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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022108944
(43)【公開日】2022-07-27
(54)【発明の名称】黒鉛系負極活物質
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/587 20100101AFI20220720BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20220720BHJP
   C01B 32/21 20170101ALI20220720BHJP
【FI】
H01M4/587
H01M4/36 D
H01M4/36 C
C01B32/21
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021004194
(22)【出願日】2021-01-14
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100136423
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130605
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 浩治
(72)【発明者】
【氏名】松原 伸典
(72)【発明者】
【氏名】荒木 佑輔
(72)【発明者】
【氏名】小山 裕
(72)【発明者】
【氏名】中野 清彦
(72)【発明者】
【氏名】武下 宗平
【テーマコード(参考)】
4G146
5H050
【Fターム(参考)】
4G146AA02
4G146AC02A
4G146AC02B
4G146AC04A
4G146AC04B
4G146AD23
4G146AD25
4G146CB04
5H050AA02
5H050AA07
5H050AA12
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB08
5H050CB29
5H050EA10
5H050EA23
5H050EA24
5H050EA28
5H050FA12
5H050HA04
5H050HA05
5H050HA06
5H050HA12
(57)【要約】
【課題】非水電解質二次電池に高い出力特性と、高いサイクル特性とを付与できる黒鉛系負極活物質を提供する。
【解決手段】ここに開示される黒鉛系負極活物質は、断面視において、黒鉛から構成される扁平中心部と、前記扁平中心部の両側に、黒鉛が集積した多孔質集積部と、を備える粒子から構成される。前記扁平中心部を構成する黒鉛は、前記多孔質集積部を構成する黒鉛よりも密に存在している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面視において、黒鉛から構成される扁平中心部と、
前記扁平中心部の両側に、黒鉛が集積した多孔質集積部と、
を備える粒子から構成される黒鉛系負極活物質であって、
前記扁平中心部を構成する黒鉛は、前記多孔質集積部を構成する黒鉛よりも密に存在している、
黒鉛系負極活物質。
【請求項2】
前記扁平中心部の平均アスペクト比が、1.8以上12以下である、請求項1に記載の黒鉛系負極活物質。
【請求項3】
孔径が0.01μm以上0.1μm以下の範囲の細孔容積が、0.025mL/g以上0.045mL/g以下である、請求項1または2に記載の黒鉛系負極活物質。
【請求項4】
前記扁平中心部の短径に対する前記多孔質集積部の厚みの比が、1.25以上2.5以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の黒鉛系負極活物質。
【請求項5】
平均粒子径の異なる2種類の鱗片状黒鉛を混合すること、および
得られた混合物に、衝撃力、圧縮力およびせん断力を印加して、前記2種類の鱗片状黒鉛を複合化すること、
を包含する、黒鉛系負極活物質の製造方法。
【請求項6】
正極と、負極と、非水電解質と、を備える非水電解質二次電池であって、前記負極が、請求項1~4のいずれか1項に記載の黒鉛系負極活物質を含む、非水電解質二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、黒鉛系負極活物質に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、非水電解質二次電池は、パソコン、携帯端末等のポータブル電源や、電気自動車(EV)、ハイブリッド自動車(HV)、プラグインハイブリッド自動車(PHV)等の車両駆動用電源などに好適に用いられている。
【0003】
