、工作機械100の外観を示す図である。
【0018】
本明細書でいう「工作機械」とは、ワークを加工する機能を備えた種々の装置を包含する概念である。本明細書では、工作機械100の一例として、横形のマシニングセンタを例に挙げて説明を行うが、工作機械100は、これに限定されない。たとえば、工作機械100は、縦形のマシニングセンタであってもよい。あるいは、工作機械100は、旋盤であってもよいし、付加加工機であってもよいし、その他の切削機械や研削機械であってもよい。あるいは、工作機械100は、ワークの付加加工(AM(Additive manufacturing)加工)を行う工作機械であってもよい。さらに、工作機械100は、これらを複合した複合機であってもよい。
【0019】
図1に示されるように、工作機械100は、主軸頭130と、操作盤140と、チップコンベア150と、ATC(Automatic Tool Changer)160と、マガジン170とを含む。
【0020】
工作機械100は、加工エリアAR1と、工具エリアAR2とを有する。加工エリアAR1および工具エリアAR2のそれぞれは、カバーによって区画化されている。加工エリアAR1には、主軸頭130が設けられている。
【0021】
主軸頭130は、主軸筒と、主軸とを含む。主軸は、主軸筒により回転可能に支持されている。主軸にはマガジン170から選択された一の工具が装着される。当該工具は、主軸と連動して回転する。
【0022】
操作盤140は、加工に関する各種情報を表示するためのディスプレイ142と、工作機械100に対する各種操作を受け付ける操作キー143とを含む。
【0023】
チップコンベア150は、加工エリアAR1でのワークの加工に伴って発生した切り屑を加工エリアAR1の外へ排出するための機構である。チップコンベア150の詳細については後述する。
【0024】
工具エリアAR2には、ATC160と、マガジン170とが設けられている。マガジン170は、ワークの加工に用いられる種々の工具を収納する。マガジン170に収納されている工具は、加工エリアAR1と工具エリアAR2との間の仕切に設けられているドアDを介して主軸頭130に取り付けられる。ドアDは、スライド式のドアであり、モータなどの駆動源により開閉される。
【0025】
<B.工作機械100の駆動機構>
次に、
図2を参照して、工作機械100における各種の駆動機構について説明する。
図2は、工作機械100における駆動機構の構成例を示す図である。
【0026】
図2に示されるように、工作機械100は、制御部50と、搬送機構80と、モータドライバ111A,111Mとを含む。
【0027】
本明細書でいう「制御部50」とは、工作機械100を制御する装置を意味する。制御部50の装置構成は、任意である。制御部50は、単体の制御ユニットで構成されてもよいし、複数の制御ユニットで構成されてもよい。
図2の例では、制御部50は、PLC(Programmable Logic Controller)としてのCPUユニット20と、CNC(Computer Numerical Control)ユニット30とで構成されている。CPUユニット20およびCNCユニット30は、通信経路B(たとえば、フィールドバスまたはLANケーブルなど)を介して互いに通信を行う。
【0028】
また、本明細書でいう「搬送機構80」とは、加工に係る何らかの物体を搬送するためのチェーン駆動の搬送装置を意味する。典型的には、搬送機構80は、チェーンと、当該チェーンを駆動するためのモータとを少なくとも含む。
図2の例では、搬送機構80の一例として、工作機械100がワークを加工することによって発生した切り屑を搬送するためのチップコンベア150と、複数の工具を保持することが可能なマガジン170とが示されている。
【0029】
CPUユニット20は、予め設計されているPLCプログラムに従って、工作機械100内の各種ユニットを制御する。当該PLCプログラムは、たとえば、ラダープログラムで記述されている。
【0030】
CPUユニット20は、PLCプログラムに従って、モータドライバ111Aを制御する。モータドライバ111Aは、モータ112Aの目標回転速度の入力をCPUユニット20から受け、チップコンベア150の駆動用のモータ112Aを制御する。これにより、チップコンベア150の駆動のオン/オフ、およびチップコンベア150による切り屑の搬送速度などが制御される。なお、モータ112Aは、交流モータであってもよいし、ステッピングモータであってもよいし、サーボモータであってもよいし、その他の種類のモータであってもよい。
【0031】