一般的に、非水電解質二次電池、特にリチウムイオン二次電池の負極には、黒鉛系負極活物質が用いられている。非水電解質二次電池はその普及に伴い、さらなる高性能化が望まれている。高性能化のための方策の一つとしては、黒鉛系負極活物質の改良が挙げられる。黒鉛系負極活物質の改良の例として、特許文献1には、複数の扁平状の黒鉛粒子と、球状の黒鉛粒子とを複合化した黒鉛系負極活物質が開示されている。特許文献1には、このような黒鉛系負極活物質のラマン測定によるR値が所定の範囲内にあり、かつ所定の径の細孔容積が所定の範囲内にある場合に、当該黒鉛系負極活物質を用いたリチウムイオン二次電池の負荷特性が向上することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-145529号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、本発明者が鋭意検討した結果、従来技術においては、黒鉛系負極活物質を用いた非水電解質二次電池の出力特性およびサイクル特性が不十分であるという問題があることを見出した。
【0006】
上記事情に鑑み、本発明は、非水電解質二次電池に高い出力特性と、高いサイクル特性とを付与できる黒鉛系負極活物質を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ここに開示される黒鉛系負極活物質は、断面視において、黒鉛から構成される扁平中心部と、前記扁平中心部の両側に、黒鉛が集積した多孔質集積部と、を備える粒子から構成される。前記扁平中心部を構成する黒鉛は、前記多孔質集積部を構成する黒鉛よりも密に存在している。このような構成によれば、非水電解質二次電池に高い出力特性と、高いサイクル特性とを付与できる黒鉛系負極活物質が提供される。
【0008】
ここに開示される黒鉛系負極活物質の好ましい一態様においては、前記扁平中心部の平均アスペクト比が、1.8以上12以下である。このような構成によれば、非水電解質二次電池に特に高い出力特性と、特に高いサイクル特性とを付与することができる。
【0009】
ここに開示される黒鉛系負極活物質の好ましい一態様においては、孔径が0.01μm以上0.1μm以下の範囲の細孔容積が、0.025mL/g以上0.045mL/g以下である。このような構成によれば、非水電解質二次電池に特に高い出力特性と、特に高いサイクル特性とを付与することができる。
【0010】
ここに開示される黒鉛系負極活物質の好ましい一態様においては、前記扁平中心部の短径に対する前記多孔質集積部の厚みの比が、1.25以上2.5以下である。このような構成によれば、非水電解質二次電池に特に高い出力特性と、特に高いサイクル特性とを付与することができる。
【0011】
ここに開示される黒鉛系負極活物質は、平均粒子径の異なる2種類の鱗片状黒鉛を混合すること、および得られた混合物に、衝撃力、圧縮力およびせん断力を印加して、前記2種類の鱗片状黒鉛を複合化すること、を包含する製造方法によって好適に製造することができる。
【0012】
別の側面からここに開示される非水電解質二次電池は、正極と、負極と、非水電解質と、を備える。前記負極は、上記の黒鉛系負極活物質を含む。このような構成によれば、高い出力特性と、高いサイクル特性とを有する非水電解質二次電池が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る黒鉛系負極活物質の一例の模式断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る黒鉛系負極活物質を用いて構築されるリチウムイオン二次電池の構成を模式的に示す断面図である。
図3図2のリチウムイオン二次電池の捲回電極体の構成を示す模式分解図である。
図4】実施例2で得られた黒鉛系負極材料の断面の走査型電子顕微鏡画像である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら本発明に係る実施の形態を説明する。なお、本明細書において言及していない事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。また、以下の図面においては、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付して説明している。また、各図における寸法関係(長さ、幅、厚み等)は実際の寸法関係を反映するものではない。
【0015】
なお、本明細書において「二次電池」とは、繰り返し充放電可能な蓄電デバイスをいい、いわゆる蓄電池、および電気二重層キャパシタ等の蓄電素子を包含する用語である。また、本明細書において「リチウムイオン二次電池」とは、電荷担体としてリチウムイオンを利用し、正負極間におけるリチウムイオンに伴う電荷の移動により充放電が実現される二次電池をいう。
【0016】
本実施形態に係る黒鉛系負極活物質は、断面視において、黒鉛から構成される扁平中心部と、当該扁平中心部の両側に、黒鉛が集積した多孔質集積部と、を備える粒子から構成される。当該扁平中心部を構成する黒鉛は、当該多孔質集積部を構成する黒鉛よりも密に存在している。図1に、本実施形態に係る黒鉛系負極活物質の一例の断面を模式的に示す。
【0017】
図1に示すように、黒鉛系負極活物質10は、扁平中心部12と、扁平中心部12の両側に多孔質集積部14と、を備える粒子を複数含む。なお、黒鉛系負極活物質10は、複数の粒子から構成されるが、図1には便宜のため、粒子は1つしか描いていない。
【0018】
扁平中心部12は、黒鉛から構成されており、黒鉛系負極活物質10を構成する粒子のコア部となっている。扁平中心部12を構成する黒鉛の種類には特に限定はないが、扁平中心部12は、典型的には、鱗片状黒鉛の少なくとも一部から構成される。具体的には、典型的には、扁平中心部12は、鱗片状黒鉛、または鱗片状黒鉛の一部(特に端部)を欠いた黒鉛から構成される。扁平中心部12は、典型的には、単一の黒鉛粒子によって構成され、したがって、中実粒子から構成される。しかしながら、扁平中心部12は、黒鉛が多孔質集積部14よりも密に存在する限り、空隙を有していてもよい。
【0019】
図示例では、扁平中心部12は、長方形状であるが、扁平中心部12の形状は、扁平である限りこれに限られない。扁平中心部12の形状は、楕円形等であってもよい。
【0020】
扁平中心部12は、典型的には、扁平な板状の立体形状を有する。よって、断面視は、典型的には、扁平中心部12の厚み方向の断面視である。
【0021】
多孔質集積部14においては、複数の黒鉛が集積しており、黒鉛系負極活物質10を構成する粒子のシェル部となっている。複数の黒鉛が集積する際に、黒鉛間に隙間が生じるため、多孔質集積部14は、この隙間に由来する孔を多数有する。このようにして、多孔質集積部14は、多孔質化されている。
【0022】
多孔質集積部14を構成する黒鉛の種類には特に限定はないが、多孔質集積部14は、典型的には、鱗片状黒鉛の少なくとも一部が集積して構成されている。
【0023】
図示例では、多孔質集積部14が、扁平中心部12を完全に包囲している。しかしながら、多孔質集積部14は、扁平中心部12の両側にある限り、扁平中心部12を完全に包囲していなくてもよい。例えば、多孔質集積部14が、扁平中心部12の両側に形成されているが、扁平中心部12を完全に包囲しておらず、扁平中心部12の端面のみが露出していてもよい。
【0024】
多孔質集積部14には、黒鉛が存在しない部分である多数の孔を有する。したがって、扁平中心部12において黒鉛は、多孔質集積部14よりも密に存在している。扁平中心部12において黒鉛が多孔質集積部14よりも密に存在していることは、黒鉛系負極活物質10の断面走査型電子顕微鏡画像(断面SEM画像)を取得することにより確認することができる。
【0025】
特に、断面SEM画像において、扁平中心部12の黒鉛の存在部分は暗い灰色として、多孔質集積部14の黒鉛の存在部分は明るい灰色として、黒鉛系負極活物質10を構成する粒子間の空隙は黒色として、識別することができる。灰色の明るさの把握には、画像解析ソフトウェアを用いると容易である。典型的に例えば、画像解析ソフトウェア(例、ウィスコンシン大学のLaboratory for Optical and Computational Instrumentationが配布する「ImageJ」)を用いた場合、多孔質集積部14の輝度ヒストグラムの平均値と、扁平中心部12の輝度ヒストグラムの平均値との差(多孔質集積部14の輝度ヒストグラムの平均値-扁平中心部12の輝度ヒストグラムの平均値)は、5以上である。典型的には、多孔質集積部14の輝度ヒストグラムの平均値は、100以上であり、かつ扁平中心部12の輝度ヒストグラムの平均値は、95以下である。ただし、輝度ヒストグラムの平均値が40以下である領域は、粒子間の空隙とみなす。なお、輝度ヒストグラムの平均値の算出には、コントラストを調整していない生データを用いる。また、輝度ヒストグラムの平均値の算出には、扁平中心部12の面積および多孔質集積部14の面積の20%以上の領域をそれぞれ選択して行う。
【0026】
黒鉛系負極活物質10を構成する粒子全体の立体形状は、特に限定されないが、例えば、楕円球状、または楕円球状に近い形状であり、球状、円筒状、不定形状等であってよい。
【0027】
黒鉛系負極活物質10においては、高密な(あるいは中実の)扁平中心部12によって、充放電に伴う活物質の膨張収縮を抑制でき、これによりサイクル特性(特に容量劣化耐性)を向上させることができる。一方で、扁平中心部12の両側にある低密な多孔質集積部14では、その空孔内へ電解液が浸透できるため、反応面積が大きくなり、これにより低抵抗化を図ることができる。したがって、黒鉛系負極活物質10によれば、非水電解質二次電池に高い出力特性と、高いサイクル特性との両方を付与することができる。
【0028】
なお、本明細書において、扁平とは、アスペクト比が1.5以上である形状のことをいう。よって、本実施形態に係る黒鉛系負極活物質10において、扁平中心部12の平均アスペクト比、すなわち、短径に対する長径の比(あるいは短辺に対する長辺の比)の平均は、1.5以上である。ここで、平均アスペクト比が小さ過ぎると、扁平中心部12が十分な量の多孔質集積部14を保持し難くなる傾向があり、これにより本発明の効果が小さくなる傾向にある。そのため、扁平中心部12の平均アスペクト比は、好ましくは1.6以上であり、より好ましくは1.8以上であり、さらに好ましくは2.05以上である。一方、平均アスペクト比が大き過ぎると、黒鉛系負極活物質10の膨張収縮が大きくなる傾向にあり、これにより本発明の効果が小さくなる傾向にある。そのため、扁平中心部12の平均アスペクト比は、好ましくは20以下であり、より好ましくは15以下であり、さらに好ましくは12以下であり、最も好ましくは10.5以下である。