CPUユニット20は、PLCプログラムに従って、モータドライバ111Mを制御する。モータドライバ111Mは、モータ112Mの目標回転速度の入力をCPUユニット20から受け、マガジン170の駆動用のモータ112Mを制御する。これにより、マガジン170の駆動のオン/オフ、およびマガジン170による工具の搬送速度などが制御される。なお、モータ112Mは、交流モータであってもよいし、ステッピングモータであってもよいし、サーボモータであってもよいし、その他の種類のモータであってもよい。
【0032】
CNCユニット30は、CPUユニット20からの加工開始指令を受けたことに基づいて、予め設計されている加工プログラムの実行を開始する。当該加工プログラムは、たとえば、NC(Numerical Control)プログラムで記述されている。CNCユニット30は、当該加工プログラムに従って上述の主軸頭130を制御し、ワークを加工する。
【0033】
以下では、モータドライバ111Aとモータドライバ111Mとを特に区別しない場合には、単に「モータドライバ111」と称する。同様に、モータ112Aとモータ112Mとを特に区別しない場合には、単に「モータ112」と称する。
【0034】
<C.チップコンベア150の構成>
次に、
図3および
図4を参照して、搬送機構80の一例であるチップコンベア150について説明する。
図3は、チップコンベア150の外観を示す図である。
図4は、チップコンベア150の断面を示す図である。
【0035】
チップコンベア150は、加工エリアAR1から排出されるワークの切り屑およびクーラントを受ける。チップコンベア150は、クーラント槽11を有する。クーラント槽11は、クーラントを貯留可能なように構成されている。チップコンベア150は、加工エリアAR1から排出される切り屑をチップバケット(図示しない)に向けて搬送するとともに、クーラントを濾過することにより清浄なクーラントをクーラント槽11に排出する。
【0036】
チップコンベア150は、カバー体21をさらに有する。カバー体21は、チップコンベア150の外観を成す。カバー体21は、内部に空間を形成する筐体形状を有する。
【0037】
カバー体21は、その構成部位として、水平部22と、立ち上がり部26と、切り屑受け入れ部23と、切り屑排出部27とを有する。
【0038】
カバー体21は、全体として、水平部22および立ち上がり部26の間で屈曲した形状を有する。水平部22は、クーラント槽11内に載置されている。水平部22は、水平方向に延在する板形状の外観を有する。水平部22は、矩形形状の平面視を有する。立ち上がり部26は、水平部22のその長手方向における一方端から立ち上がり、斜め上方向に延伸する。
【0039】
切り屑受け入れ部23は、水平部22に設けられている。切り屑受け入れ部23は、水平部22の頂面上に設けられた筐体から構成されている。切り屑受け入れ部23には、接続口24が設けられている。接続口24は、切り屑受け入れ部23を貫通する貫通孔からなる。切り屑受け入れ部23には、接続口24を通じて、加工エリアAR1の設備である切り屑搬送装置12が接続されている。切り屑搬送装置12は、たとえば、一方向に延びる樋体と、その樋体に設置されるスパイラルコンベアとを含んで構成されている。
【0040】
切り屑排出部27は、水平部22から斜め上方向に延伸する先の立ち上がり部26の端部に設けられている。切り屑排出部27は、鉛直下方向に向けて開口するカバー体21の開口部からなる。切り屑排出部27の下方には、切り屑を回収するためのチップバケット(不図示)が設置される。加工エリアAR1から排出されたワークの切り屑は、切り屑受け入れ部23よりカバー体21内に受け入れられる。切り屑は、続いて説明する切り屑搬送機構によりカバー体21の内部で搬送され、切り屑排出部27より排出されてチップバケットに回収される。
【0041】
チップコンベア150は、切り屑搬送部35をさらに有する。切り屑搬送部35は、カバー体21に収容されている。切り屑搬送部35は、カバー体21内で切り屑を搬送するための装置である。
【0042】
より具体的に説明すると、切り屑搬送部35は、一対の無端チェーン34と、駆動スプロケット37と、従動スプロケット38とを有する。
【0043】
駆動スプロケット37は、水平部22から斜め上方向に延伸する先の立ち上がり部26の端部に設けられている。駆動スプロケット37は、切り屑排出部27の上方に配置されている。駆動スプロケット37は、
図4を示す紙面に直交する方向(以下、この方向を「チップコンベア150の幅方向」ともいう)に延びる軸を中心に回転可能に支持されている。駆動スプロケット37には、上述のモータ112A(
図2参照)の出力軸が連結されている。駆動スプロケット37は、モータ112Aから動力が伝達されることにより回転する。
【0044】
従動スプロケット38は、水平部22および立ち上がり部26の間の屈曲部に設けられている。従動スプロケット38は、チップコンベア150の幅方向に延びる軸(中心軸AX)を中心に回転可能に支持されている。