【0029】
なお、扁平中心部12のアスペクト比は、黒鉛系負極活物質10の断面SEM画像を取得し、任意に選ばれる20個以上の粒子について、アスペクト比を求め、その平均値を算出することにより求めることができる。
【0030】
黒鉛系負極活物質10において、孔径が0.01μm以上0.1μm以下の範囲の細孔容積は、特に限定されない。多孔質集積部14へのより高い電解液浸透性の観点から、黒鉛系負極活物質10における孔径が0.01μm以上0.1μm以下の範囲の細孔容積は、好ましくは0.020mL/g以上0.050mL/g以下であり、より好ましくは0.025mL/g以上0.045mL/g以下であり、さらに好ましくは0.031mL/g以上0.041mL/g以下である。当該細孔容積がこのような範囲内にあることで、本発明の効果がより高くなる。
【0031】
なお、孔径が0.01μm以上0.1μm以下の範囲の細孔容積は、水銀圧入法により測定することができる。
【0032】
黒鉛系負極活物質10における、扁平中心部12の短径(図1のAで表される寸法;矩形状の場合は短辺)は、特に限定されない。扁平中心部12の短径A(平均値)は、好ましくは0.5μm以上10μm以下であり、より好ましくは1μm以上7.5μm以下であり、さらに好ましくは1.3μm以上6.6μmである。
【0033】
黒鉛系負極活物質10における、多孔質集積部14の厚み(図1のBで表される寸法;多孔質集積部14の最大厚み)は、特に限定されない。多孔質集積部14の厚みB(平均値)は、好ましくは1μm以上15μm以下であり、より好ましくは1.5μm以上12μm以下であり、さらに好ましくは2μm以上10μm以下である。
【0034】
黒鉛系負極活物質10における、扁平中心部12の短径A(平均値)に対する多孔質集積部14の厚みB(平均値)の比(B/A)は、特に限定されない。当該比(B/A)は、好ましくは1.0以上3.0以下であり、より好ましくは1.25以上2.5以下であり、さらに好ましくは1.52以上2.27以下である。当該比(B/A)がこのような範囲内にあることで、扁平中心部12の膨張収縮抑制効果と、多孔質集積部14の電解液浸透性とがバランスよく優れ、本発明の効果がより高くなる。
【0035】
なお、扁平中心部12の短径Aおよび多孔質集積部14の厚みBは、黒鉛系負極活物質10の断面電子顕微鏡画像(例、断面SEM画像)を取得し、任意に選ばれる20個以上の粒子について、短径Aおよび厚みBを測定し、その平均値を算出することにより、それぞれ求めることができる。
【0036】
本実施形態に係る黒鉛系負極活物質は、以下の方法により好適に製造することができる。なお、本実施形態に係る黒鉛系負極活物質は、以下の製造方法によって製造されたものに限定されない。
【0037】
本実施形態に係る黒鉛系負極活物質の好適な製造方法は、平均粒子径の異なる2種類の鱗片状黒鉛を混合すること、および得られた混合物に、衝撃力、圧縮力およびせん断力を印加して、当該2種類の鱗片状黒鉛を複合化すること、を包含する。
【0038】
平均粒子径の異なる2種類の鱗片状黒鉛を用いることにより、平均粒子径が大きい鱗片状黒鉛(以下、「鱗片状黒鉛(L)」ともいう)がコア部(すなわち、扁平中心部)となり、平均粒子径が小さい鱗片状黒鉛(以下、「鱗片状黒鉛(S)」ともいう)が集積してシェル部(すなわち、多孔質集積部)を構成する。なお、上述の黒鉛系負極活物質が得られる限り、2種類の鱗片状黒鉛に加えて、平均粒子径がさらに異なる3種類目の鱗片状黒鉛を混合してもよい。
【0039】
2種類の鱗片状黒鉛の平均粒子径の差は、上述の黒鉛系負極活物質が得られる限り特に限定されないが、好ましくは5μm以上20μm以下であり、より好ましくは7.5μm以上15μm以下である。なお、鱗片状黒鉛の平均粒子径は、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置によって測定される体積累積粒径D50として求めることができる。好適には、平均粒子径(D50)が12.5μm以上17.5μm以下の鱗片状黒鉛(L)と、平均粒子径(D50)が2.5μm以上7.5μm以下の鱗片状黒鉛(S)と、を用いる。
【0040】
鱗片状黒鉛(L)と鱗片状黒鉛(S)の混合割合は、上述の黒鉛系負極活物質が得られる限り特に限定されないが、鱗片状黒鉛(L)が多い方が好ましい。鱗片状黒鉛(L)と鱗片状黒鉛(S)の質量比(鱗片状黒鉛(L):鱗片状黒鉛(S))は、好適には、6:4~9:1である。
【0041】
鱗片状黒鉛(L)と鱗片状黒鉛(S)の混合は、公知方法に従って行うことができる。
【0042】
この混合物に、衝撃力、圧縮力およびせん断力を印加して、鱗片状黒鉛(L)と鱗片状黒鉛(S)とを複合化する方法は、特に限定されないが、衝撃力、圧縮力およびせん断力を印加可能な公知の乾式粒子複合化装置(特に、高速回転可能なロータを備える乾式粒子複合化装置)を用いる方法が好ましい。このような乾式粒子複合化装置の例としては、ホソカワミクロン社製「ノビルタ」シリーズが挙げられる。乾式粒子複合化装置に、鱗片状黒鉛(L)および鱗片状黒鉛(S)を投入することにより、混合と複合化とを行うことができる。
【0043】
乾式粒子複合化装置による処理条件は、上述の黒鉛系負極活物質が得られるように適宜決定すればよい。衝撃力、圧縮力およびせん断力によって、鱗片状黒鉛(L)に割れが生じ得る。これらの力が大きすぎる、あるいはこれらの力の印加時間が長すぎると、鱗片状黒鉛(L)に割れが生じ過ぎて、コア部が形成されなくなる。これを考慮に入れて、乾式粒子複合化装置による処理条件を適宜決定することができる。高速回転可能なロータを備える乾式粒子複合化装置を用いる場合、装置のロータ回転数は、例えば3000rpm以上(好ましくは3000rpm以上5000rpm以下)であり、処理時間は例えば、60分以上180分以下である。
【0044】
本実施形態に係る黒鉛系負極活物質を用いて、公知方法に従って二次電池を構築することができる。具体的には、黒鉛系負極活物質を用いる公知の二次電池において、負極活物質に、本実施形態に係る黒鉛系負極活物質を用いればよい。
【0045】
本実施形態に係る黒鉛系負極活物質を、非水電解質二次電池に用いることにより、非水電解質二次電池に高い出力特性と、高いサイクル特性(特に、充放電を繰り返した際の容量劣化耐性)とを付与することができる。本実施形態に係る黒鉛系負極活物質は、典型的には二次電池用の黒鉛系負極活物質であり、好ましくは非水電解質二次電池用(特にリチウムイオン二次電池用)の黒鉛系負極活物質である。なお、本実施形態に係る黒鉛系負極活物質を、固体電解質を備える全固体二次電池に用いることもできる。
【0046】
そこで、別の側面から、本実施形態に係る非水電解質二次電池は、正極と、負極と、非水電解質と、を備え、当該負極が、上記の黒鉛系負極活物質を含む。
【0047】
以下、本実施形態に係る非水電解質二次電池について、扁平形状の捲回電極体と扁平形状の電池ケースとを有する扁平角型のリチウムイオン二次電池を例にして、詳細に説明する。しかしながら、本実施形態に係る非水電解質二次電池は、以下説明する例に限定されない。
【0048】
図2に示すリチウムイオン二次電池100は、扁平形状の捲回電極体20と非水電解質(図示せず)とが扁平な角形の電池ケース(即ち外装容器)30に収容されることにより構築される密閉型電池である。電池ケース30には、外部接続用の正極端子42および負極端子44と、電池ケース30の内圧が所定レベル以上に上昇した場合に該内圧を開放するように設定された薄肉の安全弁36とが設けられている。正負極端子42,44はそれぞれ正負極集電板42a,44aと電気的に接続されている。電池ケース30の材質には、例えば、アルミニウム等の軽量で熱伝導性の良い金属材料が用いられる。
【0049】
捲回電極体20は、図2および図3に示すように、正極シート50と、負極シート60とが、2枚の長尺状のセパレータシート70を介して重ね合わされて長手方向に捲回された形態を有する。正極シート50は、長尺状の正極集電体52の片面または両面(ここでは両面)に長手方向に沿って正極活物質層54が形成された構成を有する。負極シート60は、長尺状の負極集電体62の片面または両面(ここでは両面)に長手方向に沿って負極活物質層64が形成されている構成を有する。正極活物質層非形成部分52a(すなわち、正極活物質層54が形成されずに正極集電体52が露出した部分)および負極活物質層非形成部分62a(すなわち、負極活物質層64が形成されずに負極集電体62が露出した部分)は、捲回電極体20の捲回軸方向(すなわち、上記長手方向に直交するシート幅方向)の両端から外方にはみ出すように形成されている。正極活物質層非形成部分52aおよび負極活物質層非形成部分62aには、それぞれ正極集電板42aおよび負極集電板44aが接合されている。
【0050】
正極集電体52としては、リチウムイオン二次電池に用いられる公知の正極集電体を用いてよく、その例としては、導電性の良好な金属(例えば、アルミニウム、ニッケル、チタン、ステンレス鋼等)製のシートまたは箔が挙げられる。正極集電体52としては、アルミニウム箔が好ましい。
【0051】
正極集電体52の寸法は特に限定されず、電池設計に応じて適宜決定すればよい。正極集電体52としてアルミニウム箔を用いる場合には、その厚みは、特に限定されないが、例えば5μm以上35μm以下であり、好ましくは7μm以上20μm以下である。
【0052】
正極活物質層54は、正極活物質を含有する。正極活物質としては、例えば、リチウムニッケル系複合酸化物(例、LiNiO等)、リチウムコバルト系複合酸化物(例、LiCoO等)、リチウムニッケルコバルトマンガン系複合酸化物(例、LiNi1/3Co1/3Mn1/3等)、リチウムニッケルコバルトアルミニウム系複合酸化物(例、LiNi0.8Co0.15Al0.5等)、リチウムマンガン系複合酸化物(例、LiMn等)、リチウムニッケルマンガン系複合酸化物(例、LiNi0.5Mn1.5等)などのリチウム遷移金属複合酸化物;リチウム遷移金属リン酸化合物(例、LiFePO等)などが挙げられる。
【0053】
正極活物質層54は、正極活物質以外の成分、例えば、リン酸三リチウム、導電材、バインダ等を含んでいてもよい。導電材としては、例えばアセチレンブラック(AB)等のカーボンブラックやその他(例、グラファイトなど)の炭素材料を好適に使用し得る。バインダとしては、例えばポリフッ化ビニリデン(PVDF)等を使用し得る。