【0045】
一対の無端チェーン34は、チップコンベア150の幅方向に距離を隔てて平行に配置されている。無端チェーン34は、カバー体21の内部において、水平部22および立ち上がり部26の間に渡って環状に配索されている。無端チェーン34は、カバー体21の内部において、切り屑受け入れ部23に対向する位置と、切り屑排出部27に対向する位置との間で往復するように配索されている。
【0046】
無端チェーン34は、カバー体21内で配索される経路上において、駆動スプロケット37および従動スプロケット38に掛け回されるとともに、複数のガイド部材によって案内されている。モータ112Aからの動力を受けて駆動スプロケット37が回転すると、無端チェーン34は、
図4中の矢印A(ハッチングが付された矢印)に示す方向に回動する。
【0047】
チップコンベア150は、濾過機構40をさらに有する。濾過機構40は、加工エリアAR1から受け入れたクーラントを濾過することによって、清浄なクーラントをカバー体21内から排出するように構成されている。
【0048】
より具体的に説明すると、濾過機構40は、ドラム状濾過体46を有する。ドラム状濾過体46は、カバー体21に収容されている。ドラム状濾過体46は、水平部22および立ち上がり部26の間の屈曲部に設けられている。ドラム状濾過体46は、クーラントに含まれる切り屑等の異物を捕獲可能なフィルターから構成されている。ドラム状濾過体46は、円筒形状を有し、その内側に内部空間47を形成している。
【0049】
ドラム状濾過体46は、その中心軸がチップコンベア150の幅方向に延びるように配置されている。ドラム状濾過体46は、その中心軸が、従動スプロケット38の回転中心である中心軸AXと一致するように配置されている。ドラム状濾過体46は、中心軸AXの軸方向における両端において、従動スプロケット38に接続されている。
【0050】
<D.マガジン170>
次に、
図5を参照して、搬送機構80の一例であるマガジン170について説明する。
図5は、マガジン170を正面から示す図である。
【0051】
マガジン170は、モータ112Mと、駆動スプロケット113と、従動スプロケット114と、無端チェーン115とを含む。
【0052】
駆動スプロケット113には、上述のモータ112M(
図2参照)の出力軸が連結されている。駆動スプロケット113は、モータ112Mから動力が伝達されることにより回転する。
【0053】
無端チェーン115は、駆動スプロケット113と、従動スプロケット114とによって張架されている。モータ112Mが駆動スプロケット113を回転駆動することにより、モータ112の動力が無端チェーン115を介して従動スプロケット114に伝達される。その結果、従動スプロケット114および無端チェーン115は、駆動スプロケット113に連動して回転する。
【0054】
また、無端チェーン115には、複数のポットPが設けられる。各ポットPには、1つの工具が装着され得る。工作機械100は、モータ112Mを制御することで、指定された工具を任意の位置に駆動することができる。
【0055】
具体的な処理手順として、工作機械100は、加工プログラムによって工具が呼び出された場合には、モータ112Mを制御することで当該工具を所定の工具交換位置に駆動する。当該工具交換位置の近傍には、上述のATC(Automatic Train Control)160が設けられている。ATC160は、当該工具交換位置にある工具をマガジン170から取り外し、半回転する。次に、ATC160は、所定の工具交換位置に待機している主軸に当該工具を装着する。
【0056】
<E.概要>
以下では説明の便宜のために、上述のモータ112(
図2参照)の一方の回転方向を「正転」と称し、他方の回転方向を「逆転」と称する。また、モータ112の正転および逆転の一方から他方に回転方向を変えることを「反転」と称する。
【0057】
搬送機構80のチェーン(たとえば、無端チェーン34(
図4参照)や無端チェーン115(
図5参照)など)は、使用するにつれて伸びていく。チェーンが緩んでいる状態でモータ112の回転方向が反転した場合、モータ112からチェーンへの動力の伝達が遅れる。この遅延は、チェーンが緩んでいるほど長くなる。この点に着目して、工作機械100は、モータ112にかかる負荷(以下、「モータ負荷」ともいう。)を監視し、当該モータ負荷の変化に基づいて、チェーンが緩んでいることを検知する。
【0058】