【0054】
正極活物質層54中の正極活物質の含有量(すなわち、正極活物質層54の全質量に対する正極活物質の含有量)は、特に限定されないが、70質量%以上が好ましく、より好ましくは80質量%以上97質量%以下であり、さらに好ましくは85質量%以上96質量%以下である。正極活物質層54中のリン酸三リチウムの含有量は、特に制限はないが、1質量%以上15質量%以下が好ましく、2質量%以上12質量%以下がより好ましい。正極活物質層54中の導電材の含有量は、特に制限はないが、1質量%以上15質量%以下が好ましく、3質量%以上13質量%以下がより好ましい。正極活物質層54中のバインダの含有量は、特に制限はないが、1質量%以上15質量%以下が好ましく、1.5質量%以上10質量%以下がより好ましい。
【0055】
正極活物質層54の厚みは、特に限定されないが、例えば、10μm以上300μm以下であり、好ましくは20μm以上200μm以下である。
【0056】
負極集電体62としては、リチウムイオン二次電池に用いられる公知の負極集電体を用いてよく、その例としては、導電性の良好な金属(例えば、銅、ニッケル、チタン、ステンレス鋼等)製のシートまたは箔が挙げられる。負極集電体52としては、銅箔が好ましい。
【0057】
負極集電体62の寸法は特に限定されず、電池設計に応じて適宜決定すればよい。負極集電体62として銅箔を用いる場合には、その厚みは、特に限定されないが、例えば5μm以上35μm以下であり、好ましくは7μm以上20μm以下である。
【0058】
負極活物質層64は負極活物質として、上述の黒鉛系負極活物質を含有する。負極活物質層64は、本発明の効果を顕著に阻害しない範囲内で、上述の黒鉛系負極活物質に加えて、その他の負極活物質を含有していてもよい。
【0059】
負極活物質の平均粒子径(メジアン径:D50)は、特に限定されないが、例えば、0.1μm以上50μm以下であり、好ましくは1μm以上25μm以下であり、より好ましくは5μm以上20μm以下である。なお、負極活物質の平均粒子径(D50)は、例えば、レーザー回折散乱法により求めることができる。
【0060】
負極活物質層64は、活物質以外の成分、例えばバインダや増粘剤等を含み得る。バインダとしては、例えばスチレンブタジエンラバー(SBR)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等を使用し得る。増粘剤としては、例えばカルボキシメチルセルロース(CMC)等を使用し得る。
【0061】
負極活物質層中の負極活物質の含有量は、90質量%以上が好ましく、95質量%以上99質量%以下がより好ましい。負極活物質層中のバインダの含有量は、0.1質量%以上8質量%以下が好ましく、0.5質量%以上3質量%以下がより好ましい。負極活物質層中の増粘剤の含有量は、0.3質量%以上3質量%以下が好ましく、0.5質量%以上2質量%以下がより好ましい。
【0062】
負極活物質層64の厚みは、特に限定されないが、例えば、10μm以上300μm以下であり、好ましくは20μm以上200μm以下である。
【0063】
セパレータ70としては、例えばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエステル、セルロース、ポリアミド等の樹脂から成る多孔性シート(フィルム)が挙げられる。かかる多孔性シートは、単層構造であってもよく、二層以上の積層構造(例えば、PE層の両面にPP層が積層された三層構造)であってもよい。セパレータ70の表面には、耐熱層(HRL)が設けられていてもよい。
【0064】
セパレータ70の厚みは特に限定されないが、例えば5μm以上50μm以下であり、好ましくは10μm以上30μm以下である。
【0065】
非水電解質は、典型的には、非水溶媒と支持塩(電解質塩)とを含有する。非水溶媒としては、一般的なリチウムイオン二次電池の電解液に用いられる各種のカーボネート類、エーテル類、エステル類、ニトリル類、スルホン類、ラクトン類等の有機溶媒を、特に限定なく用いることができる。なかでも、カーボネート類が好ましく、その具体例として、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、モノフルオロエチレンカーボネート(MFEC)、ジフルオロエチレンカーボネート(DFEC)、モノフルオロメチルジフルオロメチルカーボネート(F-DMC)、トリフルオロジメチルカーボネート(TFDMC)等が例示される。このような非水溶媒は、1種を単独で、あるいは2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0066】
支持塩としては、例えば、LiPF、LiBF、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)等のリチウム塩(好ましくはLiPF)を好適に用いることができる。支持塩の濃度は、0.7mol/L以上1.3mol/L以下が好ましい。
【0067】