より具体的には、まず、工作機械100は、モータ112の回転を反転する処理を実行するとともに、当該反転する処理を開始した第1タイミングを記憶する。次に、工作機械100は、当該第1タイミングの後においてモータ負荷が所定値を超えた第2タイミングを特定する。当該第2タイミングは、チェーンが緩んでいるほど遅くなる。そこで、工作機械100は、当該第1タイミングから当該第2タイミングまでの時間(以下、「遅延時間」ともいう。)が所定時間を超えている場合に、チェーンの緩みが発生していると判断する。工作機械100は、チェーンの緩みが発生していると判断した場合には、当該緩みに対処するための予め定められた異常対処処理を実施する。
【0059】
<F.機能構成>
次に、
図6~
図9を参照して、工作機械100の機能構成について説明する。
図6は、工作機械100の機能構成の一例を示す図である。
【0060】
工作機械100の制御部50は、機能構成の一例として、駆動制御部52と、負荷検知部54と、監視部56と、異常処理部58とを含む。以下では、これらの機能構成について順に説明する。
【0061】
なお、
図6に示され全ての機能構成は、上述のCPUユニット20(
図2参照)に実装されてもよいし、上述のCNCユニット30(
図2参照)に実装されてもよい。あるいは、
図6に示され一部の機能構成がCPUユニット20に実装され、残りの機能構成がCNCユニット30に実装されてもよい。あるいは、
図6に示され一部の機能構成は、サーバなどの外部機器に実装されてもよい。
【0062】
(F1.駆動制御部52)
まず、
図6に示される駆動制御部52の機能について説明する。
【0063】
駆動制御部52は、上述のモータドライバ111(
図2参照)を介して、搬送機構80のモータ112の駆動を制御する。駆動制御部52がモータドライバ111に出力可能な制御指令は、モータ112の回転方向(正転または逆転)、モータ112の回転速度、モータ112の回転のオンオフなどを含む。
【0064】
駆動制御部52は、たとえば、チェーン緩みに関する異常確認処理の実行指示を受け付けたことに基づいて、モータ112の回転を開始する指令を搬送機構80に出力する。このときのモータ112の回転方向は、正転方向であってもよいし、逆転方向であってもよい。その後、駆動制御部52は、モータ112の回転を反転させるための制御指令を搬送機構80に出力する。
【0065】
(F2.負荷検知部54)
次に、
図6に示される負荷検知部54の機能について説明する。
【0066】
負荷検知部54は、チップコンベア150のモータ負荷を検知する。モータ負荷は、種々のセンサを用いて検知され得る。
【0067】
一例として、負荷検知部54は、チップコンベア150のモータ112Aに出力する電流値の大きさに基づいて、チップコンベア150のモータ負荷を検知する。モータ112Aが三相交流モータである場合、モータ112Aは、インバータ(図示しない)を介して制御される。この場合、モータ112Aのトルクは、たとえば、下記の式(1)に基づいて制御される。
【0068】
T=K×(V/f)×I・・・(1)
式(1)に示される「T」は、モータ112Aのトルク(モータ負荷)を示す。「K」は、定数である。「V」は、インバータへの出力電圧値を示す。「f」は、インバータの出力周波数を示す。「I」は、インバータへの出力電流値を示す。「K×(V/f)」は、一定周波数(たとえば、60Fz)までは一定値となる。すなわち、モータ負荷は、インバータの出力電流値「I」に応じて変わる。そのため、負荷検知部54は、インバータへの出力電流値に基づいて、モータ負荷を検知する。
【0069】
他の例として、モータ112Aがサーボモータである場合、モータ112Aは、エンコーダ(図示しない)を介して制御される。この場合、負荷検知部54は、当該エンコーダの出力値に基づいて、モータ負荷を検知する。
【0070】
(F3.監視部56)
次に、
図7および
図8を参照して、
図6に示される監視部56の機能について説明する。
【0071】
監視部56は、負荷検知部54によって検知されたモータ負荷を順次取得し、当該モータ負荷を監視する。そして、監視部56は、当該モータ負荷の推移に基づいて、搬送機構80のチェーンに緩みが生じていないか否かを判断する。
【0072】
図7は、チェーン緩みが発生していない場合におけるモータ負荷の推移を示す図である。
図8は、チェーン緩みが発生している場合におけるモータ負荷の推移を示す図である。
【0073】
図7および
図8の例では、タイミングT0からタイミングT1までの間において、駆動制御部52は、搬送機構80のモータ112を正転駆動している。その後、タイミングT1において、駆動制御部52は、搬送機構80のモータ112の回転方向を反転している。その結果、搬送機構80のチェーンの張架状態が一時的に解除され、モータ負荷が大幅に下がっている。
【0074】
監視部56は、モータ112の回転方向を反転させたタイミングT1を記憶する。タイミングT1を契機として、搬送機構80のモータ112は、逆転駆動されている。
【0075】
搬送機構80のチェーンに緩みが生じていない場合には、搬送機構80のチェーンは、モータ112の回転方向が反転して直ぐに張架状態となる。監視部56は、当該張架状態になったタイミング(以下、「再張架タイミング」ともいう。)をモータ負荷に基づいて特定する。
【0076】
図7の例では、監視部56は、モータ負荷が所定閾値thを超えたタイミングT2を再張架タイミングとして特定している。そして、監視部56は、タイミングT1からタイミングT2までの時間ΔTAを測定し、当該時間ΔTAが所定時間ΔTthを下回っている場合には、搬送機構80のチェーンに緩みが生じていないと判断する。
【0077】
一方で、
図8の例では、監視部56は、モータ負荷が所定閾値thを超えたタイミングT3を再張架タイミングとして特定している。そして、監視部56は、タイミングT1からタイミングT3までの時間ΔTBを測定し、当該時間ΔTBが所定時間ΔTthを超えている場合には、搬送機構80のチェーンに緩みが生じていると判断する。
【0078】
なお、
図7および
図8に示される所定閾値thは、予め設定されていてもよいし、ユーザによって任意に設定されてもよい。同様に、所定時間ΔTthの長さは、予め設定されていてもよいし、ユーザによって任意に設定されてもよい。
【0079】
(F4.異常処理部58)
次に、
図9を参照して、
図6に示される異常処理部58の機能について説明する。
【0080】
異常処理部58は、監視部56によってチェーンの緩みが検知された場合に、予め定められた異常対処処理を実施する。この場合、当該異常対処処理は、チェーンが緩んでいることが検知された搬送機構80に応じて実行される。
【0081】
ある局面において、異常処理部58は、チップコンベア150の無端チェーン34の緩みが検知された場合、無端チェーン34が緩んでいることを示す警告を出力する処理を異常対処処理として実行する。
【0082】
図9は、警告の出力態様の一例を示す図である。
図9の例では、警告144が操作盤140のディスプレイ142に表示されている。警告144は、チップコンベア150の無端チェーン34が緩んでいることを示すメッセージを含む。これにより、作業者は、チップコンベア150の無端チェーン34に緩みが発生していることを即座に把握することができる。
【0083】
他の局面において、異常処理部58は、チップコンベア150の無端チェーン34の緩みが検知された場合、無端チェーン34の駆動を禁止する処理を異常対処処理として実行する。これにより、チップコンベア150の駆動が停止される。
【0084】
なお、上述では、チップコンベア150の無端チェーン34が緩んでいる場合の異常対処処理について説明を行ったが、マガジン170の無端チェーン115が緩んでいる場合にも同様の異常対処処理が実行される。より具体的には、異常処理部58は、マガジン170の無端チェーン115の緩みが検知された場合、無端チェーン115が緩んでいることを示す警告を出力する処理を異常対処処理として実行する。
【0085】
なお、上述では、警告の出力態様が表示である例について説明を行ったが、警告の出力態様は、表示に限定されない。一例として、当該警告は、ブザー音や音声などの音で出力されてもよい。あるいは、当該警告は、メールなどにより他の装置に送信されてもよい。
【0086】
<G.制御部50のハードウェア構成>
次に、
図10を参照して、
図4に示される制御部50のハードウェア構成について説明する。
図10は、制御部50のハードウェア構成の一例を示す図である。
【0087】
図10に示されるように、制御部50は、CPUユニット20と、CNCユニット30とを含む。CPUユニット20およびCNCユニット30は、たとえば、通信経路Bを介して接続されている。
【0088】
以下では、CPUユニット20のハードウェア構成と、CNCユニット30のハードウェア構成とについて順に説明する。
【0089】
(G1.CPUユニット20のハードウェア構成)
CPUユニット20は、制御回路201と、ROM(Read Only Memory)202と、RAM(Random Access Memory)203と、通信インターフェイス204,205と、補助記憶装置220とを含む。これらのコンポーネントは、内部バス209に接続される。
【0090】
制御回路201は、たとえば、少なくとも1つの集積回路によって構成される。集積回路は、たとえば、少なくとも1つのCPU、少なくとも1つのGPU(Graphics Processing Unit)、少なくとも1つのASIC(Application Specific Integrated Circuit)、少なくとも1つのFPGA(Field Programmable Gate Array)、またはそれらの組み合わせなどによって構成され得る。
【0091】