なお、上記非水電解質は、本発明の効果を著しく損なわない限りにおいて、上述した成分以外の成分、例えば、オキサラト錯体等の被膜形成剤;ビフェニル(BP)、シクロヘキシルベンゼン(CHB)等のガス発生剤;増粘剤;等の各種添加剤を含んでいてもよい。
【0068】
リチウムイオン二次電池100は、各種用途に利用可能である。好適な用途としては、電気自動車(EV)、ハイブリッド自動車(HV)、プラグインハイブリッド自動車(PHV)等の車両に搭載される駆動用電源が挙げられる。また、リチウムイオン二次電池100は、小型電力貯蔵装置等の蓄電池として使用することができる。リチウムイオン二次電池100は、典型的には複数個を直列および/または並列に接続してなる組電池の形態でも使用され得る。
【0069】
以上、例として扁平形状の捲回電極体を備える角型のリチウムイオン二次電池について説明した。しかしながら、本実施形態に係る黒鉛系負極活物質は、公知方法に従い、他の種類のリチウムイオン二次電池にも使用可能である。例えば、本実施形態に係る黒鉛系負極活物質を用いて、積層型電極体(すなわち、複数の正極と、複数の負極とが交互に積層された電極体)を備えるリチウムイオン二次電池を構築することもできる。また、本実施形態に係る黒鉛系負極活物質を用いて、円筒型リチウムイオン二次電池、ラミネートケース型リチウムイオン二次電池等を構築することもできる。さらに、本実施形態に係る黒鉛系負極活物質を用いて、公知方法に従い、リチウムイオン二次電池以外の非水電解質二次電池を構成することもできる。
【0070】
以下、本発明に関する実施例を詳細に説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。
【0071】
<黒鉛系負極活物質の準備>
(比較例1)
平均粒子径(D50)が約15μmの鱗片状黒鉛(伊藤黒鉛工業社製)を、比較例1の黒鉛系負極活物質として準備した。
【0072】
(比較例2)
平均粒子径(D50)が約10μmの鱗片状黒鉛(伊藤黒鉛工業社製)を、比較例2の黒鉛系負極活物質として準備した。
【0073】
(比較例3)
平均粒子径(D50)が約5μmの鱗片状黒鉛(伊藤黒鉛工業社製)を、比較例3の負黒鉛系負極活物質として準備した。
【0074】
(実施例1)
平均粒子径(D50)が15μmの鱗片状黒鉛と、平均粒子径(D50)が5μmの鱗片状黒鉛とを、質量比7:3で混合した。この混合物に対し、ホソカワミクロン製乾式粒子複合化装置「ノビルタミニ(NOB-MINI)」を用いて、4000rpmで120分間造粒処理を行った。得られた黒鉛系負極活物質粒子の断面をSEMで観察したところ、黒鉛から構成される高密な扁平中心部と、当該扁平中心部の両側に、黒鉛が集積した低密な多孔質集積部とを粒子が有していることが確認できた。
【0075】
(実施例2)
平均粒子径(D50)が15μmの鱗片状黒鉛と、平均粒子径(D50)が5μmの鱗片状黒鉛とを、質量比6:4で混合した。この混合物に対し、ホソカワミクロン製乾式粒子複合化装置「ノビルタミニ(NOB-MINI)」を用いて、4000rpmで120分間造粒処理を行った。得られた黒鉛系負極活物質粒子の断面をSEMで観察したところ、黒鉛から構成される高密な扁平中心部と、当該扁平中心部の両側に、黒鉛が集積した低密な多孔質集積部とを粒子が有していることが確認できた。参考としてその断面SEM画像を図4に示す。
【0076】
(実施例3)
平均粒子径(D50)が15μmの鱗片状黒鉛と、平均粒子径(D50)が5μmの鱗片状黒鉛とを、質量比8:2で混合した。この混合物に対し、ホソカワミクロン製乾式粒子複合化装置「ノビルタミニ(NOB-MINI)」を用いて、4000rpmで120分間造粒処理を行った。得られた黒鉛系負極活物質粒子の断面をSEMで観察したところ、黒鉛から構成される高密な扁平中心部と、当該扁平中心部の両側に、黒鉛が集積した低密な多孔質集積部とを粒子が有していることが確認できた。
【0077】
(実施例4)
平均粒子径(D50)が15μmの鱗片状黒鉛と、平均粒子径(D50)が5μmの鱗片状黒鉛とを、質量比9:1で混合した。この混合物に対し、ホソカワミクロン製乾式粒子複合化装置「ノビルタミニ(NOB-MINI)」を用いて、4000rpmで120分間造粒処理を行った。得られた黒鉛系負極活物質粒子の断面をSEMで観察したところ、黒鉛から構成される高密な扁平中心部と、当該扁平中心部の両側に、黒鉛が集積した低密な多孔質集積部とを粒子が有していることが確認できた。
【0078】
(比較例4)
平均粒子径(D50)が15μmの鱗片状黒鉛を、ホソカワミクロン製乾式粒子複合化装置「ノビルタミニ(NOB-MINI)」を用いて、4000rpmで120分間造粒処理を行った。得られた黒鉛系負極活物質粒子の断面をSEMで観察したところ、全体が多孔質の粒子であった。
【0079】
(比較例5)
平均粒子径(D50)が15μmの鱗片状黒鉛と、平均粒子径(D50)が5μmの鱗片状黒鉛とを、質量比7:3で混合した。この混合物に対し、ホソカワミクロン製乾式粒子複合化装置「ノビルタミニ(NOB-MINI)」を用いて、4000rpmで240分間造粒処理を行った。得られた黒鉛系負極活物質粒子の断面をSEMで観察したところ、全体が多孔質の粒子であった。
【0080】
<細孔分布測定>