制御回路201は、制御プログラム222などの各種プログラムを実行することでCPUユニット20の動作を制御する。制御プログラム222は、工作機械100内の各種装置を制御するための命令を規定している。制御回路201は、制御プログラム222の実行命令を受け付けたことに基づいて、補助記憶装置220またはROM202からRAM203に制御プログラム222を読み出す。RAM203は、ワーキングメモリとして機能し、制御プログラム222の実行に必要な各種データを一時的に格納する。
【0092】
通信インターフェイス204は、LAN(Local Area Network)ケーブル、WLAN(Wireless LAN)、またはBluetooth(登録商標)などを用いた通信を実現するのインターフェイスである。一例として、CPUユニット20は、通信インターフェイス305を介して、ポンプ109、バルブ110、モータドライバ111Aなどの外部機器との通信を実現する。
【0093】
通信インターフェイス205は、フィールドバスに接続される各種ユニットとの通信を実現するためのインターフェイスである。当該フィールドバスに接続されるユニットの一例として、CNCユニット30やI/Oユニット(図示しない)などが挙げられる。
【0094】
補助記憶装置220は、たとえば、ハードディスクやフラッシュメモリなどの記憶媒体である。補助記憶装置220は、制御プログラム222および設定情報224などを格納する。設定情報224は、たとえば、上述の所定閾値th(
図7,
図8参照)や上述の所定時間ΔTth(
図7,
図8参照)などの設定パラメータを含む。
【0095】
制御プログラム222および設定情報224の格納場所は、補助記憶装置220に限定されず、制御回路201の記憶領域(たとえば、キャッシュメモリ)、ROM202、RAM203、外部機器(たとえば、サーバー)などに格納されていてもよい。
【0096】
なお、制御プログラム222は、単体のプログラムとしてではなく、任意のプログラムの一部に組み込まれて提供されてもよい。この場合、本実施の形態に従う各種の処理は、任意のプログラムと協働して実現される。このような一部のモジュールを含まないプログラムであっても、本実施の形態に従う制御プログラム222の趣旨を逸脱するものではない。さらに、制御プログラム222によって提供される機能の一部または全部は、専用のハードウェアによって実現されてもよい。さらに、少なくとも1つのサーバーが制御プログラム222の処理の一部を実行する所謂クラウドサービスのような形態でCPUユニット20が構成されてもよい。
【0097】
(G2.CPUユニット20のハードウェア構成)
引き続き
図10を参照して、CNCユニット30のハードウェア構成について説明する。
【0098】
CNCユニット30は、制御回路301と、ROM302と、RAM303と、通信インターフェイス305と、通信インターフェイス305と、補助記憶装置320とを含む。これらのコンポーネントは、内部バス309に接続される。
【0099】
制御回路301は、たとえば、少なくとも1つの集積回路によって構成される。集積回路は、たとえば、少なくとも1つのCPU、少なくとも1つのASIC、少なくとも1つのFPGA、またはそれらの組み合わせなどによって構成され得る。
【0100】
制御回路301は、加工プログラム322などの各種プログラムを実行することでCNCユニット30の動作を制御する。加工プログラム322は、ワーク加工を実現するためのプログラムである。制御回路301は、加工プログラム322の実行命令を受け付けたことに基づいて、ROM302からRAM303に加工プログラム322を読み出す。RAM303は、ワーキングメモリとして機能し、加工プログラム322の実行に必要な各種データを一時的に格納する。
【0101】
通信インターフェイス305は、LAN、WLAN、またはBluetoothなどを用いた通信を実現するためのインターフェイスである。一例として、CNCユニット30は、通信インターフェイス305を介してCPUユニット20との通信を実現する。また、CNCユニット30は、通信インターフェイス305または他の通信インターフェイスを介して、ワーク加工のための各種駆動ユニット(たとえば、モータドライバなど)との通信を実現する。
【0102】
補助記憶装置320は、たとえば、ハードディスクやフラッシュメモリなどの記憶媒体である。補助記憶装置320は、加工プログラム322などを格納する。加工プログラム322の格納場所は、補助記憶装置320に限定されず、制御回路301の記憶領域(たとえば、キャッシュメモリ)、ROM302、RAM303、外部機器(たとえば、サーバー)などに格納されていてもよい。
【0103】
<H.フローチャート>
次に、
図11を参照して、工作機械100の制御構造について説明する。
図11は、工作機械100が実行する処理の一部を表わすフローチャートである。
【0104】
図11に示される処理は、工作機械100の制御部50が上述の制御プログラム222を実行することにより実現される。他の局面において、処理の一部または全部が、回路素子またはその他のハードウェアによって実行されてもよい。
【0105】
ステップS110において、制御部50は、チェーン緩みに係る異常確認処理の実行タイミングが到来したか否かを判断する。
【0106】
一例として、異常確認処理の実行タイミングは、工作機械100においてワークの加工が行われていない一のタイミングである。ワークが非加工中であるか否かは、たとえば、加工プログラム322(
図10参照)に基づいて判断される。加工プログラム322は、たとえば、主軸の駆動に係る種々の命令コードを含む。当該命令コードは、主軸の駆動のオン/オフを指定するための命令コード、主軸の回転速度を指定するための命令コード、および、主軸の移動先を指定するための命令コードなどを含む。制御部50は、主軸の駆動が停止していることを示す特定の命令コードが実行されていることに基づいて、ワークが非加工中と判断し、異常確認処理の実行タイミングが到来したと判断する。
【0107】
他の例として、異常確認処理の実行タイミングは、搬送機構80の起動後の一のタイミングである。搬送機構80の起動後の一のタイミングは、たとえば、工作機械100の電源起動直後、搬送機構80の駆動命令を受けた直後などである。
【0108】
制御部50は、チェーン緩みに係る異常確認処理の実行タイミングが到来したと判断した場合(ステップS110においてYES)、制御をステップS112に切り替える。そうでない場合には(ステップS110においてNO)、制御部50は、ステップS110の処理を再び実行する。
【0109】
ステップS112において、制御部50は、上述の駆動制御部52(
図6参照)として機能し、搬送機構80のモータ112の回転を開始する。
【0110】
ステップS114において、制御部50は、上述の駆動制御部52として機能し、搬送機構80のモータ112の回転方向を反転し、現在時刻を示すタイミングT1を記憶する。タイミングT1は、工作機械100内の任意の記憶領域(たとえば、RAM203,303など)に記憶される。タイミングT1の取得には、たとえば、工作機械100のOS(Operating System)などに標準搭載されている計時機能が用いられる。
【0111】
ステップS116において、制御部50は、上述の負荷検知部54(
図6参照)として機能し、搬送機構80のモータ112にかかる負荷を検知する。
【0112】
ステップS120において、制御部50は、上述の監視部56(
図6参照)として機能し、ステップS116で取得したモータ負荷が所定閾値を超えたか否かを判断する。制御部50は、モータ負荷が所定閾値を超えたと判断した場合(ステップS120においてYES)、制御をステップS122に切り替える。そうでない場合には(ステップS120においてNO)、制御部50は、制御をステップS116に戻す。
【0113】
ステップS122において、制御部50は、現在時刻を示すタイミングT2を記憶する。タイミングT2は、工作機械100内の任意の記憶領域(たとえば、RAM203,303など)に記憶される。タイミングT2の取得には、たとえば、工作機械100のOSなどに標準搭載されている計時機能が用いられる。
【0114】
ステップS130において、制御部50は、上述の監視部56として機能し、ステップS114で記憶したタイミングT1から、ステップS122で記憶したタイミングT2までの間の時間が所定時間を超えているか否かを判断する。制御部50は、当該時間が所定時間を超えていると判断した場合(ステップS130においてYES)、制御をステップS132に切り替える。そうでない場合には(ステップS130においてNO)、制御部50は、制御をステップS134に切り替える。
【0115】
ステップS132において、制御部50は、上述の異常処理部58(
図6参照)として機能し、予め定められた異常対処処理を実行する。異常対処処理については上述の通りであるので、その説明については繰り返さない。
【0116】
ステップS134において、制御部50は、予め定められた正常対処処理を実行する。当該正常対処処理は、たとえば、搬送機構80のチェーンに緩みが発生していないことを示すメッセージを操作盤140のディスプレイ142に表示する処理を含む。あるいは、当該正常対処処理は、搬送機構80のチェーンに緩みが発生していないことを音声で出力する処理を含んでもよい。
【0117】
今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0118】