各実施例および各比較例の黒鉛系負極活物質の細孔分布を水銀圧入法によって測定し、0.01mL/g以上0.1mL/g以下の細孔容積を求めた。結果を表1に示す。
【0081】
<SEM観察評価>
各実施例の黒鉛系負極活物質粒子の断面SEM画像において、20個以上の粒子に対して、扁平中心部の短径Aおよび長径、ならびに多孔質集積部の厚みBを求めた。これらに基づいて、扁平中心部の平均アスペクト比、および扁平中心部の短径Aに対する多孔質集積部の厚みBの比の平均を求めた。結果を表1に示す。
【0082】
<評価用リチウムイオン二次電池の作製>
正極活物質粉末としてのLiNi1/3Co1/3Mn1/3(LNCM)と、導電材としてのアセチレンブラック(AB)と、バインダとしてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)とを、LNCM:AB:PVdF=92:5:3の質量比でN-メチルピロリドン(NMP)と混合し、正極活物質層形成用スラリーを調製した。このスラリーを、厚み15μmのアルミニウム箔の表面に塗布して乾燥した後、ロールプレスすることにより、正極シートを作製した。
【0083】
各実施例および各比較例の黒鉛系負極活物質(C)と、バインダとしてのスチレンブタジエンラバー(SBR)と、増粘剤としてのカルボキシメチルセルロース(CMC)とを、C:SBR:CMC=98:1:1の質量比でイオン交換水中で混合して、負極活物質層形成用スラリーを調製した。このスラリーを、厚み10μmの銅箔の表面に塗布して乾燥した後、ロールプレスすることにより、負極シートを作製した。
【0084】
また、厚み20μmのPP/PE/PPの三層構造の多孔質ポリオレフィン層上に厚み4μmのセラミック粒子層(HRL)が形成されたセパレータシートを2枚用意した。
【0085】
作製した正極シートと負極シートと用意した2枚のセパレータシートとを重ね合わせ、捲回して捲回電極体を作製した。このとき、セパレータシートのHRLを正極シートに対向させた。作製した捲回電極体の正極シートと負極シートにそれぞれ電極端子を溶接により取り付け、これを、注液口を有する電池ケースに収容した。
【0086】
続いて、電池ケースの注液口から非水電解液を注入し、当該注液口を、封口蓋により気密に封止した。なお、非水電解液には、エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とを3:3:4の体積比で含む混合溶媒に、支持塩としてのLiPFを1.0mol/Lの濃度で溶解させたものを用いた。その後、これに初期充電を施し、60℃でエージング処理することによって評価用リチウムイオン二次電池を得た。
【0087】
<出力特性評価>
活性化した各評価用リチウムイオン二次電池を、SOC60%に調製した後、-10℃の環境下に置いた。この各評価用リチウムイオン二次電池に対し、15Cの電流値で2秒間の放電を行った。このときの電圧と電流値とに基づいて出力(W)を算出した。比較例1の黒鉛系負極活物質を用いた評価用リチウムイオン二次電池の出力を100とした場合の、他の比較例および実施例の黒鉛系負極活物質を用いた評価用リチウムイオン二次電池の出力の比を求めた。結果を表1に示す。
【0088】
<サイクル特性評価>
上記作製した各評価リチウムイオン二次電池を25℃の環境下に置いた。各評価用リチウムイオン二次電池を1/3Cの電流値で4.1Vまで定電流充電を行った後、電流値が1/50Cになるまで定電圧充電を行い、満充電状態にした。次いで、各評価用リチウムイオン二次電池を1/3Cの電流値で3.0Vまで定電流放電した。そして、このときの放電容量を測定して初期容量を求めた。
【0089】
各評価用リチウムイオン二次電池を40℃の環境下に置き、2Cで4.1Vまで定電流充電および2Cで3.0Vまで定電流放電を1サイクルとする充放電を500サイクル繰り返した。500サイクル後の放電容量を、初期容量と同様の方法で求めた。サイクル特性の指標として、(充放電500サイクル後の放電容量/初期容量)×100より、容量維持率(%)を求めた。結果を表1に示す。
【0090】
【表1】
【0091】
表1の結果より、断面視において、黒鉛から構成される高密な扁平中心部と、当該扁平中心部の両側に、黒鉛が集積した低密な多孔質集積部と、を備える複数の粒子から構成される黒鉛系負極活物質によれば、すなわち、ここに開示される黒鉛系負極活物質によれば、非水電解質二次電池に高い出力特性と、高いサイクル特性とを付与できることがわかる。
【0092】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【符号の説明】
【0093】
10 黒鉛系負極活物質
12 扁平中心部
14 多孔質集積部
20 捲回電極体
30 電池ケース
36 安全弁
42 正極端子
42a 正極集電板
44 負極端子
44a 負極集電板
50 正極シート(正極)
52 正極集電体
52a 正極活物質層非形成部分
54 正極活物質層
60 負極シート(負極)
62 負極集電体
62a 負極活物質層非形成部分
64 負極活物質層
70 セパレータシート(セパレータ)
100 リチウムイオン二次電池
図1
図2
図3
図4