11 クーラント槽、12 搬送装置、20 CPUユニット、21 カバー体、22 水平部、23 切り屑受け入れ部、24 接続口、26 立ち上がり部、27 切り屑排出部、30 CNCユニット、34,115 無端チェーン、35 切り屑搬送部、37,113 駆動スプロケット、38,114 従動スプロケット、40 濾過機構、46 ドラム状濾過体、47 内部空間、50 制御部、52 駆動制御部、54 負荷検知部、56 監視部、58 異常処理部、80 搬送機構、100 工作機械、109 ポンプ、110 バルブ、111,111A,111M モータドライバ、112,112A,112M モータ、130 主軸頭、140 操作盤、142 ディスプレイ、143 操作キー、144 警告、150 チップコンベア、160 ATC、170 マガジン、201,301 制御回路、202,302 ROM、203,303 RAM、204,205,305 通信インターフェイス、209,309 内部バス、220,320 補助記憶装置、222 制御プログラム、224 設定情報、322 加工プログラム。
【手続補正書】
【提出日】2021-05-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械であって、
チェーン駆動の搬送機構と、
前記搬送機構を駆動するためのモータと、
前記モータにかかる負荷を検知するための検知部と、
前記工作機械を制御するための制御部とを備え、
前記制御部は、
前記モータの回転を反転する処理と、
前記反転する処理を開始した第1タイミングを記憶する処理と、
前記第1タイミングの後において前記負荷が所定値を超えた第2タイミングを特定する処理と、
前記第1タイミングから前記第2タイミングまでの時間が所定時間を超えている場合に、予め定められた異常対処処理を実施する処理とを実行するように構成され、
前記制御部は、前記工作機械においてワークの加工が行われていない一のタイミングにおいて、前記反転する処理と、前記記憶する処理と、前記特定する処理と、前記実施する処理とを実行する、工作機械。
【請求項2】
前記搬送機構は、前記工作機械がワークを加工することによって発生した切り屑を搬送するためのコンベアを含む、請求項1に記載の工作機械。
【請求項3】
前記予め定められた異常対処処理は、前記コンベアのチェーンが緩んでいることを示す警告を出力する処理を含む、請求項2に記載の工作機械。
【請求項4】
前記搬送機構は、複数の工具を保持することが可能なマガジンを含む、請求項1に記載の工作機械。
【請求項5】
前記予め定められた異常対処処理は、
前記マガジンのチェーンが緩んでいることを示す警告を出力する処理と、
前記マガジンの駆動を禁止する処理との少なくとも一方を含む、請求項4に記載の工作機械。
【請求項6】
前記工作機械においてワークの加工が行われていない一のタイミングは、加工プログラムに含まれる主軸の駆動が停止していることを示す特定の命令コードを実行しているタイミングを含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の工作機械。
【請求項7】
工作機械の制御方法であって、
前記工作機械は、
チェーン駆動の搬送機構と、
前記搬送機構を駆動するためのモータと、
前記モータにかかる負荷を検知するための検知部とを備え、
前記制御方法は、
前記モータの回転を反転するステップと、
前記反転するステップを開始した第1タイミングを記憶するステップと、
前記第1タイミングの後において前記負荷が所定値を超えた第2タイミングを特定するステップと、
前記第1タイミングから前記第2タイミングまでの時間が所定時間を超えている場合に、予め定められた異常対処処理を実行するステップとを備え、
前記反転するステップ、前記記憶するステップ、前記特定するステップ、および、前記実行するステップは、前記工作機械においてワークの加工が行われていない一のタイミングにおいて実行される、制御方法。
【請求項8】
工作機械の制御プログラムであって、
前記工作機械は、
チェーン駆動の搬送機構と、
前記搬送機構を駆動するためのモータと、
前記モータにかかる負荷を検知するための検知部とを備え、
前記制御プログラムは、前記工作機械に、
前記モータの回転を反転するステップと、
前記反転するステップを開始した第1タイミングを記憶するステップと、
前記第1タイミングの後において前記負荷が所定値を超えた第2タイミングを特定するステップと、
前記第1タイミングから前記第2タイミングまでの時間が所定時間を超えている場合に、予め定められた異常対処処理を実行するステップとを実行させ、
前記制御プログラムは、前記工作機械に、前記工作機械においてワークの加工が行われていない一のタイミングにおいて、前記反転するステップ、前記記憶するステップ、前記特定するステップ、および、前記実行するステップを実行させる、制御プログラム。